電子記録債権の概要 2

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1 電子記録債権制度への期待について ~ 制度概要と導入メリットについて ~ 2015 年 1 月 23 日株式会社 NTT データ経営研究所グローバル金融ビジネスユニット寺島智美

2 電子記録債権の概要 2

3 電子記録債権とは 電子記録債権は 電子記録債権法により 事業者の資金調達の円滑化等を図るために創設された新しい類型の金銭債権であり この法律は 2008 年 12 月 1 日に施行されました 金銭債権 金銭の給付を目的とする債権のこと 銀行預金 貸付金 手形 売掛金 3

4 電子記録債権制度創設の経緯 平成 15 年平成 16 年平成 17 年平成 18 年平成 19 年平成 20 年 IT 戦略本部 E-JapanⅡ 戦略 与信方法の多様化や融資に関する手続の簡素化により 中小企業の資金調達環境を改善するとともに 売掛金回収のリスクを軽減することで その財務状況を改善し 中小企業がより積極的に事業を展開できる社会を実現する 電子記録債権法成立 ( 平成 19 年 6 月 ) 電子記録債権法施行 ( 平成 20 年 12 月 ) 電子債権法提言電子債権法構想電子債権フ ロク ラム 経済産業省 金融システム化に関する小委員会 ビジネスモデル WG 電子債権の管理流通インフラに関する研究会 電子記録債権制度に関する研究会 電子記録債権制度の活用に関する研究会 下請法の調整等 沖縄電子債権実証実験 司法面の検討 法要綱作成 法務省 電子債権研究会 法制審議会電子債権法部会 関係制度の整備 金融庁 全国銀行協会 経済産業省 法務省 金融庁の検討結果 : 電子債権は 1 売買等によって発生する原因債権とは別個の金銭債権であり 2 電子債権管理機関において管理する電子債権原簿に発生登録をしなければ発生しない債権であって 3 指名債権とも 手形債権とも異なる類型の新たな債権とする 金融システム面 金融審議会 記録機関の要件検討 金融審議会 電子記録債権の活用 環境整備に向けて 公表 電子記録債権利用推進等懇談会 4

5 電子記録債権誕生の目的 電子記録債権は これまでの手形や指名債権のデメリットを解消し コスト削減 を実現するとともに 債権の流動化を促進させることで事業者の 資金調達の円滑化 を図ろうとするものです 記録機関 発生記録 譲渡記録 記録原簿 手形 小切手のメリット 債権の可視化 安全な譲渡 ( 二重譲渡のリスク無し ) 債務者債権者新債権者 (1) 発行 (2) 譲渡 (3) 口座間送金決済 電子化のメリット 分割可能 印紙税 手形要件の確認不要 紛失 盗難防止 資金調達手段の拡張 証券化 キャッシュマネジメントシステム 一括ファクタリング シンジケートローン 流動化等への活用可能 将来債権の取扱については今後の検討課題 コスト削減 5

6 手形と売掛債権の現状 1986 年頃から 受取手形の売掛金へのシフトが進んでいます しかしながら 売掛金は 有価証券 の形ではない為 手形と比較すると 資金調達に際して担保若しくは買取対象とすることが難しいという課題があります 250,000, ,000, ,000,000 売掛金 の残高は バブル崩壊 リーマンショック等により伸び悩んでいるものの 約 200 兆円の市場 100,000,000 50,000,000 0 売上債権のうち 受取手形については 約 25 兆円の残高を有するものの 減少傾向を続けている 1975 年度 1977 年度 1979 年度 1981 年度 1983 年度 1985 年度 1987 年度 1989 年度 1991 年度 1993 年度 1995 年度 1997 年度 1999 年度 2001 年度 2003 年度 2005 年度 2007 年度 2009 年度 2011 年度 2013 年度 売掛債権残高 受取手形 ( 割引含む ) 残高 ( 出典 ) 財務総合政策研究所 法人企業統計年報 6

7 売掛金の電子記録債権化について 官民ラウンドテーブルにおいても 中小企業資金繰り等の観点から売掛債権の電子記録債権化の重要性が指摘されています 平成 26 年 3 月 27 日金融庁官民ラウンドテーブル 資金決済サービスの向上 作業部会 資金決済サービスの向上に向けて 電子記録債権の意義 中小企業をはじめとする企業金融の手段として 安全性 流動性の面で優れた点をもっている 例えば 下請け企業等が売掛債権を電子記録債権の譲渡 質入れにより資金化すれば 債権の不存在や 二重譲渡等のリスクを回避しつつ 資金繰りを円滑化 効率化できる また 手形と異なりペーパーレスの資金決済であり 印紙税負担が生じないほか 災害時等においても手形券面の紛失リスクを回避できるメリットがある 中小企業資金繰り円滑化の観点からも有効である ため 官民をあげて普及を図っていく必要がある と認識されている 7

8 でんさいネットの利用件数 金額推移 ( 全国 ) でんさいネットの利用は サービス開始以降 順調に増加しています 80, ,000 70, ,000 60, ,000 50,000 40,000 30, , , ,000 20, ,000 10, , 資料 : でんさいネット 統計情報 より NTT データ経営研究所作成 8 平成 25 年 2 月平成 25 年 3 月平成 25 年 4 月平成 25 年 5 月平成 25 年 6 月平成 25 年 7 月平成 25 年 8 月平成 25 年 9 月平成 25 年 10 月平成 25 年 11 月平成 25 年 12 月平成 26 年 1 月平成 26 年 2 月平成 26 年 3 月平成 26 年 4 月平成 26 年 5 月平成 26 年 6 月平成 26 年 7 月平成 26 年 8 月平成 26 年 9 月平成 26 年 10 月平成 26 年 11 月 利用件数 ( 件 ) 利用金額 ( 百万円 ) 発生記録請求件数 ( 件 ) 発生記録請求金額 ( 百万円 )

9 北海道におけるでんさいネット利用件数 金額推移 北海道におけるでんさいネットの利用も 堅調に伸びています 2,500 14,000 11,802 11,947 12,000 2,000 9,722 10,000 利用件数 ( 件 ) 1,500 1,000 7,755 6,947 6,477 7,495 8,024 1,771 1,777 2,061 8,000 6,000 利用金額 ( 百万円 ) 500 1,274 1,085 1,284 1,372 1,440 4,000 2,000 0 H26.4 H26.5 H26.6 H26.7 H26.8 H26.9 H26.10 H26.11 発生記録件数発生記録金額 ( 百万円 ) 0 資料 : でんさいネット 統計情報 より NTT データ経営研究所作成 9

10 電子記録債権のメリット 10

11 手形 指名債権 のデメリット 手形は 紙媒体ゆえの管理コストがかかります 指名債権 ( 売掛 買掛 ) は 第三者にその権利帰属が分かりにくいため流動化させにくい傾向があります 手形のデメリット 紙媒体ゆえのデメリット 指名債権のデメリット 第三者に分かりにくいゆえのデメリット 保管コスト 盗難リスク 確認コスト 二重譲渡リスク 印紙税 11

12 電子記録債権のもたらすメリット - 安全性の確保 - 電子記録債権は 手形同様の制度を採用することで 取引の安全性を確保しています 存在 帰属の可視化 権利関係が電子債権として記録される為 譲渡禁止特約や二重譲渡のリスクが無い 人的抗弁の切断 ( 無因性 ) 債務者は 原則として 電子記録債権を譲り受けた者に対し 権利発生の原因となった事情等を理由に支払を拒むことはできない 無権代理人の責任の特則 無権代理人が電子記録の請求をした場合は 相手方に重大な過失がない限り 無権代理人の免責を認めない 善意取得 権利者として債権記録に記録されている者が無権利者であっても そのことを知らずに電子記録債権を譲り受けた者は保護される 12

13 電子記録債権のもたらすメリット - 安全性の確保 - 電子記録債権は 手形同様の制度を採用することで 取引の安全性を確保しています 意思表示に関する第三者保護 心裡留保又は錯誤により意思表示が無効となる場合の第三者や 詐欺又は強迫により意思表示が取消された後の第三者について 善意 無重過失であれば保護される 支払免責 債務者が電子記録債権の債権者として記録されている者に対して支払をした場合には 仮にその者が無権利者であったとしても 悪意 重過失がない限り その支払は有効である 電子記録保証の独立性 電子記録保証人は 主たる債務者が電子記録の請求の無効等により その債務を負担しない場合であっても 電子記録保証債務を負う なお 電子記録保証人が支払った場合には 他の債務者に対する求償権 ( 特別求償権 ) が認められている 電子債権記録機関の責任 電子債権記録機関が虚偽の電子記録をしたり 無権代理人や他人になりすました者の請求に基づく電子記録をしたことによって第三者に損害が生じた場合 電子債権記録機関は 無過失を証明しない限り その損害賠償責任を負う 13

14 電子記録債権のもたらすメリット - 分割 - 手形を次の支払に使う場合 あらかじめ必要な金額に分けて振り出す必要がありました A 社 B 社 500 万円支払 C 社 1,000 万円支払 D 社 200 万円支払 B 社からA 社へ 1,000 万円の代金を次の支払に使いたいから500 万 300 万 200 万に分けて手形を振り出してほしい 5,000,000 2,000,000 3,000,000 14

15 電子記録債権のもたらすメリット - 分割 - 電子記録債権では 任意のタイミング 金額での分割が可能であり 転々流通での支払が容易になります A 社 B 社 500 万円支払 C 社 1,000 万円支払 D 社 資金繰りに応じて 都度 必要な額に分割して割引依頼することができる 電子債権記録原簿 200 万円支払 10,000,000 10,000,000 5,000,000 3,000,000 2,000,000 15

16 電子記録債権のもたらすメリット - 支払期日 - 電子記録債権では あらかじめ支払期日を登録しておくことで 取立行為をすることなく 支払期日が到来すると自動的に銀行口座へ入金されます 手形では取立 手形を取引金融機関へ持参し 取立を依頼する必要がある 電子記録債権では自動振込 支払期日に自動で入金されるため インターネットバンキング等で照会するだけでよい 16

17 電子記録債権のもたらすメリット -STP- 電子記録債権は インターネットバンキング等の電子的方法により処理が可能です そのため 社内システムとの連携が可能となり 事務の効率化 オペレーションリスクの低減につながります 手形では処理が中断 紙媒体を介することで データ連携ができず 事務処理の継続性が中断してしまう 電子記録債権では STP 社内システムとインターネットバンキングを連携させることで 迅速かつ確実な処理が可能 17

18 電子記録債権のもたらすメリット - 企業間信用の拡大 - 売掛金を電子記録債権化する場合 売掛金支払期日以前に電子記録債権化を図ることで 受取人のメリット ( 資金化可能時期の前倒し ) と 支払人のメリット ( 支払期間の長期化 ) の両立を図ることができます 月末締 翌月 15 日 翌月末 翌々月末 現金振込 売掛発生 売掛金入金 支払人 : 翌月末支払 受取人 : 翌月末入金 ( 翌月末資金化可能 ) 売掛発生 電子記録債権 4 電子記録債権取得 資金化可能期間 支払人 : 翌々月末支払 受取人 : 翌々月末入金 ( 翌月 15 日より資金化可能 ) 資金化可能時期の前倒し 支払期間の長期化 18

19 参考資料 19

20 海外における関連する動向について 国際連合国際商取引法委員会 (UNCITRAL) 第四作業部会で 電子的移転可能記録 (Electric Transferable Records) を検討中であるため 今後も法務省 金融庁と連携して動向を注視する必要がある 検討結果 ( モデル法等 ) が紙媒体の移転可能証券の電子化を基本としたものとなり アジア各国がこれに倣った国内法を制定する場合 我が国の電子記録債権法が国際的に見て特異な法体系となり ( ガラパゴス化 ) 電子記録債権制度の海外展開の妨げとなるおそれがある 作業部会では モデル法の射程 電子的移転可能記録 の定義が主要な論点の一つ モデル法の事務局草案は 電子的移転可能記録 を紙媒体の移転可能証券の電子的同等物と定義 ( 我が国の電子記録債権法と異なる枠組み ) 第 47 会期では 電子的移転可能記録 を紙媒体の証券に言及することなく機能に焦点を当てて定義すべきとの 我が国の主張について 各国から一定の理解を得ることができた UNCITRALの内容 正式名称 国際連合国際商取引法委員会 (United Nations Commission on International Trade Law) 目的 国際商取引法の段階的なハーモナイゼーションと統一の促進 設立 1966 年 12 月 17 日 ( 国連総会決議 ) 構成国 国連加盟国 60か国 ( 任期 6 年 3 年ごとの半数改選 ) 活動内容 条約 モデル法 勧告 文書等 20

21 記録内容 ( 出典 ) 金融庁 法務省リーフレット 21

22 会計上の取り扱い 売掛金に関連して電子記録債権を発生させ譲渡した場合の会計処理 ( 債権者側 ) 1 商品 100 の売買 ( 借 ) 売掛金 100 ( 貸 ) 売上 電子記録債権 100 を発生記録 ( 借 ) 電子記録債権 100 ( 貸 ) 売掛金 現金 95 で割引 ( 借 ) 現金電子記録債権売却損 95 5 ( 貸 ) 電子記録債権 電子記録債権を買掛金と引き換えに譲渡 ( 借 ) 買掛金 100 ( 貸 ) 電子記録債権 支払期日で決済 ( 借 ) 現金 100 ( 貸 ) 電子記録債権

23 会計上の取り扱い 売掛金に関連して電子記録債権を発生させ譲渡した場合の会計処理 ( 債務者側 ) 1 商品 100 の売買 ( 借 ) 仕入れ 100 ( 貸 ) 買掛金 電子記録債権 100 を発生記録 ( 借 ) 買掛金 100 ( 貸 ) 電子記録債務 支払期日で決済 ( 借 ) 電子記録債務 100 ( 貸 ) 現金

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