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みさえいしなみ
5 years ago
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1 スポーツ基本法の制定文教科学委員会調査室ごとう後藤まさたか雅貴なでしこジャパン ( サッカー日本女子代表 ) が FIFA 女子ワールドカップドイツ2011において優勝に輝き日本中が大いに沸いたこの勝利は東日本大震災からの復興半ばにある我が国にとって久々に明るい話題をもたらしてくれたなでしこジャパンに対して政府は国民栄誉賞を贈ることを決定しこの偉業をたたえることとなった菅総理は 8 月 18 日の表彰式において東日本大震災の災禍から立ち上がらんとする被災者とすべての国民に対し困難に立ち向かう勇気とさわやかな感動を与えた 1 とその理由を述べている東日本大震災への対応に追われた第 177 回国会にあってスポーツ政策に関する法律であるスポーツ振興法 ( 昭和 36 年法律第 141 号以下旧法という ) が実に 50 年ぶりに全面改正され新たにスポーツ基本法 ( 平成 23 年法律第 78 号 ) として制定された旧法制定から50 年を経てスポーツを取り巻く環境や国民の意識は大きく変わりスポーツが個人の趣味遊びの延長という認識から上記の総理発言のようにスポーツが持つ公益性や社会に与える影響は誰もが認めるところとなり個々人の日常生活の中にするみるといった様々な形でスポーツが関わっている社会となったそこで新たに制定されたスポーツ基本法について成立までの経過とその概要について振り返ってみたい 1. スポーツ基本法の検討から成立に至る経過今回のスポーツ基本法制定の動きは今から4 年前の平成 19 年にまで遡る (1) スポーツ振興に関する懇談会の提言平成 19 年 8 月当時の遠藤文部科学副大臣の私的諮問機関であるスポーツ振興に関する懇談会はスポーツ立国ニッポン~ 国家戦略としてのトップスポーツ~ 2 と題した報告を提言したこの報告はオリンピックを始めとする国際大会における我が国のメダル数が国力に応じたものとなっていないと指摘するなどトップスポーツの育成に主眼を置いたものであったが今日の議論につながる新スポーツ振興法の制定スポーツ省 ( 庁 ) の設置スポーツ予算を文化庁と同等の1,000 億円とすること等が提言されたこのような提言が発表された背景には前年の平成 18(2006) 年に開催されたトリ 3 ノ冬季五輪において日本選手の獲得メダルが金メダル1 個に終わり長野冬季五輪以来冬季種目の新しい選手が育っていなかったことへの危機感があったといわれる 1 首相官邸 HP < 2 遠藤利明衆議院議員の HP に概要が掲載されている < 年長野五輪は金 5 銀 1 銅 4 続く 2002 年ソルトレーク五輪は銀 1 銅 1 という成績であった ( 参議院事務局企画調整室編集発行 ) 49

2 (2) 超党派スポーツ議員連盟における議論スポーツ振興に関する懇談会の提言や同時期に東京都が進めていた2016 年東京オリンピック招致活動が契機となり平成 19 年平成 19 年 8 月主な経過スポーツ振興に関する懇談会スポーツ立国ニッポン~ 国家戦略としてのトップスポーツ~ において新スポーツ振興法の制定を提言 11 月超党派スポーツ議員連盟の下に新 11 月超党派スポーツ議員連盟が新スポーツ振興スポーツ振興法制定プロジェクトチーム法制定プロジェクトチームを設置 ( 以降 15 回にわたり審議 ) が発足した 12 月教育再生会議第三次報告においてスポーツ振興に関する国の責務の明確化等を提言本プロジェクトチームは専門家関係平成 20 年 4 月新スポーツ振興法制定プロジェクトチームに団体からのヒアリングを行うなどして法有識者からなるアドバイザリーボードを設置 ( 以降 9 回にわたり審議 ) 案の作成を進めていくこととなったま平成 21 年 4 月アドバイザリーボード答申 ( 中間まとめ ) においてスポーツ振興法を全面改定してスた議員同士の議論とは別に有識者からポーツ基本法 ( 仮 ) を制定することを提言なるアドバイザリーボードを設置し専門 5 月教育再生懇談会第四次報告においてスポーツに関する基本法の制定を提言的な立場からの議論も行われた設置から超党派スポーツ議員連盟が新スポーツ振興法制定プロジェクトチームのスポーツ基本法 1 年を経た平成 21 年 4 月アドバイザリーに関する論点整理を了承ボードは振興法の改正よりもスポーツの基本理念をうたった基本法を制定すべきであるとの答申を行ったこれによ 7 月平成 22 年 5 月自民党公明党が自公案 ( スポーツ基本法案 ( 第 171 回国会衆第 52 号 )) を提出 ( 衆議院解散により廃案 ) 民主党スポーツ議員連盟の発足り新スポーツ振興法の制定からスポ 6 月自民党公明党が自公案 ( スポーツ基本法案 ( 第 174 回国会衆第 29 号 )) を提出ーツ基本法制定へと流れが変わり 4 8 月文部科学省スポーツ立国戦略において議論スポーツ基本法の整備を提言が進むこととなった平成 23 年民主党スポーツ議員連盟が民主案を公表 ( 国 (3) 教育再生会議等における提言 5 月 16 日会提出には至らず ) 同月 17 日超党派スポーツ議員連盟スポーツ基本法制定プロジェクトチームが発足 ( 以降自公一方議員連盟等における議論と並行し案と民主案を基に3 回にわたり審議 ) て政府の教育再生会議等においてもス同月 27 日超党派スポーツ議員連盟がスポーツ基本法制定プロジェクトチームの超党派案を了承ポーツ政策に関し検討が行われた同月 31 日衆議院 8 会派による超党派案 ( スポーツ基本法案 ( 第 177 回国会衆第 11 号 )) の提出安倍内閣当時に設置された教育再生会議 6 月 1 日継続審議となっていた自公案 ( スポーツ基本の第三次報告においてはスポーツ振興が国の責務であることを法的に明確にするこ法案 ( 第 174 回国会衆第 29 号 )) が撤回同月 9 日衆議院本会議において全会一致で可決参議院提出同月 17 日参議院本会議において全会一致で可決成立とが提言されたさらにこの教育再生会同月 24 日スポーツ基本法 ( 平成 23 年法律第 78 号 ) 公布議を引き継いだ教育再生懇談会の第四次報 ( 出所 ) 文部科学省資料に一部加筆告においてはスポーツ振興法を改正してスポーツ基本法を制定することやスポーツ庁の設置国策として競技力の向上やスポーツの振興を強化すること等より具体的な事項が提言されるに至った (4) スポーツ基本法に関する論点整理アドバイザリーボードの答申を受けるなどして法案作成作業を進めていた新スポーツ振興法制定プロジェクトチームは平成 21 年 5 月スポーツ基本法に関する論点整理 5 を 4 佐野慎輔日本スポーツの現状とスポーツ基本法スポーツ白書 ( 笹川スポーツ財団平成 21 年 )211 頁 5 文部科学省 HP< 50

3 まとめこれが超党派スポーツ議員連盟総会において了承されたこの中では 1 新たに前文を置くこととしその中でスポーツの価値本質的意義を踏まえスポーツに関する施策を国家戦略として位置付けスポーツを国の政策の重要課題として推進すること 2 基本的理念国の責務等と基本的施策を定めること 3スポーツに関する施策を実施するために必要な法制上財政上又は税制上の措置を講じることを規定すること等が盛り込まれたしかし議論がまとまらなかった点もありスポーツの定義に関してはスポーツをより広く捉えるべきとの意見や国際的な動きを反映すべきとの意見スポーツの概念を限定的に固定してしまう可能性があるので敢えて規定しない方がよいとの意見が併記されたまたスポーツ庁の設置に関しても一体的効果的にスポーツに関する施策を推進するために国の関係行政機関が連携する仕組みを検討することとされ一定の含みを残すにとどまった (5) 自公案の提出上記の論点整理を受け超党派スポーツ議員連盟によって法案の提出が模索されたが不調に終わることとなったこれはスポーツの定義や基本的人権としてのスポーツ権の明記に関して与野党の主張に隔たりがあったことに加え自民党は五輪などで優秀な成績を収めれば選手へのあこがれが高まり地域スポーツの普及も進むという考えに対し民主党は国民が身近なところでスポーツに触れる機会を充実していくすそ野を拡大すれば結果的にトップアスリートも育ちメダルにたどりつく 6 と主張しスポーツ政策をめぐる考え方に根本的な対立があり両者の溝が埋まらなかったためである与野党の溝が埋まらないまま自民党及び公明党は第 171 回国会の平成 21 年 7 月 14 日両党の主張を盛り込んだ自公案の提出に踏み切ったが同月 21 日の衆議院解散により審議未了のまま廃案となったその後の解散総選挙政権交代を経て翌 22 年 6 月の第 174 回国会には廃案となった自公案に一部修正を加え再び自公案としてスポーツ基本法案 ( 森喜朗君外 5 名提出 )( 衆第 29 号 ) が提出され以降第 177 回国会まで継続審査となった (6) スポーツ立国戦略政権が交代し与野党の立場が変わった後はスポーツ基本法に関する議論は超党派スポーツ議員連盟から与野党それぞれの党内で続くこととなったこのような状況の中民主党政権下の文部科学省は今後のスポーツ政策の基本的方向性を示すスポーツ立国戦略 ( 平成 22 年 8 月 26 日文部科学大臣決定 ) を策定した 7 本戦略では我が国の新たなスポーツ文化の確立を目指し今後おおむね10 年間で実施すべき重点戦略政策目標重点的に実施すべき施策や体制整備の在り方などが示されたそして5つの重点戦略として 1ライフステージに応じたスポーツ機会の創造 2 世界で競い合うトップアスリートの育成強化 3スポーツ界の連携協働による好循環の創出 4スポーツ界における透明性や公平公正性の向上 5 社会全体でスポーツ 6 東京新聞 ( 平 ) 7 文部科学省 HP< 51

4 を支える基盤の整備が掲げられたこれらは従来からの民主党の主張を取り入れた内容であったが 3の好循環の考え方は先の民主党と自民党の溝を埋めることとなっていくこの好循環について鈴木文部科学副大臣はそのトップスポーツで活躍された方々がセカンドキャリアとしてこの草の根スポーツのリーダーとして頑張っていただいてそして草の根が広くなるとそしてまた多くの若者たちがスポーツを目指しそしてそれを応援するという好循環をつくっていきたい 8 これまでトップスポーツの振興なのかあるいはローカルスポーツの振興なのか二項対立的な議論が続いておりましたこれは非常に不幸なことでありまして当然頂点を上げれば裾野が広がるし裾野が広がれば頂点も上がるとこういう意味で好循環をつくっていきたい 9 と説明している (7) 民主案の公表超党派スポーツ議員連盟による議員立法の不調と政権交代を受け平成 22 年 5 月民主党は独自にスポーツ議員連盟を組織しスポーツ基本法の制定などスポーツ政策の推進を図ることとなった本議員連盟は改めて専門家関係団体からのヒアリング等を行い 1 年後の翌 23 年 5 月 16 日に民主党としてのスポーツ基本法案 ( 民主案 ) を取りまとめたこの民主案はスポーツ基本法の早期成立を図るため野党の賛同を得やすいものとするよう自公案を基に民主党の考え方を反映させる形で起案された主な相違点としては 1スポーツ権について記述したこと 2 競技スポーツよりも地域スポーツを重視した記述ぶりとし双方がお互いに支え合う好循環の促進が重要であるとしたこと 3プロスポーツについてスポーツ選手にプロスポーツ選手が含まれることを明確にしたこと 4 地域スポーツクラブを条文上明記したこと等が挙げられる (8) 超党派案の取りまとめ民主案の公表を受けスポーツ基本法案の超党派での提出を目指し再び超党派スポーツ議員連盟に議論が移ることとなった民主案公表の翌日 5 月 17 日から超党派スポーツ議員連盟の下に民主党自民党公明党共産党社民党みんなの党国民新党及び新党改革から各議員が参加したスポーツ基本法制定プロジェクトチームが設置され 10 民主党から奥村衆議院議員が自民党から遠藤衆議院議員がそれぞれ共同座長として就任した本プロジェクトチームにおいてはスポーツ基本法案を第 177 回国会中に成立させるべく集中的に議論が行われた第 1 回会合 (5 月 17 日 ) では民主案及び自公案を折衷すべく検討し第 2 回会合 ( 同月 20 日 ) ではアドバイザリーボードからの意見聴取を行ったそして本プロジェクトチームの発足からわずか1 週間後の第 3 回会合 ( 同月 24 日 ) では超党派案について大筋で合意に至りその後の5 月 27 日の超党派スポーツ議員連盟総会において超党派案は了承され成案を得ることとなった (9) 超党派案の提出成立以上のような経過を経てついに5 月 31 日衆議院 8 会派 11 の超党派案であるスポーツ 8 第 174 回国会参議院文教科学委員会会議録第 2 号 3 頁 ( 平 ) 9 第 174 回国会参議院文教科学委員会会議録第 10 号 18 頁 ( 平 ) 10 たちあがれ日本は超党派スポーツ議員連盟に対応を一任した 11 みんなの党は提出会派に加わらなかった 52

5 基本法案 ( 奥村展三君外 16 名提出 )( 衆第 11 号 ) が衆議院において提出された超党派案は翌 6 月 1 日に衆議院文部科学委員会において全会一致で可決され同月 9 日には衆議院本会議において全会一致で可決され参議院に提出されたなお第 174 回国会から継続していた自公案は超党派案の提出を受け委員会採決前に撤回されている衆議院文部科学委員会では超党派案を議題として質疑は行われなかったものの同案の提出を前提として5 月 25 日にスポーツ施策等の諸課題として対政府質疑を行い同月 27 日にはスポーツ関係者を参考人招致し意見聴取質疑を行っているこれらの質疑の中ではスポーツ庁設置の可能性好循環について政府の見解スポーツ振興くじ (toto) の現状総合型地域スポーツクラブの設置状況等について議論が交わされた 12 参議院では超党派案は6 月 14 日に文教科学委員会に付託された文教科学委員会は同月 16 日にスポーツの基本施策に関して対政府質疑を行った後に超党派案の趣旨説明質疑を行い全会一致で可決した翌 17 日には本会議において全会一致で可決され成立した文教科学委員会の質疑においてはトップアスリート育成によるスポーツ立国戦略障害者スポーツにおける支援策スポーツ予算拡充スポーツ外交の重要性等について議論が交わされたスポーツ基本法の概要以上のような経過を経て成立したスポーツ基本法は旧法を全面改正する形をとった旧法は昭和 36 年に議員立法として成立しスポーツ振興に必要な関連領域を網羅した法律であるまた制定当時の背景として東京オリンピックを開催するに当たってその根拠法令としての性格も併せ持っていた旧法とスポーツ基本法を比較すると 50 年という年月の経過を感じさせられる点も多い (1) 前文スポーツ基本法には前文が置かれることとなった前文とは条文本体の前に置かれその法令の制定の趣旨理念目的などを強調して述べた文章 14 であるスポーツ基本法の前文はスポーツは世界共通の人類の文化であると始まりスポーツの意義や効果スポーツが果たす役割等を宣言したものとなったスポーツ権についてはスポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利であり全ての国民がその自発性の下に各々の関心適性等に応じて安全かつ公正な環境の下で日常的にスポーツに親しみスポーツを楽しみ又はスポーツを支える活動に参画することのできる機会が確保されなければならないと規定された旧法にはこの法律の運用に当たつてはスポーツをすることを国民に強制し又はスポーツを前 12 第 177 回国会衆議院文部科学委員会議録第 12 号 ( 平 ) 及び第 177 回国会衆議院文部科学委員会議録第 13 号 ( 平 ) 13 第 177 回国会参議院文教科学委員会会議録第 10 号 ( 平 ) 14 小沼敦前文とその改正立法と調査第 249 号 ( 平 17.7) 前文は日本国憲法以外にも教育基本法食育基本法文化学術振興基本法等に置かれている 53

競技水準の向上に資する諸施策相互の有機的な連携効果的な実施 7 国際相互理解の増進国際平和への寄与 8スポーツに対する国民の幅広い理解支援 3 スポーツ基本計画等国のスポーツ基本計画地方公共団体の地方スポーツ推進計画について定める 4 基本的施策施策 2 地域スポーツの推進競技スポーツの推進施策 3 1 地域におけるスポーツの振興のための事業への支援等 2

6 スポーツ基本法の概要概要 1 前文スポーツの意義効果等について定めるとともにスポーツ立国を目指し国家戦略としてスポーツ政策を推進することを明記する地域スポーツスポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは全ての人々の権利!! 競技スポーツ 2 総則スポーツに関する基本理念国地方公共団体スポーツ団体の責務努力等を定める < 基本理念 > 1 自主的自律的なスポーツ活動 2 学校スポーツ団体家庭地域の相互連携 3 人々の交流促進地域間の交流の基盤整備 4スポーツを行う者の心身の健康の保持増進安全の確保 5 障害者が自主的かつ積極的にスポーツを行うことができるようにするための配慮 6 競技水準の向上に資する諸施策相互の有機的な連携効果的な実施 7 国際相互理解の増進国際平和への寄与 8スポーツに対する国民の幅広い理解支援 3 スポーツ基本計画等国のスポーツ基本計画地方公共団体の地方スポーツ推進計画について定める 4 基本的施策施策 2 地域スポーツの推進競技スポーツの推進施策 3 1 地域におけるスポーツの振興のための事業への支援等 2 スポーツ行事の実施奨励 3 体育の日の行事 4 野外活動及びスポーツレクリエーション活動の普及奨励 1 優秀なスポーツ選手の育成等 2 国体全国障害者スポーツ大会 3 国際競技大会の招致又は開催の支援等 4 企業大学等によるスポーツへの支援 5 ドーピング防止活動の推進基礎的条件の整備施策 1 5 スポーツの推進に係る体制の整備スポーツ推進会議スポーツ推進委員等について定める 6 国の補助等国地方公共団体の補助について定めるその他 1 指導者等の養成等 2 スポーツ施設の整備等 3 学校施設の利用 4 スポーツ事故の防止等 5 スポーツ紛争の迅速適正な解決 6 スポーツに関する科学的研究の推進等 7 学校における体育の充実 8 スポーツ産業事業者との連携等 9 スポーツに係る国際的な交流及び貢献の推進 10 顕彰スポーツに関する施策を総合的に推進するためスポーツ庁及びスポーツに関する審議会等の設置等行政組織の在り方について行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加え必要な措置を講ずる ( 出所 ) 超党派スポーツ議員連盟配付資料に一部加筆 54

7 項 15 の目的以外の目的のために利用することがあつてはならないとあり全体主義への警戒感が色濃く表れているが今回前文に規定されたスポーツ権はこれとは全く対照的なものとなったさらに前文においては地域スポーツの意義や理念が詳しく述べられるとともに地域スポーツと競技スポーツの関係として我が国のスポーツの発展を支える好循環の重要性が規定されることとなったなお旧法には存在し 16 超党派スポーツ議員連盟では議論がまとまらなかったスポーツの定義規定については明文化されず前文に代えることとなった (2) 基本理念前文目的 ( 第 1 条 ) に続いて国地方スポーツ団体等幅広くスポーツを推進していくため第 2 条においてスポーツに関する基本理念が8 項目にわたって規定されたこの基本理念は前文にうたわれたものを条文化したものであるが特に障害者については自主的かつ積極的にスポーツができるよう障害の種類及び程度に応じ必要な配慮をしつつ推進されなければならない ( 第 2 条第 5 項 ) と規定されるとともに法律全体を通じてスポーツ選手にプロスポーツの選手が含まれる 17 ことが明確にされオリンピックパラリンピック等において優秀な成績を収めることができるよう推進しなければならないこととされた (3) 国の責務等続く第 3 条においては国は前条の基本理念にのっとりスポーツに関する施策を総合的に策定し及び実施する責務を有すると規定されたこれによって旧法において曖昧であった 18 国とスポーツとの関係は国の責務として明確に位置付けられることとなったさらに第 8 条において政府はスポーツに関する施策を実施するため必要な法制上財政上又は税制上の措置等を講ずるよう規定されたこれらの規定を受け髙木文部科学大臣はスポーツ基本法の理念を踏まえより一層スポーツ予算を獲得すると答弁している 19 地方公共団体についても同様に地域の特性に応じた施策を実施する等の責務が規定されたまた新たに各種の競技団体等のスポーツ団体にも努力を求めることとなりスポーツの推進に主体的に取り組むことや運営の透明性の確保を図ることスポーツに関する紛争の解決に努めることなどが規定された 15 旧法第 1 条第 1 項にはこの法律はスポーツの振興に関する施策の基本を明らかにしもつて国民の心身の健全な発達と明るく豊かな国民生活の形成に寄与することを目的とするとある 16 旧法第 2 条にはスポーツとは運動競技及び身体運動 ( キャンプ活動その他の野外活動を含む ) であつて心身の健全な発達を図るためにされるものをいうとある 17 旧法第 3 条第 2 項にはこの法律に規定するスポーツの振興に関する施策は営利のためのスポーツを振興するためのものではないとありプロスポーツが明確に排除されていた 18 例えば旧法の第 3 条第 1 項にはスポーツをすることができるような諸条件の整備につとめなければならない第 8 条には青少年スポーツの振興に関し特別の配慮をしなければならない第 14 条にはわが国のスポーツの水準を高いものにするため必要な措置を講ずるよう努めなければならないとある 19 第 177 回国会参議院文教科学委員会会議録第 10 号 18 頁 ( 平 ) 55

8 (4) 基本的施策第 3 章には基本的施策が3つの節にわたって列挙された第 1 節はスポーツの推進のための基礎的条件の整備等第 2 節は多様なスポーツ機会の確保のための環境の整備第 3 節は競技水準の向上等となっておりそれぞれの節において具体的な施策が規定されたこれらの多く施策は新設されたが旧法から引き継いだものも現在の実情に即した形に改められた 20 新たに規定されたものとしてはスポーツに関する紛争への取組( 第 15 条 ) 国際的な交流及び貢献の推進 ( 第 19 条 ) 地域スポーツの事業への支援( 第 21 条 ) 優秀なスポーツ選手の育成 ( 第 25 条 ) 国際競技大会の招致開催の支援( 第 27 条 ) 企業スポーツ大学スポーツへの支援 ( 第 28 条 ) ドーピング防止活動の推進( 第 29 条 ) 等がある (5) スポーツ庁の設置についての検討等附則第 2 条には行政組織の在り方の検討としてスポーツ庁及びスポーツに関する審議会等の設置等行政組織の在り方について政府の行政改革の基本方針との整合性に配慮して検討を加えその結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすると規定された現状のスポーツ行政は幾つかの省庁に分かれて所管されており学校体育やオリンピックなどの国際競技大会は文部科学省体力づくり事業や障害者スポーツパラリンピックは厚生労働省スポーツ用品産業やフィットネスクラブなどの健康サービス産業ゴルフなどのレジャー産業は経済産業省総合運動公園などの競技施設の整備は国土交通省という状態にあるこのためスポーツ行政は一貫性を保ちにくく非効率で強力な推進体制が取れないという指摘が従来からあった今回の議論の過程においてもスポーツ庁の設置は中心となった論点ではあったが行政改革の中で新しい組織を作ることは現段階では難しいとして今後検討することとなった再び話をなでしこジャパンに戻したいなでしこジャパンの選手の多くが所属する国内のなでしこリーグにはプロ契約の選手は外国人選手を含めわずか10 名程度であり練習環境や待遇の貧しさは多くのメディアで報道されたとおりである現在は優勝によって注目が集まっているが我々は過去にも一時的なブームとなったスポーツがその後低迷したり立ち行かなくなる事態を何度も見てきたなでしこジャパン国民栄誉賞決定の際の閣僚懇談会において枝野官房長官から髙木文部科学大臣に対して女子スポーツとりわけ女子サッカーに対する支援について指示がなされたが 21 スポーツ基本法に描かれた好循環が機能するかどうかは今後の国やスポーツ団体を始めとする関係者の努力にかかっている女子サッカーはその試金石となるかもしれない 20 旧法から削除されたものとしては旧法第 9 条の職場スポーツの奨励 ( 国及び地方公共団体は勤労者が勤労の余暇を利用して積極的にスポーツをすることができるようにするため職場スポーツの奨励に必要な措置を講ずるよう努めなければならない ) がある 21 8 月 2 日付け官房長官記者発表 < 56

スライド 1

スライド 1 平成 23 年 11 月 30 日 ( 水 ) 資料 1 スポーツツーリズム推進連携組織 (JSTA) 第 1 回勉強会スポーツ基本法について文部科学省スポーツ青少年局スポーツ青少年企画課課長補佐村尾崇スポーツ振興法の成果と課題スポーツ振興法は戦後の生活水準の向上と産業の近代化による余暇の増大などによるスポーツに対する国民の関心の高まりや欲求の拡大を背景に昭和 39(1964) 年の東京オリンピック開催を契機として