Com学科45号p019.ec9

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1 19 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 伊 藤 加 奈 子 キーワード: 可 能 表 現 助 動 詞 可 以 能 日 中 対 照 1. 現 実 の 出 来 事 と 可 能 表 現 可 能 とは 何 に 基 づいて 語 られるのだろうか たとえば 未 実 現 の 事 態 について 語 られる 可 能 もあれば, 常 識 的 な 判 断 として 語 られる 可 能 もある 你 明 天 可 以 再 来 一 趟 吗?(あなたは 明 日 もう 一 度 来 ることができますか?) 这 间 屋 子 可 以 住 四 个 人 この 部 屋 は4 人 泊 まることができる) ヒトによる 判 断 の 一 形 態 が 可 能 であるならば,では 現 実 に 起 きた 出 来 事 について 可 能 表 現 が 用 いられている 場 合,それは 単 なる 実 現 済 みの 動 作 行 為 を 述 べる 表 現 とどこが 異 なる のだろうか 次 の 例 文 を 見 られたい 1) 日 本 名 将 高 桥 大 辅, 本 次 男 子 单 人 滑 奖 牌 的 有 力 争 夺 者 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 行 技 术, 他 的 滑 行 分 可 以 滑 到 8.35 (バンクーバーオリンピック 2010 年 2 月 16 日 フィギュアスケート 男 子 シングルショートプログラ ムCCTV 中 継 解 説 より) 上 の 例 文 はバンクーバー 五 輪 中 継 の 解 説 音 声 書 き 起 こしであるが, 下 線 部 文 中 に 可 能 の 助 動 詞 可 以 が 用 いられている この 可 能 表 現 を 生 かしたまま 日 本 語 に 訳 すと, 次 のように なるだろう 2) 日 本 の 名 選 手 髙 橋 大 輔, 今 大 会 フィギュアスケート 男 子 シングルメダルの 有 力 候 補 です?? 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており,スケーティングスキルの 点 数 は8.35を 出 すことができます/できました 中 国 語 にはテンスの 区 別 がないため ~できます/できました と 併 記 したが,どちらに しても 日 本 語 としてはかなり 違 和 感 がある この 8.35 という 数 字 は,2009 年 12 月 4 日 東 京 で 開 催 されたフィギュアスケート グランプリファイナルにおける, 髙 橋 選 手 のショート プログラムに 対 する 実 際 の 記 録 を 指 しており,その 時 点 までの 全 試 合 ショートプログラムの スケーティングスキルを 比 較 して 見 た 中 でパーソナルベストの 点 数 注 1である その 事 実 を 踏 まえてより 自 然 な 日 本 語 表 現 を 探 ると, 次 のようなものが 考 えられる 3) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており,スケーティングスキルの 点 数 は8.35を 出 しています 注 1: 髙 橋 選 手 の 得 点 記 録 内 容 詳 細 については htp://deep-edge.net/segd.php?id=4810で 確 認 可 能 SS がスケーティングスキルを 指 す

2 20 4) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており,スケーティングスキルの 点 数 は8.35を 出 したことがあります 日 本 語 では 可 能 表 現 を 用 いずに, ~テイル/~シタコトガアル で 表 すことが 多 いと 考 えられる またその 点 数 が 出 た 時 点 場 所 など,より 具 体 的 な 情 報 を 付 加 して 後 節 で 示 すこ ともあるだろう 5) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており, 昨 年 12 月 のグランプリファイ ナルではスケーティングスキルで8.35を 出 しています 6) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており, 昨 年 12 月 のグランプリファイ ナルではスケーティングスキルで8.35を 記 録 しています 7) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており, 昨 年 12 月 のグランプリファイ ナルではスケーティングスキルで8.35を 叩 き 出 しています 例 文 6)7)ではスポーツの 記 録 について 述 べる 場 面 で 多 く 使 用 される 動 詞 記 録 する 叩 き 出 す を 用 い 作 例 してみたが, 可 能 表 現 の 使 用 は 動 詞 出 す に 比 べ 更 に 馴 染 みにく いと 思 われる ひるがえって,このような 後 節 で 可 能 表 現 を 排 除 した 形 を 中 国 語 にした 場 合, 次 のような 形 になるだろう 8) 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 行 技 术, 他 的 滑 行 分 滑 到 )?? 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 行 技 术, 他 的 滑 行 分 滑 到 过 ) 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 冰 技 术, 他 的 滑 行 分 在 去 年 12 月 的 大 奖 赛 总 决 赛 上 滑 到 8.35 ~シタコトガアル を 経 験 相 过 に 置 き 換 えた 例 文 9)については, 成 立 すると 答 え たインフォーマントと, 即 座 にこの 言 い 方 は 非 文 であると 明 確 に 反 応 したインフォーマント とに 分 かれ, 成 立 度 合 いにばらつきがあったため 便 宜 的 に?? 表 記 をしている 例 8)10) のような 言 い 方 は 成 立 するとのことだがニュアンスが 幾 分 異 なり,それは 次 節 以 降 で 考 察 す る なお 中 国 語 には 可 能 補 語 といった 形 式 も 存 在 するが, 仮 にこの 場 面 に 当 てはめ 使 用 した 場 合,これまた9)と 同 様 成 立 度 合 いにばらつきが 見 られる 11)?? 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 行 技 术, 他 的 滑 行 分 滑 得 到 8.35 このケースでは 可 能 補 語 の 使 用 が 難 しいようなので 本 論 の 考 察 対 象 からは 除 く 中 国 語 の 可 能 表 現 に 関 する 研 究 では 助 動 詞 / 可 能 補 語 との 比 較 対 照 が 多 く 見 られるが, 本 論 は 少 し 視 点 を 変 え, 可 能 表 現 そのものを 使 うか 否 かを 中 国 語 の 助 動 詞 可 以 を 中 心 に 日 中 対 照 を 試 みるものである 可 以 には 大 きく 分 けて 能 力 用 途 許 可 価 値 といった 用 法 が あるが,ここでは 能 力 について 取 り 上 げるものとする 2.MAXを 取 り 立 てる 可 先 ほどフィギュアスケートの 得 点 について 述 べる 場 面 を 例 に 取 り 上 げたが,すでに 確 定 し た 記 録 に 言 及 する 別 場 面 として, 米 メジャーリーガー イチロー 選 手 の 子 供 時 代 のエピソー ドを 紹 介 する 中 国 語 の 文 を 挙 げる ここでも 助 動 詞 可 以 が 用 いられており, 同 時 に も う,すでに の 意 味 で 実 現 済 みの 事 態 について 多 く 用 いられる 副 詞 已 经 も 文 中 に 共 起 し

3 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 21 ている 12) 丰 山 小 学 毕 业 之 后 进 入 当 地 的 丰 山 中 学 就 读 中 学 时 期, 铃 木 一 朗 已 经 可 以 打 到 时 速 130 公 里 的 球 例 12)の 可 能 表 現 を 生 かしたまま 日 本 語 に 訳 したのが13),そこから 可 能 表 現 をはずして みたのが14)15)である 13) 豊 山 小 学 校 卒 業 後, 地 元 の 豊 山 中 学 校 に 進 学 中 学 時 期,イチローはすでに 時 速 130キ ロの 球 を 打 つことができた 14) 豊 山 小 学 校 卒 業 後, 地 元 の 豊 山 中 学 校 に 進 学 中 学 時 期,イチローはすでに 時 速 130キ ロの 球 を 打 っていた 15)? 豊 山 小 学 校 卒 業 後, 地 元 の 豊 山 中 学 校 に 進 学 中 学 時 期,イチローはすでに 時 速 130 キロの 球 を 打 った この 場 合 13)も 成 立 するが,14)のような 可 能 表 現 を 使 用 しない 形 の 方 が 日 本 語 では 多 く 見 られると 感 じられる 16)このイチロー 選 手 の 小 さい 頃 の 興 味 深 い 本 を 目 にしました 読 んでみました イチロー 選 手 は, 幼 稚 園 のときからプロ 野 球 選 手 になる 夢 をもっていたそうです 小 学 校 3 年 生 のときから,お 正 月 を 除 いて 毎 日 バッティングセンターに 親 子 で 通 い,すぐに 時 速 100キロのスピードボールを 打 っていました 6 年 生 の 終 わりには 時 速 120キロのボールを 打 っていましたが,そのバッティングセン ターにはそれ 以 上 速 い 球 を 投 げるピッティングマシーンがなく, 強 力 なバネを 特 別 に 注 文 し てイチロー 選 手 専 用 の 機 械 をつくり, 時 速 130キロのボールを 打 っていました そして, 中 学 生 になるとプロのピッチャーが 投 げるような 時 速 140キロのボールを 簡 単 に 打 ち 返 したと いいます 一 日 も 休 まず 打 ち 続 ける 努 力 をしたわけです ( 東 京 都 文 京 区 立 駒 本 小 学 校 HPブログより,2009 年 12 月 22 日 掲 載 佐 藤 明 彦 校 長 の 言 葉 より) 17) 普 通, 小 学 3 4 年 生 は 時 速 90キロ, 中 学 1 2 年 生 は 時 速 110キロの 軟 式 ボールを 叩 く ところがイチローは 中 学 2 年 生 のとき, 時 速 120キロを 確 実 に 打 つ そこで 同 センター は 対 イチロー 対 策 として 特 別 マシン 時 速 130キロを 用 意 した それでもイチローは 思 いっき りボールを 引 っぱたく ある 日 父 親 は 途 方 もない 話 を 切 り 出 した なぁ,イチローよ こ れ 以 上 速 い 投 球 機 械 はもうないよ 仕 方 がない お 前,2メートルほど 投 球 機 械 に 近 寄 って 打 てよ イチロー 選 手 の 逸 話 について 語 る 文 章 は 非 常 に 多 いが,やはり 可 能 表 現 を 用 いない 形 式 が 多 く 観 察 される 一 方 中 国 語 においてであるが, 例 12)から 可 能 の 助 動 詞 可 以 を 除 いた 次 の 例 は, 文 法 的 には 成 立 するようだが 幾 分 不 自 然 さを 感 じるというインフォーマントの 反 応 を 得 たものである 18)?? 丰 山 小 学 毕 业 之 后 进 入 当 地 的 丰 山 中 学 就 读 中 学 时 期, 铃 木 一 朗 已 经 打 到 时 速 130 公 里 的 球 インフォーマントが 不 自 然 と 感 じたその 理 由 を 問 うと,12)ではイチローが 中 学 生 時 代 に 打 った 球 の 最 高 速 度 を 卓 越 した 記 録 として 述 べ 立 てているのに 対 し, 可 能 助 動 詞 がない18) では 単 なる 中 学 生 時 代 に 行 った 動 作 事 実 を 述 べているだけであってそのエピソードの 凄 さ が 伝 わりにくいということであった 日 本 語 の13)14)がどちらも 成 立 し, 寧 ろ 可 能 表 現 を

4 22 使 わない14)のような 形 が 多 用 される 傾 向 があり, 且 つ 可 能 表 現 がなくともそこで 述 べられ ている 中 学 生 時 代 のイチロー 選 手 の 凄 さは 何 ら 損 なわれていないことに 注 目 したい もちろん 中 学 時 代 のイチロー 選 手 にしても 常 に 時 速 130kmの 球 を 打 っていたわけではな く,あくまで 最 高 速 度 を 意 味 しているのであるが, 最 高 最 大 = MAXについて 言 及 する 場 面 では 助 動 詞 可 以 の 使 用 がかなり 目 立 っている また 可 以 と 性 格 が 近 いとさ れる 助 動 詞 能 能 够 の 使 用 例 もあり,それらを 以 下 に 挙 げる 19) 悬 浮 列 车 最 高 时 速 可 以 达 到 多 少 公 里? 20)リニアモーターカーは 最 高 時 速 何 キロまで 出 すことができますか? 21) 悬 浮 列 车 最 高 时 速 达 到 多 少 公 里? 22)リニアモーターカーは 最 高 時 速 何 キロまで 出 ますか? 23) 上 海 的 磁 悬 浮 列 车 每 小 时 可 以 达 到 450 公 里 一 般 时 速 为 380 公 里 由 于 他 是 建 造 在 农 郊 的 高 架 上, 噪 音 忽 略 了 高 速 时 达 到 公 里, 其 噪 音 比 较 小, 相 当 于 只 有 以 人 大 声 说 话 24) 上 海 のリニアモーターカーは 時 速 450kmに 達 することができます 通 常 の 時 速 は 380kmです リニアが 農 村 の 高 架 に 建 造 されたことにより, 騒 音 は 気 にならないものとな りました 高 速 運 行 では 時 速 kmに 達 し,その 騒 音 は 比 較 的 小 さく, 人 が 大 声 で 会 話 をする 程 度 です 25) 上 海 的 磁 悬 浮 列 车 每 小 时 达 到 450 公 里 26) 上 海 のリニアモーターカーは 時 速 450キロに 達 します 27) 兔 子 每 小 时 可 以 行 多 少 公 里? 兔 子 每 小 时 最 快 可 以 行 36 公 里 28)ウサギは1 時 間 に 何 km 進 むことができますか? ウサギは 最 も 速 くて 時 速 36kmで 進 むことができます 29) 兔 子 每 小 时 行 多 少 公 里? 兔 子 每 小 时 最 快 行 36 公 里 30)ウサギは1 時 間 に 何 km 進 みますか? ウサギは 最 も 速 くて 時 速 36kmで 進 みます 31) 每 小 时 行 走 五 公 里 能 够 消 耗 多 少 热 量? 32)1 時 間 に5km 歩 いたらどれぐらいのカロリーを 消 費 できますか? 33) 每 小 时 行 走 五 公 里 消 耗 多 少 热 量? 34)1 時 間 に5km 歩 いたらどれぐらいのカロリーを 消 費 しますか? 35) 自 行 车 一 般 一 个 小 时 能 行 多 少 公 里? 我 所 说 的 正 常, 就 是 普 通 自 行 车, 以 正 常 听 速 度 骑 法, 因 为 我 想 骑 自 行 车 去 上 班 36) 自 転 車 は 普 通 1 時 間 に 何 キロ 進 むことができますか? 私 が 言 っているのは 正 常 な,つま り 普 通 の( 補 足 :レーシング 仕 様 などではない) 自 転 車 です 普 通 でと 速 さ 乗 り 方 を 尋 ね ているのは, 自 転 車 で 通 勤 したいからです 37) 自 行 车 一 般 一 个 小 时 行 多 少 公 里? 38) 自 転 車 は 普 通 1 時 間 に 何 キロ 進 みますか? 39) 自 自 行 车 最 高 车 速 可 以 达 到 多 少 公 里? 普 通 自 行 车 1015 公 里 / 小 时, 如 果 是 好 点 的 车 子, 带 变 速 的, 速 度 又 能 达 到 20 以 上 5060 公 里 的 都 是 狂 人 啊! 佩 服 我 觉 得 1015 公 里 比 较 符 合 实 际 普 通 路 面 赛 车 运 动 员 能 可 以 轻 松 骑 至 50 公 里 / 小 时, 最 高 时 速 也 可 达 到 6070 公 里 40) 自 転 車 は 最 高 時 速 何 km 出 せますか? 普 通 の 自 転 車 は10 15km/h, 若 しもう 少 し 良

5 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 23 い 自 転 車 で, 変 速 ギアがついているならば, 速 度 は 時 速 20km 以 上 出 すことができる 時 速 50 60kmはもう 狂 人 だ! すごいと 思 う 時 速 1015kmが 現 実 に 合 っていると 思 う 一 般 道 路 では 自 転 車 レーサーは 軽 く50km/h 出 すことができ, 最 高 時 速 は6070kmになる( 出 せ る) 下 線 を 引 いて 可 能 助 動 詞 を 示 した 例 文 19)23)27)31)35)39)が 実 際 に 存 在 する 中 国 語 の 例 文 であり,それぞれの 後 に 続 いているのが 日 本 語 訳 と 可 能 助 動 詞 をはずした 中 国 語 作 例 である どれも 成 立 には 問 題 はないが,やはり 可 以 などが 用 いられている 方 が, 例 えば ウサギの 走 る 速 さを 尋 ねる 場 面 でも 普 通 にぴょんぴょん 跳 びはねているウサギではなく, 捕 食 者 に 追 われ 必 死 になって 走 っているようなウサギの 最 高 速 度 を 問 うているイメージをより 強 く 持 つようである これらに 対 し,MAXといった 概 念 と 相 性 が 悪 い 場 面 ではどのようなことが 言 えるだろう か 41) 快 走 一 小 时 消 耗 多 少 热 量? 坚 持 快 走 一 小 时 左 右, 每 次 活 动 能 量 消 耗 为 300 千 卡 左 右 42)1 時 間 早 足 で 歩 くとどれだけカロリー 消 費 しますか? 1 時 間 程 度 早 足 を 続 けると, 活 動 エネルギーは 約 300カロリー 消 費 されます 43) 快 走 2 时 能 消 耗 多 少 热 量? 坚 持 快 走 2 小 时 左 右, 每 次 活 动 能 量 消 耗 为 600 千 卡 左 右 44)2 時 間 早 足 で 歩 くとどれだけカロリー 消 費 できますか? 2 時 間 ほど 早 足 で 歩 くのを 続 けると, 活 動 エネルギーは600キロカロリーぐらいを 消 費 します 例 41) と43) は 天 涯 问 答 注 2という 質 問 回 答 を 集 めた HPからの 引 用 である 文 中 に 用 いられている 数 字 単 位 の 違 いはあれ, 内 容 はどちらも 似 たようなものである いずれも 成 立 には 問 題 ないが,インフォーマントの 語 感 によると41)では 消 費 されるカロリーの 平 均 を 尋 ねているというニュアンスが 強 いということである 先 ほど 挙 げた 可 以 などの 可 能 表 現 が MAXを 取 り 上 げているのと, 言 わば 反 対 のベクトルである ヒトが 時 間 歩 いた 消 費 カロリーはどれぐらい? と 尋 ねる 場 合 は 可 能 表 現 があってもなくても 成 立 に 問 題 ないようだが, 同 じように 消 費 カロリーに 言 及 している 場 面 でも 可 能 表 現 を 入 れると 違 和 感 が 生 じる 例 が 以 下 である 45) 睡 觉 8 小 时 大 概 消 耗 多 少 热 量 呢? 46)8 時 間 睡 眠 をとるとおよそどれぐらいエネルギーを 消 費 しますか? 47)? 睡 觉 8 小 时 大 概 可 以 消 耗 多 少 热 量 呢? 48)?8 時 間 睡 眠 をとるとおよそどれぐらいエネルギーを 消 費 できますか? 例 45)が 実 際 に 存 在 する 中 国 語 の 文 であるが, 可 以 を 付 加 した47)は 違 和 感 があると いうのがインフォーマントの 反 応 である ヒトの 睡 眠 中 における 消 費 カロリーは, 運 動 とは 異 なり, 個 々 人 の 身 体 能 力 によってさほどばらつきが 出 ない 平 均 的 なイメージがあることか ら,MAXを 指 向 する 可 能 助 動 詞 は 相 性 が 悪 いようである また 日 本 語 においても46) は 問 題 ないが,48)については 睡 眠 中 までも 必 死 にダイエットしようとしている といった 違 和 感 がある 但 し 日 本 語 と 中 国 語 で 共 に 可 能 表 現 利 用 により 文 成 立 に 違 和 感 があるとしても, その 原 因 は 異 なるところに 由 来 する 可 能 性 がある 更 に 別 の 例 を 見 てみよう 注 2:htp://wenda.tianya.cn/wenda

6 24 49) 人 静 坐 每 小 时 可 消 耗 多 少 热 量? 注 3 50)? 人 静 坐 每 小 时 可 以 消 耗 多 少 热 量? 51) 人 静 坐 每 小 时 消 耗 多 少 热 量? 例 49)では 可 が 用 いられておりこれは 許 容 されるようであるが, 可 以 に 換 えた 50)では 成 立 しにくいとインフォーマントは 感 じるようである なお 可 能 表 現 を 用 いない 51)は 成 立 に 問 題 ない これを 日 本 語 にした 場 合, 睡 眠 中 の 消 費 カロリーについて 述 べる 46)48)と 同 じく, 可 能 表 現 を 使 用 したものには 若 干 成 立 しにくい 感 覚 がある 52)ヒトが 静 かに 座 っていると1 時 間 にどれだけカロリー 消 費 しますか? 53)?ヒトが 静 かに 座 っていると1 時 間 にどれだけカロリー 消 費 できますか? 3. 普 通 ではない 可 前 節 では MAXという 概 念 と 助 動 詞 可 以 を 中 心 とする 可 能 表 現 との 関 わりを 見 て きたが,ではその 枠 に 留 まらないと 思 われる 例 ではどのようなことが 言 えるだろうか 54) 官 湖 郡 的 绿 化 真 的 可 以 达 到 61.2% 吗? 我 严 重 怀 疑 哦, 这 么 高 的 绿 化 率 看 起 来 是 挺 吸 引 人 的, 拜 托 开 发 商 不 要 再 忽 悠 广 大 业 主 注 4 了, 说 点 真 话 吧? 55)? 官 湖 郡 の 緑 化 は 本 当 に61.2%にまで 達 することができたの? 私 は 非 常 に 疑 わしく 思 ってる,こんなにも 高 い 緑 化 率 は 見 たところとても 人 を 惹 き 付 けるけど, 開 発 会 社 にはも うマンションの 所 有 者 を 騙 さないで 欲 しいと 思 う, 本 当 のことを 話 せば? 56) 官 湖 郡 の 緑 化 は 本 当 に61.2%にまで 達 しているの? 例 文 54) は のタイムスタンプが 残 るネット 上 の 書 き 込 みであるが,これは 同 年 11 月 に 発 表 された 官 湖 郡 不 動 産 の 広 告 ニュースを 見 て,それが 疑 わしいという 思 いを 抱 いた 人 物 による 指 摘 である 参 考 : 武 汉 东 合 置 业 有 限 公 司 营 销 总 监 徐 薇 燕 介 绍, 官 湖 郡 总 建 筑 面 积 约 12 万 平 方 米, 三 面 环 亩 后 官 湖, 享 千 米 私 家 湖 岸 线 ; 中 略 此 外 整 个 小 区 绿 化 率 高 达 61.2%, 四 季 皆 有 风 情 <タイムスタンプは である> ( 日 本 語 訳 : 武 漢 東 合 不 動 産 有 限 会 社 のマーケティング 総 監 徐 薇 燕 が 紹 介 するところによ ると, 官 湖 郡 の 総 建 築 面 積 は12 万 平 方 メートルで, 三 面 を17,000ムールの 後 官 湖 に 囲 まれ, 千 メートルのプライベートビーチを 享 受 しています 中 略 この 他 にも 全 ての 小 区 域 の 緑 化 率 は61.2%に 達 しており, 四 季 には 折 々の 風 情 があります) 54)はすでに 公 表 済 みの 緑 化 指 数 について 言 及 している 例 である 数 値 が 非 常 に 高 いとい う 意 味 合 いでは 可 以 が MAXを 示 す 傾 向 と 矛 盾 していない そして 可 能 表 現 を 残 して 日 本 語 に 訳 した55)は 若 干 自 然 さに 欠 け, 可 能 表 現 をはずし ~テイル を 用 いた56)の 方 注 3: 採 取 した 原 文 は 人 静 坐 每 小 时 可 消 耗 多 少 大 卡 热 量 であり, 数 量 に 関 する 疑 問 表 現 多 少 大 / 熱 量 をあらわす 卡 热 量,この 部 分 が 言 わば 語 彙 が 重 複 した 形 になってしまっており,きちんとした 中 国 語 ではない 末 尾 も? など 句 読 点 の 類 を 使 っていないことからも,あまり 言 葉 に 拘 りを 持 たない 人 物 が 書 いたものと 推 察 できる 重 複 部 分 を 整 理 しインフォーマントチェックを 経 たものが 例 49)である 注 4: 业 主 とは 家 屋 不 動 産 等 の 持 ち 主 を 指 す 語 であり,よく 广 大 业 主 といった 組 み 合 わせで 用 いら れる

7 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 25 は 自 然 な 語 感 を 有 すると 思 われる 一 方, 中 国 語 の 原 文 から 用 いられている 助 動 詞 可 以 を 除 いてしまうとこれはかなり 成 立 が 難 しくなり, 完 了 のアスペクト 助 詞 了 が 必 要 だというのがインフォーマントの 回 答 であった 57) * 官 湖 郡 的 绿 化 真 的 达 到 61.2% 吗? 58) 官 湖 郡 的 绿 化 真 的 达 到 了 61.2% 吗? 複 数 のインフォーマントからは, 例 54)は 助 動 詞 可 以 があることでこの 緑 化 指 数 が 普 通 でない ことを 示 しているという 共 通 した 反 応 が 得 られた 実 際 普 通 でない と 感 じ 取 られたからこそ, 件 の 不 動 産 開 発 会 社 についてこのような 強 い 疑 念 を 表 明 する 書 き 込 み につながっていると 考 えられる 次 に 挙 げるのは,とある 高 等 専 門 学 校 区 域 の 就 職 率 について 述 べているレポートであるが, 鋭 い 語 感 を 持 つ 複 数 の 中 国 語 ネイティブスピーカーから 原 文 そのものがややおかしいのでは ないかという 指 摘 を 受 けた 例 である 59)? 常 州 高 职 园 区 首 次 就 业 率 可 以 达 到 98% 常 州 高 职 园 区 在 发 展 过 程 当 中 确 立 了 比 较 好 的 定 位 培 养 既 有 文 化 知 识, 又 有 很 强 动 手 能 力 的 学 生 这 样 的 话 他 们 到 了 社 会 以 后 就 会 很 受 欢 迎, 所 以 这 几 年 我 们 的 就 业 率 都 是 很 高 的, 都 是 100%,? 首 次 就 业 率 可 以 达 到 98%,5 所 高 职 院 校 就 业 率 进 入 江 苏 省 前 十 名 60) 常 州 高 等 専 門 学 校 区 域 の 初 回 就 職 率 が98%に 達 することができた 常 州 高 等 専 門 学 校 区 域 は 発 展 過 程 において 比 較 的 良 いレベル 教 養 と 知 識 を 身 につけ,ま た 即 戦 力 となる 能 力 を 備 えた 学 生 の 育 成 を 確 立 した このことは 学 生 たちが 社 会 に 出 てか ら 歓 迎 を 受 けるだろうし,それ 故 にここ 数 年 我 々の 区 域 の 就 職 率 は 高 く, 全 て100%であ り,? 初 回 就 職 率 は98%に 達 することができ,5つの 高 等 専 門 学 校 の 就 職 率 は 江 蘇 省 のトッ プ10に 入 った 61) 常 州 高 等 専 門 学 校 区 域 の 初 回 就 職 率 が98%に 達 した 常 州 高 等 専 門 学 校 区 域 は 発 展 過 程 において 比 較 的 良 いレベル 教 養 と 知 識 を 身 につけ,ま た 即 戦 力 となる 能 力 を 備 えた 学 生 の 育 成 を 確 立 した このことは 学 生 たちが 社 会 に 出 てか ら 歓 迎 を 受 けるだろうし,それ 故 にここ 数 年 我 々の 区 域 の 就 職 率 は 高 く, 全 て100%であり, 初 回 就 職 率 は98%に 達 しており,5つの 高 等 専 門 学 校 の 就 職 率 は 江 蘇 省 のトップ10に 入 った 例 59) で は 常 州 高 职 园 区 首 次 就 业 率 可 以 达 到 98%/ 首 次 就 业 率 可 以 达 到 98% の 可 以 がついていると 逆 に 不 自 然 であるというインフォーマントからの 意 見 があったのだが, その 理 由 は 文 中 に 用 いられている 首 次 = 初 回 にあるということである 初 回 に 限 定 して 就 職 率 の 数 値 を 述 べているということは, 即 ちその 数 値 は1 回 のみに 限 定 されたも のであり, 別 の 回 での 就 職 率 数 値 を 比 較 対 象 として 設 定 していないということを 意 味 する しかしここで 可 以 が 入 ってしまうと 前 節 で 述 べた MAXの 概 念 = 他 と 比 較 してその 中 で 最 高 のものを 取 り 立 てる 意 味 合 いにより,この1 回 限 定 であるはずの 98% という 数 値 が 他 と 比 較 して,いつも 出 るとは 限 らない 最 高 値 という 矛 盾 した 感 覚 でとらえられて しまうため, 鋭 い 語 感 を 持 つタイプのネイティブスピーカーには 文 が 成 立 しにくいと 感 じら れるようである ちなみに 第 1 節 で 取 り 上 げたフィギュアスケート 髙 橋 選 手 の 例 であるが,スケーティング

8 26 スキル 項 目 で 8.35 を 記 録 した 時 間 場 所 といった 特 定 する 情 報 を 付 加 すると, 助 動 詞 可 以 が 使 えなくなるようである 10) 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 冰 技 术, 他 的 滑 行 分 在 去 年 12 月 的 大 奖 赛 总 决 赛 上 滑 到 ) * 高 桥 大 辅 拥 有 世 界 一 流 的 滑 冰 技 术, 他 的 滑 行 分 在 去 年 12 月 的 大 奖 赛 总 决 赛 上 可 以 滑 到 8.35 つまり 例 59)から 可 以 をはずしてやれば 中 国 語 の 表 現 として 問 題 ないものになるのだ が,そもそも 何 故 このような 間 違 いが 発 生 したのだろうか? 仮 説 として 考 えられるのは, 先 に 述 べた 可 以 が 普 通 ではない という 意 味 合 いを 伴 い 解 釈 される 側 面 を 持 つことに より, 自 分 たちの 高 等 専 門 学 校 区 域 の 優 れた 実 績 を 強 調 し 宣 伝 しようとしたあまり,1 回 限 定 の 数 値 がまるで 別 の 数 値 を 比 較 して MAXであると 述 べ 立 てているような 矛 盾 に 陥 って しまったのではというものである ここまでは 点 数 速 度 熱 量 割 合 といった 数 値 が 関 係 する 例 文 を 主 に 取 り 上 げたが,で はそれ 以 外 の 場 合 ではどのようなことが 言 えるだろうか 63)( 申 雪 / 赵 宏 博 ) 和 普 通 夫 妻 不 同 的 是, 相 识 18 载, 他 们 之 间 除 了 夫 妻 情 分, 又 是 队 员, 还 是 合 作 伙 伴, 任 何 时 刻 都 没 有 单 打 独 斗 的 时 刻 我 们 拉 手 注 4 的 那 一 天 起, 我 可 以 把 性 命 交 给 他 申 雪 说 如 果 做 不 到 这 样 的 信 任, 就 没 有 在 冰 上 的 收 放 自 如, 两 个 人 如 同 一 体 的 默 契 64)(フィギュアスケートの 申 雪 / 趙 宏 博 ペアが) 普 通 の 夫 婦 と 異 なるのは, 知 り 合 ってか ら18 年, 彼 らの 間 は 夫 婦 という 誼 の 外 に,チームメイトであり, 協 力 する 仲 間 であり, 如 何 なる 時 も 独 りで 戦 うことはなかった 私 たちが 手 を 取 ってペアのスケーティングを 始 めた あの 日 から, 私 は 命 を 彼 に 渡 すことができました と 申 雪 は 語 る もしこのような 信 頼 が 作 り 上 げられなければ, 氷 上 での 自 在 な 動 き, 二 人 がまるで 一 体 であるかのような 暗 黙 の 了 解 は 存 在 しないのだ 例 63)に 登 場 している 申 雪 選 手 の 言 葉 であるが, 原 文 の 可 能 表 現 を 残 した 形 で 日 本 語 訳 に したのが64)である しかし 実 はすでに, 日 本 のフィギュアスケートファンの 間 では 申 / 趙 ペアの 名 言 として, 次 のような 翻 訳 にて 知 られている 65) 両 腕 で 彼 女 を 抱 きかかえる 時 に 彼 女 を 愛 している 演 技 をする 必 要 はない だって, 本 当 に 彼 女 を 愛 しているのだから 趙 宏 博 彼 の 手 を 取 って 競 技 を 始 めたあの 日 から, 私 の 命 は 全 て 彼 にゆだねてきた 申 雪 翻 訳 者 不 明 で 自 然 発 生 的 に 定 着 したものであり,この 訳 の 原 文 とされるものが63)に 見 ら れる 申 雪 選 手 の 言 葉 と 一 言 一 句 全 く 同 一 である 確 証 は 残 念 ながらない しかし 中 国 語 では 可 能 助 動 詞 が 用 いられている 文 が 存 在 し, 一 方 日 本 語 では 可 能 表 現 を 排 した ~ゆだねてき た という 形 が 選 ばれ, 鴛 鴦 夫 婦 として 知 られる 彼 らの 深 い 愛 情 を 象 徴 する 言 葉 としてファ ンの 間 で 広 まっている 事 実 は 興 味 深 い 自 分 の 命 を 他 者 に 委 ねる 行 為 は,たとえ 家 族 であっても 容 易 くできることではない それをペアを 組 む 相 手 として 引 き 合 わされて 間 もない 赤 の 他 人 である 男 子 選 手 に 託 すという のは 普 通 にできることではない という 意 味 合 いが 伴 うことから, 中 国 語 では 可 能 助 動 詞 注 4: 拉 手 とはフィギュアスケートのペア 競 技 で, 男 女 が 互 いに 手 をとったポジションでスケーティング をする 基 本 動 作 を 指 す

9 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 27 の 使 用 が 好 まれると 考 えられる この 文 から 可 以 を 除 いた66)は 成 立 せず,67)のよう に 副 詞 就 や 完 了 の 助 詞 了 があれば 文 が 成 り 立 つということである 但 しやはりその ニュアンスは 可 以 の 有 無 で 異 なり,67)では 単 なる 事 実 を 述 べる 文 であり, 普 通 では ない 意 味 合 いは 感 じられない 66) * 我 们 拉 手 的 那 一 天 起, 我 把 性 命 交 给 他 67) 我 们 拉 手 的 那 一 天 起, 我 就 把 性 命 交 给 了 他 では 普 通 ではない と 物 事 を 認 識 する 場 面 として, 感 服 する,すごいことだと 感 じ 入 る という 意 味 の 中 国 語 の 動 詞 佩 服 を 利 用 して,それに 後 続 する 文 成 分 に 可 能 表 現 が 使 われる 例 とそうでないものを 見 てみよう 68) N 久 以 前 注 5 的 帖 子, 真 佩 服 自 己 当 时 可 以 写 这 么 长 69)?N 久 以 前 的 帖 子, 真 佩 服 自 己 当 时 写 这 么 长 70) N 久 以 前 的 帖 子, 真 佩 服 自 己 当 时 写 了 这 么 长 71)ずいぶん 前 の( 補 足 :ネット 掲 示 板 の) 書 き 込 み, 自 分 が 当 時 こんなに( 文 章 を) 長 く 書 くことができたなんて 本 当 に 感 心 するよ 72)ずいぶん 前 の 書 き 込 み, 自 分 が 当 時 こんなに 長 く 書 いていたなんて 本 当 に 感 心 するよ 可 能 助 動 詞 可 以 が 用 いられている 例 68)では 今 はとてもできない という, 現 在 の 状 況 と 比 較 するニュアンスが 強 いということである 69)70)のように 可 以 を 排 した 形 も 成 立 はするが, 現 在 と 比 較 するという 意 味 はないというのがインフォーマントの 反 応 であ る 一 方 日 本 語 に 訳 した71) と72)はどちらも 問 題 なく 成 立 し, 中 国 語 のように 可 能 助 動 詞 の 有 無 が 比 較 のニュアンスを 帯 びるかどうかを 決 定 するという 現 象 は 見 られない 日 本 語 例 文 72)についても, 今 は 到 底 無 理 だけど, 自 分 が 当 時 こんなに 長 く 書 いていたなんて~ と, 自 らの 現 状 と 比 較 するニュアンスを 込 めて 発 話 することができるだろう 73) 甜 心 MM 的 自 拍, 佩 服 人 家 妈 妈 可 以 生 出 这 么 漂 亮 的 女 儿 74)スイートハートMMが 自 分 で 撮 影 した 画 像,うちのお 母 さんがこんなに 可 愛 い 娘 ( 補 足 : 自 分 のことを 指 している)を 産 むことができたなんてすごいと 思 う 75) 佩 服 人 家 妈 妈 生 出 这 么 漂 亮 的 女 儿 76)うちのお 母 さんがこんなに 可 愛 い 娘 を 産 んだなんてすごいと 思 う 例 73)は, 容 姿 に 自 信 のある 少 女 が 街 中 でいろんなファッションに 身 を 包 んだ 自 分 の 姿 を 自 ら 撮 影 し,ネット 掲 示 板 に 画 像 をアップロードして 紹 介 している 場 面 で 添 えられていた 言 葉 である( 甜 心 MM= 妹 妹 がネット 上 における 彼 女 のハンドルである) ここでは 可 以 が 用 いられていることにより, こんなに 可 愛 い 娘 は 普 通 そこらへんにはいないよ! と,その 並 みではない 際 立 ったさまを 比 較 し 強 調 する 語 感 につながるということである 77) 钱 学 森 特 别 佩 服 能 跟 美 国 对 着 干 的 毛 泽 东 钱 先 生 跟 别 人 不 一 样, 他 有 严 重 的 反 美 情 绪, 所 以 特 别 佩 服 能 跟 美 国 对 着 干 的 毛 泽 东 钱 学 森 先 生 的 第 一 任 秘 书 张 可 文 78) 銭 学 森 は 特 にアメリカと 張 り 合 うことができた 毛 沢 東 に 感 服 していた 注 5: N は,ネット 上 の 若 者 言 葉 で 程 度 副 詞 很 や 好 などの 代 わりに 用 いられる 代 数 での 用 法 に 由 来 すると 言 われる

10 28 銭 氏 は 他 の 人 とは 違 い, 彼 は 強 い 反 米 感 情 を 持 っていて,そのことでアメリカと 張 り 合 う ことができた 毛 沢 東 には 特 に 感 服 していました 銭 学 森 氏 の 第 一 秘 書 張 可 文 79) 钱 学 森 特 别 佩 服 跟 美 国 对 着 干 的 毛 泽 东 钱 先 生 跟 别 人 不 一 样, 他 有 严 重 的 反 美 情 绪, 所 以 特 别 佩 服 跟 美 国 对 着 干 的 毛 泽 东 80) 銭 学 森 は 特 にアメリカと 張 り 合 った 毛 沢 東 に 感 服 していた 銭 氏 は 他 の 人 とは 違 い, 彼 は 強 い 反 米 感 情 を 持 っていて,そのことで 特 にアメリカと 張 り 合 った 毛 沢 東 には 感 服 していました 例 77)では 助 動 詞 能 が 使 用 されているが, 可 以 同 様 比 較 の 意 味 合 いがあるとのこ と 可 能 表 現 をはずした79)も 成 立 するが, 特 にこの 場 合 においては 世 界 の 超 大 国 である アメリカ を 相 手 にしたという, 並 みの 国 ではないその 相 手 の 強 大 さを 印 象 付 ける 効 果 を 可 能 助 動 詞 が 有 しているというのがインフォーマントの 感 想 である 81) 真 的 不 得 不 佩 服 能 花 一 个 下 午 做 头 发 的 MM 82)?? 午 後 の 時 間 丸 々 使 って 髪 の 毛 をセットできる 女 の 子 って 本 当 にすごいと 思 わざるを 得 ない 83) 真 的 不 得 不 佩 服 花 一 个 下 午 做 头 发 的 MM 84) 午 後 の 時 間 丸 々 使 って 髪 の 毛 をセットする 女 の 子 って 本 当 にすごいと 思 わざるを 得 ない 例 81)83)もどちらも 成 立 するが,やはり 能 が 使 用 されている81)は 午 後 の 時 間 全 てを 髪 の 毛 ごときに 費 やすだなんて 普 通 ではない というニュアンスが 強 く 込 められる こ こまで 取 り 上 げた 佩 服 が 関 わる 例 文 では, 比 較 の 意 味 合 い 普 通 ではない ニュアン スの 有 無 の 違 いこそあれ, 可 能 助 動 詞 があってもなくても 文 成 立 はするというものばかり だったが, 次 のようなやや 成 立 度 合 いに 差 が 生 じる 例 も 存 在 する 85) 看 了 满 城 尽 带 黄 金 甲 的 MV, 佩 服 周 杰 伦 可 以 这 样 弹 古 筝, 满 地 都 是 菊 花, 杰 伦 也 会 弹 古 筝!!!! 86) 满 城 尽 带 黄 金 甲 的 ( 日 本 語 タイトル: 王 妃 の 紋 章 )のミュージックビデオを 見 た, 周 杰 倫 が 箏 をこんなに 弾 けるなんてすごいと 思 ったよ, 一 面 菊 の 花 が 敷 き 詰 めてあって, 杰 倫 は 箏 も 弾 くこともできるんだよ!!! 87)?? 看 了 满 城 尽 带 黄 金 甲 的 MV, 佩 服 周 杰 伦 这 样 弹 古 筝, 满 地 都 是 菊 花, 杰 伦 也 会 弹 古 筝!!!! 88)? 满 城 尽 带 黄 金 甲 的 のミュージックビデオを 見 た, 周 杰 倫 が 箏 をこんなに 弾 いてる なんてすごいと 思 ったよ, 一 面 菊 の 花 が 敷 き 詰 めてあって, 杰 倫 は 箏 も 弾 くこともできるん だよ!!! 89) 满 城 尽 带 黄 金 甲 的 のミュージックビデオを 見 た, 周 杰 倫 が 箏 を 弾 いてるなんてすご いと 思 ったよ, 一 面 菊 の 花 が 敷 き 詰 めてあって, 杰 倫 は 箏 も 弾 くこともできるんだよ!!! 例 87)では 可 以 を 取 り 去 ってしまうとかなり 言 い 難 いという 反 応 を 複 数 のインフォー マントが 揃 って 示 した その 理 由 はと 問 うとそれぞれが 異 なる 答 え 方 をしたが, 中 で とて も 意 外 なことだと 驚 いている, 居 然 の 感 覚 に 近 い と 答 えるインフォーマントがいた 原 文 85) 文 末 に 用 いられている 感 嘆 符 の 数 からわかるように,この 文 を 作 った 人 物 はかなり 興 奮 した 状 態 にあるのは 確 かである その 非 常 に 強 い 興 奮 驚 きを 齎 した 周 杰 倫 の 筝 が 普 通 でない と 取 り 立 てる 語 感 を 強 く 求 めることにより, 可 能 助 動 詞 の 使 用 に 傾 くのではない

11 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 29 かと 推 察 する 日 本 語 例 については こんなに を 文 中 に 持 つ88)は 若 干 不 自 然 さがあるが,89) 周 杰 倫 が 箏 を 弾 いているなんてすごいと 思 った は 成 立 に 問 題 ないだろう また 可 能 表 現 を 持 つ 86)に 比 べても, 中 国 語 のようなニュアンスの 違 いは 生 じないと 思 われる 4. 最 低 限 レベルの 可 第 2 節 で, 可 以 と 副 詞 已 经 が 共 起 しているイチロー 選 手 の 例 文 12)を 取 り 上 げた が,それでは すでにもう~できた と 実 現 済 みの 事 態 を 述 べる 他 の 例 を 見 てみよう 90) 克 林 顿 心 脏 搭 桥 手 术 顺 利 已 经 可 以 开 口 说 话 美 国 前 总 统 克 林 顿 的 办 公 室 7 日 发 表 声 明 说, 刚 刚 进 行 完 心 脏 搭 桥 手 术 的 克 林 顿 恢 复 得 很 顺 利, 他 目 前 神 志 完 全 清 醒, 并 且 已 经 可 以 开 口 说 话 91)クリントンの 心 臓 バイパス 手 術 は 順 調 すでに 会 話 も 可 能 に アメリカのクリントン 前 大 統 領 の 事 務 方 が7 日 発 表 したところによると, 心 臓 のバイパス 手 術 を 終 えたばかりのクリントン 前 大 統 領 の 回 復 は 順 調 で, 現 在 意 識 がはっきりしており, すでに 会 話 もできるとのことです 92)? 他 目 前 神 志 完 全 清 醒, 并 且 已 经 开 口 说 话 93) 彼 は 現 在 意 識 がはっきりしており,すでに 会 話 もしているとのことです 例 90)はクリントン 元 大 統 領 の 心 臓 手 術 を 伝 えるニュースからである 可 能 表 現 のない 92)と 比 較 すると かろうじて~できるようになった という 語 気 を 帯 びるというのがイン フォーマントの 回 答 で,92)は 非 文 とまではいかないが 若 干 使 いにくいと 感 じるとのこと 一 方 日 本 語 では91)93)ともに 成 立 に 問 題 なく,ニュース 文 面 では 寧 ろ 可 能 表 現 を 用 いない 93)のような 言 い 方 が 多 いのではと 思 われる 94) 在 在 2009 年 11 月, 科 伦 纳 - 阿 祖 布 克 接 受 了 膝 盖 修 复 手 术 在 新 赛 季 训 练 营 开 始 之 初, 他 曾 表 示 将 在 常 规 赛 揭 幕 战 复 出 但 这 一 计 划 似 乎 推 迟 据 纽 约 尼 克 斯 主 教 练 迈 克 - 丹 东 尼 表 示, 阿 祖 布 克 近 期 不 可 能 参 加 比 赛 他 甚 至 说, 如 果 阿 祖 布 克 再 伤 停 两 个 月, 那 他 也 不 会 感 到 惊 讶 在 过 去 两 个 周, 阿 祖 布 克 已 经 可 以 跑 步, 但 还 不 能 参 加 全 部 训 练 95)2009 年 11 月,ケレンナ アズバイクは 膝 の 修 復 手 術 を 受 けた 新 しいシーズンのトレー ニングを 始 めた 当 初 は, 彼 は 開 幕 戦 復 帰 を 表 明 していた しかしこのプランは 遅 延 する 模 様 だ ニューヨークニックスのマイク ダントーニヘッドコーチによると,アズバイクはここ しばらくは 試 合 に 参 加 できないとのこと ダントーニは,もしアズバイクが2ヶ 月 間 怪 我 で 出 場 できなくても, 驚 きはないとまで 語 った 過 去 2 週 間,アズバイクはすでにランニング ができるが,しかしまだ 全 てのトレーニングに 参 加 はできていない 96) 在 过 去 两 个 周, 阿 祖 布 克 已 经 跑 步, 但 还 不 能 参 加 全 部 训 练 97) 過 去 2 週 間,アズバイクはすでにランニングをしているが,しかしまだ 全 てのトレーニ ングに 参 加 できていない 98) 在 过 去 两 个 周, 阿 祖 布 克 已 经 开 始 跑 步, 但 还 不 能 参 加 全 部 训 练 99) 過 去 2 週 間,アズバイクはすでにランニングを 始 めているが,しかしまだ 全 てのトレー ニングに 参 加 できていない

12 30 100) 在 ( 菲 律 宾 马 尼 拉 ) 人 质 事 件 中, 易 小 玲 遭 子 弹 穿 过 下 颚, 导 致 骨 裂 及 口 腔 受 损, 返 港 后 一 直 在 沙 田 韦 尔 斯 亲 王 医 院 接 受 治 疗 院 方 发 言 人 表 示, 易 小 玲 接 受 治 疗 后 情 况 稳 定, 已 经 可 以 进 食, 说 话, 且 行 动 自 如, 并 于 昨 晨 出 院 101)(フィリピンマニラでの 香 港 人 ) 人 質 事 件 で, 易 小 玲 さんは 下 顎 に 銃 弾 が 貫 通 する 怪 我 を 負 い, 骨 の 断 裂 と 口 腔 組 織 の 損 失 に 至 り, 香 港 に 戻 ってからは 沙 田 のプリンス オブ ウェールズ 病 院 で 治 療 を 受 けていた 病 院 側 スポークスマンによると, 易 小 玲 さんは 治 療 を 受 けてから 状 況 が 安 定 しており,すでに 食 事 や 会 話 も 可 能 で, 思 い 通 りに 行 動 しており, 昨 日 朝 退 院 したということである 102) 易 小 玲 接 受 治 疗 后 情 况 稳 定, 已 经 进 食, 说 话, 且 行 动 自 如, 并 于 昨 晨 出 院 103) 易 小 玲 さんは 治 療 を 受 けてから 状 況 が 安 定 しており,すでに 食 事 や 会 話 もしており, 思 い 通 りに 行 動 しており, 昨 日 朝 退 院 したということである ここに 挙 げた NBAニューヨークニックスのアズバイク 選 手 とフィリピン 香 港 人 人 質 事 件 のニュースであるが, 可 以 が 用 いられている94)アズバイク 選 手 にとっての ランニン グ と,100) 人 質 事 件 負 傷 者 の 食 事 と 会 話 は, 試 合 復 帰 に 必 要 な 他 のハードなトレー ニング/ 自 分 の 思 い 通 りにやる 様 々な 行 動 と 比 し, 最 低 レベルのことができるように なった という 語 感 を 持 つとのことである クリントン 元 大 統 領 からフィリピン 香 港 人 人 質 事 件 まで,いずれも 誰 かが 医 療 行 為 を 経 て 回 復 を 見 せていると 伝 える 場 面 なのだが, やっとできるようになった 最 低 レベルの 行 為 という 語 感 は 第 2 節 で 取 り 上 げた 最 高 値,MAX,また 第 3 節 並 外 れた, 普 通 ではな い 意 味 合 いとは 逆 の 方 向 にあると 一 見 感 じられる 注 6この 相 反 する 性 質 を 合 理 的 に 統 括 し 説 明 する 言 葉 を 未 だ 持 たないが, 最 高 であれ 最 低 であれ 少 なくとも 比 較 する 他 項 目 の 存 在 を 設 定 しているという 前 提 があるのは 共 通 していると 考 えられる なお 体 調 不 良 で 入 退 院 を 伝 えるニュースにおいて 助 動 詞 能 が 使 われているケースもあ るが,これは 失 われた 能 力 を 回 復 する 意 味 合 いであり, 可 以 の 例 文 90)94)100) と は 指 向 するものがやや 異 なるようである 104) 亚 洲 第 一 胖 男 子 已 经 能 下 地 活 动 胃 口 大 开 经 过 新 桥 医 院 连 日 来 的 精 心 治 疗, 备 受 市 民 关 注 的 亚 洲 第 一 胖 梁 用 的 病 情 趋 于 稳 定, 昨 日 已 能 下 地 活 动, 且 胃 口 大 开, 将 三 四 两 米 饭 一 扫 而 光 105)アジアで 一 番 太 った 男 がすでにベッドから 下 りて 活 動 できるように 食 欲 も 旺 盛 新 橋 病 院 の 連 日 の 心 を 込 めた 治 療 を 経 て, 市 民 の 注 目 の 的 となっていた アジアで 一 番 太 い 人 梁 用 さんの 病 状 は 安 定 に 向 かい, 昨 日 はベッドから 降 りて 活 動 できるようになり, 食 欲 も 旺 盛 で,150~200gのご 飯 はあっという 間 に 平 らげています 106) 亚 洲 第 一 胖 男 子 已 经 下 地 活 动 胃 口 大 开 经 过 新 桥 医 院 连 日 来 的 精 心 治 疗, 备 受 市 民 关 注 的 亚 洲 第 一 胖 梁 用 的 病 情 趋 于 稳 定, 昨 注 6: 例 えば 他 就 要 了 三 张 票, 没 多 要 (= 彼 は3 枚 だけチケットを 求 め, 多 くは 欲 しがらなかった)と 他 就 要 了 三 张 票, 没 剩 几 张 了 (= 彼 一 人 で3 枚 もチケットを 求 めたものだから,もう 何 枚 も 残 っていな い)のように, 同 じ 副 詞 就 が 数 量 の 少 ない 場 合 多 い 場 合 に 用 いられる 例 がある このケースはストレ スの 置 き 方 が 関 与 する 別 の 文 法 形 式 であるからして 単 純 に 同 一 視 はできないが, 一 見 逆 の 方 向 性 を 持 つよう に 感 じられる 意 味 合 いが 同 じ 語 で 示 される 例 は 珍 しくない

13 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 31 日 已 下 地 活 动, 且 胃 口 大 开, 将 三 四 两 米 饭 一 扫 而 光 107)アジアで 一 番 太 った 男 がすでにベッドから 下 りて 活 動 する 食 欲 も 旺 盛 新 橋 病 院 の 連 日 の 手 厚 い 治 療 を 経 て, 市 民 の 注 目 の 的 となっていた アジアで 一 番 太 い 人 梁 用 さんの 病 状 は 安 定 に 向 かい, 昨 日 はベッドから 降 りて 活 動 しており, 食 欲 も 旺 盛 で, 150~200gのご 飯 はあっという 間 に 平 らげています インフォーマントの 語 感 によると 原 文 104)より 寧 ろ, 助 動 詞 能 をはずした106)の 方 が 言 いやすいのではないかという 意 見 もあり, 能 と 可 以 が 一 致 する 語 感 を 持 つ 普 通 でない とはこの 点 でも 異 なる 振 る 舞 いを 見 せていると 思 われる 5. 中 国 語 と 日 本 語,その 可 能 表 現 の 使 用 に 見 られる 違 い 以 上, 中 国 語 の 助 動 詞 可 以 を 中 心 に 実 現 済 みの 事 態 に 可 能 表 現 が 関 わる 例 を 中 国 語 日 本 語 を 対 照 する 形 で 見 てきたが, 可 以 については 比 較 義 を 伴 うという 感 覚 が 非 常 に 強 く, 最 高 最 大,MAX を 示 したり, 普 通 ではない と 述 べたてる 効 果 があることがわ かる 具 体 的 な 例 として 改 めて 第 1 節 に 取 り 上 げたフィギュアスケート 高 橋 選 手 のスケーティン グスキルを 述 べる 例 に 戻 ると, 中 国 語 で 他 的 滑 行 分 可 以 滑 到 8.35 と 述 べた 場 合 は, 下 表 で 白 抜 き 太 字 表 示 部 分 + 網 掛 け 細 字 表 示 されている 点 数 全 てを 前 提 として 踏 まえつつ 比 較 し 最 高 得 点 としてその 技 術 の 高 さを 称 えていることになるが, 他 的 滑 行 分 滑 到 8.35 で は 表 の 網 掛 け 部 分 は 思 考 の 枠 外 に 置 かれてしまい 白 抜 き 太 字 箇 所 のみを 単 なる 動 作 行 為 と して 述 べている 文 となる ここでは 便 宜 的 に 表 形 式 をとったが,ヒトが 何 らかの 事 態 につい て 中 国 語 で 表 出 する 場 合 において 可 能 助 動 詞 可 以 や 能 を 用 いるか 否 かには,いわば 表 全 体 を 視 野 に 入 れるか,それとも 表 中 の 一 行 だけに 焦 点 を 当 てて 見 つめるかという 異 なる 態 度 が 反 映 されているのではないだろうか フィギュアスケートの 大 会 ( 年 月 ) グランプリファイナル(2009 年 12 月 ) スケートカナダ(2009 年 11 月 ) NHK 杯 (2009 年 11 月 ) フィンランディア 杯 (2009 年 10 月 ) : スケートカナダ(2003 年 10 月 ) スケーティングスキル 項 目 の 得 点 : 7.15 そして 日 本 語 においてはこのような 中 国 語 方 式 の 視 野 切 り 替 えは 存 在 しないように 思 われ る スケーティングスキルの 点 数 は8.35を 出 しています と 述 べた 場 合, 可 能 表 現 は 含 ま れていないわけだが,それまでの 髙 橋 選 手 の 戦 歴 における 最 高 得 点 をピックアップするとい う 作 業 を 経 ているわけで,それは 即 ち 比 較 対 象 となる 項 目 の 存 在 を 前 提 としているに 他 なら ない また 先 に 述 べたように スケーティングスキルの 点 数 は8.35を 出 すことができまし た は,この 競 技 中 継 解 説 場 面 では 使 用 しにくいという 事 実 がある

14 32 例 えば 下 のような 子 供 の 作 文 を 設 定 してみた 場 合, 僕 は 昨 日 算 数 のテストで90 点 取 ることができました なので,お 父 さんとの 前 からの 約 束 どおり, 欲 しかったゲームを 買 ってもらいました < 筆 者 による 作 例 > この 文 は ゲームを 買 ってもらえる 約 束 の 点 数 をついにクリアした という 意 味 合 いであ り,1ヶ 月 前 の 算 数 のテストではどうだったか, 半 年 前 のテストの 点 数 はどうだったかとい う 比 較 の 概 念 は 働 いていないと 見 なすのが 妥 当 だろう 渋 谷 1986は 日 本 語 可 能 表 現 を 以 下 のように 分 類 している 動 作 主 可 能 1 条 件 可 能 能 力 可 能 内 的 条 件 可 能 外 的 条 件 可 能 2 結 果 可 能 < 動 作 の 実 現 が 可 能 不 可 能 である,あったことを 表 す 肯 定 形 の 場 合 には ドーニカ 最 後 マデヤッタ の 意 を 表 す ( 途 中 で 何 度 もやめようとは 思 ったが, 最 後 まで 完 走 できた ) 自 発 ( 経 験 者 可 能 ) 認 識 の 可 能 本 論 で 取 り 上 げた 中 国 語 の 助 動 詞 可 以 を 中 心 とする 諸 々の 例 文 は,どれも 現 実 に 起 き た 出 来 事 に 関 して 言 及 しているものであり,つまり あったこと に 根 ざしているのである が, ドーニカ 最 後 マデヤッタ の 意 と 合 致 しないものについては 日 本 語 で 可 能 表 現 の 使 用 が 回 避 されるようである 今 回 の 中 国 語 と 日 本 語 の 比 較 対 照 において, 可 以 等 を 持 たない 中 国 語 の 例 で, MAX / 普 通 でない/ 最 低 限 etc. といった 比 較 義 ニュアンスを 持 つことができず 単 なる 動 作 行 為 を 述 べているだけと 見 なされ, 前 後 のつながりに 合 致 せず 成 立 し 難 くなるという 現 象 が 確 認 された それは 目 的 語 などといった 他 の 文 成 分 はそのままであるにも 関 わらず 発 生 し ている 現 象 であるため, 中 国 語 における 目 的 語 等 文 成 分 は, 先 ほど 表 形 式 で 仮 説 として 述 べ た 視 野 の 切 り 替 えに 影 響 を 及 ぼすことができない(あくまで 鍵 となるのは 動 詞 を 核 として 付 随 する 可 能 助 動 詞 等 の 文 法 形 式 )のではないだろうか また 文 を 組 み 立 てる 方 向 性 にしても, 中 国 語 は 比 較 義 を 持 たせることを 優 先 するケースが 目 立 つのに 対 し, 日 本 語 では 例 えば 時 間 場 所 といった 情 報 を 付 与 することにより 特 定 の 事 実 に 絞 り 込 んで 述 べ 立 てをしようとする 傾 向 が 強 い, 特 にスポーツ 実 況 解 説 やニュース 文 面 においてはよりそれが 顕 著 だと 感 じられる 6) 髙 橋 は 世 界 でも 一 流 のスケーティング 技 術 を 有 しており, 昨 年 12 月 のグランプリファイ ナルではスケーティングスキルで8.35を 記 録 しています 93) 彼 ( 手 術 を 終 えたばかりのクリントン 前 大 統 領 )は 現 在 意 識 がはっきりしており,すで に 会 話 もしているとのことです 93) 彼 ( 手 術 を 終 えたばかりのクリントン 前 大 統 領 )は 現 在 意 識 がはっきりしており,すで に 一 般 病 棟 で 家 族 と 会 話 もしているとのことです 可 能 表 現 等 を 用 いない 単 なる 動 作 行 為 とはそもそも 何 なのか その 実 体 を 捉 えること

15 可 能 表 現 の 使 用 に 関 する 日 中 比 較 33 は 困 難 ではあるが, 単 なる 動 作 行 為 であることを 理 由 に 文 成 立 に 影 響 があるケースの 分 析 か らそれに 近 づくことができる 可 能 性 があるのではと 考 えるものである 参 考 文 献 现 代 汉 语 八 百 词 增 订 本 吕 叔 湘 主 编 商 务 印 书 馆 1999 新 编 汉 语 多 功 能 词 典 冯 志 纯 周 行 健 主 编 国 际 文 化 出 版 公 司 1989 现 代 汉 语 常 用 词 用 法 词 典 李 忆 民 主 编 北 京 语 言 学 院 出 版 社 1995 現 代 中 国 語 における 可 能 表 現 の 意 味 分 析 可 能 補 語 を 中 心 に 安 本 真 弓 白 帝 社 2009 渋 谷 勝 己 可 能 表 現 の 発 展 素 描 大 阪 大 学 日 本 学 報 引 用 (2010 年 10 月 31 日 受 理,11 月 18 日 掲 載 承 認 )