情報科学概論

Transcription

1 情報科学概論 映像 1 年前期 選択 担当 : 浦谷則好 uratani@cs.t-kougei.ac.jp

2 第 13 回 オペレーティングシステム

3 オペレーティングシステムとは 基本ソフト (OS) ワープロや表計算などのアプリケーションソフトと異なり ハードウェアとアプリケーションソフトを仲介するもの アプリケーションソフトはOS 毎に異なる システムソフトウェアの一部 OS 以外のシステムソフトウェアとして BIOS: ブート ( 起動 ) 時にOSを主メモリに移動 ミドルウェア :OSとアプリケーションソフトの仲介 BIOS: Basic Input/Output System

4 OS の動作例 (1) Web ブラウザのウィンドウをスクロールする

5 OS の動作例 (2) サイトの文書を見ながら ワープロで入力する

6 OS の機能 記憶管理 ジョブ管理 実行管理 入出力管理 ユーザインターフェース システム資源管理 回復終了管理 システム初期設定 管理測定 問題識別 安全保護

7 記憶管理 ジョブ ( ユーザの仕事 ) がシステムに入力されると記憶域に入れられ 実行中この記憶域を占有 実記憶 : 物理的な実体のある記憶域 ( 主記憶 ) 補助記憶 : 磁気デスクなどの大容量で恒久的な データやプログラムの保存 仮想記憶 : 実記憶と補助記憶の組み合わせで ジョブから見える記憶域 上記 3 つの記憶域を管理する

8 ジョブ管理 実行管理 ジョブ管理 ジョブの入力から実行のスケジュールと処理結果の出力までを制御 ( プログラムのロード アンロードも ) 実行管理 ジョブをシステム内部で処理しやすい仕事の単位 ( タスク ) に変換 メモリやシステム資源をタスク単位に割り振り 複数の仕事を受け入れて同時並行で処理 ( マルチプログラミング )

9 入出力管理とユーザインターフェース 必要なデータを入力端末から取得 マウス キーボードの操作の仕方を決定 マウスボタンの数 : Mac 1つ,Windows 2つ, Unix 3つ ウィンドウの見え方 ファイルの扱い方を決定 GUI が基本 主記憶上のデータを外部媒体に書き込み

10 システム資源管理 システム初期設定 システム資源管理 実行中のジョブに対してシステム資源を配分 スワッピング ( プログラムを実記憶域と補助記憶域の間でロード アンロード ) 機能でマルチプログラミングを実行 システム初期設定 IPL(Initial Program Loader) で OS をロード OS の中のメモリに常駐する部分だけを主記憶へ プログラムの制御を OS そのものに移管 パラメータの指定でシステム稼動条件を設定

11 回復終了管理 ハードウェア障害に対して命令の再試行 ソフトウェアエラーに対して回復終了管理プログラムが機能 異常事態でもシステム自体が止まらないように制御 システム資源を正常終了のときと同様の手順で 解放 別の仕事に使用できる状態に

12 管理測定 問題識別 安全保護 管理測定 システムのパフォーマンスや資源の使用状況を調査 SMF(System Management Facility) RMF(Resource Measurement Facility) 問題識別 障害の原因を識別するための作業 仮想記憶内のデータをダンプ, トレースデータを作成 安全保護 ユーザ毎にその活動に一定の制限を課す

13 OS の歴史 (1) プログラム内蔵方式の出現 EDSACの開発 記号を用いて記述したプログラム 初期入力ルーチンがこれを機械語に翻訳し 記憶装置に蓄積 =アドレス方式の誕生 FORTRAN( 高級言語の第 1 号 ) の誕生 ソフトウェアの互換性 の概念の誕生 翻訳プログラムでハードウェアが異なっても実行可能

14 OS の歴史 (2) 初期のコンピュータはクローズド処理 利用者はプログラムとデータをオペレータに渡し 結果を受け取る デバックは結果を見ながら机上で 高価な CPU の遊び時間が大きい テープ装置などの並列化 ジョブの実行のために必要なプログラム データはまとめて一括処理 = バッチ方式 衛星コンピュータ ( 入出力だけを担当 ) と入出力チャネルで CPU 動作と入出力を並列実行

15 OS の歴史 (3) 第 1 世代の OS(1960 年代初期まで ) バッチ処理用, オンライン処理用,TSS 用で別個に発展 1964~ 汎用コンピュータの時代に ( 第 2 世代 ) IBM システム360, OS/360 を発表 汎用 OSに OSという名称が定着 ジョブ管理, 実行管理, 記憶管理, 入出力管理, ファイル管理, プログラム管理 PL/I,ALGOL,APL,BASICが登場 マルチプログラミングが前提 タスク単位にコンピュータ資源割り当て

16 OS の歴史 (4) 1970 年代初期 OSは第 3 世代へ IBM システム /370 OS: OS/370, OS/VS1, OS/VS2, OS/VS2(MVS) OS の特徴 仮想記憶の実現 多重プロセッサのサポートの実現 システム回復機能の強化 OSへの人手介入の極小化

17 仮想記憶 (1) 仮想記憶 : プログラムやデータが使用する メモリの大きさを実記憶の容量より 見かけ上大きくすること 例えば 100KB,200KB,400KB の 3 つのプログラムを 256KB の実記憶装置で同時に稼動できるようにする 仕掛け プログラムやデータは実記憶上になければ実行 できない だが プログラムやデータ全体が 必ずしも常に実記憶上にある必要はない!

18 仮想記憶 (2) 当面の実行に必要なプログラムの部分とデータの部分だけを主記憶にロードして, その他の部分は補助記憶に退避 これを OS が自動的に実行 ユーザは主記憶を考慮せずに仮想記憶 (CPU がアドレス指定できるビット数が上限 ) の容量制約 だけを意識すればよい ユーザにとっては仮想記憶 = 主記憶

19 仮想記憶 (3) 仮想記憶 : ページ 実記憶 : ページフレーム 補助記憶 : スロットという単位で管理 OSは あるページが必要になると, その内容を補助記憶から実記憶へコピー 当面使わない状態になったら ページの内容を実記憶から補助記憶へコピー ( 実記憶を開放 )

20 代表的な OS UNIX VM PCのOS CP/M, DOS Windows MacOS その他の OS PalmOS, TRON OS ios, Android

21 UNIX EWS( エンジニアリングワークステーション ) の OS として採用 ( 現在のスーパーコンピュータの OS も大半は UNIX) 特殊な装置を入出力装置として利用するには これまでの (IBM 社の ) 汎用 OS は自由度がない AT&T のベル研究所の研究者たちが開発 ユーザ独自の環境を自由に設定可能 UNIX の誕生は 1970 年代初期だが 普及は 1980 年代中ごろ TCP/IP の原型を作ることにも貢献

22 UNIX の特徴 階層構造を持つファイルシステム 木構造, ディレクトリは何段でも可 シェルによるユーザ環境 ( 対話型システム ) ユーザがキーインしたコマンドを受け取ってそれにシェルが応答 マルチユーザ マルチタスク 移植性のよさ Kernelプログラムがコンパクト C 言語ですべて記述 (C 言語コンパイラ自体も )

23 VM Virtual Machine( 仮想計算機 ) の意 IBM 社のVM/370のOS (1972 年 ) 1つのコンピュータシステム上に仮想的なコンピュータ (VM) を作り, これを並列に動作 仮想計算機を実現する VM/CP( コントロールプログラム ) ゲスト OS の諸機能をシミュレートする VM 上で稼働するゲストOS ゲスト OS には用途に応じて様々な OS を選択可能 VMWare は VM を PC 上に移植したもの

24 VM の利点 複数のOSの同時走行が可能 システム構成の自由度が高い 状態変更, 状態監視が容易 隔離性が高い相互干渉の排除, セキュリティ システム開発支援 複数のテストの同時進行 システム運用管理支援 システム移行業務支援 旧バージョンと新バージョンを共存

25

26 PC の OS 1970 年代 OS:CP/M プログラミング言語 :BASIC アプリケーションは VisiCalc, WordStarなど IBM-PCの登場で状況一新 (1981 年 ) PC-DOS の採用 (Disk Operating System) Microsoft 社と IBM 社の共同開発 CUI(Character User Interface) が前提 アプリとしてロータス1-2-3, WordPerfect

27 Windows(1) Windows3.1 Microsoft 社はMacintoshに脅威を感じてGUI の概念を取り入れ 1992 年 Windows3.1を開発 Windows3.1 上にデバイスドライバやカーネルを構成 ビデオデータやMIDI 音源も処理可能に Windows95 すべての操作がデスクトップに統合 ネットワーク / インターネットに対応,32bit 対応 本格的なOSに (Windows3.1は1つのアプリ)

28 Windows(2) Windows2000(Windows NTの後継 ) マルチタスク対応 ; マルチプラットフォームOS マルチプロセッサ マルチランゲージ対応 過去の資産との互換性 ; セキュリティ機能の強化 Windows XP 企業向けのWindows2000を家庭用に! 堅牢なプロセス管理機能 ; マルチユーザ機能 Windows 7 高速起動 ; タスクバー機能の強化

29 Windows(3) Windows 8 ウィルスの検知と駆除機能を搭載 使用している領域のみの暗号化が可能 仮想化機能はさまざまな OS を動作可能 Windows 10 音声認識アシスタント Cortana タブレットモードと PC モードをシームレスに切り替えられる 生体認証 Windows Hello

30 Windows(4) Windows9X 系 MS-DOS ベースの Windows (95-98-ME) Windows NT 系 MS-DOS をベースとはせずに Windows NT 向けに作成されたアーキテクチャを基本 Windows NT XP-Vista Windows RT タッチスクリーンを搭載した端末の専用組み込みオペレーティングシステム (2012~)

31 Windows のファイルシステム Windowsは拡張子をファイルに自動付加 この拡張子でファイルがどのアプリケーションに属するかを判断 拡張子文字列 拡張子の意味 対応するアプリケーション doc, docx ドキュメントファイル Word html HTMLファイル ブラウザ (IE, Chromeなど ) ppt, pptx プレゼンテーション用 PowerPoint txt 書式情報なしのテキストデータ メモ帳など xls, xlsx 表データファイル Excel zip, tar 圧縮されたファイル 解凍ソフトウェア

32 MacOS Steve Jobs と Stephen Gary Wozniak が Apple 社を設立 1984 年,Macintosh (Mac) と共に登場し, グラフィカルユーザインタフェース (GUI) の 普及に大きく貢献 マウスで操作するウィンドウシステム OS X( オーエステン ) 以降は BSD UNIX ベースなので MacOS と呼ばれるのは OS 9 まで BSD: Berkeley Software Distribution

33 その他の OS(1) PalmOS PDA( 携帯情報端末 ) 用の OS カーナビ, テレビ, ゲーム機などにも 手書き文字認識の GUI 装備 TRON OS 家電用のリアルタイム OS (The Real-time Operating System Nucleus) 坂村健 ( 東京大学教授 ) が中心となって開発 小学校の教育用パソコンとして導入が決まりかけたが 1989 年米国からの圧力 ( 日米ハイテク摩擦 ) でだめに

34 その他の OS(2) ios アップルが開発 提供する OS iphone, ipod touch, ipad, Apple TV に搭載 Mac OS X を携帯機器に最適化した形で再構成 Andoroid Google によってスマートフォンやタブレットなどの携帯情報端末を主なターゲットとして開発 2015 年現在, スマートフォン用の OS としては, 世界シェア 1 位 無償で誰にでも提供されるオープンソース

35 次回 ( 第 14 回 ) の予定 ネットワーク