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りさこくまじ
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1 特集 : データ分析によるサービス改善リンクリゾルバのログ分析による業務改善 UDC 02: : * 林賢紀リンクリゾルバのアクセスログを解析することで, よく利用されるサービスを把握でき, 利用者の行動把握とサービスの改善に繋げることが可能である本稿では, リンクリゾルバのログ分析による業務改善に資するため,SFX を例としたログ解析の手法を示した具体的には,SFX が有する統計出力機能を使用して, 利用者がどのような文献データベースから文献の入手を試みているか, また特定の文献データベースの検索結果から入手を試みたがオンラインでは入手できなかった雑誌タイトルの集計などを行ったこれにより, 電子ジャーナルの利用統計だけでは把握できない情報資源を連携させた利用の様態を明らかにし, 業務改善に資することができるキーワード : リンクリゾルバ, 電子ジャーナル, 文献データベース, 文献管理ツール,SFX, ログ分析 1. はじめに学術研究において電子ジャーナルや文献データベースは欠かせないものとなっている 2011 年に行われた学術情報の取得動向と電子ジャーナルの利用度に関する調査である SCREAL 調査報告書 1) によれば, 電子ジャーナルについては自然科学系の研究者の 9 割がほぼ毎日, また資料発見のツールとしての文献データベースは半数以上の研究者が週に 1~2 回あるいはほぼ毎日利用していることが明らかになっている電子ジャーナルや文献データベースの利用の件数については, それぞれの統計機能において参照できるほか, COUNTER 2) に準拠した利用統計であれば異なる出版社などでも相互の比較が可能である例えば, 電子ジャーナルについては, 雑誌タイトル単位で月ごとの利用の件数やアクセスの要求があったが契約していないため拒否された件数を出力することもできるこれらの統計情報を利用することで, 図書館において契約している電子ジャーナルの利用件数などを把握し, 利用状況の把握や契約の見直しなどに生かすことができるまた,SCREAL 調査報告書では, 資料発見のためのツールとして Web 上の検索エンジンや文献データベースが多く用いられていることが明らかにされている図書館が, 文献の発見から入手と利用までの環境を構築しているとすれば, その評価のためには, 単に電子ジャーナルや文献データベースの利用の件数に加え, これらを関連付けて利用者の行動全体を把握することも必要であると考えられるこの方法の一つとして, 相互をリンクするシステムのひとつであるリンクリゾルバについて, アクセスログによる * はやしたかのり国立研究開発法人国際農林水産業研究センター企画調整部情報広報室情報管理科茨城県つくば市大わし 1-1 Tel tzhaya@affrc.go.jp ( 原稿受領 ) 利用の様態の分析がある本稿では, リンクリゾルバの機能と得られるログ, またこれらの分析についての先行研究と実際に得られる情報を参照しつつ, どのようにして業務改善に必要な知見を得る分析手法について論じるなお, 本稿では, 取得できるログ及び関連の用語については,Ex Libris 社の SFX を例としている統計情報については筆者が所属する国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでの利用件数等を元にしているまた, 国立研究開発法人国際農林水産業研究センターでは, 農林水産研究情報総合センターが契約し提供する SFX を農林水産省が所管する他の国立研究開発法人と共用して利用しており, 今回の分析に使用した SFX のログデータについては, 農林水産研究情報総合センターより提供を受けたものである 2. 先行研究リンクリゾルバのアクセスログを解析することで, よく利用されるサービスを把握でき, 利用者の行動把握とサービスの改善に繋げることが可能であることが, いくつかの先行研究で示されているリンクリゾルバの一つである SFX を導入した筑波大学附属図書館でのアクセスログの分析が宇陀らにより行われている 3) この結果として, リンクリゾルバが提示する選択肢のうちフルテキストの入手所蔵情報の確認文献複写依頼の利用傾向が高いこと, 中間窓に表示されたリンクサービスがクリックされる回数は表示回数に対して 3 割程度であることを示しているまた, 初期状態の中間窓では表示されず, クリックして画面展開を行う Advanced 表示に含まれる文献管理ツール RefWorks への書誌事項取り込み機能について, 表示回数に比較して利用回数が 1~2% と低いことを例として, 初期状態の表示の有無がサービスの利用に影響することを指摘している Stowers らは,University of Nevada, Las Vegas (UNLV) において,SFX でのアクセスログの解析により 424 情報の科学と技術 65 巻 10 号,424~429(2015)

2 フルテキストの入手と抄録の入手の利用傾向が高いことを示している 4) さらに, 中間窓で電子ジャーナルへのリンクが表示された場合には 97% が電子ジャーナルにアクセスしているのに対し, 文献複写サービスが提示された場合は 16% の利用に留まっているまた, 電子ジャーナルへのリンクが示されなかった場合, 利用者は文献複写サービスを利用せずその他の電子化された論文を探しているとしているまた, リンクリゾルバのアクセスログの解析は, 購入雑誌タイトルの評価などにも利用できる Stengel による California State University, San Marcos(CSUSM) における調査 5) では, ログファイルからリンクリゾルバを経由して閲覧された電子ジャーナルと複写依頼サービスを利用した雑誌タイトルの分析が行われたこの調査では, リンクリゾルバの一つ,SFX のログ解析により, リンクリゾルバの導入とログファイルの分析が利用者の情報利用の把握や購入雑誌タイトルの選定に有用であることを示した筆者らは, これらの先行研究を元に, 文献データベース, 電子ジャーナル, リンクリゾルバそれぞれのアクセスログから利用者行動に対するリンクリゾルバの影響についての分析を試みた 6) この結果, データベースの検索結果からリンクリゾルバを経由して幅広い分野の雑誌タイトルに利用者を誘導できる効果が確認できているさらに福武らは,SFX のログ分析に加え, 医中誌 Web の検索結果の詳細表示回数と文献管理ツール RefWorks での雑誌タイトル別の保存回数を調査し, これらを関連付けて分析することで看護系利用者の情報探索行動を明らかにしている 7) この調査は, 論文の閲覧から引用までの一連の行動の間には, 文献管理ツールなどに保存することで自分の知識とする段階があるとする林の分析 8) を元にしたもので, 利用者の情報探索行動をより詳細に把握しようする試みであるといえる 3. リンクリゾルバの機能とアクセスログ 3.1 リンクリゾルバの機能リンクリゾルバとは, 各種の文献データベースと電子ジャーナル, また図書館の所蔵検索システムである OPAC や文献管理ツールなど, 様々なツールを相互にリンクし, 必要な文献の入手と利用を支援するシステムの一つであるリンクリゾルバを利用した電子ジャーナルなど各種の情報資源へのアクセスは以下のような過程をたどる (1) 各種データベース上 ( リソース ) で, 検索結果 ( 書誌情報 ) をリンクリゾルバに伝達するためのリンクを OpenURL により生成し, 利用者に提供する (2) OpenURL による書誌情報をリンクリゾルバが受信し, 利用者の所属などを判別し利用可能な情報資源を中間窓に一覧表示する (3) 利用者は中間窓に表示された情報資源 ( ターゲット ) から適切なものにアクセスし利用するリンクリゾルバの核となる機能が (2) で, 例えば電子ジャーナルであれば,OpenURL で送信された当該論文の掲載誌, 巻号などの書誌情報とリンクリゾルバが持つ購読情報を照合し, フルテキストが利用可能であればリンクを中間窓に表示するまた,DOI,PMID(PubMed Unique Identifier) など論文に対する一意の識別子が与えられた場合には, この識別子を元に自動的に CrossRef や PubMed などから書誌情報を取得して同様の照合を行うリンクリゾルバが持つ利用可能な情報資源のデータベースは KnowledgeBase と呼ばれ, 一般的な電子ジャーナルパッケージの書誌情報等が搭載されているまた, 導入した図書館等において, 個別に電子情報資源を登録することができる受信した書誌情報をもとに, 論文単位まで識別し利用者を全文へ誘導できるか, 雑誌単位までの識別なのかなど, この KnowledgeBase の精粗がリンクリゾルバの性能のポイントの一つでもあるリソースには PubMed, Google Scholar, Web of Science,Ovid, 国内では JDreamIII,CiNii, 医中誌 Web など多くのデータベースベンダ等が対応しているまたターゲットについては電子ジャーナルのほか, 自機関のドキュメントデリバリサービスや OPAC, 文献管理ツールなどへのリンクを用意することが可能である 3.2 リンクリゾルバから得られるログとその例利用者は, リンクリゾルバの利用においては図 1 のような画面遷移を行う SFX では図 1 の 3 つの段階でそれぞれログを取得しており, これらの情報を元に 20 種類の統計文献データベースなど ( リンク元ソース ) OPAC 文献データベース Google scholar (1) リンク元ソースから SFX に書誌情報を送信 (Request) リンク元ソースごとのリンクのクリック回数利用できる情報源を表示 ( リンクリゾルバ ) フルテキストの入手ドキュメントデリバリサービス文献管理ツール OPAC での所在確認 (2) 利用できる情報資源を中間窓に表示情報資源ごとの表示回数各種の情報資源 ( リンクターゲット ) 電子ジャーナルドキュメントデリバリサービス OPAC (3) 利用する情報資源を選択 (Clickthrough) 表示した情報源ごとの利用 ( クリック ) 回数図 1 SFX における状態遷移と記録されるログ表 1 SFX で取得できる統計情報番号得られる統計情報の種類 Query1 SFXサービスの利用頻度集計 ( 日月年単位 ) Query2 リンク元ソースごとのSFX 利用頻度集計 Query3 オブジェクトごとのSFX 利用頻度集計 Query4 リンクサービスごとのSFX 利用頻度集計 Query5 フルテキストへのリンクがあった ( なかった )SFX 利用頻度集計 Query6 SFXメニューに表示されたターゲットを集計 Query7 リンクターゲットごとのSFX 利用頻度集計 Query8 リンクターゲットのリンクサービスごとのSFX 利用頻度集計 Query9 電子ジャーナルタイトルごとの利用頻度集計 Query10 ターゲットごとの電子ジャーナルタイトル利用頻度集計 Query11 リンク元ソースごとの電子ジャーナルタイトル利用頻度集計 Query12 フルテキストが利用できなかったジャーナルの集計 Query13 リンク元ソースごとのドキュメントデリバリーサービスの利用頻度集計 Query14 電子ブックの利用頻度集計 Query15 フルテキストが利用可能だったが他のサービスが選択されたケースの集計 Query16 利用のなかった電子ジャーナルの集計 Query17 SFXメニューにサービスが何も表示されなかった回数 Query18 IPアドレスごとのSFXメニューおよびSFXサービスの利用回数 Query19 最も利用頻度の高い電子ジャーナル Query20 リンク元ソースごとの, フルテキストが利用できなかった電子ジャーナル電子ブックオブジェクト : 論文 (article), 図書 (book), 雑誌 (journal) など, 資料の種類リンクサービス : SFXが中間窓で表示するサービスの種類 getfulltext( 全文入手 ),getholding( 所蔵検索 ) などがある 425

3 情報を得ることができる ( 表 1) これらの統計情報は, 利用のあった年月日や期間 ( 直近一ヶ月, など ), また利用した端末の IP アドレスなどで絞り込んで出力することができる利用頻度については,Request(SFX に要求を送信した回数 ) と Clickthrough( 中間窓から利用する情報源を選択 ( クリック ) した回数 ) の 2 種で表される統計情報のうち Query2 リンク元ソースごとの SFX 利用頻度集計の合計値とリンク元ソース 5 件を抜粋したものを表 2 に示す表 2 は,2014 年に SFX に要求を送信した回数の合計が 1,785 回, 中間窓から利用する情報源を選択した回数の合計が 1,204 回であることを表しているここで, 差分の 581 回は中間窓は表示されたが, いずれの情報資源も選択しなかった回数を表すことになる getmesseagenofulltext getholding getrecommendation 表 2 Query2 の表示例 Source Requests Clickthroughs Requests Clickthroughs Total: 3,395 2,074 1,785 1,204 info:sid/google info:sid/sfxit.com:citation 1, info:sid/ info:sid/ info:sid/sfxit.com:azlist info:sid/sfxit.com:citation : 本表では図書館システムからSFXに問い合わせを行った回数を含む info:sid/sfxit.com:azlist : SFXの電子ジャーナルリストからの利用回数 getauthor リンク元ソースは info URI スキーマを用いた識別子 9) で表されるたとえば, 識別子が info:sid/ である場合, 情報源の種類を表す名前空間 (info:sid/) とドメイン名 ( ), コレクション名 (WoK:WOS) を表しており, この例は Thomson Reuters が提供する Web of Knowledge のうち Web of Science を表す識別子についてはサービス提供者が設定し OpenURL で送信されたものをそのまま集計対象としており,SFX 側で実際のサービスの名称等との対応などの処理は行われていないこのため, 実際のサービスとの対応はドメイン名などから推測することになるまた,OPAC など, 自館で構築した独自のサービスなどの場合は, info URI スキーマの命名規約に沿って適切な識別子を定める必要があるこのように,SFX の統計機能を用いて, どの文献データベースからどの雑誌の全文リクエストがあったかまたどの電子ジャーナルプラットフォームのどの雑誌がアクセスされたかなどの情報を得ることができる 4. ログ分析の例 4.1 検索結果からの情報入手行動の把握文献データベースを利用して検索を行い, 実際に自館で契約している電子ジャーナルの入手に繋がっているか, 入手できない場合に代替手段を提供できているかについて, その把握を試みる統計情報の把握と分析利用者がどのような文献データベース ( リンク元ソース ) getreference getwebserivce getwebsearch 図 2 SFX 中間窓の表示例とリンクサービスから SFX を経由して文献の入手を試みているかについては, 表 2 に示すとおりである Query4 リンクサービスごとの SFX 利用頻度集計では,SFX の中間窓に表示された各種のリンクサービスについて, その表示回数と利用回数が集計できる Query4 の出力結果にクリックした割合と注を加えたものを表 3 に示すいずれも,2013 年度及び 2014 年度を集計対象としているまた,SFX の中間窓の表示とリンクサービスの名称を対応させた例を図 2 に示すなお, 表 2 はリンク元ソースごとに SFX に Request を送信した回数, 表 3 はリンクサービス ( ターゲット ) ご 426

4 Service type Requests 2013 表 3 Query4 の表示例クリック Clickthrough した割 s 2013 合 Requests 2014 クリック Clickthrough した割 s 2014 合 Total: 15,495 2, % 9,819 1, % 合計 getreference 2, % 1, % 文献管理ツール getholding 2, % 1, % 所蔵検索 getwebservice 2, % 1, % ILL 依頼など getwebsearch 2, % 1, % Web 検索 getfulltxt 1,494 1, % 1, % フルテキストリンク getauthor % % 著者名検索 getmessagenofulltxt 1, % % フルテキストなしの表示 getrecommendation % % bxによる関連論文表示 NO SERVICE % % サービス表示なしとに Request の回数をそれぞれ集計したものであるため, 表 2 と表 3 で Request の Total の値は異なるまず表 2 からは,Web of Science などの文献データベースのほか,Google scholar や電子ジャーナルリストからの利用が比較的多いことが読み取れる info:sid/sfxit.com:citation については,SFX がもつ citation linker( 書誌情報を直接入力して SFX の中間窓を表示する機能 ) を表すサービスを提供している農林水産研究情報総合センターでは, この機能を ILL の依頼前に電子ジャーナルの購読有無や所蔵館の確認のために図書館システムから SFX への問い合わせに使用しており, この利用回数が含まれる次いで表 3 からは, 先行研究と同じくフルテキストリンクの利用が多いほか, 文献管理ツールや Web 検索, また ILL 依頼についてクリックした割合が増加していることが読み取れる具体的にどのような雑誌の入手が求められたかについては,Query11 リンク元ソースごとの電子ジャーナルタイトル利用頻度集計と Query20 リンク元ソースごとの, フルテキストが利用できなかった電子ジャーナル電子ブックから得ることができるここでは, 入手できなかった電子ジャーナルの詳細を把握するため, リンク元ソースとして info:sid/google を指定して Query20 を出力し, 表 4 にこのうち先頭の 5 件のみを示しているなお, OpenURL についてはリクエストされた URL がそのまま記載されており, 冗長となるため省略したなお, 他の Query においても,ISSN については OpenURL で要求されたものがそのまま記載されるこのため, 刊行途中での ISSN の変更や, 電子版と冊子体での ISSN の差違などがあっても異なる雑誌として記録される集計を行う際には注意されたい表 4 Query20 の表示例 Source: info:sid/google Date Requests ISSN - Title Publication Date OpenURL 2013/4/ International journal of human resource management 2013 ( 省略 ) 2013/4/ Reviews in Aquaculture 2013 ( 省略 ) 2013/4/ X - Crustaceana 2012 ( 省略 ) 2013/4/ Aquaculture nutrition 2013 ( 省略 ) 2013/4/ Aquacultural engineering 2003 ( 省略 ) 考察全体の利用回数や所蔵検索, フルテキストリンクについてクリックした割合の減少については, 表 2 で図書館システムから SFX への問い合わせが減少していることから, この機能の利用の有無の変化と捉えることができ, 特に利用者の行動によるものではないと考えられる注一方, 表 2 で Google scholar からの Request が増加していること, また表 3 で Web 検索が増加していることから, 利用者による文献検索について Web 検索などの方法の利用が増加していることが考えられる SCREAL 調査報告書 1) においても, 資料発見のためのツールとして Web 上の検索エンジンを月 1 回以上利用する割合が 91.3% に達していることから, 全体に最もよく用いられているとしていることからも, この考察を裏付ける ILL 依頼の増加については, 以下のような仮説をとることができる集計対象とした国際農林水産業研究センターにおいては,2013 年度から 2014 年度にかけて電子ジャーナルや電子ブックの購読誌数に増減はないしたがって, これまで電子ジャーナルにより入手できた論文を ILL により紙媒体で入手する必要は生じていないと考えられる一方, 利用できる文献データベースについても変更はないが, 文献検索のツールとして Web 上の検索エンジンの利用回数が増加していることから, 参照する文献と入手の必要性自体は増加しており, このため ILL の利用に繋がったものと考えることができるまた,Query20 の結果により, Google scholar で検索を行ったがオンラインで入手できなかった雑誌タイトルが明らかになっているリクエストの回数, 雑誌タイトルと ISSN またリクエストされた論文の発行年を得ることができ, これらを元に翌年以降の購入対象とするか否かなどの検討を行うこともできよう 4.2 文献管理ツールの利用の様態林が論じているとおり 10), EndNote, RefWorks, Mendeley など, 論文や図書を中心とした様々な文献のメタデータとフルテキストを手軽に管理整理することができる文献管理ツールの利用が進んでいる本項では,SFX の利用統計を元に, これら文献管理ツールの利用の一端の把握を試みる Query4 を具体的なサービス ( リンクターゲット ) に細分して集計したものが Query7 リンクターゲットごとの SFX 利用頻度集計と Query8 リンクターゲットのリンクサービスごとの SFX 利用頻度集計である表 5 Query7 のうち文献管理ツールに関する表示例 Target Clickthrough Clickthrough s 2013 s 2014 MENDELEY_LCL ISI_RESEARCHSOFT_EXPORT_TOOL 2 4 Query4 から得られた統計情報として文献管理ツールを表す getreference についてクリックした割合が増加していることは表 3 で示したが, この内訳を表 5 に示す表 5 は, 文献管理ツール (getreference) として設定された 2 つのリンクターゲットを Query7 から抜粋したもので, ISI_RESEARCHSOFT_EXPORT_TOOL(EndNote) と比較して Mendeley の利用数が高いことを示している EndNote,Mendeley ともに, 利用者がどのような雑誌 427

5 タイトルを記録したかを知る手段は一般にはない 11) が SFX の統計機能のうち Query10 ターゲットごとの電子ジャーナルタイトル利用頻度集計によりこれを把握することができる Altmetrics の測定サービスの一つを提供する ImpactStory の共同設立者,Jason Priem によれば, Mendeley などの文献管理ツールに保存する行為 (saved) も論文の閲覧 (scholary) や引用 (cited) と並ぶ論文のインパクトの一つであるとしている 12) SFX においては論文そのものではなく雑誌タイトルのみの集計であるが, altmetrics の観点からも活用できる可能性は高い表 5 の回数を評価に用いるか否かについてはさらなる検討と評価が必要であるか, 単に論文を読んだことだけでなく, 引用の前段階である保存を行った回数としてカウントすることで, 電子ジャーナルの詳細な評価に生かすことができると考える 5. おわりに本稿では, リンクリゾルバの一つである SFX を使用して, そのログを元にした統計情報によりどのような情報が把握できるか, また把握した情報を元にした分析の例について述べた 4 章では SFX の統計情報のうち,Query2 リンク元ソースごとの SFX 利用頻度集計を用いてどのリソースから文献入手を試みたかを把握したほか,Query4 リンクサービスごとの SFX 利用頻度集計およびこれを詳細に集計した Query20 リンク元ソースごとの, フルテキストが利用できなかった電子ジャーナル電子ブックや Query10 ターゲットごとの電子ジャーナルタイトル利用頻度集計を用いてどの雑誌タイトルがどのように利用されたかを把握する例を示したリンクリゾルバのログを集計した統計情報は, あくまでリンクリゾルバを経由したアクセスであり, 電子情報資源へのアクセスの一部であることに注意されたい主としてデータベースに設定されたリンクリゾルバへのリンクボタンを押した結果であるため,COUNTER などで取得できる電子ジャーナルの利用件数とは異なるしかし, リンクリゾルバのログデータには, データベースや OPAC を検索した結果を参照するだけでなく, 全文入手や所蔵の検索など, 検索の結果に対してなんらかの要求と要求に基づいた行動の結果が記録されているこのデータを用いることで, データベースや電子ジャーナルのアクセス数のみでは知り得ない文献の検索と入手に関わる利用者の要求の行動や一端を把握することができる図書館において利用者の情報要求を的確に把握し, これに合致するサービスを展開する必要があることはいうまでもないまた, サービスについて適切な評価も必要であるリンクリゾルバのログ解析は, 利用者の情報要求を把握するための一手段であり, 積極的に行うことで図書館サービスのさらなる向上に繋げることができると考える謝辞本稿で使用した SFX の統計情報の入手については, 農林水産省農林水産技術会議事務局筑波事務所研究情報課 ( 農林水産研究情報総合センター ) 村田竜一課長補佐にご協力とご指導を頂いたこの場にてお礼申し上げます註参考文献 01) 学術図書館研究委員会.SCREAL 調査報告書 : 学術情報の取得動向と電子ジャーナルの利用度に関する調査.( 電子ジャーナル等の利用動向調査 2011). [accessed ] 02) Counting Online Usage of Networked Electronic Resources の略称. 電子ジャーナルやデータベースなどを購読している図書館等に対して, 各ベンダーがその機関からの利用量を報告する際に準拠することが推奨されている国際的な基準. 記述書式など詳細は以下を参照のこと.COUNTER (Counting Online Usage of Networked Electronic Resources). [accessed ] 03) 宇陀則彦, 伊藤宏美, 松村敦. アクセスログに見る電子図書館利用の傾向 (< 特集 > 創立 20 周年記念第 16 回 (2008 年度 ) 年次大会 ( 研究報告会 & 総会 )). 情報知識学会誌.2008, vol.18,no.2,pp ) Stowers, E.; Tucker, C. Using link resolver reports for collection management. Serials Review. 2009, vol.35, no.1, p ) Mark G. Stengel. Using SFX to Identify Unexpressed User Needs. Collection Management, 2005, vol.29, no.2, p ) 林賢紀, 阪口哲男. 文献データベースと電子ジャーナルの利用行動に対するリンクリゾルバの影響の分析. 情報知識学会誌,2012,vol.22,no.3,p ) 福武亨, 小林晴子. 愛知医科大学における看護系利用者の情報探索行動. 医学図書館,2015,vol.62,no.2,p ) 林和宏. 研究論文の影響度を測定する新しい動き : 論文単位で即時かつ多面的な測定を可能とする Altmetrics. 科学技術動向.2013,no.134,p ) The info URI initiative, info URI Scheme. [accessed ] 10) 林豊. 大学図書館のサービスとしての文献管理ツール. カレントアウェアネス,2012,no.313,p ) Mendeley については,Mendeley Institutional Edition の契約により, 登録された自機関の利用者について, 雑誌タイトルごとの登録数を出力する機能が提供される. 12) Jason Priem. Altmetrics: The Next Step for Open Access, 第 3 回 SPARC Japan セミナー 2013 オープンアクセス時代の研究成果のインパクトを再定義する : 再利用と Altmetrics の現在,2013 年 10 月 25 日. [accessed ] Special feature: Information service improvement based on Data Analysis. Improvement of library operations by log analysis of the link resolver. Takanori Hayashi (Information Management Section Information and Public Relation Office Research Planning and Coordination Division Japan International Research Center for Agricultural Sciences, 1-1 Ohwashi, Tsukuba, Ibaraki JAPAN) 428

6 Abstract: By analyzing the access log of the link resolver, it is possible to grasp the service well used, it is possible to lead to improvement in the user's behavior grasping and services. In this paper, in order to contribute to the improvement of library operations through log analysis of the link resolver, it showed the method of log analysis as an example the SFX. Specifically, obtained using a statistical output function that SFX has, aggregate number of bibliographic databases what the user try to get article by, and journal title that search from a specific bibliographic database were not available online. This makes it possible to clarify the aspects of utilization that links information resources that cannot be grasped only usage statistics of electronic journals, it can contribute to improve operations. Keywords: Link Resolver / Electronic Journal / Bibliographic Database / Bibliographic Reference management software / S.F.X / Log analysis 429

電子リソースご利用上の注意 : 次の行為は契約によって禁じられています ( 利用規約 ) 1. 雑誌 1 冊すべてにわたるような大量のデータを一時にダウンロードすること 2. 第三者へのデータの転送 ( 電子的方法ハードコピーとも ) 3. 商用 ( 営利目的 ) の利用 4. 許可なくデータを翻

電子リソースご利用上の注意 : 次の行為は契約によって禁じられています ( 利用規約 ) 1. 雑誌 1 冊すべてにわたるような大量のデータを一時にダウンロードすること 2. 第三者へのデータの転送 ( 電子的方法ハードコピーとも ) 3. 商用 ( 営利目的 ) の利用 4. 許可なくデータを翻利用の手引きフルテキスト慶應義塾大学信濃町メディアセンターフルテキストの入手方法論文のフルテキストの入手方法について電子ジャーナルを中心に説明しています学外から利用する場合は利用の手引きリモートアクセスの使い方もご覧ください 1. 各種文献データベースで 1-1. PubMed@KEIO ( 慶應専用 ) -----------------------------------------------