関東東山病害虫研究会報 第61集

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1 132 Annual Report of the Kanto-Tosan Plant Protection Society, No アブラナ科葉菜類の主要害虫の侵入阻止に有効な防虫ネットの目合い 長坂幸吉 光永貴之 後藤千枝 (( 独 ) 農研機構中央農業総合研究センター ) Effective Mesh Size of Insect Proof Screens against Main Insect Pests on Cruciferous Green Vegetables Koukichi NAGASAKA 1, Takayuki MITSUNAGA and Chie GOTO 摘要アブラナ科葉菜類での害虫防除に適切な防虫ネットを選択する際の基本的情報を得るため, 室内の一定条件下で主要害虫 1 種について4 種類のネット目合いに対する通過率を調査した コナガ成虫と幼虫 ( 若齢幼虫, 以下同様 ), ハスモンヨトウ幼虫, ヨトウガ幼虫, カブラハバチ成虫, キスジノミハムシ成虫, ダイコンサルハムシ成虫と幼虫, ナモグリバエ成虫, ダイコンアブラムシ有翅虫, ニセダイコンアブラムシ有翅虫およびモモアカアブラムシ有翅虫について, 目合い1mm,.8mm,.6mm,.4mm の防虫ネットを垂直に設置した場合の24 時間後の通過率を調査した 1mm 目合いで通過を阻止できる害虫は, カブラハバチ成虫, ダイコンサルハムシ成虫, コナガ成虫であり,.8mm 目合いで通過を阻止できるのはナモグリバエ成虫,.6mm 目合いで阻止できるのはキスジノミハムシ成虫, ダイコンアブラムシ有翅虫, ニセダイコンアブラムシ有翅虫であった.4mm 目合いでおおむね阻止できるのはモモアカアブラムシ有翅虫とダイコンサルハムシ幼虫であった 一方, ヨトウガ, ハスモンヨトウ, コナガの若齢幼虫は,.4mm 目合いでも通過した また, コナガサムライコマユバチ, コレマンアブラバチなどの寄生性天敵の通過率を調査したところ,1mm 目合いであれば通過可能であるが,.6mm 目合いでは通過が5% 以下に阻止された これらの情報を基に, アブラナ科葉菜類での防虫ネットの活用法を考察した 圃場への害虫の侵入防止は, 防除の基本の一つであり, その代表的な方法が防虫ネットの利用である ハウスの側窓や天窓での障壁資材としての利用, あるいはネットトンネルなどの被覆資材としての利用が知られており ( 田中,1999), 一般にも普及している技術である 近年では, 新たな防除資材として赤色ネットが市販されるようになり, 侵入防止の重要性が再認識されている ( 例えば, 大矢ら,11; 桑原ら, 13) 防虫ネットは, 一定以上の体サイズの害虫の侵入を一律に阻止するものである 害虫を通過させない目合い ( 格子状の空隙の1 辺の長さ ) は, 例えば, マメハモグリバエでは.64mm, タバココナジラミでは.46mm, ワタアブラムシでは.34mm, ミカンキイロアザミウマでは.19mm とされている (Bethke and Paine, 1991) 目合いが細かいほど害虫の侵入阻止効果が高まるのは明らかだが, 一方で, 通気性の低下による施設内温度の上昇といった栽培環境への影響や作業環境の悪化も指摘されている ( 上遠野 河名,1996; 田中, 1999;Shimazu et al., 8) 実際の栽培場面での適切な防虫ネット目合いとしては, 例えば, コナジラミ類に対しては.4mm( 佐々木 中村,5; 広島県総合技術研究所, 8; 野菜茶業研究所,9), キスジノミハムシに対しては.6mm ~.8mm( 京都府農業総合研究所,1997; 福井, 2; 中野ら,6; 中野,8), ネギアザミウマに対し ては.8mm( 岡崎,4), コナガに対しては1mm( 柴尾ら, 5), ワタヘリクロノメイガとオオタバコガに対しては4 mm( 行徳ら,4) など, 多くの報告がなされている 従来, 農薬散布では防除しきれない害虫を対象として, 害虫ごとにネット目合いの検討がなされてきた しかし, 通常, 各作物上には害虫が複数種存在する 有機栽培や特別栽培, あるいはマイナー作物など農薬使用に制限がある場合には, 慣行栽培に比べてさらに多くの害虫種が発生する こうした栽培法では, 一定サイズ以上の害虫の侵入を阻止する防虫ネットの利点が生かされることになる ( 田中,1999) この防虫ネットの利点は, 慣行栽培においても有効なはずである 主要な害虫の進入を阻止するための防虫ネットの目合いを選択するとともに, 防虫ネットでは防ぎきれない害虫についても認識しておき, 必要に応じて農薬散布や天敵放飼といった補完的対策をあらかじめ計画しておくことが必要と考えられる 圃場には土着天敵も存在するが, 天敵が防虫ネットを通過できない場合には, 防虫ネットが害虫を保護する役目を担ってしまう 一方, ビニールハウスなどで天敵を放飼する場合には, 防虫ネットによって天敵の移出を防ぐことができれば都合が良い このように, 害虫とともに主要な天敵に対する防虫ネットの影響を調査しておくことも防除プログラムを検討する上で重要である ( 例えば,Bethke et al., 1994; 鹿児島県農業試験場,5) 1 Address:NARO Agricultural Research Center, Kannondai 3-1-1, Tsukuba, Ibaraki , Japan 14 年 5 月 16 日受領 14 年 9 月 26 日登載決定

2 関東東山病害虫研究会報第 61 集 (14) 133 アブラナ科の葉菜類では, とりわけ殺虫剤を使用しない場合に, 多種類の害虫が発生する そこで, 本報告では, 無防除状態のコマツナ (Brassica rapa L. var. perviridis) で発生する主要な害虫 ( 河合,1983; 長坂ら,3;9) に対する,4 種類の目合いの防虫ネットによる侵入阻止効果を実験室内の一定の環境条件で調査した 主要な害虫のうち, 明らかにネットを通過しないような体サイズの害虫 ( 例えば, モンシロチョウやタマナギンウワバ, ナガメなどの成虫 ) を除き,1 種の害虫を選択した コナガ Plutella xylostella (Linnaeus) は成虫と幼虫を, ヨトウガ Mamestra brassicae (L.) は幼虫を, ハスモンヨトウ Spodoptera litura(fabricius) は幼虫を, カブラハバチ Athalia rosae ruficornis Jakovlev は成虫を, キスジノミハムシ Phyllotreta striolata(fabricius) は成虫を, ダイコンサルハムシ Phaedon brassicae Baly は成虫と幼虫を, ナモグリバエ Chromatomyia horticola(goureau) は成虫を, ダイコンアブラムシ Brevicoryne brassicae(l.) は有翅虫を, ニセダイコンアブラムシ Lipaphis erysimi (Kaltenbach) は有翅虫を, モモアカアブラムシ Myzus persicae(sulzer) は有翅虫を実験対象とした また, アブラムシ類の寄生蜂 3 種とコナガの寄生蜂 1 種についても,4 種類の目合いの防虫ネットに対する通過率を調査した これら主要な害虫と天敵類に対する防虫ネットによる侵入阻止の効果に関する情報を基に, アブラナ科野菜における害虫群に対する防虫ネットを組み込んだ防除方法について考察した 材料および方法 1. 実験昆虫の飼育実験に用いた昆虫は, 京都府綾部市および美山町 ( 現, 南丹市 ) において採集した 1 種のうち, コナガ, ハスモンヨトウ, カブラハバチ, キスジノミハムシ, ナモグリバエ, ダイコンアブラムシ, ニセダイコンアブラムシ, モモアカアブラムシの8 種は, コマツナを餌として温度 25±2, 光周期 16L8D で飼育した ダイコンサルハムシは, 非休眠のまま世代継続させるために,±2,13L11D の条件で飼育した また, ヨトウガは, 野外で採集した卵, あるいは中央農研における継代飼育系統 (16L8D) から得た卵から幼虫を孵化させて用いた 2. 恒温条件下での害虫のネット通過率 4 種類の目合い (.4mm,.6mm,.8mm,1mm) の防虫ネットについて,25 の恒温室内で24 時間経過後の1 種の害虫の通過率を調査した 防虫ネットがビニールハウスの側窓に展張された場合やネットトンネルとして利用された場合を想定し, 垂直方向にネットが張られた状態の試験容器を用意した ウンカ飼育箱 (W3 D25 H28cm) の背面のネットを除去し, 防虫ネットを間に挟んで,2 個を背中合わせにクリップで固定し, 試験容器とした 防虫ネットは, ポリエチレン糸を格子状に編み込んだもの ( サンサンネット R SL-4,N-3,GN-23,GN-; 日本ワイドクロス株式会社, 柏原 ) を用いた 恒温室内は25±2,45±1% RH に保った 試験容器は蛍光灯ランプ下に置き, 明るさは容器底面で1 ~ 1lx であった 光周期は 16L8D とした コマツナが栽培されているハウスやネットトンネルの外から害虫が侵入することを想定し, 片側の試験容器に26 ~ 115 頭の供試虫を入れ, ネットを隔てたもう片方の試験容器内にポット植えのコマツナ (9cm 育苗ポットに草丈 1 ~ 15cm のコマツナ6~ 1 株 ) を入れた 成虫については羽化後 1 日以内の個体を用い, 幼虫については, ヨトウガ, ハスモンヨトウ, ダイコンサルハムシはふ化後 1 日以内の個体,1 齢期を葉肉内にもぐるコナガ幼虫は2 齢期の個体を用いた 実験開始約 24 時間後に, コマツナ苗の入っている試験容器側に移動した害虫の個体数を計数した 各害虫について4~7 回の反復をとった 3. 恒温条件下での天敵のネット通過率細かな目合いでも通過してしまうチョウ目害虫としてコナガ幼虫を選び, これに対する土着天敵であるコナガサムライコマユバチ Cotesia vestalis (Haliday) について, 防虫ネットの通過率を調査した また, 経験上細かな目合いを通過することが分かっているアブラムシ類については, 市販されている天敵寄生蜂コレマンアブラバチ Aphidius colemani Vierek の他, 土着天敵であるギフアブラバチ Aphidius gifuensis (Ashmead) およびダイコンアブラバチ Diaeretiella rapae (M Intosh) を選択し, 防虫ネットの通過率を調査した 上記と同様の試験容器を用い, 天敵を放虫する容器とは反対側の容器内に, 試験植物および害虫となる昆虫を置いた コナガサムライコマユバチに対してはコナガ幼虫付きのコマツナポットを, コレマンアブラバチに対してはムギクビレアブラムシ付きのオオムギポットを, ギフアブラバチとダイコンアブラバチに対してはモモアカアブラムシ付きのコマツナポットをそれぞれ入れた 調査方法は2と同様とした 4. 統計解析昆虫の体サイズに対して試験容器も防虫ネット面も十分大きいので, 個々の個体がネットを通過する際には, 他個体の影響を受けないものと仮定した また, 餌のある側に入った後に餌のない側に戻ることはないと仮定した そして, 一定条件での試行なので反復によらず一定の反応をすると仮定し, 反復を込みにして, 独立の個体の反応として集計した 応答として, 各個体がネットを 通過した, 通過しない の二値で扱い, ロジスティック回帰分析により, 昆虫種間およびネット目合い間での通過率の違いを解析した また, 個々の昆虫種においてネット目合いに対して通過率の変化がロジスティック曲線に従うと仮定して,5% および95% の個体の通過を阻止するネット目合いを逆推定した この解析には JMP8を使用した 結果 1.8 種害虫の成虫の侵入を防止するネット目合い 8 種害虫の25 条件下,24 時間後における4 種目合いの防虫ネット対する通過率を調査したところ, カブラハバチ成虫とダイコンサルハムシ成虫は1mm 目合いの防虫ネットを全く通過できなかった ( 第 1 図 ) これら 2 種を除く6 種の通過率の変化の仕方は, 種によって異なっていた ( ロジスティック回帰分析の交互作用 :df =5,G =93.41,p <.1)

3 134 Annual Report of the Kanto-Tosan Plant Protection Society, No コナガ成虫は.3% の個体が1mm 目合いを通過できたが,.8mm 目合いを通過できた個体はなかった ナモグリバエ, キスジノミハムシ, ダイコンアブラムシ ( 有翅虫 ), ニセダイコンアブラムシ ( 有翅虫 ), モモアカアブラムシ ( 有翅虫 ) は, 目合いが細かくなるほど通過が困難となった ( ロジスティック回帰分析 : それぞれ,df =1,G =32.38,p <.1; df =1, G =165.36,p <.1; df =1,G =197.42,p <.1; df = 1,G =3.59,p <.1; df = 1,G =756.32,p <.1) ナモグリバエとキスジノミハムシは,.8mm 目合いは通過できたが,.6mm 目合いでは全く通過できなかった 3 種のアブラムシのうち, ダイコンアブラムシ有翅虫は.6mm 目合いを通過できず, ニセダイコンアブラムシは.4mm 目合いを通過できなかった 一方, モモアカアブラムシは.4mm 目合いを通過する個体が.3% とわずかに見られた これらのデータをもとにしてロジスティック回帰により推定された5% および95% の個体の通過を阻止するネット目合いは, それぞれ, ナモグリバエ1mm 以上,.95mm, キスジノミハムシ.mm,.61mm, ダイコンアブラムシ.98mm,.61mm, ニセダイコンアブラムシ1mm 以上,.7mm, モモアカアブラムシ.82mm,.49mm であった ( 第 1 表 ) 2.4 種害虫の若齢幼虫のネット侵入成虫がネット上に産卵した場合や, 付近の植物上に産卵した場合には, 若齢幼虫がネットを通過して作物上に発生することがある こうしたことが想定される4 種の害虫を対象として,4 種類の目合いに対する通過率を調査した 25 条件下で24 時間後における4 種類の防虫ネットに対する通過率は, 目合いの大きさに対する変化の仕方が昆虫種によって異なっていた ( ロジスティック回帰分析の交互作用 df = 3,G =436.72,p <.1) ハスモンヨトウでは,.4mm ~1mm の間では目合いに関係なく (df =1,G =.83,p =.3621) ~ 65% の通過率であった ( 第 2 図 ) ヨトウガとコナガでは, 目合いが細かいほど通過率が減少する傾 24 時間後の通過率 (%) 向だった (df =1,G =389.66,p <.1; df =1,G = 14.51,p =.1) ものの,.4mm 目合いでも通過率はそれぞれ16% と43% であった 一方, ダイコンサルハムシでは, 目合いが細かいほど通過率は減少し (df =1,G =31.15, p <.1),.4mm 目合いは全く通過できなかった これらのデータをもとにしてロジスティック回帰により推定された5% および95% の個体の通過を阻止するネット目合いは, それぞれヨトウガ.58mm,.4mm 以下, コナガ キスジノミハムシ ナモグリバエ コナガ カブラハバチ ダイコンサルハムシ モモアカアブラムシ ダイコンアブラムシ ニセダイコンアブラムシ 第 1 図ネット目合いによる主要害虫 ( 成虫 ) の通過率の変化 実験反復にかかわらず各個体の通過の可否は独立に決 定されると仮定した. 縦棒は95% 信頼区間. カブラハ バチとダイコンサルハムシは通過率ゼロのため, 統計 解析からは除外. ロジスティック回帰分析の結果は, 虫の種類 :df =5,G =.86,p <.1; 目合い : df =1,G =19.32,p <.1; 交互作用 :df =5, G =93.41,p <.1 昆虫種 第 1 表害虫あるいは寄生蜂類の通過を阻止する目合い ロジスティック回帰分析 5% 通過を阻止する目合い (mm) 95% 通過を阻止する目合い (mm) df G p 推定値 (95% 信頼区間 ) 推定値 (95% 信頼区間 ) ( 成虫 ) カブラハバチ ダイコンサルハムシ コナガ ナモグリバエ <.1 1mm 以上.95 (.9-1.) キスジノミハムシ <.1. ( ).61 ( ) ダイコンアブラムシ <.1.98 ( ).61 ( ) ニセダイコンアブラムシ <.1 1mm 以上.7 ( ) モモアカアブラムシ <.1.82 (. -.83).49 ( ) ( 幼虫 ) ヨトウガ <.1.58 (.56 -.).4mm 以下 ハスモンヨトウ コナガ <.1.76 ( ).4mm 以下 ダイコンサルハムシ <.1.88 ( ).4mm 以下 ( 天敵 ) コナガコマユバチ <.1 1. ( ).67 ( ) ギフアブラバチ <.1 1mm 以上.74 ( ) コレマンアブラバチ <.1.85 ( ).55 ( ) ダイコンアブラバチ <.1.88 ( ).54 ( )

4 関東東山病害虫研究会報第 61 集 (14) mm,.4mm 以下, ダイコンサルハムシ.88mm,.4mm 以下であった ( 第 1 表 ) ただし, ハスモンヨトウについてはロジスティック回帰自体が有意ではなかったため, 逆推定はできなかった 3.4 種の天敵寄生蜂類の通過を許容するネット目合いコナガの天敵寄生蜂 1 種, アブラムシ類の天敵寄生蜂 3 種について,4 種類の目合いの防虫ネットに対する通過率を調査したところ, 天敵種によって目合いに対する変化の仕方が異なっていた ( ロジスティック回帰分析の交互作用,df =3, G =11.82,p =.) コナガの寄生蜂コナガサムライコマユバチについては.8mm 目合いでは19% の通過が認められたが,.6mm 目合いでは通過できた個体はなかった ( 第 3 図 ) 一方,3 種のアブラバチ類については.6mm 目合いまではわずかに通過できる個体が見られたが,.4mm 目合いでは全く通過できなかった これらのデータをもとにしてロジスティック回帰により推定された5% および95% の個体の通過を阻止するネット目合いは, それぞれコナガコマユバチ1.mm,.67mm, ギフアブラバチ1mm 以上,.74mm, コレマンアブラバチ.85mm,.55mm, ダイコンアブラバチ.88mm,.54mm であった ( 第 1 表 ) 考察防虫ネットを利用する際には, 目合いが細かいほどより多くの害虫を防ぐことができる その一方で, 目合いが細かいほど通風性が減少するため, 作物や作業者にとって不適な環境となる ( 田中,9) また, 細かな目合いは天敵をも排除することになる これらの兼ね合いから, 主要な害虫を防ぐ程度の目合いを選定する必要がある コマツナの害虫の場合,1mm 目合いでは, カブラハバチやダイコンサルハムシ, コナガやこれ以上の大きさの成虫の侵入は防ぐことができる しかし, ナモグリバエが低率ながら通過するほか, キスジノミハムシやアブラムシ類が高率で通過する また, 害虫の若齢幼虫を対象にした場合, ヨト ウガ, ハスモンヨトウ, コナガ, ダイコンサルハムシなどは容易に通過してしまう.8mm 目合いでも, この状況はほとんど変わらない 一方,.6mm 目合いとした場合には, ナモグリバエやキスジノミハムシ, ダイコンアブラムシ, ニセダイコンアブラムシの侵入をほぼ防ぐことができる しかし, ヨトウガやハスモンヨトウ, コナガなどの幼虫を防ぐことはできない 特に, ハスモンヨトウは防虫ネット上にも卵塊を産卵するため, 成虫自体は防げたとしても幼虫の侵入を食い止めることができない ( 例えば, 熊倉ら,5; 中野ら, 6) しかし, この状況は.4mm 目合いとしたときでも変わらないので, 通気性を考慮して.6mm 目合いが妥当と考えられる 実際に,.6mm 目合いを使用した場合, 害虫による被害が大幅に軽減されることがプランター規模の試験 ( 長坂ら,3) や圃場試験 ( 熊倉ら,3, 5; 中野ら, 6) で示されている.6mm 目合いを選択した場合には, アブラムシ類がわずかながら通過するほか, コナガなどチョウ目害虫の若齢幼虫も通過する その一方で, アブラムシ類の天敵であるアブラバチ類やコナガの天敵であるコナガサムライコマユバチはほとんど通過できない 従って, ネット内にアブラムシ類やチョウ目幼虫が発生した場合, 土着天敵が施設内に入れず天敵による害虫制御が期待できなくなる このため, 侵入したわずかな害虫個体がもととなって増殖したり, 被害を及ぼしたりすることが報告されている 例えば,.6mm 目合いのネットトンネルを用いたコマツナやハクサイの栽培では, ニセダイコンアブラムシが侵入したトンネルにおいて, 無被覆栽培よりも大きな被害が認められた ( 熊倉ら,3, 5) また, ハスモンヨトウの被害は, 無被覆に比べて軽減されるものの, 被害を食い止めることは出来なかった ( 熊倉ら, 3, 5; 中野ら,6) ネットトンネルの場合には, ネットが妨げとなって害虫の発見が遅れることや, その対策として殺虫剤散布をする際に, ネットを開閉する手間がかかるといった問題もある ビニールハウスで側窓に.6mm 目合い 24 時間後の通過率 (% ) ヨトウガハスモンヨトウコナガダイコンサルハムシ 24 時間後の通過率 (%) コレマンアブラバチダイコンアブラバチコナガサムライコマユバチギフアブラバチ 第 2 図 ネット目合いによる 4 種害虫 ( 若齢幼虫 ) の通過率の 変化 実験反復にかかわらず各個体の通過の可否は独立に 決定されると仮定した. 縦棒は 95% 信頼区間. ロジ スティック回帰分析の結果は, 虫の種類 :df =3,G =59.72,p <.1; 目合い :df =1,G =515.32, p <.1; 交互作用 :df =5,G =436.72,p <.1 第 3 図ネット目合いによる4 種寄生蜂の通過率の変化実験反復にかかわらず各個体の通過の可否は独立に決定されると仮定した. 縦棒は95% 信頼区間. ロジスティック回帰分析の結果は, 虫の種類 :df =3,G =244.2,p <.1; 目合い :df =1,G =71.51,p <.1; 交互作用 :df =3, G =11.82,p <.

5 136 Annual Report of the Kanto-Tosan Plant Protection Society, No を利用した場合には, これらの問題は軽減される また, アブラバチ類など天敵の放飼も可能となる 調査した4 種の寄生蜂類は,1mm 目合いならば容易に通過できた 土着天敵を活用しようとする場合には,1mm 目合いの選択を考えることもできる ただし, この場合には, キスジノミハムシへの対策が前提となる キスジノミハムシの幼虫は地下部で根を食害するので, 収穫後における圃場内での根部残さの適切な処理や, 圃場内外で餌となる雑草 ( イヌガラシなど ) をなくすことなどが重要である また, 秋季にダイコンサルハムシが発生する場合もある ダイコンサルハムシの幼虫は1mm 目合いのネットを容易に通過してしまう これらへの対策として, 防草シートを用いて発生源をなくすことで防除効果を上げた事例がある ( 長坂ら,9) また, 作期が短いコマツナやミズナの場合, 同一ハウス内では一斉播種, 一斉収穫を行うことにより, キスジノミハムシやアブラムシ類, コナガなどの侵入次世代が増加しないようにすることで, 安定生産が可能となると考えられる 今回の実験では調査していないが, コマツナにおいてもアザミウマ類やハダニ類が発生する ( 竹内ら,; 中野, 8) これらは.6mm 目合いの防虫ネットでは大きな防除効果は認められない ( 長坂ら,3; 中野ら,6) ため, 多発する場合には別途対策を検討する必要がある また, ハモグリバエ類については, 今回ナモグリバエを調査したが, コマツナと同じくアブラナ科葉菜類のチンゲンサイにはマメハモグリバエが発生する ( 中野,5) このマメハモグリバエを完全に防ぐには,.5mm 目合いが必要である ( 市川ら, 1996) が, 実用上は.8mm 目合いが適切であると報告されている ( 中野,5) この.8mm 目合いを選択した場合にも, 程度の差はあるものの,1mm 目合いの時と同じ害虫に対する対応策が必要である 防虫ネットの弱点は, 地際や地中にある ネットトンネルの場合には, 地際部の封鎖には労力のかかる土寄せが必要である 不完全な土寄せで済ませてしまうと, 隙間から害虫が侵入する場合が見られる ( 田中,1999) また, 先のキスジノミハムシのように土中に生活史をもつ害虫では, これらが土中に存在する状態でネット被覆をすると, 被害を助長してしまう カブラヤガなどのネキリムシ類は, 幼虫が土中に潜むだけでなく, 被覆の外側から地中を通って侵入することがある 対策としては, キスジノミハムシの幼虫に対しては夏季の太陽熱処理が有効である ( 福井,2) カブラヤガ幼虫に対しては, 進入阻止のための障壁が検討されている ( 長坂ら,12) 以上のように, どの目合いを選択するにしても防虫ネットだけで全ての害虫を防ぐことはできない 対象とした作型での害虫の発生量や発生頻度, 及ぼす被害の重要度, さらには防虫ネットの価格や収穫物の品質を総合的に検討して防虫 ネットを選択した上で, 耕種的な防除手段のほか, 必要に応じて殺虫剤や天敵などとの組合せを検討していく必要がある ここで報告した多種類の害虫, 天敵のデータはその際の基本情報として有用である 引用文献 Bethke, J. A. and T. D. Paine(1991)J. Entomol. Sci. 26: Bethke, J. A. et al.(1994)calif. Agric.(Berkeley)48: 37-. 福井正男 (2) 京都農研報 23: 行徳裕ら (4) 九病虫研報 5: 広島県総合技術研究所 (8) 平成 19 年度近畿中国四国農業研究成果情報 research_results/h19/2_kankyo/p49/index.html 市川耕治ら (1996) 愛知農総試研報 28: 上遠野富士夫 河名利幸 (1996) 植物防疫 5: 鹿児島県農業試験場 (5) 平成 16 年度九州沖縄農業研究成果情報. seika/4/4457.html 河合省三 (1983) 東京農試研報 16: 熊倉裕史ら (3) 近中四農研報 2: 熊倉裕史ら (5) 近中四農研報 4: 桑原克也ら (13) 関東病虫研報 : 京都府農業総合研究所 (1997) 平成 8 年度近畿中国四国農業研究成果情報 99-. 長坂幸吉ら (3) 植物防疫 57: 長坂幸吉ら (9) 植物防疫 63: 長坂幸吉ら (12) 関東病虫研報 59: 中野昭雄 (5) 徳島農研報 2: 中野昭雄 (8) 徳島農研報 5: 中野昭雄ら (6) 四国植防 41: 岡崎真一郎 (4) 今月の農業 49(3): 大矢武志ら (11) 関東病虫研報 58: 115.( 講要 ) 佐々木正剛 中村淳 (5) 東北農業研究 58: 柴尾学ら (5) 関西病虫研報 47: Shimazu, T. et al.(8)acta Hort. 97: 竹内純ら () 関東病虫研報 47: 田中尚智 (1999) 耕種的防除法 資材寒冷紗など ( 被覆, 障壁 ). 農業総覧病虫害防除 資材編 1. 防除資材便覧. 農文協. 東京.pp 野菜茶業研究所 (9) トマト黄化葉巻病の総合防除マニュアル. 野菜茶業研究所 12pp. publicity_report/publication/files/naro-se/tomato_yellow _leaf_manual_h215.pdf

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