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1 コアウイルス病 [American Animal Hospital Association (AAHA)] 感染すると重篤になり死亡する危険性 が高い感染症 感染しても治療すれば死亡することは 少ないが 病原体を排泄して周囲に迷 惑をかける感染症 人にも危害を及ぼす公衆衛生上重要な 感染症

2 犬のコアウイルス病 狂犬病 犬ジステンパ- 犬伝染性肝炎 犬パルボウイルス感染症( 病 ) 猫のコアウイルス病 狂犬病 猫ウイルス性鼻気管炎 猫汎白血球減少症 猫カリシウイルス病

3 犬を第一宿主とするウイルス ( 犬のウイルス ) 犬ヘルペスウイルス 犬アデノウイルス 1 型 ( 犬伝染性肝炎ウイルス ) 犬アデノウイルス 2 型 ( 犬伝染性喉頭気管炎ウイルス ) 犬パルボウイルス 1 型 ( 犬微小ウイルス ) 犬パルボウイルス 2 型 犬口腔乳頭腫ウイルス ( 犬パピロ - マウイルス ) 犬ジステンパ - ウイルス 犬コロナウイルス 犬ロタウイルス 犬カリシウイルス

4 猫を第一宿主とするウイルス ( 猫のウイルス ) 猫ヘルペスウイルス 1 型 猫汎白血球減少症ウイルス 猫コロナウイルス 猫ロタウイルス 猫カリシウイルス 猫白血病ウイルス 猫免疫不全ウイルス 猫フォ - ミ - ウイルス

5 狂犬病 rabies 米国を含む世界各国で発生 ( 過去 10 年発生がないのは日本, オセアニア 太平洋地域, スカンジナビア各国, 英国など ) 人を含むすべての哺乳類に感染 病原は狂犬病ウイルス (Rhabdoviridae, Lyssavirus) 唾液中に排出されたウイルスが咬傷を介して感染 潜伏期が長い 平均 1 カ月 (1 週間から 1 年 4 カ月 ) 発病すれば 100% 死亡 神経細胞の細胞質内に好酸性封入体 ( ネグリ小体 ) 脳乳剤のマウス脳内接種により病原体分離 血清抗体はほとんど上昇しない

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7 犬ジステンパー Canine distemper きわめて伝染力が強い感染症 弱毒生ワクチンで予防 呼吸器, 消化器, 神経系を含む多様な病状 宿主 : 犬, キツネ, コヨーテ, タヌキ ( イヌ科 ), イタチ, フェレット, ミンク, スカンク ( イタチ科 ) 最近 アライグマ科, ハイエナ科, ネコ科, アザラシ科の動物でも報告されている 病原 : 犬ジステンパーウイルス (Paramyxoviridae, Morbillivirus) 分布 : 世界中に広く分布感染様式 : 直接接触, 患犬の分泌物との接触や飛沫の吸入

8 臨床潜伏期 :1 週間以内から 4 週間症状 : 無症状から重篤なものまで多様 発熱 ( 二峰性 ), 鼻汁, くしゃみ, 結膜炎, 食欲減退, 白血球減少, 発疹 ( 内股部 ), 鼻鏡の角質化やハードパット, 下痢, 痩削, 脳炎など 二次感染により病状が悪化 予後 : 神経症状を示した場合の死亡率は高く, 回復しても予後は不良 予防 : 弱毒生ワクチン, 移行抗体に注意が必要 治療 : 二次感染を防ぐための抗生物質投与

9 病理診断 : リンパ系組織と上皮組織に病変 胸腺の萎縮, リンパ球の減少, 間質性およびカタル性肺炎 エオジン好性の細胞質内および核内封入体 ( 膀胱上皮, 腎盂, グリア細胞, 神経細胞, 気管支上皮など ) 病原診断 : ウイルス分離は困難, 鼻粘膜や結膜の塗抹標本で封入体やウイルス抗原の検出, RT-PCR 血清診断 : ペア血清による中和テスト, 蛍光抗体法, 酵素抗体法

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13 犬パルボウイルス感染症 Canine parvovirus infection 1970 年代に出現した犬のエマージングウイルス病 嘔吐 血便を伴う腸炎 白血球減少を主徴とし 心筋炎や死流産もある 宿主 : 犬科動物 ( 猫も感染する可能性あり ) 病原 : 犬パルボウイルス 2 (Parvoviridae,Parvovirus) 疫学分布 : 世界各地 日本でも発生 感染様式 : 糞便中のウイルスの直接または間接の接触感染

14 臨床潜伏期 :4~7 日症状 : 腸炎型は白血球減少と下痢心筋炎や死流産もある予後 : 幼犬で発症した際に治療しなければ高い死亡率 予防 : 生または不活化ワクチン接種 ( 移行抗体による干渉に注意 ) 発生場所の消毒治療 : 対症療法 ( 輸液と抗生物質投与 ), インターフェロンの投与

15 病理診断 : 小腸漿膜下や粘膜面の充出血, 腸間膜リンパ節の腫大と出血, 胸腺萎縮 小腸粘膜, リンパ系組織, 骨髄の変性壊死と核内封入体形成, 非化膿性心筋炎 病原診断 : ウイルス分離 ( 犬または猫由来培養細胞 ),ELISA によるウイルス抗原検出, PCR 血清診断 : ペア血清による HI 反応や中和テスト 回復期血清中の IgM 抗体の証明

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18 犬微小ウイルス感染症 Mnute virus infection of canines 新生子に重篤な下痢と呼吸器症状を示す パルボウイルス (CPV-2) に比べ病原性は弱い宿主 : 犬病原 : 犬パルボウイルス 1 型 (CPV-1) 犬の微小ウイルス (minute virus of canines) とも呼ばれる 子犬に下痢 心筋炎を起こすパルボウイルス (CPV-2) と区別される 疫学分布 : 世界各地 日本でも発生 感染様式 : 経口ないしは経鼻感染と考えられている 経胎盤感染 ( 妊娠 20~35 日で感染すると胎子感染しやすい )

19 臨床症状 : 子犬に軽度の下痢を起こす 一般に症状は軽微 実験感染子犬では下痢, 呼吸器障害, 肺炎, リンパ節炎が認められるが 10 日以内に回復 予後 : 比較的良い 病原診断 : 臨床的な特色がない CPV-2 感染症と考えられる子犬で CPV-2 が証明されない場合, CPV-1 を考慮する 血清診断 : 中和抗体,HI 抗体を検出する 予防 : ワクチンはないので, 衛生管理が重要 治療 : 特異的な治療法はない

20 犬伝染性肝炎 Infectious canine hepatitis 犬アデノウイルス 1 による肝炎を特徴とする急性疾患. 犬アデノウイルス 2 の弱毒生ワクチンで予防 宿主 : 犬科動物 ( 犬, キツネ, コヨーテ, オオカミなど ) 病原 : 犬アデノウイルス 1 (Adenoviridae, Mastadenovirus) 疫学分布 : 世界各地 日本でも発生 感染様式 : ウイルスを含む尿 糞便 唾液による直接 間接の経口 経鼻感染 回復後も長期にわたりウイルスを尿中に排泄

21 臨床潜伏期 :2~8 日症状 : 多くは無症状甚急性型 ( 突然死型 ) は元気消失, 嘔吐, 腹痛, 下痢などを呈して突然死 急性型は発熱, 水溶性鼻汁, 扁桃腺炎, 腹部圧痛, 嘔吐, 下痢 頭頚部の皮下浮腫とリンパ節腫大 予後 : 死亡率は 10~30% 回復期にブルーアイ ( 角膜混濁を伴うぶどう膜炎 ) が 20% 前後に出現, 多くは自然治癒

22 病理診断 : 肝の巣状壊死, 実質臓器の出血や水腫, 核内封入体 ( 肝クッパー細胞 ) 黄疸の発現は稀 肝癌の原因にはならない 病原診断 : ウイルス分離 ( 犬由来培養細胞 ), 肝や腎の凍結切片や塗抹標本での蛍光抗体法 血清診断 : ペア血清による HI 反応や中和テスト 予防 : ワクチン接種 ( 弱毒化した犬アデノウイルス 2 型 ) 治療 : 対症療法

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25 犬の伝染性気管気管支炎 Canine infections tracheobronchitis 犬のいわゆる かぜ 症状は軽いが集団飼育では急速に伝播 犬伝染性喉頭気管炎 :Infectious canine laryngotracheitis 犬アデノウイルス 2 型の感染 犬パラインフルエンザ感染症 : Canine parainfluenza infection 犬パラインフルエンザウイルスの感染 犬のボルデテラ症 : Bordetellosis in dog Bordetella brochiseptica の感染

26 臨床潜伏期 :3~6 日症状 : 乾いた咳, 鼻汁, 発熱 混合感染や二次感染で重症化 予後 : 幼犬が感受性が高く, 重篤化することもある 病理診断 : カタル性鼻炎, 気管 気管支炎, 重症例では気管支肺炎 犬アデノウイルス 2 型では呼吸器上皮に核内封入体形成 病原診断 : ウイルス分離 (CPE を起こす ) 犬パラインフルエンザは血球吸着現象 蛍光抗体法で確認 ( 分離当初は多核細胞の形成はない ) 犬アデノウイルス 2 型は中和試験 HI 試験で 1 型と鑑別 B. Bronchiseptica は選択培地で分離同定 血清診断 : ペア血清を用いた中和テストまたは HI 反応

27 犬ヘルペスウイルス感染症 Canine herpesvirus infection 新生犬の全身性出血性感染症 新生犬での死亡率は高い 4 週齢以上の犬では呼吸器疾患や生殖器疾患を起こすが, 重篤ではない 宿主 : 犬, 犬科動物病原 : 犬ヘルペスウイルス 1(Alphaherpesvirus) 猫ヘルペスウイルス 1 と抗原交差あり疫学分布 : 世界中に広く分布 日本でも発生 感染様式 : 感染犬の口 鼻 腟分泌物中のウイルスが経口 経鼻 経腟感染 不顕性感染犬での神経節への潜伏感染あり

28 臨床潜伏期 :6~10 日程度症状 :1 カ月齢未満の子犬にのみ重篤な症状 移行抗体のない新生犬に感染すると黄緑色の軟便, 呼吸困難, 腹痛, 食欲不振 予後 : 新生犬での経過は短く, 症状が出て 3~5 日で大半は死亡 4 週齢以上の子犬では軽度の鼻炎, 咽頭炎, 膣炎を起こす程度 予防 : 日本にはワクチンはなし 衛生管理が重要 治療 : 特異的な治療法はない

29 病理診断 : 死亡した犬の腎 肺 肝 腸管などに斑状出血と巣状壊死 壊死巣周辺の細胞に好酸性 A 型核内封入体 病原診断 : 肝 脾 肺 腎の乳剤, 鼻腔, 生殖器のスワブを培養細胞に接種して核内封入体の検出 蛍光抗体法による抗原検出 PCR による遺伝子検出 血清診断 :HI 反応や ELISA による特異抗体の検出

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32 犬コロナウイルス感染症 Canine coronavirus infection 病原体は小腸絨毛上皮に感染し軽度の下痢を起こす 犬パルボウイルスとの混合感染で重篤化する 宿主 : 犬 犬科動物 病原 : 犬コロナウイルス (Canine coronavirus: Coronaviridae Coronavirinae Alphacoronavirus) 疫学 : 日本をはじめ世界各地に広く分布 糞便を介した経口感染で伝搬 不顕性感染をしている動物が多い ウイルスは回復した犬から 2 週間ぐらい排泄される

33 犬のコロナウイルス Coronaviridae Coronavirinae Alphacoronavirus 犬コロナウイルス感染症嘔吐 下痢を起こす 血清学的に豚伝染性胃腸炎ウイルスと類似 Ⅰ 型犬コロナウイルス (Ⅰ 型猫コロナウイルスに近縁 ) Ⅱ 型犬コロナウイルス ( 従来型 )) Betacoronavirus 犬呼吸器コロナウイルス感染症呼吸器症状を起こす 血清学的に牛コロナウイルスと類似

34 臨床 : 症状 : 嘔吐と下痢を主徴とする 不顕性感染が多い 幼犬で症状が重篤となる 下痢は 1~4 日続き 粥状の軟便から水様性の下利便 悪臭が強い 予後 : 比較的良い 病理診断 : 病変は小腸と腸間膜リンパ節に限局し軽度 腸管は薄くなり 絨毛の萎縮と融合が見られる 病原診断 : 電子顕微鏡による糞便中のウイルス粒子検出 ウイルス分離 腸管上皮細胞の抗原検出 血清診断 : 中和試験 HI 試験 予防 治療 : ワクチン接種 抗生物質投与 下痢に対する対処療法としての輸液

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37 犬ウイルス性乳頭腫 Canine viral papillomatosis 犬口腔内にカリフラワ - 状の良性腫瘍を形成する 咬傷により伝搬する 宿主 : 犬 病原 : 犬口腔乳頭腫ウイルス (Canine papillomavirus: Lambdpapillomavirus 属, Papillomaviridae) 疫学分布 : 世界に広く分布 日本でも発生しているが 発生数は少ない 感染様式 : 咬傷により伝搬する 飼育形態の変化や野犬の減少により発生数は少ない

38 臨床症状 : 潜伏期 : 実験感染例では 1~2 ヶ月 症状 : 口腔粘膜に白色の隆起物として出現し 数週間で疣状からカリフラワ - 状の病変となる 予後 :1~5 ヶ月持続し自然治癒する 病理所見 : 特徴のある乳頭腫が形成される 組織像は角化の亢進と細胞の限局性増殖で 腫瘍細胞の粘膜下織への浸潤は観察されない 核内封入体が見られる 病原診断 : 電子顕微鏡により病変組織内のビリオンを観察する 血清診断 : 血清診断法はない 予防 治療 : 発症している犬との接触を避ける 病変が大きいときは外科的に切除する

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