Microsoft PowerPoint ppt

Transcription

1 認知症の人の権利擁護ー最後まで自分らしく生きるためにー Ⅰ. 自由とは 自己決定とは 自己決定権の由来 自由権 vs 社会権 自由権 : 国家からの自由 社会権 : 国家が保障する自由 積極的自由 vs 消極的自由 積極的自由 : 自分自身の主人である自由 消極的自由 : 他から干渉されない自由

2 ミルの他害原則 判断能力のある大人なら 自分の生命 身体 財産などあらゆる自分のものに対して 他人に危害を及ぼさない限り たとえそれが自己にとって不利益なものであったとしても 自己決定権を持つ ミルの他害原則を疑う (1) 判断能力のある大人 とは? どういう基準で 誰が決めるのか 硬直した原則論 vs 柔軟な個別的基準 ミルの他害原則を疑う (2) 生命 身体 財産など は自分のものか? 生命 身体は自分のものか? 自傷行為 自殺を止めるのは罪? 援助交際はなぜいけない? クローン人間に反対する根拠は? 臓器売買をして何が悪い? 人間を 意思する主体と 所有される対象とに分ける擬制 2 元論の行き着く先は???

3 ミルの他害原則を疑う (3) 他者に危害を加えない限り とは? 他者に関わらない行為というものがあるか? 人格と行為のアトミズムは仮想に過ぎない 現実には 個人の権利は 共同性の 場 という地に支えられた 図 人間はアトムとしては存在し得ず 必然的に社会的存在であらざるを得ない ミルの他害原則を疑う (4) 愚行権?? ミルの想定する人間とは 自己に最大の関心を持つのは自己 自己をもっともよく理解するのは自己 一般的推量に基づく社会の介入は危険 個性と自発性は尊重されるべき ミルの主張の根拠 成熟した大人の自由の行使は 必然的に真理に近づく 現代日本の社会に無条件に適用できるか? 現在の自由主義とその周辺 自由主義者は 文字通りの愚行権 破滅権を認め 自由の行使の向こう側には いかなる普遍的価値も想定しない 徹底した自己決定 自己責任 自己決定権に対するアンチテーゼ 共同体としての善 ( マッキンタイヤー ) 共通善に照らし ある種の自由の制限を容認 自己決定権は真の自己決定を疎外する ( 小松美彦 ) 正義の話をしよう (M. サンデル )

4 Ⅱ. 成年後見制度の概要 成年後見制度の理念 自己決定権の尊重 意思能力が損なわれた人で合っても 可能な限り 自己決定を尊重する 一方で そのために生じる不利益 ( 主として財産上の ) から 障害のある個人を守る ノーマライゼーション 障害があっても 普通に暮らせる社会システムの構築 被後見人等の欠格事項を減らす 民法上の成年後見制度 精神の障害により 判断能力が不十分であるために 契約等の法律行為における意思決定に支障がある人について 後見人等の機関がその判断能力を補うことにより 個人の人権を保証する制度

5 精神上の障害とは 知的障害 : 精神機能の発達が 生まれつき あるいは発達早期に障害される 精神病 : 統合失調症等の精神疾患の結果 判断力が損なわれる 認知症 : アルツハイマー病 脳血管障害 頭部外傷等により 一旦獲得された精神機能が失われる 現在の成年後見制度 (1) 公的後見人等の権限 後見人 同意権 取り消し権 : 日常生活に関する行為以外の行為 代理権 : 後見財産に関するすべての法律行為 保佐人 同意権 取り消し権 : 民法 12 条 1 項に定める法律行為 代理権 : 本人が同意し 家裁が認めた 特定の法律行為 補助人 同意権 取り消し権 : 本人が同意し 家裁が認めた 特定の法律行為 代理権 : 本人が同意し 家裁が認めた 特定の法律行為 特定の法律行為 : 民法 12 条 1 項に定める行為の一部 現在の成年後見制度 (2) 民法 12 条 1 項が定める法律行為 1. 元本の領収または利用 2. 借財または保証 3. 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為 4. 訴訟行為 5. 贈与 和解または仲裁契約 6. 相続の承認もしくは放棄または遺産分割 7. 贈与 遺贈の拒絶または負担付贈与 遺贈の受諾 8. 新築 改築 増築または大修繕 9. 民法 602 条の期間を超える賃貸契約

6 現在の成年後見制度 (3) 公的後見制度の申し立て権者 本人 配偶者 4 親等内の親族 検察官 市区町村長 親族からの申し立てが期待できない場合で 本人の福祉のために特に必要がある場合 老人福祉法第 32 条 知的障害者福祉法第 27 条の3 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第 51 条の11の2 現在の成年後見制度 (5-1) 任意後見制度 任意後見契約とは ( 任意後見契約に関する法律 ) 本人が任意後見人に対して 精神上の障害により判断能力が不十分な状態における 自己の生活 療養看護および財産の管理に関する事務のすべてまたは一部について代理権を付与する委任契約で 任意後見監督人が選任された時点からその効力が生じる旨の特約を付した公正証書契約 現在の成年後見制度 (5-2) 任意後見制度 任意後見人への同意権 取り消し権付与は可能か? 契約の内容によって同様の効果を持たせることは可能 任意後見契約の意思能力の有無は誰が判断するか? 公証人 任意後見監督人の選任申し立て権者 本人 配偶者 4 親等内の親族 任意後見人受任者

7 能力障害の程度と援助の制度 正常 自分の財産の管理 処分する能力 補助保佐後見 無能力 任意後見契約 任意後見の実施 日常生活自立支援事業 Ⅲ. 成年後見制度の現状 本人の性別 年齢等 性別 男性 :40.7% 女性 :59.3% 年齢 男性 :80 歳以上 31.0% 70 歳代 23.3% 女性 :80 歳以上 57.3% 70 歳代 23.1% 60 歳以上 : 男性 62.7% 女性 84.5%

8 成年後見制度の申し立て状況 (2009) 公的後見 :27,397 件 ( 前年比 +3.5%) 後見開始 :22,983 件 ( 同 +2.0%) 保佐開始 : 2,837 件 ( 同 +11.7%) 補助開始 : 1,043 件 ( 同 +10.1%) 任意後見監督人選任 :534 件 ( 同 21.1%) 審判結果 認容 : 91.7% 却下 : 0.2% その他 :8.1%( 取り下げ 死亡等 ) 成年後見等 申請理由 ( 平成 21 年 1 月 ~12 月 ) ( 最高裁事務総局家庭局 ) 成年後見等 申請者 ( 平成 21 年 1 月 ~12 月 ) ( 最高裁事務総局家庭局 )

9 成年後見人等と本人の関係 ( 最高裁事務総局家庭局 ) 成年後見関係事件の概要 ( まとめ ) ( 平成 21 年 1 月 ~12 月 ) ( 最高裁事務総局家庭局 後見類型が86.9% 市区町村長申し立てが増加 ( 件数で前年比 31.7% 増 割合も7% から9% に増加 ) 身上監護 (20%) 介護保険契約(5.6%) を申し立ての理由にする事例が増加 後見 保佐の ( 少なくとも )77.2% で鑑定なし 第 3 者専門職後見 法人後見が増加 Ⅳ. 成年後見制度の活用

10 認知症高齢者の財産の危機 日々の経済管理がうまくできない 資産があるのにうまく使えない 訪問販売などで無駄な買い物をする 詐欺などで資産をだまし取られる 身内に資産を使い込まれる 相続人に資産の活用を妨げられる 日常生活自立支援事業の利用生活支援が目的 経済被害からの保護は難しい 社協と契約 介護保険契約の援助 日常の少額な金銭管理 通帳 実印など重要なものの預かり 保管 同意権 取り消し権 代理権などはないので 資産保護 管理は難しい 手続きが手軽 廉価で助成もある 任意後見制度の利用ある程度資産のある人が将来に備える 契約締結時点で 契約能力があることが条件 ( 公証人が判断する ) いくつかの利用法がある 将来型 : 本来の望ましいあり方 速効型 : 契約と同時に監督人選任を申請する ( 悪用が少なくない ) 取り消し権 同意権 : 民法 120 条 2 項の規定に基づき 契約の中に含めることが可能

11 公的後見制度の利用能力に応じて 資産を保護 補助 : 一応のことはできるが 資産の管理 保護が不安 保佐 : かろうじて 1 人暮らしが可能だが資産管理ができない 後見 : 自分ではほとんど経済活動ができない 審判が出るまでの間の財産の保護 : 家庭裁判所の保全処分を求める Ⅴ. 診断書 鑑定書に関する問題 なぜ診断書 精神鑑定が必要か 成年後見には 2 つの側面 障害を持つ人保護する 障害を持つ人の権利を制限する 保護 の名の下に 制限 をするのなら 医学的な病気のために 保護が必要なほど能力の低下があるということを 確認しなければならない

12 法的効果と診断 鑑定の在り方 後見 : 本人の意思によらず 広範な 代理権 同意権 取り消し権 を後見人に与える 保佐 : 本人の同意によらない重要な 代理権 を保佐人に与える 厳密な鑑定が必要 補助 : 本人の同意のない権利制限はない 診断書のみ これが問題! 鑑定を依頼された医師の立場 馴染みの患者で 生活状況や家族関係も分かっている場合 診断書 鑑定書の作成は日常診療の一部 手元にある検査資料と情報で足りる 成年後見申請を目的として初診した患者の場合 診察 検査は健康保険の適用にならない 診断書 鑑定書作成に伴う責任は大きい 認知症に関する民事精神鑑定の実際 普通の診察と同じ ( ただし 全て私費診療 ) 問診 : 本人 家族等 身体疾患のスクリーニング 画像検査 (CT MRI MRA SPECT) 脳波検査 心理検査 (HDS-R MMSE WAIS-3 WMS 他 ) 上記に基づいて考察し 鑑定書を書く 障害が軽いほど検査は増える

13 精神鑑定の費用 1. 診療 検査 結果の分析に要する費用 ( 精神鑑定に要する診察 検査は 全て私費診療 ) 2. 診断書 鑑定書作成に要する実費 ( 医師の人件費 ) 3. 法的リスクを負う医師に対する保証 かかりつけの医師なら 1 は不要 3 も少ない Ⅵ. 成年後見制度の課題 自己決定の尊重の問題点 補助 保佐 任意後見における能力評価 後見 保佐でさえ80% 近くが鑑定省略 補助 任意後見の診断書は極めて不十分 本人の同意能力 契約能力の担保は不十分 家裁の審判が 悪用する人にお墨付きを与える 被補助人が 同意権 取り消し権 代理権の意味を理解できるか? 即時型任意後見契約は自己矛盾

14 身上配慮義務の問題点 身上配慮義務 が 身上配慮権 と誤解 ケア マネジメントを円滑にするための利用が増加 行政措置の肩代わりを地域包括に押し付けるような成年後見制度利用が増えている 身上配慮義務に医療同意権を含めるべきか 財産管理に関する権限に加えて 医療同意権まで持ってしまって大丈夫か? 親族後見人 = 相続人 第 3 者後見人 = 被後見人から報酬を受け取る 医療同意に際しては いずれも利益相反の恐れがある 成年後見実務を遂行するために 原因疾患 ( 知的障害 精神障害 認知症 ) によって 障害のされ方が違う 法制度 制度運用の矛盾 障害が軽いほど援助は難しい 障害が軽度人の制度ほど 悪用が簡単 身上監護は義務であって権限ではない 居所移動の自由は基本的人権 特養入居は居所指定に等しい 社会貢献型後見人 市民の感覚 常識は重要 ただし 独りよがり 自己満足の危険 無償であることの意義 低所得者でも利用できる 利益相反が起こりにくい 法律実務の知識 精神障害のマネジメントに関するスキルはいずれも素人 十分なバックアップ コンサルテーションが不可欠 先進的な試みのスタート

15 Ⅶ. 治療 ケア上の意思決定 意思能力を欠く患者の治療同意法律の盲点 何の規定もない 精神保健福祉法上の保護者 インフォームドコンセントの権限を持っているわけではない ( 札幌ロボトミー裁判 ) 成年後見人等 インフォームドコンセントの代諾権を与える程には 国民的議論が熟していない ( 最高裁 ) 親族 患者が成年の場合は何の権限もない 関係者として治療に代諾すること 法的権限はないが 違法行為ではない そもそも 手術同意書に家族が署名することにも法的裏付けはない 権限がないからといって代諾しなければ家族の居ない患者が治療から阻害される 後で問題になっても訴えられるのは治療をした医師であって同意者ではない

16 ケアのための代理同意 成年後見人等 身上監護義務の範疇 成年後見人ではない家族 やらざるを得ない 契約違反を訴える権限はない 日常生活自立支援事業の生活支援員等 本人の契約援助であって代諾権はない Ⅷ. 成年後見制度は単身高齢者を守れるか? 現行の保護制度は 病的な能力低下を要件とする 翠会和光病院 48

17 WAIS-3 評価点 10 の時の年齢群別粗点 日本版 WAIS-3 成人知能検査法理論マニュアル DavidWechsler 翠会和光病院 49 Ⅸ. まとめ 最後に ( 私見 ) 手続きの簡素化 身上監護機能の拡大 本人の意思を尊重した補助 任意後見の利用拡大に反対するのは難しい 柔軟に運用するなら 悪用を防ぐ手立てが必要 成年後見制度は 個人の人権を制限することによって その個人の財産を保護する主旨で設計された制度である 機能を拡大するなら制度設計の見直しが必要