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たつぞうたかはし
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解説 20160709 自動車向け Web 技術の標準化動向 Standardisation Activities of Web Technology for Automobiles 伊藤寛 *1 Hiroshi ITO 1. はじめに近年インターネット関連技術は飛躍的に進歩を遂げている.

1 解説自動車向け Web 技術の標準化動向 Standardisation Activities of Web Technology for Automobiles 伊藤寛 *1 Hiroshi ITO 1. はじめに近年インターネット関連技術は飛躍的に進歩を遂げている.2014 年には,W3C(World Wide Web Consortium: インターネットの仕様を作成している団体 ) からHTML5 ( Hyper Text Markup Language Version 5:Webで使われる言語 ) の勧告 ( 規格 **) が出された. 従来インターネットでWebブラウザは, 主に Webサイトから画像等のデータをパソコン等にダウンロードして表示させる, というように使われてきた. 自動車のような, 通信状況が刻々と変化する環境で安定的に使うことには制約があった. これに対して,HTML5で新たに追加された機能であるWebストレージは,JavaScript( プログラミング言語の一種 ) を端末側にダウンロードし, サーバとの通信が切れても端末側で動作させることを可能にした. これに加えて, サーバとの間の双方向通信を可能にするWebSocketという技術が導入された. この結果, 例えば, 自動車の情報をサーバに送信する, といったことが可能となった. これは, 従来, テレマティックスシステム等で実現されてきたプローブ情報システムをWeb 技術を使って実現できることを意味する. こうしたことから,W3C では,2012 年から自動車向けに必要となる仕様の検討作業を始めている. 本稿では, この活動の経緯と最近の動向について紹介する. ** W3Cでは, 策定される規格はRecommendation( 勧告 ) と呼ばれる. 2. 自動車向け Webプラットフォームの標準化活動自動車向けに必要な規格の検討作業は2012 年から始まっている. 最初にワークショップが開かれ,Web 技術の自動車への応用に関して議論が行われ, 関係者の期待が大きいことが確認された. これを受けて,2013 年にW3C 内に,W3C 会員外の参加が可能なビジネスグループが組織され, 必要な仕様の議論が行われた.2014 年に車両データに関する仕様案がまとまり, 公表された. これを受けて,W3C 内に正式規格 ( 勧告 ) にするための組織 (WG) が作られ, 現在, 審議が進んでいる. この一方, 国内でも総務省の支援を受けて, KDDI 総研が事務局となって, 自動車会社を含む民間の企業や団体による検討会が開催された. 以下, これらの活動の概要を紹介する Webの可能性討論自動車分野でのWeb 技術活用の可能性を議論する目的で,2012 年 11 月に, イタリアのローマで Web and Automotive Workshop( 以下ワークショップと略す ) が,2 日間に亘って開催された 1). Fig. 1 ワークショップWebページ *1 一般財団法人日本自動車研究所 ITS 研究部 1

2 参加者は63 名 ( 内, 日本からは11 名 ), 所属会社別では, 自動車会社 6 社, 自動車部品等の自動車関連 10 社の参加であった. 20 件の報告があり, それぞれの立場で,Web 技術への期待が表明された. 自動車メーカでは, Audi,Reault,BMWが, それぞれ, 次世代サービス, 車両データに関する API ( Application Program Interface) の標準化, データ取得とアプリの分離を訴えた. 部品メーカからは,HMI 関連, 自動車データ活用, オーディオボデー系の制御への活用といった期待感が示された. 全体として, 新しい技術を自動車に導入すること, そのために必要な標準化を進める, というのが, 参加者の一致した意見であった検討組織の新設ワークショップ参加者の意見を踏まえて,W3C では,Automotive and web platform business group( 自動車とWebプラットフォームに関するビジネスグループ ; 以下ビジネスグループと略す ) という組織を2013 年 2 月に新設した.W3Cにおけるビジネスグループという組織は,W3Cの勧告を作成する前段階の議論をするための組織形態で,W3Cの組織ではあるが,W3C 会員外でも参加費の支払いで参加が可能である 2) ビジネスグループ概要と変遷発足後 2013 年 3 月の時点では, グループには, 46 名が参加していた.KDDI,Vodafone,Intel, Nokia,LG ElectronicsといったIT 関連企業の他, Visteon 等の部品メーカが参加した. また規格化されたオープンソース車載インフォテインメント (IVI) ソフトウエアの広範な採用を促進する自動車業界団体のGenivi Allianceとして,BMWと PSAが参加していた.JARIもこの時期から参加している. 1 年後の2014 年 2 月には,38 組織, 約 100 名に拡大している. この中には,Ford, VW, Porsche, Fiat,Jaguar LR 等の自動車メーカが参加した. また国内からは,JEITAも参加している. 当初, IntelのAbramski 氏とQNXのGryc 氏が共同でリーダを務めた年 6 月現在, リーダは,OpenCarのBoys 氏, AlibabaのAn 氏,ETRIのLee 氏に交代し, 参加者総数は139 名を数えている. 必ずしも全員がアクティブなメンバーというわけではないが, 興味を持つ人が多いことは確かであるビジネスグループの検討内容と活動ビジネスグループ発足時にCharterが制定され, この中で, 検討の対象を, 車両データAPI 等の策定, 適合性検査案の策定, ユースケース, 関連報告書の作成と述べている. なお, 最終的に勧告 ( 規格 ) になった内容は, Contributor License Agreement (CLA) が適用され, 知的財産権の主張は行われない. 但し, 同じCharterで, 適合性検査規格, ユースケース等は, 知財権の放棄の対象から外されている. 活動は, 月例の電話会議と, 年数回の会合が中心である. これまでに下記の会合が開かれている年バルセロナ ( スペイン ), 東京 2014 年サンタクララ ( 米国 ), ヨーテボリ ( スウェーデン ), アナーバー ( 米国 ) 2015 年ソウル ( 韓国 ) 2016 年パリ ( フランス ) なお, 筆者は,2013 年の東京会合で, 当時,ISO TC204で進められていた, 車載ゲートウェイに関する標準化状況を紹介している. Fig. 2 ビジネスグループWebページ 2) 2

3 ビジネスグループの検討の状況ビジネスグループで最初に取り組んだ課題は, Charterにも記述された自動車情報に関するAPI である. これについては, 既に,GENIVI Alliance, Webinosプロジェクト,Tizenプロジェクト,QNX が仕様を検討していたため, これらを統合する作業が,Intel,LG 電子を中心に行われた 2 ). その結果,2014 年 12 月に以下の2つの仕様案としてまとめられ公開された 3). Vehicle Information Access API Vehicle Data Interface 前者は,Webアプリが,Webブラウザに自動車情報を取得する際の手続きを記述しているのに対して, 後者は, 取得するデータ項目を規定している. この仕様案には, 車のタイプ, ドア数といった変化しない内容の他, 車速, エンジン回転数, スロットル開度, 変速機位置, 軸トルクといった動的なものまで,77 種類の車両データが規定されている. 当初, 自動車業界に配慮して, 全ての項目について読み出しのみを可能とすることを前提に議論が進められてきた. しかし, 現在のナビゲーション等のIVI(In Vehicle Infortainment) システムで, エアコン設定等の一部のボデー系の制御を行っている現状に配慮して, こうしたデータ項目を中心に19 種類の書き込みを定義している. なお, 自動車情報は, ナビ,IVI 等のブラウザを搭載する機器に車載ネットワークから提供される情報に限られる. この部分は, 各自動車メーカの判断に委ねられている. 従って, 規定された全てのデータ項目が車両から取得できるわけではない, という点には注意が必要である. また, 車載ネットワークから, ナビ,IVIが情報を入手する頻度, 方法等も, これらの仕様案の対象外である. これらの仕様案の策定を受けて,W3Cの勧告 ( 規格 ) 策定のための組織であるAutomotive WG が2015 年 2 月に発足し, 約 50 人のメンバーで作業が進められており,2016 年中の勧告 ( 規格 ) を目指している 4 ). また, 車両情報に関する仕様案の完成を受けて, ビジネスグループでは以下を含む, 多数の個別規格案の検討が進められている. セキュリティメディアチューナナビゲーション Bluetooth 電話機能 Table 1 Vehicle Data Interface 案に規定されたデータ項目の例とそれらの読み出し (R), 書き込み (W) の種別種類車両情報項目例 R/W 基本情報車のタイプ, 寸法, 燃料等 R 車両の状態車速, エンジン回転数等 R ライト等前照灯, 室内灯, ホーン R/W メンテナンス走行距離, 油温, バッテリー等 R 単位, 言語言語, 単位系 R/W ボデーシート, ミラー, ステアリング位置, エアコン等 R/W 安全 ABS, エアバッグ,TRC 等 R ワイパー等ワイパー, ミラー等 R/W 3. 国内の活動以上述べてきたビジネスグループの活動には, 日本からも KDDI 総研, 慶応大学を始め, 多数の企業, 団体が参加貢献している年から,KDDI 総研が事務局となって, 自動車メーカを含む民間の企業や団体により検討会が開催された. この会合を通じて, 基本的な対応方針から, 個別の技術事項まで議論を行い,W3C のビジネスグループの参加メンバーを通じて, 日本はこの活動に貢献している年 12 月には,W3C のアジア地域のホストを務める慶応大学は,Web と車のセミナーを開催し, これまでの活動状況を紹介している 5). こうした標準化活動に加えて,2014 年度からは, 自動車分野への Web 活用のアイデア発掘のためのアイデアソンが開催され, 翌,2015 年度には, これを一歩進めて, アイデアを実装するハッカソンが開催された. 以下, これらについて紹介する Web とクルマのアイデアソン自動車情報に関する API の仕様案がまとまったことを受けて, それを実際にクルマに活用するアイデアを検討するために Web とクルマのアイデアソンが開催された (Fig. 3,4). 主催は,Web 3

とクルマのアイデアソン実行委員会で, 総務省, 一般社団法人情報通信技術委員会 (TTC) 及び JARI が後援をし, 民間企業 7 社の協賛で, 慶応大学三田キャンパスで,2015 年 3 月 28 日に開催された 6).

5 Webとクルマのハッカソン Webページ今回は, アイデアのみでなく, 実際にWebアプリケーションを開発し, 競い合うということで, 主催者側からは, 実際の走行データと, その際の前方映像を利用できる環境, 協賛各社のAPIが提供され, これらを使った開発が行われた (Fig. 6). Fig.

主催は,Web とクルマのハッカソン実行委員会で, 一般社団法人情報通信技術委員会 (TTC) 及び JARI が後援をし,17 社団体が協賛,5 社から API が提供された. このハッカソンには,11 チーム,50 名が参加した 7).

4 とクルマのアイデアソン実行委員会で, 総務省, 一般社団法人情報通信技術委員会 (TTC) 及び JARI が後援をし, 民間企業 7 社の協賛で, 慶応大学三田キャンパスで,2015 年 3 月 28 日に開催された 6). 39 名が参加し, 専門家からのチュートリアルに続き, グループ毎のアイデア検討が行われ, 発表, 審査が行われた. 車載カメラで取得する映像の活用や, やさしい教則, 運転のイライラを解消する提案等, 多様なアイデアが出された. Fig. 5 Webとクルマのハッカソン Webページ今回は, アイデアのみでなく, 実際にWebアプリケーションを開発し, 競い合うということで, 主催者側からは, 実際の走行データと, その際の前方映像を利用できる環境, 協賛各社のAPIが提供され, これらを使った開発が行われた (Fig. 6). Fig. 3 Web とクルマのアイデアソン Web ページ 7) Fig. 6 開発のために提供された環境 6) Fig. 4 参加者全員による記念撮影 3. 2 Web とクルマのハッカソンアイデアソンに続いて, 今度は, 実際に Web アプリを開発するハッカソンが,2016 年 1 月に 2 日間に亘って開催された. 主催は,Web とクルマのハッカソン実行委員会で, 一般社団法人情報通信技術委員会 (TTC) 及び JARI が後援をし,17 社団体が協賛,5 社から API が提供された. このハッカソンには,11 チーム,50 名が参加した 7). 実質 1 日の開発期間で, 各チームから, 様々なアプリケーションが発表された. その中には, 走行中の車両の挙動から, クルマ酔いの判定を行い, 運転者に知らせるアプリや, 走行場所に応じて, BGMや地図を切り替えるアプリ, 車両にかかる横 Gに応じて, スマートフォンの表示を傾けることで, 車内でのスマートフォン操作時のクルマ酔いを防止するアイデアまで, 様々なアイデアが具体化されていた (Fig. 7 ~ 9). 参加者の力量も高かったことも一因ではあるが, こうしたアプリケーションが実質 1 日でデモンストレーションできるレベルまで開発できたことで, 大きな可能性が感じられた. 4

7) Fig. 7 チュートリアルの様子今後は, こうした規格が有効に製品に活用され, ユーザに魅力的な製品が提供されることが望まれる. この一方, 昨今, 話題になっているサイバーセキュリティに関する備えも重要である. 現在の IVI で提供されている機能 ( エアコン温度設定等 ) を後退させないために, データ項目には, 書き込みの定義された項目が存在する.

org/2012/08/webandautomotive/su mmary.html Web 2 ) ビジネスグループ (W3C Automotive and Web platform business group )Wiki ページ https://www.w3.

org/community/autowebplatform/ 4) W3C Automotive WG Web ページ https://www.w3.org/2000/09/dbwg/details?group=760 43&public=1 5) W3C/ 慶応大学 Web と車のセミナー Web ページ https://www.w3.org/2014/12/09web+autokeio/ 6) Web と車のアイデアソン Web ページ Web https://www.

5 7) Fig. 7 チュートリアルの様子今後は, こうした規格が有効に製品に活用され, ユーザに魅力的な製品が提供されることが望まれる. この一方, 昨今, 話題になっているサイバーセキュリティに関する備えも重要である. 現在の IVI で提供されている機能 ( エアコン温度設定等 ) を後退させないために, データ項目には, 書き込みの定義された項目が存在する. これらが誤用されても, 運転の安全性に直接悪影響を及ぼすわけでは無いが, データの種類, 走行状況によっては危険な状況を生み出すことも考えられるため, こうしたことに関する十分な備えが必要と考えられる. 6) Fig. 8 発表の様子参考文献 1) Web and Automotive Workshop Web ページ, mmary.html Web 2 ) ビジネスグループ (W3C Automotive and Web platform business group )Wiki ページ i/main_page 3) ビジネスグループ (W3C Automotive and Web platform business group) Web ページ, 4) W3C Automotive WG Web ページ 43&public=1 5) W3C/ 慶応大学 Web と車のセミナー Web ページ 6) Web と車のアイデアソン Web ページ Web 7) Web と車のハッカソン Web ページ 7) Fig. 9 参加者全員の記念写真 4. まとめと今後の展望自動車向け Web 技術は, 車両情報に関する API/ データ項目の案の策定と, それに続く標準化活動が進んでおり, 順調に行けば, 今年中にも勧告 ( 規格 ) が出される状況になっている. これまで, 日本は, 自動車メーカを含めた情報共有, 意見集約に基づき, ビジネスグループメンバー, ワーキンググループメンバーが標準化活動に貢献している. 5

2013 年度第 2 回 W3C 日本会員会議 Automotive and Web Platform Business Group 活動概況 inde x 背景経緯 BG 概要これまでの会合概要会合集約 2013 年 8 月 26 日 KDDI 総研平林立彦 Copyright 2013 KD

2013 年度第 2 回 W3C 日本会員会議 Automotive and Web Platform Business Group 活動概況 inde x 背景経緯 BG 概要これまでの会合概要会合集約 2013 年 8 月 26 日 KDDI 総研平林立彦 Copyright 2013 KD 013 年度第回 W3C 日本会員会議 Automotive and Web Platform Business Group 活動概況 inde x 背景経緯 BG 概要これまでの会合概要会合集約 013 年 8 月 6 日 KDDI 総研平林立彦 1 背景と経緯年月経緯背景 0 1 0 1 3 11 1 01 0 03 04 05 06 11/14-15 Web & Automotive