第 1 章 給食の概念 三好恵子 特定給食施設の目的 役割を理解する また, 対象者の違いによりさまざまな特定給食施設があることを理解する 給食を運営するうえでの管理栄養士 栄養士の役割や位置づけについて理解する Contents 1 特定給食施設の意義 役割 2 2 給食の種類と特徴 2 3 給食

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1 第 1 章 給食の概念 三好恵子 特定給食施設の目的 役割を理解する また, 対象者の違いによりさまざまな特定給食施設があることを理解する 給食を運営するうえでの管理栄養士 栄養士の役割や位置づけについて理解する Contents 1 特定給食施設の意義 役割 2 2 給食の種類と特徴 2 3 給食の関連法規と行政指導 5 4 管理栄養士 栄養士 12

2 2 第1 章給食の概1 特定給食施設の意義 役割 外食産業市場規模の統計資料 (( 公財 ) 食の安全 安心財団附属機関外食産業総合調査研究センター ) では, 給食主体部門を, 食堂 レストラン 宿泊施念設などの営業給食と, 学校給食 事業所給食 病院給食 保育所給食からなる集団給食として位置づけている これに対して, 特定給食施設は, 健康増進法健康増進法平成 14 年 8 月 2 日法律第 20 条 1 項, 健康増進法施行規則第 5 条に次のように定められている 第 103 号, 最終改正 : 特定かつ多数の者に対して継続的に食事を供給する施設のうち栄養管理が平成 26 年 6 月 13 日法律第 69 号必要なものとして厚生労働省令で定めるものをいう 健康増進法施行規則ここでいう厚生労働省令で定める施設とは, 継続的に 1 回 100 食以上また平成 15 年 4 月 30 日厚は 1 日 250 食以上の食事を供給する施設 である 生労働省令第 86 号, 最終改正 : 平成 21 年 8 月特定給食施設は, 内食 中食とは区別される外食の枠の中に位置づけられる 28 日厚生労働省令第 138 号一方, 健康増進法および同施行規則の中で, 特定かつ多数人, 継続的, 栄養管理 のキーワードで定義づけられ, 栄養管理の基準, 特定給食施設の届け出, 行政による指導, 管理栄養士配置の義務規定, 管理栄養士 栄養士配置の努力規定が定められている (p.27, 表 3.1 参照 ) さらに, 健康増進法の規定に基づき, 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針を定めた 健康日本 21( 第二次 ) ( 平成 25(2013) ~ 34(2022) 年度 ) においても, 生活習慣病の予防, 社会生活機能の維持 向上ならびに生活の質の向上のため, 社会環境の整備のひとつとして, 利用者に応じた食事の計画, 調理および栄養の評価, 改善を実施している特定給食施設の割合の増加を目標に掲げている 具体的数値目標は, 平成 34(2022) 年度を目途として管理栄養士 栄養士を配置している施設の割合を 80% としている 特定給食施設は, 栄養の機能と栄養情報伝達ツールの機能を兼ねそなえた食事の提供により, 国民の健康の保持増進, 疾病の予防 回復,QOL 水準の向上に寄与する役割を担っている 2 給食の種類と特徴 * 給食の提供を受ける人を示す用語として, 本書では 利用者 を用いる ( 必要に応じて一部 対象者 ) 特定給食施設とライフステージの関係を図 1.1, 表 1.1 (p.4) に示した 国民の多くが, それぞれのライフステージにおいて, ある期間継続して特定給食施設を利用している このことは, わが国における特定給食施設の意義 役割の大きさを表しているといえよう 特定給食施設は, 対象者が異なると食事内容が異なるばかりでなく, 給食の目的や関連省庁, 関連法規, 運営の主体, 運営上の特徴も異なる (p.251, 第 18 章参照 ) 給食施設により, 食事に求められる栄養やおいしさの機能, 食事とともに利用者 * に届けられる情報が異なり, 生産を行う場所の条件が異なるのである

3 給食3 児童福祉施設 学校 保育所 乳児院 幼稚園小学校中学校 特別支援学校 福祉型障害児入所施設, 医療型障害児入所施設, 情緒障害児短期治療施設, 児童養護施設 児童自立支援施設 夜間高校 2 給食の種類と特徴事業所 幼稚部小学部中学部高等部 学生食堂 オフィス, 工場, 附属施設 ( 寮 研修所 合宿所 ) 自衛隊 陸上自衛隊, 航空自衛隊, 海上自衛隊 船舶 障害者支援施設 保護施設 生活介護, 自立訓練, 就労支援, 施設入所支援 救護施設, 更生施設, 授産施設 婦人保護施設 少年鑑別所 矯正施設 少年院 拘置所, 刑務所, 婦人補導院 母子福祉施設 母子福祉センター, 母子休養ホーム, 児童福祉施設 老人福祉施設 養護老人ホーム, 特別養護老人ホーム 軽費老人ホーム 介護保険施設 介護老人福祉施設, 介護老人保健施設, 介護療養型医療施設 病院 精神病院, 伝染病院, 結核療養所, 一般病院 ( 小児病院, 産院, 成人病センター, 病院 ) 年齢 ( 歳 ) ライフステージ学童期思春期成人期老年期乳児期幼児期青年期図 1.1 ライフステージと給食資料 ) 女子栄養大学給食管理研究室

4 給食の概4 第1 章表 1.1 代表的特定給食施設の特徴 施設の種類 * 児童福祉施設 学校 事業所 高齢者 介護施設 病院 施設の特徴 児童の福祉に関する事業を行う施設 人格の完成を目指し, 平和で民主的な国家および社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成 ( 教育基本法 ) を目的として教育を行う 企業の工場, 事務所など 経済活動による社会貢献を行っている 加齢に伴って身体上または精神上の障害があるために要介護状態となった者に, 日常生活の支援, 保健医療, 福祉サービスを行う施設 20 人以上の患者を入院させる施設を有する, 傷病者のために医業を行う場所 利用者の特徴 満 18 歳に満たない児童 年齢により乳児, 幼児, 少年に分けられる 成長 発達の著しい時期である 心身に課題をもつ児童を対象とする施設もある 義務教育諸学校の児童および生徒 また, 夜間部を置く高等学校の生徒 心身の成育 発達の著しい時期である 勤労者 性別, 年齢, 身体活動レベルの幅が広い 基本的に健康人であるが, 生活習慣病有病者も存在する 身体機能低下, 摂食 嚥下機能低下, 低栄養など, 多くの利用者が課題をもつと同時に, 個人差が大きい 傷病者 栄養状態, 身体状況, 生活習慣など, 取り組むべき栄養管理上の課題は個々人により異なる 給食の目的 子どもの健やかな発育 発達を目指した食事の提供と 食を営む力 の基礎を培う 食育 の実践の場 児童および生徒の心身の健全な発達に資し, 食に関する正しい理解と適切な判断力を養う 健康増進, 生活習慣病予防, 生活習慣の改善 健康の維持, 健康状態の向上,QOL の向上を目的とすると同時に, 生活の一部である 疾病回復の支援 特別治療食は疾病治療の直接手段である 給食費の制度 国庫, 都道府県の負担が児童福祉法により定められている 学校給食の実施に必要な施設および設備に要する経費, 学校給食の運営に要する経費は, 設置者の負担とする 定まった制度はない 経営形態, 企業の負担割合により利用者の負担額が異なる 介護保険施設は介護保険法による サービスは, 利用者と施設の契約による 利用者の負担額は, 食材費と調理費相当分として, 基準費用額 1,380 円となっている 入院時食事療養制度により保健医療機関に算定される 患者の標準自己負担額は 260 円 / 食 運営の特徴 保育所では, 給食の質の担保を条件に, 調理業務の委託が認められているが, 施設内給食が原則である 教育委員会の指導 助言により, 当該学校の校長が管理し, 職員を指揮 監督して運営される 経営形態は, 委託化が進んでいる 供食方法は, 食缶配食で教諭の指導により児童生徒が盛りつけ配膳を行う 調理方式は, 単独調理場方式, 共同調理場方式がある ランチルームを設置している学校もある 経営形態は委託が多い 昼食提供が中心であるが, 従業員の勤務体制により朝 夕 夜勤食を提供する施設もある 供食方法は, カウンターサービスによるセルフサービスが多い 経営形態は, 委託化が進んでいる 介護保険施設の介護サービスは, 施設と利用者の契約による 利用者にとって施設は生活の場であり, 食事も生活の一部として位置づけられる 供食は, フロア ユニット単位で, フルサービスにより行われる 経営形態は, 委託化が進んでいる 入院時食事療養制度に基づく給食運営が求められる 食札に基づき配食 配膳が行われ, 方法として中央配膳, 病棟配膳がある 病院外の調理施設で調理を行う病院もある 食事の特徴 成長発達が著しい時期であるため, 成長や摂取量を定期的に確認して食事計画に反映させる 発達段階や摂食機能に対する形態の対応が必要である アレルギー児への対応が求められる 行事食は, 食育と関連させて提供している 文部科学省が示す 学校給食摂取基準 を, 個々の児童生徒の健康および身体活動の実態等を把握したうえで弾力的に運用する 主食 おかず 牛乳の組み合わせが基本 給食は生きた教材として位置づけられ, 行事食, バイキング給食, 地産地消などに取り組んでいる 定食方式 ( 単一定食, 複数定食 ), カフェテリア方式, 弁当方式など 喫茶を行う施設もある 利用機会増加のためのイベントメニュー, テーマメニューの開発が行われる 低栄養のハイリスクの対象者に対して個人対応が求められる 摂食 嚥下機能に合わせて, 形態変化が多様になる 施設内の行事と関連させた食事提供が行われる 療養食も提供される 特別な制限のない一般治療食と, 疾病治療の直接手段となる特別食に分けられる また, 形態別 ( 常食, 軟食, 流動食 ) の対応も必要である 禁食などの個人対応が多い 行事食の取り組みなども行われている 注 ) * : 児童福祉施設には, 助産施設, 乳児院, 母子生活支援施設, 保育所, 児童厚生施設, 児童養護施設, 障害児入所施設, 児童発達支援センター, 情緒障害児短期治療施設, 児童自立支援施設, 児童家庭支援センターがある

5 5 3 給食の関連法規と行政指導 1 給食関係法規 法規には, 法律, 政令 ( 施行令 ), 省令 ( 施行規則 ), 告示, 通知 通達などの法令と, 地方自治体が法律や政令を実施するために規定する都道府県規則 条例などがある これらは, どこで制定されたかによって名称が異なる 給食が関係する法規には, すべての給食施設に共通するものと, 行政機構の中での位置づけにより, 対象者の異なる給食の種類ごとに出されているものがある ( 表 1.2 ) すべての給食施設に共通する法規としては, 特定給食施設の目的を達成するために重要な 栄養士法, 健康増進法, 食品衛生法 などがある また, 給食を生産する施設を労働環境として捉えれば, 調理従事者の労働安全衛生に関する法規も重要である (p.114 参照 ) 給食の運営を適切に行うためには, 法令の遵守が重要であるとともに, 時代の要請, 社会環境の変化により改定が行われるため, 常に情報を更新していくことも必要である ( コラム栄養関係法規の調べ方,p.16 参照 ) 2 行政指導 給食施設は, 施設の種類により厚生労働省, 文部科学省, 法務省などの所管法令に基づき, 適正に運営しなければならないのと同時に, 行政による指導を受ける 特定給食施設に共通するのが, 食品衛生法や健康増進法による行政指導である 健康増進法による特定給食施設への支援 指導の流れを下記に示す ( 図 1.2, 図 1.3 ) 法律国会の議決によって成立するもの 政令 ( 施行令 ) 内閣で制定する命令で法律の施行手続きや, 法律の委任事項を定めるもの 省令 ( 施行規則 ) 法律の委任事項や法律を施行するために必要な事項を関係各省の大臣が制定するもの 告示国家 地方公共団体などが広く一般に向けて行う通知 栄養士法昭和 22 年 12 月 29 日法律第 245 号, 最終改正 : 平成 19 年 6 月 27 日法律第 96 号 食品衛生法昭和 22 年 12 月 24 日法律第 233 号, 最終改正平成 26 年 6 月 13 日法律第 69 号 1 国の法律 省令 通知に基づき, 自治体では条例 細則 ( 自治体規則 ), 要綱, 通知を作成 21の規定に基づき, 特定給食施設は, 給食開始届 栄養管理報告書等を提出 ( 表 1.3, 表 1.4 ) 3 給食開始届 栄養管理報告書等を受け, 自治体は必置指定通知書を発行 さらに給食開始届 栄養管理報告書等を踏まえて施設への指導 助言を行う 指導 助言に従わない場合は立入検査による勧告 命令 罰則がある

6 給食の概6 第1 章念食品衛生法 表 1.2 給食の関連法規法律 全般 栄養士法 健康増進法 労働基準法労働安全衛生法調理師法事業所給食学校給食学校給食法学校教育法病院医療法健康保険法 政令 ( 施行令 ), 省令 ( 施行規則 ), その他のガイドライン等健康増進法施行規則, 健康増進法の施行について食品衛生法施行規則, 大規模食中毒対策等について, 食品衛生法施行規則の一部を改正する省令の施行について, 食品衛生法施行規則等の一部改正について労働安全衛生規則事業附属寄宿舎規程, 労働安全衛生規則学校給食法施行令, 学校給食法施行規則, 学校給食実施基準, 学校給食衛生管理基準医療法施行規則, 病院給食栄養士業務要領, 入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の実施上の留意事項について, 入院時食事療養及び入院時生活療養の食事の提供たる療養の規準等に係る届出に関する手続きの取扱いについて, 診療報酬の算定方法, 医療スタッフの恊働 連携によるチーム医療の推進について, 医療法の一部を改正する法律の一部の施行について, 病院, 診療所等の業務委託について障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害者支援施設の設備及び運営に関する基準特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準, 養護老人ホームの設備及び運営に関する基準, 指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準, 指定介護老人福祉施設の人員, 設備及び運営に関する基準, 介護老人保健施設の人員, 施設及び設備並びに運営に関する基準, 指定介護療養型医療施設の人員, 設備及び運営に関する基準, 軽費老人ホームの設備及び運営に関する基準 児童福祉施設 児童福祉法 児童福祉施設最低基準, 児童福祉施設の設備及び運営に関する基準, 児童福祉施設における 食事摂取基準 を活用した食事計画について, 保育所における調理業務の委託について, 児童福祉施設における食事の提供に関する援助及び指導について, 児童福祉施設における食事の提供ガイド 国 都道府県 地域 対象 社会福祉施設社会福祉法障害者総合支援法高齢者 介護保険法介護施設老人福祉法高齢者の医療の確保に関する法律医療法 厚生労働省医政局指導課栄養指導員特定給食施設国立病院課保健所食品衛生監視員衛生主管部局その他の給食施設健康局がん対策 環境衛生監視員 健康増進課 医薬食品局 食品安全部 社会 援護局老健局労働基準局 安全衛生部 民生主管部局労働基準局 福祉事務所労働基準監督署 福祉施設事業所給食 文部科学省 スポーツ 青少年局 学校健康教育課 学校給食 法務省 矯正局 矯正施設 防衛省 人事教育局 各部隊給食 国土交通省 海事局 船舶の給食 栄養行政体系 図 1.2 資料 ) 鈴木久乃, 太田和枝, 殿塚婦美子編著 : 給食管理,p.18(2012) 第一出版

7 7 特定給食施設が適切な栄養管理を実施するための通常の支援 指導の流れ アセスメント 対地域全体 特定給食施設支援 指導の目的 法的位置づけの明確化 特定給食施設の把握, 指定通知書の交付 対個々の給食施設 共通ツール 設置届, 変更届, 休止 廃止届 事業所給食施設 届出提出 ( 法第 20 条 ) 3 給食の関連法規と行政指導自治体 ( 保健所 ) 計画 実施 評価 特定給食施設の栄養管理の実態把握 自治体 ( 保健所 ) の特定給食施設支援の事業計画 適切な栄養管理の支援 指導 助言 ( 法第 18 条, 第 22 条 ) 研修会, グループ育成等 地域全体の評価 個々の施設の課題と原因の把握 個々の施設の支援計画 施設自らが課題を発見できるような支援 個々の施設の評価 栄養管理報告書 栄養管理状況確認票 栄養管理報告書 栄養管理報告書の作成 栄養管理の実施状況を自己点検 施設側 委託側での検討, 改善計画作成 ( 給食会議などで ) 適切な栄養管理の実施 ( 法第 21 条 ) 改善状況を評価 遵守すべき栄養管理項目に問題があった場合の行政指導 立入り検査等 ( 法第 24 条第 1 項 ) 改善しない場合, 勧告 ( 法第 23 条第 1 項 ) 勧告に対して措置しない場合, 命令 ( 法第 23 条第 2 項 ) 命令に違反した場合, 罰則 ( 法第 37 条 ) 自治体の栄養管理の水準向上のための特定給食施設の支援 指導の流れ 図 1.3 注 ) 法 : 健康増進法資料 ) 石田裕美, 村山伸子, 井上浩一, 他 : 特定給食施設の栄養管理に関する自治体の支援 指導システム構築ガイドブック, 栄養疫学プログラム : 平成 年度厚生労働科学補助金健康科学総合研究事業, 特定給食施設における栄養管理の実施状況とその基準に関する研究,p.10(2006)

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