地方自治関連立法動向 第5集 第193常会~第195特別会

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1 第 193 常会 ~ 第 195 特別会 地方自治関連立法動向第 5 集 監修公益財団法人地方自治総合研究所 下山憲治編 2018 年 6 月

2 目 次 発刊の辞下山憲治 3 第 1 部地方分権 地方創生関連法 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 平成 29 年 4 月 26 日法律 25 号 ) 通称: 第 7 次一括法 < 月刊自治総研 2017 年 12 月号より> 上林陽治 7 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 23 日法律第 71 号 ) 其田茂樹 47 第 2 部地方自治法改正 地方自治法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 9 日法律第 54 号 ) 内部統制および監査制度に係る改正 < 月刊自治総研 2017 年 8 月号より> 堀内匠 69 住民訴訟制度の改正 < 月刊自治総研 2018 年 1 月号より> 下山憲治 105 地方独立行政法人法に関する改正 < 月刊自治総研 2017 年 12 月号より> 其田茂樹 129 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 5 月 17 日法律 29 号 ) 上林陽治 155 第 3 部税 財政関係法 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 3 月 31 日法律第 2 号 ) 森稔樹 193 地方交付税法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 3 月 31 日法律第 3 号 ) 其田茂樹

3 第 4 部地方自治関連法 住宅宿泊事業法 ( 平成 29 年 6 月 16 日法律第 65 号 ) 通称: 民泊法 権奇法 243 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 4 月 26 日法律第 24 号 ) < 月刊自治総研 2018 年 2 月号より> 権奇法 269 水防法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 5 月 19 日法律第 31 号 ) 権奇法 297 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 2 日法律 52 号 ) 上林陽治 315 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 21 日法律第 69 号 ) 下山憲治

4 発刊の辞 下山憲治 地方自治総合研究所監修による 地方自治関連立法動向 第 1 集 ( 第 174 回 ~ 第 180 回通常国会 ) が 2013 年 8 月に発行され 今回の発行により第 5 集となる 地方自治関連立法動向を研究するねらいと意義は 地方自治総合研究所の最重要研究課題の1つである日本の地方自治制度の沿革を踏まえた地方自治法解釈を行うことにあり 当初から一貫している点である 地方自治法および地方自治制度は 今も変革期にあり 住民 自治体を取り巻く社会的 経済的状況の変化に対応し 訴訟制度を始め 地方自治法を中心とした改革にとどまらず 権限移譲など個別作用法に重点を置いて進められている 同時に 法律レベルだけではなく 政省令 場合によっては通知レベルまでも射程に入れて それが総体として 地方自治制度および地方自治法にいかなる影響を及ぼすのか あるいは 及ぼしうるのか 検討が必要となっている このような視角から この第 5 集では 第 193 回国会 ( 常会 2017 年 1 月 20 日から6 月 18 日までの 150 日間 ) から第 195 回国会 ( 特別会 2017 年 11 月 1 日から12 月 9 日までの39 日間 ) までの3 会期で制定改正された法律を対象としている なお 第 194 回国会 ( 臨時会 ) は 2017 年 9 月 28 日に召集されたが 同日に衆議院が解散され ( 総選挙期日 : 同年 10 月 22 日 ) 法案審査は行われていない 第 193 回国会では 内閣提出法案 72 件のうち 66 件が成立し 6 件が継続審査となった 衆議院議員提出法案 76 件のうち 9 件が成立し 60 件が継続審査で 1 件が審査未了 否決は2 件で撤回が4 件あった 参議院議員提出法案 110 件のうち 成立は1 件 参議院審査未了が1 件 参議院未付託未了 107 件 参議院撤回が1 件であった 以上のうち 第 5 集で取りあげる法律とその概要は 次のとおりである まず 地方分権 地方創生関連法としては 平成 28 年の地方からの提案等に関する対応方針 (2016 年 12 月 28 日閣議決定 ) として取りまとめられたもののうち 都道府県から指定都市等への事務 権限の移譲 (4 法律 ) や地方公共団体に対する義務付け 枠付けの見直し等 (6 法律 ) を一括して改正する 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 (2017 年 4 月 26 日法律 25 号 ) 外国専門人材の受入れなどを内容とする 国家戦略特別区域法 の改正 焼酎特区の創設を内容とする 構造改革特別区域法 の改正が行われたほか 構造改革特区に関して提案募集や計画の認定申請の期限を2022 年 3 月 31 日まで延長する 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律 (2017 年 6 月 23 日法律第 71 号 ) がある 次に 地方自治法等の改正としては 地方自治法について1 内部統制に関する方針の策定等 2 監査制度の充実強化 3 決算不認定の場合における長から議会等への報告規定の整備 4 地方公共団体の長等に対する損害賠償責任の見直し等 また 地方独立行政法人法について1 地方独立行政法人の業務への窓口関連業務等の追加 2 地方独立行政法人における適正な業務の確保からなり 広範な内容を含む 地方自治法等の一部を改正する法律 (2017 年 6 月 9 日法律第 54 号 ) がある さらに 非正規職員の任用根拠について 自治体ごとにまちまちであったものを 会計年度任用職員という採用類型を新設 統一化し また 会計年度任用職員に期末手当を支払えるようにした 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律 (2017 年 5 月 17 日法律 29 号 ) がある

5 税 財政関係法の改正としては 2017 年度税制改正の一環として 個人住民税の配偶者控除および配偶者特別控除の見直し 自動車取得税などの税率軽減措置の見直し等 居住用超高層建築物全体に係る固定資産税の見直し 地方税法第 1 章第 16 節 ( 犯則事件の調査等 ) の新設を主な内容とする 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律 (2017 年 3 月 31 日法律第 2 号 ) そして 毎年度の地方財政計画に基づいて必要な法改正を実施するもので 地方交付税法 特別会計に関する法律 地方財政法 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律を対象とする 地方交付税法等の一部を改正する法律 (2017 年 3 月 31 日法律第 3 号 ) がある 最後に 地方自治関連法の改正としては次のものがある 安全 衛生上の問題 騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルなど民泊をめぐって多発している社会的諸問題に対応すると同時に 急増する訪日外国人旅行者のニーズや宿泊需給の逼迫状況への対応を目的とした民泊の活用を図るための措置を講ずることを主な内容とする 住宅宿泊事業法 (2017 年 6 月 16 日法律第 65 号 ) 近年 増加傾向にある空き家 空き室を有効活用することで住宅確保要配慮者に対応するための措置として 都道府県等による賃貸住宅の登録制度の創設 登録住宅の改修 入居支援 住宅確保要配慮者居住支援法人の指定 家賃債務保証の円滑化 生活保護受給者の住宅補助費等に関する代理納付の推進等の制度を定めることを主な内容とする 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律 (2017 年 4 月 26 日法律第 24 号 ) 頻発 激甚化している水害に対応すべく 大規模氾濫減災協議会の設置 市町村による水害リスク情報周知制度 要配慮者利用施設の管理者等に対する避難確保計画の作成および避難訓練の実施の義務付け 高度の技術等を要するダム再開発事業や災害復旧事業等に関する国または水資源機構による権限代行制度の創設を主な内容とする 水防法等の一部を改正する法律 (2017 年 5 月 19 日法律第 31 号 ) 高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止 地域共生社会の実現を図るとともに 制度の持続可能性を確保することを目的に 介護保険法 医療法 社会福祉法 障害者総合福祉支援法 児童福祉法など31 本の法律の関連部分を一括して改正する 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 (2017 年 6 月 2 日法律 52 号 ) そして 虐待を受けている児童等の保護者に対する指導への司法関与 家庭裁判所による一時保護の審査の導入および接近禁止命令を行うことができる場合の拡大などを内容とする 児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律 (2017 年 6 月 21 日法律第 69 号 ) である なお 第 195 回国会では 内閣提出法案 9 件のうち 8 件が成立し 1 件が継続審査となった 衆議院議員提出法案 8 件のうち 2 件が成立し 継続審査が6 件 参議院議員提出法案 20 件のうち すべてが参議院未付託未了であった 第 195 回国会で成立した法律は 比較的少なく また その内容から本研究で対象とすべきものは見当たらなかった また この資料集で直接には言及されないものの 昨今の特区制度や行政文書の管理を巡る問題など国 地方の行政のあり方が問われていることも附記しておきたい 地方自治関連立法動向を研究するにあたっては 立法過程に着目しつつ 立法者意思の究明のほか 残された課題や新たな問題点などの指摘をも包括した報告を目指している このような意図が十分反映されているか さまざまなご指摘やご批判を受けつつ また 自らも省みて さらなる研鑽を続けていきたいと考えている この資料集が 従来と同様 地方自治に関心を持つ読者のお役に立ち 実り豊かな地方自治の展開に何らかの寄与ができれば幸いである なお 研究所資料として 地方自治総合研究所のホームページからもダウンロードできるようになっている

6 第1第 1 部 部- 1 - 地方分権 地方創生関連法 -5-

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8 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 平成 29 年 4 月 26 日法律 25 号 ) 通称 : 第 7 次一括法 上林陽治 はじめに 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 平成 29 年法律 25 号 )( 以下 第 7 次一括法 という ) は 193 通常国会において 2017 年 4 月 19 日に参議院本会議で可決 成立し 4 月 26 日に法律 25 号として公布された 第 7 次一括法は 2014 年から導入された 提案募集方式 に基づく地方からの提案を 内閣府の地方分権改革有識者会議 ( 座長 神野直彦東京大学名誉教授 ) ならびに 提案募集検討専門部会 ( 部会長 髙橋滋法政大学法学部教授 ) の審議 検討を経て 平成 28 年の地方からの提案等に関する対応方針 ( 平成 28 年 12 月 20 日閣議決定 以下 各年の対応方針については年を示し 対応方針 という ) として取りまとめられたもののうち 都道府県から指定都市等への事務 権限の移譲 (4 法律 ) や地方公共団体に対する義務付け 枠付けの見直し等 (6 法律 ) に関係する10 法律を一括して改正するものである 第 7 次一括法で改正される法律と改正内容は 次の通りである Ⅰ 都道府県から指定都市等への事務 権限の移譲 (4 法律 ) 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等の事務 権限を指定都市へ移譲等 ( 就学前の子どもに関する教育 保育等の総合的な提供の推進に関する法律 / 子ども 子育て支援法 ) 指定障害児通所支援事業者の業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査

9 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 等の事務 権限を中核市へ移譲 ( 児童福祉法 ) 指定障害福祉サービス事業者等の業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査等の事務 権限を中核市へ移譲 ( 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 ) Ⅱ 地方公共団体に対する義務付け 枠付けの見直し等 (6 法律 ) 地方公共団体が審査請求を不適法却下する場合における議会への諮問手続を事後報告に見直し ( 地方自治法 ) 農業共済事業を行う市町村等に対する家畜共済事業実施の義務付けの緩和等( 農業災害補償法 ) 都道府県による地域森林計画の一定の事項の変更等に係る国への協議を届出に見直し ( 森林法 ) 都道府県による土地利用基本計画の策定 変更に係る国への協議を意見聴取に見直し ( 国土利用計画法 ) 特別支援学校への就学のための経費支弁事務におけるマイナンバー制度による情報連携の項目追加 ( 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ) 公営住宅建替事業における現地建替要件の緩和等( 公営住宅法 ) 年の提案募集の取り組み 2013 年 4 月に内閣府に設置された地方分権有識者会議には 雇用対策部会 (2013 年 6 月設置 ) 地域交通部会 (2013 年 7 月設置 ) 農地 農村部会 (2013 年 10 月設置 ) 提案募集検討専門部会 (2014 年 8 月設置 ) の4つの専門部会が置かれたが 前三者の専門部会は 2015 年までにその主たる活動を終え 2016 年は 提案募集検討専門部会 のみが活動を継続した 提案募集方式とは 内閣総理大臣を本部長とし全閣僚で構成される地方分権改革推進本部第 5 回会合 (2014 年 4 月 30 日 ) において 地方分権改革に関する提案募集の実施方針 として決定されたものである 毎年少なくとも1 回 個々の地方公共団体等から地方分権改革に関する提案を広く募集し 内閣府で提案を受け付け 届けられた提案を内閣府が中

10 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 心となって調整を行い 関係府省の回答 それに対する提案団体からの見解の提出というやり取りを重ね その際 特に重要と考えられる提案については有識者会議又は専門部会で集中的に調査 審議を行った上で実現に向けた検討を進めて対応方針を固めるというものである そして 年末までに推進本部ならびに閣議で対応方針を決定し 法改正が必要な事項は所要の法律案を国会に提出するというものである また 提案の実現にむけた検討を行う方法として 提案募集方式 や 手挙げ方式 ( 全国一律の事務 権限の移譲が困難な場合に 個々の地方公共団体の発意に応じた選択的な移譲を求めるもの ) が導入されている (1) 2016 年は 3 回目の提案募集となる (2) (1) 2016 年提案募集の受付及び重点事項の決定 年提案状況 2016 年の提案募集にあたり 同年 3 月 16 日に開催された第 24 回地方分権改革有識者会議 第 37 回提案募集検討専門部会合同会議では 2015 年の提案募集の取り組みの総括を行った その中で 1 市区町村の提案団体数が低調 (2015 年提案募集における提案団体数 ( 市区町村 ):39/1,741 都道府県 :43/47) 2 今後の持続的な提案のために 地方公共団体において 現場を再点検すること等を挙げていた その上で 2016 年の提案募集については 提案団体には 引き続き 事前相談を必ず行うよう依頼するとともに 1 募集を2015 年よりもさらに前倒しして 追加 支障事例 共同提案を早期に照会することとし 具体的には 3 月 17 日募集開始 (2015 年は3 月 23 日 ) 6 月 6 日 ( 同 6 月 10 日 ) 募集受付終了後 直ちに 追加 支障事例 共同提案を照会する 2 市町村からの提案を掘り起すため 2016 年 3 月から5 月にかけ 内閣府主催の市町村説明会を各ブロックにて開催する 3 近隣自治体との連携を促進することとし 各種施策を連携して行っている近隣の自治体と 解決すべき地域の課題 制度の課題についてコミュニケーションを図り 提案につなげていただくよう依頼する 4 事前相談 本提案の様式を地方の意見を踏まえて (1) 提案募集検討専門部会の設置経過ならびに 1 回目の提案募集の状況については 拙稿 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ~ 第 5 次一括法 ~( 平成 27 年 6 月 26 日法律 50 号 ) 自治総研 (444) 頁以下を参照 (2) 2 回目の提案募集の状況については 拙稿 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ~ 第 6 次一括法 ~( 平成 28 年 5 月 20 日法律 47 号 ) 自治総研 (457) 頁以下を参照

11 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 簡素化する等の方針を決定した 2016 年 7 月 5 日の第 25 回地方分権改革有識者会議 第 38 回提案募集検討専門部会合同会議では 2016 年の地方からの提案件数やその傾向が報告されたが 提案件数は303 件で 2015 年の334 件から減少したというものであった ただし これまで低調であった市町村からの提案は 2015 年が39 団体 112 件だったものが 2016 年は 71 団体 164 件 ( 事前相談は94 団体 ) に増加していた これは 内閣府 地方分権改革推進室が積極的な啓発活動 ( 全国 15か所で市町村向け説明会を実施等 ) を進めた成果であると報告されている 一方 都道府県の提案件数は 239 件から195 件へと 4 分の3 強に減少している また提案内容については 権限移譲に関する提案が81 件から38 件に減少する一方で 規制緩和等に関する提案が253 件から265 件に増加した このうち 2016 年の提案においては 子ども 子育て支援関係の提案が2015 年の11 件から48 件へと増加していた これは2015 年 4 月に子ども 子育て関連 3 法が本格実施され 新制度の施行から1 年が経過したことが 当該分野における提案の増加につながったものと考えられている なお 提案募集の対象外である提案 の件数は 2015 年の9 件から2016 年は16 件へと増加しており 提案の 質 が問われる状況となっていることをあわせて指摘しておく 2 重点事項の決定第 25 回有識者会議 第 38 回提案募集検討専門部会合同会議では 303 件の提案のうち 内閣府と関係省庁との間で調整を行う提案 209 件を選定するとともに 提案募集検討専門部会で調査 審議する重点事項として31 項目 ( 提案件数 50 件 ) と前年 (2015 年 ) までの対応方針で2016 年以降の検討事項とされていた11 項目をあわせて 42 項目とすることを決定した 重点事項を決定するメルクマールは 前年と同様に 1 地方創生に資するもの 2これまでの地方分権改革の取り組みを加速 強化するもの 3 住民サービスの向上や適切な実施に直結するもので 部会での法的な視点からの専門的な調査 審議に馴染むもの 年度までに専門部会で重点事項として審議した事項のうち 2015 年までの対応方針で2016 年以降の検討事項とされているもの 及び2016 年の提案で内容が充実され 議論を深める必要があるものという4 点であった これらの結果 2016 年の地方からの提案 303 件は 表 1のように区分され 有識者会議等で検討が進められることとなった

12 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 表 年の地方からの提案と検討区分別の状況 2016 年の提案総数 :303 件 内閣府と関係府省との間で調整を行う提案重点事項 ( 地方分権改革有識者会議の提案募集検討専門部会で調査 審議を行う案件 ) 関係府省における予算編成過程での検討を求める提案 その他 提案団体から改めて支障事例等が具体的に示された場合等に調整の対象とする提案提案募集の対象外である提案 209 件 出典 ) 第 25 回有識者会議 第 38 回提案募集検討専門部会合同会議 (7 月 5 日 ) 資料 2 資料 6を一部改変して作成 50 件 33 件 61 件 45 件 16 件 重点事項のメルクマール1 地方創生に資するものは (1) 地方創生 (2) 一億総活躍社会の実現 (3) 子ども 子育て支援に細分されるが (1) 地方創生については 都市公園に設置できる施設に関する規制緩和 ( 都市公園法 ) 政令改正 ( 提案団体 : 釧路市 八王子市 ) など4 件 (2) 一億総活躍社会の実現については 特別養護老人ホーム と 障害者向けのグループホーム の合築に関する規制緩和 ( 障害者総合支援法 ) 省令改正 ( 提案団体 : 特別区長会 ) など4 件 (3) 子ども 子育て支援については 幼保連携型認定こども園の設備に関する基準の緩和 ( 就学前の子どもに関する教育 保育等の総合的な提供の推進に関する法律 ) 省令改正 ( 提案団体 : 兵庫県等 ) など10 件であった また 重点事項に係る提案のうち 改正を求めるレベルで分類すると 法律改正を求めるものが23 件 政令改正 6 件 省令改正 7 件 通知改正 2 件 その他 4 件である なお 第 7 次一括法による法改正につながった重点事項の提案 ( 一部を含む ) は 23 件中次の5 件で うち3 件は前年度以前からの引継ぎ検討事項であることから 法改正の壁の厚さが窺われる結果となった 大分市提案 指定障害児通所支援事業者の指定等の権限の都道府県から中核市への移譲 ( 児童福祉法 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 ) 関西広域連合 九州地方知事会等提案 マイナンバー法が定めるマイナンバー利用事務について 特別支援学校への就学奨励事務について生活保護関係情報を追加

13 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ( 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ) 2014 年案件のフォローアップ 都道府県の地域森林計画に係る国の同意協議の廃止 ( 森林法 ) 2015 年案件のフォローアップ 土地利用基本計画に係る国への事前協議の廃止等 ( 国土利用計画法 ) 2015 年案件のフォローアップ 公営住宅建替事業における現地建替要件の緩和 ( 公営住宅法 ) (2) 検討状況内閣府と関係省庁との間で調整を行う提案については 2016 年 7 月 6 日に関係府省に対して検討要請が行われ 8 月 3 日に第 1 次回答が取りまとめられた この第 1 次回答に対する地方側の意見は厳しく 対応困難や今後検討とされたものが多く 今後の検討過程で各都道府県の提案全般について 提案の実現に向けて 積極的な検討を求める ( 全国知事会 地方分権改革に関する提案募集に係る意見 ) (3) というものだった 重点事項については 提案募集検討専門部会で 8 月 2~5 日にかけて各府省 8 月 30 日には地方三団体との間で集中ヒアリングが実施された 地方三団体のヒアリングでは 義務付け 枠付けの見直しに係る 従うべき基準 について 全国知事会が速やかな廃止または参酌すべき基準化を進めるとともに 地方分権改革推進委員会の第 2 次 第 3 次勧告に従って見直すように求めた 全国市長会は 提案に対する積極検討を求め 具体例として幼保連携型認定こども園の設備に関する基準の緩和 ( 都市部では園庭を整備することが困難なことから その位置及び面積について 現在 従うべき基準 とされているものを 参酌すべき基準 に見直す ) について 保育の質の確保を前提とすることなどを 意見 のなかで示した (4) 一方 内閣府では 関係府省との間で調整を行う提案について 提案団体及び地方六団体に対する意見照会を行った後 9 月 7 日には関係府省に対する再検討要請を行った そしてこれに対する関係府省からの第 2 次回答は10 月 6 日に取りまとめられ 提案募集検討委員会では 10 月中に関係府省からの第 2 次集中ヒアリングを実施した (3) 第 26 回地方分権改革有識者会議 第 45 回提案募集検討専門部会合同会議 (2016 年 9 月 6 日 ) 資料 3-1 (4) 注 (3) 資料 3-2 全国市長会 意見

14 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 集中ヒアリングでは たとえば 指定障害児通所支援事業者の指定等の権限の都道府県から中核市への移譲 提案に関し 厚生労働省はこれを是認する方向で検討すると回答する一方 土地利用基本計画に係る国との協議 について 2015 年の対応方針の閣議決定が廃止を含めた適切なあり方について検討となっているのに対し 国土交通省の回答はこの時点で 存置 とする姿勢を崩さなかったことから 同委員会審議で激しいやり取りとなった (5) (3) 2016 年の地方からの提案等に関する対応方針この後 内閣府と関係府省との調整を経て 2016 年の地方からの提案等に関する対応方針は 11 月 17 日に開催された第 27 回地方分権有識者会議 第 51 回提案募集検討専門合同会議において取りまとめられた そして12 月 20 日の地方分権改革推進本部第 10 回会議において同対応方針が決定され 同日 閣議決定された 決定された対応方針では 法律の改正により措置すべき事項に係る所要の一括法案等を193 通常国会に提出することを基本とするとした上で 現行規定で対応可能な提案については その明確化が重要であるとの地方分権改革有識者会議での議論等を踏まえ 地方公共団体に対する通知等を行うこととし 調査を行うなど引き続き検討を進めることとしたものについては 関係府省とも連携しつつ 内閣府においてフォローアップを行い 検討結果については 逐次 地方分権改革有識者会議に報告するとしている そして 事務 権限の移譲に伴う財源措置その他必要な支援として 移譲された事務 権限が円滑に執行できるよう 地方税 地方交付税や国庫補助負担金等により 確実な財源措置を講ずるとともに マニュアルの整備や技術的助言 研修や職員の派遣などの必要な支援を実施 することとされた なお対応方針の概要では 2016 年の主な成果として表 2の事項を列記し 地域資源の利活用等による地方創生や 認定こども園の整備促進 病児保育実施地域の拡大等の子ども 子育て支援に資する提案が多く実現するなど 地方の現場で困っている具体的な支障に対し きめ細やかに対応することができたとしている また 2016 年の対応方針では 地方からの提案 303 件のうち 府省からの第 1 次回答への意見照会に対し提案団体が再検討を求めなかったもの等を除く196 件のうち 150 件 (76.5%) について 実現 対応 するとなったとしている ( 表 3 参照 ) 確 (5) 第 50 回地方分権改革有識者会議提案募集検討専門部会 (2016 年 10 月 24 日 ) 議事概要

15 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - かに実現 対応の割合は この 3 年間で最も高いが 絶対数は 3 年間で最も少ないこ とに留意したい 表 年の主な成果 表 年の地方からの提案に関する対応状況 年 分類 提案の趣旨を踏まえて対応 現行規定で対応可能 小計 実現できなかったもの ( 件数 ) 合計 実現 対応の割合 2014 年 % 2015 年 % 2016 年 % 出典 ) 第 10 回地方分権改革推進本部 (2016 年 12 月 20 日 ) 平成 28 年の地方からの提案に関する対応状況 ( 資料 2)

16 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 2. 第 7 次一括法の概要 2017 年 3 月 3 日に閣議決定された第 7 次一括法は 幼保連携型認定こども園認可等の権限を持つ指定都市に 幼稚園型 保育所型及び地方裁量型認定こども園など幼保連携型以外の認定こども園の認定等の事務 権限を都道府県から移譲することなどの事務 権限移譲関係 4 法律や 地方公共団体が審査請求を不適法却下する場合における議会への諮問手続を事後報告に見直しすること並びに公営住宅を集約する場合の近接地への建て替えを公営住宅建て替え事業に追加するなど 地方公共団体に対する義務付け 枠付けの見直し等の6 法律 あわせて10 法律を一括して改正するものである Ⅰ 都道府県から指定都市等への事務 権限の移譲 (4 法律 ) 1 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等の事務 権限を指定都市へ移譲等 ( 就学前の子どもに関する教育 保育等の総合的な提供の推進に関する法律 3 条関係 ) 1 指定都市の区域に所在する幼保連携型認定こども園以外の認定こども園 ( 幼稚園型 保育所型及び地方裁量型 ) の認定に係る事務 権限を 指定都市の長が行う 提案団体等 当提案は 2015 年の対応方針において 指定都市に移譲する方向で検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる とされていたものである 2015 年の提案団体は 指定都市市長会である 内容 就学前の子どもに関する教育 保育等の総合的な提供の推進に関する法律 ( 以下 認定こども園法 という ) は 国及び地方公共団体以外の者が 幼保連携型認定こども園を設置 廃止等を行おうとするときには 都道府県知事 ( 指定都市等の区域内にあっては 当該指定都市等の長 ) の認可を受けなければならないと規定している (17 条 1 項 ) が 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園については 幼稚園又は保育所等の設置者はその設置する施設が都道府県の条例で定める要件に適合している旨の都道府県知事 ( 一定の場合には 都道府県の教育委員会 ) の認定を受けることができるものとしていた (3 条 1 項 ) 第 7 次一括法は 指定都市における窓口の一本化による事業者の利便性の向上を図るとともに 指定都市による計画的な施設整備による子育て環境の充実に資する観点から 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園 ( 幼稚園型 保育所

17 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図 1 都道府県から指定都市への幼保連携型以外の認定こども園の認定権限の移譲 権限都道府県指定都市 幼保連携型認定こども園の認可等 〇 幼保連携型以外の認定こども園の認定等 〇 型及び地方裁量型の認定こども園 ) の認定等の事務 権限を 指定都市へ移譲することとした 施行日 2018 年 4 月 1 日 2 指定都市又は中核市の区域に所在する認定こども園の変更の届出に係る事務 権限を 指定都市の長又は中核市の長が行う ( 認定こども園法 29 条 30 条関係 ) 提案団体 大阪府 滋賀県 兵庫県 和歌山県 鳥取県 徳島県 京都市 堺市 関西広域連合 内容 認定こども園法 28 条の規定により周知された申請事項等の変更に係る届出の受理 報告の徴収等の権限を 都道府県知事から認定等の権限を有する市 ( 幼保連携型認定こども園は指定都市 中核市に移譲済み幼保連携型認定こども園以外の認定こども園は1により指定都市に移譲 ) へ移譲することにより 認定こども園の運営状況を一体的に把握した上で効果的な指導 監督を実施できる 施行日 2018 年 4 月 1 日 2 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定基準等の事務 権限を指定都市へ移譲等 ( 子ども 子育て支援法 34 条関係 ) 提案団体等 当提案は 2015 年対応方針において 指定都市に移譲する方向で検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる とされていたものである 2015 年の提案団体は 指定都市市長会である 内容 先述の1の通り 指定都市の区域に所在する幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等に係る事務 権限が指定都市に移譲されることに伴い 指定都市の区域内に所在する同施設が遵守すべき基準を 当該指定都市が条例で定める基準に改めることとした 施行日 2018 年 4 月 1 日 3 指定障害児通所支援事業者の業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査等

18 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - の事務 権限を中核市へ移譲 ( 児童福祉法 21 条の5の25から21 条の5の27 関係 ) 提案団体等 大分市 全国知事会 全国市長会からの意見では 手挙げ方式も含めた検討を求めるとしていた 内容 障害児通所支援を行う事業者の指定は その者の申請により 障害児通所支援の種類及び障害児通所支援事業を行う事業所 ( 以下 障害児通所支援事業所 という ) ごとに 都道府県知事が行っている (21 条の5の15 第 1 項 ) (6) また 障害児通所支援事業所等の指定通所支援の提供に関係のある場所に立ち入り その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとしている ( 立入検査等 21 条の5の26 第 1 項 ) 第 7 次一括法は 児童福祉法を改正し 指定障害児事業者等に係る業務管理体制の整備に関する事項の届出のうち 指定に係る障害児通所支援事業所のすべてが一の中核市の区域に所在する指定障害児通所支援事業者による届出については これまでの都道府県知事に代えて 当該中核市の長に届け出なければならないものと改めることとした (21 条の5の26 第 2 項 3 号 同条 3 項 ) また 中核市の長も 立入検査等 勧告 措置命令をすることができることとした 施行日 2019 年 4 月 1 日 図 2 都道府県から中核市への指定障害児通所支援事業者の業務管理体制の整備に関する 届出の受理 立入検査等の事務 権限の移譲 権 限 都道府県 中核市 指定 立入検査等 業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査等 〇 指定 立入検査等 は政令改正により移譲 (6) 指定都市及び児童相談所設置市 ( 横須賀市及び金沢市に限る ) における障害児通所支援事業者の指定は これらの市の長が行う ( 児童福祉法 59 条の 4 児童福祉法施行令 45 条 1 項 45 条の 2 及び 45 条の 3 第 1 項 )

19 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 4 指定障害福祉サービス事業者等の業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査等の事務 権限を中核市へ移譲 ( 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 51 条の2から51 条の4 51 条の31から51 条の33 関係 ) 提案団体等 当提案は 2015 年の対応方針において 平成 27 年度に実施された指定都市への移譲の状況を踏まえ 地方公共団体からの意見聴取を行った上で 中核市に移譲する方向で検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる とされていたものである 2015 年の提案団体は宇都宮市 内容 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 は 都道府県知事が指定した事業者 ( 以下 指定障害福祉サービス事業者 という ) 及び指定障害者支援施設等の設置者 ( 以下 指定事業者等 という ) は 都道府県知事 指定都市の長 厚生労働大臣に対し 業務管理体制の整備に関する事項を届け出なければならないものとしている ( 同法 51 条の2 第 1 項から3 項 ) また 指定事業者等の業務管理体制の整備に関して必要があると認めるときは 当該事業に関係のある場所に立ち入り その設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させることができるものとしている ( 立入検査 51 条の3 第 1 項 51 条の32 第 1 項 ) 第 7 次一括法では 指定事業者等に係る業務管理体制の整備に関する事項の届出のうち 指定に係る事業所又は施設のすべてが一の中核市の区域に所在する指定事業者等による届出については 当該中核市の長に届け出なければならないものと改めることとし あわせて 立入検査権限も中核市に付与することとした 施行日 2019 年 4 月 1 日 図 3 指定障害福祉サービス事業者等の業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検 査等の事務 権限の中核市への移譲 権限都道府県中核市 指定 立入検査等 業務管理体制の整備に関する届出の受理 立入検査等 〇 〇

20 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - Ⅱ 地方公共団体に対する義務付け 枠付けの見直し等 (6 法律 ) 5 地方公共団体が審査請求を不適法却下する場合における議会への諮問手続を事後報告に見直し ( 地方自治法 206 条 229 条 231 条の3 238 条の7 243 条の2 244 条の 4 関係 ) 提案団体 松山市 内容 地方自治法 は 1 給与その他の給付に関する処分 (206 条 ) 2 分担金 使用料 加入金又は手数料の徴収に関する処分 (229 条 ) 3 督促 督促手数料及び延滞金の徴収 滞納処分 歳入の還付 徴収金の徴収又は還付に関する書類の送達及び公示送達 (231 条の3) 4 行政財産を使用する権利に関する処分 (238 条の 7) 5 会計管理者 会計管理者の事務を補助する職員 資金前渡を受けた職員 占有動産を保管している職員又は物品を使用している職員等に対する賠償命令 (243 条の2) 6 公の施設を利用する権利に関する処分 (244 条の4) について審査請求がなされたときは 普通地方公共団体の長は 議会に諮問して 却下裁決 棄却裁決又は認容裁決いずれかの決定をしなければならないものとし 議会は いずれの場合においても 諮問があった日から20 日以内に意見を述べなければならないものとしていた 第 7 次一括法では 2014 年の改正行政不服審査法が 審査請求を不適法として却下する場合に第三者機関への諮問等を省略できる旨の規定を置いていることに鑑み また地方公共団体の事務処理の効率化や審査請求を行う住民等の早期の権利確定に資する観点から 普通地方公共団体の長に対してなされた前出 1~6の処分等についての審査請求が不適法であり却下する場合には 議会への諮問を不要とする (206 条 2 項 229 条 2 項 231 条の3 第 7 項 238 条の7 第 2 項 243 条の2 第 11 項 244 条の4 第 2 項 ) とともに 議会への諮問をしないで審査請求を却下したときは その旨を議会に報告しなければならないこととした (206 条 4 項 229 条 4 項 231 条の3 第 9 項 238 条の7 第 4 項 243 条の2 第 13 項 244 条の4 第 4 項 ) なお 改正規定は 地方公共団体の機関の処分についての審査請求であって施行日以後にされる地方公共団体の機関の処分に係るものについて適用される 施行日 2018 年 4 月 1 日

21 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図 4 地方公共団体が審査請求を不適法却下する場合における議会への諮問手続の変更 審査請求が不適法な場合であり 却下する場合でも議会への諮問が必要 審査請求が不適法な場合で 却下する場合には 議会への諮問手続を廃止し 事後報告とする 6 農業共済事業を行う市町村等に対する家畜共済事業実施の義務付けの緩和等 ( 農業災害補償法 ) 1 農業共済事業を行う市町村等に対する家畜共済事業実施の義務付けの緩和 ( 農業災害補償法 85 条 10 項関係 ) 提案団体 兵庫県伊丹市 内容 農業共済事業は 農業災害補償法 に基づき 不慮の事故( 自然災害 病虫害 鳥獣害等 ) によって農業者が受ける損失 ( 収穫量の減少等 ) を農業者 ( 共済加入者 ) の掛金負担に基づく保険の仕組みにより補塡し 農業者の経営安定を図るものである 農業共済組合は 農業共済事業のうち 農作物共済 及び 家畜共済 を行わなければならないものとしている(85 条 1 項 ) が 農作物共済については 一定の場合 農作物の全部又は一部を共済目的の種類としないことができる ( 同条 2 項 ) としている 第 7 次一括法では 農業共済組合及び市町村の事務負担の軽減に資する観点から 農作物共済のみに適用していた85 条 2 項等の規定を家畜共済にも準用することとした ( 新 10 項及び85 条の7) これにより 農業共済組合及び農業共済事業を行う市町村は 対象となる畜産農家の状況を踏まえて 家畜共済の共済目的の全部又は一部の種類を共済目的から除外することができることとなり 現行法では必須事業であった家畜共済を行わないことも可能となる 施行日 公布の日から起算して3 月を経過した日 2 農業共済組合連合会がない都道府県における都道府県農業共済保険審査会の必置義務の見直し ( 農業災害補償法 143 条の2 関係 ) 提案団体 石川県

22 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 内容 農業災害補償法は 都道府県に都道府県農業共済保険審査会の設置を義務付けている (143 条の2 第 1 項 ) が 農業共済組合連合会が存しない都道府県が存する場合があり得ることから 第 7 次一括法では 都道府県の区域をその区域とする農業共済組合連合会がない場合には 当該都道府県に都道府県農業共済保険審査会を置かないことができることとした 施行日 公布の日 7 都道府県による地域森林計画の一定の事項の変更等に係る国への協議を届出に見直し ( 森林法 6 条 5 項関係 ) 提案団体等 当提案は 2014 年の対応方針において 都道府県知事の地域森林計画に係る農林水産大臣への同意を要しない協議 (6 条 5 項 ) に関し 当該計画の内容のうち 委託を受けて行う森林の施業又は経営の実施 森林施業の共同化その他森林施業の合理化に関する事項 (5 条 2 項 5 号の2) に係る協議については 見直す方向で検討し 森林 林業基本計画の変更 ( 森林 林業基本法 11 条 7 項 ) に合わせて結論を得る とされていたものである 2014 年の提案団体は愛知県と福島県である 内容 森林法 は森林計画制度を定め 農林水産大臣は全国森林計画を立て(4 条 1 項 ) また 都道府県知事は 全国森林計画に即して 民有林について森林計画区 ( 全 158 計画区 ) 別に 5 年ごとに 10 年を1 期とする地域森林計画を立てなければならない (5 条 1 項 ) 都道府県知事が 地域森林計画を立て 又はこれを変更しようとするときは 農林水産大臣に協議しなければならないものとし (6 条 5 項前段 ) さらに 地域森林計画に定める事項のうち 森林の整備及び保全の目標 伐採立木材積 造林面積 間伐立木材積及び保安林の整備については 農林水産大臣の同意を得なければならないものとしている ( 同項後段 ) 第 7 次一括法では 地域森林計画において定める事項のうち 委託を受けて行う森林の施業又は経営の実施 森林施業の共同化その他森林施業の合理化に関する事項については 協議から届出に改めることとした 施行日 公布の日から起算して3 月を経過した日 8 都道府県による土地利用基本計画の策定 変更に係る国への協議を意見聴取に見直し ( 国土利用計画法 9 条関係 ) 提案団体等 当提案は 2015 年対応方針において 土地利用基本計画の策定及び変更に係る国土交通大臣に対する協議 (9 条 ) については 今後の経済社会情勢に即

23 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - した土地利用基本計画制度の在り方の検討の状況及び都道府県の意向を踏まえ 廃止を含めた適切な在り方について検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる とされていたものである 2015 年度の提案内容は 1 国土利用計画法に基づく土地利用基本計画策定の見直し 2 都道府県の土地利用基本計画の変更に係る国土交通大臣への協議の事後報告への変更 3 土地利用基本計画の策定 変更に係る国土交通大臣への協議の意見聴取への変更であり 提案団体は それぞれ以下の通りである 1 関西広域連合 ( 共同提案 ) 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 和歌山県 鳥取県 徳島県 2 栃木県 3 広島県 内容 国土利用計画法は 国土利用計画制度及び土地利用基本計画制度を定め 国は 国土の利用に関する基本的な事項について全国計画を定め (5 条 1 項 ) 都道府県は 全国計画を基本に当該都道府県の区域における国土の利用に関し必要な事項について都道府県計画を定める (7 条 1 項 2 項 ) ものとするとともに 全国計画及び都道府県計画を基本として 当該都道府県の区域について 土地利用基本計画を定めるものとしている (9 条 1 項 9 項 ) また都道府県は 土地利用基本計画を定める場合には あらかじめ 同法 38 条 1 項の審議会その他の合議制の機関 ( 以下 審議会等 という ) 及び市町村長の意見を聴くとともに 国土交通大臣に協議しなければならないとする ( 同条 10 項 ) また国土交通大臣は この協議を受けたときは 関係行政機関の長に協議しなければならないものとしている ( 同条 12 項 ) 第 7 次一括法では 都道府県による土地利用基本計画の策定手続に係る国土利用計画法 9 条を改正し 都道府県は 土地利用基本計画を定める場合には あらかじめ 審議会等並びに国土交通大臣及び市町村長の意見を聴かなければならないと改め ( 同条 10 項 ) 国土交通大臣との協議は不要とし 意見を聴くのみで足りることとした これに併せ 国土交通大臣は 意見を述べようとするときは あらかじめ 関係行政機関の長の意見を聴かなければならないと改められた ( 同条 11 項 ) 施行日 公布の日 9 特別支援学校への就学のための経費支弁事務におけるマイナンバー制度による情報連携の項目追加 ( 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律別表第二関係 ) 提案団体 京都府 滋賀県 大阪府 兵庫県 和歌山県 鳥取県 徳島県 京都市

24 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 関西広域連合 内容 特別支援学校への就学奨励に関する法律 は 都道府県について 1 当該都道府県が設置する特別支援学校 2 当該都道府県内の市町村が設置する特別支援学校 3 当該都道府県内の私立の特別支援学校への児童等の就学による保護者等の経済的な負担を軽減するため その負担能力の程度に応じ 就学に必要な経費のうち全部又は一部を支弁しなければならないとしている (2 条 1 項 ) 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ( 以下 マイナンバー法 という ) は 19 条において 何人も 同条各号のいずれかに該当する場合を除き 特定個人情報の提供をしてはならないと規定した上で 同条 7 号において 別表第二に限定列挙する情報提供を求めることができる者 ( 情報照会者 ) が 所定の情報を提供することができる者 ( 情報提供者 ) に対し 情報照会者の所定の事務を処理するために必要な特定個人情報の提供を求めた場合には 当該情報提供者が情報提供ネットワークシステムを使用して当該特定個人情報を提供すること ( いわゆる情報連携 ) ができるものとしている 第 7 次一括法では 文部科学大臣又は都道府県教育委員会が 特別支援学校への就学奨励に関する法律 による特別支援学校への就学のため必要な経費の支弁に関する事務であって主務省令で定めるものを行うに際し 都道府県知事等に対し 生活保護関係情報であって主務省令で定める特定個人情報の提供を求めることができるよう マイナンバー法別表第二の37の項について改正するものである 施行日 公布の日 10 公営住宅建替事業における現地建替要件の緩和等 ( 公営住宅法 ) 提案団体等 当提案は 2015 年対応方針において 1 公営住宅の非現地における建替え 集約化の方策については 事業主体 有識者等の意見を踏まえつつ 明渡請求の在り方等を含めて総合的に検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる 2 公営住宅の明渡請求の対象となる高額所得者の収入基準 ( 施行令 9 条 ) については 現在 全国一律に政令で定めているが これを改め条例に委任するなど地域の実情を反映する方向で検討し 平成 28 年中に結論を得る その結果に基づいて必要な措置を講ずる 3 公営住宅の家賃の決定に係る入居者からの毎年度の収入申告 (16 条 1 項 ) については 全事業主体に対する調査を含めて検討の上 認知症患者等に対し職権認定を認めるなど その方法を拡大することとし 所要の改正法案を平成 29 年通常国会に提出する とされていたものである

25 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - なお2015 年の提案団体は それぞれ以下の通り 1 埼玉県 /2 豊田市 松山市 /3 京都府 関西広域連合 滋賀県 兵庫県 和歌山県 鳥取県 徳島県 内容 1 公営住宅建替事業における現地建替要件の緩和 ( 公営住宅法 2 条 37 条関係 ) 公営住宅法は 公営住宅又は公営住宅及び共同施設 ( 以下 公営住宅等 という ) を除却して建て替える場合には 現に建っている土地 ( 又はその一部の区域 ) に建設しなければならない旨規定している ( いわゆる 現地建替要件 ) (2 条 15 号 ) また 地方公共団体は 公営住宅建替事業を施行しようとするときは あらかじめ 公営住宅建替事業に関する計画 ( 以下 建替計画 という ) を作成し 当該公営住宅建替事業により除却すべき公営住宅又は共同施設の用途の廃止について国土交通大臣の承認を得なければならないものとしている (37 条 1 項 ) 第 7 次一括法では 公営住宅建替事業の定義に係る公営住宅法 2 条 15 号に 公営住宅を集約化する場合において 公営住宅等の存していた土地に近接する土地に 新たに当該除却する公営住宅に代わるべき公営住宅を建設し 若しくは新たに当該除却する公営住宅及び共同施設に代わるべき公営住宅及び共同施設を建設する事業 ( 複数の公営住宅の機能を集約するために行うものに限る ) を新たな定義として追加した これにより 現行制度では 公営住宅等は基本的に同じ土地 ( 又はその一部の区域 ) での建替えのみが認められていたのに対し この改正を通じ 既存の公営住宅等が建っている土地に近接する土地での建替えも認められるよう現地建替要件を緩和するものである なお 括弧内に記しているように 近接する土地における建替えは 複数の公営住宅の機能を集約するために行うものに限るものとしており 単に一つの公営住宅を近接する土地に建て替えることは認められない また 建替計画における規定事項に係る37 条を改正し 公営事業建替事業により公営住宅等の存していた土地に近接する土地に新たに公営住宅又は公営住宅及び共同施設を建設する場合には 建替計画において 当該建設をする土地の区域を定めなければならないこととする ( 同条 2 項 3 号 ) ほか 建替計画は 当該公営住宅等が入居者の生活環境に著しい変化を及ぼさない地域内において確保されることについて適切な考慮が払われたものでなければならないこととした ( 同条 4 項 2 号 )

26 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 2 公営住宅入居者である認知症患者等の収入申告義務の緩和 ( 公営住宅法 16 条 28 条関係 ) 公営住宅法において 公営住宅の毎月の家賃は 毎年度 入居者からの収入の申告に基づき 当該入居者の収入等に応じ かつ 近傍同種の住宅の家賃以下で 公営住宅を供給する事業主体である地方公共団体が定める (16 条 1 項 ) 公営住宅法において 公営住宅に引き続き3 年以上入居し 政令で定める基準を超える収入のある入居者であって 明け渡さず 引き続き入居している者 ( 収入超過者 ) の毎月の家賃は 入居者からの収入の申告に基づき 当該入居者の収入を勘案し かつ 近傍同種の住宅の家賃以下で 地方公共団体が定めるものとしている 第 7 次一括法では 家賃の決定に係る公営住宅法 16 条を改正し 地方公共団体は 公営住宅の入居者が 認知症である者 知的障害者その他の国土交通省令で定める者である場合であって 同条 1 項に規定する収入の申告をすること及び同法 34 条の規定による報告の請求に応じることが困難な事情にあると認めるときは 地方公共団体が 同条の規定による書類の閲覧の請求等の方法により把握した当該入居者の収入及び当該公営住宅の立地条件等に応じ かつ 近傍同種の住宅の家賃以下で定めることができることとした (16 条 4 項 ) また 収入超過者に対する措置等を規定する28 条においても 報告の請求に応じることが困難な事情にあると認めるときは ( 改正後の )16 条 4 項及び28 条 2 項の規定にかかわらず 当該入居者の公営住宅の毎月の家賃を 16 条 4 項の国土交通省令で定める方法により把握した当該入居者の収入を勘案し かつ 近傍同種の住宅の家賃以下で定めることができることとした (28 条 4 項 ) これらの改正により 認知症である者等の入居者が収入の申告を行えない場合には 地方公共団体が当該入居者の収入を自ら把握し 毎月の家賃を近傍同種の住宅の家賃以下に定めることができることから 収入申告義務が緩和される 3 公営住宅の明渡請求の対象となる高額所得者の収入基準を条例で定めることを可能とする ( 公営住宅法 29 条関係 ) 公営住宅法において 地方公共団体は 公営住宅の入居者が当該公営住宅に引き続き5 年以上入居している場合において 最近 2 年間引き続き政令で定める基準を超える高額の収入のあるときは 当該公営住宅の明渡しを請求することができるものとしている (29 条 1 項 ) その上で 高額所得者に該当する公営住宅入

27 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 居者が当該公営住宅に引き続き入居しているときは その毎月の家賃は 同法 16 条 1 項及び28 条 2 項の規定にかかわらず 近傍同種の住宅の家賃とするものとしている 第 7 次一括法は 高額所得者に対する明渡し請求等に係る公営住宅法 29 条を改正し 同条 1 項の規定にかかわらず 条例で 公営住宅の明渡しの請求に係る収入の基準を別に定めることができることとした ( 新 2 項 ) これにより 地方公共団体は 同法施行令で定められていた額 (31 万 3 千円 ) に拘束されることなく 公営住宅の管理運営を行うことができることとなる 施行日 公布の日から起算して3 月を経過した日 3. 国会での議論 第 7 次一括法は 2017 年 3 月 3 日に閣議決定 ( 閣法 36 号 ) され 同月 28 日 衆議院地方創生に関する特別委員会に付託 同委員会では同月 30 日に趣旨説明が行われた後 4 月 6 日に質疑が行われ 賛成多数で原案通り可決すべきものと決定され 同月 11 日に衆議院本会議において賛成多数により可決 参議院に送付された 参議院では 翌 12 日に 内閣委員会に付託され 同委員会は同月 18 日中に趣旨説明 質疑ならびに採決を行い 賛成多数で原案通り可決すべきものと決定された後 翌 19 日に 参議院本会議において 賛成多数により可決 成立した なお 衆参とも付帯決議はない 両院の委員会における主な質疑は以下の通りである ( 政党名 肩書はすべて当時 ) 提案募集方式のあり方〇小川淳也 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 要望件数は初年度に比べると半分以下 分権に対する熱が冷めているのではないか 山本幸三国務大臣全市町村の中で 昨年度は4% ぐらいの市町村しか提案していない 過去 3 年の累計を見てもまだ8% 程度 まだまだ市町村の理解が十分に進んでいない 地方からの提案の掘り起こしのため 提案募集の実践的ノウハウを掲載した地方分権改革 提案募集方式ハンドブック 過去の提案状況を検索できる提案募集方式データベース 地方分権改革の経緯や各自治体における取り組みの成果を取りまとめた地方分権改革事例集を作成するとともに 今年に入ってから20 回以上 地方に出向いて研修を行うなど 研修 説明会を充実強化した

28 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 〇小川淳也 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 初年度は953 件の提案 昨年は303 件 3 分の 件の提案があったが 実現の運びになりそうなのが116 件で 3 分の1しか採用されていない 提案したところでいい答えは返ってこないという諦めムードが広がれば 手法そのものが この先 十分機能しない 要望をどう実現するかに注力すべき 山本幸三国務大臣提案は実現しなかったものもあるが いくつか理由がある たとえば 知事会は反対している 一方で市町村はやってもらいたいという意見の相違があって 結論が得られなかったこともある 〇坂本祐之輔 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 提案募集要項で 国 地方の税財源配分や税制改正に関する提案及び国が直接執行する事業の運用改善に関する提案等は 権限移譲または地方に対する規制緩和に当たらないとして 募集の対象外としている この点を排除すると 地方分権改革は今後も進まないのではないか 山本幸三国務大臣税財源配分や税制改正等の財源措置は 国 地方を通じた税財政制度全体を視野に入れ 専門的に検討すべき事項 地方の多様性を生かして個別に制度改正の提案を検討する提案募集方式にはなじまないため対象外としている また予算事業の新設や国が直接執行する事業の運用改善は 地方公共団体に対する権限移譲や規制緩和に当たらないことから対象外としている 国 地方の税財源配分や税制改正問題は 重要な問題であるが 総務省等の所管省庁で別途検討されるべきもの 〇坂本祐之輔 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 今回の分権一括法では 国から地方への権限移譲は行われておらず 地方分権を大胆に進めるようになってはいない 境勉政府参考人 ( 内閣府地方分権改革推進室次長 ) 今回の第 7 次一括法は 国から地方への権限移譲に係るものはないが 認定こども園の認定の指定都市への移譲など 政府が重要施策として掲げる地方創生あるいは子ども 子育て支援の分野で 地方の現場で困っている具体的な支障に対しきめ細やかな対応を図るなど 成果が含まれている 国が選ぶのではなく 地方が選ぶことができる地方分権改革を目指し2014 年から導入している提案募集方式は 地方の現場の支障を解決し 地方創生や住民サービスの向上に資する重要な意義がある 〇坂本祐之輔 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 今回の権限移譲は 大規模な財政措置を要する権限移譲はないものの 新たな事務負担が発生する 事務 権限の移譲に伴う地方への必要な財政措置または財源の移譲は行われているのか また 時限的なものでなく恒久的なものとして行われているのか 境勉政府参考人 ( 内閣府地方分権改革推進室次長 ) 提案募集方式により移譲された事

29 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 務 権限に伴う財源措置は 地方財政計画を所掌する総務省などとも連携を図り 時限的なものではなく 地方税 地方交付税や国庫補助負担金などにより 確実な財源措置を講ずることとしている 坂本祐之輔 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 地域のあり方を考える上で 住民の意見は重要 地方分権改革に関する提案募集でも 市町村を通じて住民から提案募集することも大切 境勉政府参考人 ( 内閣府地方分権改革推進室次長 ) 住民を初めとする各種団体あるいはNPOなども含め さまざまな意見を提案に反映していただくよう 2017 年の提案においては 提案募集要項によって地方公共団体に明示的に知らせた 2017 年 2 月から3 月にかけ全国 8ブロックで開催した説明会でも 市町村等に対し 今申し上げた趣旨を要請 〇森本真治 ( 参 民進党 新緑風会 ) 権限 事務移譲されているが 専門知識や人材面で課題があるという意見もある このような実態について国は把握しているのか 境勉政府参考人 ( 内閣府地方分権改革推進室次長 ) 権限移譲の実施に当たり 移譲元である国あるいは都道府県にノウハウの蓄積があり これを移譲先に引き継いでいくことが重要 提案募集方式の実施に際し 毎年閣議決定で対応方針を定めるが 地方公共団体に移譲された事務 権限が円滑に執行されるよう確実な財源措置の実施 マニュアルの整備や技術的助言 研修や職員の派遣という人的支援も含めた必要な支援を実施することを定めている 西田実仁 ( 参 公明 ) 提案募集方式は 事務処理特例制度と異なり法的な根拠がない 地方分権改革推進本部で決定された提案募集の実施方針に基づいている 法的な担保がないため提案に対する対応方針の効力や制度の継続性の担保が十分とは言い難いとの指摘もある 提案募集方式の理念 国 地方の責務 提案に係る手続や国の回答期限等を法令での制度化を検討すべき 山本幸三国務大臣提案募集方式の進め方は この3 年間の取り組みの中で 地方公共団体の意見も踏まえ 募集期間の延長等の運用改善を柔軟に図りながら 各府省及び地方公共団体の間に定着しているものと認識 西田実仁 ( 参 公明 ) 提案募集方式は 限られた時間の中で国と提案団体との対話が十分になされないという不満も出ている また 国の対応方針に対して提案団体が異議を唱えて国に対して再考を促すプロセスも必ずしも十分ではないという指摘も聞かれる 再提案は 新たな情勢変化等が顕著ではない場合であっても 国の対応が不十分である

30 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ことが明らかな場合は関係府省との調整の対象とすべきではないか 山本幸三国務大臣提案募集の取り組みの中で実現しなかったものに関する再提案は 新たな情勢変化等がない状況で関係府省と再度調整を行っても提案の実現は困難 提案団体から改めて情勢変化や支障事例等が具体的に示された場合に調整の対象としている 過去の提案募集で実現しなかったものが 地方から新たな支障事例に基づき再提案があり実現したものとしては 病児保育事業における保育士配置基準の緩和を求める提案がある 実現しなかった提案も 制度を取り巻く情勢変化や 新たな支障事例があれば改めて地方から提案いただき それを踏まえ 内閣府も 地方が直面する課題を解決し 自主的 主体的に施策展開を図ることができるよう 地方からの提案をいかに実現するかという基本姿勢に立って対応してまいりたい 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等の事務 権限を指定都市へ移譲等〇和田政宗 ( 参 自由民主党 こころ ) 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等の事務 権限を指定都市へ移譲する狙いは 境勉政府参考人 ( 内閣府地方分権改革推進室次長 ) 指定都市が認定こども園の認定などの事務 権限を包括的に有することとなり 指定都市が計画に応じた機動的な施設整備を行うことができる 行政窓口一本化により 事業者の利便性を向上させることも期待できる 〇和田政宗 ( 参 自由民主党 こころ ) 認定こども園の開設や移行認定のための施設整備に当たり 土地の取得や建物の整備に係る補助制度や国 都道府県 市町村 それぞれの補助割合は 白間竜一郎政府参考人 ( 文部科学大臣官房審議官 ) 文部科学省では 認定こども園施設整備交付金で市町村に補助 具体的には 幼保連携型認定こども園の教育部分 幼稚園型認定こども園の幼稚園部分 保育所型認定こども園の幼稚園機能部分に係る整備について 国が事業費の2 分の1 市町村 事業者がそれぞれ4 分の1を負担 なお本交付金は 土地の取得に係る経費 地方裁量型認定こども園の施設整備に係る事業整備への支援はない 吉本明子政府参考人 ( 厚生労働大臣官房審議官 ) 厚生労働省は 認定こども園の保育実施部分に交付金を交付 具体的には 幼保連携型 保育所型 幼稚園型の3 類型の認定こども園の建物 設備の整備費用に充てるため市町村に交付金を交付 負担割合は国 2 分の1 市町村 4 分の1 事業者 4 分の1 また 待機児童解消加速化プランに参加

31 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - する市町村は 幼保連携型と保育所型の認定こども園の国の負担割合を2 分の1から3 分の2に引き上げている 田村智子 ( 参 共産 ) 認定こども園の地方裁量型は参酌基準で 都道府県が条例で基準を定める 今回の権限移譲で 今度は指定都市も条例で独自の職員配置や施設の基準を定めることが可能となる 地方裁量型認定こども園の兵庫県姫路市のわんずまざー保育園は 保育士の架空配置 私的契約で22 人もの定員超過 70 人分の給食を35から45 人分の量で賄うなど 次々と問題が発覚し 4 月 1 日付けで認定取消しとなった 地方裁量型は昨年 4 月時点で全国で 60か所にとどまるが うち1 割の6 施設が兵庫県姫路市に集中 兵庫県の条例を見ると 地域事情の特例があり 遊戯室は事情があれば設置しなくてよい ゼロから二歳児の給食も外部搬入でよいという基準 ミルクや離乳食まで外部搬入を認めているのは驚くような緩い基準だから 姫路市は認可外保育施設をいきなり認定こども園にして受皿づくりを進めた 地方裁量型は参酌基準しかない どうやって保育の質を担保するのか 西崎文平政府参考人 ( 内閣府子ども 子育て本部統括官 ) 地方裁量型の施設設備及び運営に関する認定基準は 国が告示で定める基準を各都道府県が参酌して条例で定めることとしている 都道府県が条例で認定基準を定めるということは 地方の議会に諮って定めるわけで 都道府県議会のチェックも受ける 条例で定められた基準に従うことで 教育 保育の一定の質が確保され 地方の多様なニーズにも対応できる仕組みと認識 田村智子 ( 参 共産 ) 認可外保育施設がいきなり認定こども園になり 施設型給付の支給対象となる この仕組み自体が問題で 地方裁量型は抜本的な見直しが必要 認定基準が緩いのならば 認定後 立入調査を含む監査は 認可施設よりも頻度や内容が厳密に行われるべき わんずまざー保育園は2015 年 3 月に認定されてから 最初の定期監査は約 2 年後の今年の2 月 認定こども園の監査は 1 年に1 回の立入調査という規定もない 認定こども園への少なくとも1 年 1 回の立入調査 特に地方裁量型での保育の質のチェック これは早急に手だてを取るべきではないか 西崎文平政府参考人 ( 内閣府子ども 子育て本部統括官 ) 参酌であるか否かにかかわらず 条例が適切に守られているかを各都道府県で確認することは大変重要 なお 監査の在り方は 今回の姫路市の認定こども園の事案の実態や 県 市の対応等を国としても把握することとしており その結果を踏まえ 必要な対応を検討したい 田村智子 ( 参 共産 ) 指定都市が地方裁量型認定こども園の基準を条例で定めること

32 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ができるようになる 同じ県内の裁量型認定こども園で基準が違うことが今後起こり得る 待機児童対策を迫られれば 認可外保育施設をいきなり認定こども園にできるような緩い基準の条例が作られてしまうことを懸念 法令上の従うべき基準がないことや 待機児童を増やしたくない思惑から 問題のある施設に監査に入っても毅然とした是正指導ができるかどうか疑問 山本幸三国務大臣地方分権一括法案による改正は 認定の基準や監査に関する規定を見直すのではなく 認定権限を都道府県から指定都市へ移譲しようとするもので 御指摘のような懸念は当たらない なお 姫路市のような中核市や一般市は 引き続き都道府県が認定し 認定主体である都道府県と確認主体である市町村が監査を行う 認定権限を指定都市へ移譲することにより 指定都市は認定基準を条例で定めることになるが 地方分権の観点からは地方が自らの判断と責任において定めるべきものと認識 清水貴之 ( 参 維新 ) 幼保連携型の施設監査は 国は定期的かつ計画的に監査をするよう通知 何年に1 回という基準が示されているわけではない 自治体によって扱い方が変わる 兵庫県内では 兵庫県は 立入調査は4 年に1 回 ただ毎年チェックリストを配って提出してもらっている 姫路市は2 年に1 回 神戸市や西宮市は1 年に1 回 尼崎市は一度も実施していない 自治体によって回数が違い 人手が足りないなか 様々な福祉施設などの監査もする 西崎文平政府参考人 ( 内閣府子ども 子育て本部統括官 ) 幼保連携型認定こども園の施設監査は 認定こども園法 19 条に基づく指導監査についての通知により 児童福祉施設が1 年に1 度以上実施することに留意して 定期的かつ計画的に実施するとなっている 子ども 子育て新制度の本格施行後 2 年が経過し 監査の実績も蓄積されてきているので 実態につき調査を検討したい 公営住宅建替事業における現地建替要件の緩和等〇和田政宗 ( 参 自由民主党 こころ ) 公営住宅建て替え事業は現地での建て替えに限定されていたが 公営住宅を集約化する場合に近接地への建て替えが可能となる この現地建て替え要件の緩和においてどのような効果が期待されるか 伊藤明子政府参考人 ( 国土交通大臣官房審議官 ) 公営住宅建て替え事業において選択肢を増やすことで 公営住宅の効率的な維持管理や老朽化の改善 耐震性の確保など 入居者の居住環境の向上が図られる効果

33 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 近隣地への建て替えを可能にするとし 移転先は 居住者の生活環境に著しい変化を及ぼさない地域内に確保されることと配慮義務が定められている 居住者の生活環境に著しい変化を及ぼさない地域内とは具体的にどういう地域か 伊藤明子政府参考人 ( 国土交通大臣官房審議官 ) たとえば同一駅利用圏や同一小学校区など 地域の交通状況 教育や福祉などの公共サービスの状況 地域的状況などの諸条件を総合的に勘案して地方公共団体において判断される 〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 整備すべき公営住宅の戸数は当該事業により除却すべき公営住宅の戸数以上であることとされている あわせて 当該土地の区域内で新たに社会福祉施設等を整備する場合は 建て替え計画の申請をする日において入居者の存する公営住宅の戸数以上であれば足りる つまり入居者の数ということ 入居者の戸数以上となれば コンパクトシティーを目指すまちづくりの中で公営住宅の集約を行う場合は提供戸数が減ってしまう可能性がある 集約を図りたいという自治体側の目標はいろいろで 財政上の理由を挙げているところもある ある県では 2025 年次までに十団地を用途廃止し 中 大規模団地へ集約する目標値を設定し 厳しい財政状況の中で再編整備を効果的かつ効率よく推進するためには 非現地での建て替えを法定建て替えとして実施できるよう現地要件を緩和することが必要と 財政上の理由を立てている こういう理由で公営住宅を集約していけば おのずと提供戸数が減っていくのではないか 伊藤明子政府参考人 ( 国土交通大臣官房審議官 ) 近接地における建て替えを可能とするもので 現行の戸数要件に関しては変更を加えていない 改正により公営住宅を減少させていくという趣旨のものではない 公営住宅団地を集約する場合で 基本的に 従前の各団地の戸数の合計を確保することが法定建て替えの要件 したがって 現地建て替えと同様に 社会福祉施設を整備する場合等特別の事情がある場合を除き 今回の改正で戸数が減少するという性格のものではない 〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 今度の改正案では 政令で上限額と下限額を定めた範囲内で 収入基準を条例委任するとしている 入居収入基準を超えた超過収入者の対象はどのぐらいの世帯か 退去を求められる入居者が増えていくのではないか 伊藤明子政府参考人 ( 国土交通大臣官房審議官 ) 地方公共団体が条例で決定する高額所得者の収入基準の範囲は 月収 25 万 9,000 円 要は収入分位 50% 年収では600 万弱以上を超えて 収入分位 60% 以下 31 万 3,000 円以下の範囲内を政令で定め 条例で委任するということを検討 この範囲内の収入に該当する入居者の割合は 2014 年度末時点

34 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - で 全国で約 1.6% 全国の公営住宅の入居者の数は約 200 万世帯なので 機械的に 1.6% を掛けると約 3 万世帯となる 今回は手挙げ方式で条例をつくる格好なので 1,676 団体の公営住宅事業主体のうち 今のところ 条例によって場合によっては措置したいという意向があるのは40 団体程度 約 2% 程度 また今回改正の提案団体は 豊田市等 6 団体だが これら6 団体のこの範囲の収入に該当する世帯は約 339 世帯 〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 明け渡しを強制することにはならないという法律上の根拠は 伊藤明子政府参考人 ( 国土交通大臣官房審議官 ) 現行の公営住宅法では 事業主体が高額所得者に明け渡しを求める場合には 入居者の居住に対する必要な配慮が規定されている それらの規定は今回の改正において何ら変更されることなく 同様に適用される 具体的には 入居者やその家族が病気にかかっている等の特別な事情がある場合には明け渡し期限を延長できる ほかの公的住宅等へのあっせんに努める 他の公的住宅への入居を容易にするよう特別の配慮をする等 明け渡しに当たって 丁寧に対応することになっている 〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 今国会には住宅セーフティーネット法の改正案が提出 背景には 住宅セーフティーネットであるはずの公営住宅の応募倍率が高い状況にありながら 地方自治体財政の状況から新増設ができない 老朽化ストックの改修や建て替えを優先せざるを得ないという状況があり 空き家や民間賃貸活用を進めていこうとするもの しかし 住宅政策の根本に据えるべきは公営住宅で 自治体が増設していけるだけの財政措置を行うべき 住宅セーフティーネット法の改正はもちろんだが 一番のセーフティーネットは 公営住宅そのものを必要分確保すること 藤井国土交通省大臣政務官公営住宅は 住宅に困窮する低額所得者の居住の安定を確保する住宅セーフティーネットの根幹をなす政策で その供給は極めて重要 地方公共団体は 人口減少など地域の今後の人口動向や厳しい行財政事情を踏まえつつ 公営住宅のストックの状況等を勘案し 改修や建て替えを含め 適切に公営住宅の整備 管理を行っている 国は 引き続き社会資本整備総合交付金等により 支援を行っていく 都道府県による地域森林計画の一定の事項の変更等に係る国への協議を届出に見直し 坂本祐之輔 ( 衆 民進党 無所属クラブ ) 都道府県知事による地域森林計画に係る農林水産大臣への協議 同意について 委託を受けて行う森林の施業または経営の実施 森林施業の共同化その他森林施業の合理化に関する事項の部分のみ 協議から届け出と

35 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - いうことに改めた 提案団体は この協議 同意の廃止を求めている このように改正をしたのはなぜなのか 地方の意見を反映したものと言えるのか 織田政府参考人 ( 林野庁森林整備部長 ) 今般届け出に移行する森林施業の合理化に関する事項は 森林所有者等が作成する森林経営計画制度という制度が創設された2011 年の森林法改正で計画事項となったもの 森林経営計画制度の創設から5 年が経過し 森林施業の合理化の考え方がすべての地域森林計画に記載され 協議において国が意見を出すことがなくなったこと また 持続的な森林経営を確保する森林経営計画の作成も進んで制度が定着していることを踏まえ 協議を行わなくても計画達成に支障が生ずる蓋然性が低いと判断 地方の意見を踏まえ 森林施業の合理化に関する事項は 地域森林計画に係る国への協議の見直しを行うことで 情勢変化に対応した必要な手続の簡素化が図られるもの 〇西田実仁 ( 参 公明 ) 委託を受けて行う森林の施業又は経営の実施 森林施業の共同化その他森林施業の合理化に関する年間協議件数はどのくらいか 織田政府参考人 ( 林野庁森林整備部長 ) 地域森林計画の森林施業の合理化に関する事項の年間協議件数は 2014 年度は34 件 2015 年度は35 件 2016 年度は59 件 県費負担教職員の人事権等の都道府県から中核市への権限移譲 西田実仁 ( 参 公明 ) 2014 年の提案募集方式で提案された県費負担教職員の人事権等の都道府県から中核市への権限移譲について 事務処理特例制度による対応が可能であることをもって法令改正の提案を退けるのであれば 全都道府県で 少なくとも当該権限等の移譲を希望する市町村との積極的な協議に応じることを担保するため 実効性ある措置を講じるべきではないか また 2014 年の対応方針では 2015 年度以降 関係する県や市町村との協議の場を設けるなど 合意形成に向けた支援を行うことを関係団体に速やかに通知するとしている この通知並びにその後の協議にフォローされているか 山本幸三国務大臣 2015 年 2 月 5 日に文部科学省から都道府県及び指定都市の教育委員会に対して 県費負担教職員の人事権の中核市等への移譲についての通知を発出済み 当該通知では 人事権の移譲を希望する中核市等が 関係する都道府県や市町村と協議の場を設けようとする場合は 関係者への協力の依頼や会議への出席 情報提供など必要な支援を行っていくとし 事務処理特例の活用のための合意形成に向けた支援を行うこととした ただ 中核市から文部科学省に対して相談は来ていない この制度以前に大阪府の豊能地区で事務処理特例の活用状況があった

36 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 一括法として提案することの有り方〇田村貴昭 ( 衆 共産 ) 公営住宅法の改正は この間 地方分権改革関連の一括法の中で行われてきた 2011 年の第 1 次分権一括法では 入居収入基準の条例委任が行われた また 同年の第 2 次一括法では 建て替え事業を施行する土地の面積 整備すべき公営住宅の構造といった公営住宅建て替え計画の記載事項を義務から努力義務にした 公営住宅の建て替え事業制度にかかる重要な改正があるが この国土交通省所管の法改正を審議するのが地方創生特別委員会 今申した改正質疑に立ったのは 議員で一人 第 2 次一括法では誰もされなかった 第 1 次は41 本の法律 第 2 次では 188 本の法律が一括して出されたため 取り上げたくても取り上げられなかった 公営住宅入居の収入基準や建て替え事業について 重要な案件にもかかわらず審議で国土交通大臣は答弁されない これでは立法府の役割を十分果たせないと考えられる 重要法案を束となって一括提案するというやり方は見直さなければいけない 山本幸三国務大臣本法案は 提案募集方式という共通の枠組みに基づき措置する改正事項を盛り込んでいる 関係する法律を個別に改正するよりも 一括して改正案を取りまとめることにより 改正の趣旨 全体像がわかりやすくなる 公営住宅法の改正についても 提案募集方式による地方からの提案に基づき検討が行われたもの 現地建て替え要件の緩和で 円滑な公営住宅の建て替え 集約の実施が可能となることで 地域の住宅事情を踏まえたより適切な公営住宅の管理運営に資する等 地域の自主性及び自立性を高めるものである 4. 第 7 次一括法等の検討 2016 年 11 月 2 日に初会合が開かれた全国知事会 ( 会長 山田啓二京都府知事 ) の 地方分権に関する研究会 で 山田会長は次のように発言した 最近 地方分権が低調であるというご意見があった 実際に方向性を見出せていない 権限移譲については もう細かい話ばかりになってしまって どちらかというと 都道府県から政令市への移譲とかになっている 小規模な自治体はもうこれ以上権限は要らない これ以上 権限移譲されても困ってしまう状況になってしまって 権限移譲に対するインセンティブが働かない 内輪もめになっているのが今現状である 国の出先機関移譲のときに反対に回ったのが市町村である 特に都道府県と仲の悪い市町村長が必死になって反対した 大変厳しい地方

37 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 分権時代に入ってきて こうした中で地方間の競争が激化して 弱肉強食で地方がそれぞれを蹴落とし合いかねないような状況に実はなってきてしまっている まさに 今 地方分権は旗を失ってしまい どちらに進んでいいかわからない という心情を吐露した (7) また 地方分権改革の理論的支柱であり続けた西尾勝氏も 提案募集方式の現況について 最近 問題になっているのは 自治体側からの提案が先細りであまり出てこないことです もっと一生懸命 提案して と国は小冊子 ( 地方分権改革 提案募集方式ハンドブック ) をつくったりするのですが 自治体側にそんな問題意識や熱意があまりないのです それで分権改革は非常に低調になっているという論評が新聞などに出てくる そうすると六団体も そういわれちゃっているんだよな どうする と言っている そんな状況ですね それが大きな流れだと思うのです 決して止まっているわけではなく ちょこちょこと進んでいるのですけれども だんだんとチマチマしてきた感じがあります (8) と述べた まさに地方分権は 旗を失い 進路も見定められないでいる このような状況感覚が 分権改革のエンジンとして期待される提案募集方式にも影を落とす (1) 打席にも立てない提案募集方式 2014 年からはじまった提案募集方式ならびに手挙げ方式は 2016 年に3 年目を迎えた 内閣府を中心とする啓蒙活動にもかかわらず 提案件数の減少に歯止めはかからない 内閣府地方分権改革推進室は 2015 年と2016 年の提案団体を比較し 提案した市町村が格段に増えたことをこの間の取り組みの成果として喧伝する しかし 提案件数を見ると むしろ減っている 市町村からの提案件数は 2014 年度 196 件 2015 年度 112 件に対し2016 年度は90 件である 市町村の提案団体は2014 年度と2016 年度で大差はないが 提案件数は半分以下である 2015 年度から2016 年度にかけては 提案団体は増えたにもかかわらず 提案件数はさらに減少した また提案件数の減少は都道府県でさらに著しく 2014 年度 650 件だったものが 2016 年度 166 件と4 分の1までに縮小した せっかく提案しても府省との協議 (= 対応 ) にかけられるとは限らない 提案件数に対する対応件数は 2014 年度が提案件数 953 件に対し対応件数 535 件で 割合は56% (7) 全国知事会 第 1 回地方分権に関する研究会 (2016 年 11 月 2 日 ) 議事概要より抜粋 (8) 西尾勝インタビュー自治 分権 憲法 ( 後篇 ) 都市問題 108(6) 頁

38 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 表 4 提案件数等の推移 提案件数 提案団体数 都道府県 市町村 その他 2014 年度 953 件 126 団体 650 件 47 団体 196 件 67 団体 107 件 12 団体 2015 年度 334 件 87 団体 239 件 39 団体 112 件 39 団体 9 団体 2016 年度 304 件 116 団体 166 件 39 団体 90 件 71 団体 47 件 6 団体 出典 ) 第 16 回地方分権改革有識者会議 第 1 回提案募集検討専門部会合同会議 (2014 年 8 月 1 日 ) 資料 4ならびに議事次第 配布資料第 25 回地方分権改革有識者会議 第 38 回提案募集検討専門 部会合同会議 (2016 年 7 月 5 日 ) 資料 3 4より筆者作成 注 )2015 年度の件数は 都道府県と市町村の共同提案は 重複計上しているため 合計は一致しな い また2015 年度のその他団体の提案件数は不明 (9) 内閣府地方分権改革推進室 平成 28 年地方分権改革に関する提案募集要項 記載事項 2015 年度が提案件数 334 件 対応件数 228 件で68% そして2016 年度が提案件数 304 件に対し対応件数 196 件で 割合は64% である すなわち 打席 に立てるのは6 割程度で 残りの4 割は提案としての要件を満たさず 門前払いなのである 打席 に立てない理由は明確である 第 1に 提案の対象が ア地方公共団体への事務 権限の移譲 イ義務付け 枠付けの見直し及び必置規制の見直しとするものに限定され 国 地方の税財源配分や税制改正 予算事業の新設提案 国が直接執行する事業の運用改善 個別の公共用物に係る管理主体の変更 現行制度でも対応可能であることが明らかな事項のような提案は 権限移譲又は地方に対する規制緩和に当たらないとしているからである (9) 第 2に とりわけ権限移譲に関し 府省の抵抗が激しいからである 2016 年度に関しては 第 7 次一括法に結びついた国から地方への権限移譲は皆無であった 2017 年 2 月 20 日に開催された第 28 回地方分権改革有識者会議 第 52 回提案募集検討専門部会合同会議では これまでの課題を踏まえた2017 年の提案募集への対応の改善事項として 市町村からの提案の一層の掘り起こしのため 研修会 説明会の充実 強化 ハンドブックの作成 募集開始を前倒しし (3 月中旬 2 月下旬 ) 事前相談の期間を昨年よりも延長するなどの手続的な事項を並べる一方 1 国 地方の税財源配分や税制改正 国が直接執行する事業の運用改善に係る提案は 従前通り対象外とし 2 事務 権限の移譲に関する提案については 規制緩和に関する提案に比べて 具体的な支障事例に基づき提案するのが難しいとの意見も踏まえ 研修会 説明会の

39 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 充実 強化 ハンドブックの作成等により 地方公共団体に分かりやすく検討の進め方等を説明 (10) として 地方側の一層の努力を促すというというもので 国の府省側の対応の改善を迫るものとなっておらず 改善方策とはいい難い ただし これまでの課題を踏まえた平成 29 年の提案募集への対応 ( 案 ) では 全国知事会等から 福祉等の分野における 従うべき基準 に関する見直しを求める意見があった (11) ことから 当該 従うべき基準 の緩和を見直し対象のターゲットとして明確にしたことは特記すべきことであるかもしれない (2) 成果の水増し地方分権改革有識者会議では 2016 年度において最終的に地方からの提案として俎上に載った196 件のうち 150 件が 提案の趣旨を踏まえて対応 現行規定で対応可能 となり 提案の実現 対応の割合は 4 分の3 以上となり これまでの3 年間で最高 (76.5%) と自己評価している (12) だが その内容は やはり点検されなければならない 2016 年 12 月 20 日の対応方針に掲げられた事項では 上記の通り 10 法律が改正されることになった 一方 対応方針記載事項のうち 第 7 次一括法に盛り込まれていない事項の対応方法については 概ね 表 5のように分類しうる 多くは 通知又は周知 その他措置 検討に分類され 政省令等の改正を伴って実施されるものは 対応事項の4 分の1に満たない 第 6 次一括法に係る論評で 筆者は 周知 通知等の行政的関与は 第 1 次分権改革により後景に退けられたはずであった また 第 2 次分権改革では 国の法令等 ( 法律 政令 省令 告示 ) による事務の義務付け 事務事業の執行方法や執行体制に対する枠付けの緩和については ほとんど全く手付かずに終っている という地方分権推進委員会の総括文書に基づき これら立法上の法令等の義務付け 枠付けの緩和をターゲットとしてきたはずである との考えをベースに置き 通知や周知による対応を提案募集方式による成果にカウントすることは 水増しといわざるをえない (10) 第 28 回地方分権改革有識者会議 第 52 回提案募集検討専門部会合同会議 (2017 年 2 月 20 日 ) 資料 6 これまでの課題を踏まえた平成 29 年の提案募集への対応 ( 案 ) (11) 全国知事会 地方分権改革に関する提案募集に係る意見 ( 平成 28 年 8 月 30 日 ) (12) 前掲注 (10) 資料 5 平成 28 年の提案募集の取組状況

40 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 表 対応方針のうち第 7 次一括法以外の事項の対応分類 実施するもの 政令 省令 要綱その他 告示 措置済み 通知又は周知 その他措置 単位 : 事項 検討 1. 国から地方公共団体に事務権 限の移譲 2. 都道府県から 市町村への事務 権限の移譲 3. 義務付け 枠付けの見直し 合計 注 )2016 対応方針より筆者作成 と評した (13) 2016 年の対応方針でも同様の評価をせざるをえないことは残念である 先に記したように 平成 27 年地方分権改革に関する提案募集要項 では 現行制度でも対応可能であることが明らかな事項のような提案は 権限移譲又は地方に対する規制緩和に当たらない と地方の側に説明している それにもかかわらず 通知 周知という対応を提案募集方式の成果にカウントしていることは問題である なおこの点につき 地方分権改革有識者会議の小早川光郎座長代理 ( 成蹊大学教授 ) は 第 27 回地方分権改革有識者会議 第 51 回提案募集検討専門部会 (2016 年 11 月 17 日 ) において アクロバティックな読み方をして ( 中略 ) 何とか省令改正なしに済ませようということでやっている部分もあるのではないか と発言し また 大橋洋一部会構成員 ( 学習院大学教授 ) も アクロバティックな解釈で こういうふうにできるのです と言われ ( 中略 ) 現行法の改正にはならずに 通知を出して明確化します こういうパターンが非常に多かったという気がいたしました として 府省側の対応を批判している (14) のだが 高橋滋部会長は 提案募集方式には 法令の改正につながらなくとも 運用のレベルにおいて改善提案を取り上げることのできる柔軟さがある 規定の解釈を変え 運用を変更する方式によって多くの改善提案が実 (13) 拙稿前掲注 (2) 88 頁 (14) 第 27 回地方分権改革有識者会議 第 51 回提案募集検討専門部会合同会議議事録 ( 平成 28 年 11 月 17 日 )20 22 頁

41 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 現されてきた と評し 暗に 通知による対応を認めている (15) (3) 規制緩和との親和性地方分権改革と規制緩和には親和性があることについては つとに指摘されてきたことである (16) このことは 第 7 次一括法の国会論議の中では 幼保連携型認定こども園以外の認定こども園の認定等の事務 権限を指定都市へ移譲等 ( 就学前の子どもに関する教育 保育等の総合的な提供の推進に関する法律 3 条関係 子ども 子育て支援法 34 条関係 ) をめぐって如実に表れた 認定こども園には 1 幼保連携型 ( 幼稚園的機能と保育所的機能の両方の機能をあわせ持つ単一の施設 )2 幼稚園型 ( 認可幼稚園が 保育所的な機能を備えて認定こども園としての機能を果たす )3 保育所型 ( 認可保育所が 幼稚園的な機能を備えることで認定こども園としての機能を果たす ) 4 地方裁量型 ( 幼稚園 保育所いずれの認可もない地域の教育 保育施設が 認定こども園として必要な機能を果たす ) の4 タイプがある 第 7 次一括法は 上記 2~4の認定に関する事務 権限ならびに同施設が遵守すべき基準を条例で定めることについて 都道府県から指定都市に移譲することにしたものである 認定こども園の認定基準は 法令に定められた基準を参酌し 都道府県等が条例で定めるが 地方裁量型は 上記 4タイプのなかで最も基準が緩やかなタイプといわれる 国会質疑で取り上げられた兵庫県姫路市の私立認定こども園 わんずまざー保育園 も 地方裁量型 ( 特定認可外保育施設型 ) で 認可外の保育施設から直接移行したものであった 兵庫県の条例では 職員の資格や配置などは国の参酌基準に添うものの 0~2 歳児の給食も外部搬入が可能とし 調理室がない わんずまざー保育園 も移行可能だったのである 認定こども園へ移行した施設の内訳は 2015 年が幼稚園 639か所 保育所 1,047か所 認可外施設 38か所 認定こども園として新規開園したものが16か所である また (15) 高橋滋 提案募集検討専門部会の活動の現況 自治日報 2016 年 7 月 29 日 (16) たとえば 笠木映里 地方分権改革の位相 ( 第 7 回 完 ) 地方分権と社会保障政策の今後 今次分権改革の動向と論点整理 ジュリスト (1361) 岡崎祐司 保育の準市場化 その問題点と保育政策の展望 ( 佛教大学 ) 社会福祉学部論集 (5) など

42 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 年は幼稚園 438か所 認可保育所 786か所 認可外保育施設 47か所 認定こども園として新規開園したものが37か所である すなわち この2 年間で 85か所の認可外保育所が認定こども園に移行している (17) 自治体によっては 待機児童の解消のため 認可外保育所の認定こども園への移行を積極的に推進しているところもある たとえば横浜市は 横浜保育室 ( 横浜保育室事業実施要綱 ( 平成 9 年 4 月 1 日福保推第 18 号 ) 第 2 条第 1 号に定める施設 ) を運営する者が 既存の建築物の改修等により認可移行するために 改修等に必要な経費の一部を補助する事業を実施し 東京都の認可外保育所である認証保育所でも同様の手続きが進められている 認定こども園になれば 事業費等について国からの補助があるためである 地方裁量型は国からの補助はなく その分 基準を緩やかにすることが可能で 待機児童数の多い自治体は 手っ取り早く 地方裁量型を用いて 認可外保育所を地方裁量型の認定こども園に移行させる動機が働いてきた 姫路市がこの典型例で 2016 年 4 月 1 現在 全国 60か所の地方裁量型認定こども園のうち兵庫県内には7 園あり さらに姫路市には6 園が集中していた このように地方分権とあいまって進められた保育行政の規制緩和は 量の確保に邁進したため質の確保が置き去りにされてきたきらいがある 規制緩和とは事前の規制の見直しであり 事後の監督の強化を伴うものでなければならない ところが国も地方自治体も 事後の監督体制が整っていない したがって 規制を緩和し量を拡大しても 事後の監督がなしえないので質が確保できない 地方分権の成果を住民の利益に結び付けていくためには 質の確保にむけ自治体がどのような施策を進め 体制を整えるのかが問われているといえる (18) (17) 内閣府子ども 子育て本部 認定こども園の数について 平成 27 年 4 月 1 日現在ならびに平成 28 年 4 月 1 日現在 (18) 前掲注 (10) の資料には 地方分権改革と規制改革 国家戦略特区との役割分担について 次のように記されている 次のような基本的な役割分担に基づき 対応 規制改革 民間に対する規制緩和を 全国的に実施 国家戦略特区 官民に対する規制緩和を 特定の区域に限定して実施 地方分権改革 地方に対する規制緩和及び事務 権限の移譲を全国的な制度として実施平成 28 年においては 提案募集方式の対象外の提案のうち 内閣府規制改革推進室による規制改革ホットラインで受け付けられるものについて 対応を依頼 ( 例 : 伝統的工芸品の指定に係る要件の緩和を求める提案 レンタカー使用場所変更手続等の緩和を求める提案 ) 提案主体の地方からすると 地方分権と規制改革の境界線は不明なようである

43 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 5. 地方自治法への影響 第 7 次一括法では 地方公共団体が審査請求を不適法却下する場合における議会への諮問手続を事後報告にするとの見直しが行われた 地方自治法の改正条項は 以下の通り 地方自治法 206 条 2 項給与その他の給付に関する処分についての審査請求同 229 条 2 項分担金等の徴収に関する処分についての審査請求同 231 条の3 第 7 項督促 滞納処分等同 238 条の7 第 2 項行政財産を使用する権利に関する処分についての審査請求同 243 条の2 第 11 項職員の賠償責任同 244 条の4 第 2 項公の施設を利用する権利に関する処分についての審査請求 (1) 地方自治法上の処分についての審査請求の趣旨地方自治法上の処分その他公権力の行使に当たる行為について不服があるときは 当該処分庁のなんたるかを問わず すべて当該普通地方公共団体の長に対して審査請求を行うこと そして議会へ諮問するという審査請求手続を規定しており 行政不服審査法 ( 以下 行審法 という ) の特例を定めたものである 行審法では 裁決がより公正かつ慎重に行われるよう 国の場合は行政不服審査会 地方の場合は条例で定める機関へ諮問を義務付ける旨規定されている ( 行審法 43 条 81 条 ) が 地方自治法上 行審法の特例として議会への諮問を要することとされているため 条例で定める機関への諮問は不要とされている ( 行審法 43 条 1 項 2 号 ) 一方 現行規定の仕立ては たとえば地方自治法 206 条 2 項の場合 普通地方公共団体の長は ( 中略 ) 審査請求があつたときは 議会に諮問してこれを決定しなければならない となっており 審査請求が不適法で 却下する場合であっても 議会への諮問を経て 却下 棄却または認容といった決定ないし裁決を行わなければならないことになっている (2) 議会への諮問制度の経緯 議会による諮問を要することは 地方自治法制定時に規定されたものだが この規 定は 市町村制 府県制 東京都制から引き継がれたものであった たとえば 給与

44 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - その他の給付に関する処分については 1911( 明治 44) 年の市制 107 条 ( 町村制 87 条 ) では 意義アルトキハ之ヲ市長 ( 町村長 ) ニ申立ツルコトヲ得 2 項で 前項ノ意義ハ市参事会 ( 町村会 ) ノ決定ニ付スヘシ関係者其ノ決定ニ不服アルトキハ府県参事会ニ訴願シ其ノ採決又ハ第三項ノ採決ニ不服アルトキハ行政裁判所ニ出訴スルコトヲ得 としていた 1933( 昭和 18) 年改正では市長 町村長等が決定する枠組みとなり 1946( 昭和 21) 年改正では 市長等は市参事会等に諮ってから決定し 市参事会等は諮問された日から20 日以内に意見を答申する制度に変わった 1947( 昭和 22) 年制定地方自治法において 給与その他の給付に関する異議申立ての規定は次のように定められた 206 条前 3 条の規定による給与に関し 異議のある関係人は これを普通公共団体の長に申し立てることができる 2 前項の規定による異議の申立があつたときは 普通公共団体の長は 議会に諮つてこれを決定しなければならない 3 議会は 前項の規定による諮問があつた日から二十日以内に意見を述べなければならない (19) また 議会への諮問制度が設けられた趣旨は 異議申立てに対する判断権限があるのは普通地方公共団体の長であるが その判断にあたり議会の諮問を経ることで 重要な権利に関して 判断の正確性 公平性 客観性を担保することを目的としたものと解される といわれる (20) (3) 第 7 次一括法での改正理由 年行審法改正 2014 年の改正行審法は 審査庁は 審理員意見書の提出を受けたときは 次の各号のいずれかに該当する場合を除き 審査庁が国の場合は行政不服審査会に 審査庁が地方公共団体の長等である場合は行審法 81 条 1 項又は2 項の機関に 諮問しなければならないと定め ( 行審法 43 条 ) 諮問しなくてもよい場合として 同条 6 号で 審査請求が不適法であり 却下する場合 と規定した (19) 以上の記述は 今村都南雄 辻山幸宣編 地方自治総合研究所監修 逐条研究地方自治法 Ⅲ 敬文堂 2004 年 1146 頁以下参照 (20) 細川敬太 第 7 次地方分権一括法による地方自治法の一部改正 地方自治 (837) 頁 なお 当該解釈の出処は内務省 改正地方制度資料第 1 部 1947 年

45 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - この改正に伴い 地方自治法上の特例規定も必要な見直しが行われたが 審査請求に係る議会への諮問手続については 制度が設けられた経緯等に鑑み 存置 されることとなった (21) 2 地方からの提案と実態調査 2016 年の提案募集において 松山市から 審査請求があった際の地方自治法に基づく議会への諮問手続の簡素化 として 新行政不服審査法で規定された審理員による審理手続及び第三者機関への諮問が省略できる旨の規定に倣って ただし 審査請求が不適法であり 却下するときは 議会への諮問を要しないものとする を追加する との提案があった この提案に対して所管省である総務省の第 1 次回答は 審査請求にかかる採決については能率的見地に立って処理することが求められるところであるが 給与に関する事務等に係る審査請求に対する裁決については 可能な限り慎重に判断される必要があることから 地方自治法独自の制度として 本来的に執行機関に対する監視機能を有する議会への諮問が設けられているもの 仮に議会への諮問手続を省略した場合には 裁決までの手続において第三者の視点が全く入らないこととなり 手続きの正確性 公平性 客観性を担保すると言う地方自治法上の目的が達成されない したがって 審査請求が不適法であり請求を却下する場合においても 議会への諮問手続きを省略することは適当でない というものであった この第 1 次回答に対し 提案団体は 裁決までの手続きにおいて第三者の視点が全く入らないという点は 他の審査請求についても同じ ( 行審法が ) 行政訴訟という道が残されていることを前提に不服審査の迅速化 簡素化を図った 明らかに実質的な価値判断が入る余地のない審査請求についてまで依然として議会への諮問手続を必須とすることは ( 中略 ) 制度的な均衡や取扱いが異なることの疑問を払拭しきれない との意見を提出した これに対する総務省の第 2 次回答は 運用実態を踏まえ 見直しも含めて検討というもので この後 総務省は執行側 議会側の両方を対象に全都道府県 全市区町村に実態調査を実施して 約 8 割から現行規定の改正を希望していることが判明したことから 手続を簡素化する見直しを進めることとした (22) (21) 細川敬太 前掲注 (20) 80 頁 (22) 細川敬太 前掲注 (20) 81 頁

46 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - (4) 改正内容改正条文中に 1 不適法却下の場合における議会への諮問手続きの廃止 2 不適法却下の場合における議会への報告の規定を設けた たとえば 地方自治法 206 条の改正規定は 次の通りである ( 各行上段が改正規定 ) 地方自治法 206 条 2 普通地方公共団体の長は 第二百三条から第二百四条まで又は前条の規定による前項の給与その他の給付に関する処分についての審査請求がされた場合には 当該審査請があつたときは求が不適法であり 却下するときを除き 議会に諮問した上 当該審査請求に対す諮問してこれを決定しなければる裁決をしなければならない 3 議会は 前項の規定による諮問を受けた日から二十日以内に意見を述べなければがあつたならない 4 普通地方公共団体の長は 第二項の規定による諮問をしないで同項の審査請求を ( 新規 ) 却下したときは その旨を議会に報告しなければならない おわりに 国会質疑でも取り上げられていたが はたして一括法という法案形式を取り続けていいのものなのか この点も 再考が必要かもしれない その理由は第 1に 第 2 次分権改革における一括法の改正法律数が 第 1 次が42 本 第 2 次が188 本 第 3 次が74 本 第 4 次が63 本 第 5 次が19 本 第 6 次が15 本 そして今次第 7 次が10 本と 第 2 次をピークとして一貫して減少しているからである 先にも記したように 地方分権は 旗を失い 進路も見定められないでいる その一方で 地方総合戦略 のように もともと国が立てた政策であるにもかかわらず 成果が上がらなければ自治体側の責任に転嫁される こうして 計画と評価を組み込んだポス

47 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ト 分権 の新たな自治体統制手法が多用されることになった (23) とも指摘されている したがって 今後とも提案募集方式を進めるとしても 権限移譲に関する提案が増え 改正すべき法律本数が増加するとの見通しは立ちにくい (24) そうすると 地方分権改革を大義として 法律を一括に束ねる必要性は薄い 第 2に 同じ法律の改正にもかかわらず 国会での委員会を跨ぎ 日程も異なって審議が行われる例があるためである たとえば193 通常国会では 地方自治法の一部改正については 3つの改正法案が準備されていた 第 1に第 7 次一括法に包含された地方自治法の一部を改正する法律案で 衆議院では2017 年 3 月 28 日に地方創生に関する特別委員会に付託されている 第 2に地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案で 衆議院では 2017 年 4 月 19 日に総務委員会に付託された 第 3に 内部統制および監査制度に係る地方自治法等の一部を改正する法律案で 衆議院では 2017 年 5 月 10 日に総務委員会に付託された このように地方自治法の一部を改正する法律案は 衆議院では 3つの日程で 2つの委員会で審議されたことになる 束ねるとしても 大義を失いつつある地方分権ではなく 法律ごとに一括化する方が集中的に審議できるのではないだろうか ( かんばやしようじ公益財団法人地方自治総合研究所研究員 ) 参考文献 関口龍海 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 第七次地方分権一括法 ) について 地方自治 (837) 頁以下田邊樹 第 7 次地方分権一括法の解説 自治体法務研究 (50)2017 秋 63 頁以下 (23) 今井照 縮小社会における自治体のミッション ガバナンス (197) 頁 (24) 地方分権有識者会議では すでに 4 回目となる 2017 年の提案募集を進めている 2017 年 7 月 7 日に開催された第 29 回地方分権改革有識者会議 第 53 回提案募集検討専門部会合同会議では 2017 年の提案総数は 311 件 (2016 年は 303 件 ) で 若干ながら 増加したことが報告された

48 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 23 日法律第 71 号 ) 其田茂樹 はじめに 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律は 2017 年 3 月 10 日に第 193 回国会に提出されたものである 同年 4 月 18 日 衆議院地方創生に関する特別委員会に付託され 5 月 30 日には衆議院を賛成多数で可決 ( 賛成会派 : 自由民主党 無所属の会 公明党 日本維新の会 反対会派 : 民主党 無所属クラブ 日本共産党 自由党 社会民主党 市民連合 ) し 5 月 31 日 参議院内閣委員会に付託され 6 月 16 日に参議院において可決 ( 賛成会派 : 自由民主党 こころ 公明党 日本維新の会 無所属クラブ 反対会派 : 民進党 新緑風会 日本共産党 希望の会 ( 自由 社民 ) 沖縄の風) して 6 月 23 日に公布されたものである (1) 本稿の課題は これらの法律改正の概要や可決に至る過程での論点 地方自治体への影響等を整理することを主たるものとする 国家戦略特別区域法は 第 190 回国会において テレビ電話による服薬指導の特例 過疎地等での自家用自動車の活用拡大等を内容とする改正が 構造改革特別区域法は 第 189 回国会において 外国語による観光案内人材育成に係る特例 公社管理有料道路の民間開放に係る特例を内容とする改正が実施されて以来の改正となり 両法の同時改正は 第 189 回国会以来となる この 第 189 回国会における改正は 臨時国会として開かれた第 187 回国会において審議 (1) 施行は 9 月 22 日 同日には 改正法の委任を受けた 国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備に関する政令 ( 平成 29 年政令第 246 号 ) も施行されている また 本稿において 特別区域 を 特区 とすることがある

49 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 未了となった創業人材等の多様な外国人の受入れ促進をはじめとする外国人を含む開業促進など 医療法人の理事長要件の見直しをはじめとする規制改革による地方創生 公立学校運営の民間開放をはじめとする民間ノウハウの活用などを内容とする法律案に ips 細胞から製造する試験用細胞等への血液使用の解禁 都市公園内における保育所等設置の解禁などを新たにつけ加えたものであった (2) 1. 本法律の概要 図表 1は 法律案の概要を示したものである 図表 1にも示されているが 焼酎特区 の創設 と提案募集や計画の認定申請の期限延長が構造改革特別区域法の改正事項 それ以外は 国家戦略特別区域法の改正事項である 以下 要綱などを参照しながら個別に確認しておこう 図表 1に掲げられている項目順に整理すると まず 近未来技術の実証など 地方発のイノベーションの推進 における 自動走行 ドローン等の先端実証のための 日本版レギュラトリー サンドボックス から言及することになる まず レギュラトリー サンドボックス という用語について 日本経済新聞では 次のように解説している (3) 法制度が想定していない革新的なサービスや製品について 企業が当局と相談して試験事業を始め 顧客保護のあり方などを 走りながら考える という仕組み 政府は (1) 対象企業へ法的措置を取らないことを約束 (2) 企業に個別指導をする代わりに罰則は科さない (3) 対象企業に限って規制の適用を除外 などの措置を取る 小さな失敗を許容して試行錯誤をさせることから 砂場 ( サンドボックス ) 遊び にたとえられる 英国発の仕組みで 企業には新事業を立ち上げやすくなるなどのメリットがある すなわち 国及び関係地方公共団体は 自動車の自動運転 小型無人機の遠隔操作又は自動操縦その他これらに類する高度な産業技術であって技術革新の進展に即応したものの有効性の実証を行う事業活動を集中的に推進することにより 産業の国際競争力の強化 (2) いずれの内容も国家戦略特別区域法の一部改正である 構造改革特別区域法については 第 187 回国会にも前段落で紹介した 2 項目が盛り込まれ 新たに追加された項目はなかった (3) 日本経済新聞 2017 年 1 月 6 日

50 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図表 1 法律案の概要 ( 出所 ) 内閣府ウェブサイト 及び国際的な経済活動の拠点の形成を図るために 国家戦略特別区域内において当該事業活動を行う者に対する道路交通法 航空法 電波法その他の法令の規定に基づく手続に関する情報の提供 相談 助言その他の援助を行うものとすること ( 第 37 条の7 関係 ) ( 要綱第一の二の4) 政府は ( 中略 ) この法律の施行後 1 年以内を目途として 当該事業活動に関連する規制の見直しその他の当該事業活動の集中的な推進を図るための施策について検討を加え その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること ( 改正法附則第 2 条第二項関係 ) ( 要綱第三の二の2) とすることにより 国家戦略特区を自動運転 ドローンの サンドボックス にしようというものである (4) なお この サンドボックス に関しては 第 196 回国会に生産性向上特別措置法案が提出されている (2018 年 2 月 9 日 ) 同法案は 新技術等実証の促進 革新的データ産業活用の促進その他の革新的事業活動による短期間での生産性の向上に関する施策を集中 (4) 要綱引用部分の下線は いずれも筆者によるものである ( 以下同じ )

51 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 的かつ一体的に講ずること等 ( 第 1 条 ) によって 産業の国際競争力強化等に寄与することを目的とし 相談窓口を一元化するなど 新技術等実証計画を早期に認定するなど 規制のサンドボックス を制度化することとなっている 国家戦略特区との関係で言えば 自治体からの提案について地域限定で実証のための事業を実施する 地域限定型サンドボックス制度 が対象となる (5) 次に 革新的医薬品の開発迅速化 については 国は 国家戦略特別区域において 革新的な医薬品の迅速かつ効率的な開発及び実用化を促進するため 国家戦略特別区域内の臨床研究中核病院において行われる当該医薬品の研究開発の実施に携わる者に対する情報の提供 相談 助言 その他の援助を行うものとすること ( 第 37 条の6 関係 ) ( 要綱第一の二の3) としている 具体的には 内閣府ウェブサイト 規制改革メニュー を参照すると 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (AMED) 内に 臨床研究中核病院等担当のコーディネーター ( 拠点担当コーディネーター ) を必要に応じて設置し 臨床研究中核病院等における医薬品の研究開発を支援 することとなっている したがって 医薬品の研究開発における既存の法律の規制を緩和するものではないと思われる 焼酎特区 の創設 については 内閣総理大臣の認定を受けた構造改革特別区域内において地方公共団体の長が地域の特産物として指定した農産物等を原料として単式蒸留焼酎の製造免許を受けた者が 単式蒸留焼酎又は原料用アルコールの製造免許を申請した場合には 当該製造免許に係る最低製造数量基準を適用しないこととすること ( 第 28 条の2 関係 ) ( 要綱第二の一 ) としている 具体的には 製造免許に必要な年 10キロリットル以上の製造見込数量を適用しないというものである 次に 外国専門人材の受入れなど インバウンド 競争力向上 における各項目を確認しよう まず クールジャパン インバウンド外国専門人材の就労促進 についてであるが これは 国家戦略特区において 外国人が海外需要開拓支援等活動を行うことを促進する事業を定めた区域計画が認定を受けたときは 当該特区において当該活動等を行うために本邦に上陸しようとする外国人から 在留資格認定証明書の交付の申請があった場合には 政令で定める海外需要開拓支援等外国人上陸審査基準を入管法の法務省令で (5) このほか プロジェクト型サンドボックス制度が併せて設けられる 詳細については 経済産業省ウェブサイト等を参照されたい

52 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 定める基準とみなして 在留資格認定証明書を交付することができるものとすること ( 第 17 条の7 関係 ) ( 要綱第一の一の2(2)) としている また 図表 1には具体的に記されていないが 海外における事業の展開のために外国人を雇用しようとする事業主に対する援助として 当該事業主に対し 入国管理制度に関する情報の提供 相談 助言 その他の援助を行うものとすること ( 第 37 条の3 関係 ) ( 要綱第一の二の2) としている 農業外国人の就労解禁 については 国家戦略特区内において政令で定める農作業等の作業に従事することにより 農業経営を行う者を支援する活動を行う外国人を政令で定める基準に適合する本邦の公私の機関が雇用契約に基づいて受け入れる事業を定めた区域計画が認定を受けたときには 本邦に上陸しようとする外国人から 特定農業支援活動 ( 特定期間との雇用契約に基づいて 国家戦略特別区域内に限って行う農業支援活動 ) を行うものとして 在留資格認定証明書の交付の申請があった場合には 当該特定農業支援活動を特定活動の在留資格を持って在留する外国人が本邦において行うことができる活動として法務大臣があらかじめ告示をもって定めるものに該当するものとみなして 在留資格認定証明書を交付することができるものとすること ( 第 16 条の5 関係 ) ( 要綱第一の一の2(1)) としている コンセッション事業者の施設経営の自由度向上 については いわゆるコンセッション事業者 ( 公共施設等運営権者 ) が その円滑かつ効率的な事業運営を図るため 第三者に対して公共施設等の使用を許すことが可能となるよう この法律の施行後 1 年以内を目途としてその具体的な方策について検討を加え その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること ( 改正法附則第 2 条第 1 項関係 ) ( 要綱第三の二の1) としている これに関連して 第 196 回国会には 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案が提案されている (2018 年 2 月 9 日 ) 本法律との関連では コンセッション事業者 ( 公共施設等運営権者 ) が公の施設の指定管理者を兼ねる場合における地方自治法の特例として 1 一定の条件を満たす場合には 利用料金の設定に際し 地方公共団体の承認を要しない 2 公共施設等運営権の移転を受けた者を新たに指定管理者とする場合において 条例に定めることにより 事後報告で可とする 等の改正が提案されている 最後に 子育てに係る環境の整備など 社会保障 働き方の充実 についてである 小規模認可保育所の対象年齢の拡大 については 国家戦略特区における保育の需要に応ずるため 当該特区において保育を必要とする乳児 幼児についてその保育を目的と

53 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - する施設において保育を行う事業を定めた区域計画が認定を受けたときは 当該事業は 児童福祉法 子ども 子育て支援法その他の法令の規定の適用については 児童福祉法第 6 条の3 第 10 項に規定する小規模保育事業に含まれるものとすること ( 第 12 条の4 関係 ) ( 要綱第一の一の1(1)) としている 具体的にいうと 現在 0 歳から2 歳までの子どもを対象としている小規模認可保育事業について5 歳の子どもまで受け入れることを可能とするものである 地域限定保育士試験の実施主体の拡大 については 国家戦略特別区域限定保育士事業に係る指定期間として 一般社団法人又は一般財団法人以外の法人を指定できるようにすること ( 第 12 条の5 関係 ) ( 要綱第一の一の1(2)) としている 具体的には 株式会社等がその対象となる テレワーク推進に向けた相談拠点整備 については 国又は地方公共団体が 国家戦略特区内に事業場を有する事業主若しくは新たに特区内に事業場を設置する事業主又はこれらの事業主が雇用する労働者に対し 在宅勤務その他の労働者が雇用されている事業場における勤務に代えて行う事業場外における勤務であって 情報通信技術を利用して行うもの ( 情報通信技術利用事業場外勤務という ) に関する 情報の提供 相談 助言その他の援助を行うものとすること ( 第 37 条の3 関係 ) ( 要綱第一の二の1) としている このほか 図表 1において注記されているように 構造改革特区における提案募集や認定申請の期限を平成 29 年 3 月 31 日から平成 34 年 3 月 31 日まで延長することとされている (6) 後に地方自治体への影響等については改めて整理するが 本法律の要綱において 地方公共団体は 自動車の自動運転等の有効性の実証を行う事業活動に対する援助 情報通信技術を利用した事業場外勤務の活用のための事業主等に対する援助 において 情報の提供 相談 助言その他の援助 を行うこととなっているほか 酒税法の特例に関しては 地方公共団体の長が地域の特産物を指定することとなっている また 構造改革特区の提案募集 応募認定については 地方公共団体もその対象となるものである (6) 提案募集の期限に関しては 附則第 3 条関係 ( 要綱第二の二 ) 認定申請の期限に関しては 附則第 4 条関係 ( 要綱第二の三 ) 参照

54 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 2. 審議の経過等 今回改正にあたり国会において論点となった主な部分を以下に引用する なお 上述したとおり本法律の内容とは直接関わらないものの 国家戦略特区をめぐって大きく報道された問題や 当時の担当大臣による失言等にも多くの時間が割かれたが ここでは原則として取り上げないものとする 提案時法律案によると 産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する施策の総合的かつ集中的な推進を図るため 国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業に係る出入国管理及び難民認定法の特例措置その他の国家戦略特別区域に係る法律の特例に関する措置の追加等を行うとともに 経済社会の構造改革及び地域の活性化を図るため 地域の特産物を用いた単式蒸留焼酎及び原料用アルコールの製造に係る酒税法の特例措置の追加等の措置を講ずる必要がある ために提出されたのが本法律である いくつかの論点を抽出して国会における代表的な議論を概観しておこう (7) (1) 外国人材の特例をめぐって 違法滞在につながらないか 農業外国人材の特例については 人材確保に悩む農業現場での活用ニーズが高いと聞いておりますが その一方で 我が党の丸山穂高議員も本委員会で指摘しているとおり 不法滞在の温床となり 不法滞在者が都市部に流入するのではないかと懸念する声も聞かれております 農業外国人材が不法滞在者とならないよう適切な在留管理や適切な処遇が必要であると思うのですが 今回の法律改正ではどのような対応を考えているのでしょうか ( 椎木保氏 ( 日本維新の会 ) 衆議院地方創生に関する特別委員会第 7 号 2017 年 4 月 21 日 ) 農業分野での外国人受け入れに際しましては 劣悪な労働環境ですとかあるいは低賃金等によりまして失踪等の不法滞在の問題が生じないようにしていく 対策を講ずる必要があるものと考えております このため 今回の制度設計におきましては 国と関係自治体が合同で適正受け入 (7) 質問者等の所属については 委員会等開催当時のものである

55 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - れ管理協議会を設置いたしまして 国 自治体が受け入れ機関を直接管理することで 労働時間ですとかあるいは賃金等の労働条件を適切に管理する仕組みを導入する予定でございます また 外国人材を適切に保護できますように 苦情 相談を直接受け付ける窓口を適正受け入れ管理協議会に設けまして 必要な巡回指導等を行うことによりまして 適正な運営を期してまいりたいというふうに考えているところでございます ( 山北幸泰氏 ( 農林水産省大臣官房審議官 ) の答弁 ) 農業分野の技能実習生との関係 今回適用しようとする特区法での外国人労働者と そして今もいらっしゃる技能実習生 こちらはどちらかというと専門家という意味では区別を今つけているわけで 明らかに差がないとおかしいと思うんですけれども これは同じような作業をすることはない してはいけないということでよろしいんでしょうか ( 丸山穂高氏 ( 日本維新の会 ) 衆議院地方創生に関する特別委員会第 8 号 2017 年 4 月 25 日 ) 技能実習については 年間の実習計画に従った工程の中でその作業に当たっていただくということになりますし 本法案によります外国人につきましては 経営者の指示に基づいて その裁量の範囲内でその作業に当たっていただくことになるということでございます そういう意味では位置づけが違うというふうに思いますが 仮に何らかの問題が生じた場合には 本法におきましては 適正受け入れ管理協議会をつくりまして 派遣先農業経営体に現地調査が必要ならば現地調査を行って指導を行っていくといったようなことになりますし 技能実習がその目的に従っていないということであるならば 今回新たに11 月に施行されます法律に基づきまして 適正な運営に向けた指導を行っていくということになろうかというふうに考えているところでございます ( 山北幸泰氏の答弁 ) 労働者派遣法との関係 本法案では 農業支援外国人受け入れのシステム これは労働者派遣法のスキームで行われるというふうに聞いております 派遣といってもいろいろなやり方があるわけなんですけれども まずお伺いしたいのは これは有期雇用なのか無期雇用なのか あるいは派遣は登録型なのか常用型なのか ( 田村貴昭氏 ( 日本共産党 ) 衆議院地方創生に関する特別委員会第 9 号 2017 年 5 月 10 日 ) 雇用の形態としては 常用型の派遣 雇用期間は この( 引用者注 : 在留

56 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 期間の ) 範囲内で有期 ( 山北幸泰氏の答弁 ) 以上のような議論を経ているが やはり 技能実習生との違いや労働者保護のあ り方については必ずしも明確になっていないと思われる (2) 焼酎特区について 酒税法改正による最低製造数量用件の緩和 撤廃について 数量規制を酒税法について見直せば 見直すかあるいは撤廃するか この方が早いんじゃないか ( 武正公一氏 ( 民進党 ) 衆議院地方創生に関する特別委員会第 7 号 2017 年 4 月 21 日 ) 単に緩和してしまうということは 逆に 地方の特性に応じた活性化を図るとの目的が損なわれるのではないかということ また 採算性に不安のある製造者の増加を招いて 酒税の納税に支障を来すことが懸念される ( 木原稔氏 ( 財務副大臣 ) の答弁 ) このほか 特区導入による効果や見込まれる消費先についての質問等がなされた (3) 小規模認可保育所の対象年齢の拡大について 保育の質の確保について ( 年齢拡大により 3~5 歳児が9 人入っても保育士は1 人しか増えない ) 保育の質の低下につながるのではないか ( 田村貴昭氏 衆議院地方創生に関する特別委員会第 7 号 2017 年 4 月 21 日 ) 異年齢で構成されるグループ保育などにおきましては 個々の発達過程等に応じた適切な支援ができるように配慮すること また 3 歳以上児については 特に個の成長 それから友達との相互的 協力的な活動が促されるように配慮すること そういったことを徹底いたしますとともに ただいま申し上げました設備運営基準 さらには保育所保育指針などをきちんと適用していくということをいたします それとともに 今申し上げましたそれぞれの配慮がきちんとなされているかどうかにつきまして 事業者は市町村を通じて都道府県に報告をし 都道府県はそれを公表するといったことも定めたいというふうに考えている ( 吉本明子氏 ( 厚生労働省大臣官房審議官 ) の答弁 ) 年齢構成が変わることによって 今度 今御答弁いただきましたとおり 乳児さんの0 歳 1 歳 2 歳の枠が減ってしまうんじゃないか ( 田中英之氏 ( 自由民

57 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 主党 ) 衆議院地方創生に関する特別委員会第 8 号 2017 年 4 月 25 日 ) 0から2 歳の待機児童対策を損なうものになるんじゃないかといったような御懸念につきましては やはり各自治体が きちんとその足元の0から2 歳児の待機児童も含めた潜在的な保育ニーズも含めて幅広く把握して それに応えるような受け皿整備を引き続き並行して行っていくということが何より必要だというふうに考えている 自治体におかれましては 小規模保育事業の対象年齢を拡大することも考慮に入れた上で 0から2 歳児も含めた待機児童の解消に向けた受け皿整備 これを進めていく必要があるというふうに考えている ( 吉本明子氏の答弁 ) これらの議論から 規制緩和の影響に関して一義的には対象自治体において対応することとなっており 全体的な保育環境等について十分な検討が必要となると思われる (4) 地域限定保育士試験について 潜在保育士の活用 潜在保育士の活用について政府はどのように考えているのでしょうか ( 椎木保氏 衆議院地方創生に関する特別委員会第 7 号 2017 年 4 月 21 日 ) 再就職される際の支援といたしまして 就職する際の必要となる費用の貸し付けを行う事業 これにつきましては それまで20 万円だったものを 平成 28 年度補正予算におきまして40 万円に引き上げまして これは その後 2 年間 保育士として従事していただきますと 返還が必要なくなります 今年度 ( 引用者注 : 平成 29 年度 ) 予算におきましては 保育士 保育園支援センターと申しまして これは職業紹介 マッチングを行う施設でございますが そこにコーディネーターを配置するなどいたしまして 再就職支援の強化を行った ( 吉本明子氏の答弁 ) 試験実施の適正 公正 確実性が株式会社によっても担保されるのであれば 保育士試験の実施主体の拡大を地域限定保育士試験に限定する必要はなく 全国を対象として措置すべき課題ではないでしょうか ( 相原久美子氏 ( 民進党 ) 参議院本会議第 28 号 2017 年 5 月 31 日 ) 地域限定保育士試験の実施主体の拡大は神奈川県からの提案に基づくものであり その実施に当たっては 一定の条件を設けることにより公正 適正かつ確実な実施を担保することとしております この特例を全国的に適用することについては 今後 神奈川県による試験の実施状況や他の都道府県の三回の試験実施の意向等を

58 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 踏まえて検討をしてまいりたい ( 塩崎泰久氏 ( 厚生労働大臣 ) の答弁 ) 以上のような質疑を経て 可決 成立したものである なお 両院において附帯決議が付され また 参議院においては修正案も提出されてい る それらを以下に紹介しておこう 衆議院附帯決議国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法の施行に当たっては 次の諸点に留意し その運用等について遺憾なきを期すべきである 一国家戦略特別区域の新規指定及び国家戦略特別区域における追加の規制改革事項の決定に至る過程の透明性 公正性を確保すること 二国家戦略特別区域諮問会議の中立性を確保する観点から 民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し 又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止するため 民間企業の役員等を務め又は大量の株式を保有する議員が 会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは 審議及び議決に参加させないことができるものとすること また 各国家戦略特別区域において特定事業を実施すると見込まれる者を公募する場合には 十分な募集期間を設けるなど 手続の公正性 公平性の確保に留意すること 三現在国家戦略特別区域に指定されている十区域の評価結果を踏まえ 個々の事業の進捗状況や規制改革メニューの活用が不十分であるなど 評価が著しく低い区域に対しては 指定の在り方を含め PDCAサイクルによる進捗管理を厳格に行うこと また 可能な限り定量的な評価を行うため 国家戦略特別区域計画に予め数値目標を定め その達成度を測るなど 国民に対してわかりやすい形で評価を行うよう努めること 四国家戦略特別区域小規模保育事業の実施に当たっては 満三歳以上の子どもの保育に関し 同年齢の子どもとの触れ合いの中で協調性や社会性を育む重要な段階であることに配慮するとともに 限られた空間の中で活動量の異なる異年齢の子どもが集団で保育を受けることになることに鑑み 安全管理対策に万全を期すこと 五新たに国家戦略特別区域限定保育士事業の指定試験機関となる法人について 試験

59 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 実施機関としての適格性 公正性の確保に万全を期すること また 政府は 待機児童問題の解消に不可欠な保育士の更なる確保に向け 保育士の処遇の改善をはじめとして いわゆる 潜在保育士 の再就職支援のための取組を一層強化すること 六国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業の実施に当たっては 外国人材に対する人権侵害行為を防止すること 日本人農業労働者と同程度の賃金水準を維持すること 労働時間や休日 休暇等の適切な就労環境を確保すること 特定機関等による不当な利益追求を防止すること等 事業運営の適正化を確保するため 適正受入管理協議会を核に 特定機関及び農業経営体等に対する監督及び指導を徹底すること また 本事業の全国展開については 国内全産業における賃金や就労環境の低下につながらないよう見極めるとともに 地域社会や日本人就農者に与える影響等について慎重に検討した上で判断すること 七我が国の成長戦略 第四次産業革命を牽引する 自動車の自動運転及び小型無人機の遠隔操作等の高度な産業技術の社会実装を世界に先駆けて実現するため 迅速かつ集中的に実証実験を行うことができるよう 日本版レギュラトリー サンドボックス制度を速やかに創設すること なお 実証実験に際しては 地域の住民等の理解の下 その安全の確保に万全を期すること 参議院修正案 ( 希望の会 ) 第一に 内閣総理大臣は 区域計画に定められた特定事業が 特定の者が特別の利益を得ることとなるものであると認められる場合には 区域計画の認定をしてはならないものとしております 第二に 内閣総理大臣は 区域計画の認定の申請があった場合には 透明性を確保しつつ 区域計画の認定の厳格化等により認定を適正かつ厳格に行うようにするため 直ちに区域計画を公表し 広く国民の意見を求めなければならないものとしております 第三に 国家戦略特別区域諮問会議の有識者議員は 利害関係のある議案について その議事に加わることができないものとしております 第四に 国家戦略特別区域農業支援外国人受入れ事業に係る規定は 別に法律で定める日までの間 適用しないものとしております 第五に 政府は 国家戦略特別区域家事支援外国人受入れ事業及び国家戦略特別区域農業支援外国人受入れ事業において受け入れる外国人の権利利益の擁護の在り方について早

60 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 急に検討を行い その結果に基づいて法制上の措置その他必要な措置を講ずるものとし この場合において 当該検討を行うに当たっては 我が国において外国人の権利利益の擁 護を図るための活動を行う民間の団体その他の関係者の意見を聴くものとしております 参議院附帯決議国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法の施行に当たっては 次の諸点に留意し その運用等について遺憾なきを期すべきである 一国家戦略特別区域の新規指定及び国家戦略特別区域における追加の規制改革事項の決定に当たっては 特別の関係に配慮して特定の地域や企業等に利益を誘導したとの疑念を国民に持たれることのないよう十分留意し 情報公開の徹底により その指定及び決定に至る過程の透明性 公正性を確保すること また 国家戦略特区ワーキンググループを始めとする各種の会議の議事要旨について 少なくとも追加の規制改革事項のうち法改正を行う事項に係るものについては 会議の終了後速やかに公表するよう努めること 二国家戦略特別区域諮問会議の中立性を確保する観点から 民間議員等が私的な利益の実現を図って議論を誘導し 又は利益相反行為に当たる発言を行うことを防止するため 民間企業の役員等を務め 又は大量の株式を保有する議員が 会議に付議される事項について直接の利害関係を有するときは 審議及び議決に参加させないことができることとすること また 各国家戦略特別区域において特定事業を実施すると見込まれる者を公募する場合には 十分な募集期間を設けるなど 手続の公正性 公平性の確保に留意すること 三現在国家戦略特別区域に指定されている十区域の評価結果を踏まえ 個々の事業の進捗状況や規制改革メニューの活用が不十分であるなど 評価が著しく低い区域に対しては その改善に向けた取組の状況に進展が見られない場合には 指定の解除を含め 厳格に対応すること また 可能な限り定量的な評価を行うため 国家戦略特別区域計画にあらかじめ数値目標を定め その達成度を測るなど 国民に対して分かりやすい形で評価を行うとともに 事業の進捗については 数値目標を活用したPDC Aサイクルにより管理するよう努めること 四各国家戦略特別区域において 規制改革メニューの活用ニーズを把握し 新規事業

61 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - を掘り起こすなど 事業の具体化を図る上で 特区の活動を支える人材の重要性に鑑み 特区推進共同事務局の活用や国と関係地方公共団体との人事交流の推進等により 人材の育成 確保を支援すること 五国家戦略特別区域小規模保育事業の実施に当たっては 満三歳以上の子どもの保育に関し 同年齢の子どもとの触れ合いの中で協調性や社会性を育む重要な段階であることに配慮するとともに 限られた空間の中で活動量の異なる異年齢の子どもが集団で保育を受けることになることに鑑み 安全管理対策に万全を期すること 六新たに国家戦略特別区域限定保育士事業の指定試験機関となる法人について 試験実施機関としての適格性 公正性の確保に万全を期すること また 政府は 待機児童問題の解消に不可欠な保育士の更なる確保に向け 保育士の処遇の改善を始めとして いわゆる 潜在保育士 の再就職支援のための取組を一層強化すること 七国家戦略特別区域農業支援外国人受入事業の実施に当たっては 外国人技能実習制度において指摘されている諸課題も踏まえ 外国人材に対する人権侵害行為を防止すること 日本人就農者と同程度の賃金水準を確保すること 労働時間や休日 休暇等の適切な就労環境を確保すること これらにより就労期間中の失踪を防止すること 特定機関等による不当な利益追求を防止すること等 事業運営の適正化を確保するため 適正受入管理協議会を核に 特定機関及び農業経営体等に対する監督及び指導を徹底すること また 本事業の全国展開については 国内全産業における賃金や就労環境の低下につながらないよう見極めるとともに 地域社会や日本人就農者に与える影響等について慎重に検討した上で判断すること 八国家戦略特別区域内に 情報通信技術を活用した 場所や時間にとらわれない柔軟な働き方であるテレワークの推進に向けた相談拠点を整備するに当たっては テレワークによって従来の働き方よりもかえって労働時間が増加するなど 労働環境の悪化を招くことのないよう ガイドラインの策定やセミナーの開催等 事業主 労働者に対して 適切な支援を実施すること 九我が国の成長戦略 第四次産業革命を牽引する 自動車の自動運転及び小型無人機の遠隔操作等の高度な産業技術の社会実装を世界に先駆けて実現するため 迅速かつ集中的に実証実験を行うことができるよう 日本版レギュラトリー サンドボックス制度を速やかに創設すること なお 実証実験に際しては 地域の住民等の理解の下 その安全の確保に万全を期

62 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - すること 3. 地方自治体等への影響等 ( 小括にかえて ) 前述のとおり 自動車の自動運転等の有効性の実証を行う事業活動に対する援助 情報通信技術を利用した事業場外勤務の活用のための事業主等に対する援助 において 情報の提供 相談 助言その他の援助 を行うこととなっているほか 酒税法の特例に関しては 地方公共団体の長が地域の特産物を指定することとなっている 特産品の指定については 法律に定めがあるわけではなく 条例についても自治体により制定状況は異なるものと思われる このほか 農業外国人の就労解禁にあたって さまざまな審査等に地方自治体が関与することが想定されている また この点も繰り返しになるが 構造改革特区の提案募集 応募認定については 地方公共団体もその対象となるものである したがって 上の国会における議論であったように 地方自治体が必要と判断した場合には 本法律の特区の措置について 構造改革特区としてそれを求める可能性が考えられる この点は 国会における議論や先行文献等で全く触れられていないが 構造改革特区制度を存置し 国家戦略特区と並立させることの意味は トップダウンで国家戦略特区を定めておいて それを 自主的に 地方自治体が構造改革特区として提案することでよりスムーズな規制緩和の全国化が図れる可能性がある こうした論点の検討に資するため 国家戦略特区と構造改革特区について簡単に確認しておこう (8) まず それぞれの目的であるが国家戦略特区は 我が国を取り巻く国際経済環境の変化その他の経済社会情勢の変化に対応して 我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図るためには 国が定めた国家戦略特別区域において 経済社会の構造改革を重点的に推進することにより 産業の国際競争力を強化するとともに 国際的な経済活動の拠点を形成することが重要であることに鑑み 国家戦略特別区域に関し 規制改革その他の施 (8) このほかの制度として総合特区もあるが 首相官邸ウェブサイト 総合特別区域の今後の指定について によると 地域活性化に係る制度については 地域再生法に基づく特定地域再生制度の活用検討を促し 当面 新たな指定は行わない としているため今回は対象としない

63 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定め もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与すること ( 国家戦略特別区域法第 1 条 ) が目的とされ 構造改革特区は 地方公共団体の自発性を最大限に尊重した構造改革特別区域を設定し 当該地域の特性に応じた規制の特例措置の適用を受けて地方公共団体が特定の事業を実施し又はその実施を促進することにより 教育 物流 研究開発 農業 社会福祉その他の分野における経済社会の構造改革を推進するとともに地域の活性化を図り もって国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与すること ( 構造改革特別区域法第 1 条 ) が目的とされている (9) 区域設定については 国家戦略特区は 国が 区域を決定し 計画策定に関しては 国 地方公共団体 民間事業者が対等の立場で参画するのに対して 構造改革特区は 地方公共団体の申請に基づき計画認定を国が行うこととなっている したがって 国家戦略特区は 提案募集等の制度が整備されてはいるものの基本的にはトップダウン型 構造改革特区は 特区計画の認定を全ての地方自治体が行いうることなどから ボトムアップ型と言えよう (10) なお 国家戦略特区と構造改革特区との一体的な運用を図る観点から 同時に提案募集を行って いる (11) 2017 年 3 月 31 日をもって構造改革特区の提案募集や認定申請が締め切られる予定となっていたことを考えれば 構造改革特区の計画認定は 国家戦略特区の提案に包含される見込みであったことがうかがえる これを2022 年 3 月 31 日まで延長する意図や意義がどのようなものであるのかについて 法律案の国会審議等を通じてさらに明確にされる必要があったように思われる 首相官邸のウェブサイトによると 国家戦略特区においては 規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進 することとなっている しかし 今回改正された法律においては 図表 1に示された9つの項目のうち 4 項目 ( 自動走行 ドローン等の先端実証のための 日本版レギュラトリー サンドボックス 革新的医薬品の開発迅速化 コンセッション事業者の施設経営の自由度向上 テレワーク推進に向けた相談拠点整備 ) に関しては (9) 引用中の下線は いずれも筆者によるものである (10) 前節では取り上げていないが 福島伸享氏 ( 民進党 ) が地方創生に関する特別委員会第 8 号 2017 年 4 月 25 日において 構造改革特区と国家戦略特区を比較した上で 構造改革特区がボトムアップであるのに対し 国家戦略特区は 総理が国家戦略特区諮問会議に意見聴取 諮問会議が指定基準に従って調査審議を実施し 国家戦略特区として指定すべき区域案について意見具申した後に関係地方公共団体の意見を聴取するというプロセスを 上から目線 とした (11) 首相官邸ウェブサイトより引用

64 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 既存の法律の規制緩和について具体的に示していない (12) ただし 1 年以内に検討 措置 とされた2 項目については すでに述べたとおり第 196 回国会において それぞれ 生産性向上特別措置法案 民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律の一部を改正する法律案として提案がなされている このことは 特区において規制緩和のメリットやデメリットを検証するプロセスが不要なものをわざわざこの法律改正に位置づけているか特区における検証が不十分なまま全国的な法律の規制緩和が行われているかのいずれかであるように思われ 立法の意図を図りかねるものである 特区制度の意義や必要性について根本的な再検討が必要であるように思われる ( そのだしげき公益財団法人地方自治総合研究所研究員 ) (12) この点 緒方林太郎氏 ( 民進党 ) は コンセッション事業者の施設経営の自由度向上について その内容は評価しつつ 1 年以内に検討するというのは 法律ではないとの批判を展開している すなわち 閣議決定でもよければ 単に 役所で意思決定するだけのものがメニューとして挙がることへの違和感を示している

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66 第2第 2 部 地方自治法改正 部

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68 地方自治法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 9 日法律第 54 号 ) 内部統制および監査制度に係る改正堀内匠 69 住民訴訟制度の改正下山憲治 105 地方独立行政法人法に関する改正其田茂樹

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70 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 内部統制および監査制度に係る改正 堀内 匠 はじめに 本稿では 今次地方自治法改正の主要な内容のうち 内部統制に関する方針の策定等に関するものと 監査制度の充実強化および決算不認定の場合における長から議会等への報告規定の整備 について その立法経緯をなぞる なお 今次地方自治法改正に含まれる 住民訴訟制度に係る改正および地方自治法改正と一括審議された地方独立行政法人法の改正については 本稿で扱う監査や内部統制制度とは出自およびいきさつが異なる これらについては 本誌別号にて解説されることになる 1. 法改正の経緯 2017 年地方自治法 < 監査 内部統制関連 > 改正関連略年表 地方分権 21 世紀ビジョン懇談会 発足 新地方公会計制度研究会 発足 新地方公会計制度研究会 報告書 夕張市定例市議会で市長が財政再建団体の指定申請を表明 地方分権 21 世紀ビジョン懇談会 報告書 新しい地方財政再生制度研究会 発足

71 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 新しい地方財政再生制度研究会 報告書 夕張市 財政再建団体に指定される 地方分権改革推進委員会発足 第 29 次地方制度調査会発足 地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会 発足 地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会 中間報告 地方分権改革推進委員会第 1 次勧告 生活者の視点に立つ 地方政府 の確立 会計検査院による調査で12 道府県に 不正経理 が発覚 地方分権改革推進委員会第 2 次勧告 地方政府 の確立に向けた地方の役割と自主性の拡大 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 ( 財政健全化法 ) 全面施行 地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会 最終報告書 第 29 次地方制度調査会答申 民社国連立政権発足 ( 政権交代 ) 地方分権改革推進委員会第 3 次勧告 自治立法権の拡大による 地方政府 の実現へ 地方分権改革推進委員会第 4 次勧告 自治財政権の強化による 地方政府 の実現へ 地方行財政検討会議 発足 地方行財政検討会議 地方自治法抜本改正についての考え方 ( 平成 22 年 ) 地方公共団体の監査制度に関する研究会 発足 地方公共団体の監査制度に関する研究会 報告書 地方公共団体における内部統制の整備 運用に関する検討会 発足 地方公共団体における内部統制の整備 運用に関する検討会 報告書 第 31 次地方制度調査会発足 第 31 次地方制度調査会答申

72 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - (1) 源流を訪ねて今次法改正の淵源をどこまで遡るべきだろうか 第 31 次地方制度調査会答申で触れられているように 今回の改正は 第 29 次地方制度調査会答申および会計検査院による 不正経理 の指摘が契機とされるが そこまでのいきさつは単純なものではなかった 自治体の内部統制制度導入及び監査改革は 複数の源泉に発し やがて互いは合流しつつ いくつかの事件に棹さしてようやく一つの岸にたどり着いたものである 源泉とは 新地方公会計制度研究会 や 新しい地方財政再生制度研究会 など (1) 事件とは 夕張市の財政再建団体指定や会計検査院による調査で 不正経理 が発覚したことなどである (2) 自治体破綻法制第一の源流 (2) は 自治体破綻法制にある 2006 年当時 従前の地方財政再生制度は 地方財政再建促進特別措置法 ( 再建法 昭和 30 年 12 月 29 日法律第 195 号 ) に規定されてきたが 法に基づく準用再建には 一方で1 各団体において常日頃から早期是正 再生という観点を念頭に置いたわかりやすい財政情報の開示がなされておらず また財政指標及びその算定基礎の客観性 正確性等を担保する手段が十分でないこと 2 再建団体の基準しかなく 早期に是正を促していく機能がないこと 3 実質収支 ( 赤字 ) 比率 ( フロー指標 ) のみを再建団体の基準に使っていること 4 再建を促進 (1) より根源的には第一次臨調 第 1 専門部会第 2 班による報告書 ( 予算及び会計制度 ) 昭和 38(1963) 年 9 月にその淵源を見出すべきかもしれない (2) 自治体における 行政改革の重要方針 ( 平成 17 年 12 月 24 日閣議決定 ) 及び 簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律 ( 平成 18 年法律第 47 号 ) を端緒に 2006 年 4 月に発足した 新地方公会計制度研究会 ( 座長 : 跡田直澄 ) は はやくも 5 月 18 日には報告書を発表した この報告書は 地方公共団体財務書類作成にかかる基準モデル と 地方公共団体財務書類作成にかかる総務省方式改訂モデル を具体的に記述したものだが この総括の今後の課題として 監査制度の構築が掲げられた 新たな公会計制度の導入により作成される財務諸表が地方公共団体の政策形成に有効に活用されるためには その情報の信頼性を確保することが不可欠である そのためには 国における対応を踏まえつつ 財務諸表の正確性に関する監査制度の構築を急ぐべきである 同報告書の内容は地方分権 21 世紀ビジョン懇談会及び経済財政諮問会議でも報告され 住民による監視 ( ガバナンス ) が不十分 という見出しでの行革的分権改革の流れのなかで受け皿整備論として 監査委員への天下りの禁止 外部監査の活用 第三者機関の設置 と合わせて組み込まれることとなった 内部統制の観点を導入しながらの今次地方自治法改正における監査制度改革のいまひとつの源流は公会計制度改革に求められるかもしれない

73 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - するための仕組みが限定的であること などの課題をもっていた (3) 地方分権 21 世紀ビジョン懇談会 ( ビジョン懇 ) では当初から破綻法制のあり方について議論してきた 後に 新しい地方財政再生制度研究会 座長となる宮脇委員がビジョン懇の初期 ( 第 2 回会合以降 ) において破綻法制について発言するなかで 地方自治体の執行機関や議会の責任に言及し 違法 不当に対する責任を明確にするため直接請求制度や住民訴訟制度等の拡充の必要性をうったえ 今後の方向性として監査制度改革も提案していた (4) ことは注目に値する この後の回で総務省がこれに応えて現行の直接請求 住民訴訟制度の説明資料を提出しており また次に見る新しい地方財政再生制度研究会の設置に至る流れからみて ここがその後の監査 内部統制制度に向かう分水嶺となったものと推察される 自治体破綻法制については経済財政諮問会議 2006 年 5 月 10 日付け竹中総務大臣 ( 当時 ) 提出資料で掲げられ 同年 7 月のビジョン懇の報告書 2. 各論 (3) ではレベニュー債の導入や地方債に対する交付税措置の全廃等による地方債の完全自由化と共に いわゆる再生型破綻法制の検討を促す方針が明確に打ち出されることとなった 一方 ちょうどこの時期 観光施設への投資等の放漫財政や産炭法の失効等により財政状況が悪化していたことが表面化した (5) 北海道夕張市では 2006 年 6 月 20 日に後藤健二市長が定例議会冒頭で財政再建団体の申請を総務省にする考えを表明する等 財政再建制度の整備は喫緊の課題となっていた 総務省では 同年 8 月 31 日に 新しい地方財政再生制度研究会 ( 座長 : 宮脇淳 以下 宮脇委員会と略す ) を設置し 12 月に報告書を提出したが 夕張市ではさらに一時借入金等の活用によって表面上は財政黒字となる手法や 空知産炭地域総合発展基金からの借り入れ ( いわゆる ヤミ起債 ) など 不適正な財務処理が明るみに出ると 各方面でその対処が行われることとなる 夕張市は翌 2007 年 3 月に財政再建団体に指定された 夕張問題が先鋭化するなか 総務省では 宮脇委員会報告書に則って 従前の制度では財政悪化が深刻化するまで状況が明らかにならない仕組みを問題視し 自治体の財政状況を統一的な指標で明らかにして財政の健全化や再生が必要な場合に迅速な対 (3) 宮脇委員会報告書 pp.2-3 (4) 第 4 回ビジョン懇宮脇委員提出資料 破綻法制の基本構想 (5) ただし 1991 年に財政再建団体入りした赤池町と比較して 財政再建団体入りを拒み 自主再建を目指してきた夕張市だが 2000 年代初頭には既に財政再建は厳しいとみられてきた 橋本行史 財政再建団体 何を得て 何を失うのか 2001 年 公人の友社 p

74 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 応を取るための 地方公共団体の財政の健全化に関する法律 ( 財政健全化法 ) を 2009 年 4 月に全面施行させた この法は 新たな統一指標を設けたことと共に 首長は その健全化判断比率のうちいずれかが早期健全化基準以上となった場合 計画を (6) 策定した上で 通常の監査委員監査ではなく 個別外部監査契約に基づく監査を求めねばならないこと ( 第 26 条第 1 項 ) とし 自治体の 自己規律による財政健全化 (7) を図ることとした (3) 第 29 次地方制度調査会 : 分離期上述の宮脇委員会によってつくられた流れに従い この件に関する総務省の施策は 自治体破綻法制にとどまらず 監査や内部統制に関するものにまで延長されるものとなったが 内部統制と監査制度改革とは当初は別々に議論が進められることとなった 既に2005 年に会社法が 業務の適性を確保するための体制 の整備を大会社に求めるようになっていたが 自治体においては 裏金問題や職員の不祥事 北海道夕張市の財政破綻などが続いた一方 地方分権の観点から自治体が自ら行財政運営の透明性を高めたり リスク管理体制を強化したりする必要性が高まっている (8) として 総務省は後述の第 29 次地方制度調査会の審議方針決定後となる2007 年 10 月 30 日に 地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会 ( 座長 : 碓井光明 以下 碓井委員会と略す ) を立ち上げ 金融商品取引法で2008 年度から内部統制報告書の公開や外部監査が義務づけられた上場企業の手法や運用上の課題を参考にしながら 自治体に求められる仕組みを検討しはじめた この間 2008 年初頭には 2006 年度の地方自治体等の汚職に関する調査結果が公表され 2006 年度中に発生した汚職事件が過去 10 年間で最多であったことを総務省が発表する等している (9) 碓井委員会は 2008 年 5 月 14 日に中間報告を公表する こうした不正や汚職を背景にして 監査制度改革についても別に議論の俎上に載せられることとなった 第 29 次地方制度調査会は 2007 年 7 月 3 日 真の地方分権に対応できる地方自治体を確立し 中核的な基礎自治体が地域づくりの主役となれるよ (6) 外部監査制度自体は平成 9(1997) 年の地方自治法改正で導入されていたが 定着しているとは言いがたい状況であった (7) 第 166 回国会衆議院総務委員会 菅総務大臣答弁 (8) 自治日報 2007 年 11 月 2 日 民手法参考に議論 内部統制のあり方で研究会 (9) 自治日報 2008 年 1 月 18 日 自治体の汚職事件が過去最多 総務省

75 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - う体制を整えるため (10) 市町村合併を含めた基礎自治体のあり方の他 監査機能の充実 強化等の最近の社会経済情勢の変化に対応した地方行財政制度のあり方が諮問され発足した 事務局による諮問の説明では 分権改革を進めるに当たりまして 監査委員に求められる役割は何かということ とされた (11) が 副会長から 夕張問題に関して 決算認定は事前に監査委員が意見を付けることとなっているが指摘されてこなかったことは 監査委員制度の破綻であるから見直す必要がある といった意見が出される (12) 等 夕張問題は問題の起源として用いられた 第 29 次地方制度調査会では 監査について 監査委員の独立性を担保するため議選の監査委員の廃止やその対応としての実地調査権の議会への付与等を打ち出したものの 議会三団体の反対等により頓挫することとなった (13) 監査に関連する諮問事項の審査はおおむね2008 年 5 月中に取りまとめられ その後 審議は議会制度改革や基礎自治体のあり方へと移っていった このとき同時に前述の総務省内の碓井委員会等で進められていた内部統制制度の導入については地方制度調査会では審議対象とならなかった このように 内部統制制度及び監査制度に関する検討が別々に総務省で進められていた2008 年 10 月 今度は国から支給された補助金などの不正経理が会計検査院の検査により明るみになる事件があった (14) ここでは 1 旅費で 県単独事業での出張に補助金を充てる 2 需用費で 年度内に支出した分を翌年度に納品させる 3 賃金で 事業本来の目的以外の部署に臨時職員を配置するなどの他 私的流用は確認されなかったとしながらも 架空発注などの手口で需用費を業者側にプールする 預け金 が指摘される等した 会計検査院では 調査対象の全ての都道府県において 需用費が不適正な経理処理によって支払われていたと指摘した このとき既に第 29 次地方制度調査会は監査に関連する審議を概ね終えており この指摘を受けた具体の対処策について最終答申に直接的に盛り込まれることにはならなかったものの 内部統制制度 (10) 第 29 次地方制度調査会第 1 回総会 安倍総理大臣挨拶 (11) 第 1 回専門小委員会 幸田行政課長発言 (12) 第 4 回専門小委員会 片山副会長意見 (13) 経緯については田口一博 第 29 次地方制度調査会答申について (2) 自治総研 2009 年 8 月号他 (14) 会計検査院は 2008 年から 2011 年にかけて 47 都道府県および 18 政令指定都市を対象に調査を実施し 都道府県及び政令指定都市における国庫補助事業に係る事務費等の不適正な経理処理等の事態 発生の背景及び再発防止策について として公表した 2010 年 12 月には検査報告書を発表した

76 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - の必要性については一層認識されるようになったものと言える 内部統制に関する碓井委員会は 2009 年 3 月に最終答申をまとめ 法改正の俎上に載せられるのを待つこととなった 第 29 次地方制度調査会は 監査委員の独立性を強化し 適正な監査を確保する観点から対応策を検討したものの 2009 年 6 月答申では 議選の監査委員を廃止すること 監査委員の選任方法を首長による選任から議会の選挙によるものへと改めること 公選による監査委員の選出を可能とすべきこと 共同の外部監査組織の設置等は いずれも制度改正提案を見送ることとしつつ 監査委員の合議によるとされる事項についても 監査委員の意見が一致しないときは個別の少数意見を附記して公表すべきこと 長等が 監査結果に関して何らの措置も講じない場合においても その旨を監査委員へ理由を添えて通知すること 包括外部監査の頻度を毎年必ず実施することとしていたことを改め緩和すること 個別外部監査の導入前提とされる条例制定を不要とすること を求めた ところが 答申直後 2009 年 8 月 30 日に行われた第 45 回衆議院議員総選挙において民主党が総議席の3 分の2に迫る308 議席を獲得し 圧勝したことによって 同年 9 月には政権交代が行われた 第 29 次地方制度調査会答申を受けた地方自治法改正案についてはまだ法案提出には至っておらず 宙に浮くこととなってしまった (4) 地方行財政検討会議と2011 年改正 : 統合へ民主党 社会民主党 国民新党による連立政権 ( 以下 2012 年の第 2 次安倍内閣の成立までを民主党政権と呼ぶ ) は 地方制度調査会については休眠状態に置く一方で 代わりに 地方行財政検討会議を立ち上げ ここで地方自治法の抜本改正が審議されることとなった 地方行財政検討会議もまた 監査等の改革について頓挫していくことになるのだが 地域主権 を一丁目一番地にかかげた民主党政権では 当初 地方政府基本法 の策定を行うとして 委員に碓井光明 石原俊彦らこの間内部統制制度の導入を検討してきた研究者を加えたことが一つの画期となったものと言える この会議によって これまで別々に議論されてきた内部統制制度の導入と監査委員制度改革とが一本化することとなったのである 地方行財政検討会議は 第二分科会において3. 財務会計制度 財政運営の見直しと 4. 財務規定を中心とした規制緩和を取り扱うこととし 総論 1. 自治体の基本構造の

77 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - あり方 2. 住民参加のあり方 4. 執行機関や議会の組織 権限に係る規制緩和を扱う第一分科会とは別個に議論を進め とりわけ監査制度については 監査委員制度 外部監査制度からなる地方公共団体の現行の監査制度が有効に機能しているのか疑問であるとして 廃止を含め ゼロベースで見直すこと 等の提言を行った 地方行財政検討会議第二分科会における財務会計制度 財政運営の見直し提案は過激なものであった 詳細は別稿 (15) を参照していただきたいが 内部統制体制の整備 外部監査の充実という方針を踏まえ 長の責任の明確化及び監査機能の外部化 内部と外部の監査機能の明確化 監査機能の共同化の3つの見直し案を提示している 内部統制体制を明確に位置づけ また外部監査体制について イギリスの監査委員会 (Audit Commission) に倣い全国単一の監査共同組織による実施を打ち上げた点等は 後の第 31 次地方制度調査会を含むその後の審議会 研究会の議論にも影響を与えたものと言える ただ 地方行財政検討会議は 民主党政権の政権運営の稚拙さ等もあり 結局具体の法改正に至ることなく役割を終えることとなった 地方行財政検討会議の答申 地方自治法抜本改正についての考え方 ( 平成 23 年 1 月 26 日 ) の第二分科会関連の提言は 単一の案にしぼる形ではなく また具体の制度改革に係る部分も 検討すべきである といった修辞によったこともあり 第 29 次地方制度調査会答申にあった項目のうちその後できあがった2011 年地方自治法改正法案に反映されたのは 監査委員事務局の共同設置を可能とする改正部分のみであった (16) 民主党政権の失敗を補う形で復活させられた第 30 次地方制度調査会は この法案をオーソライズした後 集約とネットワーク化 を柱とする連携関連施策に関する答申を行ったが 監査や内部統制については触れることはなかった (5) 再始動 このように 第 29 次地方制度調査会答申に関する法改正もほとんど不十分なままと なっており また地方行財政検討会議が示した たたき台 が現行制度を廃止する内 (15) 拙稿 地域主権改革 の動向について 地方行財政検討会議 地方自治法抜本改正に向けての基本的考え方 を中心にして 自治総研 2010 年 7 月号に詳しい (16) 小規模自治体における監査委員事務局未設置を解消することが主眼の改正だったが 本稿執筆時点では備前市と瀬戸内市が共同設置している唯一の例であり 監査委員事務局未設置の状況は改善されていない

78 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - (6) 第 31 次地方制度調査会こうした多数の研究会報告書を下地として 監査制度 内部統制制度に関する議論を再起動させて宿年の課題を背負って発足したのが第 31 次地方制度調査会であった したがって 第 31 次地方制度調査会の審議項目の骨子は 第 29 次地方制度調査会答申 (17) 町田祥弘 地方公共団体における内部統制の制度化について 地方自治 2017 年 2 月号 p.7 容となっているものの その後具体的な制度についての議論の進展がないことから 自治体の監査関係者から今後の監査制度の見直しの方向性を不安視する声が聞こえるようになった とされる そのため 2012 年 9 月には総務省内に 地方公共団体の監査制度に関する研究会 ( 座長 : 宇賀克也 ) が発足し 2013 年 4 月に報告書を発表した 報告書には 監査基準の必要性 監査委員および事務局の専門性 独立性向上の必要性 内部統制との密接な関連のあり方 外部監査制度の見直し等が盛り込まれていた さらに 自治体における内部統制制度についても 2009 年の地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会で行った運用などの課題整理や地方行財政検討会議における提案などを踏まえ また 年に実施された会計検査院による 不適正経理 の指摘等を具体的な課題として 地方公共団体における内部統制の整備 運用に関する検討会 ( 座長 : 小早川光郎 以下 小早川委員会と略す ) も2013 年 7 月に発足し 翌年 4 月に報告書を発表した 報告書には 首長に内部統制体制の整備及び運用の責任があることを明確化することと 内部統制の取り組みについては財務事務執行リスクを最低限評価すべきリスクとしつつ内部統制基本方針の作成等は大規模自治体から段階的に大規模自治体以外にも広げていくこと等が盛り込まれていた もう一つの関心事は 自治体における事務が複雑かつ広範なものとなってきているのに応じて 首長や自治体ないしその事務担当者に対する住民訴訟が多発していたことがあったとされる (17) 住民訴訟制度改革についてはやはり別口で議論されていたものが合流したのである これについては別稿で詳しく解説がある予定なのでここでは詳述を避けるが 小早川委員会報告書において 内部統制は住民訴訟のリスクを軽減し 透明性を高め 住民による監視のための判断材料の提供及び住民が行う選択の基盤になることが期待されるとの位置づけがなされ これは第 31 次地方制度調査会答申へと引き継がれることとなる

79 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - を軸に 地方行財政検討会議の議論を加味したものとなる 諮問は 個性を活かし自立した地方をつくる観点から 人口減少社会に的確に対応する三大都市圏及び地方圏の地方行政体制のあり方 議会制度や監査制度等の地方公共団体のガバナンスのあり方等について 調査審議を求める というものであり 監査制度は 地方公共団体のガバナンスのあり方として位置づけられることとなった (18) 第 31 次地方制度調査会は 2016 年 3 月 16 日に安倍晋三首相に 人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申 を手交した 適切な役割分担によるガバナンスのあり方について 答申は 人口減少が進み 資源が限られる中においては長 監査委員等 議会及び住民といったそれぞれのアクターが役割分担の方向性を共有しながら それぞれが有する強みを活かして事務の適正性を確保することが重要である とする 具体的には 下図の提言を行った ⅰ. 内部統制の制度化 長が内部体制を整備及び運営する権限と責任があることを明確化し 整備及び運営に関する手続等を制度化する 特に都道府県 政令市には内部統制体制の整備及び運営に関する基本的な指針の作成 公表 評価についての監査や議会への報告 公表を義務化 ⅱ. 統一的な監査基準を自治体が共同で策定する必要 ⅲ. 監査委員の合議が調わない場合でも監査の内容や監査委員の意見が分かるようにする必要 ⅳ. 監査結果を参考として措置を講じなかった場合には監査委員が勧告を行い これに対して説明責任を果たすようにする仕組みを導入 ⅴ. 監査の専門性を高めるための研修制度を設ける ⅵ. 特定の事件について監査委員が専門委員を任命できるようにする ⅶ. 議選の監査委員を置かないことも認める ⅷ. 監査基準の策定 研修 人材あっせん 監査実務の情報の蓄積 助言 監査実施の支援を行う全国的な共同組織を構築する ⅸ. 決算の不認定の場合 首長に説明責任を課すこと ⅹ. 住民訴訟の四号訴訟の改正 軽過失免責 裁判所により財務会計行為の違法 (18) 第 31 次地方制度調査会における審議については 拙稿 第 31 次地方制度調査会答申を読む 地制調の役割の変化にも着目して 自治総研 2016 年 5 月号 pp

80 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 性や注意義務違反の有無が確認されるための工夫 損害賠償請求権の訴訟係 属中の放棄を禁止 損害賠償請求権を放棄する場合の監査委員等の意見聴 取 まず この答申事項を見て気づくことは 第 29 次地方制度調査会答申との共通事項の多さであろうが 一方で議選の監査委員を必置から任意設置へと改めること等 第 29 次地方制度調査会答申時に議会三団体による反対で答申へ盛り込むこと自体が頓挫した事項まで盛り込まれたことが特徴的である これは 第 31 次地方制度調査会の答申を取りまとめるに当たって 議選の監査委員を廃止するのではなく選択制としたことによって議会三団体が今回は反対に回らなかったことが主因であろう 2. 答申から法案まで 今次地方自治法改正は広範囲な分野にわたるもので 地方制度調査会の審議開始から答申作成 また改正法案作成に至るまでに住民訴訟制度や地方独法改正部分等では総務省内に研究会を設置する等して検討を進めたものもあったが これら他の項目と違って 監査や内部統制に関しては地方制度調査会が動き出してから省内研究会は立ち上げられていない ただし 日本弁護士連合会が第 31 次地方制度調査会答申発表後の2016 年 6 月 16 日付け及び法案提出後のタイミングとなる2017 年 4 月 21 日の2 回にわたって次のような一部反対の意見書を提出している まず 2016 年 6 月 16 日付けの意見書では 1 監査の実効性確保のために 統一的な 監査基準を策定することが必要であるとした点については 監査基準の内容は不明確であり 無限に拡大する可能性を内在している そのため 当該地方公共団体以外の組織が 監査基準を全国的に統一化し 統一的な監査基準に準拠した監査の実施を一律に義務付けることは 監査基準の内容及び規範性の程度いかんによっては 地方公共団体の自主性や監査委員等の監査執行上の裁量を損ない あるいは 地方公共団体ごとに相違する監査資源の実情を無視したものとなりかねない とする 2 監査の専門性を高める方策として 研修の修了要件を明確化した研修制度を設けることが必要であるとした点については 法的な制度として研修を位置付け 監査委員 監査委員事務局又は外部監査等に選任されるための要件とすることは 研修内容を画一的なものとし ひいては画一的な監査とな

81 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - るおそれがあり 統一的な監査基準を策定することと同様 弊害が大きいものと考える とする また3 監査の適正な資源配分のために 監査基準の策定や研修の実施 人材のあっせん 監査実務の情報の蓄積 助言等を行う全国的な共同組織の構築が必要であるとした点については 各地方公共団体の監査の品質向上を図る上で全国的組織を構築することは必要ではなく 地方分権の流れにも逆行するもの として反対する 日弁連の他 関係各方面との調整のすえに提出された法案は 次のような内容となった 3. 法案の概要 (19) (1) 内部統制に関する方針の策定等 都道府県知事及び指定都市の市長は 内部統制に関する方針を定め これに基づき必要な体制を整備しなければならないものとする ( 指定都市の市長以外の市町村長にあっては努力義務とする ) とともに 都道府県知事又は市町村長は 当該方針を定め 又はこれを変更したときは 遅滞なく 公表しなければならないものとすること ( 第 150 条第 1 項 第 2 項及び第 3 項関係 ) 都道府県知事 指定都市市長は義務 その他の市町村長は任意とした 当該方針を策定した長は 毎会計年度 内部統制評価報告書を作成し 監査委員の審査に付し その意見を付けて議会に提出し かつ 公表しなければならないものとすること ( 第 150 条第 4 項 第 5 項 第 6 項及び第 8 項関係 ) 第 150 条は 都道府県知事及び政令市長に内部統制の方針を定め これに基づき必要な体制を整備しなければならないことを規定している 内部統制とは その担任する事務のうち次に掲げるものの管理及び執行が法令に適合し かつ 適正に行われることを確保する ために整備されるもので 知事 市長の事務のうち1 財務に関する事務その他総務省令で定める事務と その他 2その管理及び執行が法令に適合し かつ 適正に行われることを特に確保する必要がある事務として当該都道府県知事又は指定都市の市長が認めるものを対象とする すなわち 財務事務執行リスクを最低限対象とすべきリスクと規定している (19) 衆議院調査局総務調査室第 193 回国会 ( 常会 ) 総務委員会参考資料 地方自治法等の一部を改正する法律案 ( 内閣提出第 55 号 ) について ( 平成 29 年 4 月 )pp を参考にした

82 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 一方で それ以外には この内部統制の整備及び運営のために方針を定め 必要な体制を定めること (150 条 1 項 ) 毎会計年度少なくとも1 回はその体制について総務省令に基づいて評価し 報告書を作成しなければならないこと ( 同条 4 項 ) 当該報告書は監査委員の審査を受け 意見を付して議会に提出すること ( 同条 5 項 6 項 ) とされるのみで 方針及び体制に関して必要な事項は今後定められる総務省令が規定することとなっている ( 同条 9 項 ) したがって 法が制定されたものの総務省令が明らかになっていない現時点では 内部統制体制とはいかなるものなのか判然としないままである (2) 監査制度の充実強化 監査委員は 監査基準に従い 監査等をしなければならないものとし 当該監査基準は 各普通地方公共団体の監査委員が定め 公表しなければならないものとするとともに 総務大臣は 監査基準の策定又は変更について 指針を示すほか 必要な助言を行うものとすること ( 第 198 条の3 第 1 項 第 198 条の4 第 1 項 第 3 項及び第 5 項関係 ) 監査委員は 監査の結果に関する報告のうち 普通地方公共団体の議会 長等において特に措置を講ずる必要があると認める事項について その者に対し 理由を付して 必要な措置を講ずべきことを勧告することができるものとするとともに 当該勧告を受けた議会 長等は これに基づき必要な措置を講じ 当該講じた措置の内容を監査委員に通知しなければならないものとし 監査委員は 当該勧告及び当該措置の内容を公表しなければならないものとすること ( 第 199 条第 11 項及び第 15 項関係 ) 勧告制度の創設 条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとするほか 監査委員に常設又は臨時の監査専門委員を置くことができるものとし 監査専門委員は 監査委員の委託を受け その権限に属する事務に関し必要な事項を調査するものとすること ( 第 196 条第 1 項 第 200 条の2 第 1 項及び第 3 項関係 ) 議選監査委員の選任の義務づけの緩和 監査専門委員の創設 政令で定める市以外の市又は町村で 契約に基づく監査を受けることを条例で定めたものの長は 条例で定める会計年度において 当該会計年度に係る包括外部監査

83 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 契約を あらかじめ監査委員の意見を聴くとともに 議会の議決を経た上で 速やかに 一の者と締結しなければならないものとすること ( 第 252 条の36 第 2 項関係 ) 条例により包括外部監査を実施する地方公共団体の実施頻度の緩和 住民監査請求に際し行われた監査については 各監査委員の意見が一致しないことにより合議が調わない場合 各監査委員の意見を公表すること ( 第 75 条第 5 項関係 ) 第 31 次地方制度調査会答申では 全国統一的な監査基準を策定する旨が書き込まれており これが成ったあかつきには 監査の一律化によって地方自治および監査委員の独立性がかえって損なわれるのではないかと危惧されていたが 法案作成段階でこの規定は改められ 監査基準は個別自治体が個別に策定すれば良いこととなった だがその中身である なかでも焦点とすべきは 監査基準を策定するにあたり 198 条の3 第 5 項が 総務大臣は 普通地方公共団体に対し 監査基準の策定又は変更について 指針を示すとともに 必要な助言を行うものとする と定め 必要な助言を行うとしているところで この助言が 法が定める関与の一般ルールにどのように位置づけられるのか または逸脱するものなのかが問題となる この点については法案提出後に日弁連から出された意見書でも地方公共団体の自主性及び自立性並びに監査執行上の裁量を損なうものであり 削除すべきと指摘されており 法案審議においても取り上げられることとなり 安田政府参考人は次の通り答弁している ( より詳細には文末の国会審議抄録を参照のこと ) この指針や助言には法的拘束力はないものでございまして 各地方公共団体の監査委員は この指針や助言を踏まえつつ 地域の実情に応じた監査基準を定めることも可能だというふうに考えているところでございます あくまで 総務大臣が助言として行う その総務大臣の責務を定めたものでございます ( 平成 29 年 5 月 16 日衆 総務委員会 ) 具体的な文書の通知先ということになりますと これは当該団体内における監査の担当部局 すなわち監査委員やその事務局とすることが想定されているところでございます こうしたことが各地方公共団体の自主性を損なわないのかというお尋ねでござい

84 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - ますけれども この助言は 監査基準の策定 変更について助言するものでございまして 個別の監査事務に関与するというものではないということもございますので 自主性を損なうということにはならないというふうに考えているところでございます ( 平成 29 年 5 月 18 日衆 総務委員会 ) 今回の改正案では 地方公共団体が個別に監査基準を定めるということにしている一方で 地方公共団体の監査のあり方に関する認識を共有しつつ 全国的な監査の質の向上を図りたいということから 総務大臣に助言を行う責務を課しているものでございます したがいまして 単に地方公共団体の問い合わせに応答するということにとどまらず 総務大臣の責務として 各地方公共団体が監査基準を策定する際に参考となる指針を示して助言を行うということにしているものでございます ( 平成 29 年 5 月 18 日衆 総務委員会 ) まず 今回の改正案による改正後の百九十八条第五項に基づく助言でございますけれども これは二百四十五条の四に基づく技術的な助言と同じ内容 同じものでございます 今回 わざわざつくったということでございますけれども これは 地方公共団体の監査のあり方に関する認識を共有しながら 全国的な監査の質の向上を図るという観点から 総務大臣に助言を行う責務を課するという意味で この新しい条文を設けているということでございます したがって 内容の点におきましては 助言は技術的助言と相違はないわけでございます ( 平成 29 年 5 月 16 日衆 総務委員会 ) 以上を要するに 政府答弁は 198 条の4 第 5 項の助言とは245 条の4に基づく技術的助言であるが 行うものとする との規定は 総務大臣に助言を行う責務を負わせるための規定であるから自治体の自主性を損なうことはない ということであったと理解できる ただ そう解釈するものとしたところで 技術的助言という関与を義務づけたにすぎず 技術的助言だから自主性を損なわないとする点と合わせ 答弁の真意は不明である 次に議選の監査委員を選択制としたことについてだが 想定問答集によれば この 理由は次の通りである 監査委員 と 議会 は 地方公共団体の執行機関をチェックする役割は共通

85 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - するが 監査委員は 財務管理 経営管理 等の専門的な見地から 長の執行した事業等について事後的にチェックする機能が求められる一方 議会は 地方公共団体の行政全般にわたって 幅広い見地から執行機関をチェックする機能が求められる 監査委員と議会のチェック機能における役割分担の 純化 も 地方公共団体のガバナンスのあり方としてあり得るため 改正法案において 地方公共団体の判断により 議選監査委員を選任しない ことも選択肢として認めることとした だが 議選の監査委員を除いたとき 監査委員は当該自治体のOB(14.3%) 国 自治体の勤務経験者 (6.5%) が多数を占めており 財政的 地理的に恵まれない多くの自治体では弁護士 公認会計士 税理士等の専門職を雇うことはできていない この現実を踏まえたとき 議選委員を廃止してもそれより適切な委員が選任される確証はない また 議選の監査委員を置かないこととした場合に議会側への見返りがないことはバランスを欠く規定であると言える 第 29 次地方制度調査会答申で議選の監査委員を廃止することに触れた際も その見返りに 議会には実地調査権を付与することとされていて 監査委員とは別に 議会全体が執行部に対する監視機能を強化する選択があり得た だが今回 議会への実地調査権の付与は見送られていて あわせて 196 条に第 6 項が追加され 議選の監査委員は 政令市および都道府県で最大 2 人 その他の市町村では1 人とすることが定められている 短期で交代し 専門性と独立性が不十分との意見のある議選委員だが 監査委員を経験することで自治体の実務に明るくなり 議員としての資質向上と議会の機能強化に役立つともいわれる また議員が監査委員を兼ねることで 監査委員の権限を補完し より有効な内部監査が可能になるとする見解 ( 用心棒 説) もあるなかで 今回は議会にとっては失うことの多い改正と言える (20) (3) 決算不認定の場合における長から議会等への報告規定の整備 普通地方公共団体の長は 決算の認定に関する議案が否決された場合において 当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは 速やかに 当該措置の内容を議会に報告するとともに 公表しなければならないものとすること ( 第 233 条第 7 (20) この規定については監査とは異なるものだが 本誌別号掲載予定のものとの関係上本稿で取り扱った

86 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 項関係 ) 地方公営企業の決算不認定の場合及び合併特例区の決算不認定の場合について 上記と同趣旨の規定を整備すること ( 地方公営企業法第 30 条第 8 項 市町村の合併の特例に関する法律第 45 条第 7 項関係 ) 現行は 普通地方公共団体の決算は 監査委員の意見を付けて議会審議に付さなければならないが 決算 不認定 には法的効果はなく 既に行われた収入 支出の効力に影響は生じず 制度上 議会が決算を不認定とした後の手続きが規定されていないため 長は 議会への必要な説明や善後策を講じることが求められていないことが問題視された改正である だが 公表はあくまで当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときに限定されており 何らかの措置を講じることを義務づけるものではなく また何ら措置を講じなかった場合は公表もされないことになっている点が論点となる この点 政府答弁では 決算につきましては 議会が不認定とした場合には 既に行われた収入 支出に対して事後的に是正措置を講ずることができるのは極めて限られている つまり 決算上の係数ミス等の場合に限られるというふうに考えておりまして 必ずしも全てのケースにおいて必要と認める措置を講ずることができるとは限らないということで 必要と認める措置を講ずるかどうかは任意の対応とするということにした ( 平成 29 年 5 月 16 日衆 総務委員会 ) という だが何ら措置を講じなかった場合には その理由だけでも公表すべきこととしなければ 決算の不認定を議決する意味が薄れるだろう 議会にとっては期待外れなものかもしれない 参議院での参考人意見陳述においても指摘された点である (4) 地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等 普通地方公共団体の議会は 住民監査請求があった後に 当該請求に係る行為等に関する損害賠償の請求権等の放棄に関する議決をしようとするときは あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならないものとすること ( 第 242 条第 10 項関係 ) 住民訴訟制度の改正については別稿で扱われるので詳述は避けたいが 住民訴訟が 住民監査請求を前置しており したがって監査委員監査が不調に終わったと考えられ たからこそ住民訴訟に至っているという事実を勘案したとき 改めて議決前に監査委

87 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 員の意見を聴取することの意味がどれほどあるのか 疑問が生じるところだろう これについては 政府参考人の答弁では 別途住民訴訟制度については軽過失の場合賠償額に上限を設けていること等を踏まえれば 権利放棄の議決を行うに当たって監査委員の意見が公表されることは議会側に相当の説明責任が課されることとなる また 訴訟係属中である場合 裁判所による議決の有効性に関する判断においてこの監査委員の意見が判断材料になる といった旨の主張がなされている (21) ただし 監査委員の意見が歯止めになるとは限らず その場合 今次改正が議決を制限する規定を設けなかった以上 かえって権利放棄にお墨付きを与え議会が開き直ることにもなり得る 議選の監査委員は廃止されたわけではないし また監査委員が損害賠償責任を負うことになる長によって任命されるものである点も効いてくる可能性がある (5) 施行期日議選の監査委員の選択制化 監査専門委員の設置 包括外部監査の頻度緩和 決算不認定の場合における長から議会への報告規定の整備等は平成 30(2018) 年 4 月 1 日から それ以外の規定は平成 32(2020) 年 4 月 1 日から施行する 4. 法案提出後の動き (1) 提案理由地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため 地方制度調査会の答申にのっとり 地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等 監査制度の充実強化 地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等を行うとともに 地方独立行政法人の業務への市町村の申請等関係事務の処理業務の追加等の措置を講ずるほか 所要の規定の整備を行う必要がある これが この法律案を提出する理由である (2) 法案提出後の意見書 先述のように 法案が国会に提出された後 日弁連から再び意見書が出された 反 (21) 文末の国会審議抄録にある平成 29 年 6 月 1 日参 総務委員会における安田充政府参考人の答弁を参照

88 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 対は以下の二点についてである 1. 監査基準の策定又は変更について総務大臣が定める指針は 地方公共団体の自主性及び自立性並びに監査執行上の裁量を損なうことのないよう 普通地方公共団体の監査委員が現に準拠している監査基準や準則等に共通する監査の基本的視点 留意事項を提供するにとどめること 2. 監査基準の策定又は変更について総務大臣が普通地方公共団体に対し必要な助言を行うものとする規定については 地方公共団体の自主性及び自立性並びに監査執行上の裁量を損なうものであり 削除すること (3) 国会審議 法案審議日程 法案は 2017 年 3 月 10 日に提出されるに至った 議案の審議経過は以下の通りである 衆議院議案受理年月日衆議院付託年月日 / 衆議院付託委員会衆議院審査終了年月日 / 衆議院審査結果衆議院審議終了年月日 / 衆議院審議結果衆議院審議時会派態度衆議院審議時賛成会派衆議院審議時反対会派参議院予備審査議案受理年月日参議院議案受理年月日参議院付託年月日 / 参議院付託委員会参議院審査終了年月日 / 参議院審査結果参議院審議終了年月日 / 参議院審議結果 平成 29 年 3 月 10 日平成 29 年 5 月 10 日 / 総務平成 29 年 5 月 18 日 / 可決平成 29 年 5 月 23 日 / 可決多数自由民主党 無所属の会 ; 公明党 ; 日本維新の会民進党 無所属クラブ ; 日本共産党平成 29 年 3 月 10 日平成 29 年 5 月 23 日平成 29 年 5 月 24 日 / 総務平成 29 年 6 月 1 日 / 可決平成 29 年 6 月 2 日 / 可決 民進党は主として住民訴訟制度改正に また日本共産党は主として窓口業務の地方独法委託について反対した 衆議院では 民進党より議会の権利放棄議決を禁止する規定を柱とする修正案が提出されたが 否決された (4) 附帯決議 衆議院 参議院では以下の附帯決議が可決された

89 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 衆議院 ( 自由民主党 無所属の会 民進党 無所属クラブ及び公明党の三派共同提案 ) 政府は 本法施行に当たり 次の事項に十分配慮すべきである 一指定都市以外の市町村の長にあっても 内部統制に関する方針を策定し 当該方針に基づく体制の整備を促進するよう 当該市町村長に対する必要な助言及び情報提供を行うこと 二普通地方公共団体における監査委員等の専門性を確保し 監査の品質向上を図るため 監査を支援する組織 体制の在り方について引き続き検討を行うこと 三普通地方公共団体の長等の損害賠償責任について 職務を行うにつき軽過失の場合において その一部を免れさせる旨を条例で定めることができる措置を講ずることに鑑み 議会による損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄の在り方について 本法の施行状況も踏まえつつ 引き続き検討を行うこと 四普通地方公共団体の議会が果たすべき監視機能の向上及び議員活動の透明性確保の在り方について検討を行い これを踏まえて各地方公共団体に対して必要な助言を行うよう努めること 五窓口関連業務には住民に関する各種行政の基礎となる事務が含まれていることに鑑み 当該業務を担う申請等関係事務処理法人における業務の取扱いに当たって 個人情報の保護が十分に図られるよう 各地方公共団体に対して適切な助言を行うこと 六地方独立行政法人の業務運営に関して 本法に則った適正な対応が確保されるよう注視し 国の独立行政法人改革の動向を踏まえつつ 必要に応じて適切な助言を行うこと 右決議する 参議院 ( 自由民主党 こころ 民進党 新緑風会 公明党及び日本維新の会の各派 ) 政府は 本法施行に当たり 次の事項についてその実現に努めるべきである 一 内部統制体制の整備及び運用は 全ての地方公共団体の長がその権限と責任に基づいて適切に実施することが求められるため 本法において努力義務とされた指定都市以外の市町村においても内部統制に関する方針が早急に策定されるよう引き続き検討を行うこと 二 総務大臣が策定する監査基準の指針については 監査を実施する基本原則 留意事項とともに 全国的に共通な基準や技術的な基準など的確 公正な監査が実

90 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 施できるものとなるよう努めること 監査基準は当該地方公共団体の監査委員が策定するものであり 地域の実情を踏まえた適切な基準については尊重すること 三 監査委員等の専門性を確保し 監査の品質向上を図るため 監査を支援する組織 体制の在り方について引き続き検討を行うこと 四 地方公共団体の長等に対する賠償責任額の限定措置により 地方公共団体の長等の職務遂行に影響が出るのではないかとの声に対し真摯に向き合い 本法施行後の状況を注視しつつ引き続き検討を行うこと 五 申請等関係事務の処理及びこれに附帯する業務を担う地方独立行政法人の設立に当たっては 地方公共団体の自主性を最大限尊重すること 右決議する (5) 参考人意見陳述衆議院では5 月 17 日に3 人 参議院では5 月 30 日に4 人の参考人が呼ばれ それぞれ意見陳述を行った このうち 参議院では江藤俊昭山梨学院大学教授が監査及び内部統制について中心的に取り扱い 法改正について賛成の立場から意見を述べた 江藤参考人は 議会の活性化のために資するものとの認識で意見を述べているが 以下の点については留意を要すると述べている 一つは 監査委員制度が設置されたときに 実地検査権というのは監査委員に移っちゃっているんですね だから もし議選を廃止するのであれば実地検査権というのも議会に付与する そういう議論の展開というのは今後課題としてあるんじゃないだろうか また 議選をなくすとすれば 監査委員というのを議会からの選挙ということも今後議論することでもあるんじゃないかというふうに思っています 留意点の二点目です それとも関係しますが 監査委員制度というのはすごく大事なんですけれども その監査委員事務局がいまだに必置じゃないんですね そして 設置しているとしても 総務課やそれから議会事務局との併任ということも多い だから そこのところを今度充実させる だから 議会事務局の必置と同時に その監査委員事務局も必置制というのも今後考える必要がある さらに ちょっと私は自治法 自治的な制度としては変則だと思っているんですが 議会の身分を残したまま執行機関の監査委員になっているわけですね だから兼任になっているわけですけれども この整合性を今後どうしていくかどうか 私自身も結論を持っているわけではないんですけれども 今回のものについても次善の策として

91 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 考える必要もあるのではないだろうかというふうに思っています また 決算不認定についての議会への報告規定の整備については 今回の場合は 必要と認める措置を講じたときはという限定が入っているんですね 恐らく 政治的なあつれきの中で不認定ということも想定しながら そういう場合に限ってということになっていると思うんですが 不認定の場合には議会側からも説得的な説明が必要になってきているなというふうに読みたいというふうに思っています 監査基準については 監査委員が監査基準を策定する際に国が指針を出すことになっているわけですけれども 私は 指針を出すことは重要だと思うんですが 既に技術的な助言があるのに 同じように法的拘束力があるわけではないので 大臣の助言の意義はどのような関係性があるかどうかというのは十分議論した方がいいのではないだろうか 5. 改正項目について (1) 内部統制に関する方針の策定等自治体に内部統制制度を導入する意義については 複数の筋からの把握が必要となる まずは組織マネジメント改革 =NPMとしての筋である 自治体に内部統制制度を導入する大義の一つは 会社法が大企業における内部統制体制の整備を義務づけたことと それが定着してきていることにある (22) 内部統制体制の必要性を論じる場面は当初から民間部門とのアナロジーによって展開されており またその限界についても常に念頭に置かれていた (23) したがって 今次地方自治法改正については 2006 年改正によって助役や出納長が廃止され 副知事及び副市町村長の機能が強化されるとともに積極的に長の命を受け政策及び企画を担当することが明記されたのに続 (22) 2014 年小早川委員会報告書 p.2 (23) 2009 年碓井委員会報告書 はじめに 企業の代表取締役 取締役会 監査役 株主総会の権限 関係を首長 議会 監査委員 住民の権限 関係に置き換えるのは容易ではない

92 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - く組織マネジメント改革の一環として位置づけることができる (24) 周知のように NPM 論は 民間企業の経営理念 手法 成功事例を可能な限り公的部門に導入し その効率化 活性化を図ろうという行政のマネジメント論 である (25) この筋は 内部統制の導入の義務化を目玉とする ( 国の ) 独立行政法人のガバナンスの強化を目指すものと軌を一にし (26) したがって今次地方自治法改正と一括審議となった地方独立行政法人法改正にも内部統制体制に係る項目が埋め込まれることと調和的である 一方で 先に通観してきた政策経緯にあるように 内部統制制度の導入の契機には自治体における不適切な会計処理が会計検査院に指摘され批判されるという事件があった この側面からは 現行監査制度との関係が特に強く意識されることとなり とりわけ監査委員の監査が十分に機能していない部分を内部統制が補完することによって 不正を防止することができるとされることとなっている (27) 積み残されていた監査制度改革の筋が合流した所以である この結果 地方制度調査会答申にあるように 内部統制制度は 長については事務を全般的に統括する長の立場の重要性を強調し 内部統制体制の整備運用権限と責務をもつものと規定し また監査委員については内部統制体制をチェックし内部統制の成果を踏まえた監査を実施することによる監査の重点化と省力化をはかり 一方で議会は 内部統制体制や監査委員の監査等が十分に機能しているのかどうかをチェックするとともに政策の有効性やその是非についてのチェックを行う等 議会としての監視機能を適切に発揮すべき とし さらに住民には 上述の長 監査委員 議会等の役割分担に基づく体制が有効に機能しているかどうかを住民がチェックするようにする として住民訴訟に至る事案の減少までが視野に入ってくる さらにそもそも地方制度調査会答申は人口減少社会への対応策であることまで謳っているのだから 内部統制の そのあまりに万能の位置づけは大いに気になるところであろう そこまで風呂敷を拡げずとも 法的にも 90 年代以降の行政手続法 情報公開法 政策評価法などに連なる行政統制論の系譜として地方におけるこうした動きをどのように位置づけるかなど各方面からの議論が待たれる ただ 今次地方自治法改正における内部統制の導入に関する項目は 上述の通り (24) 駒林良則 自治体行政の統制について 法学雑誌 61 巻 1 2 号 (2014)p.6 (25) 大住荘四郎 行政マネジメント ミネルヴァ書房 2006 年 p.13 (26) 駒林良則 内部統制制度の自治体への導入について 立命館法学 2016 年 1 号 (365 号 )p.2 (27) 駒林同上 p

93 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 首長について 内部統制に関する方針を定め また必要な体制を整備する主体として 位置づけることと 毎年内部統制評価報告書を作成し 監査委員の審査を受け 議会 に提出し 公表するとするだけのものである 具体の内容については法文上は明らか になっていない 制度設計のあり方は当面 全て都道府県や政令市等具体の自治体に 委ねられており そうした大規模自治体での取組がある程度確立し 内部統制の整備 運用モデルが構築された後 小規模自治体にそれを波及させていく方針が想定されて いる ただし 地方自治法には既に内部統制として定義可能な制度が存在する点は強調さ れるべきだろう 例えば 業務の有効性及び効率性であれば 最小経費で最大効果を 挙げる事務処理の原則 ( 地方自治法第 2 条第 14 項 ) 法令等の遵守については法令等 遵守義務規定 ( 地方公務員法第 32 条 ) 信用失墜行為の禁止 ( 同法第 33 条 ) 等であ る (28) したがって内部統制の導入は屋上屋を重ねることになりかねない (29) これが 機能するかは 既存の手法 手続が予算執行の妥当性や法令への準拠性に主眼が置か れているために形式的な側面が重視され取引実態に係わる不正について十分チェック できないシステムである (30) 点や統制が部局ごとに異なり体系化されていない 首長 (31) の関与が少なく組織的な対応が行われていないといった点等を克服する体制を構 築できるかにかかってくる 小早川委員会報告書はこうした既存の法文を援用しながら内部統制体制の整備及び 運用の責任の明確化を謳うものである 具体的には 内部統制の 4 つの目的 (1. 業務 の有効性及び効率性 2. 財務報告の信頼性 3. 事業活動に関わる法令等の遵守 4. 資 産の保全 ) に沿って事務を評価することとするが まず最低限評価すべきリスクとし ては 財務に関する事務の執行に於ける法令等違反 ( 違法又は不当 ) のリスク 決算の信頼性を阻害するリスク 及び 財産の保全を阻害するリスク ( 財務事務 執行リスク ) とすべきであるとする (p.8) そして財務に関する事務の執行等が法 令に適合することを確保するための体制の整備及び運用に関することを必要的決定事 (28) 2009 年碓井委員会報告 p.22 (29) そればかりか 民間企業のアナロジーを重視しすぎると 代表取締役 取締役会 株主総会が議会 監査委員 住民には代替不能であるために齟齬を来すことは言を俟たない 第 31 次地方制度調査会の議論でもこれが原因で混乱が生じた ( 第 21 回専門小委員会 ) (30) 石川恵子 地方自治体の会計上の不正と内部統制の整備に係わる論点 : 不正のトライアングルを援用して 経営論集 61 巻 1 号 p.172 (31) 2009 年報告書 p

94 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 項とし 内部統制基本方針を定める (pp.9-10) 体制の整備及び運用にあたっては 内部統制体制を整備し運用する首長を補佐する内部統制推進責任者を置き 会計管理者が日常的モニタリングを担うものとし それとは別に独立的評価責任者が置かれることになる ただ 繰り返しになるが 具体的に内部統制体制を運用していくにあたってこれだけではマニュアルとしては役に立たない これから内部統制制度を整備する自治体にとっては まずは先行する大阪市 (32) (33) 宮城県 千葉県 静岡市等の内部統制の取組が参考にされることになろう また 場合によっては 今次地方自治法改正による監査制度の改革にとどまらず 内部統制体制の構築に合わせるために既存の監査制度改革が行われることになるかもしれない ただ 国会審議では内部統制に関する議論は深まらなかった 衆参あわせて7 人の参考人も 内部統制については是非進めるべきであるとか 地方自治法制定当初から組み込むべきだったといった発言があるのみであった (2) 監査制度改正項目は多岐にわたるが 第 31 次地方制度調査会によれば 各改正の目的は それぞれ監査委員の独立性を担保すること 監査委員の専門性を向上させること 監査資源の適切な配分を行うこと として整理されている それぞれの改正の解釈については文末に国会審議の抄録を掲載したことによって代えることとするが 第 29 次地方制度調査会答申と第 31 次地方制度調査会答申で示された監査制度に関する改正 非改正の方針と 今次法改正で実現した規定を比較すると以下のようになる 主要な変更点については下線を引いてある (32) 小川英明 大阪市における内部統制 ( 上下 ) 地方行政 (33) 宮城県 千葉県 静岡市は総務省主催の内部統制に関する説明会 (2016 年 11 月 21 日および 25 日 ) にて先行実施自治体として登壇した自治体 事例紹介の概要については 野路允 内部統制に関する説明会について 地方自治 2017 年 2 月号 pp

95 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 監査制度に関する改正項目の変遷 第 29 次地方制度調査会答申 第 31 次地方制度調査会答申 2017 年法改正 監査委員事務局の共同設置を可能と (2011 年法改正で実現 ) する制度改正が検討されるべき 監査結果の報告等の決定について 合議を要せず多数決によることができるものすることが適当 監査結果の報告等に対し措置を講じなかった場合も その旨を監査委員へ理由を添えて通知することが適当 ( 実効性 ) 一般に公正妥当と認められるものとして 監査を実施するに当たっての基本原則や実施手順等について 地方公共団体に共通する規範として 統一的な基準を策定する必要 ( 実効性 ) 合議に至らない場合でも 監査の内容や監査委員の意見が分かるようにする必要 ( 実効性 ) 必要に応じて監査委員が必要な措置を勧告できるようにし これに対して 監査を受けた者が説明責任を果たすような仕組みが必要 監査委員は 監査基準に従い 監査等をしなければならないものとし 当該監査基準は 各普通地方公共団体の監査委員が定め 公表しなければならないものとするとともに 総務大臣は 監査基準の策定又は変更について 指針を示すほか 必要な助言を行うものとすること ( 第 198 条の 3 第 1 項 第 198 条の 4 第 1 項 第 3 項及び 第 5 項関係 ) 監査委員は 住民監査請求による監査の結果に関する報告の決定について 各監査委員の意見が一致しないことにより合議により決定することができない事項がある場合には その旨及び当該事項についての各監査委員の意見を代表者に送付し かつ 公表するとともに これらを当該普通地方公共団体の議会及び長並びに関係のある教育委員会 選挙管理委員会 人事委員会若しくは公平委員会 公安委員会 労働委員会 農業委員会その他法律に基づく委員会又は委員に提出しなければならない ( 第 75 条第 5 項関係 ) 監査委員は 監査の結果に関する報告のうち 普通地方公共団体の議会 長等において特に措置を講ずる必要があると認める事項について その者に対し 理由を付して 必要な措置を講ずべきことを勧告することができるものとするとともに 当該勧告を受けた議会 長等は これに基づき必要な措置を講じ 当該講じた措置の内容を監査委員に通知しなければならないものとし 監査委員は 当該勧告及び当該措置の内容を公表しなければならないものとすること ( 第 199 条第 11 項及び第 15 項関係 )

96 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 第 29 次地方制度調査会答申第 31 次地方制度調査会答申 2017 年法改正 - 監査委員の意見が付された決算を議会が審議した結果 議会が決算認定をせず その理由を示した場合については 議会が長に対し理由の中で指摘した問題点について長が説明責任を果たす仕組みを設けることとすべき 監査委員の選任を議会の選挙とすることについては 賛否両論があったところである 公選により監査委員を選出することについては 課題もある このようなことから 監査委員の選任方法や構成については 監査委員を公選により選出することも含めて ( 独立性 ) 議会による選挙とすることについては 実質的なメリットがあるのか その場合の監査委員の制度的な位置づけをどのように考えるのかといった課題もあることから 慎重に考えるべき ( 独立性 ) 監査委員の選任方法を公 選とすることについては 監査委員として専門的な能力を有する人材の立候補が期待できるのか といった課題もあることから 慎重に考えるべき 引きつづき検討を行う必要 - ( 専門性 ) 選任された監査委員やそ れを支える監査委員事務局 外部監査人に 監査の実施に当たって必要な専門性を高めるための研修制度を設けることが必要 - ( 専門性 ) 監査委員が 特定の事件 につき専門委員を任命できるようにする必要 普通地方公共団体の長は 決算の認定に関する議案が否決された場合において 当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは 速やかに 当該措置の内容を議会に報告するとともに 公表しなければならないものとすること ( 第 233 条第 7 項関係 ) 地方公営企業の決算不認定の場合及び合併特例区の決算不認定の場合について 上記と同趣旨の規定を整備すること ( 地方公営企業法第 30 条第 8 項 市町村の合併の特例に関する法律第 45 条第 7 項関係 ) 監査委員に常設又は臨時の監査専門委員を置くことができるものとし 監査専門委員は 監査委員の委託を受け その権限に属する事務に関し必要な事項を調査するものとする ( 第 200 条の 2 第 1 項及び第 3 項関係 )

97 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 第 29 次地方制度調査会答申第 31 次地方制度調査会答申 2017 年法改正 毎会計年度包括外部監査を受ける方式に加え 条例により複数年度に 1 回包括外部監査を受ける方式の導入が適当指定都市 中核市以外への包括外部監査の義務付け拡大について 人材確保や財政負担等の課題があり 引 き続き検討個別外部監査において導入の前提として必要とされている条例の制定を不要とすることが適当 議選議員の廃止について 適任者を選任するという観点から議員を含めて 選任すべきという意見や 執行機関を監視するという議会の役割にかんがみると議選委員は維持され るべきとの意見小規模団体の外部監査の導入につき 共同の外部監査組織の設置など 外部監査人となる人材の確保を支援する方策について 今後引き続き検討 決算財務書類の監査を包括外部監査人の必要監査事項に義務付けることについて 費用の増加等の課題があり 引き続き検討 ( 資源配分 ) 条例により導入する地方公共団体が条例で頻度を定めることができるようにすることにより 包括外部監査制度導入団体を増やしていく ( 資源配分 ) 個別外部監査について 導入を促進するという観点から条例の制定を不要とすることについては 監査委員監査の充実強化の成果を踏まえ 慎重に検討する必要 ( 専門性 資源配分 ) 各地方公共団 体の判断により 監査委員は専門性のある識見監査委員に委ね 議選監査委員を置かないことを選択肢として設けるべき ( 専門性 資源配分 ) 地方公共団体に共通する監査基準の策定や 研修の実施 人材のあっせん 監査実務の情報の蓄積や助言等を担う 地方公共団体の監査を支援する全国的な共同組織の構築が必要である 政令で定める市以外の市又は町村で 契約に基づく監査を受けることを条例で定めたものの長は 条例で定める会計年度において 当該会計年度に係る包括外部監査契約を あらかじめ監査委員の意見を聴くとともに 議会の議決を経た上で 速やかに 一の者と締結しなければならないものとすること ( 第 252 条の 36 第 2 項関係 ) - 条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとする ( 第 196 条第 1 項関係 ) - ( 内部統制で代替?)

98 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - むすびにかえて 監査 内部統制関連改正項目には関係団体による軋轢は見られず法案成立にいたり 宿年の課題は政治 行政的に一旦決着となった 過去 10 年以上にわたって漂流しつづけた監査 内部統制制度を巡る改革は その間様々な 本流 に出会ってきた かつてのそれは 地方分権改革の流れであり いまは人口減少社会への対応策という流れである これらの本流は 掲げられる問題提起が重要かつ本質的であるのに比して 個別の内容は政策課題ごとの小さな流れを束ねたものに過ぎない場合が多い そのため政権の都合でいちいち変えられる 本流 を正直に読み込みすぎると項目ごとの改革の筋や効果を見誤ることになる (34) また逆に それらの本流に混じって流れてくる漂流物に 思わぬとばっちりを受けることもある 例えば 碓井委員会報告書の書きぶりは国の不詳事件の影響を自治制度が受けていることがうかがわれる 報告書冒頭の地方公共団体を取り巻く環境の変化のなかで公共部門の不詳事件としては社会保険庁の年金記録の改ざん問題があげられているが 自治体の内部統制とは無関係である (35) また 当該報告書の概要版として総務省によって作成された資料には 地方分権の進展との関係で 国の権限 財源を地方公共団体に移譲しても本当に大丈夫なのか? と記載され 信頼がなければ地方分権も行政改革も何も進まない と大書されている 上から目線の分権論だが 当の国は古色蒼然とした無謬主義に立つため 自らには内部統制の仕組みなど無い (36) さらにまた 人口減少社会への対応のための行政制度のあり方を諮問された第 31 次地方 (34) 拙稿前掲 (2016) 参照 (35) そればかりか 年金記録問題については住民から年金相談があった場合に 国の相談窓口や第三者委員会に取り次ぐなど 可能な限りの対応 を行うことなどを 2007 年 6 月 21 日付け事務次官通知で要請しており 自治体側はむしろ迷惑を被ってきた側である このときの お願い が 報告書時点では他人ごとのようであり かつ自治体が悪いかのような書きぶりとなっている (36) 想定問答集によれば 国に導入されていないのになぜ地方公共団体に内部統制制度を導入するのか との問いに対する答えは 国においては 国の行政機関に対して 内部統制 の名称を用いて制度の構築を義務付けてはいないが 独立した存在としての 会計検査院 による検査が行われている 国に 内部統制を制度として導入するか否か については 制度化が必要とされる事情の有無 や 先行する民間や独立行政法人における取組 なども踏まえた上で 検討されるべきものと考える として後ろ向きである すでに述べたように 自治体には既に内部統制にあたる法規定があり また監査委員も必置である

99 - 自治総研通巻 466 号 2017 年 8 月号 - 制度調査会だが 結局法改正に結びついたのは監査制度改革 内部統制制度の導入の他も窓口業務の地方独立行政法人委託や住民訴訟制度の改正など 人口減少社会とは全く関係の無い筋に起因する改正だけである それにもかかわらず 法案提出理由は 第 31 次地方制度調査会が答申を提出してきたから とされる 内閣総理大臣の諮問機関として格式ある地方制度調査会で議論したことは活かされず ロンダリングに荷担させられているようなものである (37) 今次改正で導入されることとなる内部統制にせよ 監査基準にせよ 自治体の業務の構造改革を伴うものとなり得る一方で 具体の効果については大規模自治体の取組状況を見てからしか判断できない 内部統制制度の導入については 既に法が同様の趣旨を定めていることは本稿でも指摘した これが近年の地方自治法改正に見られるように 法改正するまでもなくすでに自治体が自ら行うことができる取組について単なる義務づけを増やすにすぎないものとなるのか それともこれを契機に綱紀粛正が図られ不祥事が撲滅されるのか また 議選の監査委員の役割が再確認されるのかは 自治体の矜持に期待を持つしかないだろう 本法改正がどれほど画期的内容なのかはともかく 自治体が自浄能力を発揮しないことには 今後また地方自治を制限するさらなる統制が行われることになりかねないことを危惧する ( ほりうちたくみ公益財団法人地方自治総合研究所研究員 ) (37) 拙稿前掲 (2016)pp 参照

100 < 資料 > 資料 国会審議抄録 内部統制制度の一般市町村への対象拡大 川 ( 徹 ) 委員 都道府県知事及び指定都市の市 は義務づけ その他の市町村 は努 義務としたわけでありますが この趣旨はどういうことでしょうか 安 政府参考 本来 全地 公共団体に内部統制に関する 針の策定及び内部統制体制の整備が求められるもの このように考えておりますけれども 地 公共団体にとりまして過度な負担とならないように まずは 組織や予算の規模が きく その必要性が 較的 いと考えられます都道府県及び指定都市に対してのみ義務づけることといたしまして その他の市町村については 今回の改正案では努 義務とさせていただいているところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 内部統制に関するガイドラインの策定 安 政府参考 第三 次地 制度調査会におきまして地 六団体からヒアリングを った際には 内部統制に関しましては 体制整備による事務の増加や費 対効果について考えるべきではないか あるいは が何をすべきか具体的に すべきではないかなどの御意 をいただいたところでございます これらの御意 も踏まえまして この三 次地 制度調査会答申では 内部統制への過 な期待により コストと効果が 合わない過度な内部統制体制の整備につながらないようにすべきであること これが されております また が具体的に何をすべきかにつきましては 各地 公共団体が地域の実情に応じて取り組むものではございますけれども 今後 先 的モデル事例の紹介などによりまして 援していく あるいは 必要に応じて 国においてガイドラインの策定などについても検討してまいりたい このように考えているところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 内部統制に関し が うべき評価の視角 宮崎勝君 が うべき評価についてどのような着眼点で評価を えばよいのか 政府参考 ( 安 充君 ) 評価の着眼点という御質問でございますけれども 内部統制体制の運 状況に改善すべき点はないか 具体的には リスクの把握 評価が時宜にかなったものかどうか リスクに対する対策が妥当かどうか 監査などで指摘された事項の全庁的な共有が図られているかどうかなどといった点が考えられるわけでございまして こうした評価を繰り返すことで 内部統制体制が定着し 洗練していくものと考えているところでございます ( 平成 29 年 6 1 参 総務委員会 ) 住 訴訟に関連して議会が損害賠償請求権等を放棄する議決に前置して監査委員の意見を聴取することについて 安 政府参考 今回の改正によりまして 議会が放棄議決をする際には監査委員の意 を聞くということにされているわけでございます

101 この監査委員の意 これは監査委員の合議による慎重な審議を経た上で機関としての意 が述べられるということになるわけでございますが 今回の改正であわせて盛り込んでおります監査基準 監査委員が策定することになる監査基準 これにおいてどのような意 を述べるべきかということも定められるべきだというふうに考えております この点については 私どもの で指針を定めて助 をするということになっておりますので その中で検討してまいりたいというふうに考えている次第でございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 政府参考 ( 安 充君 ) 今回 監査委員の意 を聴いた上で議決をいただくということになっておりまして この監査委員の意 はこの議決の過程において公表されることになります それを踏まえての議会の議決ということでございますので なぜその議決が必要なのかということは これは議論の俎上に上るだろうというふうに考えておりまして これは 定の めになるのではないかと思っております また この結果については 最終的には 訴訟において裁判所でその議決が有効か無効かと判断されるケースが出てくるわけでございまして その際にこの監査委員の意 というものをどう踏まえたかということも これは判断材料になってくるのではないかと考えております ( 平成 29 年 6 1 参 総務委員会 ) 政府参考 ( 安 充君 ) 監査委員が意 を述べるに当たりまして 今回 これも新たに制度化をすることにいたしております監査基準というものを作ることにしておりますが この監査基準の中で この監査委員の意 今回の損害賠償請求権の放棄に係る監査委員の意 についても書いていただくということを想定しております 私どもといたしましては 指針を作り助 をするということになっておりますので その指針あるいは助 の中で触れていきたいというふうに考えている次第でございます ( 平成 29 年 6 1 参 総務委員会 ) 決算不認定の場合の措置 川 ( 徹 ) 委員 必要と認める措置を講じたときに その内容を速やかに議会に報告 公表となっております であるならば 措置を講じたときではなくて 決算不認定の場合には必要な措置の義務化をするべきではないのか 安 政府参考 決算につきましては 議会が不認定とした場合には 既に われた収 出に対して事後的に是正措置を講ずることができるのは極めて限られている つまり 決算上の係数ミス等の場合に限られるというふうに考えておりまして 必ずしも全てのケースにおいて必要と認める措置を講ずることができるとは限らないということで 必要と認める措置を講ずるかどうかは任意の対応とするということにしたものでございます ただし 次年度以降の予算に不認定とした趣旨を踏まえて対応を反映するなど 将来にわたって措置を講ずる余地もございますので が必要と認める措置を講じた場合には報告の義務を課する このようにしたところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 )

102 輿 委員 決算の不認定を受けて がこういった措置を講じた場合に議会へ報告することを義務づける このことは具体的にどのような効果があると期待をして法改正を ったのか 安 政府参考 その措置の内容の適否について議会での議論の俎上にのせることが可能になるなど 決算審議を通じて議会の監視機能がより適切に発揮され 議会と との関係が活性化されることを期待しているものでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 安 政府参考 今回の改正案につきましては 全国都道府県議会議 会 全国市議会議 会 全国町村議会議 会から提出された 地 制度調査会における重点検討項 について におきまして 決算不認定の場合の の対応措置について これが盛り込まれていたところでございます これにつきましては 第三 次地 制度調査会の専 委員会における検討を踏まえた上で 調査会答申が提出されたことを受け 総務省において法案化をしたものでございます なお その後 法案化した後でございますけれども 法案内容について三議 会にも情報提供をしているわけでございますが 特段の御意 はいただいていないというところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 監査基準の策定又は変更について総務大臣が普通地方公共団体に対し必要な助言を うものとする規定について 川 ( 徹 ) 委員 治法で 般的な指導助 ができるということであるにもかかわらず これに関しては重ねて総務 の助 規定を新設しておるわけであります この部分はどういうことなのでしょうか 安 政府参考 今回 総務 が指針を しまして 必要な助 を うということを明確にしておるものでございます この指針の策定に当たりましては 監査に携わる実務者や監査に関する専 家などからも意 を聞くことを想定しておりまして 総務 の助 も このような地域の実情や監査実務者の意 などを踏まえた指針に基づくことになると思っております 加えまして この指針や助 には法的拘束 はないものでございまして 各地 公共団体の監査委員は この指針や助 を踏まえつつ 地域の実情に応じた監査基準を定めることも可能だというふうに考えているところでございます あくまで 総務 が助 として う その総務 の責務を定めたものでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 近藤 ( 昭 ) 委員 この四の第五項では 総務 が監査基準の策定または変更について 普通地 公共団体に対し必要な助 を うものとする うものとする とあるわけでありますが 助 はどこに対してどのような形で うことを想定しているのか 安 政府参考 今回の改正案による改正後の地 治法第百九 条の四第五項においては 助

103 の相 は地 公共団体としているところでございます ただ 具体的な 書の通知先ということになりますと これは当該団体内における監査の担当部局 すなわち監査委員やその事務局とすることが想定されているところでございます こうしたことが各地 公共団体の 主性を損なわないのかというお尋ねでございますけれども この助 は 監査基準の策定 変更について助 するものでございまして 個別の監査事務に関与するというものではないということもございますので 主性を損なうということにはならないというふうに考えているところでございます 安 政府参考 今回の改正案では 地 公共団体が個別に監査基準を定めるということにしている で 地 公共団体の監査のあり に関する認識を共有しつつ 全国的な監査の質の向上を図りたいということから 総務 に助 を う責務を課しているものでございます したがいまして 単に地 公共団体の問い合わせに応答するということにとどまらず 総務 の責務として 各地 公共団体が監査基準を策定する際に参考となる指針を して助 を うということにしているものでございます ( 平成 29 年 5 18 衆 総務委員会 ) 近藤 ( 昭 ) 委員 百九 条の助 とは別に 百四 五条の四では 技術的な助 ができる こういう規定の仕 もしているんですね これは 技術的 と書いてあるわけですが 技術的な助 ができるとの規定が存在しているわけでありまして 両者の関係をどのように考えているか 安 政府参考 まず 今回の改正案による改正後の百九 条第五項に基づく助 でございますけれども これは 百四 五条の四に基づく技術的な助 と同じ内容 同じものでございます 今回 わざわざつくったということでございますけれども これは 地 公共団体の監査のあり に関する認識を共有しながら 全国的な監査の質の向上を図るという観点から 総務 に助 を う責務を課するという意味で この新しい条 を設けているということでございます したがって 内容の点におきましては 助 は技術的助 と相違はないわけでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 監査に係る経費について 川 ( 徹 ) 委員 この法制度改正に伴って 地 公共団体に対する財政措置であるとか 何か検討されたとかというところはあるんでしょうか 安 政府参考 現在 地 公共団体の監査に要する標準的な経費につきましては 地 交付税により措置されているところでございます 今回の監査制度の 直しに伴って新たな財源措置を検討したかどうかということでございますが 現時点では考えていないところでございます ただ 直し後の監査の実態を踏まえまして 新たに算定すべき経費が発 するという場合には検討する必要があるものと考えているところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 監査委員事務局の必置化について 安 政府参考 事務局の必置化ということでございますけれども やはり特に町村等の場合におき

104 ましてなかなか そもそも職員数が少ないということがございまして 実態として対応できるかどうかという部分がございます また 共同設置などの 法もございまして そういうものも含めてまずは検討していただきたい このように考えているところでございます ( 平成 29 年 5 16 衆 総務委員会 ) 監査専門委員の設置 宮崎勝君 監査委員に監査専 委員を置くことができることとなっております これによって監査体制が強化されるのは 常に良いことであるとは思いますけれども 監査専 委員は専 の学識経験を有する者から選任するということでございますので 材確保が 丈夫なのかなという懸念もございます これについて 今後の対応 針を伺いたいと思います 政府参考 ( 安 充君 ) 監査委員として監査を うにふさわしい 物が選任されるものの 当該監査委員が監査の対象となる事務全てについて対応できる専 性を有しているとは限らないと このように認識しております このため 監査委員の独 性を確保しつつ 専 性を める観点から 必要に応じ監査専 委員を選任し 調査を委託できる仕組みを設け 監査に必要な専 性を補完することができるようにしているところでございます 例えば 度な専 性が求められるICTでございますとか建築などの分野 あるいは財政援助団体監査における財務状況の調査のために公認会計 を活 するなど 様々な専 家や特定の事項に精通した を選任するということが想定されるものでございます この監査専 委員でございますけれども 臨時に置くということもできるものでございまして 調査事項に応じて地域外の 々を選任するということも可能だと考えてございます こうしたものも含めて 地域の実情に応じて 調査事項にふさわしい 材を確保していただきたいと考えているところでございます ( 平成 29 年 6 1 参 総務委員会 ) 全国的な監査共同組織 安 政府参考 新しい共同した組織のようなものは考えないのかということでございますが 確かに 第三 次地 制度調査会につきましては 全国的な共同組織というものが統 的な監査基準をつくるということを答申の中に触れております ただ これは 案の段階で 私ども内部でもいろいろ検討いたしましたし また 監査委員の都道府県レベル 都市レベルの協議会 町村レベルの協議会等とも議論いたしまして 今のような形になったわけでございます 全国的な共同組織を設けるという内容は 法律の中に っていないということでございます ただ 指針を定めるに当たりましては 事実上 事実上といいますか 監査の専 家でございますとか実務者の意 を聞きながらこれを策定する必要があるというふうに考えておりまして 今申し上げました都道府県 市レベル 町村レベルの監査委員の専 家の 々 監査委員の実務者の 々 こういう 々にも参加していただいて 指針の内容を議論していきたいというふうに考えている次第でございます ( 平成 29 年 5 18 衆 総務委員会 )

105 統一的な監査基準 村 ( 貴 ) 委員 地 制度調査会の答申では 統 的な監査基準は 地 分権の観点から 国が決めるのではなく 地 公共団体が共同して定めることが適当であるというふうにしたわけなんですね 地 が合い議して統 監査基準をつくったら これはいけないわけなんでしょうか 安 政府参考 三 次地 制度調査会答申では 委員御指摘ございましたように 統 的な監査基準を地 が共同してつくるという考え が されていたわけでございます ただ この考え につきましては 私ども これを法案化するに当たりまして 都道府県の監査委員の協議会 都市の監査委員協議会 町村の監査委員協議会等と議論させていただきましたけれども 特に 地 で共同して法 をつくって その法 が統 監査基準をつくるということをイメージしていたのでございますけれども その必要は必ずしもないのではないかという御指摘がございまして 今のような形になったということでございます もちろん 今回の枠組みの中でも 各都市なり町村なりが共同してベースのようなものをつくろうということであれば それは差し えないものというふうに考えている次第でございます ( 平成 29 年 5 18 衆 総務委員会 ) 議選の監査委員の選択制について 村 ( 貴 ) 委員 第百九 六条 項 条例で議員のうちから監査委員を選任しないことができるものとすることとしてあります 義務づけを緩和する 的は何でしょうか 安 政府参考 議選監査委員でございますけれども 監査委員と議会の議員としての地位をあわせ持つ者でございます 現 制度では 全ての地 公共団体において議選監査委員を選任するということが必要とされているものでございます 監査委員と議会は 地 公共団体の執 機関をチェックする役割は共通するものではございますけれども 監査委員は 財務管理とか経営管理などの専 的な 地から の執 した事業などについて事後的にチェックする機能が求められる で 議会は 地 公共団体の 政全般にわたって幅広い 地から執 機関をチェックする機能 これが求められるわけでございます こうしたことを踏まえて 監査委員と議会のチェック機能における役割分担の純化も地 公共団体のガバナンスのあり としてあり得るために 改正法案において 地 公共団体の判断によりまして議選監査委員を選任しないことも選択肢として認めることにしたわけでございます あくまで これは選択肢として認めるということでございまして 従来どおり議選監査委員を置いておいても それはもちろん差し えないわけでございます ( 平成 29 年 5 18 衆 総務委員会 )

106 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 住民訴訟制度の改正 下山憲治 1. はじめに 地方自治法等の一部を改正する法律 (2017( 平成 29) 年 6 月 9 日法律第 54 号 以下 改正法 ) のうち ここでは 住民訴訟制度を取り扱う 住民訴訟制度は 1948( 昭和 23) 年の第 2 次地方自治法改正において住民監査請求の制度とともに 米国の納税者訴訟を範として創設された この住民訴訟制度は 最高裁判決 (1) によれば 普通地方公共団体の執行機関又は職員による 財務会計上の違法な行為又は怠る事実が究極的には当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害するものであるところから これを防止するため 地方自治の本旨に基づく住民参政の一環として 住民に対しその予防又は是正を裁判所に請求する権能を与え もつて地方財務行政の適正な運営を確保することを目的としたものであつて 執行機関又は職員の右財務会計上の行為又は怠る事実の適否ないしその是正の要否について地方公共団体の判断と住民の判断とが相反し対立する場合に 住民が自らの手により違法の防止又は是正をはかることができる点に 制度の本来の意義がある そして この住民の訴権は 地方公共団体の構成員である住民全体の利益を保障するために法律によつて特別に認められた参政権の一種 であり 自己の個人的利益のためや地方公共団体そのものの利益のためにではなく 専ら原告を含む住民全体の利益のために いわば公益の代表者として地方財務行政の適正化を主張する 性格のものである この住民訴訟制度のうち 4 号訴訟は 2002( 平成 14) 年の地方自治法の改正 ( 以下 (1) 最判 1978( 昭和 53) 年 3 月 30 日民集 32 巻 2 号 485 頁

107 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 年法改正 ) 前は 住民が 直接 首長や職員等 ( 以下 引用部分を除き 長等 ) を被告として損害賠償請求等をするものであった ( いわゆる代位請求 ) このような制度について 2000( 平成 12) 年 10 月 25 日 第 26 次地方制度調査会 ( 以下は地方制度調査会を 地制調 ) は 長や職員がたとえ適法な財務会計行為を行っているとしても 住民が違法であると判断すれば 長や職員個人を被告として訴えることができること また 長や職員は裁判に伴う各種負担を個人として担わざるを得ないことから 長や職員に政策判断に対する過度の慎重化や事なかれ主義への傾斜による責任回避や士気の低下による公務能率の低下が生じ 地方公共団体が積極的な施策展開を行うことが困難になるなどの事態も指摘 され 職員の個人責任を追及するという形をとりながら 財務会計行為の前提となっている地方公共団体の政策判断や意思決定が争われている実情にある したがって 訴訟類型を地方公共団体が長や職員等に対して有する損害賠償請求権や不当利得の返還請求権について地方公共団体が適切な対応を行っていないと構成することにより 機関としての長等を住民訴訟の被告とし 敗訴した場合には 当該執行機関としての長等が個人としての長や職員等の責任を追及することとすべきである と答申した (2) この答申を契機に 4 号訴訟は 普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して 長等の行為若しくは怠る事実に係る相手方に損害賠償又は不当利得返還の請求をすることを求める訴訟 ( 義務付け訴訟 ) に再構成された 改正法は 概ね同趣旨ないしその延長線上にあるものとして いわゆる軽過失 ( 善意でかつ重大な過失がないとき ) による長等の責任は 一定の条件と手続のもとで条例を制定することによって軽減されうることになる ( 新 243 条の2) 他方で 住民監査請求後に 長等に対する損害賠償請求権等の放棄を地方公共団体の議会が議決をする場合 あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならないこと等とされた ( 新 242 条 3 項並びに10 11 項 ) この損害賠償責任の減免責にかかわる制度変更は かねてから執行三団体が強く求めていた ここでは このような制度変更に至る経緯 国会審議などを踏まえ その意義や課題等について検討を加えたい (2) 地方制度調査会 地方分権時代の住民自治制度のあり方及び地方税財源の充実確保に関する答申 (2000( 平成 12) 年 10 月 25 日 )

108 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 2. 法律制定の背景と経緯 地方自治法等の一部を改正する法律案 ( 内閣提出第 55 号 以下 改正法案 ) は 第 31 次地制調が2016( 平成 28) 年 3 月 16 日に安倍内閣総理大臣に手交した 人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申 ( 以下 第 31 次地制調答申 ) (3) を踏まえ 地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため 地方公共団体の財務に関する事務等の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等のほか 監査制度の充実強化 決算不認定の場合における地方公共団体の長から議会等への報告規定の整備および地方公共団体の長等に関する損害賠償責任の見直しを行う等の措置を講じようとするものである ただ 第 31 次地制調答申に至るまでのプロセスも重要であるため ここでは 前史として第 29 次地制調の答申等からみておきたい (1) 第 29 次地制調の答申と住民訴訟に関する検討会報告書今般の法改正の前提にある住民訴訟制度の改正論議は 第 29 次地制調に遡る その答申 今後の基礎自治体及び監査 議会制度のあり方に関する答申 (2009( 平成 21) 年 6 月 16 日 ) では 特に 4 号訴訟に関する議会による権利放棄議決が大きな論点となり 次のように取りまとめられた 近年 議会が 4 号訴訟の係属中に当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償請求権を放棄する議決を行い そのことが訴訟の結果に影響を与えることとなった事例がいくつか見られるようになっている 4 号訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権を当該訴訟の係属中に放棄することは 住民に対し裁判所への出訴を認めた住民訴訟制度の趣旨を損なうこととなりかねない このため 4 号訴訟の係属中は 当該訴訟で紛争の対象となっている損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄を制限するような措置を講ずるべきである (3) この答申全体の概要等は 堀内匠 第 31 次地方制度調査会答申を読む 地制調の役割の変化にも着目して 自治総研 451 号 47 頁以下 (2016 年 ) 参照

109 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - その後 地域主権改革を推進するために設置された地方行財政検討会議 地方自治法抜本改正についての考え方 ( 平成 22 年 ) (2011( 平成 23) 年 1 月 26 日総務省 ) では 住民自治制度の拡充 との項目立ての中で 代表民主制を補完する直接民主制的手法の充実 を目指す 住民訴訟制度の見直し との位置づけの下 4 号訴訟による損害賠償請求等に対する議会の放棄議決の効力について下級裁判所の判断が分かれていることを踏まえ 次のようにまとめられた このような損害賠償請求権等の放棄については 住民に対し裁判所への出訴を認めた住民訴訟制度の趣旨を損なうことになりかねず これを制限すべきであるとの指摘がある また そもそも 現行制度下でも 損害賠償請求権等の放棄には内在的な制約があるとの意見がある一方 財務会計行為の違法性の判断とは全く別に 議会が政治的 政策的な観点から損害賠償請求権等を放棄することはあり得るのではないかとの指摘もある また 現行の4 号訴訟については 長等に対する損害賠償請求を求める請求は故意又は過失を要件としており その沿革である米国の納税者訴訟制度に比べて責任要件が重くなっているといった指摘や 長等が多額の損害賠償責任を問われるもので過酷な制度であるとの指摘がある 一方で 実際の事例に照らしたときに故意又は過失を要件としていることが過度に厳しいものと言えるかどうかについて検討する必要があるという指摘もある このようなことから 住民訴訟の対象とされた長等に対する地方公共団体の損害賠償請求権等の放棄に関し 住民訴訟係属中のみならず判決確定後の放棄制限の要否や 放棄する場合の具体的な要件について 判例の動向を見極めながら引き続き検討していく 併せて 4 号訴訟における長の責任要件や賠償額等の制限の是非についても引き続き検討していく (2) 権利放棄議決に関する最高裁判決 今回の住民訴訟制度変更に当たっては 議会による損害賠償請求権の放棄も併せて 問題となった これに関連する最高裁判所の判決には 1 神戸市債権放棄議決事件上

110 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 告審判決 (4) 2 大東市債権放棄議決事件上告審判決 (5) および3さくら市債権放棄議決事件上告審判決 (6) がある これら判決で示された基本線は次のとおりである すなわち 地方公共団体がその債権を放棄することの適否の実体的判断については 住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているものの 諸般の事情を総合考慮して 住民訴訟の対象とされている損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を放棄することが地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であって裁量権の範囲の逸脱 濫用に当たると認められるときは 議決は違法となり 放棄は無効となる これら最高裁判決には 次のような補足意見等が付された 改正法案作成過程では この補足意見等が重視されたので それら内容を確認しておきたい 例えば 1 判決について 千葉勝美裁判官が補足意見として次のように述べた 地方公共団体の長が自己又は職員のミスや法令解釈の誤りにより結果的に膨大な個人責任を追及されるという結果も多く生じてきており また 個人責任を負わせることが 柔軟な職務遂行を萎縮させるといった指摘も見られるところである 地方公共団体の長が 故意等により個人的な利得を得るような犯罪行為ないしそれに類する行為を行った場合の責任追及であれば別であるが 錯綜する事務処理の過程で 一度ミスや法令解釈の誤りがあると 相当因果関係が認められる限り 長の給与や退職金をはるかに凌駕する損害賠償義務を負わせることとしているこの制度の意義についての説明は 通常の個人の責任論の考えからは困難であり それとは異なる次元のものといわざるを得ない 国家賠償法の考え方に倣えば 長に個人責任を負わせる方法としては 損害賠償を負う場合やその範囲を限定する方法もあり得るところである しかし 現行の住民訴訟は 不法行為法の法理を前提にして 違法行為と相当因果関係がある損害の全てを個人に賠償させることにしている そのことが心理的に大きな威嚇となり 地方公共団体の財務の適正化が図られるという点で成果が上がることが期待される一方 場合によっては 前記のとおり 個人が処理できる範囲を超えた過大で過酷な負担を負わせる等の場面が生じているところである 普通地方公共団体の議会が 住民訴訟制度のこのような点を考慮し 事案の内容等を踏まえ 事後に個人責任を (4) 最判 2012( 平成 24) 年 4 月 20 日民集 66 巻 6 号 2583 頁 (5) 最判 2012( 平成 24) 年 4 月 20 日判時 2168 号 45 頁 (6) 最判 2012( 平成 24) 年 4 月 23 日民集 66 巻 6 号 2789 頁

111 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 追及する方法 限度等について必要な範囲にとどめるため 個人に対して地方公共団体が有する権利 ( 損害賠償請求権等 ) の放棄等の議決がされることが近時多く見られる が このような議決は 住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量に基本的に委ねられているものである 権利の放棄の議決が 主として住民訴訟制度における地方公共団体の財務会計行為の適否等の審査を回避し 制度の機能を否定する目的でされたと認められるような例外的な場合 には そのような議会の裁量権の行使は 住民訴訟制度の趣旨を没却するものであり そのことだけで裁量権の逸脱 濫用となり 放棄等の議決は違法となるものといえよう また 3 判決について 須藤正彦裁判官が意見として次のように述べている 一般的に 議会において賠償金額を 例えば 長の資力などを考慮して過重とみられる分をカットし あるいは 年間報酬額の何年分といった額にまで減縮する旨の一部放棄の議決をすることは一つの政治的判断として合理的で裁量権の範囲内とみられよう ただし そのような損害賠償請求権の程度といった量的な問題ではなく 有無 の面で無とすることになる放棄の議決は 無とすることが合理性を持つものとして許容される限度を超えているとみられる場合に裁判所がこれを違法と判断することは許されるというべきであり その意味において 全額の放棄の本件議決については上記のとおり原則的に違法であるとの評価は免れ難いというべきである (3) 住民訴訟に関する検討会報告書このように 住民訴訟で争われている損害賠償請求権を放棄する議決の有効性について最高裁判所の一定の判断が示されたことから 今後の住民訴訟のあり方について検討を行うため 2012( 平成 24) 年 7 月に総務省自治行政局において 住民訴訟に関する検討会 が設置され 2013( 平成 25) 年 3 月に報告書が取りまとめられた 同報告書では 前記 (2)1~3の最高裁判決における補足意見等が指摘した点に対し 考えられる方策 として以下の6つの対応案を提示し 各対応案には それぞれに意義および留意すべき点があることを指摘する そして 解決の方向性をあえて一案に絞ることはせず 今後 これらをたたき台としてさらに議論が深められることを期待する内容となっている 具体的には 長等に対する 過大な責任追及 にかかわって 案 1は違法事由の性

112 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 格等に即した注意義務違反の明確化 ( 例えば 補助金の支出にどのくらい関与していたか 当時の補助金に対する他の地方公共団体の取扱いはどうか等 特定の支出について 違法を防ぐために長等が払う注意のレベルに応じ 長等の個人として損害賠償責任を負うかを訴訟で慎重に検討されるようにする ) 案 2は軽過失免責 ( 長等に故意又は重過失があったときのみ責任を負い 軽微な過失の時は責任を負わないとする そして 国賠法との均衡を図る ) 案 3は違法確認訴訟を通じた是正措置の義務付けの追加 ( 住民が公金支出等が違法であることの確認を訴訟で求めることができるようにし 違法が確認されたときは 地方公共団体が再発防止体制の整備など組織としての対応を必須とし 個人としての長等の責任は軽過失免責とする ) 案 4は損害賠償限度額の設定 ( 軽過失の場合に限り 個人としての長等が負う賠償額を 例えば 年収の数倍までとするなど限度額を設定する ) が示された また 議会による損害賠償請求権の放棄について 案 5は損害賠償債務等を確定的に免除する手続の設定 ( 監査委員の免除決定 裁判で確定した長等の損害賠償債務を確定的に免除するための手続を新設し 長や議会から独立した監査委員が免除する額を決定し 議会による任意の放棄をできなくする ) 案 6は損害賠償債務等を免除する手続要件の設定 ( 監査委員からの意見聴取 議会が長等の損害賠償債務を免除する議決をする前に監査委員が意見を述べることとして 議会の議決に到る議論の適正 公正性を向上する ) が示された 改正法案は 後述のとおり 案 4と案 6を中心に作成された (4) 第 31 次地制調答申第 31 次地制調は 2014( 平成 26) 年 5 月 15 日 安倍内閣総理大臣から 個性を活かし自立した地方をつくる観点から 人口減少社会に的確に対応する三大都市圏及び地方圏の地方行政体制のあり方 議会制度や監査制度等の地方公共団体のガバナンスのあり方等について 調査審議を求める との諮問を受けた そして 第 31 次地制調は 専門小委員会を設置し 同小委員会を中心に調査審議を進め 2016( 平成 28) 年 3 月 16 日 第 31 次地制調答申を安倍内閣総理大臣に手交した このうち 適切な役割分担によるガバナンスについて具体的には 第一に長については 全ての長に内部統制体制の整備および運用に関する権限と責任があることを制度的に明確化すること等 第二に監査委員等については 地方公共団体共通の統一的な監査基準の策定 専門性を高めるための研修制度の創設 議選監査委員設置の任意化 監査を支援する全国的な共同組織の構築が必要であること等 第三に議会については 議会が決算を認定せず その理由として指摘した事項について 長がアカウン

113 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - タビリティを果たす仕組みを設けること等を提言している このようなガバナンスのあり方の見直しと併せて 第 31 次地制調答申では 地方公共団体の長等の施策遂行に住民訴訟が及ぼす 萎縮効果 を低減させるため 軽過失の場合における損害賠償責任の長等への追及のあり方等についても見直しを行うことが必要であるとされた (7) この点について 第 31 次地制調答申は 住民訴訟制度等をめぐる課題として 4 号訴訟における長等の損害賠償責任に関し 前掲最高裁判決の補足意見等において 長や職員への萎縮効果 国家賠償法との不均衡や損害賠償請求権の放棄が政治的状況に左右されてしまう場合があること等が指摘 されたことを課題としてとらえ (a) 長等の事務処理への影響に関し 人口減少社会において資源が限られる中で創意工夫をこらした施策を講じることが求められる状況において 当該萎縮効果により本来行うべき施策も行わないことになってしまうことは問題であるとする考え方もある こと (b) 国家賠償法上の求償権との関係について 地方公共団体の長や職員が違法な行為により地方公共団体に損害を生じさせた場合の損害賠償責任の要件が故意又は過失であることに対し 国家賠償法に基づく公務員個人への求償責任の要件は故意又は重過失となっていることとの均衡がとれていないとの指摘がある こと そして (c) 議会による長等の責任の免除に関し 住民訴訟において長や職員に対する損害賠償請求権の有無が争われている間に当該権利を放棄することは 長や職員の賠償責任の有無について曖昧なまま判断することとなるという問題がある としている この答申は その見直しの方向として 全体のガバナンスの見直しによる不適正な事務処理の抑止効果を高めるとともに ( ア ) 長や職員への萎縮効果を低減させるため 軽過失の場合における損害賠償責任の長や職員個人への追及のあり方を見直すこと ( イ ) 4 号訴訟の対象となる損害賠償請求権の訴訟係属中の放棄を禁止すること ( ウ ) 不適正な事務処理の抑止効果を維持するため 裁判所により財務会計行為の違法性や注意義務違反の有無が確認されるための工夫 および ( エ ) 4 号訴訟において長や職員個人に損害賠償請求を認める判決が確定した後は 損害賠償請求 (7) この答申における住民訴訟制度の位置づけについては 個人責任から組織責任へ 分節的視点からプロセス的視点という変化の観点が重要であることを指摘するものとして 飯島淳子 住民訴訟制度の 改正 に向けて 批判とともに考える 都市問題 2016 年 10 月号 80 頁以下がある

114 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 権を放棄する場合に監査委員等の意見の聴取を行うこと が必要である等とした (8) なお この住民訴訟制度に関する答申内容については 日弁連による批判 (9) に対する十分な検討もできておらず また 前述のとおり 第 31 次地制調答申は (a)(b) と (c) の語尾表現の違いや ( ア ) から ( エ ) の方向性の具体化における表現の相違にも表れているとおり すべての点で意見が一致していたわけではなかった (5) 住民訴訟制度の見直しに関する懇談会取りまとめ第 31 次地制調答申で提言された住民訴訟制度の見直しの具体的な方向性はその後の検討に委ねられた そこで 2016( 平成 28) 年 12 月 8 日 総務省に 住民訴訟制度の見直しに関する懇談会 ( 以下 懇談会 ) が設置された 懇談会は 軽過失の場合における損害賠償責任の長等への追及のあり方の見直し 4 号訴訟の対象となる損害賠償請求権の放棄のあり方について 参考人 ( 日本弁護士連合会 ) からの意見聴取を含め 住民訴訟制度の見直しに係る必要な検討が行われ 2017( 平成 29) 年 1 月 27 日 次のような懇談会としての検討結果が取りまとめられた 今回の法案作成過程において重要な内容となるため その概要を若干詳しめに紹介しておきたい (ⅰ) 軽過失の場合における損害賠償責任の長等への追及のあり方の見直しまず 第 31 次地制調答申で提言された長による内部統制の制度化を始めとする地方公共団体全体のガバナンスを見直すことで 不適正な事務処理の抑止効果の向上が期待される 一方 損害賠償請求等に関する見直しに当たって 軽過失の場合 違法な財務会計行為と相当因果関係が認められる損害全額について 長等 ( 会計職員等を除く ) の責任を追及することは 個人責任として過酷である さらに 国賠法上の公務員個人への求償要件 ( 故意 重過失 ) との均衡を考慮すると 長等の責任要件を故意 重過失に限定 ( 軽過失免責 ) することも考えられるが 地方公共団体のガバナンスに関するさまざまな議論を踏まえ 見直しには慎重であるべきと考えられる しかしながら 個人責任として過酷である等の問題を解決するため 会社法等の役員等の損害賠償責任の限定を (8) この答申内容に対する批判として 例えば 阿部泰隆 住民訴訟の理論と実務 : 改革の提案 ( 信山社 2015 年 ) 同 地方制度調査会における住民訴訟制度改正の検討について 自治研究 92 巻 1 号 3 頁以下 (2016 年 ) および同 住民訴訟改革のあり方 地方制度調査会答申 懇談会 法案の問題点 自治総研 462 号 70 頁以下 (2017 年 ) 参照 (9) 日本弁護士連合会 地方公共団体の長等の責任追及について 軽過失を免責する方向での住民訴訟制度の見直しに反対する意見書 2016( 平成 28) 年 1 月 21 日

115 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 可能とする立法例も参考に 長等が負担する損害賠償額を限定する措置を講ずることが適当ではないか 具体的には 軽過失減免責には批判もあるから 以下の2 案が考えられる (a) 損害賠償額の上限を実体法上において設ける案長等が負担する損害賠償額について 職務を行うにつき故意 重過失がないときは 法律で定める額を上限とする案では 職務を行うにつき故意 重過失がない場合に 長等が負担する損害賠償額の上限が実体法上明確となるメリットがある しかし 相当因果関係が認められる損害全額について賠償責任が発生するという不法行為法の一般原則との整合性が課題となる (b) 責任免除の範囲を事前に条例で明示する案長等の損害賠償責任について 職務を行うにつき故意 重過失がないときは 賠償責任額から 職責等を考慮して条例で定める額を控除した額を免除する旨を定めることができるとする案は 長等の損害賠償責任に関し 条例または議会の議決による免除が可能な場合があり 現行制度とも親和性がある ただ 責任免除の範囲を条例で定めるに当たって参酌すべき基準および責任の下限額について 法律または政令で定めるのが適当である この参酌すべき基準や責任の下限額については 会社法 独立行政法人通則法等における役員等の最低責任限度額との均衡や 長等の職責 任期等も踏まえて定める必要があるが さらに学識経験者等の意見を聴くなどして 慎重に定めることとすべきである なお 軽過失における損害賠償責任の長等への追及のあり方の見直しとして 軽過失免責とせず 長等が負担する損害賠償額を限定する措置を講ずれば 4 号訴訟の中で 財務会計行為の違法性や注意義務違反の有無等が裁判所で判断されるため 第 31 次地制調答申において指摘されているような 裁判所により財務会計行為の違法性や注意義務違反の有無が確認されるための工夫を別途制度として設ける必要は当面ない (ⅱ) 4 号訴訟の対象となる損害賠償請求権の放棄のあり方 4 号訴訟の対象となる損害賠償請求権の放棄の実体的判断は議会の裁量権に基本的に委ねられているとの前記最高裁判所判決の趣旨も踏まえれば 議会は その判断が政治状況等の影響を受けて客観性や合理性が損なわれ 裁量権の逸脱 濫用となることのないようにすることが求められ 前述 (ⅰ) の措置を講ずれば 故意 重過失の場合における損害賠償請求権の放棄や 軽過失の場合に最低限負担すべきとされる損害賠償額に係る請求権の放棄に際し より一層慎重な判断が求められる

116 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - また 議会による損害賠償請求権の放棄が客観的かつ合理的に行われることに資するよう 住民監査請求があった後に損害賠償請求権を放棄する場合には 議会に対して監査委員の意見聴取を義務付けるなど 手続面の適正化が必要である なお 4 号訴訟の対象となる損害賠償請求権の放棄を禁止すべきとの議論もあるが 長等が負担する損害賠償額の限定 住民監査請求があった後に議会が損害賠償請求権を放棄議決する場合の監査委員の意見聴取の義務付け等の措置の施行状況も踏まえて 今後その適否について更に検討を行うべきである この取りまとめ (ⅰ)(b) と (ⅱ) が改正法案の骨子となる そして (ⅰ) および (ⅱ) のそれぞれ最後のなお書き部分で言及されている点は 第 31 次地制調答申の ( イ ) と ( ウ ) について 当面必要性がないとされたり 引き続き検討課題とするとして法案化に到らなかった理由が示されている 3. 法律の概要 住民監査請求 訴訟に関する規定のうち ここでは 地方公共団体の長等に関する損害賠償責任の見直し等を中心に扱い 内容上変更のない字句修正については省略する (1) 普通地方公共団体は 条例で 当該普通地方公共団体の長若しくは委員会の委員若しくは委員又は当該普通地方公共団体の職員 ( 新第 243 条の2の2 第 3 項の規定による賠償の命令の対象となる者を除く ) の当該普通地方公共団体に対する損害を賠償する責任を 長等が職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは 長等が賠償の責任を負う額から 長等の職責その他の事情を考慮して政令で定める基準を参酌して 政令で定める額以上で当該条例で定める額を控除して得た額について免れさせる旨を定めることができるものとすること ( 新第 243 条の2 第 1 項 ) (2) 普通地方公共団体の議会は (1) の条例の制定又は改廃に関する議決をしようとするときは あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならず 当該意見の決定は 監査委員の合議によるものとすること ( 新第 243 条の2 第 2 3 項 ) (3) 住民監査請求があったときは 監査委員は 直ちに当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならないものとすること ( 新第 242 条 3 項 ) (4) 普通地方公共団体の議会は 住民監査請求があった後に 当該請求に係る行為又は

117 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議 決をしようとするときは あらかじめ監査委員の意見を聴かなければならず 当該意 見の決定は 監査委員の合議によるものとすること ( 新第 242 条 項関係 ) 4. 国会における審議 (1) 審議経過と施行日 改正法案は 第 193 回国会衆議院に 内閣提出法案 ( 閣法 )55 号として 2017( 平 成 29) 年 3 月 10 日に提出され 下記のような審議を経て原案どおり同年 6 月 2 日に成 立した 審議した院 会議名 開催日 審議状況 衆議院 総務委員会 5 月 11 日 趣旨説明 衆議院 総務委員会 5 月 16 日 質疑 衆議院 総務委員会 5 月 17 日 参考人招致 参考人質疑 修正案の提出と修正案趣旨説明 衆議院 総務委員会 5 月 18 日 質疑 討論 採決 : 修正案 否決 内閣提出法案 可決 附帯決議 衆議院 本会議 5 月 23 日 委員長報告 採決 : 修正案 否決 内閣提出法案 賛成多数 ( 自由民主党 無所属の会 公明党 日本維新の会 ) 参議院 総務委員会 5 月 25 日 趣旨説明 参議院 総務委員会 5 月 30 日 参考人招致 参考人質疑 質疑 参議院 総務委員会 6 月 1 日 質疑 討論 採決 : 内閣提出法案 可決 附帯決議 参議院 本会議 6 月 2 日 委員長報告 採決 : 賛成多数 ( 自由民主党 こころ 公明党 日本維新の会 無所属クラブ ) 衆議院総務委員会の審議において 議会による損害賠償請求権放棄議決の要件を絞 るため 改正法案について 特に次の修正案が提出された (10) (10) この修正案の内容は 1900( 明治 33) 年 5 月 28 日 府県出納吏及出納吏ノ身元保証並賠償責任ニ関スル件 2 条 1 項 ( 勅令 248 号 ) や 1926( 大正 15) 年 6 月 24 日市制町村制施行令 ( 勅令 201 号 )33 条の規定内容に類似しているように思われる

118 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - ( 職員等に対する損害賠償請求権等の放棄の禁止 ) 第 243 条の2の3 普通地方公共団体が有する当該普通地方公共団体の職員の違法な第 242 条第 1 項に規定する行為又は怠る事実に関する当該職員又は当該行為若しくは怠る事実に係る相手方に対する損害賠償又は不当利得返還の請求権は 法律若しくはこれに基づく政令に特別の定めがある場合又は当該行為若しくは怠る事実が避けることのできない事故その他やむを得ない事情によるものであると認められる場合を除くほか 放棄することができない この修正案は 前記表にあるとおり 賛成少数で否決された 改正法は 2017( 平成 29) 年 6 月 9 日法律 54 号として公布され 2020 年 4 月 1 日から施行される なお 住民訴訟制度に関する規定の施行については 次のとおりとなっている 第一に 法律の概要 (1) に関する規定( 新 243 条の2 第 1 項 ) は 条例の施行日以後における地方公共団体の長等の行為に基づく損害賠償責任について適用するものとされた ( 改正法附則 2 条 6 項 ) 第二に 地方公共団体の議会は 法律の概要 (1) に記載した条例の制定に関する議決をしようとするとき ( 新 243 条の2 第 2 3 項 ) は 2020 年 4 月 1 日前においても 監査委員の意見を聴くことができるものとされた ( 改正法附則 2 条 7 項 ) 第三に 監査委員は 改正法の公布日以後に住民監査請求があったとき ( 新第 242 条 3 項 ) は 2020 年 4 月 1 日前においても 当該請求の要旨を当該普通地方公共団体の議会及び長に通知しなければならないものとされた この場合において 当該通知は 同日においてされたものとみなすものとされた ( 改正法附則 2 条 3 項 ) 第四に 法律の概要 (4) に関する規定( 新 242 条 項関係 ) は 2020 年 4 月 1 日以後にその要旨が通知された住民監査請求に係る行為又は怠る事実に関する損害賠償又は不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決について適用するものとされた ( 改正法附則 2 条 5 項 ) (2) 審議の内容ここでは 前記各規定にかかわるものに絞って 審議内容をまとめる 1 改正法案の概要と長等の責任について高市早苗総務大臣による提案理由は この法律案は 地方制度調査会の答申を

119 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 踏まえ 地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため 所要の措置を講ずるもので その概要は 地方公共団体は 条例で 地方公共団体の長や職員等の当該地方公共団体に対する損害を賠償する責任を その職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないときは 賠償の責任を負う額から 政令で定める基準を参酌して 政令で定める額以上で当該条例で定める額を控除して得た額について免れさせる旨を定めることができることとするとともに 地方公共団体の議会は 住民監査請求があった後に 当該請求に係る行為または怠る事実に関する損害賠償または不当利得返還の請求権その他の権利の放棄に関する議決をしようとするときは あらかじめ監査委員の意見を聞かなければならないこととして いる (11) より具体的には 安田充政府参考人 ( 総務省自治行政局長 ) によれば 住民訴訟制度は 住民自身が訴訟を提起して 地方公共団体の財務の適正性を確保することを目的とする制度 で 不適正な事務処理を抑止する効果を有していると考えて いるが 現行制度におきましては いわゆる四号訴訟の対象となる地方公共団体の長や一般職員については 軽過失しかない場合においても損害の全額について責任を追及されまして 個人として多額で過酷な損害賠償責任を負うことがあるということ それによって長等の萎縮を招き 円滑な行政運営に弊害が生じているとの見解がある また 長や職員への損害賠償請求権等を議会が放棄し 長等を救済することにつきましては 最高裁判決における裁判官意見におきまして 権利放棄の判断が政治的関係に影響を受けて客観性や合理性が損なわれ 裁量権の逸脱 濫用になることがないよう求められている 今回の改正では 条例によって 長や職員の損害賠償責任の範囲を事前に明示し 一律に責任の一部免責を行うことを可能とし また 住民監査請求があった後に 損害賠償請求権等を放棄する際の監査委員からの意見聴取手続を創設することとしている (12) 長等の責任について 過大なものが問われている場合があるかどうかについて 高市総務大臣は 今回の改正では 違法な財務会計行為の是正や抑止という住民訴訟の機能というのは従前と変わらず発揮される が 一方で 個人の責任追及のあり方ということについて 現行制度について 一定の課題が指摘されてい (11) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 17 号 21 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 11 日 ) (12) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 4 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 )

120 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - ます きょう 提出いただいた資料の中にも 長が破産をされたということ それから お亡くなりになって御遺族が大変重い責任を負っていらっしゃるといった事例も掲載されております と指摘している (13) 今回の改正後における地方公共団体の長等の予算執行に対する裁判所の判断のあり方としては 安田政府参考人によれば 当事者の主張に基づきまして 故意 過失の有無だけではなくて 過失が認められるときには軽過失か否かについても判断されること になり 裁判所が軽過失と判断した場合には この一部免責条例が適用されまして 損害賠償責任額が一定の限度に限定されることになる (14) なお 2002 年法改正と今回の改正の関係について 高市総務大臣は 次のように答弁した 2002 年の改正によって 地方公共団体の長や職員個人にとっては 住民訴訟によって最初からこの直接被告になってしまうということに伴う各種の負担が回避されるという一定の効果があった 今回の改正では 2002 年改正後も 地方公共団体の長などに対して高額な賠償責任を認める判決も見られて なお萎縮を招いているという見解がある ことと 住民訴訟の係属中に議会が訴訟の対象となった損害賠償請求権などを放棄する議決を行う事例が見られるようになって 政治的な事情によってその判断が左右されるおそれが指摘されるといった状況の変化 があり 第 31 次地制調や有識者の意見を踏まえ見直しを行ったものである (15) 2 最低責任限度と善意 重過失の意義等について長等の責任要件を故意 重過失に限定すべきかどうかについて 安田政府参考人は 第 31 次地制調答申で 長や職員への萎縮効果を低減させるため 軽過失の場合における損害賠償責任の長や職員個人への追及のあり方を見直すことが必要 とされたが その取りまとめに当たり 日本弁護士連合会などから 事後的に違法な財務会計行為を是正し 及びこれを抑止するという住民訴訟の機能が失われるなど 強い反対の意見が寄せられた これを踏まえ 懇談会での議論では まず 長や職員の責任要件を故意 重過失に限定することについては 地方公共団体のガバナンスに関するさまざまな議論を踏まえると慎重であるべきだ しかしながら 個人責任として過酷である等の問題を解決するためには 会社法等の規定を参考に 長や職員個人が負担する損害賠償額を限定する措置を講ずることが適当であるとの意 (13) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 11 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (14) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 4 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (15) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 15 号 35 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 30 日 )

121 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 見が取りまとめられた 今回の改正法案においては これを受けまして 軽過失の場合にも一定の責任を負うことを前提に 損害賠償責任を限定する措置を設けることとした (16) 地方公共団体が条例で定める最低責任限度額と国の参酌基準について 安田政府参考人は 地方公共団体の自主的な判断を尊重し 最低責任負担額の設定を条例に委任するもので 条例の制定 改廃に当たり 政令で 目安といたしまして 会社法などの規定を参考に参酌基準を設けたい その上で 過度に低額な最低責任負担額が設定されることがないよう 最低額は設けるということにしている 参酌基準については 他の立法例を参考に 年収額を基準といたしまして 職責などを考慮した一定の乗数を乗じて算出した額とすることが考えられる その場合 乗数としては 長については六倍 委員会の委員または委員などについては四倍 監査委員については二倍などが考えられる が 具体的には 国会での御審議でございますとか有識者の意見を踏まえまして 政令で規定することとしたい と答弁している (17) また この参酌基準で基礎とする年収額の時点について 安田政府参考人は いつの時点での年収額を基礎とするかという点 について 責任の原因となる行為の時点で支給されている給与の額を基礎として算定するということが考えられる この場合 行為の時点で現に支払を受けている給与の額が基礎となるため その後に給与の自主返納や減額があったとしても 本来の給与に基づく年収額が基準となるものと考えている (18) とされた 善意でかつ重大な過失 の有無に関する判断について 安田充政府参考人は 本改正案における善意とは 違法な職務行為によって地方公共団体に損害を及ぼすことを認識していないということを指すもの で その認定につきましては 個別具体的な事情を踏まえて 最終的には裁判所によって判断がされる と答弁し以下のように続けた その場合 違法性や損害の発生を基礎付ける一定の事実を認識していたとしても善意と評価される余地はある 次に 判例などによりますと 重過失とは著しく注意義務を欠くことをいい 僅かな注意さえすれば結果を予測しこれを未然に防止するための措置を講ずることができるにもかかわらずこれを怠った状態 であるが 重過失と軽過失とを明確に区分した判断は 現在の住 (16) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 17 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (17) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 4 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (18) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 16 号 13 頁 (2017( 平成 29) 年 6 月 1 日 )

122 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 民訴訟においては必ずしもこれが必要でない し 判断されていない ため 具体的な解釈指針を示すことは現時点では困難である もっとも 過去に重過失が認められた事例 あるいは放棄議決の違法性が現れた事例によりますと 損害を与える蓋然性が高いことを認識していたか少なくとも容易に認識可能だったというケース 専門家などの意見聴取や議会の議決など事前に適正な手続を経ていなかったというケース こういう要素でございますけれども これは軽過失か重過失かを判断するための考慮事項になり得るものと このように考えている (19) なお 今回の改正後に地方公共団体が条例を制定した場合には 裁判所において まず故意 過失の有無だけではなくて 当事者の主張に基づいて 軽過失か重過失か これは条例の適用の有無についての判断をする ことになる そして 軽過失と判断された場合には 損害賠償額が条例で定める限度に限定されますので 損害額が最低責任額を上回る部分については免責をされる (20) 3 免責条例制度と債権放棄の議決について最低責任負担額部分の権利放棄議決について 高市総務大臣は 今回の改正案で免責条例制度が導入されましたら 今後は 故意 重過失の場合でしたり また最低責任負担額部分の権利放棄ということにつきましては 平成二十四年の最高裁判決の趣旨に照らして より一層慎重かつ厳格な判断が求められると考えています また 手続面での適正を担保するため 新たに監査委員への意見聴取手続 を設けた したがって 議会の議決による放棄につきましても 免責条例との均衡を踏まえて適切な判断がされると思っております 法案が成立した場合には 地方公共団体に対しては 今回の改正案の趣旨を踏まえていただいて 損害賠償請求権の放棄について適切な運用を行っていただけるように助言を行ってまいります と答弁している (21) なお 安田政府参考人も 同様に 平成二十四年の最高裁判決では 議決による権利放棄につきまして 議会の裁量権に基本的に委ねられているが 諸般の事情を総合考慮して これを放棄することが裁量権の範囲の逸脱または濫用に当たると認められるときには 議決は違法となり 放棄は無効となる 今回 条例による地方公共団体の長等の一部免責を制度化することによりまして 最低責任額に係る放棄 あるいは故意 重過失の場合の放棄につきまして (19) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 15 号 19 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 30 日 ) (20) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 15 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (21) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 20 号 4 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 18 日 )

123 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - は この一部免責制度に加えて それを行う必要性の説明が求められ 議会の放棄議決の有効性に係る考慮要素にも影響を与えるのではないか と答弁している (22) また なお妥当性を欠くような放棄議決がされた場合には 最終的には 住民訴訟を通じて 裁判所によって放棄の妥当性が判断される 旨の答弁もあった (23) 議会による安易な権利放棄議決に対する歯止めとして法規定を新設する必要性について 高市総務大臣は 今回の法改正案で 地方公共団体の財産の管理処分権を一律に制限するということは地方分権の考え方にそぐわないのではないかという観点から 地方公共団体の自主的な判断を尊重して その適正化を図るべく 放棄に当たって監査委員の方々の意見を聴取するということにしております 議会としては 監査委員の御意見を踏まえた判断が要求されますので 従来以上に放棄に関する説明責任というものを果たす必要がありますし それがまた住民訴訟の充実にも資するものだと考えております と答弁した (24) 一方 第 31 次地制調答申では 4 号訴訟係属中における放棄議決を禁止する必要性が示されていたが 改正法案では この点が含まれていないことの理由として 安田政府参考人は この答申後の 政府部内の検討あるいは有識者を交えての検討の中で 住民訴訟の係属中に限って権利放棄を禁止することについては むしろ住民監査請求中あるいは住民訴訟提起前の権利放棄を誘発することにもなりかねない こういう課題もありまして 制度化する必要性は少ないものと判断した と答弁した (25) また 権利放棄議決について 高市総務大臣は 地方公共団体における権利の放棄につきましては 従前より 地方自治法第九十六条におきまして 議決により放棄できる ものとされ 同法第百十六条によりまして 出席議員の過半数で決する ものとされていて これらの規定を変更するということ は考えていない 会社法の第四百二十六条においては 取締役会の決議または取締役の過半数の同意によって賠償責任額を一部免除することができるとされておりましたので この (22) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 20 号 4 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 18 日 ) (23) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 5 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) (24) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 20 号 5 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 18 日 ) (25) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 8 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 )

124 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 改正案はこの規定などを参考 としたと答弁した (26) なお 安田政府参考人の答弁によれば 監査委員に対する意見聴取は 一般的には 議会が議長名で監査委員に対して意見照会を行い これに対して監査委員が文書で回答するといった運用が想定される (27) また 監査委員の意見は 損害賠償請求権の放棄議案の議会審議の中で住民に対しても明らかになる (28) 監査委員の意見は 監査委員の合議による慎重な審議を経た上で機関としての意見が述べられる が 今回の改正で盛り込まれている 監査基準 監査委員が策定することになる監査基準 これにおいてどのような意見を述べるべきかということも定められるべき であり 指針を定めて助言をする とのことであった (29) (3) 附帯決議衆議院総務委員会地方自治法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法施行に当たり 次の事項に十分配慮すべきである ( 略 ) 三普通地方公共団体の長等の損害賠償責任について 職務を行うにつき軽過失の場合において その一部を免れさせる旨を条例で定めることができる措置を講ずることに鑑み 議会による損害賠償又は不当利得返還の請求権の放棄の在り方について 本法の施行状況も踏まえつつ 引き続き検討を行うこと ( 略 ) 参議院総務委員会地方自治法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法施行に当たり 次の事項についてその実現に努めるべきである ( 略 ) 四 地方公共団体の長等に対する賠償責任額の限定措置により 地方公共団体の長等の職務 (26) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 20 号 6 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 18 日 ) (27) この事務取扱については 各都道府県知事 各都道府県議会議長 各指定都市市長 各指定都市議会議長宛て総務大臣通知 地方自治法等の一部を改正する法律の公布及び施行について (2017( 平成 29) 年 6 月 9 日 総行行第 125 号 総行市第 45 号 総行経第 41 号 総財公第 81 号 ) 参照 (28) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 20 号 5 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 18 日 ) (29) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 16 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 )

125 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 遂行に影響が出るのではないかとの声に対し真摯に向き合い 本法施行後の状況を注視しつつ引き続き検討を行うこと ( 略 ) 右決議する 5. 改正法制定の意義と課題 (1) 法改正の趣旨 目的と必要性前述のとおり 今般の法改正は 地方公共団体のガバナンス全体の見直しを行う中で行われた それは 監査制度の改正のみではなく 長等の損害賠償責任の減免責と損害賠償請求権の放棄議決手続における監査委員への意見聴取等を含む住民訴訟制度の変更についても同様である その変更については 長等の 萎縮効果の低減 が重 (30) 要な目的の一つとなっている この点は 会社法等の規定が参考とされているが 本来 民間の責任のあり方と対比した検討も必要となろう ここでは 次の点の指摘にとどめたい まず 改正法案作成過程における第 31 次地制調の議論でも同様の指摘があるが 個人責任の追及という切り口からの4 号訴訟における長等の損害賠償責任と加害公務員に対する求償要件 ( 国賠法 1 条 2 項 ) との対比の妥当性 監査制度等のガバナンス全体の見直しが財務会計上の不適正処理を実効的に抑止する場合には長等に対する損害賠償責任が認められる可能性は従前よりも低減すると推測されるほか 財務会計上の行為における違法 過失の分析 検討の不十分さなど 住民訴訟制度 とりわけ 長等の損害賠償責任の減免責に関する法改正の必要性等は必ずしも説得的ではないように思われる また 今回の住民訴訟制度の変更に当たって法案立案過程で重視されたのは 最高裁判所の法廷意見というよりも補足意見等であって 従来着手できなかった法改正に向けたきっかけとして用いられたようにも見えないではない 加えて 萎縮効果 の証明が困難であることも反映してか 法案審議において 法改正の必要性にかかわる質問に対する答弁では 〇〇が指摘されている との表現が目立ち (30) 会社法における減免責制度と今回の改正内容を対比すると 制度上 相違点もある この点も踏まえた制度理解と解釈をする必要があると思われるが 詳細は別の機会に行いたい 例えば 岩原紳作編 会社法コンメンタール 9 機関 (3) ( 商事法務 2014 年 )219 頁以下参照

126 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 法案提出者自身の問題意識なり 必要性に関する認識が明確ではなかったように思われる また 法改正の必要性に関連して 例えば 国会審議においては若干質疑が行われたものの 例えば高額な損害賠償が命じられた事例における損害賠償金の支払い状況に関する調査が十分には行われていなかったようである (31) しかも 第 31 次地制調専門小委員会においても 筆者が議事録等をみた限り この点が明確に議論されたとは言い難い なお 改正法の解説においては 高額賠償事案において権利放棄決議が行われた事例のほか 首長が破産した事例もあるようであるが 遺族からの一部支払い後の残額が欠損処理された事例 和解 により和解額が支払われた事例 判決後に訴えが取り下げられた事例があるようである (32) (2) 長等の減免責長等が職務を行うにつき善意でかつ重過失がないときは 長等が負う賠償責任額から 条例で定める額を控除して得た額について免除する旨の条例を地方公共団体は制定できる ( 免責条例 と呼称されている) その主たる目的は 長等の職務執行における 萎縮効果の低減 等にあり 条例によることとしたのは 免責要件と範囲を明確にして長等の予測可能性を保障すること 損害賠償責任の限定は 地方公共団体の有する債権の処分に関するものであり 本来的に地方公共団体の権限として自由裁量でなし得るものである以上 条例に委ねるのが相当と考えられる こと そして 地方公共団体の事業活動の規模等の相違を踏まえ 地方公共団体の自主的な判断を尊重するのが相当である ことにあるとされている (33) 改正法では 長等の賠償責任の限定ないし軽減をこの免責条例によって行うことになる 長等の損害賠償責任を善意でかつ重大な過失がない場合に 長等の職責その他の事情を考慮して政令で定められる基準を参酌して 政令で定める額以上で この条例で定める額を控除したもの (31) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 18 号 10 頁 -11 頁 (2017( 平成 29) 年 5 月 16 日 ) なお いろいろと問題もあろうが 実態を把握するため 高額でない場合であっても可能な限り調査すべきであったように思われる (32) 武富可南 地方自治法等の一部を改正する法律について ( 下 ) 地方自治 840 号 17 頁 (20 頁以下 )(2017 年 ) および松谷朗 人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスの整備を図る : 地方自治法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年法律第 54 号 ) 平 公布平 施行 ( 一部を除く ) 時の法令 2042 号 4 頁 (15 頁 )(2018 年 ) そのほかのパターンとして相続放棄なども推測される (33) 前注 (32) 武富 地方自治法等の一部を改正する法律について ( 下 ) 20 頁以下

127 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - が減免責されることになる ( 地自法 96 条 1 項 10 号も参照 ) なお この政令は その内容が注目されるものの まだ制定されていない 職務を行うにつき善意でかつ重大な過失がないとき に関連して 故意とは長等が損害発生を意図した職務上の行為 ( 不作為を含む ) であり 重大な過失とは 通常要求される注意義務に著しく違反することであって 故意に準ずる程度の注意の欠如 (34) とか 失火責任法に関するものであるが 通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも わずかの注意さえすれば たやすく違法有害な結果を予見することができた場合であるのに 漫然これを見すごしたような ほとんど故意に近い著しい注意欠如の状態 (35) をいうとされている ただ 職務執行につき 善意ではない悪意であるとき または 善意であっても重大な過失があるときは 免責条例による減免責の対象とはならない この制度そのものについては 違法な職務執行を行った長等が一定の損害賠償責任を負うと同時に 違法な財務会計上の行為を抑止する住民訴訟制度の機能は一定程度発揮されるとの評価も見られる (36) 議会による権利放棄議決については 前掲最高裁判決にもあるとおり 議会の裁量が認められるとしても 常にそれを合理化 正当化する根拠が求められる しかも 免責条例が制定されていて 減免責される額を超える個別の権利放棄議決にあたっては 法改正の趣旨および前掲の国会答弁を踏まえると 相応の理由を明示することが求められるだろう (37) したがって 地方議会の裁量判断に対する法的および民主的コントロールのあり方 あり様が今後の論点となろう (3) 監査委員の手続的関与改正法では 免責条例の制定改廃と損害賠償請求権等の放棄にあたって 監査委員への意見聴取が義務付けられた それは 独立した 執行機関である監査委員が関与することで その判断の 客観性と合理性 を確保するためである ただ この制 (34) 最判 1969( 昭和 44) 年 11 月 21 日民集 23 巻 11 号 2097 頁 (35) 最判 1957( 昭和 32) 年 7 月 9 日民集 11 巻 7 号 1203 頁 (36) 例えば 松本英明 新版逐条地方自治法第 9 次改定版 ( 学陽書房 2017 年 )1079 頁および宇賀克也編著 2017 年地方自治法改正 実務への影響と対応のポイント ( 第一法規 2017 年 )37 頁以下 ( 板垣勝彦執筆 ) 参照 (37) 宇賀克也 地方自治法等の改正 (2017 年 ) の背景と意義 自治実務セミナー 662 号 2 頁 (7 頁 )(2017 年 ) 参照

128 - 自治総研通巻 471 号 2018 年 1 月号 - 度設計については疑問も提起されている (38) 仮に この意見聴取が行われない手続的瑕疵は 今回の制度改正の根幹にかかわるものであって 権利放棄議決の違法原因となる (39) 住民訴訟係属中に行われる権利放棄議決にあっては 住民監査請求に対して既に監査委員は意見を述べており この手続の効果 有効性に疑問がないわけではない しかし 議会の判断の客観性 合理性に対する意見であって 手続の進展に伴い新たな主張 証拠が提出されうることや後続する住民訴訟において裁判所の判断が示された場合など事情の変化がありうることが指摘されている (40) なお 前述のとおり 第 29 次および第 31 次地制調において 4 号訴訟係属中の権利放棄議決は住民訴訟制度の趣旨を損なうおそれがあるため 禁止等の法制度化が求められていた しかし 前掲 懇談会取りまとめ では 本改正の施行状況を踏まえ 継続的な検討課題とされた この点は疑問なしとはしないが (41) 今後の動向に注目したい ( しもやまけんじ名古屋大学大学院法学研究科教授 ) (38) 例えば 原島良成 地方公共団体の内部統制強化 2017 年地方自治法等一部改正 法学教室 448 号 56 頁 (60 頁以下 )(2017 年 ) 参照 (39) 前注 (36) 宇賀編著 2017 年地方自治法改正 44 頁以下 ( 板垣執筆 ) 参照 (40) 前注 (32) 武富 地方自治法等の一部を改正する法律について ( 下 ) 26 頁 (41) 大田直史 改正地方自治法のポイントと問題点 住民と自治 655 号 24 頁 (2017 年 )

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130 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 地方独立行政法人法に関する改正 其田茂樹 はじめに 本稿では 地方自治法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年法律第 54 号 以下 本法律という ) のうち 地方独立行政法人法の改正 ( 以下 本改正という ) に当たる部分を中心に着目して 法案成立の過程や地方自治体への影響等に言及する (1) まず 本法律全般に関して簡単に触れておこう 本法律の提案理由は 地方公共団体等における適正な事務処理等の確保並びに組織及び運営の合理化を図るため 地方制度調査会の答申にのっとり 地方公共団体の財務に関する事務の適正な管理及び執行を確保するための方針の策定等 監査制度の充実強化 地方公共団体の長等の損害賠償責任の見直し等を行うとともに 地方独立行政法人の業務への市町村の申請関係事務の処理業務の追加等の措置を講ずるほか 所定の規定の整備を行う必要がある とされている 具体的な内容に関しては 本法律の改正を扱った他稿に詳しいため割愛するが 地方独立行政法人に関する改正のほか 内部統制に関する方針の策定 監査制度の充実強化 決算不認定の場合における長から議会等への報告規定の整備 地方公共団体の長等の損害賠 (1) 本法律のうち 地方独立行政法人法に関して言及している主な解説 論考には長岡丈道 前田茂人 野路允 (2017) 地方独立行政法人法の一部改正について 地方自治 ( 838 から連載中 ) 塩川鉄也 細川敬太 陸川諭 (2017) 2017 年地方自治法改正を探る ( 下 ) 自治実務セミナー 通巻 663 号 塩川 細川 陸川 (2017) 地方公共団体のガバナンス強化等について ( 地方自治法及び地方独立行政法人法改正 ) 地方財政 通巻 668 号 武藤博己 (2017) 地方独立行政法人への業務への窓口関連業務等の追加 地方議会人 2017 年 8 月号 福島功 (2017) 地方独立行政法人の窓口業務委託解禁は自治体にどんな影響を及ぼすか 季刊自治と分権 第 68 号等がある あわせて参照されたい

131 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 償責任の見直し等がその対象となり それは 地方制度調査会の答申が契機となったものであることがわかる 当然のことながら ここでいう地方制度調査会の答申とは 2016 年 3 月 16 日に示された 人口減少社会に的確に対応する地方行政体制及びガバナンスのあり方に関する答申 ( 以下 単に答申という ) を指す このため 次節では 答申における地方独立行政法人に関する部分を確認しておきたい 1. 答申における地方独立行政法人の位置付け 答申では 第 2 行政サービスの持続可能な提供のための地方行政体制 の 2 外部資源の活用による行政サービスの提供 において (2) 地方独立行政法人の活用 という項目が立てられ 言及がなされている つまり 地方制度調査会では 外部資源を活用する一環として地方独立行政法人が位置付けられていることになる 答申の記述に沿って簡単に整理してみよう 答申では 外部資源の活用について 民間委託を進めていくことが有力な手段の一つ であって 単純定型的業務を中心に活用が進められ 近年は 市町村において いわゆる窓口業務のうち法令に基づく申請の受付等の定型的業務についても活用することが新たに始まっている という基本認識のもとで 次のように指摘している すなわち 窓口業務のように 一部に審査や交付決定等の公権力の行使が含まれる場合には 一連の事務の委託を一括した民間委託等 効果的な委託が困難であることから 民間委託を行いづらい状況にある という課題があり 窓口業務については ( 中略 ) 市町村による強い関与が担保されていれば 市町村が直接執行する必要は必ずしもなく 効率的かつ効果的な行政サービスの提供が可能となる場合には 公権力の行使にわたるものも含めた包括的な業務について外部資源を活用して処理できるようにすることが必要 であるが その際には 当該業務の性質や範囲 処理主体のガバナンスや市町村の関与のあり方等を総合的に検討し 適切に執行されるような仕組み とすべきであるとしている また 答申のタイトルにもあるように 人口減少社会を背景として外部資源を共同で活用することについても言及している 市町村間の連携が可能な地域においては 事務の共同処理の方法に加えて 連携が困難な地域においては 都道府県の補完以外の方法として

132 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - また 共同で外部資源を活用することによって事務量を確保して外部資源を活用するという選択肢も示されている 以上の観点を踏まえた結果 答申では 地方独立行政法人について 窓口業務のように 公権力の行使にわたるものを含めた包括的な業務について外部資源を活用する場合には 指定法人や一部事務組合等とは異なり 市町村が業務や組織に対して強く関与することができ かつ 具体的な業務執行は法人の自主性 自律性に委ねられ 迅速な意思決定や 業務のノウハウの蓄積 職員の専門性の確保 柔軟な人事運営等のメリットが期待できる地方独立行政法人の活用を制度上可能とすることも 選択肢の一つとして考えられる としている そのうえで 連携中枢都市等が設立した地方独立行政法人に 近隣市町村が特定の事務を処理させる方法 や 地方公共団体が共同で設立した地方独立行政法人に 特定の事務を処理させる方法 が選択肢となり得ることにも言及されている 以上を要するに 外部資源の活用として有効な民間委託には 公権力の行使という課題があること等を背景として 答申のいう地方独立行政法人の活用という選択肢を法的に可能とすることが 本改正の趣旨であるといえよう 本稿の課題は 本改正の概要及び本法律が成立に至る間になされた国会における議論等の過程のうち 地方独立行政法人法に関する部分を整理するとともに 地方自治体の行政運営に対する影響を検討することである 後者について 本改正は地方自治体の選択肢が増えるというものであるため このような選択肢を要しない地方自治体にとっては全く影響がないといっても過言ではない しかし 特定の選択肢に対して誘引が働くような制度設計がなされた場合 地方自治体にとっては 本来合理的と考えるものとは違う選択をすることとなりかねない このような影響も含めて検討を行う 次節以降では 本改正の概要と 本改正により地方独立行政法人の業務とすることができることとなった事務について どのような検討が加えられてきたのかについて 第 31 次地方制度調査会を含めて若干さかのぼって確認しておきたい 2. 本改正の概要と対象事務 まず 総務省資料などから本法律のうち 地方独立行政法人法に関する改正を簡単に整 理しておくと 1 地方独立行政法人の業務への窓口関連業務等の追加 2 地方独立行政法

133 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 人における適正な業務の確保 となる なお 施行期日は 2018 年 4 月 1 日であるが 2 の一部は 2020 年 4 月 1 日となっている 2については 2014 年度における国の独立行政法人制度改革を踏まえ 地方独立行政法人の業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項の業務方法書への記載の義務付け 監事の機能強化 業務の評価方法の見直し等所定の規定の整備を行うこととするというものである 2014 年度における国の独立行政法人制度改革とは 第 186 回国会において成立した 独立行政法人通則法の一部を改正する法律 独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律 に定められた内容を指す 具体的には 業務の特性を踏まえた法人の分類として 全法人を一律に規定していた制度を見直し その業務の特性に応じて中期目標管理法人 (3~5 年の目標管理 一定の自主性 自律的裁量 ) 国立研究開発法人( 中長期 ( 最大 7 年 ) の目標管理 研究開発成果の最大化を目的 ) 行政執行法人( 単年度管理 国との密接な連携 公務員身分 ) の3つの分類を設けて各法人をマネジメントする PDCAサイクルが機能する目標 評価の仕組みの構築として 主務大臣が評価に関与していなかった制度を改め 主務大臣を評価主体としながら第三者機関のチェックを受けるなど目標と評価の一貫性 実効性を向上させる 法人の内外から業務運営を改善する仕組みの導入として 監事の機能強化等による法人の内外から業務運営を改善し得るよう 法人内部のガバナンスを強化するほか 主務大臣による是正措置を整備する 以上の内容を備えた独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴い 関係法律 (229 法律 ) の規定を整備する という内容のものであった なお この改正の背景には 地方独立行政法人制度の改革に関する研究会 の報告において 不祥事例の発生の有無にかかわらず PDCAサイクルが機能する目標 評価制度の構築 法人内外からのガバナンス強化に関する各種改正事項は 地方独立行政法人制度においても必要との結論を得たこと があり これを具体化する改正事項が盛り込まれている (2) 本法律案提案時の要綱をみると 地方独立行政法人における業務の適正を確保するための体制の整備に関する事項の業務方法書への記載の義務付け 監事の機能強化 業務の (2) 長岡丈道 前田茂人 野呂允 (2017) 地方独立行政法人法の一部改正について ( 一 ) 地方自治 838 参照

134 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 評価方法の見直し等所要の規定を整備するものとすること とされているのみである 当該要綱において 多くの部分が割かれているのが1に関するものであり したがって 本法律において 地方独立行政法人法の主要な改正部分は1であると思われる この点について 本法律案提案時の要綱に沿って簡単に整理しておこう まず 地方独立行政法人の業務への市町村の申請等関係事務の処理業務の追加である 申請等処理事務とは 要綱によれば 市町村の長その他の執行機関に対する申請 届出 その他の行為 ( これを 申請等 とする ) について 受理 申請等に対する処分その他の申請等の処理に関する事務であって定型的なもの及びこれら一体的に処理することが効率的かつ効果的である事務であって定型的なもののうち法律の別表に掲げるものである この申請等処理事務を地方独立行政法人の業務に追加することにより 地方独立行政法人が当該市町村又は当該市町村の長その他の執行機関の名において処理することができるようにするというものである ( 第 21 条第 5 号 別表関係 ) 申請等処理事務及びこれに附帯する業務を行う地方独立行政法人は 定款により当該地方独立行政法人の処理する事務等を定めることとなっており 別表に掲げられた事務のうちどの事務を処理することになるかは 設立された地方独立行政法人により異なることになる ( 第 87 条の3 第 1 項関係 ) 設立された地方独立行政法人の役職員は 設立団体等の役職員とみなして処理する事務について適用がある法律並びに設立団体等の条例や規則の規定が適用されるものとなり 当該地方独立行政法人の処理した事務等は 設立団体等が処理したものとしての効力を有する ( 第 87 条の3 第 2 項 第 87 条の4 関係 ) このほか 手数料に関する規定や 年度目標に関する規定等が設けられている 次に1に関連して取り上げておくべき概要は 設立された地方独立行政法人が 設立団体以外の市町村の求めに応じて 当該市町村との協議により規約を定めた場合には その規約を定めた市町村の申請等関係事務のうち定款で定めたものを設立した団体と同様に処理することができるというものである ( 第 87 条の12 第 1 項関係 ) 地方独立行政法人法第 21 条関係の別表には 以下のような事務が列挙されている 別表 ( 第 21 条関係 ) 1 戸籍法 ( 昭和 22 年法律第 224 号 ) による戸籍若しくは除かれた戸籍の謄本若しく は抄本又は戸籍若しくは除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書の交付に関す

135 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - る事務であって総務省令で定めるもの 2 墓地 埋葬等に関する法律 ( 昭和 23 年法律第 48 号 ) による埋葬 火葬又は改葬の許可に関する事務であって総務省令で定めるもの 3 身体障害者福祉法 ( 昭和 24 年法律第 283 号 ) による身体障害者手帳の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 4 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 ( 昭和 25 年法律第 123 号 ) による精神障害者保健福祉手帳の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 5 地方税法 ( 昭和 25 年法律第 226 号 ) による証明書の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 6 狂犬病予防法 ( 昭和 25 年法律第 247 号 ) による犬の登録又は注射済票の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 7 道路運送車両法 ( 昭和 26 年法律第 185 号 ) による臨時運行の許可に関する事務であって総務省令で定めるもの 8 出入国管理及び難民認定法 ( 昭和 26 年政令第 319 号 ) による中長期在留者の住居地の届出又は外国人住民に係る住民票の記載等についての通知に関する事務であって総務省令で定めるもの 9 国民健康保険法 ( 昭和 33 年法律第 192 号 ) による保険給付の支給に関する事務 ( 当該支給を除く ) であって総務省令で定めるもの 10 国民年金法 ( 昭和 34 年法律第 141 号 ) による年金である給付若しくは一時金の支給又は保険料の免除若しくは納付に関する事務 ( 当該支給及び免除を除く ) であって総務省令で定めるもの 11 母子保健法 ( 昭和 40 年法律第 141 号 ) による妊娠の届出 母子健康手帳の交付 低体重児の届出又は養育医療の給付若しくは養育医療に要する費用の支給に関する事務 ( 当該給付及び支給を除く ) であって総務省令で定めるもの 12 住民基本台帳法 ( 昭和 42 年法律第 81 号 ) による住民基本台帳及び戸籍の附票に関する事務 ( 住民基本台帳及び戸籍の附票の作成を除く ) であって総務省令で定めるもの 13 児童手当法による児童手当又は特例給付の支給に関する事務であって総務省令で定めるもの 14 高齢者の医療の確保に関する法律 ( 昭和 57 年法律第 80 号 ) による後期高齢者医療給付の支給に関する事務 ( 当該支給を除く ) であって総務省令で定めるもの

136 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 15 日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法 ( 平成 3 年法律第 71 号 ) による特別永住許可 特別永住者証明書の交付又は特別永住者からの届出に関する事務であって総務省令で定めるもの 16 介護保険法 ( 平成 9 年法律第 123 号 ) による保険給付の支給に関する事務であって総務省令で定めるもの 17 電子署名等に係る地方公共団体情報システム機構の認証業務に関する法律 ( 平成 14 年法律第 153 号 ) による署名用電子証明書の発行 利用者証明用電子証明書の発行又はこれらが効力を失っていないことその他の事項の確認に関する事務であって総務省令で定めるもの 18 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律 ( 平成 25 年法律第 27 号 ) による個人番号の指定又は個人番号カードの交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 19 都道府県知事又は指定都市の長が作成する知的障害者福祉法 ( 昭和 35 年法律第 37 号 ) にいう知的障害者に関する情報を記載した手帳の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 20 市町村長が作成する印鑑に関する証明書の交付に関する事務であって総務省令で定めるもの 21 前各号に掲げるもののほか 政令で定める事務 22 前各号に掲げるもののほか 法律若しくはこれに基づく命令又はこれらに基づく条例の規定による申請等以外の申請等の受理 当該申請等に対する処分その他の当該申請等の処理に関する事務のうち 条例で定めるもの 23 前各号に掲げる事務に係る地方自治法第 227 条の規定による手数料の徴収 24 第 1 号から第 22 号までに掲げる事務に係る行政手続法による同法第 2 条第 3 号に規定する申請に対する同条第 2 号に規定する処分に関して行政庁が行うこととされている事務であって総務省令で定めるものまた 以下のような備考が付せられ 申請等関係事務に関する省令の制定や改正には当該大臣との協議が必要とされた 備考総務大臣は 次の各号に掲げる総務省令を定めようとするときは 当該各号に定める大臣に協議しなければならない これを変更しようとするときも 同様とする 1 第 1 号 第 8 号及び第 15 号の総務省令法務大臣

137 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 2 第 2 号から第 4 号まで 第 6 号 第 9 号から第 11 号まで 第 14 号 第 16 号及び第 19 号の総務省令厚生労働大臣 3 第 7 号の総務省令国土交通大臣 4 第 13 号及び第 18 号の総務省令内閣総理大臣 要綱における説明からも申請等関係事務は 定型的 であることが強調されている 以上のように別表に記載された事務が どのような経緯を経て 定型的 な申請等関係事務とされたのかについて さらに検討が必要なように思われる そこで 本法律の制定過程からはやや外れるが 窓口業務における民間委託の検討状況等について 次節で簡単に整理しておきたい 3. 窓口業務に関する検討の経緯 中央政府のみならず 地方自治体においてもさまざまな検討がなされてきているが 競争の導入による公共サービスの改革に関する法律 以降 それらの検討は活発になってきたものと思われる ここではまず 現状で民間事業者に委託することができるとされている業務範囲と 地方独立行政法人法との別表との関係を簡単に整理することから検討に入りたい まず 2015 年 6 月に内閣府公共サービス改革推進室が発出した 市町村の出張所 連絡所等における窓口業務に関する官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について から見ておこう これは 市町村の適切な管理のもと 市町村の判断に基づき官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に取り扱わせることが現行法上可能である窓口業務の範囲等についての関係省の見解が示されたもの で 窓口業務は 公証行為など市町村長の名前において実施する業務であり 市町村職員が自ら責任を持って行うべき業務が含まれる ため 現行法において民間事業者に取り扱わせることが可能である事実上の行為又は補助的業務に該当する業務について整理 されたものである また 留意事項として次の点が挙げられている

138 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - (1) 市町村の適切な管理 民間事業者に事務を取り扱わせる際には 市町村の適切な管理の確保に留意する 法律に基づく市町村長の判断行為 原簿 ( 住民基本台帳 戸籍簿 学齢簿 犬登録原簿等 ) の管理等 市町村職員が自ら責任を持って実施すべき業務は確実に行う 市町村職員が委託先職員に指揮命令して業務の処理を行わせたと認められる場合には契約形態にかかわらず労働者派遣にあたり 労働者派遣法に従わなければならない (2) 個人情報の保護個人情報保護条例の規定に受託した民間事業者及びその従業員を追加し 罰則規定の対象とするなどの整備を行う必要があるほか 当該業務の内容に応じた情報の取扱いの方法等を定めた実施要領の策定 業務内容に限定した端末へのアクセス制限など 個人情報保護に対する特段の配慮を行うこと (3) 公共サービス改革法の規定との関係公共サービス改革法第 34 条の規定に基づいて民間事業者が取り扱える業務の範囲は 従前のとおり 本人請求等の 受付 と当該請求にかかる証明書等の 引渡し の業務に限られること ここでは 対象業務として 住民異動届 住民票の写し等の交付 戸籍の附票の写しの交付 地方税法に基づく納税証明書の交付 戸籍の届出 戸籍謄抄本等の交付 中長期在留者に係る住居地の届出 特別永住許可等の申請 住居地等の届出及び特別永住許可証等の交付 転入 ( 転居 ) 者への転入学期日及び就学すべき小 中学校の通知 ( 教育委員会から市町村に事務委任されている場合 ) 埋葬 火葬許可 国民健康保険関係の各種届出書 申請書の受付及び被保険者証の交付 後期高齢者医療制度関係の各種届出書 申請書の受付及び被保険者証等の交付 介護保険関係の各種届出書 申請書の受付及び被保険者証等の交付 国民年金関係 ( 老齢福祉年金等 特別障害給付金も含む ) の各種届出書 申請書 請求書の受付 妊娠届の受付及び母子健康手帳の交付 飼い犬の登録 狂犬病予防注射済票の交付 児童手当の各種請求書 届出書の受付 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に基づく精神障害者保健福祉手帳の交付 ( 市町村の経由事務 ) 身体障害者福祉法に基づく身体障害者手帳の交付 ( 市町村の経由事務 ) 療育手帳の交付( 市町村の

139 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 経由事務 ) 自動車臨時運行許可であり それぞれの事項についてどのような業務が民間事業者による取り扱いが可能であるかが具体的に示されている 住民異動届を例にとると 住民異動届の受付に関する業務 ( 届出人の確認 届出書の記載事項 添付書類の確認 ) 住民票の記載に関する業務( 住民票の記載のみならず 電算化されている場合には 端末の入出力の操作を含む ) 転出証明書の作成に関する業務 ( 転出証明書の作成のみならず 電算化されている場合には 端末の入出力の操作を含む ) 転出証明書の引渡し業務 その他 事実上の行為又は補助的業務は 現行法体系でも民間委託が可能であるとされている しかし この間のプロセスには 自治体職員による審査 決定等が必要となり その点が民間委託のネックとされてきたと思われる 労働者派遣法との関係においても この審査 決定のプロセス等が課題とされている 本改正では 地方独立行政法人において 民間委託が可能とされたこれらの業務に関してどこまで公権力の領域に踏み込むことが認められるかが重要な論点となるが 別表を見ればわかるとおり この重要な論点は総務省令に委ねられているのである 次に 本改正が地方制度調査会の答申に基づき地方自治法とともに改正されることとなった経緯から 地方独立行政法人について 第 31 次地方制度調査会において どのように議論されてきたのかを端的に抜粋しておこう 例えば 第 25 回専門小委員会 (2015 年 10 月 23 日 ) において 清水涼子委員 ( 関西大学教授 ) は まず 地方独立行政法人が外部資源であるかどうかについて 連携中枢都市等が設立した地方独法に別の市が委託するのだったら外部委託 であるが そうでない場合もあるのではないかという違和感を指摘した上で 従来の仕組みである例えば一部事務組合のような仕組みではダメで地方独法の制度が要ることについて のメリットについて質している これに対して境勉行政課長は 窓口業務について現実に公権力の行使にわたる部分がどうしても民間委託の場合には対象にできない 偽装請負の指摘があって 何か個別に問題が起きた場合に市町村からその委託先への指示ができない などから 窓口業務のように公権力の行使にわたるものも含めた包括的な業務について 外部資源を活用する場面を考えた場合 地方独立行政法人の活用が選択肢の1つであると考えられるのではないかという形 であり 公権力の行使にわたらない部分についてはこれまでどおり民間委託という場合も当然考えられる が 窓口業務の包括委託みたいなものを考えると それでは解決ができないので 新たな仕組みとして 提案するものである旨の回答

140 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - があった (3) 清水委員はさらに 現状では地方独立行政法人でもできないことを制度改正しようとしており 組合や外郭団体でも難しいかとさらに踏み込んでいる これに対しては 地方独立行政法人の場合は地方公共団体が設立 特別行政主体という形 になるため 市町村の公権力の行使の業務を一括してお願いする場合にどのようなガバナンスのきき方であるとか どのような主体の公的な位置づけが必要なのかということを踏まえると 地方独立行政法人が選択肢 であるが 今の地方独立行政法人にそのまま事業を担わせることにはならないとしている さらに 特別行政主体としての地方独立行政法人へのガバナンスのきき方みたいなものはかなり公権力の行使にわたるものも含めた包括的な業務の委託の受け皿として十分それに耐えうるようなポテンシャルがあるのではないか として この制度改正により 受け皿となりうるという問題意識であることが回答されている こうしたやりとりに対して 長谷部恭男専門小委員会委員長 ( 早稲田大学教授 ) は どうしても必ずつくらなければいけないのかというと それはそうではないかもしれない が こういう選択肢もある ということで 制度として対応 させるという趣旨である旨補足があった さらに 小林裕彦委員 ( 弁護士 ) からは 偽装請負の問題等を考えると どうしてもこういう自治体のガバナンスがきくところ 自治体とほぼ一体みたいなところでやらざるを得ない と感じるが 偽装請負を 地方独法だったらクリアできるということに なるのかが質された それに対して 境行政課長は 今の地方独立行政法人の仕組みをそのまま使えば そういう問題が一切解決できるという問題意識 ではなく 今回の改正でそれを可能とする制度となるという問題意識である旨 回答された 太田委員からは 公権力の行使も含めた活動を包括的に引き受けられる人材請負会社 (3) これ以外にも 第 17 回専門小委員会において 飯島淳子委員 ( 東北大学教授 ) から窓口業務における地方独立行政法人の活用について 窓口行政については 特に町村レベルでは 住民との接触の機会も含め その重要性が認識されているということはないのだろうかという素朴な疑問 が呈され 太田匡彦委員 ( 東京大学教授 ) から窓口業務を行う地方独立行政法人について 設置するメリットのわかりにくさを指摘し そのメリットを人件費と考えた場合 町村部とか 中核市になると 実はそもそも公務員の給料ももう安くなってしまっており 民間に頼んだほうが必ず安上がりだということにもならないということはないだろうか としたうえで 何だかよくわからない独立行政法人が 1 個ふえて役人さんが喜んでいる というようなことにはならないようにしておく必要があるのではないか と指摘している 第 17 回専門小委員会における指摘等を受けて 文言修正等が行われ 本文に引用した第 25 回 第 26 回の議論を迎えている

141 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - か人材派遣会社を専門につくるほうがわかりやすい それを民間法人ではなくて地方独立行政法人という比較的地方公共団体が統制をきかせることのできる組織にしておく方がいいだろうという判断 であろうとした上で 一部事務組合や事務の代替執行でも可能ではないかとしながら みんなでつくった組合のガバナンスがうまくいかないときに みんなでつくった地方独立行政法人のガバナンスは何でうまくいくのだろうかというのは 話を聞いていてよくわからない なぜ地方独立行政法人だと解決される可能性が高まるのかという部分の論証はされていないのではないか と指摘している 池内比呂子委員 ( テノ. コーポレーション代表取締役 ) も 今の制度でそのままそれが使えるといったらわかる が 見直さないと使えないにもかかわらず ここに地方独立行政法人を書くことは大変疑問 であるとしている 長谷部委員長は この時点で さらにもう少し説得の材料を ということを事務局に求めている 辻琢也委員 ( 一橋大学教授 ) は 公権力の行使の部分も含めてなるべく民間でやっていくというのが最終目標の1つ としつつ 現行では どうしても公で担保しなければならない公権力の行使等の部分があって それを含めて一体的に業務を行うために地方独法を活用する ことになる旨を指摘しながら 今 議論されている地方独法は 原則 非公務員型 であり 普通の役場と同じ公務員からなる一部事務組合とは この点で異な るとの見解を示している また 共同設置や他市町村設置の地方独立行政法人と契約して業務を行えるようにすることができることなどにより 今よりは一段と効率性高く 住民サービスを提供できるように なるので ぜひここに書いて これを活用する方向で検討していただきたい としている これに対して 太田委員は 公務員と非公務員がある際に 非公務員型の地方独法のほうが それ故に何らかの理由によってガバナンスをきかせやすいということにはならないのではないか 論点のガバナンスがきちんときくのかどうかというのは そこに勤めている人が公務員か非公務員かには多分関係のない話 ではないかと思われるため そこを使って論証した気分にならないように と事務局に指摘している 辻委員からは ガバナンスの点では同じなのでこの独法を使って公権力の行使を含むサービスを提供できることに なるとしながら 勤務条件は公務員型と非公務員型で原則異な るため より一体的に効率的な運営ができる可能性が新たに提起される との期待が示された 第 26 回専門小委員会 (2015 年 11 月 9 日 ) では 事務局から図表 1のほか 追加説明がな

142 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図表 1 地方独立行政法人 指定法人 一部事務組合の比較 第 31 次地方制度調査会第 26 回専門小委員会参考資料より作成 されたが それについて委員による追加的な議論は行われなかったようである その結果 答申において窓口業務は 住民の権利義務に関する行政の事務処理の基礎となる事務が含まれるものであるが 市町村による強い関与が担保されていれば 市町村が直接執行する必要は必ずしもなく 効率的かつ効果的な行政サービスの提供が可能となる場合には 公権力の行使にわたるものを含めた包括的な業務について外部資源を活用して処理できるようにすることが必要である とされ 地方独立行政法人については 窓口業務のように 公権力の行使にわたるものを含めた包括的な業務について外部資源を活用する場合には 指定法人や一部事務組合等とは異なり 市町村が業務や組織に対して強く関与することができ かつ 具体的な業務執行は法人の自主性 自律性に委ねられ 迅速な意思決定や 業務のノウハウの蓄積 職員の専門性の確保 柔軟な人事運営等のメリットが期待できる地方独立行政法人の活用を制度上可能とすることも 選択肢の一つとして考えられる / 加えて 地方独立行政法人を地方公共団体が共同で活用することも考えられる 例えば 市町村間の広域連携が可能な地域においては 連携中枢都市等が設立した地方独立行政法人に 近隣市町村が特定の事務を処理させる方法も選択肢の一つとして考えられる

143 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - / また 市町村間の広域連携が困難な地域においては 地方公共団体が共同して設立した地方独立行政法人に 特定の事務を処理させる方法も選択肢の一つとして考えられる と記載されることとなった なお 地方独立行政法人については 総務省に 地方独立行政法人制度の改革に関する研究会 が設置されている (4) この研究会においては 国の独立行政法人改革を踏まえた対応 地方自治体からの要望について 人口減少問題に的確に対応する地方独立行政法人のあり方が主な論点として事務局から提示されており 地方制度調査会と並行して ここでも 地方独立行政法人をめぐる議論が行われていた 同研究会が2015 年 12 月に出した報告書では 窓口業務のように一連の事務フローの中に公権力の行使が含まれる業務について その一部を民間委託した場合 様々な課題が生じうる現状を踏まえれば 民間委託のほかに 公権力の行使にわたるものも含む包括的な業務について外部資源を活用して処理できるようにすることは有効であり 事務のノウハウの蓄積 職員の専門性の確保等を考慮すると これらの業務を包括的に地方独立行政法人に行わせることを制度上可能とすることは 地方公共団体が外部資源の活用を検討する上で効果的な選択肢の一つを提供するものと考えられる としている その際には 現行の地方独立行政法人制度を見直す必要性があり また 事務量の少ない小規模町村等でも活用できる手段として 地方公共団体が連携し 共同で地方独立行政法人にこれらの業務を行わせることができるようにする方策についても併せて考える必要がある としている 当該報告書第 3 章 人口減少問題に的確に対応する地方独立行政法人のあり方 の概略を示したのが 図表 2であるが 公権力の行使を含む包括的な処理を可能としながらそのために必要なガバナンスの強化を盛り込み 設立された地方独立行政法人に他の市町村が事務を処理させることを可能とするなど 新たな広域連携の手法に言及するなど本改正の趣旨に沿った検討の方向性が示されていると言えよう ただし 議事録等の公開が不十分で議事要旨も意見交換部分については第 5 回以降大幅に省略されたため 委員間の認識の差などについてうかがい知ることは難しい また 先述の内閣府公共サービス改革推進室が発出した 市町村の出張所 連絡所等における窓口業務に関する官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について をベースとして その別紙から民間委託可能な窓口業 (4) 第 1 回研究会は 2015 年 4 月 30 日実施 座長は 辻琢也一橋大学教授である

144 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図表 2 人口減少問題に的確に対応する地方独立行政法人のあり方 地方独立行政法人制度の改革に関する研究会報告書 ( 概要 ) より引用 務を示しながら 住民異動窓口 ( 転入届の受付かつ住民票の写しの交付 ) を例として業務フローにおけるどの部分が公権力の行使にあたるのかを明示しているが それ以外の事務については 具体的に業務フロー上 どこが公権力の行使となりそれゆえに民間委託が難しいのか等について具体的にどの程度検討されたのかが不明である (5) 以下において 国会での議論も確認するが ここまでにおいて 第 31 次地方制度調査会の専門小委員会において提起された論点について 地方自治体への選択肢の豊富化が最大の 説得の材料 となっているように思われる すなわち 業務のフローをまとめて地方 (5) 研究会の報告書においては 窓口関連業務等の民間委託における課題を解決するため 公権力の行使に係る事務について 一連の事務処理の過程から切り出すことなく 事実上の行為や補助的業務とともに包括的に地方独立行政法人に行わせることを前提として どのように地方独立行政法人に権限を付与することが適当か について 主として住民基本台帳制度において検討が行われている ( 報告書の参考資料に図表 3 が示されている ) しかしながら 他の事務についてそのフローのどこに公権力の行使が行われ そのことが民間委託に際してどのような課題になっているかという具体的な検討は経ていない可能性もあると思われる

145 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 図表 3 地方独立行政法人制度の改革に関する研究会報告書 ( 参考資料 ) より引用 独立行政法人により担うことができるようにしておいて それが 外部資源 と呼ぶべきものか 各業務における公権力の軽重はどうかという論点は この方式を採用するか否か また 採用したとしてどの業務を地方独立行政法人に担わせるかは自治体の判断に委ねることにより結論そのものを不要としたまま答申されているように思われるのである (6) さらに付け加えれば 本法律第 21 条の別表に掲げられた業務はすべて 総務省令で定めるもの とされていることから この詳細が明らかにならなければ 提示された選択肢がいかなるものか地方自治体にとっては判断が難しいのではないかと思われる 4. 本法律の成立過程と国会における議論 本法律案は 第 193 回国会に 地方自治法等の一部を改正する法律 として内閣により 提出されたものである 2017 年 3 月 10 日に衆議院において議案受理 同 5 月 10 日に衆議院 (6) 武藤博己は 今後の課題として 指定管理者と違い 地方独立行政法人はあまり普及していないため 地方独立行政法人の設立事務から始まる法的規制や具体的な運営方法について 改めて学習する必要がでてくる 点 自治体のコントロール ( 公権力の観点から ) と団体 ( 当該地方独立行政法人 ) の ( 外部資源の活用としての ) 自主性は相反する要素であり コントロールと自主性という観点からバランスのよい関係が求められる 点 非公務員型の地方独立行政法人であっても 給与や手当の面も含め公務員制度に準じていると思われることから 非常勤職員を多用する必要が生じる可能性があり 結果 偽装請負となる懸念等から採用しても財政面での効率化の可能性が低く そもそも 採用されない可能性が高いのではないかという点を掲げている ( 注 (1) 掲載の武藤 (2017) 参照 )

146 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 内閣委員会に付託 18 日に委員会で 23 日に本会議でそれぞれ可決している (7) 審議の舞台は参議院に移り 5 月 24 日参議院総務委員会に付託 6 月 1 日に委員会で 2 日に本会議でそれぞれ可決 成立している ( 公布日は6 月 9 日 法律番号 54) (8) 国会における成立の過程において これまでに析出されてきた論点に関わる議論を中心に検討を加えてみたい まず 地方独立行政法人が窓口業務を担うメリットについては 一部に公権力の行使を含み一括した委託が困難 小規模自治体では事務量が少なく委託先の確保が困難という民間委託の課題を克服しつつ 地方独立行政法人は 行政から独立した自主的 自律的な業務執行が可能 で 業務運営の効率化や住民サービスの向上が期待できるところ 具体的には 職員の勤務条件や給与などについても 地方公共団体の職員よりも柔軟に設定できる 例えば夜間 休日の窓口対応や繁閑期に応じた人員配置などが期待できるところ であって 継続的に窓口業務を担うことにより 窓口業務に係るノウハウの蓄積 専門性の確保が図られることもメリット としている (9) 民間委託と地方独立行政法人との違いは 公権力の行使に当たる部分を一体的に委託できるかどうかであると思われる (10) そもそも なぜ公権力の行使が地方独立行政法人において可能となるのであろうか これに対しては 地方独立行政法人は 組織 運営の根幹につきまして地方公共団体の関与が制度として担保されて いるため 地方公共団体の責任において組織 運営の適正を確保することが常に可能であ り 地方独立行政法人が行うことができる窓口業務を 定型的な業務として法律の別表に掲げたものに限定 (7) 賛成会派は 自由民主党 無所属の会 公明党 日本維新の会 反対会派は 民進党 無所属クラブ 日本共産党であった なお 本稿における会派名 政党名はすべて当時のものである (8) 賛成会派は 自由民主党 こころ 公明党 日本維新の会 無所属クラブ 反対会派は 民進党 新緑風会 日本共産党 希望の会 ( 自由 社民 ) 沖縄の風であった (9) 衆議院総務委員会第 18 回 (2017 年 5 月 16 日 ) における輿水恵一委員 ( 公明党 ) に対する原田憲治総務副大臣の答弁 このほか 衆議院総務委員会第 20 号 (2017 年 5 月 18 日 ) における梅村さえこ委員 ( 日本共産党 ) の質問に対して安田充政府参考人 ( 総務省自治行政局長 ) が 地方独立行政法人は 行政から独立いたしました自主的 自律的な業務執行が可能 であることから 業務運営の効率化 住民サービスの向上といったものが期待できるのではないか としたうえで 具体的には 職員の勤務条件や給与などにつきましても 地方公共団体の職員よりも柔軟に設定ができ 例えば 夜間 休日の窓口対応でございますとか 繁閑期に応じた人員配置などが期待できる 旨の答弁をしている (10) この点は 参議院総務委員会第 15 回 (2017 年 5 月 30 日 ) において江崎孝委員 ( 民進党 ) が指摘している

147 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - して かつ 市町村の強い関与のもとに業務を行う という制度設計により 公権力の行使に当たるものを含めた市町村の窓口業務を 一括して地方独立行政法人に取り扱わせることができる と判断している (11) 次に限定された 定型的な業務 の内容が論点となろう 定型的な業務とは 客観的 外形的に一定の手順で処理が可能なもの 内容について裁量性の判断の余地が小さいもの を指すとされた (12) このとき この点を質した吉川沙織氏は 定型的なものまで政省令に委任してしまうということ は 立法府の立場からして いかがなものか としながら 例えば 何とでもなる解釈を付けておけば実質的な制約はなくなり 国会ではいかようにも解釈できる答弁で 法律が国会を通過した後 全て行政府にお任せくださいというのは余り好ましいことではない との指摘を行っている この指摘は非常に重要であると思われる というのは 先ほど挙げた内閣府公共サービス推進室の発出した文書は 民間事業者に委託することが可能な業務の範囲 を示したものであるが 具体的な業務を示す際の記述において多くはただし書きを付している すなわち そこで民間事業者の取扱いを認めない業務や認めるにあたって必要な対策等が記されている 本来 これら全てについて地方独立行政法人に委ねる場合には不要となるのか否か等についての慎重な検討が求められると思われる 現段階で総務省令の詳細は不明であるが 民間委託の際と同様に一連の業務フローにおいて政令により地方独立行政法人の業務から一部除かれるものと 民間委託では除外されていたが地方独立行政法人には委託可能な業務とされるものとに省令の規定に差異を生じた場合 別表に掲げた業務の公権力が一定のものではなく 法律成立後にその軽重が判断されたことになる 地方自治体の立場では 前者のように結局は一連の業務フローを委託できないとすれば 当該業務につ (11) 衆議院総務委員会第 18 回における梅村さえこ委員に対する安田充政府参考人の答弁 同様の質問は吉川元委員 ( 社会民主党 ) からも行われそこでは 公権力の行使が非公務員型の独立行政法人においても可能となる理由が質されている (12) 参議院総務委員会第 15 回における吉川沙織委員 ( 民進党 ) に対する安田政府参考人の答弁 このほか 衆議院総務委員会第 18 回において梅村さえこ委員は 定型的な業務だから可能になるということだったが 逆に 今回該当しないとされるのはどんな業務なのか について質し 安田政府参考人から 法律の段階において 例えば 生活実態の確認が必要となる生活保護の受給申請の受理 人の身分関係を創設し あるいは判例 法規等の専門的知見の理解が必要である戸籍の届け出の受理 等を除外しており また 別表に掲げたものであっても 例えば 住民基本台帳に関する事務について その者の居住実態も含めて住所について調査を行って職権により記載する事務 については除外している旨の答弁を得ている

148 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - いては選択肢として後退することとなるであろう (13) 多くが総務省令に委ねられているうえ 他の法律とまとめての改正ということで詳細な議論は困難であった 個別業務について 戸籍業務や住民基本台帳に係る業務 妊娠の届出 母子健康手帳の交付等が議論の対象となったが公権力の範囲等についての論点に接近するような議論とはならなかったと思われる 衆議院 (5 月 17 日 ) 参議院(5 月 30 日 ) それぞれで 参考人質疑が行われたが 招致された7 人の参考人のうち 今村都南雄参考人 ( 中央大学名誉教授 ) 福島功参考人( 日本自治体労働組合総連合副中央執行委員長 ) 中山徹参考人( 奈良女子大学教授 ) については 主として地方独立行政法人法の改正に焦点を当てて冒頭の陳述を行った (14) 地方自治法等の一部を改正する法律案 における参考人が 等 にあたる地方独立行政法人法の改正に焦点を当てて陳述したことからも 本改正への注目の高さがうかがえる 今村参考人は 地方独立行政法人の定義を定めた地方独立行政法人法第 2 条 この法律において 地方独立行政法人 とは 住民の生活 地域社会及び地域経済の安定等の公共上の見地からその地域において確実に実施されることが必要な事務及び事業であって 地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもののうち 民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものと地方公共団体が認めるものを効率的かつ効果的に行わせることを目的として この法律の定めるところにより地方公共団体が設立する法人をいう が 今回改正されないことを受け ここを改正しないまま窓口関連業務等を地方独立行政法人の業務とした場合 これらの業務は 第 2 条のいう 地方公共団体が自ら主体となって直接に実施する必要のないもの に含まれると指摘している 一方 国会における議論 ( 政府答弁 ) などをみると 第 2 条の規定のうちむしろ 民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるもの の部分が強調されている しかし 公権力の行使の部分も含めてなるべく民間でやっていくというのが最終目標の1つ ( 辻琢也氏 ) であるとすれば 地方独立行政法人が担うべき窓口業務は相当に限定される必要があるように思われるし 本改正を機に 民間の主体にゆだねた場 (13) このほか 同氏は本稿で中心的に取り上げている地方制度調査会の答申を踏まえた改正部分と 2014 年の地方独立行政通則法改正の地方独立行政法人への適用とが同時に提案されていることにも批判を加えている (14) 今村参考人 福島参考人は衆議院 中山参考人は参議院において招致された このほか 衆議院においては 太田昇参考人 ( 岡山県真庭市長 ) が 参議院においては 江藤俊昭参考人 ( 山梨学院大学教授 ) 阿部泰隆参考人 ( 神戸大学名誉教授 ) 森雅志参考人 ( 富山市長 ) がそれぞれ招致された 太田参考人 森参考人は 地方独立行政法人に言及し 選択肢の増加を歓迎する趣旨の陳述を行った

149 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 合には必ずしも実施されないおそれがあるもの の部分は削除ないしは修正した方が 論理的であったように思われる 今村参考人が指摘したもうひとつの点は 自治体の窓口業務は 定型的な申請事務処理であっても 申し上げたアウトリーチの必要性を察知するアンテナ機能 これが殊のほか重要 であるという点である この点 相談窓口を一元化し 積極的なアウトリーチを展開するという事例もあるが 小規模町村等においては 一見定型的な申請であってもその背景により深刻なニーズが潜んでいることを察知しやすい環境にあると言えるが それを 中枢的な都市自治体が設置した地方独立行政法人に委ねた場合に 今村氏のいう アンテナ の感度が鈍る可能性があると思われる 福島参考人は 地方独立行政法人の業務に申請等関係事務を追加することは 窓口業務の行政サービス水準を低下させ 地方自治体の業務の集約そして統廃合を促進して地方自治体を空洞化させることにつながるものと考えており 反対 との立場であった 窓口業務を地方独立行政法人に委託することは 第 1に 窓口業務を地方自治体の業務から切り離すことによって 住民の基本的人権を守る自治体の機能が損なわれる 第 2 に 住民の個人情報の管理や不正な請求などに対して 適正な対応ができなくなる 恐れがある 第 3に 複数の市町村の窓口業務を一括して地方独立行政法人に委託するようにすることで 地方自治体の業務の集約 統廃合を加速させることにつながる という点で重大な問題があると指摘している (15) 第 2の点に関連して ある自治体において 配偶者の税も一緒に納めたいため納税通知書の送付先を確認したい旨の申し入れに対して応じたところ 夫婦間にはドメスティックバイオレンスがあり 本来は それを別のシステムで確認すべきであったのだがそれを怠るという事件があった 当該自治体においては すぐにミスに気づき 早急な一時避難とともに転居費等の負担をすることでDV 被害に見舞われることは避けられたが このようなミスが地方独立行政法人と自治体との連携を要した場合にスピード感等に影響しないかという懸念は残るのではないかと思われる 中山参考人は 窓口業務というのは市民と行政の接点部分 であり 市民にとっては非常に重要なところ であることから これを行政から切り離して地方独立行政法人が担えるようにするというのには 市民にとっての問題と地域にとっての問題があるとの主張である (15) 福島参考人の主張については 注 (1) に挙げた福島 (2017) も参照のこと

150 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 前者は 窓口業務というのは 市民を市民にとって必要な施策につなげていける端緒 であると考えられるが 行政職員が担う業務と法人職員が担う業務が分断されてしまいますと それが困難になりはしないかと いう危惧があり 後者は 地方独立行政法人が窓口業務を処理できるようにする その大きな理由はコストの削減ということが目的ではないか と思われ 削減した経費を新たな開発や公共事業予算に充てようとしているのではないか という懸念があるという 後者について 筆者は 非公務員型で地方独立行政法人を立ち上げるにしてもある程度の初期投資が必要になると思われ むしろ 地方独立行政法人の設立そのものが中山氏のいう 新たな開発予算 につながる可能性もあるのではないかと考える 参考人 3 者に共通しているのは 今村氏のいう アウトリーチのアンテナ 機能であると思われる 本法律に対しては 衆参両院で附帯決議が可決されている 地方独立行政法人に関するもののみをここで取り上げると 衆議院では 窓口関連業務には住民に関する各種行政の基礎となる事務が含まれていることに鑑み 当該業務を担う申請等関係事務処理法人における業務の取扱いに当たって 個人情報の保護が十分に図られるよう 各地方公共団体に対して適切な助言を行うこと 地方独立行政法人の業務運営に関して 本法に則った適正な対応が確保されるよう注視し 国の独立行政法人改革の動向を踏まえつつ 必要に応じて適切な助言を行うこと が 参議院では 申請等関係事務の処理及びこれに附帯する業務を担う地方独立行政法人の設立に当たっては 地方公共団体の自主性を最大限尊重すること である (16) 5. 地方自治体への影響その他 ( 小括に代えて ) 以上から 本法律において地方独立行政法人の窓口関連業務に関しては 地方制度調査 会等における議論をみても 国会審議をみても地方における選択肢を整備したにすぎない (16) 衆議院における提出者は 葉梨康弘氏外 2 名 ( 自由民主党 無所属の会 民進党 無所属クラブ及び公明党の共同提案 趣旨説明は輿水恵一氏 ) 参議院における提出者代表は江崎孝氏である ( 自由民主党 こころ 民進党 新緑風会 公明党及び日本維新の会の各派共同提案 )

151 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ことが強調されている (17) 選択肢の豊富化そのものは 太田参考人や森参考人のように地方自治体の首長として歓迎する考え方もあれば 前節において呈された アウトリーチのアンテナ機能 の劣化を懸念する考え方もあり得ると思われる また 辻委員が述べたように 将来的には公権力の行使を含む部分も含めて民間委託を目指す動きの一環として 今回の地方独立行政法人への委託が規定されたのだとすれば 現状においてコストをかけてそのような地方独立行政法人を新たに設置する自治体は少ないのではないかとも思われる この意味において 今回の地方独立行政法人法等の改正については 地方自治体の行財政運営に全く影響がないともいえる すなわち 従来通りの窓口関連業務を継続するならば 選択肢の増加に大きな意味を見いだす必要がないのである ただし これは 地方自治体の側に自由な選択が担保されている場合に限られる 逆にいえば 国が特定の選択肢に 誘導 するようなことがあるかどうかが 本改正の地方行財政に対する影響を規定するといっても過言ではないと思われる 本来 誘導 ではないのだが それによるアナウンス効果が無視できないのが地方交付税算定との関係である たとえば 2013 年度に実施された 地方公務員給与の臨時特例 である これは 東日本大震災後の復興財源確保のため国家公務員給与を7.8% 削減したことを受け 地方公務員給与についても同様の措置を取るように 要請 され その後の地方交付税算定にも反映されたというものである (18) ほとんどの自治体においてこの 要請 は受け入れられ 一時的とはいえ 地方公務員の給与は削減されることとなった 近年では いうまでもなく地方交付税算定におけるトップランナー方式も大きなアナウンス効果を持っている トップランナー方式とは 歳出の効率化を推進する観点から 民間委託等の業務改善を実施している地方団体の経費水準を地方交付税の基準財政需要額 (17) たとえば 安田政府参考人は あくまでこれは選択肢の一つでございまして 具体的にこの制度を活用するかどうかは各市町村が判断すべきものと考えているところでございます ( 衆議院総務委員会第 18 号 ) 窓口業務を行う地方独立行政法人の設立あるいは活用を強制するものではございませんで 外部資源活用の新たな選択肢としてこれを設けるものでございます すなわち 窓口業務を地方独立行政法人に行わせるかどうか 行わせる場合にどの業務を行わせるか等を含めまして 各地方公共団体において地域の実情に応じて適切に判断されるべきものと考えている次第でございます ( 参議院総務委員会第 15 号 ) と答弁するなどしている (18) 詳細については 飛田博史 (2013) 地方公務員給与削減の地方交付税算定への影響について 自治総研 通巻 416 号 角本健吾 (2013) 地方公務員給与に係る地方交付税算定について 自治総研 通巻 421 号を参照されたい

152 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - の算定に反映する ものである (19) 対象業務は 地方行政サービス改革に係る調査によって把握することとしている地方団体の業務改革のうち 単位費用に計上されている全ての業務 (23 業務 ) であり 2016 年度からは 学校用務員事務 道路維持補修 清掃等 本庁舎清掃 本庁舎夜間警備 受付 案内 電話交換 公用車運転 一般ごみ収集 学校給食 ( 調理 ) 学校給食( 運搬 ) 体育館管理 競技場管理 プール管理 公園管理 庶務業務の集約化 情報システムの運用において導入され 2017 年度からは 青少年教育施設管理 公立大学運営において導入されている この間 当初検討された図書館管理 博物館管理 公民館管理 児童館 児童遊園管理はその検討から落とされ 現在 唯一検討中の業務として残されているのが窓口業務である 国会審議においても トップランナー方式との関連について言及されている たとえば 森本真治委員 ( 民進党 ) は 窓口業務へのトップランナー方式の導入について検討中であるかどうか質したところ黒田武一郎政府委員 ( 総務省自治財政局長 ) は 窓口業務について その業務改革の進捗状況等を踏まえまして引き続き検討を行って判断したい との答弁であった (20) また この場でも高市早苗総務大臣からは あくまでも地方自治体の判断であり その最適な方法を各地方自治体の実情に応じて選ぶということを強調している (21) トップランナー方式を導入しようとする際には 少なくとも これまでの業務における直営と民間委託のようにコストが比較できる必要がある ということは 法律の施行後に実際に窓口業務等を行う地方独立行政法人が設立され その地方独立行政法人における運営コストが直営によるもの 現行制度で可能な事務フローの一部における民間委託と比較して効率的であるとされてはじめて トップランナー となるのである したがって 少なくとも地方独立行政法人化を対象としたトップランナー方式の導入には 相当程度の年数が必要となるはずである さらに 本稿においても一部言及しているが 地方独立行政法人を窓口業務に導入するための準備にも相当の期間を要するのではないかと思われる 公務員型で導入する場合では 新たに地方独立行政法人職員の採用等が必要となると思われるし 非公務員型であっても 運営を委託する業者の選定 契約等が必要となるであろう さらに 効率的な運営のため地方独立行政法人が担う窓口業務をワ (19) 総務省ウェブサイト トップランナー方式の推進について 参照 (20) 参議院総務委員会第 16 号 (2017 年 6 月 1 日 ) (21) これに先立ち森本委員は 一方で地方自治体の判断としつつ 他方でアウトソーシングを積極的に推進するのは矛盾しているのではないかという旨の質問があった

153 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ンストップ化しようとすると庁舎の増改築等にも発展する可能性も考えるであろう 現時点では 地方独立行政法人の導入による効果が不透明であるにもかかわらず このような負担が想定される事業について 独自の判断を委ねられた地方自治体が積極的に選択する可能性は低いのではないかと思われる ところで 2017 年 11 月 16 日の経済財政諮問会議では民間委員である伊東元重 榊原定征 高橋進 新浪剛史の各氏から 地方行財政改革の推進について と題した資料が提出されている そこには 国が本年から推進している 行政手続きコスト2 割削減 と歩調を合わせ 来年度から 窓口業務 をトップランナー方式の対象とすべき との記載が見受けられる 同日は 野田聖子委員 ( 総務大臣 ) から 地方財政について 落ち着いて やさしく 持続可能な社会の実現に向けて が提出されている そこでは トップランナー方式への言及もあり 窓口業務については 現在 民間委託の実施率が17.3% であり 総務省として民間委託等を行うための環境整備に取り組んでいる段階であることから 今後の民間委託の進捗状況等を踏まえて引き続き導入を検討 としている また 民間委託 クラウド化等の業務改革の推進 として 窓口業務の民間委託のための標準委託仕様書を年度内に完成させ 平成 30 年度から全国展開 窓口業務に地方独立行政法人を活用できるよう 法律を改正 などという記載が見受けられる 民間委員の主張する来年度 (2018 年度 ) からの導入は 標準委託仕様書を用いた民間委託であれ 地方独立行政法人の活用であれ対象となる トップランナー 不在のままで導入することとなり非現実的ではないかと思われる 年度内に完成する標準委託仕様書を用いて基準財政需要額の算定を義務付けることは可能であると思われるが それが トップランナー である根拠は薄弱であると思われる 少なくとも これらをトップランナー方式と称して導入しても基準財政需要額の算定額が変化するだけで窓口業務をあわてて変更することは物理的に不可能であるため その意味での影響は すでに大半において指定管理者制度が導入済であった青少年教育施設管理や 大半において地方独立行政法人化が進んでいる公立大学運営に対してトップランナー方式が導入された2017 年度と行政運営における影響という意味では変わらないと思われる 将来的には 地方独立行政法人の活用に際して初期投資にあたるコストに対しての財政措置が設けられ それによって設立された地方独立行政法人が現れた後 そこでの運営コストが明らかになった段階で地方独立行政法人化を前提としたトップランナー方式が導入される可能性が高いと思われる

154 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - その際に必要なことは 各地方自治体がトップランナー方式の導入というアナウンス効果に惑わされず 当該自治体の住民にとってどのような方式で窓口業務を提供することが望ましいかを主体的に選択することである ( そのだしげき公益財団法人地方自治総合研究所研究員 )

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156 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 5 月 17 日法律 29 号 ) 上林陽治 はじめに 地方自治体で働く非正規公務員の採用根拠を明確にし 期末手当 ( 賞与 ) を支払えるようにすると喧伝されている地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律 ( 以下 地公法自治法改正法 という) は 2017 年 5 月 11 日 衆議院本会議で可決 成立し ( 参議院先議で 4 月 14 日に参議院本会議で可決 ) 5 月 17 日に法律 29 号として公布された 2020 年 4 月 1 日に施行する 地方公務員法 ( 以下 地公法 という ) 改正のポイントは 同じ非正規の事務職員でも 臨時職員 特別職非常勤職員 一般職非常勤職員 というように自治体ごとにまちまちで 制度の趣旨に合わない不適正な採用実態であったものを 会計年度任用職員 という採用類型を新設し これに統一するというものである そして地方自治法 ( 以下 自治法 という) 改正では 会計年度任用職員に期末手当を支払えるとした 2017 年 3 月 28 日に政府の働き方改革実現会議が決定した 働き方改革実行計画 においても ( 地方公務員の 筆者 ) 非常勤職員制度を整備し 任用 服務の適正化と期末手当を支給可能とすることを一体的に進めるため所要の法改正を図 り 各地方公共団体における適正な任用 勤務条件の確保を推進する との記述が挿入されており 地公法自治法改正法により 地方自治体で働く臨時 非常勤職員の処遇改善が進展するとのイメージが示されている 以下 本稿では 法改正に至るまでの経過を辿り 地公法自治法改正法の内容を批判的

157 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - に検討することとする (1) 1. 進展する官製ワーキングプア ~ とまらない非正規化 拡大する格差 (1) 政府方針としての 同一労働同一賃金 第 190 回通常国会における施政方針演説 (2016 年 1 月 22 日 ) のなかで 安倍総理は 一億総活躍 への挑戦を始める と宣言 そのため 非正規雇用の皆さんの均衡待遇の確保に取り組みます ( 中略 ) 更に 本年取りまとめる ニッポン一億総活躍プラン では 同一労働同一賃金の実現に踏み込む と発言した (2) また 2016 年 2 月 23 日に開催された第 5 回一億総活躍国民会議でも 安倍総理は 我が国の雇用慣行には十分に留意しつつ 同時に躊躇なく法改正の準備を進めます あわせて どのような賃金差が正当でないと認められるかについては 政府としても 早期にガイドラインを制定し 事例を示してまいります とし このため 法律家などからなる専門的検討の場を立ち上げ 欧州での法律の運用実態の把握等を進め ることを指示した (3) そして 3 月 23 日 厚生労働省において 同一労働同一賃金の実現に向けた検討会 ( 座長 : 柳川範之 東京大学大学院経済学研究科教授 ) が開催されることとなった それと前後して 国会では同一労働同一賃金をめぐる質疑が頻繁に行われるが そのなかで公務員における正規 非正規間格差も取り上げられる (1) 同法の批判的検討並びに非正規公務員の現状等の分析に関しては 以下の拙稿を参照のこと 拙稿 欺瞞の地方公務員法 地方自治法改正 ( 上 )~ 総務省 地方公務員の臨時 非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会報告書 ( 平成 28 年 12 月 27 日 ) 読解 ~ 自治総研 43(5) 2017 年 5 月 拙稿 欺瞞の地方公務員法 地方自治法改正 ( 下 )~ 官製ワーキングプアの法定化 ~ 自治総研 43(7) 2017 年 7 月 拙稿 地公法 自治法改正と非正規公務員 : 日独英韓の公共部門の非正規化状況 ( 特集公務労働をめぐる最近の動向 ) 季刊労働法 (258)2017 年 拙稿 官製ワーキングプアの法定化 :2017 地公法 自治法改正の意味 ( 特集地方公務員法 地方自治法改正について : 自治体の臨時 非常勤職員問題を考える ) 労働法律旬報 (1891)2017 年 7 月 (2) 第 190 回国会衆議院会議録 6 号 官報号外 ( 平成 28 年 1 月 22 日 ) 3 頁以下 (3) 第 5 回一億総活躍国民会議 (2016 年 2 月 23 日 ) 議事要旨 21 頁以下 年 5 月 23 日閲覧

158 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - たとえば 2 月 26 日の衆議院総務委員会で 吉川元 ( 社民党 ) が 地方自治体における非正規職員の処遇改善も待ったなしだと思いますが この点 いかがお考えでしょうか と質問したのに対し 安倍総理は 今後の取り組み状況を見きわめ 適切な時期に実態について調査を実施して 取り組みの進捗状況についてフォローアップを行いながら 臨時 非常勤職員の必要な処遇の確保に取り組んでまいりたい (4) と回答 また3 月 23 日の参議院総務委員会では 江崎孝 ( 民進党 ) が 地方自治体の非正規公務員と同一労働同一賃金について質問したのに対し 安倍総理は 政府としては 地方公共団体の臨時 非常勤職員の処遇について パートタイム労働法の趣旨に言及しながら 常勤の職員の給与と同様に職務の内容と責任に応じて適切に決定されるべきものであるとの助言を行っている 今後 各地方公共団体の取組状況を見極めながら 適切な時期に実態について調査を実施し 取組の進捗状況についてフォローアップを行いながら臨時 非常勤職員の必要な処遇の確保に取り組んでまいりたい と回答した (5) このような立法府における質疑を経て 政府の 公約 として 国と地方の臨時 非常勤職員に関する実態調査が実施されることになった (2) 地方公務員の臨時 非常勤職員に関する実態調査結果 (2016 年 4 月 1 日 ) 総務省は 2017 年 3 月 31 日 地方公務員の臨時 非常勤職員に関する実態調査結果 ( 現在 ) ( 以下 2016 総務省調査 という ) を発表した (6) この調査で明らかになったことは 概要 1 全国の非正規公務員は64 万 3,131 人で このうちフルタイム勤務の臨時職員は15 万 2,670 人であり 4 分の1を占める2 非正規公務員の4 人中 3 人にあたる48 万 1,596 人は女性である3 継続雇用年数 ( 期間更新回数 ) が一定数に達していることのみを捉えて 一律に応募制限を設ける自治体が1 割ある4 任期の更新にあたり 雇用されていない期間 ( 空白期間 ) を置く自治体は 臨時職員の場合 約半数である5 臨時職員の報酬水準は時給換算で845 円 1 日 8 時間 月 20 日 12 月を休みなく働いても 年収で162 万円にしかならない というものであった (4) 第 190 回国会衆議院総務委員会議録第 5 号 ( 平成 28 年 2 月 26 日 ) 29 頁 (5) 第 190 回国会参議院総務委員会会議録第 6 号 ( 平成 28 年 3 月 23 日 ) 18 頁 (6) 詳細は

159 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 2. 総務省 地方公務員の臨時 非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会 報告 総務省は 2016 年 7 月 26 日 地方公務員の臨時 非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会 ( 座長 : 高橋滋 法政大学大学院教授 以下 総務省研究会 という ) を発足した 設置の目的は 上述の2016 総務省調査を踏まえて 1 臨時 非常勤職員の任用の在り方 2 任期付職員任用の在り方 3その他 研究会が定めるものを調査 研究するというものだった ただし 研究会の議論は 主に1 臨時 非常勤職員の任用や職の在り方をどうするかに集中した (1) 一般職非常勤への統一と 給料と手当の支給総務省研究会報告の最大の特徴は 非正規公務員の勤務条件の見直し 整備に関して 2009 年と2014 年に 総務省から地方に 技術的助言 がなされてきたものの 地方公共団体における取り組み状況は芳しくないものであったことに鑑み 小規模市町村を含め全ての地方公共団体において適正な確保が図られるよう 可能な限り立法的な対応を目指し検討されることを期待する ( 下線 筆者 ) ことがうたわれたことである 報告では 大きく2つのことが提言されている 第 1に 地公法改正に関わることで 地方公共団体によっては 制度の趣旨に沿わない任用が行われていることから 特別職非常勤職員及び臨時的任用職員の任用についてその採用要件の厳格化等を行い あわせて 一般職非常勤職員制度について労働者性が高い者を類型化した上で 必要な任用上の取扱い 服務規律 人事評価制度等を適用するとともに 給料 手当や休暇 休業 研修などの必要な勤務条件等を確保するための新たな仕組みを設けるべきとしたことである 第 2に 自治法改正に関わることで 労働者性が高いと類型される非正規公務員については 新たな一般職非常勤職員とし 常勤職員と同様に給料および手当の支給対象とするよう給付体系を見直すべきとしたことである 具体的な法制度設計は所管の総務省に委ねられたものの 要するに これまでまちまちであった非正規公務員の任用の種類について 1 特別職非常勤職員については

160 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 専門性の高い者等に任用の対象を限定することについて立法的な対応を検討 2 臨時的任用の要件について 国の臨時的任用に準じて 常勤に欠員を生じた場合などのように 厳格な制限を徹底すべきであり 立法的な対応を検討する 3 一般職非常勤職員制度について 募集 採用 任用等 服務 懲戒等に新たな仕組みを整備し 労働者性ある非正規公務員についてこの新たな一般職非常勤職員による任用に統一する 4そして 新たな一般職非常勤職員については 常勤職員と同様に 給料 手当の支給対象とするというものであった < 図表 1> 総務省研究会提言ポイントの概要 労働者性とは 労働基準法 9 条では 事業所に使用されて賃金を支払われる者 と規定している また1985 年の労働基準法研究会報告では 労働者の判断基準について 使用される= 指揮監督下の労働 という労務提供の形態をしている人及び 賃金支払 という報酬の労務に対償性がある人 これを労働者という としている いずれにせよ 労働者か否かは 勤務時間の長短 有期無期かに関わりがない (2) 支給すべき手当総務省研究会報告書では 新たな一般職非常勤職員に支給すべき手当として 最低でも 次の手当を支給すべきとしている 時間外勤務手当 正規の勤務時間を超えて勤務する ( 週休日を含む ) ことを命じられた場合には その超えた時間に対して 労働基準法で定める基準を下回らない額を適切に支給すべきである 通勤手当 については その費用弁償的性格を踏まえ 適切に支給すべきである 退職手当 については 現行の支給要件を満たす場合には 適切に支給すべきである 期末手当 については 相当長期(6 月以上を想定 ) にわたって勤務する者に対し支給することを検討すべきである

161 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 時間外勤務手当を支給する ことをわざわざ指摘したが 地方公共団体では 非正規公務員への時間外手当支給に係る条例 規則が制度化されておらず また不支給の実態があるからである 通勤手当に関しては 働き方改革のプログラムのなかでも 通勤手当を支払わないのは不合理な格差に該当するとしていた 退職手当は 退職手当条例通り支給すべきことがうたわれている 要件を満たしているのに不払いであれば 過失違法性が生じて損害賠償の対象になる 常勤の臨時職員は全国に15 万人強いることを2016 総務省調査は明らかにしているが これら常勤の臨時職員に関しては 総務省の退職手当条例準則通りの条例を制定していれば 勤務期間 6 月を超えた時点で 退職手当請求権が発生している たとえば40 都道府県の県費の臨時教員には 毎年 退職手当が支給されているが これは職員退職手当条例準則 2 条に 常時勤務に服することを要するものが退職した場合には その者に支給する とし 常勤の臨時教員には当然支払われるからである また同条 2 項には 職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18 日以上ある月が引き続いて12 月を超えるに至つた者で その超えるに至つた日以後引き続き当該勤務時間により勤務することとされているもの いわゆる常勤的非常勤職員にも退職手当を支払うとしている ところが全国の地方公共団体では 退職手当条例通りには 常勤の臨時職員や常勤的非常勤職員に退職手当が支給されていない実態が蔓延している 期末手当に関しては 総務省研究会報告では 相当長期 (6 月以上を想定 ) にわたって勤務する者に対し期末手当の支給を検討すべきであるとしている このように報告書のなかで触れたのは 人事院が 2008 年 8 月に各府省に対し 相当長期にわたって勤務する非常勤職員に対しては 期末手当に相当する給与を 勤務期間等を考 (7) 慮の上支給するよう努めること とする通知を出し 各府省ともこの通知に準じて 6 月以上勤務の非常勤職員に期末手当を支給しているからである なお これ以外の手当については 要検討とした (3) 給与水準の設定 給与水準については 同一人が同一の職種の職に再度任用される場合であっても (7) 給実甲第 1064 号 平成 20 年 8 月 26 日 人事院事務総長 一般職の職員の給与に関する法律第 22 条第 2 項の非常勤職員に対する給与について ( 通知 )

162 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 職務内容や責任の度合い等が変更される場合には 異なる職への任用であることから 給料額を変更することはあり得るとした たとえば 一定の勤務経験や実績等のある一般職非常勤職員の保育士について クラス担任など より責任の度合いが高い職に新たに任用する場合 地公法 24 条に定める職務給の原則などを考慮して給料額を変更することはあり得るとしたものである (4) その他の勤務条件等休暇については労働基準法に定める年次有給休暇 産前産後休暇 育児時間 生理休暇を制度的に設けるとともに 国の非常勤職員との権衡の観点から必要な休暇制度を整備する必要があるとした また 整備されていない地方公共団体が一定程度存在することから 各地方公共団体において 確実に休暇制度の整備を行うべきであるとしている また 育児休業制度については 各地方公共団体において条例の整備が行われていない地方公共団体が一定程度存在することから 各地方公共団体において 確実に育児休業に係る条例の整備を行うべきである とした さらに研修については 地公法 39 条の規定が適用されるところであり 各地方公共団体においては 職務の内容や責任の程度に応じて 適切な対応を図るべきとした (5) 雇止め問題についても再度言及さらに 応募制限については 任用の回数や年数が一定数に達していることのみを捉え 一律に応募要件に制限を設けることは 平等取り扱いの原則や成績主義の観点から避けるべき ことを再度打ち出している すなわち 地方公務員の任用における成績主義や平等取扱いの原則を踏まえれば 繰り返し任用されても 再度任用の保障のような既得権が発生するものではなく 任期ごとに客観的な能力実証に基づき当該職に従事する十分な能力を持った者を任用することが求められる 一方 募集に当たって 任期の回数や年数が一定数に達していることのみを捉えて応募制限を設けている地方公共団体が一定程度存在する そのように一律に応募制限を設けることは 平等取扱いの原則や成績主義の観点から避けるべきであり 均等な機会の付与の考え方を踏まえた適切な募集を行うことが求められる とした すなわち 能力実証に基づけば 経験 能力を積んだ非正規公務員を繰り返し任用することはむしろ求められることであり 一律な応募制限は避けるべきとしているの

163 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - である また雇止めに関しても 能力実証の結果 業務の見直しによる業務自体の廃止 その他の合理的な理由により再度の任用を行わないこととする場合 と 雇止めできる事例を限定列挙し さらに雇止めする場合でも 事前に十分な説明を行ったり 他に応募可能な求人を紹介する等の配慮を行うことが望ましい 労働基準法第 14 条第 2 項に基づく 有期労働契約の締結 更新及び雇止めに関する基準 ( 厚生労働省 ) においては 契約を更新しない場合の予告や理由の明示等が定められている ことを紹介し 適正な手続きを経ることを強調した (8) (6) 空白期間総務省研究会報告では 再度の任用の際に 新たな任期と前の任期の間に一定の期間 ( いわゆる 空白期間 ) を置いている地方公共団体が一定程度存在する ことを指摘した上で このような空白期間を置くことを直接求める規定は 地公法をはじめとした関係法令において存在しない ましてや 退職手当や社会保険料等の負担を回避するため や 任用されていない者を事実上業務に従事 させたりすることは明らかに不適切だと断じている そして 一般職非常勤職員の任期については あくまで職員に従事させようとする業務の遂行に必要な期間を考慮して適切に定めることが必要であることについて 立法的な対応を検討することを求めた 3. 地公法自治法改正法の変節過程 (1) 幻の自治法等改正原案 ~ 給与体系の統一 ~ 2016 年 12 月 27 日に総務大臣に提出された総務省研究会報告書を受けて 2017 年 1 月 に与党や地方公共団体等の協議に付された地公法自治法改正法原案では 新たな一般 (8) 雇止めに関して 消費者庁は 消費生活相談員のほとんどが非常勤職員であるということに危機感を持ち 2014 年に 雇止めに対する懸念 と題して 次のメッセージを出している 地方公共団体が消費生活相談員を 雇止め しなければならない法制度はありません 実態として非常勤職員が行う業務の中にも恒常的な業務があること及び任期ごとに客観的な能力実証を行った結果としての同一者の再度任用は排除されないことについて 総務省とも認識を共有していることを重ねて申し上げます

164 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 職非常勤職員の採用類型として会計年度任用職員 ( 改正地公法 22 条の2) を創設し あわせて 会計年度任用職員など労働者性が高い一般職の非常勤職員について 常勤職員と同じく 給料 手当の支給対象とする とし 施行期日も2019 年 ( 平成 31 年 ) 4 月 1 日としていた ( 図表 2 参照 ) ところが 2017 年 3 月 7 日に閣議決定された地公法自治法改正法案は 新設した地公法 22 条の2にフルタイムとパートの2 種類の会計年度任用職員を位置づけ 1 週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの ( 同条 1 項 1 号 )=パートタイム会計年度任用職員には 自治法で 従前通りの生活保障的な要素を含まない報酬と費用弁償に加えて期末手当を支払うとし 一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの ( 同条 1 項 2 号 )=フルタイム会計年度任用職員には 法の仕立てとしてはこれまた従前通り 自治法で 生活給としての給料と諸手当ならびに退職手当を支払うものとした この内容は総務省研究会報告書の提言から逸脱し 同報告を受けて策定された地公法自治法改正法原案を大幅に修正して 勤務時間を唯一の要件として処遇を違えるという およそ同一労働同一賃金の実現という政府方針には沿わないものへと変質したものだった ( あわせて施行期日も1 年遅らせ 2020 年 ( 平成 32 年 )4 月 1 日とした 図表 3 参照 ) なお 説明資料では さすがに 給付体系の見直し といえず 会計年度任用職員に対する給付を規定 と変更している

165 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - < 図表 2> 地方公務員法 地方自治法改正法原案 (2017 年 1 月段階 ) の説明資料 < 図表 3> 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案の概要 < 成案の説明資料 >(2017 年 3 月 ) 原案からどのように変節したのか 自治法 203 条の2 204 条を取り上げ具体的に見てみよう 自治法改正原案では 203 条の2 204 条における 非常勤 常勤 の要件を限定的なものとし 勤務時間の長短に関わらず 労働者性ある職員に給料 諸手当ならびに退職手当を支払えるものとなるように改められていた ( 図表 4 参照 ) たとえば 改正前の自治法 203 条の2では 普通地方公共団体の非常勤の職員 ( 短時間勤務職員を除く ) と定められていたものを 改正地公法 3 条 3 項 3 号が特別職非常勤職員の要件に ( 専門的な知識経験又は識見を有する者が就く職であって 当該知識経験又は識見に基づき 助言 調査 診断その他総務省令で定める事務を行

166 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - < 図表 4> 自治法改正原案と改正自治法の対比表 自治法改正原案 (2017 年 1 月 ) 改正自治法 (2017 年 3 月国会上程 ) 第二百三条の二普通地方公共団体は その委員会の委員 非常勤の監査委員その他の委員 自治紛争処理委員 審査会 審議会及び調査会等の委員その他の構成員 専門委員 投票管理者 開票管理者 選挙長 選挙分会長 審査分会長 国民投票分会長 投票立会人 開票立会人 選挙立会人 審査分会立会人 国民投票分会立会人及び地公法三条三項三号の二の総務省令で定める者その他普通地方公共団体の同項に規定する特別職の非常勤の職員に対し 報酬を支給しなければならない 2 前項の者に対する報酬は その勤務日数に応じてこれを支給する ただし 条例で特別の定めをした場合は この限りでない 3 第一項の者は 職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる 4 報酬 費用弁償の額並びにその支給方法は 条例でこれを定めなければならない 第二百四条普通地方公共団体は 普通地方公共団体の長及びその補助機関たる職員 ( 前条第一項の職員を除く ) 委員会の常勤の委員 ( 教育委員会にあつては 教育長 ) 常勤の監査委員 議会の事務局長又は書記長 書記その他の職員 ( 同項の職員を除く ) 委員会の事務局長若しくは書記長 委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の職員 ( 同項の職員を除く ) その他普通地方公共団体の職員 ( 同項の職員を除く ) に対し 給料及び旅費を支給しなければならない 2 普通地方公共団体は 条例で 前項の者に対し 扶養手当 地域手当 住居手当 初任給調整手当 通勤手当 単身赴任手当 特殊勤務手当 特地勤務手当 ( これに準ずる手当を含む ) へき地手当 ( これに準ずる手当を含む ) 時間外勤務手当 宿日直手当 管理職員特別勤務手当 夜間勤務手当 休日勤務手当 管理職手当 期末手当 勤勉手当 ( 中略 ) 又は退職手当を支給することができる 第二百三条の二普通地方公共団体は その委員会の非常勤の委員 非常勤の監査委員 自治紛争処理委員 審査会 審議会及び調査会等の委員その他の構成員 専門委員 監査専門委員 投票管理者 開票管理者 選挙長 投票立会人 開票立会人及び選挙立会人その他普通地方公共団体の非常勤の職員 ( 短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く ) に対し 報酬を支給しなければならない 2 前項の者に対する報酬は その勤務日数に応じてこれを支給する ただし 条例で特別の定めをした場合は この限りでない 3 第一項の者は 職務を行うため要する費用の弁償を受けることができる 4 普通地方公共団体は 条例で 第一項の者のうち地方公務員法第二十二条の二第一項第一号に掲げる職員に対し 期末手当を支給することができる 5 報酬 費用弁償及び期末手当の額並びにその支給方法は 条例でこれを定めなければならない 第二百四条普通地方公共団体は 普通地方公共団体の長及びその補助機関たる常勤の職員 委員会の常勤の委員 ( 教育委員会にあつては 教育長 ) 常勤の監査委員 議会の事務局長又は書記長 書記その他の常勤の職員 委員会の事務局長若しくは書記長 委員の事務局長又は委員会若しくは委員の事務を補助する書記その他の常勤の職員その他普通地方公共団体の常勤の職員並びに短時間勤務職員及び地方公務員法第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員に対し 給料及び旅費を支給しなければならない 2 普通地方公共団体は 条例で 前項の者に対し 扶養手当 地域手当 住居手当 初任給調整手当 通勤手当 単身赴任手当 特殊勤務手当 特地勤務手当 ( これに準ずる手当を含む ) へき地手当( これに準ずる手当を含む ) 時間外勤務手当 宿日直手当 管理職員特別勤務手当 夜間勤務手当 休日勤務手当 管理職手当 期末手当 勤勉手当 ( 中略 ) 又は退職手当を支給することができる

167 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - うものに限る ) を付加したことにあわせ 自治法改正原案 203 条の2では その他普通地方公共団体の同項 ( 改正地公法 3 条 3 項をいう 筆者 ) に規定する特別職の非常勤の職員 等とし 報酬 費用弁償の支給対象者を本来的な特別職非常勤に限定した これにより少なくとも労働者性ある一般職の職員は 勤務形態が非常勤の者であっても 203 条の2の非常勤の職員に分類されないように改められていた また自治法改正原案 204 条は 給料 諸手当ならびに退職手当の支給対象を 補助機関たる職員 ( 前条第一項の職員を除く ) とのみ規定し 常勤か非常勤かという勤務形態の差異や勤務時間の長短に関わらず 正規職員 会計年度任用職員 臨時的任用職員 高齢者再任用 ( 短時間勤務を含む ) 職員等の一般職の職員全員とするものとしていた もともと 地方公営企業職員や地公法 57 条に規定する単純労務職員には 自治法 203 条の2の特例として 地方公営企業法 38 条 1 項 企業職員の給与は給料及び手当とする が適用され 特段に常勤職員と非常勤職員を区分けすることなく 給料及び諸手当を支給できる給与体系になっていた したがって自治法改正原案が成立していれば ようやく地方公務員総体を通じて 一般職において 常勤 非常勤を区分することなく給料 手当を支給する体系に統一することになったはずである だが原案は大きく変更され 勤務時間の長短を唯一の要件として 給与体系が歪められる結果となった (2) 変節過程なぜ 地公法自治法改正法は 総務省研究会報告書や当初の改正法原案から逸脱していったのか 第 1に 地方公共団体から 手当支給による財政負担の増加が見込まれる中 議会等の理解が得られるためには 国レベルで支給されている手当に限定すべき という意見が寄せられたからである 2017 年 1 月 13 日 総務省は 全国都道府県人事担当課長 市町村担当課長 指定都市人事担当課長連絡会議において総務省研究会報告書の内容を説明し 各地方公共団体に意見の提出を依頼した 1 月中を提出締め切りとした意見集約のための調査票には以下の項目が並んでいた Ⅰ 特別職非常勤職員 及び 臨時的任用職員 の任用について要件の厳格化

168 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - を図ることについて Ⅱ 一般職非常勤職員 の新たな仕組みを設けることについて Ⅲ 一般職非常勤職員について 報酬 費用弁償の支給から給料 手当を支給できる給付体系への移行を図ることについて Ⅳ その他 各地方公共団体からの意見集約状況は801 団体 45%( 都道府県 43 指定都市 20 市区町村 738) で 第 9 回総務省研究会 (2017 年 2 月 28 日 ) にその概要が示された (9) 上記の項目のうちⅢについては 支給すべき手当の範囲を明確に定めてほしい という意見に集約されたのだが その理由として 各団体 職員間で不均衡が生じないよう統一的対応を図ることが必要 人材確保の観点から 周辺自治体との手当水準の均衡が必要 手当支給による財政負担の増加が見込まれる中 議会等の理解が得られるためには 国レベルで支給されている手当に限定していただいた方が 円滑な制度設計 運用が可能 各団体で疑義や混乱が生じるおそれがあり 特に小規模市町村では 適切な手当の設定ができるか不安視する意見 が寄せられたとしている そしてこれに対する総務省の対応方針が 会計年度任用職員 ( パート ) について 引き続き報酬 費用弁償の対象としつつ 新たに期末手当を支給することができることとする 会計年度任用職員 ( フルタイム ) については これまでも給料 手当の対象と解されることから 給料 手当の対象とする というものだった しかし 地方からの意見と総務省の対応方針との間には飛躍がある 地方からの意見は 財政逼迫ならびに人材確保競争の低位平準化を目指すべきという理由を挙げ 支給すべき手当の絞り込みを要望しているのであって これをもって給与体系を違える<パートの会計年度任用職員への支給を報酬 費用弁償のままとする>ことの理由にはならない フルタイムとパートで給与体系を違え パートの会計年度任用職員への給付を給料と手当ではなく報酬と費用弁償のままとしたのには別の理由があったと思われるが それは これまで通り非正規公務員への賃金を人件費ではなく消耗品代である物件費に計上し 地方財政計画上においても給与関係経費を見かけ上 低く見せるとともに 一般行政経費に計上させておく必要があったからではないだろうか (9) 総務省 地方公務員の臨時 非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会 ( 第 9 回 ) (2017 年 2 月 28 日 ) 資料 1 各地方公共団体からの意見等

169 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 臨時 非常勤職員の報酬等は 地方財政計画上で物件費 (10) として一般行政経費単独分のなかに計上されているが 給料 手当に移行した場合 これまでのように物件費として取り扱って一般行政経費単独分に計上することを改め 給与関係経費として計上することが要請される可能性がある そうすると この間 低減化してきた給与関係経費が膨らみかねない 確定的に断言できないものの 原案が大きく変更された背景には 地方財政計画を巡る見せ方の問題があり これゆえ非正規公務員への給与体系が歪められ 報酬 費用弁償のまま存置されることになったと推測されるのである 4. 地公法自治法改正法の概要と批判的検討 地公法自治法改正法の意味は何か 端的にいえばそれは 常勤 と 非常勤 有期 の概念を明確にすることで 非正規公務員とは 地方公共団体が直接雇用する 非常勤か有期かのいずれかの要件を帯びる 定数外職員 であるとしたことである そして 本来 常用的な業務は定数内の常勤職員をもって充てるべきなのだが これをなさず 非正規公務員の身分のまま恒常的 (10) 総務省自治財政局財務調査課 地方財政状況調査表作成要領 ( 市町村分 )( 一部事務組合分 ) では 非正規公務員の給与等を人件費に分類する基準を次のように記す 一般職に属する臨時職員等のうち その職名のいかんを問わず 常時勤務に服することを要する職員について定められている勤務時間以上勤務した日 ( 法令の規定により勤務しないこととされ 又は休暇を与えられた日を含む ) が 18 日以上ある月が調査期日において引き続いて 12 月を超える職員に係る賃金等の給与を計上する ほとんどすべての地方公共団体で この分類基準を満たさないよう 非常勤職員を特別職として採用し あるいは常勤の臨時職員に 空白期間 を置き または一般職非常勤を短時間勤務として扱い 見かけ上の人件費規模を少なく計上し 本当は人件費なのに物件費として取り扱ってきた ちなみに 物件費の分類基準に関して次のように記している なお 89 表物件費の内訳 における 1 賃金 には 人件費の臨時職員給与及び事業費支弁に係る賃金を除いた短期間の日々雇用の職員に対する賃金を計上し これらの職員の雇用保険料等社会保険料は 8 その他 に計上する 地方公務員制度に 日々雇用の職員なる制度はかつてもいまもない かつて制度化されていた国でも 2010 年に期間業務職員制度に変更されて名称さえも残っていない 存在しない制度に基づき決算統計が作られ続けている 自治省 総務省がいかに非正規公務員の処遇のあり方に関して意識が希薄であるかを示す逸話である

170 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 本格的 常用的な業務に充てることを認めるものとなった (11) すなわち任用制度の下で常に雇止めの危機に晒されている不安定雇用の非正規公務員が正規職員を代替することを一層促進することに道を開いたものであり いうなれば 不安定雇用者による公共サービス提供を適法化するものなのである (1) 会計年度任用職員とはなにか改正地公法 22 条の2には 一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職 ( 第 28 条の5 第 1 項に規定する短時間勤務の職 ( 高齢短時間再任用職員 筆者 ) を除く ) を占める職員 と規定する すなわち1 一会計年度の期間を限度とする有期雇用で 2 非常勤の職 を占める職員ということである 非常勤の職 の 非常勤 とは 勤務時間の長短という勤務形態のことではない 常時勤務で無期雇用の正規職員が配置されていない職を総称して 非常勤の職 と言っているのであって 職 (= 業務や仕事 ) そのものの性格 (= 本格的 恒常的 常用的 ) を意味していない したがって いままで常勤の職員が配置されていた職を 会計年度任用職員をもって代替させた途端に その職は 非常勤の職 になる < 図表 5> 地公法自治法改正法の概要 このことに関し 総務省は 職員の体系を ( ア ) 従事する業務の性質に関する要件と (11) 非常勤職員への手当支給の違法性が問題となった茨木市臨時的任用職員一時金支給事件 ( 最判平 ) における千葉勝美裁判官の補足意見には 次のように記されていた 当該 ( 臨時 非常勤職員 筆者 ) 職員の勤務実態を常勤と評価されるようなものに改め これを恒常的に任用する必要があるときには 正規職員として任命替えを行う方向での法的 行政的手当を執るべき 今回の会計年度任用職員の制度化にあたり 大いに参考になる意見である

171 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - ( イ ) 勤務時間の要件の 2 つの軸で切り分けて 4 つに分類できるとしたうえで 次のよ うに説明している ( 図表 6 参照 ) A( ア ) 相当の期間任用される職員を就ける業務 ( イ ) フルタイム任期の定めのない常勤職員 B( ア ) 相当の期間任用される職員を就ける業務 ( イ ) パートタイム任期付短時間職員 C( ア ) 上記以外の職員を就ける業務 ( イ ) フルタイム会計年度任用職員 ( フル )<=いわゆる常勤的非常勤職員 > D( ア ) 上記以外の職員を就ける業務 ( イ ) パートタイム会計年度任用職員 ( パート ) 上記のうち 常勤の職 は分類 Aのみで 分類 B~Dは 非常勤の職 と位置付ける (12) また相当の期間任用される職員の意味は 1 回の任期が会計年度を超える職員のことで 無期雇用の正規職員や3~5 年任期の任期付職員 ( フルタイム ) 等を指す すなわち 相当の期間任用される職員 とは 会計年度を超えて任期が設定される定数内職員 (13) のことなのである ところが 上記の総務省の説明は 職員の体系を 任期と勤務時間の2つの要素のみで区分するものであり 職そのものに関する要件 たとえば本格的なのか補助的なのかは 無視されている この結果 これまで正規職員が配置されてきた本格的 恒常的業務に 任期の定めのある不安定雇用の会計年度任用職員を充てることを法的に許容することとなった 実態として 本格的 恒常的業務に多数の不安定雇用の非正規公務員が充てられて (12) この説明は 笹野健 非常勤 とは何か 地方公務員月報 (643) 頁以下及び笹野ほか 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律 ( 平成二九年法律二九号 ) について ( その 1) 地方公務員月報 (647) 頁以下参照 (13) 定数条例に臨時 非常勤職員を定数としてカウントしない理由は 専ら当該臨時 非常勤職員の任期と予算主義との関連から説明されている すなわち臨時 非常勤職員の任期は概ね 1 年以内であり そうすると歳入歳出予算を通じて議会の統制が及ぶから その数を定数条例で定めるまでの必要はないというものである この反対解釈として 無期雇用等は予算単年度を超えて財政を拘束するので 定数による縛りを要するというのである ( 橋下勇 新版逐条地方公務員法第 4 次改訂版 学陽書房 2016 年 49 頁 ) したがって 会計年度内で任期が設定される会計年度任用職員は 定数外 となる

172 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - いることはその通りなのだが そのような状況を放置してきたことが問題なのであり その処方箋は 非正規公務員を正規職員として任命替えを行う方向での法的 行政的手当を執ることであって けっして不安定雇用の身分のまま本格的 恒常的業務に充当することを認めることではない この観点からすると 改正地公法等は 定数内の正規職員を一層削減し 不安定雇用で定数外の非正規公務員に置き換えて公共サービスを提供することを促進するものなのである < 図表 6> 総務省 常勤と非常勤の概念整理と 会計年度任用職員 出典 ) 総務省 地方公務員の臨時 非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会 ( 第 9 回 ) (2017 年 2 月 28 日 ) 資料 1 地方公共団体からの意見等 掲載図 (2) 特別職非常勤職員 臨時的任用職員 一般職非常勤職員はどうなるのか非正規公務員の任用の種類は これまで特別職非常勤職員 臨時的任用職員 一般職非常勤職員の3 種があった このうち特別職非常勤職員については 地公法 3 条 3 項 3 号に関して 臨時又は非常勤の顧問 参与 調査員 嘱託員及びこれらの者に準ずる者の職 に続けて ( 専門的な知識経験又はこれらの者に準ずる者の識見を有する者が就く職であつて 当該知識経験又は識見に基づき 助言 調査 診断その他総務省令で定める事務を行うものに限る ) という文言を付加し 同項 3 号に規定する特別職の職の性格を 専ら自らの学識 経験に基づき非専務的に公務に参画する労働者性の低い勤務形態の

173 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 職と位置づけることで 同号による任用を厳格化し 総務省令で定める事務に従事する者に限定するとした また臨時的任用職員については これまでの22 条を分割し 条件付採用部分を新 22 条 臨時的任用部分については22 条の3を新設して規定した あわせて 臨時的任用ができる要件について 緊急のとき 臨時の職に関するとき又は採用候補者名簿がないとき の前に 常時勤務を要する職に欠員を生じた場合において という前提条件を付し あくまでも臨時的任用は常勤欠員代替であることを明確にした したがって 勤務時間の短い非常勤の勤務形態で臨時職員を任用することはできないことになる 国家公務員の場合 臨時的任用は 人事院規則 8-12( 職員の任免 )39 条で 任命権者は 常勤官職に欠員を生じた場合において 現に職員でない者を臨時的に任用することができる と規定しており 改正地公法は 人事院規則のこの文言を取り込むことで 臨時的任用の濫用を防止し 厳格な運用とするとしている なお すでにその多くが教員定数内に組み込まれている常勤講師 = 臨時教員については 常時勤務を要する職に欠員を生じた ものとして常勤の臨時教員を配置していると読み込み 従前通りの取り扱いとするものと考えられる また 行政実例 (14) や裁判例 (15) から これまで特別職非常勤職員として採用されたものと解釈されてきた公立学校の非常勤講師は 教務主任などの指導的な立場にある職員の指導を受けながら教育活動に従事する者で 労働者性を認められることから 今回の法改正からは 会計年度任用職員として整理される また これまで特別職非常勤職員として外国語指導助手 (ALT) も 同様の趣旨から 会計年度任用職員として採用されるものとなる (16) このように改正地公法は 地公法の制度の趣旨に合わない特別職非常勤ならびに臨時的任用の要件を厳格化することで 少なくとも労働者性ある非正規公務員の任用を会計年度任用職員 (22 条の2) に統一しようとしている だが 思惑通り会計年度任用職員に統一しうるかは不透明である (14) 公立学校の非常勤講師は一般職か特別職か ( 昭 自丁公発第 102 号 ) 非常勤講師の取扱いについて ( 昭 自治丁公発第 9 号 ) (15) 福井市教育委員会事件 ( 福井地判昭 行集 10(3) 571 頁 ) 茨城県教育委員会 茨城県人事委員会事件 ( 水戸地判昭 行集 14(5) 1099 頁 ) (16) 窪田優一 学校医 公立学校の非常勤講師 外国語指導助手は一般職の地方公務員か特別職の地方公務員か 自治実務セミナー (665) 頁を参照

174 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - その理由は 第 1に 特別職非常勤職員や臨時的任用に関しては厳格化のための手立てが取られたが 一般職非常勤は改正前のまま残っており あわせて改正自治法 203 条の2 及び204 条からも漏れているので 期末手当さえも支払うことを渋る任命権者は この一般職非常勤を使って 短期 短時間かつ一層安価な非正規公務員として任用することが可能だからである 第 2に そもそも公務員制度において 採用の種類は正式採用 ( 地公法 17 条 ) と臨時的採用 ( 地公法旧 22 条 ) の二つしかなく 特別職として採用することは想定されていないにもかかわらず 法の趣旨に反して 特別職の職に非正規公務員を自由任用することを地方公共団体は繰り返してきたからである そして自由任用を許してきた背景には 公務員の採用においては任命権者の意思が優先すると解釈される任用制度がある 近代公務員制度の重要な柱は成績主義である したがって 試験等を通じて能力実証に基づき公務員は採用され 転任し 昇進する だが 任命権者の意思を優先させる任用制度の下では どのような職を特別職か一般職かとするかの判断も含めて任命権者の意思が優先し ひとたび特別職となった職は 公務員制度上の成績主義の原則を離れて自由任用に道を開き そして非正規公務員を特別職の職に就ける事態を惹起してきた (17) この点 最高裁の判例においても 33 年間の長期にわたり常勤的非常勤職員として勤務してきた学校司書の地位が特別職か一般職かが争われた中津市事件において 地方公務員法 3 条 3 項 3 号所定の特別職の非常勤職員として設置する旨が定められていた三光村教育センター嘱託員として任用されているのだから 上告人 ( 中津市等 筆者 ) は 被上告人 ( 一審原告の学校司書 筆者 ) が任用された職を同号所定の特別職として設置する意思を有し かつ 被上告人につき それを前提とする人事上の取り扱いをしていたと認められる 被上告人の在任中の地位は同号所定の特別職の職員にあたるというべき と判示している (18) 最高裁も認めている任命権者の 特別職の非常勤職員として設置する意思 を今回の地公法改正によって縛ることができるのかは定かではない なぜなら 任命権者の (17) 特別職非常勤の史的分析並びに任用の法的性質に係る解釈の推移については 拙著 非正規公務員の現在 日本評論社 2015 年 125 頁以下を参照 (18) 中津市非常勤職員退職手当支給請求事件 最三小判平 労働判例 (1135) 頁

175 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 意志を優先させてきたのは 公務員の任用を行政処分と解してきた行政側の解釈にそ の淵源があり その解釈に基づく限り 成績主義の原則を潜脱して任命権者の意思を 優先させる地方公共団体の振る舞いを縛ることはできないと考えられるからである (3) 労働時間差別の合法化先にも記したように 改正地公法等では 会計年度任用職員をフルタイム型とパート型の二つに区分し フルタイム ( 地公法 22 条の2 第 6 項 2 号 ) とは 一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間と同一 の者とする したがって 1 日の勤務時間が1 分でも短ければパート ( 同項第 1 号 ) に分類される (19) 問題は フルタイムとパートで給与体系を違えたことである フルタイムの会計年度任用職員には 自治法 204 条が適用され 生活給としての給料と 扶養手当や退職手当等の手当を支払うとした一方 パートの会計年度任用職員には 自治法 203 条の2の適用により 生活保障的な要素を含まない報酬と費用弁償に加えて 6 月以上勤務の者に期末手当を支払うとしたのである このようなパートとフルタイムという勤務形態の違いで処遇体系を違えることは 政府の働き方改革の柱である同一労働同一賃金原則に反する ましてやパートの会計年度任用職員に支給できる手当として期末手当だけを法定化したため その他の手当 たとえば扶養手当や地域手当や退職手当 ( 退職手当条例に基づかない慰労金を含む ) を支給すると 違法 という取り扱いになってしまう また改正地公法の 常勤 の概念は 従前の判例法理からも逸脱する たとえば 枚方市事件 ( 大阪高判平 ) では 常勤職員の週勤務時間 [38 時間 45 分 ] の4 分の3に相当する時間以上 (20) 勤務している非常勤職員について これを 常勤の職員 と判定し 給料と手当を支給する対象とした また 東村山市事件 ( 東京高判平 ) では 東村山市の嘱託職員は その職務内容も常勤職員と同様であり 勤務実態からみて常勤職員に該当する (21) とし 常勤職員と同 (19) 改正法の国会質疑の中で 高原剛総務省公務員部長は明確に次のように答えた 御答弁申し上げます 一分でも勤務時間が短い方は パートタイムの会計年度任用職員ということでございます ( 第 193 回通常国会 衆議院総務委員会 平成 29 年 5 月 9 日 ) (20) 枚方市非常勤職員一時金等支給事件 大阪高判平 労働法律旬報 (1738) 頁 (21) 東村山市嘱託職員退職手当支給損害賠償請求住民訴訟事件 東京高判平 裁判所ウェブサイト

176 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - じ仕事をしていれば 常勤の職員 と判定している さらに総務省自身が 国会審議で東村山市事件を取り上げ 非常勤の職員と常勤の職員の区別に当たって 勤務の内容 態様あるいはその役割 また待遇等の取扱いなどの諸事情を総合的に考慮して常勤の職員に該当するかどうかということを認めることが相当であると このような趣旨の判示がなされているところでございます こういったことにも留意をする必要がある と答弁している (2012 年 8 月 28 日 参議院総務委員会 政府参考人 ( 三輪和夫総務省公務員部長 ) 発言 ) 会計年度任用職員は 国の期間業務職員制度をモデルとして設計され 条文も人事院規則をそのまま引き写しているものもみられるが ( 文末参考資料参照 ) 国においては 勤務時間が常勤職員と同等の期間業務職員だけでなく 勤務時間が常勤の4 分の3 未満のその他の非常勤職員にも 一般職の職員の給与に関する法律 が適用され 同法 22 条 2 項 常勤を要しない職員については 各庁の長は 常勤の職員の給与との権衡を考慮し 予算の範囲内で 給与を支給する より 常勤職員と同様に給料と手当が支給される だが繰り返し述べるように 地方公務員のパートの会計年度任用職員には 給与 ( 給料 手当 ) ではなく 報酬と費用弁償と6 月以上勤務の者に期末手当が支給されるに過ぎない すなわち地公法自治法改正法は労働時間差別の合法化であり 官製ワーキングプアを固定化するものなのである (4) 権利剥奪の立法化 1 1 月の条件付き採用改正地公法 22 条の2は 会計年度任用職員の採用について すべて条件付きのものとし その期間を 1 月 とするとしている ( 同条 7 項 ) このため会計年度任用職員は 1 年を単位として再度任用を繰り返すと 再度任用のたびに 条件付 となる この規定は 国の期間業務職員に係る定め ( 人事院規則 条 2 項 ) をモデルとしたものだが ( 文末参考資料参照 ) 従前の一般職非常勤に係る規定より後退したものとなっている なぜなら一般職非常勤は 旧地公法 22 条 1 項の条件付採用を 臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き という規定により適用除外とし その採用は直ちに正式採用となり また臨時職員と異なり身分保障ならびに不利益処分に関する審査請求の条文が適用されるので 採用により直ちにこれらの

177 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 権利を有していたからである だがこの規定は削除された そして新たに条件付採用とする規定が設けられた したがって会計年度任用職員は 年度ごとの採用時に いかなるベテランの非正規公務員であっても 最初の1 月は その意に反して任命権者の任意で免職処分にされうる立場になってしまったのである また短時間勤務を含む高齢再任用職員は その1 回の任期が会計年度任用職員と同様に1 年にもかかわらず 再度任用ごとの条件付採用はスキップされている ( 改正地公法 28 条の4 第 5 項 28 条の5 第 2 項 ) その理由については 再任用前の勤務において職務遂行の能力は実証されている のであるから 条件付任用について定める地方公務員法第 22 条第 1 項の規定は適用されない と説明されている (22) 会計年度任用職員にも人事評価が実施され 再度任用前の勤務における職務遂行能力は実証される この点では高齢再任用職員と何ら変わるところはない それにもかかわらず 再度任用ごとに 身分保障規定が適用とならない期間である条件付採用期間が設定される このような取り扱いは 非正規であることを唯一の理由とした 不合理な身分差別である 2 空白期間問題自治体で働く非正規公務員 とりわけ常勤の臨時 非常勤職員を悩ます問題の一つとして 空白期間 問題がある 空白期間 とは 新たな任期と 再度の任用後の新たな任期との間に一定の勤務しない期間を設けることである 横浜市や東京都町田市の図書館に勤務する臨時職員は 2 月の勤務期間終了後 2 月の 空白期間 を置き 期間 2 月で雇用することを繰り返す 2016 総務省調査でも 臨時職員を任用している地方公共団体の半数で 空白期間を置いているとしている この 空白期間 の解消にむけ 改正地公法は22 条の2 第 6 項を新設し 会計年度任用職員の任期について 職務の遂行に必要かつ十分な任期を定め 必要以上に短い任期を定めることにより 採用又は任期の更新を反復して行うことのないよう配慮しなければならない と規定した 総務省はこの規定により 空白期間 を置かない運用となると説明する 同項の規定もまた 国の期間業務職員に係る条文 ( 人事院規則 条の2 第 3 項 ) をそのまま地公法に取り込んだものである 同規則 46 条の2 第 3 項の読み (22) 橋本勇前掲注 (13) 頁

178 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 方について 任期については会計年度を超えないことから最長 1 年であるが 再任用の場合は 任期と任期の間に空白期間をおかずに採用すべき ものとして解釈されている (23) 空白期間が置かれる理由は 退職手当や社会保険料等の財政的な負担を避けるためであり この同項の規定が効果を発揮するかは定かではない たとえば 常勤の会計年度任用職員が空白期間を置かずに6 月を超えて雇用されると退職手当請求権が発生する (24) 1 年を超えれば事業主負担分を伴う公務員災害補償の加入資格が生じる 本当に 空白期間 を置かないようにするためには 正規と非正規で資格要件を別建てにする制度そのものを改正すべきだが そうはなっていない さらに 上記の 空白期間 を置かない措置は 会計年度任用職員に係る規定であり 臨時的任用職員の再度任用に関しては当てはまらず 今後も 空白期間 を置くという運用が残置される可能性がある 3 兼職規制の緩和改正地公法 38 条は 職員は任命権者の許可を受けなければ 報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならないと定めるが パートの会計年度任用職員はこの限りではないとし 兼業を実質的に自由化した この規定は改正法原案に対する地方公共団体から寄せられた意見に基づき挿入されたものなのだが 先に指摘した労働時間差別の法定化の延長線で パートの処遇は低いままなので 兼職して自分で稼いで補填すべしということのようである ところがこの規定はおそらく効果はない それは過半の非正規公務員の勤務形態がシフト勤務で 多くの場合 兼業先の勤務時間や勤務シフトに関する要請と合致させることが困難なためである また非常勤の場合であっても週勤務時間が常勤職員の4 分の3 程度で 通常の労働時間として残余する時間は少ないからである 4 雇止め規制非正規公務員にとって 最大の課題は雇止め問題である これに対し改正地公法は何も答えていない そもそも雇用年限を求める法令はないのだから法改正もできない より敷衍していえば 地方公共団体は法定外措置として 雇用回数制限 雇 (23) 地方公務員退職手当制度研究会編 コンメンタール退職手当条例 ぎょうせい 加除式 49 頁以下 (24) 職員の退職手当に関する条例案 ( 昭和 28 年自丙行発 49 号 ) 改正附則 ( 昭和 37 年 )5 項により 当分の間 6 月以上と規定

179 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 用年限を運用している 総務省は法改正に先立って有識者研究会を設置したが 2016 年 12 月の同研究会の報告書で 任期ごとに客観的な能力実証に基づき当該職に従事する十分な能力を持った者を任用することが求められる として 遠回しながら雇用継続を奨励し 任期の回数や年数が一定数に達していることのみを捉えて 一律に応募制限を設けることは 平等取扱いの原則や成績主義の観点から避けるべき として 一律な雇止めに警鐘を鳴らし さらに雇止めする場合でも 能力実証の結果 業務の見直しによる業務自体の廃止 その他の合理的な理由により再度の任用を行わないこととする場合 と その理由を限定列挙した だが雇止め規制は立法的措置ではない 地方公共団体への技術的助言として通知されるに過ぎない つまり事業主たる地方公共団体に対して 実効性を持たせるための措置が義務付けられていないのである 5. 地公法自治法改正法に係る国会審議改正 地公法自治法改正法案は 第 193 回通常国会に議案番号 51 として提出され 参議院先議 となった 審議経過の概要は以下の通り また公布年月日は平成 29 年 5 月 17 日 法律番号 29 である 議案名 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案 の審議経過情報 項 目 内 容 議案種類 閣法 議案提出回次 193 議案番号 51 議案提出者 内閣 衆議院予備審査議案受理年月日 平成 29 年 3 月 7 日 衆議院議案受理年月日 平成 29 年 4 月 14 日 衆議院付託年月日 / 衆議院付託委員会 平成 29 年 4 月 19 日 / 総務 衆議院審査終了年月日 / 衆議院審査結果 平成 29 年 5 月 9 日 / 可決 衆議院審議終了年月日 / 衆議院審議結果 平成 29 年 5 月 11 日 / 可決 衆議院審議時会派態度 多数

180 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 項 目 内 容 衆議院審議時賛成会派 自由民主党 無所属の会 ; 民進党 無所属 クラブ ; 公明党 ; 日本維新の会 ; 自由党 ; 社会民主党 市民連合 衆議院審議時反対会派 日本共産党 参議院議案受理年月日 平成 29 年 3 月 7 日 参議院付託年月日 / 参議院付託委員会 平成 29 年 4 月 10 日 / 総務 参議院審査終了年月日 / 参議院審査結果 平成 29 年 4 月 13 日 / 可決 参議院審議終了年月日 / 参議院審議結果 平成 29 年 4 月 14 日 / 可決 公布年月日 / 法律番号 平成 29 年 5 月 17 日 /29 なお 参議院総務委員会 衆議院総務委員会とも 同趣旨の附帯決議を全会一致で議決 している 以下に 参議院の附帯決議を掲載する 地方公務員法及び地方自治法の一部を改正する法律案に対する附帯決議 ( 平成 29 年 4 月 13 日参議院総務委員会 ) 政府は 本法施行に当たり 地方公務員の任用 勤務条件並びに福祉及び利益の保護等の適正を確保するため 次の事項についてその実現に努めるべきである 一 会計年度任用職員及び臨時的任用職員の任用について 地方公共団体に対して発出する通知等により再度の任用が可能である旨を明示すること 二 人材確保及び雇用の安定を図る観点から 公務の運営は任期の定めのない常勤職員を中心としていることに鑑み 会計年度任用職員についてもこの考え方に沿うよう 引き続き任用の在り方の検討を行うこと 三 現行の臨時的任用職員及び非常勤職員から会計年度任用職員への移行に当たっては 不利益が生じることなく適正な勤務条件の確保が行われなければならない そのために地方公共団体に対して適切な助言を行うとともに 制度改正により必要となる財源についてはその確保に努めること また 各地方公共団体において休暇制度の整備及び育児休業等に係る条例の整備が確実に行われるよう 地方公共団体に対して適切な助言を行うこと 四 本法施行後 施行の状況について調査 検討を行い その結果に基づいて必要な措置を講ずること その際 民間における同一労働同一賃金の議論の推移を注視し 公務における同一労働同一賃金の在り方及び短時間勤務の会計年度任用職員に

181 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 係る給付の在り方について特に重点を置くこと 右決議する 主な国会質疑の内容を 主要論点ごとに分類すると 以下の通り なお 発言者の肩書きはすべて当時のものである 法改正の趣旨 〇杉尾秀哉 ( 民進党 新緑風会 ) 例えば人件費の総額を抑えるために自治体が非常勤雇用を打ち切る いわゆる雇い止めが増えたり フルタイムをパートに移したり そういったパートの拡大 固定化 実質賃下げにつながらないか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗 ) 労働に見合った処遇 それから任用について明確化したいという思いで改正法案を提出した 会計年度任用職員については フルタイムでの任用が可能であることを明確に規定した これを財政上の制約を理由に抑制してパートタイムへ移行を図るといったことは 臨時 非常勤職員の適正な任用 勤務条件の確保という今回の制度改正案の趣旨に沿わないと認識 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 会計年度任用職員に期末手当の支給を可能とした理由は 国家公務員の非常勤職員は期末手当の支給が可能で 支給実態も進んでいること等を勘案したもの また このような勤務条件面での取扱いは 民間部門に係る同一労働同一賃金ガイドライン案におけるいわゆる賞与についての正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消という方向性にも合致している 今回の措置は地方公務員の会計年度任用職員について適正な勤務条件の確保を図るということ (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 〇山下芳生 ( 日本共産党 ) 住民の命や文化に関わる大事な仕事の多くを臨時 非常勤職員が担っていることについてどう認識されているか また 臨時 非常勤職員が担っている仕事の多くは補助的 臨時的業務ではなくて基幹的 恒常的業務になっている その認識はあるか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗 ) 地方公務員の臨時 非常勤職員の方々は総数も増加 また事務補助職員のほか教員 講師 保育士 給食調理員 図書館職員などといった行政の様々な分野で御活躍をいただいており 現状において地方行政の重要な担い手になっている 全体の数字から臨時 非常勤職員が正規職員の代替となっているのではないかと

182 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - いう指摘があるのは事実 職員の任用は 就けようとする職の職務の内容 勤務形態などに応じて 任期の定めのない常勤職員 任期付職員 臨時 非常勤職員のいずれが適当か 基本的には各地方公共団体において適切に判断されるべきもの 正規 非正規間格差 〇杉尾秀哉 ( 民進党 新緑風会 ) 正規職員と比べて 格差は大体何分の1ぐらいか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 今回の実態調査で 事務補助職員などに係る報酬額を調査 この調査結果により 例えば一般職非常勤職員である事務補助職員の報酬額を単純平均すると 一時間当たり919 円で これを仮にフルタイムで勤務した場合の年収額に機械的に換算すると約 180 万円になる 常勤職員の年収は 基幹統計調査として5 年に1 度実施している地方公務員給与実態調査の最新の平成 25 年調査結果によると 一般行政職の職員のうち最も短い経験年数の階層である1 年以上 2 年未満の職員の平均年間給与額は約 330 万円で 5 割から6 割ぐらいの水準 〇山下芳生 ( 日本共産党 ) 民間労働者の正社員と非正社員の賃金格差は フルタイムの場合 6 割 地方公務員の正規と臨時職員の賃金格差は 同じくフルタイムの場合 僅か3 割台 民間労働者よりも地方公務員の方が正規 非正規間の賃金格差がはるかに大きい 公務の職場でこのような格差 差別があっていいのか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗 ) だからこそ 任用 服務の適正化とともに期末手当の支給を可能とするなど 改正法案を提出した 勤務条件面での取扱いは これまで期末手当の支給が認められていなかったことを踏まえると 昨年末に示された民間部門に係る同一労働同一賃金ガイドライン案における 賞与についての正規と非正規間の不合理な待遇差の解消という方向性にも合致している 〇梅村ちさこ ( 日本共産党 ) このまま会計年度任用職員のパートとフルタイムは固定化していくのか 国家公務員は給与と手当を支給されているわけだから 制度や財政的な措置をした流れの中で 本来はフルタイムとパートも同じ給与と手当を土台としていくべきだが そういう方向性を目指しているのか (193 衆 総務委員会 平成 29 年 5 月 9 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) そういった問題とあわせて 給付体系のあり方についても私ども検討課題とさせていただきたい

183 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 勤務条件 〇杉尾秀哉 ( 民進党 新緑風会 ) 賃金 諸手当 待遇以外にも様々な格差がある 例えば非常勤職員の産前産後休暇や育児休業制度は 現在どのようになっているか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 平成 28 年 4 月 1 日現在の実態調査では 一般職非常勤職員を任用している555 団体のうち産前産後休暇制度がある団体は431 団体 残りの124 団体は制度がない状況 このような団体では これまでにニーズがなかった 必要に応じ事実上認めればよいといった理由が挙げられている 2016 年 12 月の総務省研究会報告書でも 各地方公共団体においては 新たな一般職非常勤職員制度への移行に当たって産前産後休暇など労基法に定める休暇制度を確実に整備すべきとされており 総務省も今後必要な助言を行ってまいりたい 育児時間休暇は 一般職非常勤で導入しているところは389 団体で7 割ぐらい 杉尾秀哉 ( 民進党 新緑風会 ) 産前産後休暇それから育児時間は 労基法で認められているもの 制度がなくても本人が申し出れば取れるか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 地方公務員には 労働基準法の産前産後休暇に関する規定が直接適用 条例等に規定されていない場合もその取得が否定されない しかしながら 勤務条件は条例で定めるのが地方公務員法の立て付け また産前産後休暇の取得手続等を定める必要もある 各団体で明確な制度として条例等で定めていただくことが重要 国務大臣 ( 高市早苗 ) 会計年度任用職員には産前産後休暇や育児休業の取得は制度的に認められている 組織や管理職の理解の促進が重要と考えている この改正法案を成立させていただきました暁には この会計年度任用職員制度導入に合わせ産前産後休暇や育児休業の制度を確実に整備いただくよう引き続き地方公共団体に働きかけも行いますし 取得に向けた環境が適切に整備されるよう マニュアルで助言を行わせていただく (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 〇宮崎勝 ( 公明党 ) このほど公表されたフォローアップ調査では 時間外勤務手当に相当する報酬の支給に関する規定の整備は全体の6 割以上が対応済み又は今後対応する予定ありとしているが 予定なしも3 割程度ある また 通勤費用相当額の費用弁償の支給に関する規定の整備も予定なしが3 割弱存在 整備が進まない理由や今後の対応は (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 )

184 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 規定の整備について予定なしと回答した団体の一部からその理由を聞き取りましたところ 臨時 非常勤職員に対して時間外勤務を命じることを想定していない 通勤費用相当額を報酬に含めて支給しているといった回答があった 〇山下芳生 ( 日本共産党 ) 会計年度任用職員は再度の任用を排除されないとの説明 年度をまたぐ産前産後休暇 年度をまたぐ育児休業 同じく年度をまたぐ介護休暇などをどう扱うのか 当然年度をまたいで取得できるようにすべきだと思いますが (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗 ) 産前産後休暇 育児休業 介護休暇は その取得要件を満たしている場合 会計年度任用職員の任期の末日まで取得することができる 翌年度に再度の任用がされたときには 改めて取得することによって 年度をまたいでその休暇 休業を継続することができます また 会計年度任用職員の任期が更新された場合 再度 条件付採用期間を経ることとなりますけれども 条件付採用期間中であることをもってそれらの休暇 休業取得が妨げられるというものではない 非正規率 杉尾秀哉 ( 民進党 新緑風会 ) 自治体で働いている保育士のうち臨時 非常勤職員の割合はどれぐらいか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 今回の臨時 非常勤職員の調査による保育所保育士の人数は63,267 人 平成 28 年の地方公共団体定員管理調査による正規職員の保育所保育士の人数は83,817 人 これらの調査から 地方公共団体で働く保育所保育士のうち臨時 非常勤職員の割合は約 43% 常勤と非常勤の区分 〇奥野総一郎 ( 民進党 ) 法のつくりを見ると フルタイムは常勤と全く同じ時間働いているというたてつけ 仮に一時間でも少なければ パートタイムの方に入ってしまう かつて 判例では 常勤職員の勤務時間の4 分の3を超える場合は 常勤とみなし 期末手当の支給を認めた事例などもある 今回 一時間でも欠けたらという引き方は酷ではないか 特に 習熟度や能力に差がない場合は酷 同一賃金同一労働というのであれば 処遇も同じ給与 手当の対象にすべきではないか なぜ 幅を持たせない 全く常勤職員と同じ時間と定義したのか (193 衆 総務委員会 平成 29 年 5 月 9 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 手当の支給の適法性が争われた過去の判例では 当時の国の日々雇用職員以外の非常勤職員の取り扱いが 常勤職員の勤務時間の

185 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 4 分の3を超えない範囲内とされていたことを踏まえ 地方自治法 204 条の 常勤の職員 に該当するか否かの判断要素の一つとして 勤務時間が常勤職員の4 分の3を超えることというのを挙げている判例がある しかしながら その判例では複数の判断要素の一つとして挙げられたにすぎず また 国においては その後 日々雇用職員制度が廃止され 期間業務職員制度が創設され 現行法令上 4 分の3を超えるか否かにかかわらず非常勤職員とされていることを前提とすると 4 分の3の勤務時間を区分の基準とする理由は明確ではない 今回 一般職の非常勤職員である会計年度任用職員制度を創設するに当たり 常勤の職員 すなわち常時勤務を要する職を占める職員については 国家公務員を含めた公務員法制全体として 相当の期間任用される職員をつけるべき職を占める職員であって かつフルタイムで勤務する職員と整理した その上で 会計年度任用職員の給付制度も フルタイムの者は給料及び手当の支給対象とし パートタイムの者は 現行の報酬 費用弁償の給付体系を維持しつつ 期末手当を新たに支給できるよう立法的に措置しようとするもの 〇梅村さえこ ( 日本共産党 ) 今回 フルタイムとパートに分ける計画だが これは12 月の研究会報告書にはなく 閣議決定直前に変更となったもの 新たな待遇格差を生むものではないかと思いますが いかがでしょうか (193 衆 総務委員会 平成 29 年 5 月 9 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 会計年度任用職員の勤務時間は 研究会報告書でも これまでにもフルタイムとパートタイムの任用が行われている 今後とも同様の選択を認め 各地方公共団体における多様な任用を可能とすべきとしている このうちパートタイムは 常勤職員よりも短い勤務時間で職務に従事し その勤務形態も多種多様で一律ではないことから 改正法案では 営利企業の従事制限について フルタイムは対象とし パートタイムは対象外とする 給付について フルタイムは給料 手当とし パートタイムは報酬 費用弁償 それに加えて期末手当とするといった異なる適用関係としている このため フルタイムとパートタイムの 別の区分を設けた 〇梅村さえこ ( 日本共産党 ) 12 月の研究会報告では 常勤職員と同様に給料及び手当の支給対象とするよう給付体系を見直すことについて 立法的な対応を検討すべきとし その上で 給与水準を継続的に改善していくことができるよう 検討すべきとしていた そのときに 時間外手当 通勤手当とともに 退職手当 期末手当についても適切に支給すべきと研究会報告書ではある

186 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - それに対して今回の改正案は フルタイムとパートに分け フルタイムは給料及び各種手当が支給対象になるが パートタイムは これまでと同様 報酬 費用弁償の対象で 通勤費などは従来どおり費用弁償の対象となるものの 支給が明文化されたのは期末手当のみになってしまったというのが経過ではないか 研究会報告書からすると 同一労働同一賃金 均等待遇の流れからは後退していると感じざるを得ない このフルタイムとパートについての区分は 一分でも短くなればフルタイムからパートになるのか (193 衆 総務委員会 平成 29 年 5 月 9 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 一分でも勤務時間が短い方は パートタイムの会計年度任用職員ということです しかしながら 勤務条件の確保に伴う財政上の制約を理由として 合理的な理由なく短い勤務時間を設定し パートタイム型の会計年度任用職員として任用することは 臨時 非常勤職員の適正な任用 勤務条件の確保を目的とする改正法案の趣旨には沿わないものと考えております 空白期間問題 〇那谷屋正義 ( 民進党 ) 地公法 22 条の2 第 6 項で 職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし と法案に示されている 地公法 22 条の3 臨時的任用職員については このことについてはっきりと触れていない (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 会計年度任用職員について 国の期間業務職員についての人事院規則も参考として 各地方公共団体が任期を定める際に職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとする配慮規定を明確に規定し いわゆる空白期間の適正化を図ることとしている 臨時的任用職員についても 空白期間に関する考え方は会計年度任用職員と同様であり 総務省としては 今後 任期の設定が適切に行われ 不適切な空白期間の是正が図られるよう地方公共団体に対して助言を行ってまいります 正規から非正規への置き換え 〇江崎孝 ( 民進党 ) 会計年度任用職員ができたことによって更に非常勤職員を増やしていくという逆のインセンティブが働かないかというのがまず危惧するところ (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 地方公共団体の運営において 会計年度任用職員制度導入後も 任期の定めのない常勤職員を中心とする公務の運営という原則は維持されるべき 今回の任用根拠の適正化に当たり 各地方公共団体において臨時 非

187 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 常勤の職の全てについて個別に検証を行い それぞれ適切な任用根拠を選択していただく その際 常勤職員と同様の業務を行う職が存在することが明らかとなった場合 常勤職員や任期付職員の活用について検討することが必要 そういった趣旨を各地方公共団体に助言してまいりたい 正規化 定数問題 〇山下芳生 ( 日本共産党 ) 根本的な解決の道はもう一つだ 基幹的 恒常的な業務を担っている常勤的非常勤職員を正規化することが必要 今こそ常勤的非常勤の正規化を真剣に検討すべきではないか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 11 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗 ) 地方公共団体の臨時 非常勤職員が正規職員に転換する場合 競争試験などにより正規職員としての能力実証を改めて行う必要がある 一定期間勤務を継続したことのみをもって正規職員に転換することは困難 ただ 地方公共団体においては 実態として 教員などの資格職を始めとして 過去に臨時 非常勤職員の勤務経験がある者について 競争試験等により厳格に能力実証を行った上で正規職員として採用しておられる例もあると聞いている 〇二之湯智君 ( 自由民主党 ) 公務員の就職先が狭き門になると 若者の地方離れが一層加速することを懸念する 公務員は 比較的安定した収入を得られる人で 消費者という側面から見ても購買力のある方 余りにも公務員数を減らすことは 地方の創生の観点から問題があるのではないか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 地方公共団体において優秀な職員を確保することは 長期雇用を前提とした人材育成の観点からも大変重要 近年 一般職員の採用者数も増加傾向にある 各団体において行政需要の変化に対応した職員の採用やめり張りのある人員配置など 自主的に適正な定員管理に取り組むことが重要 〇江崎孝 ( 民進党 ) 会計年度職員の任用の複数年度化という考え方は あり得ないのか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 会計年度任用職員は 条例定数の対象とせず 毎年度の予算で職を設置することを想定していることから 任期を会計年度内としている この点 国の期間業務職員についても 人事院規則において 相当の期間任用される職員を就けるべき業務以外の業務に従事し その任期は一会計年度内とされ 定数にはカウントされない 会計年度職員の任期の複数年度化は このような観点から慎重に検討する必要 地方公共団体においては 例えば採用に当たり 公募を原則としつつも 従前の勤務実績等に基づき 一定の場合 公募を行わないで引き続き採用するこ

188 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - とができるとしている団体もある 地方財政措置 〇二之湯智 ( 自由民主党 ) 64 万人以上の非常勤職員に期末手当を出す場合 一体どれぐらいの額になるのか 想定されておるんですか (193 参 総務委員会 平成 29 年 4 月 13 日 ) 国務大臣 ( 高市早苗君 ) 必要となる財源は 今後地方公共団体の実態なども踏まえながら地財措置についても検討してまいりたい 地方自治法を改正して支給できるという規定を置くので 今後制度改正に伴う各地方団体の対応については調査を行う必要 実態を踏まえた上で 検討してまいるということ (193 参 総務委員会 平成 29 年 3 月 22 日 ) 片山虎之助君非常勤 臨時職員の全体の財源は地財計画に入っているのか (193 参 総務委員会 平成 29 年 3 月 22 日 ) 政府参考人 ( 高原剛総務省公務員部長 ) 決算統計等をベースにいたしまして 地財計画に適切に盛り込まれている おわりに ~ 希求される事業主たる地方公共団体への処遇改善の義務付け ~ 今回の地公法自治法改正法は 平成 32(2020) 年に施行となっているが その前年の平成 31 年の2 3 月議会には 条例改正を行い 同年 4 月以降から 会計年度任用職員の募集を開始するというスケジュールが示されている それぞれの自治体では いま その準備に追われているところである 今回の法改正によって 地方自治体の非正規公務員の雇用は安定し 処遇は改善し 正規公務員との格差は解消し 同一労働同一賃金は実現するだろうか 期末手当が支給されることになるので 処遇上の格差は わずかだが縮まるだろう だが 問題の焦点はそこではない 問題は これまで非正規公務員の惨状を放置することが許されてきた制度上の不備が見直されていないことである それは 事業主たる地方公共団体の任命権者に 非正規公務員の処遇改善を法的に義務付けていない という制度的不備から惹起する課題なのである 非正規公務員には 労働契約法が適用されない このため事業主たる地方公共団体の使

189 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 用者は 非正規公務員を何年使用しようが無期雇用に転換することも 雇用期間を長くすることも義務付けられず 恒常的な業務に従事させているにもかかわらず 必要以上に短い期間を定めて非正規公務員を採用し その有期雇用を反復更新し いざとなったら解雇に類すべき雇止めを行うという およそ民間労働者に適用される法環境では許されない行為を 適法 に執行してきた そして パート労働法が非適用なため 絶望的な格差を埋める義務も免れてきた さらに 民間の事業主に今後課される待遇差の説明義務さえ免れ 非正規公務員をワーキングプア水準の賃金で働かせることについての異議は 問答無用 とばかりに受け付けられない 現行の非正規公務員の勤務条件の改善のための法環境は 民間に比べて 2 周回も遅れている (1 周遅れは非正規国家公務員 ) スタートラインにも立てていない可能性もある だが解決の道筋はある 第 1に どのような中小企業の民間事業者でも義務付けられている処遇改善に向けた法的義務を パート労働法や労働契約法に準じて地方公共団体の使用者にも義務付けること そのことによって はじめてスタートラインに立てる そして第 2に 異動限定型であれ職務限定型であれ その内容はともかく これまでの職務無定量な公務員とは異なる形の新たな公務員採用の類型 <ジョブ型公務員 ( 仮称 )> を創設し 別途の定数管理を行うことで 有期雇用の非正規公務員を無期雇用に転換し 正規化を進めることなのである これらの方策を真摯に実践している自治体が お隣の国 韓国のソウル市である 周知の通り 韓国社会は 1997 年のIMF 危機以降 労働の非正規化が加速し 2007 年には非正規率は35.9% に及んだ 韓国の公共部門労働者の状況も同様で 2006 年には 中央政府 地方自治体 公共機関 教育機関に勤務する職員 155 万 3,704 人のうち 直接雇用 非正規労働者が31 万 1,666 人で20.1% 間接雇用の派遣 請負労働者が6 万 4,822 人で 4.2% すなわち公共部門労働者の4 人に1 人は非正規労働者だったのである この時点で韓国社会は早めの手をうち 2007 年には 期間制および短時間労働者保護等に関する法律 をはじめとする非正規労働者保護法を施行した だが その後の非正規労働者の処遇改善 権利保護の改善はめざましいものではなかった 非正規労働者の無期契約転換後 (2 年経過後に無期に転換したとみなす規定 ) の労働条件が 非正規時の低い労働条件のままである事例が数多く散見され これらのケースは正規でも非正規でもない 中規職 と呼ばれていた これに対し 2011 年 10 月にソウル市長に当選した朴元淳 ( パク ウォンスン ) 市長は

190 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - その選挙公約である 希望約束 で 持続可能な発展と社会 経済の二極化の解消による社会統合を図るために非正規労働者問題に先導的に対応する ことを掲げ 就任後 次々と 希望約束 を実現し すでに 7,000 人以上のソウル市の直接 間接雇用の非正規労働者を正規化している さらにソウル市における無期転換事業は 処遇改善を伴うもので 無期転換した労働者に給料表を全面的に適用し 勤続年数に応じ昇給するものとした その結果 直接雇用転換者の年収は大幅にアップし 年収 1,500 万ウォンから1,800 万ウォンへと2 割上昇した また 無期転換措置から外れた非正規労働者 ( 全非正規労働者の7 割強の3,621 人 ) に関しては 正規公務員と同一の年間福祉ポイントとして一人当たり130 万ウォンを付与することとした ソウル市の事業は このほど大統領に就任した文在寅 ( ムン ジェイン ) 政権でも採用され 公共部門が率先垂範し 非正規労働者の正規化に取り組むとしている 韓国と日本の公務員法制の大きな違いは 非正規公務員にも 労働契約法やパート労働法のような非正規労働者保護の法律が適用されていることである そして政権の意思で 正規化事業に取り組んだことである 韓国以上に非正規化が進んでいる日本社会は 韓国に学ばなければならないのではないだろうか ( かんばやしようじ公益財団法人地方自治総合研究所研究員 )

191 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - < 参考資料 > 会計年度任用職員に関する規定地公法第二十二条の二次に掲げる職員 ( 以下この条において 会計年度任用職員 という ) の採用は 第十七条の二第一項及び第二項の規定にかかわらず 競争試験又は選考によるものとする 一一会計年度を超えない範囲内で置かれる非常勤の職 ( 第二十八条の五第一項に規定する短時間勤務の職を除く )( 次号において 会計年度任用の職 という ) を占める職員であつて その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間に比し短い時間であるもの二会計年度任用の職を占める職員であつて その一週間当たりの通常の勤務時間が常時勤務を要する職を占める職員の一週間当たりの通常の勤務時間と同一の時間であるもの 2 会計年度任用職員の任期は その採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任命権者が定める 3 任命権者は 前二項の規定により会計年度任用職員を採用する場合には 当該会計年度任用職員にその任期を明示しなければならない 4 任命権者は 会計年度任用職員の任期が第二項に規定する期間に満たない場合には 当該会計年度任用職員の勤務実績を考慮した上で 当該期間の範囲内において その任期を更新することができる 5 第三項の規定は 前項の規定により任期を更新する場合について準用する 6 任命権者は 会計年度任用職員の採用又は任期の更新に当たつては 職務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし 必要以上に短い任期を定めることにより 採用又は任期の更新を反復して行うことのないよう配慮しなければならない 7 会計年度任用職員に対する前条の規定の適用については 同条中 六月 とあるのは 一月 とする 国の期間業務職員等に関する規定人事院規則 条非常勤職員の勤務時間 ( 期間業務職員 引用者注 ) は 相当の期間任用される職員を就けるべき官職以外の官職である非常勤官職に任用される非常勤職員については一日につき七時間四十五分を超えず かつ 常勤職員の一週間当たりの勤務時間を超えない範囲内において その他の非常勤職員については当該勤務時間の四分の三を超えない範囲内において 各省各庁の長 ( 勤務時間法第三条に規定する各省各庁の長をいう 以下同じ ) の任意に定めるところによる 人事院規則 条の2 第 1 項期間業務職員を採用する場合は 当該採用の日から同日の属する会計年度の末日までの期間の範囲内で任期を定めるものとする 同規則 42 条 3 項任命権者は 任期を定めて職員を採用する場合には 当該職員にその任期を明示しなければならない 同規則 46 条の2 第 2 項任命権者は 特別の事情により期間業務職員をその任期満了後も引き続き期間業務職員の職務に従事させる必要が生じた場合には 前項に規定する期間の範囲内において その任期を更新することができる 同規則 46 条の2 第 3 項任命権者は 期間業務職員の採用又は任期の更新に当たっては 業務の遂行に必要かつ十分な任期を定めるものとし 必要以上に短い任期を定めることにより 採用又は任期の更新を反復して行うことのないよう配慮しなければならない 同規則 48 条 2 項 一月を超える任期を定めた期間業務職員の採用は その採用の日から起算して一月間条件付のものとし その間その職務を良好な成績で遂行したときは その期間の終了前に任命権者が別段の措置をしない限り その期間が終了した日の翌日において 当該期間業務職員の採用は正式のものとなる

192 第第 3 部 3税 財政関係法 部

193

194 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 3 月 31 日法律第 2 号 ) 森 稔樹 1. はじめに 本稿は 第 193 回国会会期中の平成 29 年 2 月 7 日に内閣提出法律案第 10 号として衆議院に提出され 3 月 27 日に参議院本会議で原案通りに可決 成立し 同月 31 日に内閣により法律第 2 号として公布された 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律 ( 以下 地方税法等一部改正法 ) について 概観および検討を試みるものである (1) 別稿において述べたように (2) 平成 28 年度税制改正は 法人税改革 ( 法人実効税 (1) 平成 29 年度税制改正に関する文献は多い 本稿においては 衆議院調査局総務調査室 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案 ( 内閣提出第 10 号 ) について ( 第 193 回国会 ( 常会 ) 総務委員会参考資料 平成 29 年 2 月 ) 平成 29 年度地方税制改正 ( 案 ) について ( 総務省平成 28 年 12 月 ) 地方財政 2017 年 1 月号 石井隆一 平成 29 年度地方税制改正について 地方税 2017 年 1 月号 2 頁 総務省自治税務局企画課他 平成 29 年度税制改正を巡る議論について 同 20 頁 榎戸芳文 平成 29 年度地方税制改正 地方税務行政の運営に当たっての留意事項等について 地方税 2017 年 2 月号 32 頁 滝陽介他 平成 29 年度地方税法改正法案解説 地方税 2017 年 3 月号 11 頁 星野次彦 平成 29 年度税制改正説明会平成 29 年度税制改正案について 租税研究 2017 年 3 月号 33 頁 林﨑理 平成 29 年度税制改正説明会地方税を中心とした平成 29 年度税制改正案について 同 33 頁 特集改正大綱から読む Q&A 平成 29 年度税制改正の要点 税 2017 年 2 月号 7 頁 特集平成 29 年度地方税制の改正 税 2017 年 4 月号 9 頁 特集問答解説平成 29 年度地方税法の改正 税 2017 年 5 月号 21 頁をあげておく 金子宏 租税法 第二十二版 (2017 年 弘文堂 )71 頁も参照 なお 本稿の内容の一部は 自治体議員連合 全日本自治団体労働組合 平成 27 年度地方財政セミナー Ⅰ レジュメ 政策関係資料 (2017 年 2 月 16 日 ~17 日 自治労資料 2017 第 14-1 号 )16 頁に掲載されている筆者の講演 2017( 平成 29) 年度税制改正の概要と自治体財源保障 ( 平成 29 年 2 月 16 日 TOC 有明 EAST ホール ) のレジュメを利用したものである (2) 拙稿 地方税法等の一部を改正する等の法律 ( 平成 28 年 3 月 31 日法律第 13 号 )~ 法人課税および軽減税率の導入を中心に ~ 自治総研 2016 年 8 月号 68 頁 < 下山憲治編 地方自治関連立法動向第 4 集 (2017 年 地方自治総合研究所 )63 頁にも掲載 > 同 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年 11 月 28 日法律第 86 号 ) 自治総研 2017 年 6 月号 68 頁 ( 下山憲治編 同 97 頁にも掲載 )

195 率の引き下げ 法人事業税における外形標準課税の拡大 ) の他 平成 29 年 4 月 1 日に消費税および地方消費税 ( 以下 消費両税 ) の税率を8% から10% に引き上げるとともに軽減税率を採用すること この税率引き上げを前提とした上での地方法人特別税の廃止 ( 法人事業税への復元 ) 法人事業税交付金の創設 地方法人税の税率改正 自動車取得税の廃止などが主な内容とされていた しかし 第 190 回国会閉会日である平成 28 年 6 月 1 日の記者会見において 安倍晋三内閣総理大臣 (3) は 消費両税の税率引き上げを再延期する方針を表明し これを受けた形で第 192 回国会において 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年 11 月 28 日法律第 85 号 ) および 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年 11 月 28 日法律第 86 号 ) が成立した これにより 正式に 消費両税の税率引き上げはもとより 地方法人特別税の廃止 法人事業税交付金の創設など 地方法人税の税率改正 自動車取得税の廃止なども平成 29 年 4 月 1 日から平成 31 年 10 月 1 日に延期されることとなった 平成 29 年度税制改正は 国税については酒税法の改正など注目すべきものが少なくないが 地方税については 配偶者控除 ( 所得税法第 83 条 地方税法第 34 条第 1 項第 10 号 同第 314 条の2 第 1 項第 10 号 ) および配偶者特別控除 ( 所得税法第 83 条の2 地方税法第 34 条第 1 項第 10 号の2 同第 314 条の2 第 1 項第 10 号の2) の改正などを除き 平成 28 年度税制改正と比較して規模は小さいと評価されることがある (4) もっとも 改正点が多岐にわたる点 および 所得税法等の一部を改正する等の法律 ( 平成 29 年 3 月 31 日法律第 4 号 内閣提出法律案第 6 号 以下 所得税法等一部改正法 ) と密接な関連を有する点は 例年と同様である また 国税犯則取締法の廃止 ( 国税通則法への編入 ) に伴う形で地方税法第 1 章 ( 総則 ) の一部改正が行われたことも注目される そこで 本稿においては 主要な改正点に対象を絞り 地方税法等一部改正法の内容を中心に 衆議院総務委員会および参議院総務委員会での法律案の 審査 における議論も (3) 以下 職名および所属政党 ( 会派 ) については 現在もその職または政党 ( 会派 ) に留まっている者も含め 原則として当時のものであることを記しておく 政党名についても同様である (4) 中村良広 税制改正を巡る議論と課題 月刊自治研 2017 年 2 月号 56 頁は 平成 29 年度税制改正の 規模 が 小振りなもの であり 平成 28 年度税制改正が 国税 地方税ともに平年度ベースで 3~4 千億円規模の増減税を行うものであったのに対して 平成 29 年度税制改正は 1 桁規模が小さかった と指摘する

196 合わせ 検討を行う 2. 法律案が提出されるまでの動向 1 平成 29 年度税制改正の目的平成 27 年度および平成 28 年度の税制改正においては 成長志向 の 法人税改革 が主眼となり 法人実効税率の引き下げ 法人事業税における外形標準課税の強化などが行われた (5) これは 第二次安倍内閣発足以降の基本的政策方針と言いうる 経済再生なくして財政健全化なし を法人課税に関して具体化したものであり 経済再生と財政健全化を両立させるためにも成長戦略は常に深化するものでなければならない という立場 (6) に基づくものであった 平成 29 年度税制改正においても 性格に根本的な変化はない このことは 平成 28 年 12 月 8 日の 平成 29 年度税制改正大綱 ( 自由民主党および公明党 以下 平成 29 年度与党税制改正大綱と記し 他年度のものについては平成 年度与党税制改正大綱と記す ) においても デフレ脱却 経済再生 成長 の語が繰り返されていることから明らかである しかし 平成 29 年度税制改正には 法人税改革 という言葉が登場しない 従って 法人税改革 は平成 28 年度税制改正をもって終了したこととなる それでは 平成 29 年度税制改正の主眼 あるいは 目玉 は何であるのか 平成 29 年 1 月 20 日の衆議院本会議 ( 第 1 号 ) における安倍内閣総理大臣の施政方針演説においては 税制改正について 103 万円の壁を打ち破ります パートで働く皆さんが就業調整を意識せずに働くことができるよう 配偶者特別控除の収入制限を大幅に引き上げます とのみ述べられていた (7) また 同会議における麻生太郎財務 (5) 注 (2) にあげたものの他 拙稿 2015( 平成 27) 年度税制改正の概要と論点 ~ 地方税制の重要問題を中心に ~ 自治総研 2015 年 6 月号 76 頁 同 地方税法等の一部を改正する法律 ( 平成 27 年 3 月 31 日法律第 2 号 ) 自治総研 2015 年 12 月号 48 頁 < 下山憲治編 地方自治関連立法動向第 3 集 (2016 年 地方自治総合研究所 )89 頁 > を参照 (6) 日本再興戦略 改訂 2015 未来への投資 生産性革命 ( 平成 27 年 6 月 30 日 ) 3 頁による 経済財政運営と改革の基本方針 2015~ 経済再生なくして財政健全化なし ~ ( 平成 27 年 6 月 30 日閣議決定 骨太の方針 2015 )41 頁もこの立場を支持する 拙稿 前掲注 (2) 自治総研 2016 年 8 月号 72 頁 74 頁も参照 (7) 第 193 回国会衆議院会議録第 1 号 ( 平成 29 年 1 月 20 日 ) 5 頁

197 大臣による財政演説においては 平成 29 年度税制改正におきましては 日本経済の成長力の底上げのため 就業調整を意識しなくて済むよう配偶者控除などの見直しを行うとともに 経済の好循環を促す観点から 研究開発税制や所得拡大促進税制の見直しなどを行うことといたしております と述べられている (8) これらの発言は 平成 29 年度税制改正の主眼が個人所得課税にあることを端的に示したものとなっている そこで平成 29 年度与党税制改正大綱に目を移すならば 今回の 目玉 は 個人所得課税改革 とされている 同大綱は 有効求人倍率は25 年ぶりの高水準 失業率は21 年ぶりの低水準 賃金引上げ率は3 年連続で今世紀最高水準 (2% 水準 ) となるなど 雇用 所得環境は大きく改善している が 個人消費や設備投資は力強さを欠く状況にあるほか 新興国経済に陰りが見え 英国国民投票におけるEU 離脱の選択等 世界経済においては需要の低迷 成長の減速リスクが懸念される とし 個人消費や設備投資に力強さを欠いている背景には 人口減少 少子高齢化といった構造的な問題がある と分析する その上で かような 構造的な問題 に対処するために 子育てや介護への不安をなくし 女性や若者の活躍を進めることにより 少子高齢化の流れに歯止めをかけ 誰もが生きがいを感じられる 一億総活躍社会 の実現 のために 働き方改革 の一環として 経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革の第一弾として 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しを行う と述べる (9) 平成 27 年度与党税制改正大綱および平成 28 年度与党税制改正大綱においては検討課題とされていた事項が ようやく改正の対象とされることとなったのである 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しが 個人所得課税改革 の第一弾であるとすれば 第二弾は何かという問題が生ずるが 平成 29 年度与党税制改正大綱は 今後とも 格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間 世代内の公平の実現 簡素な制度の構築といった考え方の下 検討を進める とした上で 今後数年をかけて 基礎控除をはじめとする人的控除等の見直し等の諸課題に取り組んでいくこととする 平成 30 年度税制改正において 控除方式のあり方について検討を進める と (8) 第 193 回国会衆議院会議録第 1 号 ( 平成 29 年 1 月 20 日 ) 9 頁 平成 29 年 2 月 14 日の麻生財務大臣による所信表明も同旨 ( 第 193 回国会衆議院財務金融委員会議録第 1 号 ( 平成 29 年 2 月 14 日 ) 2 頁 ) (9) 平成 29 年度与党税制改正大綱 1 頁

198 宣言し 所得控除の他にゼロ税率 税額控除などの導入の検討 基礎控除などの人的控除の見直しを行う旨を予告している (10) また 検討事項 として年金課税 寡婦控除 などがあげられている (11) 個人所得課税改革 は 国税たる所得税はもとより 地方税たる都道府県個人住民税および市町村個人住民税にも関わるものであるだけに 平成 29 年度与党税制改正大綱の 第一平成 29 年度税制改正の基本的考え方 においてかなり大きなスペースが割かれており 主眼あるいは 目玉 であることは明白である また 平成 28 年 12 月 22 日の 平成 29 年度税制改正の大綱 ( 閣議決定 以下 平成 29 年度政府税制改正大綱と記し 他年度のものについては平成 年度政府税制改正大綱と記す ) は 我が国経済の成長力の底上げのため 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除 配偶者特別控除の見直しを行うとともに 経済の好循環を促す観点から研究開発税制及び所得拡大促進税制の見直しや中小企業向け設備投資促進税制の拡充等を行う あわせて 酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から酒税改革を行うとともに 我が国企業の海外における事業展開を阻害することなく 国際的な租税回避により効果的に対応するため外国子会社合算税制を見直す このほか 災害への税制上の対応に係る各種の規定の整備等を行う と述べる (12) こちらは簡潔に やや羅列的に書かれているものの やはり筆頭に配偶者控除 配偶者特別控除の見直しをあげている 与党税制改正大綱と同じく 成長力 が一つのキーワードになっており 根本的に 平成 27 年度与党税制改正大綱および平成 28 年度与党税制改正大綱における 成長志向の法人税改革 と共通の思考に基づいていることが示されている そして 地方税法等一部改正法案の提案理由によると 平成 29 年度税制改正のうち 地方税制度に関する部分は 次のようにまとめられる 我が国経済の成長力の底上げのため 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点からの個人住民税の配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し (13) 環境への負荷の少ない自動車を対象とした自動車取得税 自動車税及び軽自動車税の特例措置の見直し (10) 平成 29 年度与党税制改正大綱 2 頁 3 頁 5 頁 (11) 平成 29 年度与党税制改正大綱 131 頁 (12) 平成 29 年度政府税制改正大綱 1 頁 (13) 所得税法等一部改正法案の提案理由においても同じ文言が示されている

199 居住用超高層建築物に係る新たな固定資産税の税額算定方法等の導入 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への個人住民税の税源移譲等 税負担軽減措置等の整理合理化等 また 高市早苗総務大臣は 平成 29 年 2 月 16 日の衆議院総務委員会での趣旨説明において 現下の経済情勢等を踏まえ 我が国経済の成長力の底上げなどの観点から 地方税に関し 所要の施策を講ずるため 本法律案を提出した と述べた上で 主要な改正点を次のように掲げた (14) 個人住民税( 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への税源移譲等 ) 車体課税 自動車取得税 自動車税及び軽自動車税の税率の軽減等の特例措置 の見直し および適用期限の延長 ( 平成 31 年 3 月 31 日まで ) 固定資産税 都市計画税及び不動産取得税の改正 税負担軽減措置等の整理合理化等 2 個人所得課税改革 の一端としての配偶者控除 配偶者特別控除の見直しここで 地方税法等一部改正法案が国会に提出されるまでの動向を概観するが 個人所得課税改革 が打ち出されたことに鑑み 本稿においては配偶者控除 配偶者特別控除の見直しに絞り 概観を試みる また 平成 29 年度税制改正に結びつかなかった若干の事項についても概観する 配偶者控除 配偶者特別控除は 女性の社会進出 性の平等などの観点から 廃止を含めて様々な議論が行われてきたところである たとえば 民主党政策集 index 2009 は 相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し 税額控除 手当 給付付き税額控除への切り替えを行い 下への格差拡大を食い止め るとして 子育てを社会全体で支える観点から 配偶者控除 扶養控除 ( 一般 高校生 大学生等を対象とする特定扶養控除 老人扶養控除は含まない ) は 子ども手当 へ転換します と明言した (15) しかし 民主党政権時代には見直しないし改正への具体的な動きは見られなかった (14) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 3 号 ( 平成 29 年 2 月 16 日 ) 34 頁 (15) 民主党政策集 index 頁

200 第二次安倍内閣発足以後 平成 25 年 6 月 14 日の 日本再興戦略 ~JAPAN is BACK~ ( 閣議決定 ) において 女性の活躍推進 のために 男女が共に仕事と子育て等を両立できる環境の整備 の一環として 働き方の選択に関して中立的な税制 社会保障制度の検討を行う ことが打ち出された (16) 同年 安倍内閣総理大臣は政府税制調査会に 女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている現在の税 社会保障制度の見直し及び働き方に中立的な制度について検討を行ってもらいたい という指示を行い これを受けて政府税制調査会における議論が始められた (17) ここで配偶者控除の見直し さらに人的控除や給与所得控除などのあり方に関して意見などが交わされたようであり 当税制調査会としては 女性の働き方の選択に対して中立的な社会制度を構築していくためには 税制にとどまらず社会保険制度や企業の賃金制度等における課題に対しても合わせて検討が進められることが必要と考える が その中で税制としてどのような対応が考えられるか これまでの議論を踏まえ 引き続き幅広く検討を進める 個人所得課税について 経済社会の構造変化や厳しい財政事情等も踏まえ 所得再分配機能や財源調達機能といった 基幹税としての役割を適切に発揮させるため 課税ベースや控除の在り方等についても 中長期的な観点から 幅広く議論を行っていく とまとめられた (18) 平成 26 年 11 月 7 日に 政府税制調査会は 働き方の選択に対して中立的な税制の構築をはじめとする個人所得課税改革に関する論点整理 ( 第一次レポート ) ( 以下 第一次レポート ) をまとめた ここにおいては 配偶者控除の問題点への指摘として 片働きを一方的に優遇するなど 個々人の働くことへの選択を歪めることは適当ではない パート世帯 においては 配偶者が基礎控除の適用を受けるとともに納税者本人も配偶者控除の適用を受けている ( いわゆる 二重の控除 が行われている ) ため 片働き世帯 や 共働き世帯 よりも控除額の合計額が多く アンバランスが生じている 配偶者の収入が103 万円を超えると納税者本人が配偶者控除を受けられなくなることが配偶者の就労を抑制する 壁 になっている ことがあげられた その上で 今後の選択肢として 配偶者控除の廃止と子育て支援の拡充 配偶者控除の適用に所得制限を設けるとともに子育て支援を拡充 いわ (16) 日本再興戦略 ~JAPAN is BACK~ ( 平成 25 年 6 月 14 日閣議決定 )33 頁 (17) 政府税制調査会 女性の働き方の選択に対して中立的な税制の検討にあたっての論点整理 ( 平成 26 年 6 月 11 日 ) 1 頁 (18) 第一次レポート 2 頁

201 ゆる移転的基礎控除の導入と子育て支援の拡充 いわゆる移転的基礎控除の導入 税額控除化と子育て支援の拡充 および 夫婦世帯 を対象とする新たな控除の導入と子育て支援の拡充 が示され それぞれの論点も摘示された (19) さらに 平成 27 年 11 月 13 日に政府税制調査会がまとめた 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 は 個人所得課税については 所得再分配機能の回復を図り 経済力に応じた公平な負担を実現するための見直しを行う必要がある として 第一次レポート において提示された5つの選択肢についての検討を深める必要性を述べ さらに ひとり親世帯 や単身の低所得者も存在することから 世帯の多様性を踏まえた丁寧な議論が必要である ことを指摘している (20) また ゼロ税率や税額控除の採用についての検討の必要性も訴えている (21) 他方 平成 28 年 6 月 2 日の 経済財政運営と改革の基本方針 2016~600 兆円経済への道筋 ~ ( 閣議決定 以下 骨太の方針 2016 ) は 税制の構造改革 として 経済社会の構造が大きく変化する中 引き続き 税体系全般にわたるオーバーホールを進める 特に 個人所得課税や資産課税については 政府税制調査会が取りまとめたこれまでの論点整理に沿って 同調査会における更なる議論も踏まえつつ 経済社会の構造変化を踏まえた税制の構造的な見直しを計画期間中のできるだけ早期に行う とした (22) しかし 政府税制調査会において 配偶者控除 配偶者特別控除をどのように見直すのかについて 委員の間に意見の相違があり 取りまとめまでには至らなかった すなわち 平成 28 年 11 月 14 日の 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する中間報告 ( 以下 中間報告 ) において 働き方の選択に対して中立的な税制を構築する観点から現在の配偶者控除を更に見直すことが適当であり その際には税収中立を堅持する必要があるとの方向性で一致した が 1 配偶者控除を廃止す (19) 第一次レポート 4 頁 7 頁 ここで いわゆる移転的基礎控除 は 配偶者の所得の計算において控除しきれなかった基礎控除を納税者本人に移転するための仕組み 夫婦世帯 を対象とする新たな控除 は 夫婦世帯に対し配偶者の収入にかかわらず適用される新たな控除 と説明されている 森信茂樹 アベノミクスと税 社会保障の現状 森信茂樹編著 税と社会保障でニッポンをどう再生するか (2017 年 日本実業出版社 )53 頁も参照 (20) 政府税制調査会 経済社会の構造変化を踏まえた税制のあり方に関する論点整理 ( 平成 27 年 11 月 13 日 ) 4 頁 6 頁 (21) 政府税制調査会 前掲注 (20)8 頁 (22) 骨太の方針 頁

202 るとともに廃止によって生じる財源を子育て支援の拡充に充てる 2 配偶者控除に代えて移転的基礎控除を税額控除方式で導入する 3 配偶者控除に代えて夫婦世帯を対象とした新たな控除を設ける の三案が併記される形となった (23) このうち 1は中立的な制度となりうるが 他の所得控除との整合性などの問題があるとされる 次に 2は中立性に資し 所得再分配機能の回復にも資するが 世帯単位で税負担を捉える考え方であり 現行の所得税制との兼ね合いが問題となるとされる (24) そして 3は現行の配偶者控除とは異なり 配偶者の収入が一定額以下であることによって居住者の担税力の減殺を調整するものではない上に 具体的にいかなる内容の控除 ( 所得控除か税額控除かは不明 ) とするかにより 様々な問題が生じうる そのため 政府税制調査会は 少子化対策の観点からまずは夫婦の形成を支援することに意義があるが 夫婦ではなく子供に着目した支援を行う方が直接的ではないか 離別や死別により支援がなくなることをどう考えるべきか といった課題がある と述べるが (25) 例えばシングルマザーの子育てについては何の支援にもならないから 少子化対策の観点からしても有益とは言い難い むしろ 税制により不合理な差別を助長することにならないのか という疑問も生じうるところであろう なお 中間報告 においては4 税収中立の考え方を踏まえつつ 配偶者の収入制限である 103 万円 を引き上げる という案も 上記三案とは別に意見として示されている これは 配偶者控除に係る 103 万円 という水準が企業の配偶者手当の支給基準として援用されていることなどが就業調整という喫緊の課題の一因ではないかとの指摘に対応する観点 に立つものであるが (26) 結果的にはこの4を基本とする内容が税制改正において実現されることとなった 中間報告 は 配偶者控除 配偶者特別控除以外の所得控除についても 所得再分配機能の回復という観点からの見直しの必要性を述べている 但し 政府税制調査 (23) 中間報告 4 頁 (24) たしかに 現行の所得税制は個人単位課税を基本とするが 所得税法第 56 条など 世帯単位課税と言えるものも存在する なお 所得税法第 56 条については 遠別町 ( 北海道 ) 平取町 ( 北海道 ) 福島市および築上町 ( 福岡県 ) の各議会から廃止を求める意見書が 明日香村 ( 奈良県 ) および神埼市 ( 佐賀県 ) の各議会から見直しを求める意見書が 国会に提出されている ( 第 193 回国会衆議院財務金融委員会議録第 1 号 ( 平成 29 年 2 月 14 日 ) 1 頁において紹介されている 但し 各意見書の内容は明らかにされていない ) (25) 中間報告 5 頁 (26) 中間報告 5 頁

203 会の方向性は 税額控除方式の拡充などではなく 高所得者について所得控除額が逓減ないし消失する所得控除制度の採用を軸とするもののようである (27) また 具体的な方向は十分に示されていないが 働き方の多様化 との関連で 家族構成などの人的な事情に応じた負担調整を行う 人的控除 の役割の重要性が高まっていると考えられる として 基礎控除などの人的控除のあり方の見直しを提言している (28) 以上のような政府税制調査会における議論に対し 地方財政審議会は 平成 28 年 11 月 18 日にまとめられた 平成 29 年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見 ~ 地方分権の基盤となる地方税の充実に向けて~ ( 以下 地財審意見 ) において次のように見解を述べている まず 個人所得課税改革 については 近年の地方財政を取り巻く厳しい現状の下 個人住民税の充実 確保を図りながら その性格や役割を踏まえて検討する必要があ り 個人住民税は 地域住民が地域社会の会費をその能力に応じ 広く負担を分任するという性格 ( 地域社会の会費的性格 ) を有 し 平成 18 年度税制改正における所得割の比例税率化によって 個人住民税の応益的性格がより明確化されるとともに 人口一人当たり税収の格差が縮小し 個人住民税はより偏在性の小さい税となった こうした改革の方向性は 引き続き重視すべきである と述べる (29) その上で 政府税制調査会における議論の重心が所得税に偏っていると捉えられたためであろうか 個人住民税所得割は比例税率であるのに対し 所得税は累進税率となっている 個人所得課税改革の検討にあたっては それぞれの税の性格等に応じた役割分担を明確化する方向で検討を進めるべきである 特に 比例税率であることは 所得控除 ゼロ税率 税額控除のいずれを選択しても税負担調整の効果が同じとなることに留意が必要である と述べる (30) また 配偶者控除 配偶者特別控除については 政府税制調査会において議論された改革案のそれぞれに対する評価は避けられ この課題は 家族のあり方や働き方に関する国民の価値観に深く関わる問題でもあることから 国民的議論が十分に尽くされる必要がある 配偶者控除のあり方については 所得税における制度改正の (27) 中間報告 6 頁 (28) 中間報告 7 頁 (29) 地財審意見 7 頁 なお 地財審意見 の解説として東田晃拓 平成 29 年度地方税制改正等に関する地方財政審議会意見 について 地方税 2017 年 1 月号 152 頁がある (30) 地財審意見 8 頁 また 税収の地域間の格差が拡大しないようにすべきである とも述べられている

204 方向性を見極めつつ これまで述べてきた個人住民税の性格 役割を踏まえて検討することが重要である と述べられるに留まっているが 個人住民税の人的控除は 個人住民税の地域社会の会費的性格から 所得税と同様の体系としながら その金額が所得税より低く設定されていることに 注意を向けている (31) 政府税制調査会が意見をまとめることができず 地方財政審議会も積極的な見解表明を手控えたのに対し 個人所得課税改革 の一端としての配偶者控除 配偶者特別控除の見直しは 政治により決着が図られることとなる 平成 28 年 10 月から与党の税制調査会が動き出し 11 月 24 日に自由民主党税制調査会正副顧問 幹事会および小委員会において個人所得課税改革の審議が行われた (32) この場において 中間報告 などの説明聴取がなされているが 会長の宮沢洋一氏が既に財務省および総務省に作成を指示していた配偶者控除 配偶者特別控除の見直し案が検討されている また 12 月 1 日にも正副顧問 幹事会および小委員会が開催され 討議がなされている この見直し案を参照することはできなかったが おそらく 中間報告 における4と同旨であり 平成 29 年度与党税制改正大綱にそのまま取り入れられたものと思われる その後 同月 7 日に自由民主党税制調査会正副顧問 幹事会および小委員会において最終的取りまとめが行われ 翌日に平成 29 年度与党税制改正大綱が取りまとめられた なお 与党間の意見調整は11 月 25 日 12 月 2 日 同月 6 日および7 日に行われている なお 平成 29 年 1 月 27 日に開かれた政府税制調査会において 同調査会特別委員の神津里季生氏 ( 日本労働組合総連合会 ) による意見書が提出された 神津氏は わが国の経済社会の現状を踏まえると 個人所得税改革の最も重要な論点は所得再分配機能の強化であり 配偶者控除はもちろん人的控除全体の見直しも含めた個人所得税の再構築が必要であることを主張して きたが 平成 29 年度税制改正案の内容が配偶者控除の見直しといった部分的な制度変更にとどまったことは 遺憾であり 今回の税制改正案は 当調査会の議論の方向とは異なり 目先の対応にとらわれた与党の意向が強く反映された内容になってしまったとの印象 を受けたと批判している (33) (31) 地財審意見 9 頁 (32) 以下 この部分は総務省自治税務局企画課他 前掲注 (1)22 頁に基づく (33) この日の税制調査会において財務省および総務省から平成 29 年度税制改革に関する説明が行われたが 神津氏は当日の税制調査会を欠席した

205 3 改正事項に取り入れられなかったもの配偶者控除 配偶者特別控除の見直し以外の主要改正事項については後に概観することとして ここでは平成 29 年度税制改正に盛り込まれず 検討事項とされた森林環境税 ( 仮称 ) およびゴルフ場利用税について取り上げておく (34) (1) 森林環境税 森林環境税 ( 高知県 ) 水源環境保全税 ( 神奈川県 ) 横浜みどり税 ( 横浜市 ) など 名称こそ様々であるが 既に37 府県および横浜市は 森林環境および水源環境の保全を目的として 個人住民税および法人住民税の均等割の超過課税を行っている (35) しかし 地球温暖化対策の一環としての森林整備は全国的な課題であり また平成 14 年に京都議定書を受諾し ( 採択は平成 9 年 ) 平成 28 年 11 月にパリ協定を締結 ( 採択は平成 27 年 ) した日本にとって 森林整備は二酸化炭素削減の目標を達成するための手段でもある このための財源を確保することを目的とする租税は 平成 16 年度より環境省から導入の要望が出されるなど 長らく検討課題とされてきた そして 農林水産省 環境省および林野庁から森林環境税の創設 ( の検討 ) が平成 29 年度税制改正に対する要望として打ち出された また 全国町村会副会長の更谷慈禧氏 ( 十津川村長 奈良県町村会長 ) は 平成 28 年 10 月 19 日に開かれた自由民主党 予算 税制に関する政策懇談会 において森林環境税の早期導入を求めた (36) 一方 地方財政審議会は 森林整備等に関する市町村の役割の強化等の施策が講じられること を求めた上で 税制等の新たな仕組みを検討する際には 国 都道府県 市町村の森林整備等に係る役割分担等について 一部の地方自治体が独自に実施してい (34) 本来は仮称であるが 森林環境税 の表記とする なお この部分についても 総務省自治税務局企画課他 前掲注 (1)83 頁に多くを負っていることをお断りしておく (35) 但し 水源環境保全税 ( 神奈川県 ) の場合は個人住民税の所得割および均等割について超過課税が行われ 法人住民税については行われない ( 神奈川県税条例附則第 39 条 ) また 豊かな森を育てる府民税 ( 京都府 ) および 森林環境税 ( 大阪府 ) の場合は個人住民税の均等割のみについて超過課税が行われる ( 京都府豊かな森を育てる府民税条例第 3 条 大阪府森林の有する公益的機能を維持増進するための環境の整備に係る個人の府民税の税率の特例に関する条例第 2 条 ) 遠藤真弘 森林環境税 これまでの経緯と創設に向けた論点 調査と情報 875 号 (2015 年 ) 平成 28 年度東京都税制調査会第 1 回小委員会 環境税制に関する資料 ( 平成 28 年 6 月 3 日 ) 28 頁 総務省自治税務局 森林環境税 ( 仮称 ) の検討状況について ( 平成 29 年 10 月 ) も参照 (36) 全国町村会 自由民主党 予算 税制に関する政策懇談会 に更谷副会長が出席 (10/19) (

206 る超過課税との関係にも留意しつつ 整理するとともに 国民負担のあり方などについて 地方自治体からの意見等も踏まえ 幅広く丁寧な検討が必要である と述べている (37) 平成 29 年度与党税制改正大綱は 森林吸収源対策 として 2020 年度及び2020 年以降の温室効果ガス削減目標の達成に向けて 森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する安定的な財源の確保 のための措置を講ずるとし 森林整備や木材利用の推進のために市町村が果たす役割 ( 林地台帳の整備など ) が重要であるから 市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てる ために森林環境税を創設することを検討する旨を述べる (38) 仕組みとしては 個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市 地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする が 具体的な内容についてはさらなる検討課題とされ 平成 30 年度税制改正において結論を得ることとされている (39) しかし 個人住民税均等割の枠組みの活用 が軸になるとすれば 先行する地方税と課税客体および課税標準を同じくすることとなり 課税自主権の侵害を意味することとなる 全国知事会も これまで森林整備等に都道府県が積極的に関わってきていることについての対応 都道府県を中心として独自に課税している森林環境税等との関係については示されておらず また 税収を全額地方税財源とすること等の具体の制度設計についても触れられていない と批判し 税収は全額地方の税財源となるよう制度設計するとともに 都道府県の役割や都道府県を中心として独自に課税している森林環境税等との関係について しっかりと調整する ことを要求している (40) また 全国市長会は 恒久財源の確保は必要不可欠 としながらも 国民に等しく負担を求める以上 新たな仕組みの導入に際しては 国 都道府県 市町村の役割分担をしっかり整理したうえで 我々都市自治体の意見を十分に踏まえていただきたい と主張している (41) (37) 地財審意見 17 頁 (38) 平成 29 年度与党税制改正大綱 14 頁 (39) 平成 29 年度与党税制改正大綱 15 頁 (40) 全国知事会 平成 29 年度与党税制改正大綱 について ( 平成 28 年 12 月 8 日 (41) 全国市長会 平成 29 年度与党税制改正大綱について ( 平成 28 年 12 月 8 日

207 (2) ゴルフ場利用税地方税法第 75 条以下に規定されるゴルフ場利用税は道府県税であり その税収の10 分の7がゴルフ場所在の市町村または特別区に交付されることとされる ( 同第 103 条 ) このため 道府県はもとより 実質的には市町村にとっても貴重な財源の一つとなっている しかし 前身の娯楽施設利用税について合憲性が争われ 最一小判昭和 50 年 2 月 6 日集民 114 号 117 頁は合憲としたものの スポーツ施設の利用のうちゴルフ場についてのみが課税の対象となることに疑念が寄せられ さらに 消費両税との二重課税が疑われるなど 問題が少なくない税目である (42) 国会においても廃止すべしという趣旨の質疑がなされたこともある (43) 国の機関では 平成 24 年以来 ( 税制改正への要望としては平成 25 年度分以来 ) 5 年続けて文部科学省がゴルフ場利用税の廃止を要望し続けてきた その理由として スポーツ基本法第 2 条を引き合いに出し ゴルフが 国民スポーツ 生涯スポーツとして国民に広く親しまれ また 2016 年リオデジャネイロオリンピックから正式競技となった ことから 多種多様なスポーツの中で唯一ゴルフのみが課税されている現状を解消し 生涯スポーツ社会の実現を目指す と主張されている (44) しかし ゴルフ場利用税の廃止の提案に対しては地方公共団体側の反発が強い 地方財政審議会も ゴルフ場利用税の税収が500 億円近くにのぼり その 7 割が市町村に交付される仕組みを通じて 財源に乏しい市町村の貴重な財源となっている こと ゴルフ場の多くは 山林原野を切り開いて開設されており 周辺の環境に大きな影響を与えている こと 特に当該自治体の区域外から来場することが多いゴルフ場の利用者が 広大な土地を少人数で占有する形でゴルフ場を利用し 特段の負担を負うことなくこれらの行政サービスを享受することは不公平であ ること ゴルフ場におけるラウンドは 他のスポーツとは事情が異な り 営業や仕事上のつき (42) ゴルフ場利用税は直接消費税であり 納税義務者はゴルフ場利用者 ( 地方税法第 75 条 ) ゴルフ場経営者等は特別徴収義務者である ( 同第 83 条 ) これに対し 消費両税は間接消費税であるから ゴルフ場のプレイ料金についての納税義務者は事業者たるゴルフ場経営者等であり ( 消費税法第 4 条第 1 項 ) ゴルフ場利用者は担税者にすぎない 従って ゴルフ場利用税と消費両税は納税義務者を異にしており 法的二重課税の例に該当しない 但し ゴルフ場利用税もプレイ料金に含まれる形で徴収されるため ゴルフ場利用者はゴルフ場利用税および消費両税を負担させられることとなる その意味において経済的二重課税に該当すると考えられる (43) 第 187 回国会における例について 拙稿 前掲注 (5) 自治総研 2015 年 12 月号 53 頁を参照 (44) 平成 29 年度文部科学省税制改正要望事項 ( 平成 28 年 8 月 30 日 icsfiles/afieldfile/2016/08/30/ _4.pdf)

208 合い 娯楽等で行われるケースも多い こと 比較的高額な支出を伴う行為であり 十分な担税力も認められる こと ゴルフがスポーツであることや 東京オリンピックの正式競技とされたことは 課税の必要性や合理性に影響を及ぼす事柄ではない ことなどをあげ 今後も維持していく必要がある と述べる (45) これを受ける形で 平成 29 年度与党税制改正大綱は ゴルフ場利用税については 今後長期的に検討する とした (46) 3. 地方税法等一部改正法 ( 案 ) の概要 前述のように 地方税法等一部改正法の内容は多岐にわたるが 主要な改正点は個人住民税 ( 配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への税源移譲等 ) 車体課税 自動車取得税 自動車税及び軽自動車税の税率の軽減等の特例措置 の見直し および適用期限の延長 ( 平成 31 年 3 月 31 日 ) 固定資産税 都市計画税及び不動産取得税の改正 などである また 税負担軽減措置等の整理合理化等 に含められているものと思われるが 地方税法第 1 章 ( 総則 ) の一部改正も重要であろう そこで これらの改正について概観していく (1) 配偶者控除 配偶者特別控除の見直し既に概観した通り 政府税制調査会は配偶者控除 配偶者特別控除の見直しに検討を重ねたものの 意見を取りまとめるまでに至らなかった 結局 自由民主党税制調査会において宮沢氏が作成を指示した見直し案が検討され 配偶者控除に所得制限を設けつつ 配偶者特別控除について配偶者の合計所得金額を 所得税については38 万円から85 万円に引き上げることとなった 従って 仮に配偶者が給与所得のみを得ており 給与収入が150 万円以下であれば 配偶者特別控除が適用されることとなる なお この150 万円については 安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である1,000 円の時給で1 日 6 時間 週 5 日勤務した場合の年収 (144 万円 ) を上回 (45) 地財審意見 17 頁 (46) 平成 29 年度与党税制改正大綱 133 頁 全国知事会 前掲注 (40) 全国市長会 前掲 (41) も参照

209 る と説明される (47) 平成 29 年度与党税制改正大綱は 配偶者控除が 一定の収入以下の扶養親族を有する場合に それぞれの事情に応じて納税者の担税力の減殺を調整する 方法の一つであり これを廃止することは 配偶者に係る配慮を何ら行わないこと につながるとして配偶者控除の廃止の意見を退ける また 夫婦世帯を対象とした新たな控除 についても 控除の適用に当たって夫婦世帯の所得に上限を設けることが必要になる が わが国においては個人単位課税を採用しており 世帯単位で所得を把握することが難しい 夫婦世帯を対象に新たな控除を設けることについて 国民の理解が深まっているとは言えない とする 他方 税制上は 103 万円の壁 が解消しているものの 心理的な壁としては作用し続け パート収入を一定の範囲内に抑えるために就業時間を抑える傾向は 最低賃金が引き上げられていくにつれ 更に強まるのではないかということが懸念される ために 配偶者特別控除の上限額を引き上げることとした と述べる (48) これを受ける形で 所得税法等一部改正法第 1 条により所得税法第 83 条および第 83 条の2が 地方税法等一部改正法第 2 条により地方税法第 34 条第 1 項第 10 号 同第 10 号の2 同第 314 条の2 第 1 項第 10 号および同第 10 号の2が改正され 所得税法については平成 30 年分以後の所得税について 地方税法については平成 31 年度分以後の個人住民税について施行される < 表 1>~< 表 4>において改正内容を示したので 参照されたい (47) 平成 29 年度与党税制改正大綱 4 頁 (48) 平成 29 年度与党税制改正大綱 3 頁

210 < 表 1> 所得税の配偶者控除 居住者の合計所得金額 控除対象配偶者 現行平成 30 年分以降 老人控除対象配偶者 控除対象配偶者 老人控除対象配偶者 900 万円以下 38 万円 48 万円 38 万円 48 万円 900 万円超 950 万円以下 38 万円 48 万円 26 万円 32 万円 950 万円超 1,000 万円以下 38 万円 48 万円 13 万円 16 万円 1,000 万円超 38 万円 48 万円 適用なし 適用なし < 表 2> 個人住民税所得割の配偶者控除 個人住民税所得割の納税義務者の合計所得金額 控除対象配偶者 現行平成 31 年度分以降 老人控除対象配偶者 控除対象配偶者 老人控除対象配偶者 900 万円以下 33 万円 38 万円 33 万円 38 万円 900 万円超 950 万円以下 33 万円 38 万円 22 万円 26 万円 950 万円超 1,000 万円以下 33 万円 38 万円 11 万円 13 万円 1,000 万円超 33 万円 38 万円 適用なし 適用なし < 表 3> 所得税の配偶者特別控除 居住者の合計所得金額 配偶者の合計所得金額 900 万円超 950 万円超 900 万円以下 950 万円以下 1,000 万円以下 38 万円超 85 万円以下 38 万円 26 万円 13 万円 85 万円超 90 万円以下 36 万円 24 万円 12 万円 90 万円超 95 万円以下 31 万円 21 万円 11 万円 95 万円超 100 万円以下 26 万円 18 万円 9 万円 100 万円超 105 万円以下 21 万円 14 万円 7 万円 105 万円超 110 万円以下 16 万円 11 万円 6 万円 110 万円超 115 万円以下 11 万円 8 万円 4 万円 115 万円超 120 万円以下 6 万円 4 万円 2 万円 120 万円超 123 万円以下 3 万円 2 万円 1 万円

211 < 表 4> 個人住民税所得割の配偶者特別控除 配偶者の合計所得金額 38 万円超 85 万円以下 (52) 85 万円超 90 万円以下 個人住民税所得割の納税義務者の合計所得金額 900 万円以下 (49) 900 万円超 950 万円以下 (50) 33 万円 22 万円 90 万円超 95 万円以下 31 万円 21 万円 950 万円超 (51) 1,000 万円以下 11 万円 95 万円超 100 万円以下 26 万円 18 万円 9 万円 100 万円超 105 万円以下 21 万円 14 万円 7 万円 105 万円超 110 万円以下 16 万円 11 万円 6 万円 110 万円超 115 万円以下 11 万円 8 万円 4 万円 115 万円超 120 万円以下 6 万円 4 万円 2 万円 (53) 120 万円超 123 万円以下 3 万円 2 万円 1 万円 配偶者控除についての所得制限に注意しなければならないとはいえ 配偶者特別控除の上限額を引き上げることにより 実質的には配偶者控除の適用限度が高くなったのと同じ効果が得られることとなる (54) 前述のように 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しは 個人所得課税改革 の第一弾として位置づけられており 平成 29 年度与党税制改正大綱は 今後の 個人所得課税改革 における検討課題をあげている まず 日本の所得税制から失われた または弱体化したと評価されて久しい所得再分配機能の回復を図ることとし そのため (49) 給与所得者については 給与収入が 1,120 万円以下の者 ( 地方税制度研究グループ Q&A 地方税関係の改正の要点 税 2017 年 2 月号 12 頁による 注 (53) まで同じ ) (50) 給与所得者については 給与収入が 1,120 万円超 1,170 万円以下の者 (51) 給与所得者については 給与収入が 1,170 万円超 1,220 万円以下の者 ( 従って 給与収入が 1,220 万円超の者については 配偶者特別控除の適用がない (52) 配偶者の合計所得金額が 90 万円 ( 給与収入 155 万円 ) 以下であることを意味する なお 現行の制度では 配偶者の合計所得金額 45 万円 ( 給与収入 110 万円 ) 未満である場合の配偶者特別控除は 33 万円である ( 納税義務者の合計所得金額は考慮されない ) (53) 配偶者の合計所得金額が 123 万円 ( 給与収入 201 万円 ) 超であれば 所得割の納税義務者について配偶者特別控除の適用はない なお 現行の制度では 配偶者の合計所得金額 76 万円 ( 給与収入 141 万円 ) 以上である場合には配偶者特別控除の適用がない (54) 中村 前掲注 (4)57 頁 但し 配偶者手当の 103 万円の壁 社会保険の 130 万円の壁 および 106 万円の壁 ( 大企業におけるもの ) が残されており 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しの効果が限定的であるとも指摘される ( 同 58 頁 )

212 に 各種控除等の総合的な見直し として基礎控除などの人的控除の見直しを行うと宣言する その上で 現行の所得課税制度においては所得控除方式が主流となっているが 高額所得者ほど租税負担の軽減効果が高いことが指摘される このため 税額控除方式もしくはゼロ税率方式の採用 または高額所得者について租税負担の軽減額が逓減ないし消滅する構造の所得控除方式の採用の検討も明言されている (55) しかし 各種控除を見直したところで どの程度まで所得再分配機能の回復が実現できるかは不透明である 利子所得 配当所得 譲渡所得など 租税特別措置法等により分離課税 比例税率とされる所得 ( あるいは場面 ) が多くなっており これらが高額所得者の租税負担の軽減に資することも否めない 租税特別措置の整理統合による課税ベースの拡大 および分離課税の縮小も 中長期的な課題として位置づけるべき時にきているのではなかろうか また 平成 29 年度与党税制改正大綱は 個人住民税のあり方についても検討を行うとしている おそらくは応益課税原則および負担分任原則を踏まえつつの再検討になると考えられるが 現行の個人住民税は比例税率を採用しているため 控除方式の選択による税負担調整の効果に制約がある とも指摘されている (56) 金額を含めた各種控除の見直しの他に 超過累進課税の復活なども検討に値するのではなかろうか なお 平成 29 年度与党税制改正大綱は 今回の配偶者控除 配偶者特別控除の見直しによる平成 31 年度分以後の個人住民税の減収額については 全額が国費で補塡する と言明するが 詳細は示されていない (57) (2) 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への税源移譲等 地域の自主性及び自立性を高めるための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律 ( 第 4 次地方分権一括法 平成 26 年 6 月 4 日法律第 51 号 ) 第 5 条は 市町村立学校職員給与負担法第 1 条第 1 項等を改正し 市町村立小学校教職員の給与負担事務を道府県から指定都市 ( 地方自治法第 259 条の19 第 1 項 ) に移譲する旨を定める これを受ける形で 地方税法等一部改正法第 1 条は地方税法第 35 条第 1 項および第 314 条の3 第 1 項を改正し 指定都市についてのみ個人住民税所得割の標準税率を変更する旨を定める (55) 平成 29 年度与党税制改正大綱 5 頁 (56) 平成 29 年度与党税制改正大綱 5 頁 (57) 平成 29 年度与党税制改正大綱 19 頁

213 具体的には 平成 30 年度分以降に指定都市に住所を有する者について 次のように 改められる 平成 29 年度分まで 平成 30 年度分以降 道府県民税 4% 2% 市民税 6% 8% また 指定都市に住所を有する者についての 分離課税等に係る指定都市所在道府県分と指定都市分の税率割合および税額控除の割合は 原則として上の通りに合わせられる なお 平成 30 年度分個人住民税から税率が変更されるまで 経過措置として次のような措置がとられることとなっている (58) 平成 29 年度の収入となる個人住民税 ( 退職所得の分離課税に係る所得割を除く ) ならびに平成 30 年度の収入となる個人住民税のうち給与所得 : 指定都市所在道府県から指定都市へ税額移譲相当額を交付する 平成 30 年度の収入となる個人住民税のうち 給与所得に係る特別徴収によるもので 平成 30 年 4 月および5 月に支払われる給与等に係るもの : 指定都市所在道府県から指定都市へ税額移譲相当額を交付する (3) 車体課税平成 28 年度税制改正により 自動車取得税 ( 地方税法第 113 条以下 ) は 平成 29 年 4 月 1 日に予定されていた消費両税の税率引き上げに伴い廃止され 同時に自動車税 ( 同第 145 条以下 ) および軽自動車税 ( 同第 442 条以下 ) に環境性能割を導入するものとされており 電気自動車 天然ガス自動車 充電機能付電力併用自動車など一定の種類の自動車については環境性能割を非課税とする規定 ( 同新第 149 条 新第 446 条 ) を置くことを予定していた しかし 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための地方税法及び地方交付税法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律 ( 平成 28 年 11 月 28 日法律第 86 号 ) 第 3 条により 自動車取得税の廃止時期 および自動車税および軽自動車税への環境性能割の導入は平成 31 年 10 月 1 日に延期された (58) 平成 29 年度与党税制改正大綱 40 頁

214 これに伴い 地方税法附則第 12 条の2 第 1 項に定められる一般乗合用バスについての非課税措置は平成 31 年 3 月 31 日 ( 取得日 ) まで延長され 同第 2 項に定められる電気自動車 天然ガス自動車 ハイブリッド車などの非課税措置は 適用要件の変更を伴いつつ平成 30 年 3 月 31 日 ( 取得日 ) まで延長された また 同第 12 条の2の2 以下に定められる自動車取得税の税率の特例 ( エコカー減税 ) も 平成 32 年度燃費基準の下での適用要件の見直しを伴った上で平成 30 年 3 月 31 日 ( 取得日 ) まで延長される ( 適用の対象範囲は平成 29 年 4 月 1 日および平成 30 年 4 月 1 日に見直される ) また 電気自動車 天然ガス自動車 メタノール自動車 ハイブリッド車などに適用される自動車税の税率の特例 ( 地方税法附則第 12 条の3 グリーン化特例) についても改正が行われ 適用期限が平成 31 年度分まで延長された なお 厳密には車体課税と言えないが 航空機燃料譲与税法の改正にも触れておく 航空機燃料譲与税法第 1 条第 1 項および第 3 条第 1 項は 航空機燃料税 ( 航空機燃料税法 ) の収入額の13 分の2に相当する額を 空港関係市町村 および 空港関係都道府県 に対して譲与する旨を定めるが 同附則第 2 項は 平成 23 年度から平成 28 年度までの各年度分の航空機燃料譲与税に限り 第 1 条第 1 項及び第 3 条第 1 項の規定の適用については これらの規定中 13 分の2 とあるのは 9 分の2 とする と定めていた 地方税法等一部改正法第 3 条は 航空機燃料譲与税法附則第 2 項のうちの 平成 28 年度 を 平成 31 年度 に改める旨を定める 従って 航空機燃料譲与税の譲与割合を引き上げる措置は3 年延長されることとなる 平成 29 年度与党税制改正大綱には理由などが示されていないが 一般乗合用のバスに係る自動車取得税の非課税措置の適用期限 などの延長とともに掲げられていることから 消費両税の税率引き上げの再延期に伴う措置であると考えられる なお 改正規定の施行日は平成 29 年 4 月 1 日である (4) 固定資産税 都市計画税及び不動産取得税の改正 (59) これらの税目についても多くの改正が行われたが 不動産取得税の非課税に関する特例 ( 地方税法附則第 10 条 ) 不動産取得税の課税標準に関する特例( 同第 11 条 ) 固定資産税等の非課税に関する特例 ( 同第 14 条 ) など 適用期限の延長が多い その中で目新しいものは居住用超高層建築物 ( 建築基準法第 20 条第 1 項第 1 号に規定され (59) この部分については 滝他 前掲注 (1)81 頁に多くを負っている

215 る建築物で 複数の階に住戸が所在するもの居住の用に供するもの いわゆるタワーマンションが該当する ) に係る固定資産税等の見直しである これは 地方税法等一部改正法第 1 条による地方税法第 352 条の改正 ( 新第 2 項を追加し 旧第 2 項を第 3 項に繰り下げる等 ) 地方税法等一部改正法第 2 条による地方税法第 73 条の2の改正 ( 新第 5 項を追加し 旧第 5 項以下は第 6 項以下に繰り下げ ) および同第 352 条新第 2 項の改正 ( 微修正 ) によるものである 財産評価基本通達 89は 家屋の価額は その家屋の固定資産税評価額 ( 地方税法第 381 条 (( 固定資産課税台帳の登録事項 )) の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう 以下この章において同じ ) に別表 1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する と定める ( 別表 1に定める倍率 は1.0とされている ) そのため 区分所有に係る家屋の場合には 一棟全体の評価額を算出した上で各区分所有者が専有する床面積の割合により税額を按分することとなる ここで床面積が同じであれば階が異なっても同じ評価額となり 固定資産税等の税額 さらには相続税の評価額も同じとなる しかし 居住用超高層建築物の場合は高層階ほど取引価額も高額になる傾向が強く 資産の評価と実際の取引価額との間に均衡が取れないという現象が生じ (60) これが相続税に関する節税対策として利用されるに至った そこで 住戸の所在する階の違いによる取引価額の相違を反映するように 居住用超高層建築物全体に係る固定資産税額を各区分所有者に按分する際に用いる床面積につき 取引単価の変化の傾向を反映するための補正率 ( 階層別専有床面積補正率 ) を用いて補正することとした ( 地方税法第 352 条新第 2 項 ) 不動産取得税についても同様である ( 同第 73 条の2 新第 5 項 ) 階層別専有床面積補正率は総務省令たる地方税法施行規則において定められることとなっているが 平成 29 年度与党税制改正大綱においては 1 階を100とし 階が1つ増える毎に これに 10を39で除した数を加えた数値 とされる (61) たとえば 30 階にある部屋に関する補正率は100+10/39 (30-1) 107.4となる 以上の改正は 平成 30 年度から新たに課税される居住用超高層建築物について適用 (60) 地財審意見 14 頁も同旨 (61) 平成 29 年度与党税制改正大綱 43 頁 なお 地方税法第 352 条の改正を受けて地方税法施行規則第 15 条の 3 の 1 も改正され 階層別専有床面積補正率は新第 3 項に定められている ( 同第 5 項も参照 )

216 される (62) 但し 平成 29 年 4 月 1 日より前に売買契約がなされた住戸を含むものは 除かれる (5) 地方税法第 1 章の一部改正政府税制調査会の 国税犯則調査手続の見直しに関する会合 が平成 28 年 11 月 14 日に取りまとめた 国税犯則調査手続の見直しについて は 国税犯則調査手続をIC T 化 ( 情報処理の高度化等 ) に対応させるために規定を整備すべきであるとする検討結果を示し あわせて国税犯則取締法の 現代語化 を要請した これを受ける形で 平成 29 年与党税制改正大綱は 国税犯則調査手続および地方税犯則調査手続の改正内容を示すとともに 国税犯則取締法を廃止して国税犯則調査手続に関する規定を国税通則法に編入する 地方税犯則調査手続については 全税目を手続の対象とすべく規定を整備する などの改正内容を示した (63) 所得税法等一部改正法第 8 条は 国税通則法に 第 11 章犯則事件の調査及び処分 ( 第 131 条 ~ 第 160 条 ) を追加し 電磁的記録に係る証拠収集手続などをすることを定める これに伴い 国税犯則取締法は廃止される ( 所得税法等一部改正法第 10 条 ) 現行の地方税法において 犯則調査手続に関する規定は税目毎に規定されるが ( 例 道府県税については第 71 条以下 事業税については第 72 条の73 以下 ) 全税目について規定が存在する訳ではない また その多くが国税犯則取締法の準用規定となっている 地方税法等一部改正法第 2 条は 地方税法第 1 章に 第 16 節犯則事件の調査及び処分 ( 第 22 条の3~ 第 22 条の31) を新設し (64) 全税目に共通する手続規定とした これに伴い 税目毎に置かれていた上記の犯則調査手続に関する規定は削除される 追加された諸規定の内容は 基本的に国税通則法第 11 章の諸規定と同様のものであるが 国税と地方税との相違もあることから 国税犯則取締法の規定を 準用する という形ではなく 犯則調査をなすための要件などを比較的詳細に規定するものと (62) 都市計画税の課税標準は 市街化区域に所在する土地または家屋の 価格 である ( 地方税法第 702 条第 1 項 ) 従って 補正率の適用が都市計画税にも影響する (63) 平成 29 年度与党税制改正大綱 124 頁 (64) 第 1 節犯則事件の調査 ( 第 22 条の 3~ 第 22 条の 25) および 第 2 節犯則事件の処分 ( 第 22 条の 26~ 第 22 条の 31) からなる 参考までに記すならば 国税通則法第 11 章は 第 1 節犯則事件の調査 ( 第 131 条 ~ 第 154 条 ) および 第 2 節犯則事件の処分 ( 第 155 条 ~ 第 160 条 ) からなる

217 なっている 国税通則法第 11 章 地方税法第 1 章第 16 節に置かれた新規定は 国税犯則取締法などによっては不可能または困難であったことを実行しうるように整備したため 目新しいものが多い たとえば 国税通則法第 132 条第 1 項および地方税法第 22 条の4 第 1 項は 裁判官が発する許可状により 記録命令付差押え として電磁的記録を 保管する者その他電磁的記録を利用する権限を有する者に命じて必要な電磁的記録を記録媒体に記載させ 又は印刷させた上 当該記録媒体を差し押さえる ことができる旨を定める また 国税通則法第 132 条第 2 項および地方税法第 22 条の4 第 2 項は 差し押さえるべき物件が電子計算機であるときは 当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて 当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認められるに足りる状況にあるものから その電磁的記録を当該電子計算機または他の記録媒体に複写した上 当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる と定める この他 遺留物の捜査 領置 ( 国税通則法第 131 条第 1 項および地方税法第 22 条の3 第 1 項 ) 郵便物等の差押え ( 国税通則法第 133 条第 1 項および地方税法第 22 条の5 第 1 項 ) 臨検 捜索または差押えの夜間執行 ( 国税通則法第 133 条第 1 項および地方税法第 22 条の20 第 1 項ただし書き ) などをあげることができる 4. 国会における法律案の審議状況 前記のような内容の地方税法等一部改正法について 衆参両院において審査 審議がなされた その様子を 項目毎に概観する なお 便宜のため 法律案の提出から公布までの経過について概略を示す 地方税法等一部改正法衆議院議案受理年月日平成 29 年 2 月 7 日衆議院付託年月日平成 29 年 2 月 16 日 ( 総務委員会 ) 衆議院審査終了年月日平成 29 年 2 月 27 日 ( 可決 ) 衆議院審議終了年月日平成 29 年 2 月 27 日 ( 可決 ) 参議院予備審査議案受理年月日平成 29 年 2 月 7 日

218 参議院議案受理年月日 平成 29 年 2 月 27 日 参議院付託年月日 平成 29 年 3 月 10 日 ( 総務委員会 ) 参議院審査終了年月日 平成 29 年 3 月 27 日 ( 可決 ) 参議院審議終了年月日 平成 29 年 3 月 27 日 ( 可決 ) 公布年月日 平成 29 年 3 月 31 日 ( 法律第 2 号 ) 所得税法等一部改正法 衆議院議案受理年月日 平成 29 年 2 月 3 日 衆議院付託年月日 平成 29 年 2 月 16 日 ( 財務金融委員会 ) 衆議院審査終了年月日 平成 29 年 2 月 27 日 ( 可決 ) 衆議院審議終了年月日 平成 29 年 2 月 27 日 ( 可決 ) 参議院予備審査議案受理年月日平成 29 年 2 月 3 日 参議院議案受理年月日 平成 29 年 2 月 27 日 参議院付託年月日 平成 29 年 3 月 8 日 ( 財政金融委員会 ) 参議院審査終了年月日 平成 29 年 3 月 27 日 ( 可決 ) 参議院審議終了年月日 平成 29 年 3 月 27 日 ( 可決 ) 公布年月日 平成 29 年 3 月 31 日 ( 法律第 4 号 ) 1 衆議院総務委員会前述のように 高市総務大臣による地方税法等一部改正法の趣旨説明は 平成 29 年 2 月 16 日の衆議院総務委員会 ( 第 3 号 ) においてなされた 同月 27 日 ( 第 6 号 ) に 輿水恵一議員 ( 公明党 ) 足立康史議員( 日本維新の会 ) によるそれぞれの賛成討論 奥野総一郎議員 ( 民進党 ) 田村貴昭議員( 日本共産党 ) 吉川元議員( 社会民主党 ) によるそれぞれの反対討論が行われた 続いて採決が行われ 賛成多数で可決された なお 採決の後 自由民主党 無所属の会 民進党 無所属クラブ 公明党 日本共産党 日本維新の会および社会民主党 市民連合の六派共同提案による 持続可能な地方税財政基盤の確立及び東日本大震災への対応に関する件 の案が葉梨康弘議員 ( 自由民主党 ) 外 5 名より提出され 葉梨議員による朗読の後 全会一致で可決された (65) (65) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 6 号 ( 平成 29 年 2 月 27 日 ) 3 頁

219 (1) 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しまず 宗清皇一議員 ( 自由民主党 ) は 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しが 大きな一歩である とされた上で 国税については平年度で約 390 億円 地方税については約 423 億円の減収の見込みがあるというが 国費で補填をするということについては 具体的な補填方法をできるだけ早く明示することによって 地方団体の税収に穴があかないということ 不安を生じさせないということを考えていくべきではないか と質した これに対し 冨樫博之総務大臣政務官は 今回の見直しによる個人住民税の減収は平成 31 年度から生じるものであり 国費による補填の具体的方法については 今後 平成 31 年度地方財政対策までに検討してまいる所存であ ると答弁しており 宗清議員は 地方団体の財源不足をちゃんと積算して 毎年交付金で渡すというような財源補填が望ましいということを 私の考え方としてちょっと申し上げておきたい と述べている (66) 奥野議員も地方税収の減収を指摘し その上で 減税をしてまでやる意義というのは一体何なのか と質したのに対し 高市総務大臣は 就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築するために 税制 社会保障制度 それから企業の配偶者手当制度などの面で総合的な取り組みを進める必要があると思っており 今回の見直しというのは 働きたい方が就業調整を行うことを意識しないで働くことができる環境づくりに寄与するものですから 女性活躍の観点からも それから従業員の方々の就業調整による人手不足の解消の観点からも 意義があると考えて いると答弁した これを受けて 奥野議員は やはり社会保険料と一体的に見ていかないと 意義があるとは言えないんじゃないか 配偶者控除を全廃だという話で当初議論していたはずなんですけれども 気がつくとこういう減税の話になってしまった と指摘した上で 負担の見直しということも含めて やはり抜本的な議論が必要だと思 うと述べている (67) 小川淳也議員 ( 民進党 ) も配偶者控除の議論の展開に疑念を向けたのに対し 高市総務大臣は政府税制調査会の 中間報告 与党税制調査会における議論をもって答弁した (68) また 小川議員が 今回の対応について 所得税 地方税 住民税は 103 万の壁を150 万に伸ばした 一方 社会保険は 130 万と言われていた壁を106 万に (66) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 5 頁 6 頁 (67) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 18 頁 19 頁 (68) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 21 頁

220 縮めた まさにこれは あべこべ 矛盾する逆方向の改革案を 同じ目的に向かっているはずなんですが まさに逆方向のことをやって 政策効果は互いに打ち消すんじゃありませんか と質したのに対し 馬場成志厚生労働大臣政務官は 被用者保険は 給付と負担のバランスにより成り立っておりまして 加入し 保険料を負担いただくことによって 将来受け取ることができる年金がふえる 病気やけがで会社を休んだときの疾病手当金や出産手当金を受け取れるなどの 直接の反対給付が受けられることにな るので 被用者保険のメリットを受ける人をふやすためには賃金や労働時間等の適用基準を引き下げる必要があるというこの点を 税とは仕組み 目的が異なることを御理解いただきたい と答弁した (69) その後もしばらく質疑応答が行われたが 十分な展開は見られなかった 小川議員の質問時間はかなり長くとられており この他にも配偶者控除 扶養控除のいずれも103 万円という 同額の収入制限 であったのに 配偶者に限って150 万 (70) そして扶養控除 扶養親族については103 万のままなのか という質問などがなされているが 地方自治立法動向研究の観点からすれば 地方税は 国税に比べますと より地域の会費的な性格が強いと言われております 加えて 例えば 働き方に中立といったような政策誘導や あるいは年収制限を加えるといった再分配機能の強化とは必ずしもそぐわない面が地方税にはあります したがって 私どもも地方税法の改正に携わった経験がございますが 国税の観点からさまざまな税制改正が行われることに100% 地方税が引きずられることについては 時として大きな疑問を持つことがございます という指摘は重要である 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しは まさに 国税の判断に地方税が100% つき合わされるということ でもあるためである (71) 一方 鈴木克昌議員 ( 民進党 ) は 個人所得課税改革 を今後何年かけて行う予 (69) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 21 頁 (70) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 22 頁 本文に示した質疑に対しては 林﨑総務省自治税務局長が 就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するために 配偶者控除等について配偶者の収入制限を引き上げるということ そして 配偶者控除に納税者本人の所得制限を設けて 国 地方を通じて税収中立を確保する と答弁したが 小川議員は 就業調整という意味では 子供であっても親であっても変わらないんじゃないですか そういう意味では 今答弁されましたが あくまで途中経過ということで受けとめていいんですね と返している (71) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 23 頁

221 定であるのかと質したのに対し 政府参考人の林﨑理総務省自治税務局長は 論点は非常に多岐にわたりまして 個人所得課税の税制全体における位置づけや負担構造のあるべき姿について 国民的な議論を行いながら丁寧に検討していく必要があるとされているところでございまして 現時点で 検討の年限について 今後数年をかけてという以上に予断を持ってお答えすることは 申しわけありませんけれども できないところでございます と答弁した (72) また 鈴木議員が 改正案における合計所得金額の 刻みが粗い と指摘したのに対し 林崎総務省自治税務局長は 今回の見直しにおいて新たに設けられる納税者本人の方の所得制限につきましては これは 納税者本人の所得に応じた税負担の差をなだらかにするという観点から設けるもので あり 今回の納税者本人の所得制限によって控除額が逓減 消失するのは 今御指摘のあった 合計所得金額でいいますと900 万円から これは給与収入ベースに直しますと1,220 万円という数字になりますけれども これを超えていく場合でございますけれども この水準の所得を有する場合には 配偶者特別控除が適用になるかどうか 幾ら適用になるかといったことを納税者本人が意識をして そして就業調整をするといった問題は生じにくいと考えているところでございます と答えている (73) 吉川元議員も配偶者控除 配偶者特別控除の見直しについての質疑を行っており ちょっと拙速過ぎるのではないか いろいろな人的控除については 既に他の委員も指摘をされておりますけれども 果たして今の所得控除でいいのか 税額控除にすべきではないか また 基礎控除も含めて 基礎控除は例えば国税でいうと38 万円ですけれども 38 万円で一年間人は暮らしていけますか そんなことはないと思います だとすれば 基礎控除そのものを生活保護水準まではやはり引き上げていかなければいけない とした上で 税収額への影響などを質した これに対し 林﨑総務省自治税務局長は 今回 配偶者の年収制限の引き上げによって減収をするという額 これが757 億円 そして 納税者本人の方に所得制限を設けるということによる増収額というのがありまして こちらがプラスの334 億円ということで 差し引きで 平年度化した場合には 地方税においては423 億円の減少と見込んでいる と答弁している (74) (72) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 5 号 ( 平成 29 年 2 月 23 日 ) 4 頁 (73) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 5 号 ( 平成 29 年 2 月 23 日 ) 5 頁 (74) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 5 号 ( 平成 29 年 2 月 23 日 ) 13 頁

222 (2) 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への税源移譲等 田村議員は 手当や休暇などの待遇が 県から市に合わせることによって不利益が生じる 常勤講師の場合は いわゆる任用の空白という問題が生じ ており 一部の政令市では 再度の任用の際に設けられる空白期間が一週間から二カ月とかなり長期間となっています 県費負担のときは一日でした これがそのまま適用されれば 一定期間働くことができない先生を生み出し 産休や育休の代替などの必要な人員が確保できなくなってまいります という問題を取り上げ 政令指定都市の対応 臨時的任用職員の任期の設定 の法的根拠などを質している (75) (3) 車体課税 質疑応答はなされなかった (4) 固定資産税 都市計画税及び不動産取得税の改正 小川議員は 路線価等を含めて固定資産を評価し そして各部屋面積ごとに案分するというのがこれまでの制度でありましたが 恐らく市場価格を参考にしながら 高層階は税金を多く そして低層階は税負担を和らげると 市場価格の面からいえば 一定の合理性はあるんだろう 全体としては思い切った制度と前向きに評価しつつ 最上階 角部屋 南向き 二部屋分を一部屋にしたオーナー向けの広い部屋 超富裕層向けの広い部屋 をあげ 階ごとに税金の額を変えた以上 よりきめ細かな対応を今後していかないと 課税の公平なり課税の理屈に少し合わなくなると思う と質した これに対し 高市総務大臣は 今般 実際の取引価格と階層の関係を調査して 固定資産税の税額の案分方法を その調査結果を踏まえたものに見直すこと とし 高層階の税額は増加して 低層階の税額は減少する が タワーマンション一棟全体の固定資産税の総額は変わらない 取引価格と例えば方角や部屋の位置との関連性を示す明確かつ客観的なデータが存在しない ので 見直しの要素たり得なかったという事情が あると答弁した また タワーマンションの最上階部分の住戸の中には ( 中略 ) 仕様の個別性が強いものが存在します 階層に着目した補正のみでは捕捉し切れないものについては 天井の高さ 附帯設備の程度などによる さらなる補正をすることができるということとしております とも述べている (76) (75) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 31 頁 (76) 第 193 回国会衆議院総務委員会議録第 4 号 ( 平成 29 年 2 月 21 日 ) 24 頁

223 (5) 地方税法第 1 章の一部改正 質疑応答はなされなかった 2 衆議院本会議 2 月 27 日の本会議 ( 第 7 号 ) において 地方税法等一部改正法および 地方交付税法等の一部を改正する法律案 ( 内閣提出法律案第 11 号 ) は一括して議題とされ 竹内謙総務委員長の報告の後 逢坂誠二議員 ( 民進党 ) 梅村さえこ議員( 日本共産党 ) のそれぞれによる反対討論 足立議員による賛成討論を経て 地方税法等一括法は賛成多数で可決された (77) 3 参議院総務委員会高市総務大臣による地方税法等一部改正法の趣旨説明は 3 月 16 日の参議院総務委員会 ( 第 4 号 ) においてなされた 同月 27 日 ( 第 6 号 ) に 山下芳生議員 ( 日本共産党 ) 又市征治議員( 社会民主党 ) によるそれぞれの反対討論が行われた 続いて採決が行われ 賛成多数で可決された なお 採決の後 自由民主党 こころ 民進党 新緑風会 公明党 日本共産党 日本維新の会及び希望の会 ( 自由 社民 ) の各派共同提案による 自立した安定的な財政運営を実現するための地方税財政制度の構築及び東日本大震災への対応に関する決議 の案が提出され 江崎孝議員 ( 民進党 ) による朗読の後 全会一致で可決された (78) (1) 配偶者控除 配偶者特別控除の見直し衆議院総務委員会と異なり 地方税法等一部改正法についての質疑応答はほとんど行われなかったと評価してよい 配偶者控除 配偶者特別控除の見直しについては 又市議員が 政府は一億総活躍社会を標榜し その実現のために女性の生き方 働き方についても見直すとして大変注目を集めたということだったと思いますが 大山鳴動してネズミ一匹 これでは壁となる所得水準が引き上げられただけで フルタイム勤務の配偶者の不公平感は置き去りにされたまま と評価したのに対し 高市総務大臣が 個人所得課税改革の第一弾だということで 今後も改革を継続していくと (77) 第 193 回国会衆議院本会議録第 7 号 ( 平成 29 年 2 月 27 日 ) 9 頁 (78) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 6 号 ( 平成 29 年 3 月 27 日 ) 2 頁

224 されて いること 方向性としては 所得控除方式をとっている基礎控除などの人的控除等における控除方式の見直し 多様な働き方を踏まえた所得の種類に応じた控除と人的控除の在り方の全体としての見直しなどが示されて いると答弁した これを受けて 又市議員は 社会保険料や配偶者手当と一体で見直す必要がある 所得再分配の観点から 所得課税の抜本改革 人的控除の改革に向けた道筋をやっぱり示すべきではないか と述べている (79) (2) 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への税源移譲等 那谷屋正義議員 ( 民進党 ) が質疑を行っているが 地方税法等一部改正法の内容に 直接関係する内容ではない (3) 車体課税又市議員は エコカー減税が元々景気対策 環境対策として時限的に創設されたこと エコカー減税の恩恵を受けた新車販売台数に占める割合というのは8 割を超えている が 今回環境基準を見直すとその割合はどう変化する か 新車販売台数の8 割から9 割を占めるとなると 環境対策というよりも むしろ車の買換え促進減税 こういう側面が非常に強 くなり 自動車産業への支援対策という形に変わっている と質した これに対し 林﨑総務省自治税務局長は 平成 28 年度上半期の新車販売状況を見直しの後の基準に当てはめると 29 年度で82% ですけれども 30 年度は71% が対象になる と答弁し 冨樫総務大臣政務官は 燃費水準が向上する中で 対象範囲の見直しを行わなければ政策インセンティブ機能が低下する ため 今回の税制改正に当たっても 足下の自動車販売への影響に十分配慮しつつ 政策インセンティブを強化する観点から 対象範囲を2020 年度燃費基準の下で見直すこととしている と答弁した (80) (4) 固定資産税 都市計画税及び不動産取得税の改正 質疑応答はなされなかった (79) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 5 号 ( 平成 29 年 3 月 22 日 ) 33 頁 (80) 第 193 回国会参議院総務委員会会議録第 5 号 ( 平成 29 年 3 月 22 日 ) 34 頁

225 (5) 地方税法第 1 章の一部改正 質疑応答はなされなかった 4 参議院本会議 3 月 27 日の本会議 ( 第 10 号 ) において 地方税法等一部改正法および 地方交付税法等の一部を改正する法律案 は一括して議題とされ 横山信一総務委員長の報告の後に採決が行われ 投票総数 240 賛成 166 反対 74で可決され 法律として成立した (81) 5. おわりに 本稿においては 平成 29 年度税制改正のうち 地方税制に係る部分について概観し 検討を行ってきたが 早くも平成 30 年度税制改正の基調を決定しかねず また 今後の財政状況に負の影響を与えかねない動きがみられる 平成 29 年 6 月 9 日 経済財政運営と改革の基本方針 2017~ 人材への投資を通じた生産性向上 ~ ( 以下 骨太の方針 2017 ) が閣議決定された 既に報じられているように (82) 骨太の方針 2017 からは消費両税の税率引き上げに関する記述が消滅しており 他方 平成 30 年度予算編成に関連して 基礎的財政収支 (PB) を2020 年度 ( 平成 32 年度 ) までに黒字化 するとともに 債務残高対 GDP 比の安定的な引下げを目指す という新たな指標が付け加えられている これらの点をいかに理解すべきかについては見解が分かれうるが 早くも消費両税の税率引き上げの再々延期を見据えたものと理解してよい (83) 第二次安倍内閣発足以降 経済成長 や 経済再生 がキーワードとして使われてきて (81) 第 193 回国会参議院会議録第 10 号 ( 平成 29 年 3 月 27 日 ) 6 頁 (82) 朝日新聞 2017 年 6 月 10 日付朝刊 7 面 14 版 成長戦略 骨太の方針閣議決定くらしの課題解決し成長人材に投資し生産性向上 日本経済新聞 2017 年 6 月 10 日付朝刊 5 面 13 版 骨太方針決定経済成長を最優先新指標採用首相 歳出拡大に布石 時事通信社 増税三たび延期に布石か = 成長重視の骨太方針 (2017 年 6 月 10 日 14 時 20 分付 現在 同社のサイトでは参照不能 ) (83) 注 (82) に示した日本経済新聞記事には 経済が順調に成長すれば 消費税引き上げも可能になる 万一低成長にとどまっても 成長を優先するとの理由で増税を延期する理屈にもなる という記述がある 一方 やはり注 (82) に示した時事通信社記事によれば 政府関係者は 仮に消費増税を先送りしても 経済成長さえすれば財政再建をアピールしやすい と解説する

226 おり 毎年度の 骨太の方針 や与党税制改正大綱において 経済再生なくして財政健全化なし というフレーズが繰り返されてきたことに鑑みれば 消費両税の税率引き上げが二度にわたって延期されたことは当然の帰結であるとも考えられ 今後も経済情勢次第で延期が繰り返される可能性は高いものと思われる 骨太の方針 2017 は 平成 29 年度税制改正において見送られた森林環境税について 地方公共団体の意見も踏まえながら 具体的な仕組み等について総合的に検討し 平成 30 年度税制改正において結論を得る と述べるが (84) その他 税制については 地方税収の回復に伴う財政力格差や民生 教育などの行政サービスの水準の地域差の状況を含め 総務省は関係府省と地方単独事業の実態把握と 見える化 に早急に取り組む とともに 地方公共団体間の財政力格差の調整状況を踏まえつつ 地方税の偏在是正につながる方策について検討する (85) および 経済社会の構造が大きく変化する中 引き続き 税体系全般にわたるオーバーホールを進め 個人所得課税や資産課税については 政府税制調査会におけるこれまでの議論等を踏まえ 経済社会の構造変化を踏まえた税制の構造的な見直しについて検討を行う として 個人所得課税については 所得再分配機能の回復や多様な働き方に対応した仕組み等を目指す観点から 引き続き丁寧に検討を進める と述べる程度に過ぎない (86) 具体化はこれからの作業ということなのであろうか 個人所得課税改革 の第二弾が何であり 最終的な目標が何であるかについて注意しなければならないとともに 基礎的財政収支の改善に向けて真摯な努力が払われるか否かを注視しなければならない ( もりとしき大東文化大学法学部教授 ) (84) 骨太の方針 頁 (85) 骨太の方針 頁 (86) 骨太の方針 頁

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228 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 地方交付税法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 3 月 31 日法律第 3 号 ) 其田茂樹 はじめに 地方交付税法等の一部を改正する法律は 2017 年 2 月 7 日に第 193 回国会に提出されたものである この法改正は 毎年度策定される地方財政対策と地方財政対策に基づいて策定される地方財政計画を踏まえて立案されたものである (1) 本法改正と関連のある地方財政計画の詳細な分析については 飛田 (2017) 等を参照されたい (2) 本稿の課題は 本法改正の概要や制定過程 地方自治体への影響等を整理することであるため 地方財政計画等への言及は最低限度にとどめるが 地方交付税制度とともに地方財政計画が日本の政府間財政関係の根幹を支えていることは論を俟たない 本稿では 法改正された部分と地方財政計画等に基づいて導入された制度とについて若干の考察を付け加えたい 1. 法律改正の概要 本法改正において改正されたのは 地方交付税法 特別会計に関する法律 地方財政法 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律 である このうち 地方財政法の一部改正は 時限的に発行できることとしてきた臨時財政対策債を2017 年度から2019 年度まで発行できるように改めたものである ( 同法附則第 33 条の5 (1) 地方財政計画は 地方交付税法第 7 条に規定される 翌年度の地方団体の歳入歳出総額の見込み額に関する書類 にあたるものである (2) 飛田博史 2017 年度地方財政計画の概要と地方財政の展望 自治総研 2017 年 2 月号

229 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - の2) (3) 地方特例交付金等の地方財政の特別措置に関する法律の一部改正は 地方特例交付金の総額を各都道府県 市町村の住宅借入金等特別税額控除見込額により按分した額とすることが盛り込まれたものである 地方交付税法の一部改正 特別会計に関する法律の一部改正については 策定された地方財政計画に基づいて決定される2017 年度の地方交付税の総額に合わせて必要となった改正が実施されたものである このうち後者については 地方財政対策において 2017 年度に予定していた交付税及び譲与税配付金特別会計 ( 以下 交付税特会という ) 借入金の償還について 5,000 億円を 4,000 億円とした上で 交付税特会借入金の返還スケジュールにも変更が加えられている 具体的にいうと 2017 年度から2019 年度までは 各年度において4,000 億円を償還 以後 2024 年度までの償還額は毎年度 1,000 億円ずつ増額 2025 年度から2051 年度までは各年度 1 兆円 2052 年度は7,173 億円を償還するというものである これによって 1,000 億円の財源不足が手当てされたことになる このほか 地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用 4,000 億円などにより臨時財政対策債の増加を避けながら財源を手当てしようとしたものである こうした特別会計に関する法律の改正は 2017 年度分の地方交付税の総額確保に係る改正であるが 当然 地方交付税法も当該年度の地方交付税総額確保に必要な改正が行われている 地方交付税の総額の特例は 毎年度の地方財政対策に基づいて定められ 当該年度の地方交付税法附則第 4 条において規定される このほか 地方交付税法の一部改正には 基準財政需要額 (4) の算定方法の改正を反映させる必要がある このため 基準財政需要額の測定単位及び単位費用について定めた第 12 条 同じく補正係数について定めた第 13 条が改正対象となる (3) もともと 臨時財政対策債は 2001 年度から 2003 年度までの臨時的措置として導入されたものが 発行期間を延長する法改正がくり返されている (4) 地方交付税法において 基準財政需要額は 測定単位の数値を第十三条の規定により補正し これを当該測定単位ごとの単位費用に乗じて得た額を当該地方団体について合算した額とする ( 第 11 条 ) と定められている なお 第 12 条は 地方行政に要する経費のうち各地方団体の財政需要を合理的に測定するために経費の種類を区分してその額を算定するもの ( 次項において 個別算定経費 という ) の測定単位は 地方団体の種類ごとに次の表の経費の種類の欄に掲げる経費について それぞれその測定単位の欄に定めるものとする ( 以下略 ) 第 13 条は 面積 高等学校の生徒数その他の測定単位で そのうちに種別があり かつ その種別ごとに単位当たりの費用に差があるものについては その種別ごとの単位当たりの費用の差に応じ当該測定単位の数値を補正することができる ( 以下略 ) とそれぞれ規定している

230 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - なお 地方交付税法第 2 条において 基準財政需要額は 各地方団体の財政需要を合理的に測定するために 当該地方団体について第 11 条の規定により算定した額をいう ( 第 3 項 ) 測定単位は 地方行政の種類ごとに設けられ かつ この種類ごとにその量を測定する単位で 毎年度の普通交付税を交付するために用いるものをいう ( 第 5 項 ) 単位費用は 道府県又は市町村ごとに 標準的条件を備えた地方団体が合理的 かつ 妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費を基準とし 補助金 負担金 手数料 使用料 分担金その他これらに類する収入及び地方税の収入のうち基準財政収入額に相当するもの以外のものを財源とすべき部分を除いて算定した各測定単位の単位当たりの費用 ( 当該測定単位の数値につき第 13 条第 1 項の規定の適用があるものについては 当該規定を適用した後の測定単位の単位当たりの費用 ) で 普通交付税の算定に用いる地方行政の種類ごとの経費の額を決定するために 測定単位の数値に乗ずべきものをいう ( 第 6 項 ) とそれぞれ定義づけられている したがって 基準財政需要額の算定方法の改正については 具体的に制度の変更を伴う (5) ものもあれば 上に挙げた法律の規定に則して定期的に見直されている項目も数多くあるため 改正箇所は多岐にわたることになる 第 12 条 3 項の規定のうち 福祉事務所設置町村における生活保護の実施や児童扶養手当の支給等の経費については これまでの特別交付税ではなく2017 年度からは普通交付税により措置されることとなったため 道府県 市町村において測定単位が変更されることとなっている また 特例的に設けられた基準財政需要額に算入される地方財政計画上の経費等についても本法改正に盛り込まれている まず 2016 年度に続く地方財政計画における まち ひと しごと創生事業費 の計上に対応した措置については 附則第 5 条の2 3の年次を更新している 次に 2016 年度地方財政計画における 地域経済基盤強化 雇用等対策費 の一部を基準財政需要額に算入するため 地方交付税に 地域経済 雇用対策費 を設けていた ( 附則第 6 条 ) が その取り扱いについて2017 年度においては 歳出特別枠としては見直しが実施され減額されたうえで 一般行政経費が増額されることとなった (6) ため それに伴い 地域経済 雇用対策費 の単位費用を減額する改正が実施された (5) 第 12 条 第 13 条 別表第一 ( 第 12 条第 4 項関係 ) 別表第二 ( 第 12 条第 5 項 ) に係る改正の多くはこれにあたるといってもよいと思われる (6) 詳細は 前掲飛田論文を参照されたい

231 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 年度から導入された いわゆる トップランナー方式 や市町村合併により広域化した行政区域を反映した算定については 本法改正において具体的な改正項目として取り上げられていないが段階的に実施されている (7) ここで 地方税制改正の影響について 2017 年度の地方交付税の基準財政需要額算定において重要と思われる点に触れておこう それは 県費負担教職員の給与負担事務の道府県から指定都市への移譲に関連するものである 具体的には 事務負担の移譲に伴って 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律 により 指定都市における個人住民税所得割の標準税率を道府県民税は2%( 現行 4%) 市民税は8%( 現行 6%) とするものである これに伴って 基準財政需要額の面では 指定都市における給与負担事務の標準的な経費を全額基準財政需要額に算定することとなっている 当然 この改正は 基準財政需要額の変更のみならず基準財政収入額についても算定方法が変更される必要が生じる すなわち 県費負担教職員の事務の移譲に伴う税源移譲 (8) ( 所得割の2% 分 ) については その影響額の全額を基準財政収入額に算入することとしている ( 附則第 7 条の2) このほか 基準財政収入額に関する改正項目を整理しておこう 附則第 7 条において 指定都市を包括する道府県と指定都市における基準財政収入額の算定方法の特例を定めている 具体的には 地方交付税法第 14 条第 1 項において算定した基準財政収入額から分離課税所得割交付金について その交付見込額全額を当該道府県については控除し 指定都市については加算するものである これは 県費負担教職員の給与負担事務の移譲による税源移譲において分離課税に係る税率や税額控除の割合等も原則として改めることとしているが 当分の間 税率変更せず退職所得にかかる税率 2% 分に相当する分離課税所得割交付金を 指定都市を包括する道府県から指定都市に交付することとしているためである 附則第 7 条の4は 東日本大震災に関連する地方税の減収に関してその減収見込額の (7) トップランナー方式 は 民間委託等を前提として単位費用の金額や経費区分を見直す ( 対象業務によって異なる ) ものであるが 2017 年度には 都道府県における青少年教育施設管理 ( 指定管理者制度の導入による算定基礎の見直し ) 都道府県 市町村における公立大学運営 ( 地方独立行政法人化による算定基礎の見直し ) に対して新たに同方式が導入されることとなった 市町村の広域化については 2014 年度より 5 年程度の期間で支所に関する経費の算定 人口密度等による需要の割り増し 標準団体の面積の見直しといった基準財政需要額の算定を見直すこととなっている (8) 基準財政収入額は 地方交付税法第 2 条において 各地方団体の財政力を合理的に測定するために 当該地方団体について第 14 条の規定により算定した額をいう と定義づけられている

232 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 75% を基準財政収入額に算定するもので 2012 年度限りの措置として同年度から創設されたものであるが 2017 年度においても継続されるものである 以上のほか 特定被災地方公共団体に係る基準財政需要額及び基準財政収入額の算定方法の特例の改正 ( 附則第 9 条の2 関係 ) 震災復興特別交付税に関する特例の改正( 附則第 11 条から第 15 条 ) が本法律改正に盛り込まれている 前者は 規定中の文言のうち年度を改めることによって継続 後者は 現行法の措置内容を基本的に踏襲しつつ所要の整理を行って2017 年度の震災復興特別交付税を交付するための措置である 2. 法案提出から成立までの経過 (9) 地方交付税法等の一部を改正する法律案は 2017 年 2 月 7 日に衆議院に提出された 同月 16 日に総務委員会に付託され国会における議論が始まることとなる 前項において 概要はすでに述べているため重複する部分も多いが 高市早苗総務大臣による提案理由の説明は 地方財政の収支が引き続き著しく不均衡な状況にあること等に鑑み 地方交付税の総額の特例等の措置を講ずるため 本法律案を提出した次第であります 以下 法律案の内容について その概要を御説明申し上げます その1は 地方交付税の総額の特例であります 平成 29 年度分の通常収支に係る地方交付税の総額は 地方交付税の法定率分に 法定加算額 臨時財政対策のための特例加算額及び地方公共団体金融機構の公庫債権金利変動準備金の活用等による加算額を加え 交付税特別会計借入金償還額及び同特別会計における借入金利子支払い額等を控除した額 16 兆 3,298 億円とすることとしております また 交付税特別会計借入金について 各年度の償還額を見直し 平成 64 年度までに償還することとするほか 平成 30 年度から平成 44 年度までの間における国の一般会計から交付税及び譲与税配付金特別会計への繰り入れに関する特例を改正することとしております その2は 地方交付税の単位費用等の改正であります 各種の制度改正等に伴って必要となる行政経費の財源を措置するため 平成 29 年度分の普通交付税の算定に用いる単位費用を改正するほか 県費負担教職員の給与負担に係る改正に伴う道府県から指定都市への (9) 質問者の所属政党等は いずれも委員会等の開催当時のものである

233 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 個人住民税の税源移譲に対応した基準財政収入額の算定方法の特例等の措置を講ずることとしております その3は 東日本大震災の復旧復興のための財源となる震災復興特別交付税の確保であります 平成 29 年度分の震災復興特別交付税については 新たに3,464 億円を確保することとし 総額 4,503 億円としております そのほか 平成 29 年度から平成 31 年度までの間に限り 地方財政法第 5 条の規定により起こす地方債のほか 適正な財政運営を行うにつき必要とされる財源に充てるため 地方債を起こすことができることとする旨の特例を設けることとしております 以上が この法律案の提案理由及び内容の概要であります となっている 国会における議論は 地方交付税法等の一部を改正する法律案と地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案がセットで議題となる中で 前者の税制改正関連は若干の議論 (10) が見受けられるものの 後者に関しては 地方交付税法等に対してというよりは 地方財政計画に関するものが圧倒的に多い その中で あえて地方交付税法等に関連が深いと思われるものを取り上げると まず トップランナー方式に関するものがある (11) 輿水恵一委員 ( 公明党 ) 総務省において 地方交付税の算定において 28 年度よりトップランナー方式を導入し 29 年度においては新たに2 業務を対象に追加することとしておりますが このトップランナー方式というのは トップランナーという言葉が他の追随を許さないような誤解を招くんですけれども そうではなくて 他の団体がまねできない業務ではなくて ちゃんとまねができる 一緒にできる 多くの団体が民間委託等の業務改革に取り組んでいる業務について 地方交付税の算定に反映させるものと認識しているのですが このような理 (10) 配偶者特別控除等に関する議論が中心であったように思われる (11) このほか トップランナー方式については 衆議院において 民進党の鈴木克昌委員から 2017 年度に導入された 2 業務についてその理由を問う質問がなされたほか 日本共産党の田村貴昭委員からトップランナー方式による基準財政需要額の減少額についての質問 社会民主党の吉川元委員からトップランナー方式は コストカットのみを目的としているのではないかという指摘がなされ 参議院においては 民進党の森本真治委員からトップランナー方式が 各自治体に民間委託を押し付けるといった政策誘導に利用するものではなく 地方交付税は自治体の一般財源であることへの確認等がなされ 日本共産党の山下芳生委員からは トップランナー方式は地方交付税制度をゆがめるものでありやめるべきであるとの批判が 社民党の又市征治委員からは トップランナー方式は総務省による地方自治への介入であるとの批判がなされるなどしたが 一方で 日本維新の会の高木かおり委員からは 地方行政サービスに係る経費削減の努力が始まったことについて評価するとともに行革に向けて努力する先進的で意欲ある自治体を後押しする制度をさらに充実すべきとの見解が示された

234 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 解でよいのか 見解をお伺い申し上げます 黒田武一郎政府参考人 御指摘のように 行政の効率化については不断の取り組みを進めていく必要がございまして 総務省におきましてもその推進をしてまいりました この中 平成 27 年 8 月には 総務大臣通知としまして 地方行政サービス改革の推進に関する留意事項 を発出しまして 民間委託等の積極的な活用等によるさらなる業務改革の推進に努めるよう 各地方団体に要請してまいりました こうしたことを踏まえまして 地方交付税の算定におきまして 平成 28 年度からトップランナー方式を導入することといたしまして 道路の維持補修 清掃 あるいは体育館 公園管理など 既に多くの団体が民間委託等の業務改革に取り組んでいる16 業務につきまして 業務改革を行っている団体の経費水準を基準財政需要額の算定基礎としたところでございます さらに 平成 29 年度におきましては 青少年教育施設管理及び公立大学運営の2 業務につきまして それぞれ 指定管理者制度を導入 地方独立行政法人化等の業務改革にこれもまた同様に多くの団体が取り組んでいることを踏まえまして 新たにトップランナー方式の対象としているものでございます (12) このほか 交付税特会の剰余金に関する指摘がある 奥野総一郎委員 ( 民進党 ) これについて 概算要求当初はそもそも上がっていなかったんですが どういう経緯でこれが使われることになったのか そもそも 特会の剰余金というのは 残高が今どのくらいあって そのうち 今回 3 千幾らかな 幾ら使ったのかも含めて伺いたいと思います 黒田武一郎政府参考人 交付税特別会計におきましては この特別会計の借入金の利払い費を毎年度計上しておりますけれども 実際の利払い費が予算計上額を下回った場合に剰余金が発生いたします この剰余金の活用につきましては これまで 毎年度の地方財政対策におきまして この剰余金の額の状況 あわせまして 借入金利の変動に伴う利払い費の変動に備える必要性 これらを踏まえながら 地方交付税総額の確保 臨時財政対策債の抑制の観点から (12) 第 193 回国会衆議院総務委員会第 4 号 (2017 年 2 月 21 日 )

235 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - その活用の必要性を総合的に検討しております 29 年度の概算要求の時点におきましては 今後の金利動向が不透明であったことなどから交付税特会剰余金の活用は見込んでおりませんでしたが 年末の地方財政対策におきましては 9 月に日本銀行が政策を発表したこと等を踏まえまして 平成 28 年度において歴史的な低金利が継続したことなどによりまして 3,400 億円強の交付税特会剰余金が見込まれること そういうことから 平成 23 年度以来 交付税総額の確保に活用していた前年度からの繰越金がない中で 臨時財政対策債ではなく 地方交付税総額を確保するよう あらゆる手段を講じる必要があることを踏まえまして この特会剰余金を活用しまして 交付税総額の確保と臨時財政対策債の抑制を図らせていただいたところでございます (13) なお奥野氏はここで 公庫債権金利変動準備金についても質問しているが 地方交付税法等の改正には直接関わらないため本稿では割愛する (14) しかし 財政調整のあり方についての考えを質した点は 地方交付税法にも関係が深いと思われるため答弁のみを引用しておこう 高市早苗総務大臣 毎回お答えしていることでございますが やはり 本来は臨時財政対策債のような特例債による対応ではなく 法定率の引き上げによって地方交付税を安定的に確保するということが望ましい方向でございます ですから 29 年度の地方財政においても 交付税率の引き上げを事項要求しておりました なかなか 国 地方とも巨額の債務残高 財源不足を抱えているということ 29 年度においては国 地方の役割分担に係る大きな制度改正がなかったこと そして 先ほど委員もおっしゃっていただいたとおり 国債発行額を引き続き抑制するという中で 国の一般会計から交付税特別会計への繰入額を前年度から0.3 兆円増額して確保することができたということなどから 今回は 法定率の引き上げによらず 折半ルールを3 年間延長した上で 国は一般会計からの地方交付税の特例加算 地方は臨時財政対策債の発行によって対処することといたしました しかしながら 先ほど来申し上げておりますとおり やはり国の制度そのものの見直しということも一つは大切なポイントであり そしてまた これから地方が自分で税収を生み出していける その環境づくりに総務省の政策資源を総動員していくことも重要であり (13) 第 193 回国会衆議院総務委員会第 4 号 (2017 年 2 月 21 日 ) (14) 公庫債権金利変動準備金については 参議院においても日本維新の会の片山虎之助委員が質疑の対象としている

236 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - ます そしてさらに 今後も 法定率の見直しということについては粘り強く政府内で主張してまいります 法定率の引き上げをめぐっては同じく民進党の高井崇志委員もその必要性を指摘している また 高井委員は 自治体クラウドの推進における交付税措置について次のように指摘している 高井崇志委員 ( 民進党 ) この地方財政措置というものは その仕組み上 必ずしもこの予算に使うわけじゃない 交付税の算定基準として積み上げられているだけで 交付されてしまえば それぞれの自治体は自由に使える 私も自治体で働いた経験がありますけれども このICTというのはどうしてもやはり先の投資なので なかなか自治体の判断で投資が向きにくい こういうものは やはり国が 政府がある程度誘導していかないと進まない分野だと思うんですが この地方財政措置というやり方が 本当に 自治体クラウドのような あるいはICT 教育の情報化なんかもそうなんです 教育の情報化も地方財政措置をやっていますという説明なんですが 一向に進んでいかない こういったものをやる方法として この地方財政措置というやり方がいいのかどうか ぜひお聞きしたいと思います これに対する具体的な回答はなかった 県費負担教職員の給与負担事務に関しては 日本共産党の田村貴昭委員から臨時教員の空白期間に関する問題 県単加配に関する問題についての指摘があった これに対して後者に関する点への回答は 高市早苗総務大臣 県単加配など地域の実情に応じて実施されている施策に係る財源措置については 教育水準の低下につながらないように これは関係道府県と指定都市に設置されている協議会でよく御議論いただきたいと思っております というものであった (15) 社会民主党の吉川元委員からは 臨時財政対策債について 発行額の抑制への努力を認めつつ国からの加算額が減少したことに関する苦言が呈されている (16) 地方交付税の人口減少等特別対策事業費における算定の取組の必要度から取組の成果へのシフトについて日本共産党の梅村さえこ委員から質問があった (15) 第 193 回国会衆議院総務委員会第 4 号 (2017 年 2 月 21 日 ) (16) 臨時財政対策債については 参議院において 山下芳生委員から これを廃止し 法定率を引き上げるべきとの指摘があった

237 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 梅村さえこ ( 日本共産党 ) 今回 地方交付税の人口減少等特別対策事業費は 取り組みの必要度から 取り組みの成果に応じた算定へさらにシフトしていくとされています 地方六団体から シフトは 努力している条件不利地域や財政力の弱い団体が地方創生の目的を達成できるよう長期の取り組みが必要としていますが 短期間に成果が出るとは言えない状況があることが指摘をされているかと思います また 人口増減率などを成果の指標にしています 知事会議の中で紹介されたアンケートでも 成果には 対策により改善が困難な人口の自然増減率などが指標となっている 財政力の弱い地方圏においては努力しても成果が上がらないなど 取り組みの成果として指標を反映させることがふさわしくない状況も生じ得るとの声も出ているかと思います 一層のシフトはこのような点からやめるべきだと考えますが 総務大臣の御見解を伺いたいと思います 高市早苗総務大臣 平成 27 年度に創設しました人口減少等特別対策事業費につきましては まち ひと しごと創生の取り組みの必要度により5,000 億円を 取り組みの成果により1,000 億円を算定してきております 現在 各地方団体において地方創生の取り組みが進められて 経済 雇用や出産 子育てに関する指標が改善傾向にございます つまり 成果があらわれつつあるということを踏まえまして 地方創生の取り組みを一層推進するために 平成 29 年度から3 年間かけて段階的に 取り組みの必要度に応じた算定から 取り組みの成果に応じた算定にシフトすることとしています また 取り組みの成果にシフトするに当たりましては 地方団体の御意見もしっかり伺い 財政力が低く過疎法などの対象となっている団体について算定額の割り増しを行うなど 条件不利地域に配慮した算定を行うこととしております (17) 衆議院では 以上のような議論を経て2017 年 2 月 27 日総務委員会において賛成多数で可決され 同日の本会議においても委員会報告のとおり可決されている 民進党の逢坂誠二議員は 経済見通しを名目 2.5% 実質 1.5% という極めて甘い経済成長を前提にして地方交付税の原資が見積もられていること 中央集権的にトップランナー方式によって過度な行革を誘導することは 自治体の自立性を大きく毀損させること等から反対の立場で 日 (17) 第 193 回国会衆議院総務委員会第 5 号 (2017 年 2 月 23 日 )

238 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 本維新の会の足立康史議員からは 我が党は 本来地方交付税制度の廃止と消費税の地方税化等を提案する立場であり 今回の政府案はびほう策に過ぎないが よくできたびほう策であることから賛成の立場で 日本共産党の梅村さえこ議員は トップランナー方式の拡大は 地方交付税を利用して国民のいのちと最低限の生活を保障するナショナルミニマムの放棄につながる改革を推進するものであること 地方交付税の法定率を引き上げ 地方財政に対する国の責任を果たすべきであることなどとして反対の立場からそれぞれ討論が行われた (18) 同日参議院に送られ 3 月 10 日に総務委員会に付託された 参議院の質疑において 法案と直接関連する部分について 衆議院では取り上げられなかった論点が新たに提起されることはなかったと思われる 3 月 27 日に参議院総務委員会及び本会議において可決している 総務委員会においては 山下芳生委員 又市征治委員から反対討論が行われた 委員会可決後 江崎孝委員から 自立した安定的な財政運営を実現するための地方税財政制度の構築及び東日本大震災への対応に関する決議 ( 案 ) が提出され 全会一致で採択された なお 参議院本会議においては 討論等は実施されず 委員長の報告に続いて採決が行われた なお 衆議院 参議院ともに委員会等の議題として 地方財政計画についての報告 地方税法及び航空機燃料譲与税法の一部を改正する法律案と同時に取り上げられ 質疑が行われていることから 質疑の内容が具体的に何を対象としたものかが判然としないものも少なくない 例えば 本稿で取り上げた県費負担教職員の問題は 地方交付税法との関連も当然あるが 主として地方税法改正の課題である 次節においては 直接地方交付税法の改正と関連するとは限らない部分も若干含めながら 地方自治体への影響を検討したい 3. 地方自治体への影響等 地方自治体への具体的な影響については 法改正そのものというよりも地方財政計画の (18) 第 193 回国会衆議院本会議第 7 号 (2017 年 2 月 27 日 ) なお 本会議に先立つ衆議院総務委員会第 6 号においては 民進党の奥野総一郎委員が法案に反対の立場で 公明党の輿水恵一委員が賛成の立場で 日本共産党の田村貴昭委員が反対の立場で 日本維新の会の足立康史委員が賛成の立場で 社会民主党の吉川元委員が反対の立場でそれぞれ討論を行っている

239 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - 動向が注視されているところである もっとも 例年のことではあるが このように国と地方の財政関係を基本的に規定している地方財政計画の根拠法が地方交付税法第 7 条であることに また 地方財政計画に基づいて決定された地方交付税の総額等に対応した法改正のみが行われているという点に違和感を禁じ得ない これは 単に 地方財政計画それ自体を法律のように議決すれば良いというものではなく 予算でも決算でもない地方財政計画のあり方をどのように考えるかによって制度設計のイメージも大きく異なってくるため 概念的にどのように整理したらよいかについては 慎重な議論が必要であると思われる 国会の質疑では 地方交付税法等よりも地方財政計画に力点が置かれるものの やはり 地方財政計画が概念としては 地方交付税法等よりも上位のものとなっている現状に法律の規定ぶりを合わせていく必要があるのではないかと思われる 今回の国会においてもトップランナー方式が議論になっているが これ自体は 法律に規定されたものではない 例年の地方交付税法改正によって単位費用や測定単位は数値が更新されているため もし 地方において民間委託等が進み それに伴って職員数や人件費等に変化が生じているならば トップランナー方式などとわざわざ呼称しなくてもそれが反映された単位費用や測定単位に毎年度改正されているはずである しかし あえて 同方式を導入して単位費用の算定方法に変更を加える必要があるならば それは 地方交付税法第 2 条第 6 項にいう 標準的条件を備えた地方団体が合理的 かつ 妥当な水準において地方行政を行う場合又は標準的な施設を維持する場合に要する経費 という規定のうち 合理性や妥当性に何らかの変更を伴うものではないかと思われる したがって 本来は これらの規定を含めた見直しが必要なのであったのではないかと思われるのである トップランナー方式については 2017 年度に青少年教育施設管理 公立大学運営の2 分野に導入され 検討された業務のうち導入が未決定であるのは窓口業務のみとなった (19) 窓口業務をめぐっては 国会での議論においても 窓口業務の民間委託は トップランナー方式の導入が見送られたものの 引き続き検討とされています 一方 第 31 次地方制度調査会の答申を受け 自治体窓口業務の地方独法化を可能とする関連法案が上程される見込みであり 導入を見送ったものとも思いますが これには問題があると思います 等 (19) 2018 年度においては トップランナー方式の新たな導入はない 窓口業務地方独立行政法人については 其田茂樹 地方自治法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年法律第 54 号 ) 地方独立行政法人法改正部分に焦点を当てて 自治総研 2017 年 12 月号を参照されたい

240 - 自治総研通巻 470 号 2017 年 12 月号 - の指摘がなされている (20) ここで問題視されているのは 確かに 大都市を中心に窓口の受付等の民間事業者への委託は進んできました しかし 窓口は住民と向き合う自治体の最前線です 窓口に来庁したことをきっかけに 就労相談や住宅支援給付 多重債務解決などの複合的かつ多様な問題解決につなげる取組も進んでいます 単なる窓口業務ではなく 窓口をアウトリーチのアンテナとし 包括的なサービス体制をつくっていくことも自治体の重要な業務です 窓口業務の独法への包括委託は そうした取組にマイナスになる危険性をはらんでいます という問題意識からである (21) こうした質疑に対し 答弁は 窓口業務を行う地方独立行政法人の設立についてそれぞれの市町村が選択できることとするものであり 御指摘のとおり 市町村の選択肢の一つとして整備するものでございます とのことであるが こうした法整備やトップランナー方式の導入が自治体への アナウンス効果 を持ち 必要政党の吟味が不十分なまま導入が加速されないようにする必要があると思われる (22) 日本の財政調整制度や財源保障のあり方については 地方財政計画や地方交付税が大きな役割を担っていることはすでに述べたが それらがどのように法律に規定され また どのような点に関して政令等に委託されるべきかについては 現状の制度を維持することを前提としても 再検討を要するのではないかと思われる ( そのだしげき公益財団法人地方自治総合研究所研究員 ) (20) 第 193 回国会参議院本会議第 8 号 (2017 年 3 月 30 日 ) 民進党の森本真治委員の発言 (21) 同上 (22) 第 193 回国会参議院本会議第 8 号 (2017 年 3 月 30 日 ) における高市早苗総務大臣の答弁

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242 第第 4 部 地方自治関連法 4部

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244 住宅宿泊事業法 ( 平成 29 年 6 月 16 日法律第 65 号 ) 通称 : 民泊法 権 奇法 はじめに 民泊サービス とは 住宅( 戸建住宅 共同住宅等 ) の全部又は一部を活用して 宿泊サービスを提供するもの とされている (1) 訪日外国人観光客が急増する中 宿泊に対する需要の増加及び多様化に的確に対応するために民泊の活用が期待されている状況であり 近時急速に増加している 一方 民泊をめぐっては 安全 衛生上の問題 騒音やゴミ出しなどをめぐる近隣トラブルの問題が社会問題化されている このような問題に対応すべく 民泊サービスの適正な業務運営の確保を図るため新たな民泊制度を創設する 住宅宿泊事業法 ( 以下 本法 という ) が 平成 29 年 6 月 9 日に成立し 同年 6 月 16 日 法律第 65 号として公布された 以下では 本法制定の背景及び経緯 法律の内容 国会における審議を概観し 法制定後の自治体の動向をも踏まえ 自治体への影響及び課題について述べることとする 1. 法制定の背景 経緯 (1) 法制定の背景日本政府観光局 (JNTO) の資料によると 2017 年の訪日外国人旅行者数は 28,690,900 人 ( 推計値 ) である 2003 年当初 500 万人にとどまっていた訪日外国人旅行者を2010 年までに倍増させることを目標とした 観光立国行動計画 を策定しビ (1) 民泊サービス の制度設計のあり方について ( 民泊サービス のあり方に関する検討会最終報告書 平成 28 年 6 月 20 日 )

245 ジットジャパン事業を実施して以来 リーマンショックの影響による2009 年及び東日本大震災の影響による2011 年の減少があったものの 2013 年には1,000 万人を突破した 2014 年には 観光立国の実現に向けたアクション プログラム2014 を策定し 2020 年の訪日外国人旅行者数 2,000 万人という目標を掲げていたが すでに目標を大きく上回ったことになる 2016 年 3 月には 明日の日本を支える観光ビジョン構想会議 により 訪日外国人旅行者数を 2020 年には4,000 万人 2030 年には6,000 万人とする新たな目標を定めた 明日の日本を支える観光ビジョン が決定された このように今後更なる訪日外国人旅行者の増加が見込まれる中 これらの者の宿泊先の確保が喫緊の課題となっていた ホテルや旅館などの従来の宿泊施設だけでは対応しきれない状況にあり 訪日外国人旅行者が求める宿泊の形も多様化していることから 民泊サービスの活用が期待されていた 民泊の実態に関しては 民泊の紹介サイトに登録されている情報を抽出し ( 全国で (2) 15,127 件 ) 行った厚生労働省の実態調査によると 旅館業法の許可を得た施設が 2,505 件 (17%) 無許可は4,624 件 (31%) 物件特定不可 調査中等で不明なものが7,998 件 (53%) であった そして 旅館業法上の許可を得て法律の規制を受けるホテルや旅館などの宿泊施設に比べて 無許可営業民泊をめぐっては 近隣住民とのトラブルの発生 防犯上の問題 安全 衛生の確保など様々な問題が発生しており 苦情が寄せられている 以上のような 観光客の増加による宿泊施設の確保の必要性と無許可民泊営業をめぐって発生する諸問題への対応が 本法制定の背景にあったということができる (2) 従来の民泊制度 ( 適法民泊 ) 1 簡易宿所簡易宿所とは 旅館業法で定める4 種類の営業 すなわち ホテル営業 旅館営業 簡易宿所営業 下宿営業の一つとして カプセルホテルやユースホテル 山小屋 スキー小屋のような 宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け 宿泊料を受けて 人を宿泊させる営業で 下宿営業以外のもの をいう ( 旅館業法 2 条 4 号 ) 従来は客室の延床面積が一律 33m2以上を要件としていたが 平成 28 年 4 月の施行令改正により許可基準が緩和され 宿泊者が10 人未満 (2) 厚生労働省 全国民泊実態調査の結果について ( 平成 29 年 3 月 1 日公表 )

246 の場合については宿泊者数に応じた面積基準 (3.3m2 宿泊者数以上 ) となっている 2 農家民宿農山漁村余暇法に基づく 施設を設けて 人を宿泊させ 農林水産省令で定める農山漁村滞在型余暇活動の必要な役務を提供する営業 のことをいう ( 農山漁村余暇法 2 条 5 号 ) 旅館業法上の簡易宿所として位置付けられ 客室の延床面積が 33m2未満の場合も許可を受けることができる 3 特区民泊特区民泊 ( 国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業 ) とは 国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例として いわゆる外国人旅客の滞在に適した施設を賃貸借契約及びこれに付随する契約に基づき一定期間以上使用させるとともに 当該施設の使用方法に関する外国語を用いた案内その他の外国人旅客の滞在に必要な役務を提供する事業として政令で定める要件に該当する事業で ( 国家戦略特別区域法 13 条 ) 条例により民泊営業を可能とするものである 当初 最低宿泊日数が6 泊 7 日であったが 平成 28 年 10 月の政令改正により2 泊 3 日に緩和された 客室延床面積 25m2以上 特区指定地域の都道府県知事等の認定 宿泊者名簿具備や近隣住民への事前説明 苦情対応などが義務付けられている (3) 4 イベント民泊イベント民泊とは 平成 27 年の規制改革実施計画 (6 月 30 日閣議決定 ) に基づき 年 1 回 (2~3 日程度 ) のイベント開催時に宿泊施設が不足することが見込まれる場合に 開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような 公共性の高いものについて 旅館業に該当しないものとして取り扱い 旅館業法に基づく営業許可なく 宿泊サービスを提供することを可能とするものである 特に施設要件等は設けられていない (3) 新たな民泊制度をめぐる議論近年 インターネットを通じて急速に普及している民泊については 急増する訪日外国人観光客のニーズや大都市部での宿泊需給のひっ迫状況への対応といった観点や 地域の人口減少や都市の空洞化により増加している空き家の有効活用といった地域活 (3) 実施状況としては 大田区 大阪府 大阪市が平成 28 年度に 北九州市 千葉市 新潟市が平成 29 年度に事業を開始している いずれも最低宿泊日数は 2 泊 3 日となっている

247 性化の観点から 民泊の推進活用が求められていた 同時に テロ防止や感染症まん延防止などの安全 衛生上の問題 地域住民等への配慮とトラブルの防止 対応のためのルールづくりが求められていた 本来 宿泊事業を行うためには旅館業法の許可が必要であるにもかかわらず 許可を得ずに実施される違法な民泊が広がっており それらへの対応も急務であった こうした状況を踏まえ 民泊に関する法制度の整備に向けた議論が進められた 政府内における主な議論状況を整理すると 以下のようになる まず 平成 27 年 6 月 30 日に閣議決定された 規制改革実施計画 において インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅 別荘等を活用した民泊サービスについては 関係省庁において実態の把握等を行った上で 旅館 ホテルとの競争条件を含め 幅広い観点から検討し 結論を得る ( 平成 27 年検討開始 平成 28 年結論 所管官庁 : 厚生労働省 ) とした これを受け 同年 11 月 厚生労働省 観光庁による 民泊サービス のあり方に関する検討会 が立ち上がり 議論 検討に着手した さらに 同年 12 月 21 日 規制改革会議の 民泊サービスの推進に関する意見 においては 関係省庁における検討をスピードアップさせるとともに 取り組むべき課題として 1 一定の民泊サービスについては旅館業法の適用除外とした上で必要な規制を新たに行うことも含め 抜本的な対応を検討すべきであること 2 民泊サービス全体をカバーする規制体系を構築すべきこと 3サービス提供者や仲介事業者が外国人 ( 外国法人 ) の場合も含め 規制の適切な執行体制を確保すべきこと を提言した また 安全 安心の確保及び外部不経済への対応並びに既存業態との関係等様々な課題への対応も重要な課題としている 平成 28 年 5 月 19 日 規制改革会議の 規制改革に関する第 4 次答申 においては 民泊サービス は実態が先行し 必要な旅館業の許可を得ていない事例が多くみられるとの指摘もあり 早急に適切なルールを策定し 推進していくことが必要である このため 宿泊サービスに多様な選択肢を与え 新たな宿泊需要を喚起するとともに 外部不経済などの様々な課題に対応し 適切な規制の下でニーズに応えた 民泊サービス が推進できるよう 類型 ( 家主居住型 家主不在型 ) 別に規制体系を構築する とされた 平成 28 年 6 月 2 日閣議決定の 規制改革実施計画 においては 適切な規制の下でニーズに応えた民泊サービス ( 住宅 ( 戸建住宅及び共同住宅 ) を活用した宿泊サー

248 ビスの提供 以下 民泊 という ) が推進できるよう 類型別に規制体系を構築することとし 各種の 届出 及び 登録 の所管行政庁についての決定を含め 早急に法整備に取り組む この新たな枠組みで提供されるものは住宅を活用した宿泊サービスであり ホテル 旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の法制度とする ( 平成 28 年上期検討 結論 平成 28 年度中に法案を提出 所管官庁 : 厚生労働省 国土交通省 ) とした そして 家主居住型については 届出制とし 利用者名簿の作成 保存 衛生管理措置 外部不経済への対応措置 ( 苦情等への対応など ) 等を住宅提供者に義務付け 家主不在型については 同じく届出制とし 民泊施設管理者 ( 登録制とし 住宅提供者は管理者に管理委託又は本人が管理者として登録 ) に上記内容を義務付けるとした また 仲介事業者も登録制とし 取引条件の説明 民泊の表示等を義務付けるとしている 平成 28 年 6 月 20 日の 民泊サービス のあり方に関する検討会最終報告書 民泊サービス の制度設計のあり方について が取りまとめられた その概要は以下のとおりである 民泊の制度設計のあり方について 適切な規制の下でニーズに応えた民泊を推進することができるよう 以下の枠組みにより 類型別に規制体系を構築することとし 早急に法整備に取り組むべきである < 基本的な考え方 > 住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け 住宅を1 日単位で利用者に利用させるもので 一定の要件 の範囲内で 有償かつ反復継続するものとする 一定の要件 を超えて実施されるものは 新たな制度枠組みの対象外であり 旅館業法に基づく営業許可が必要である 制度枠組みの基本的な考え方としては 家主居住型 と 家主不在型 に区別した上で 住宅提供者 管理者 仲介事業者に対する適切な規制を課し 適正な管理や安全面 衛生面を確保しつつ 行政が 住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築する そして 法体系としては ホテル 旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の法制度として整備することが適当である < 家主 ( 家主居住型 ) 及び管理者 ( 家主不在型 ) に対する規制 > 住宅提供者は 行政庁への届出を行う

249 家主不在型は管理者に管理を委託 管理者は行政庁への登録を行う 住宅提供者及び管理者は 利用者名簿の作成 備付け ( 本人確認 外国人利用者の場合は旅券の写しの保存等を含む ) 最低限の衛生管理措置 簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準 (3.3m2以上) の遵守 利用者に対する注意事項の説明 住宅の見やすい場所への標識掲示 苦情への対応 当該住戸についての法令 契約 管理規約違反の不存在の確認等を求め 安全面 衛生面を確保し 匿名性を排除する 法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等 必要と認められる場合の行政庁による報告徴収 立入検査 違法な民泊を提供した場合の業務の停止命令等の処分 無届で民泊を実施したり 上記の義務に違反するなどの法令違反に対する罰則等を設ける 住宅提供者及び管理者は 行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより 行政当局 ( 保健衛生 警察 税務 ) の求めに応じて必要な情報提供を行う 宿泊拒否制限規定は設けない < 仲介事業者規制について> 仲介事業者は行政庁への登録を行う 行政庁による報告徴収 立入検査 違法な民泊のサイトからの削除命令 違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令 登録取消等の処分 法令違反に対する罰則等を設ける 仲介事業者は 行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより 行政当局 ( 保健衛生 警察 税務 ) の求めに応じて必要な情報提供を行う 外国法人に対する取締りの実効性確保のため 法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにする < 一定の要件について> 一定の要件 としては 半年未満(180 日以下 ) の範囲内で適切な日数を設定する なお 既存のホテル 旅館との競争条件にも留意する 住居専用地域でも実施可能とすべきである ( ただし 地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能 ) < 所管行政庁について> 民泊は住宅を活用した宿泊の提供という位置付けのものであること 仲介事業

250 者に対する規制の枠組みを設けること 感染症の発生時等における対応が必要であること等にかんがみれば 国レベルにおいては 国土交通省と厚生労働省の共管とすることが適当である 地方レベルにおいても 関係部局が複数にまたがることが想定されるが 国民にとって混乱のないよう窓口は明確にした上で 関係部局間での必要な情報連携が図られる方向で整理すべきである 保健所その他関係機関における体制強化について 民間への事業委託の積極活用を含め検討すべきである 以上のような経緯を経て 新しい住宅宿泊事業法制として本法案が提出されること となった 2. 本法の内容 本法は 住宅宿泊事業の届出制度や住宅宿泊管理業 住宅宿泊仲介業の登録制度に関す るルールとそれぞれの監督について定める内容となっている 法律の具体的な内容は以下のようになっている (1) 定義 (2 条 ) 1 住宅宿泊事業 とは 旅館業法第 3 条の2 第 1 項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって 人を宿泊させる日数が1 年間で180 日を超えないものをいい 住宅宿泊事業者 とは 届出をして住宅宿泊事業を営む者をいう 既存の ホテル 旅館 とは異なる 住宅 を用いた宿泊サービスの提供であることから 住宅宿泊事業の年間提供日数について 180 日を超えないものとしている なお 年間提供日数の算定方法については 国土交通省令 厚生労働省令で定めることとなっている 実際には 毎年 4 月 1 日正午から翌年 4 月 1 日正午までの期間において人を宿泊させた日数とし 正午から翌日の正午までの期間を1 日とすることとなっている (4) (4) 住宅宿泊事業法施行規則 ( 平成 29 年 10 月 27 日 厚生労働省令 国土交通省令第 2 号 )3 条

251 図 住宅宿泊事業法の概要 ( 出典 : 国土交通省観光庁ホームページ ) これまで都市計画法上の用途地域指定によって ホテル 旅館 を用途とする建築物を建てることができない住居専用地域等では民泊事業を営むことができなかったが 本法の対象となる 届出住宅 は建築基準法上の 住宅 長屋 共同住宅 寄宿舎 に含まれるものとされ(21 条 ) 住居専用地域においても民泊事業を行うことができるようになったのである 2 住宅宿泊管理業 とは 住宅宿泊事業者から委託を受けて 報酬を得て 住宅宿泊管理業務を行う事業をいい 住宅宿泊管理業者 とは 登録を受けて住宅宿泊管理業を営む者をいう 3 住宅宿泊仲介業 とは 旅行業法第 6 条の4 第 1 項に規定する旅行業者以外の者が 報酬を得て 住宅宿泊仲介業務を行う事業をいい 住宅宿泊仲介業者 とは 登録を受けて住宅宿泊仲介業を営む者をいう

252 (2) 住宅宿泊事業 1 住宅宿泊事業者の届出住宅宿泊事業を営もうとする者は 都道府県知事 ( 保健所を設置する市又は特別区であって その長が住宅宿泊事業等関係行政事務を処理するものの区域にあっては 当該保健所設置市等の長 ) に届出をする必要がある (3 条 1 項 ) 法制定前は民泊を営むためには旅館業法上の許可が必要であったが ハードルを下げ 届出制 にしたものである 2 住宅宿泊事業者の業務 (5 条 ~14 条 ) 住宅宿泊事業者の業務に関しては 以下のような内容が定められている 床面積に応じた宿泊者数の制限 定期的な清掃 火災発生時における宿泊者の円滑な避難を確保するための措置 具体的措置については 非常用照明器具の設置 避難経路の表示等を規定している (5) 外国人宿泊者に対し 住宅の設備の使用方法の案内及び交通手段に関する外国語を用いた情報提供 具体的措置については 外国語を用いて 届出住宅の設備の使用方法に関する案内をすること及び移動のための交通手段に関する情報を提供すること並びに 火災 地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内をすることなどを規定している (6) 宿泊者名簿を備え 都道府県知事の要求があったときは これを提出する義務 宿泊者に対し 騒音の防止のために配慮すべき事項等について説明しなければならない 住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては 適切かつ迅速に対応しなければならない 届出住宅の居室の数が 一定の数を超えるとき 又は 届出住宅に人を宿泊させる間 不在となるときは 当該届出住宅に係る住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する義務 施行規則においては 一定の数 に関しては5とし 不在 の時間に関しては 日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内で不在となる場合を除くとされた (7) 宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは 住宅宿泊 (5) 国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則 ( 平成 29 年 10 月 27 日国土交通省令第 65 号 )1 条 (6) 国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則 2 条 (7) 住宅宿泊事業法施行規則 9 条 2 項 3 項

253 仲介業者又は旅行業者に委託する義務 住宅ごとに 公衆の見やすい場所に 標識を掲げなければならない 住宅に人を宿泊させた日数等について 定期的に 都道府県知事に報告する義務 3 監督 (15 条 ~17 条 ) 都道府県知事は 住宅宿泊事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは その必要の限度において 住宅宿泊事業者に対し 業務の方法の変更その他業務の運営の改善に必要な措置をとるべきことを命ずることができる また 住宅宿泊事業者がその営む住宅宿泊事業に関し法令等に違反したときは 1 年以内の期間を定めて その業務の全部又は一部の停止を命ずることができ 住宅宿泊事業者がその営む住宅宿泊事業に関し法令等に違反した場合であって 他の方法により監督の目的を達成することができないときは 事業廃止を命ずることができる 都道府県知事は 住宅宿泊事業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは 住宅宿泊事業者に対し その業務に関し報告を求め 又はその職員に 届出住宅その他の施設に立ち入り その業務の状況若しくは設備 帳簿書類その他の物件を検査させ 若しくは関係者に質問させることができる 4 条例による住宅宿泊事業の実施の制限 (18 条 ) 都道府県は 住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは 合理的に必要と認められる限度において 政令で定める基準に従い条例で定めるところにより 区域を定めて 住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができる 政令で定める基準 は 区域ごとに 住宅宿泊事業を実施してはならない期間を指定して行うこと 住宅宿泊事業を実施する期間を制限する区域の指定は 土地利用の状況その他の事情を勘案して 住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である地域内の区域について行うこと 住宅宿泊事業を実施してはならない期間の指定は 宿泊に対する需要の状況その他の事情を勘案して 住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である期間内において行うこと となっている (8) (8) 住宅宿泊事業法施行令 ( 平成 29 年 10 月 27 日政令第 273 号 )1 条

254 (3) 住宅宿泊管理業 1 住宅宿泊管理業者の登録住宅宿泊管理業を営もうとする者は 国土交通大臣の登録を受けなければならない (22 条 1 項 ) 住宅宿泊管理業とは 住宅宿泊業者からの委託を受けて 報酬を得て 住宅管理業務を行う事業であり 登録を受けた者だけが行うことができる 2 住宅宿泊管理業者の業務 (29 条 ~40 条 ) 住宅宿泊管理業者の業務に関しては 以下のような内容が定められている 信義誠実の義務 名義貸しの禁止 適正広告の義務 不適正な管理受託契約勧誘の禁止 管理受託契約の内容及びその履行に関する書面による説明と 管理受託契約を締結したときの一定の事項を記載した書面の交付義務 清掃やクリーニングなどの一部の業務を除いた再委託の禁止 業務に従事する使用人及び従業者の証明書携帯 営業所又は事務所の帳簿の備え付け 営業所又は事務所ごとに 公衆の見やすい場所に 標識を掲げる義務 住宅宿泊事業者への住宅宿泊管理業務の実施状況等に関する報告義務 3 監督 (41 条 ~45 条 ) 国土交通大臣は 住宅宿泊管理業者に対し 業務改善命令等の監督権限を行使できる 住宅宿泊事業者から委任を受けて行う住宅宿泊管理業務に関してその適正な運営を確保するため必要があると認める場合には 都道府県知事も業務改善命令 立入検査及び報告徴収を行うことができる (4) 住宅宿泊仲介業 1 住宅宿泊仲介業の登録宿泊サービスの仲介は 原則旅行業法に基づく旅行業の登録を受けなければならないが ( 旅行業法 3 条 ) 観光庁長官の登録を受けた者は 旅行業法第 3 条の規定にかかわらず 住宅宿泊仲介業を営むことができる (46 条 1 項 ) 登録申請の際には 最近の事業年度の貸借対照表 住宅宿泊仲介業を的確に遂行するために必要な体制が整備されていることを証する書類 申請者が欠格事由 (49 条 1 項 ) に該当し

255 ないことを制約する書面等を添付しなければならない (47 条 2 項 ) 2 住宅宿泊仲介業者の業務 (53 条 ~60 条 ) 住宅宿泊仲介業者の業務に関しては 以下の内容が定められている 信義誠実の義務 名義貸しの禁止 住宅宿泊仲介契約に関する 住宅宿泊仲介業約款 の策定と 観光庁長官への届け出義務 住宅宿泊仲介業約款 については 標準約款制度が導入されている 観光庁長官が標準住宅宿泊仲介業約款を定めて公示した場合において 住宅宿泊仲介業者が 標準住宅宿泊仲介業約款を用いた場合は 観光長官への届出は不要である 住宅宿泊仲介業約款が 宿泊者の正当な利益を害するおそれがあるものであるとき 又は 住宅宿泊仲介業務に関する料金その他の宿泊者との取引に係る金銭の収受及び払戻しに関する事項並びに住宅宿泊仲介業者の責任に関する事項が明確に定められていないとき 観光庁長官は 当該住宅宿泊仲介業者に対し 相当の期限を定めて その住宅宿泊仲介業約款を変更すべきことを命ずることができる 住宅宿泊仲介業務に関する料金の策定 公示義務 不適正な住宅宿泊仲介契約勧誘の禁止 住宅宿泊仲介業者等は 住宅宿泊仲介業務に関連して 宿泊者に対し 法令に違反する行為を行うことをあっせんし 又はその行為を行うことに関し便宜を供与するほか 宿泊者の保護に欠け 又は住宅宿泊仲介業の信用を失墜させるものとして国土交通省令で定める行為等をしてはならない 具体的には 宿泊者に対し 特定のサービスの提供を受けること又は特定の物品を購入することを強要する行為と宿泊のサービスを提供する者と取引を行う際に 当該者が法第 3 条第 1 項の届出をした者であるかどうかの確認を怠る行為が挙げられている (9) 住宅宿泊仲介契約を締結しようとするときは 宿泊者に対し 当該住宅宿泊仲介契約を締結するまでに 住宅宿泊仲介契約の内容及びその履行に関する事項について 書面を交付して説明しなければならない 営業所又は事務所ごとに 公衆の見やすい場所に 標識を掲げなければならない 住宅宿泊仲介業者については インターネットを通じて取引が行われるのが一般 (9) 国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則 39 条

256 的であることから 登録年月日 登録番号その他の国土交通省令で定める事項を電磁的方法により公示することができる 3 監督 (61 条 ~66 条 ) 観光庁長官は 住宅宿泊仲介業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは その必要の限度において 住宅宿泊仲介業者に対し 業務の方法の変更等を命ずることができ 住宅宿泊仲介業者が一定の要件に該当するときは その登録を取り消し 又は1 年以内の期間を定めてその業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができる また 観光庁長官は 住宅宿泊仲介業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは 住宅宿泊仲介業者に対し 報告徴収及び立入検査を実施することができる 住宅宿泊仲介業に係る取引が外国において行われる場合においても住宅宿泊事業に係る住宅が日本国内にあるため これらの者が保護の対象となることに変わりはないため 外国法人に対しても一定の規制を適用する必要があることから 業務改善命令に関する規定は 外国住宅宿泊仲介業者について準用することとなっている ただし 命ずる のではなく 請求する と読み替えて適用することとしている 3. 国会における審議 (1) 審議の経過 本法案は 平成 29 年 3 月 10 日に 内閣提出法案として193 回国会衆議院に提出され 同年 6 月 16 日に法律第 65 号として公布された 国会における審議の経過は以下のとお りである 項 目 内 容 衆議院付託年月日 / 衆議院付託委員会 平成 29 年 5 月 25 日 / 国土交通 衆議院審査終了年月日 / 衆議院審査結果 平成 29 年 5 月 31 日 / 可決 衆議院審議終了年月日 / 衆議院審議結果 平成 29 年 6 月 1 日 / 可決 参議院議案受理年月日 平成 29 年 6 月 1 日 参議院付託年月日 / 参議院付託委員会 平成 29 年 6 月 2 日 / 国土交通 参議院審査終了年月日 / 参議院審査結果 平成 29 年 6 月 8 日 / 可決 参議院審議終了年月日 / 参議院審議結果 平成 29 年 6 月 9 日 / 可決

257 (10) (2) 法案の提案理由及び概要 近年 住宅を活用して宿泊サービスを提供するいわゆる民泊について 空き室を一時的に提供しようとする者と旅行者をインターネット上でマッチングするビジネスが世界各国で展開されており 我が国でも急速に普及しております この民泊については 観光先進国の実現を図る上で 急増する訪日外国人旅行者のニーズや宿泊需給の逼迫状況への対応のために その活用を図ることが求められております 一方 民泊については 感染症蔓延防止等の公衆衛生の確保や 地域住民等とのトラブル防止に留意したルールづくりはもとより 旅館業法の許可が必要な旅館業に該当するにもかかわらず 無許可で実施されているものもあることから その是正を図ることも急務となっております このような趣旨から このたびこの法律案を提案することとした次第です 次に この法律案の概要につきまして御説明申し上げます 第一に 住宅に人を百八十日を超えない範囲で宿泊させる事業を住宅宿泊事業とし 当該事業を営む者に係る届け出制度を設けるとともに 事業実施に当たって 宿泊者の衛生の確保等を義務づけることとしております また 地域の実情を反映して住宅宿泊事業の実施を制限する仕組みも導入することとしております 第二に 家主が不在である住宅を住宅宿泊事業に用いる場合に 住宅宿泊事業を営む者からの委託を受け 宿泊者の衛生の確保等の業務を行う事業を住宅宿泊管理業とし 当該事業を営む者に係る登録制度を設けるとともに 事業実施に当たって 住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置の代行等を義務づけることとしております 第三に 宿泊者と住宅宿泊事業者との宿泊サービス提供についての媒介等を行う事業を住宅宿泊仲介業とし 海外のみに事務所が所在する者も含め 当該事業を営む者に係る登録制度を設けるとともに 事業実施に当たって 利用者への契約内容の説明等を義務づけることとしております これらの措置を講じ それぞれの事業を営む者の業務の適正な運営を確保することにより 健全な民泊の普及を図ることとしております (10) 衆議院国土交通委員会における国土交通大臣の説明 第 193 回国会国土交通委員会第 20 号 ( 平成 29 年 5 月 26 日 )

258 (3) 衆 参国土交通委員会における審議内容衆 参議院国土交通委員会における審査の主な内容を争点ごとに整理すると 以下のとおりである 制度設計一般 室井委員民泊サービスの規制を改革していく観点で 民泊サービスを推進していくに当たり 旅館業法や旅行業法の改正などではなく 新法における制度となったその経緯 目的は何か 石井国務大臣現状において 民泊サービスは 居住性の観点から一定の設備を備えた住宅において宿泊事業が実施されるものであること 利用者の大層を外国人が占めていること 騒音やごみ出しなどによる近隣トラブルなどが生じていること 旅館業者以外の者によって実施されるものであることなど 通常の旅館業と異なる性質を持っている また 本法案については 住宅宿泊業のみならず これと関連する事業として 住宅宿泊管理業と住宅宿泊仲介業を規制の対象としており 健全な民泊サービスの普及を図り 制度の一体的かつ円滑な執行を確保するために これら性格の異なる三つの事業を一体的に管理する必要があることから 既存の旅館業法や旅行業法の改正ではなく 別の法制度として新法で対応することとした (11) 民泊の現状 中村 ( 裕 ) 委員違法民泊の実態をどのように把握しているのか 北島政府参考人 ( 厚生労働省医薬 生活衛生局生活衛生 食品安全部長 ) 厚生労働省の実態調査では 調査件数約一万五千件のうち 旅館業法の営業許可を受けている施設が約二千五百件 一六 五 % 無許可で営業を行っていたものが約四千六百件 三〇 六 % 物件の特定ができなかったものや自治体において調査中のものが約八千件 五二 九 % となっている (12) 伊佐委員宿泊施設が五万室不足するとされる一方で 客室稼働率はホテルが六〇 % 旅館は三七 九% 簡易宿所は二五 八% しかない 本当に需給が逼迫していると言えるのか 田村観光庁長官東京 大阪を中心とした都市部のホテルの客室稼働率が非常に高い水準で推移している一方で 全国の旅館の客室稼働率は四割程度 一方 昨年八 (11) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 20 号 ( 平成 29 年 6 月 6 日 ) (12) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 21 号 ( 平成 29 年 5 月 30 日 )

259 月の民間会社の調査によると 旅館を含む既存の宿泊施設の稼働率をかなり高いレベルまで上げた上で二〇二〇年の客室数の需給というものを試算した結果として 約五万室程度不足するという調査結果 旅館等の既存の宿泊施設の稼働率を上げる取り組みというのは非常に重要だが あわせて 新たな宿泊施設の供給をふやす努力も必要 (13) 対象住宅 伊佐委員旅館 ホテル業からは 居住型ならともかく 家主不在型の民泊はビジネスであり 不在型の場合は 旅館業の我々だけ厳しい規制がかかっていることから 競争できない 現行の旅館 ホテル業への規制とのバランスという観点で 不在型というのはそれなりに厳しくしてほしい こういう声がある 居住型民泊からは 今 安全に住んでおり また常にゲストとコミュニケーションがとれる状況にあるわけだから 家主不在型とは一緒にしないでほしいという 双方から 不在型と居住型を分けるべきという意見がある 田中副大臣住宅宿泊事業に関して 家主居住型での住宅宿泊事業者であっても 家主不在型での住宅宿泊事業者であっても 宿泊事業を行っているという点においては同様の事業形態であるため 基本的には いずれの宿泊事業を行う者についても同じ規制に係らしめる必要がある 今後 旅館 ホテル あるいは簡易宿所についても 厚生労働省において 今国会に提出している旅館業法の改正法案とあわせて 便所の具体的要件とか そういう施設要件等について撤廃等を行うなど 旅館業についても一定の規制緩和を行う方向で検討していると聞いている (14) 荒井委員投資型のマンションのような民泊施設と家主が住んでいる民泊施設とは切り分けて考えるべきでは 石井国務大臣いわゆる投資型で 専ら住宅宿泊事業のために用いるマンションなどを新築するような場合には これは 入居者の募集が行われるものではなく 人の居住の用に供されるとも認められないことから 本法案における住宅とは言えず 本法案の対象とはならないと考えている (15) 住民への配慮 石井委員良好なマンションに住んでいる人々にとって 空き部屋が民泊向けに貸 (13) 上同 (14) 上同 (15) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 22 号 ( 平成 29 年 5 月 31 日 )

260 し出されるということはいろんな面において心配をしている方もいる マンションの管理規約 これを改正して対応することは可能ではないかと思うが どのような改正をして どのような要件であって そしてそれを今後法律が成立した後に周知されるのか 由木政府参考人 ( 国土交通省住宅局長 ) 分譲マンションで民泊をめぐるトラブルの防止のためには 民泊を許容するか否かについてあらかじめ区分所有者間でよく議論し その結果を踏まえて 民泊を許容するあるいは許容しないという旨を管理組合において定めるマンション管理規約上明確化しておくことが重要である このため 従来から国土交通省で標準管理規約を作成して公表しているが 管理組合が規約を改正する際の参考となるようにこの標準管理規約を改正し 専有部分の用途を定めている条項の中に 民泊を許容する場合の規定と それから禁止をする場合の規定と 双方の例を示すことを考えている 早めに周知を図る必要があるので 法案が成立した場合には 公布後 法の施行までの間のなるべく早い時期に速やかに改正を行っていきたい (16) 安全上の問題 中村 ( 裕 ) 委員現実の 管理業者から宿泊者への鍵の受け渡しなどは 委託をされることになると思われる 例えば ホテルやコンビニでの受け渡し また IT を活用したチェックインなどは可能となるのか 谷脇政府参考人 ( 国土交通省土地 建設産業局長 ) 住宅の解錠に鍵を要する場合には 住宅宿泊管理業者の営業所での鍵の受け渡しのほかに 業務の一部を再委託し 近隣のホテルのフロント あるいは適正な業務を行うことができる二十四時間営業の店舗などで鍵の受け渡しを行うということも可能と考えている (17) 初鹿委員家主不在型で 宿泊予約をした人と実際に泊まる人の確認をどのように行うのか 藤井大臣政務官家主不在型の住宅宿泊事業では 住宅宿泊事業者からの委託を受けた住宅宿泊管理業者に対して 宿泊者名簿の備えつけの義務を課すこととしており 宿泊者名簿の記載に当っては 宿泊者の氏名 住所 職業等が実際に宿泊する者の情報と同一かつ虚偽でないことを担保するため 旅券の提示を求める等により (16) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 20 号 (17) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 21 号

261 本人確認を行うとともに それが対面またはそれと同等の手段で行われる必要がある (18) 宿泊日数の制限 中村 ( 裕 ) 委員民泊事業の百八十日制限をしっかりと守らせることができるのか この捕捉をどのように考えているのか 田村政府参考人住宅宿泊事業者へ宿泊実績の報告義務を課しており 定期的に 住宅宿泊事業者の監督を所管する都道府県等において確認を行うこととしている また 住宅宿泊事業者からの報告に対するチェックについては 住宅宿泊仲介業者の保有する宿泊履歴と 住宅宿泊事業者から報告を受けた年間提供日数の情報を照合する方向で検討しており 両方とも 物件ごとの届け出番号で整理し チェックしていくことを考えている (19) 初鹿委員民泊の届け出をし 百八十日間は お客さんをきちんと民泊としてとり 残りの約百八十日は 短期賃貸マンションとしてお客さんと賃貸契約を結ぶ事業形態は可能か 田村政府参考人百八十日以下の範囲で住宅宿泊事業の用に供し 残りの期間については賃貸住宅として用いるということは 当然あり得ると考えている (20) 新妻委員新築マンション一棟で例えばそれを民泊に転用する場合 百八十日未満の日数制限というのは 届出住宅ごとの日数制限ではなくて事業者ごとの日数制限 よって 一事業者が一棟のマンションを持つと そのマンションが五十室あるとすれば 五十室のうち一室でも埋まったらそのマンション全体が全ての部屋について一泊がカウントされるということになるのか 田村政府参考人そのような場合には一泊がカウントされるということになると考えている 新妻委員もしその事業者がマンション一室一室ごとに五十件 個別の申請をした場合には 田村政府参考人マンションの一室がこの届出住宅に該当するというような場合であれば 届出を受けた部屋ごとに日数がカウントされることとなる (21) (18) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 22 号 (19) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 21 号 (20) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 22 号 (21) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 20 号

262 条例の制定範囲 伊佐委員旅館業法上 例えば 学校とか福祉施設からおおむね百メートル以内の場合は その環境が害されるおそれがある場合は旅館業ができないという地域制限が課されているが 民泊では 地域制限が課されることになるのか 田村政府参考人住宅宿泊事業の実施そのものを制限するといった規制というのは 基本的に 特段設けられていない ただし 住宅宿泊事業が 例えば静ひつな環境が求められる場合においても実施され得ることから 住宅宿泊事業に起因する騒音が多く発生するなどの場合には 生活環境の悪化を防止する必要がある このため 本法案において 生活環境の悪化を防止するため必要があるときに 合理的に必要と認められる限度において 条例で定めるところにより 区域を定めて 住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができることとしている (22) 小宮山委員本法案では 条例で制限できる場合の基準が明確でなく 自治体にとって困難な判断を迫られるのではないかと懸念している どのような場合にどこまで上限日数を制限できるのか 国が判断基準を明確にするべきではないか 田村政府参考人具体的には 生活環境の悪化を防止するために必要がある区域として 例えば 静穏な環境を求める住民が多く滞在する特定の別荘地 あるいは 防犯の観点から安全な環境を必要とする学校 幼稚園等周辺等々が挙げられる 一方 この制限については 地域の実情がさまざまであることから 当該都道府県内の各地域ごとの特性に応じて 合理的な範囲内でその必要に応じて区域を設定すべきものであるので 国が判断基準を一律に定めるというのは困難であると考えている 小宮山委員条例に定めることで住宅宿泊事業を行わない地域を定めるということも可能なのではないか 田村政府参考人年間三百六十五日全てを制限するということは 住宅宿泊事業に係る規制 振興の両面を有する本法案の目的を逸脱するものであり 適切ではない (23) 石井委員条例制定ができるのは市町村でなくて県 政令市 保健所設置市だが 地域の細かい実態を知っているのはやはり市町村ではないか 田村政府参考人住宅宿泊事業を実施する期間を制限する条例を制定した場合 そ (22) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 21 号 (23) 第 193 回国会衆議院国土交通委員会第 22 号

263 の制限した期間に住宅宿泊事業が実施されていないか監督する必要があり 都道府県又は保健所設置市については既に旅館業に係る行政事務を処理していることなどを踏まえ 住宅宿泊事業に係る行政事務の処理についても一定の執行能力を有するものと考え 都道府県又は保健所設置市等にとどめることとした 田中副大臣都道府県が地域の実情を踏まえた条例 これを制定するためには やはり一般市町村の意見に配慮することが適切であると考え 政省令等において関係市町村の意見の聴取等について規定したいと考えている (24) 長谷川委員例えば札幌の場合 条例で 例えば六月から九月までのトップシーズン それから十二月から二月の雪祭りまでの間というふうに 期間を決めてこの民泊の解禁期間として それ以外は禁止とした場合に これは問題があるか 田村政府参考人一定期間における住宅宿泊事業の実施について 都道府県等が 生活環境の悪化を防止するために必要があるときに 合理的に必要と認める限度において 条例で定めるところにより 区域を定めて住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができるということで その結果として 例えば六月から九月 十二月から二月というような期間においてその住宅宿泊事業を実施されるということはあり得ると考える (25) 自治体の支援 野田委員都道府県あるいは保健所 そして市町村等の体制 財源確保等についての支援策は 田村政府参考人住宅宿泊事業は 旅行業法と同様に都道府県等の地方公共団体が自治事務として指導監督を行うもので これに必要な費用等は当該地方公共団体が負担することになる 一方で 本法案の円滑な施行のため 国土交通省の予算でインターネット等による行政手続に係るシステムを構築し 関係行政機関において情報を共有し 主体間の連携を図ることとしているが 関係地方公共団体も このシステムを活用すること等を通じ住宅宿泊事業に対する指導監督を効率的に実施できるものと考える 十分な指導監督を都道府県等が行えるように 人員確保 体制の構築について 関係省庁とともに必要な措置を検討している 野田委員ごみの問題 騒音の問題 環境などの苦情は身近な市町村に行くのでは (24) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 20 号 (25) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 21 号

264 ないか 田村政府参考人本法案においては 住宅宿泊事業者あるいは管理業者に対して 周辺からの苦情というものに迅速かつ適切に対応すべき義務というものを課している 観光庁においても ワンストップの苦情相談窓口を設けて 都道府県あるいは関係の省庁にその苦情の内容を伝え 問題の解決を図っていく体制を取ることとしている (26) (4) 附帯決議本法案に関しては 衆 参の本会議においても賛成多数で可決 成立した また 衆 参の国土交通委員会において 附帯決議が付されている その内容は以下のとおりである 住宅宿泊事業法案に対する附帯決議 ( 衆議院 ) 政府は 本法の施行に当たっては 次の諸点に留意し その運用について遺漏なきを期すべきである 一これまで いわゆる民泊については その実態が十分把握されてこなかったことから 本法施行後 住宅宿泊事業者の家主居住型 家主不在型それぞれについて 住宅提供者 宿泊日数等の実態把握を行うこと また 住宅宿泊管理業者及び住宅宿泊仲介業者に対する適正な規制が課せるよう宿泊日数等の実態把握を行い 違法民泊の取締りに努めること 二政府は 適正な住宅宿泊事業を行わせるため 十分な指導 監督を地方自治体が行えるよう保健所等の人員確保 体制の構築に対し 財源を含めて必要な措置を講じること 三家主不在型の場合 周辺住民からの苦情等に対応する住宅宿泊管理業者に対して 地方自治体からの指導が円滑に行えるよう必要な措置を講じること 四政府は それぞれの地域の実情に応じて住宅宿泊事業を実施できるよう 十分な配慮を行うこと 五政府は 東京オリンピック パラリンピック競技大会を控えていることを (26) 第 193 回国会参議院国土交通委員会第 20 号

265 踏まえ 本法の施行状況について 課題があると認める場合には 速やかに必要な措置を講じること 六周辺住民の不安を取り除くため 安全 衛生管理 防火 騒音等の対策について関係省庁は十分な連携を図ること 七訪日外国人観光旅客が急増する中 健全な民泊の普及を図り 観光産業の更なる発展のため 本法の趣旨を広く国民に周知すること 住宅宿泊事業法案に対する附帯決議 ( 参議院 ) 政府は 本法の施行に当たり 次の諸点について適切な措置を講じ その運用に万全を期すべきである 一これまで いわゆる民泊については その実態が十分把握されてこなかったことから 本法施行後 住宅宿泊事業者の家主居住型 家主不在型それぞれについて 住宅提供者 宿泊日数等の実態把握を行うこと また 住宅宿泊管理業者及び住宅宿泊仲介業者に対する適正な規制がなされるよう法に基づく届出 登録等の諸手続の遵守の確保 年間宿泊日数等の適切な把握などによって 違法民泊の厳正な取締りに努めること 二政府は 適正な住宅宿泊事業を行わせるため また 一の違法民泊の厳正な取締りを含む十分な指導 監督を地方自治体が行えるよう 保健所をはじめとする関係部局の人員確保及び体制の構築に関し 財源を含めて必要な措置を講ずること 三政府は 民泊が犯罪の温床とならないよう 地方自治体と連携して 住宅宿泊事業者等が宿泊者の本人確認とその名簿の管理を厳正に行っていることをチェックする仕組みの整備及び罰則の厳正な適用に努めること 四政府は 家主不在型の場合 周辺住民からの苦情等に適切かつ丁寧に対応するよう住宅宿泊管理業者に対し地方自治体が指導を的確に行うために必要な措置を講ずるとともに 周辺住民の不安を取り除くため 事業開始に際して事業者からの丁寧な説明がなされるよう促すほか 安全 衛生管理 防火 騒音等の対策について関係省庁間の十分な連携を図ること 五政府は 地方自治体において 生活環境の維持保全や地域の観光産業の育成 促進の必要性など それぞれの地域の実情や宿泊ニーズに応じた住宅宿

266 泊事業の制度運用が可能となるよう 十分な配慮を行うこと 特に 都道府県が条例を制定する際には 地域の実情に精通した市町村から意見を聴取し これに配慮することを政省令等において明確にすること 六本法による民泊制度に関し 既存の旅館業法に基づくホテル 旅館業者等との公正 公平な競争条件の確保の必要性にも留意しつつ 届出住宅に係る固定資産税等の住宅用地特例の適用 外国住宅宿泊仲介業者をはじめとする事業者への課税の実効性の確保等の在り方について検討し 必要な措置を講ずること 七災害時における宿泊者の迅速かつ円滑な避難を確保するため 住宅宿泊事業者等が宿泊者に対して避難路 避難場所等も含めた情報を適切に提供できるよう 地方自治体と連携して必要な対策を講ずること 八本法による民泊制度の実施に当たっては 良質な賃貸住宅の不足など住宅確保要配慮者の居住の安定の確保に支障が生ずることのないよう十分留意すること 九訪日外国人観光旅客が急増する中 健全な民泊の普及による観光産業の更なる発展を図るため 本法の趣旨を広く国内外に周知するとともに 東京オリンピック パラリンピック競技大会を控えていることを踏まえ 本法の施行状況について 課題があると認める場合には 速やかに必要な措置を講ずること 4. 地方自治体への影響 本法の地方自治体への影響は 基本的に都道府県等 ( 保健所を設置する市又は特別区を含む ) に集中しているということができる 本法の制定を受けて 都道府県等は まず 住宅宿泊事業の実施制限に関する条例制定有無及び制定する場合の具体的な内容について考えなければならないことになる 法 18 条は 住宅宿泊事業の実施の制限について 都道府県及び保健所設置市は 騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するため必要があるときは 合理的に必要と認められる限度において 政令で定める基準に従い条例で定めるところにより 区域を定めて 住宅宿泊事業を実施する期間を制限すること

267 ができる とし 条例制定に関して 従うべき基準を用いている そして 政令 1 条においては 一法第 18 条の規定による制限は 区域ごとに 住宅宿泊事業を実施してはならない期間を指定して行うこと 二住宅宿泊事業を実施する期間を制限する区域の指定は 土地利用の状況その他の事情を勘案して 住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である地域内の区域について行うこと 三住宅宿泊事業を実施してはならない期間の指定は 宿泊に対する需要の状況その他の事情を勘案して 住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止することが特に必要である期間内において行うこと としている 立法過程においては想定していなかった 土地利用の状況 や 宿泊に対する需要の状況 を考慮することは 住居専用地域においても住宅宿泊事業ができる ホテル 旅館業との競争関係は考慮しないとしていた 法案提出時及び法案審議段階における考え方から大きく後退したものと言うことができる 本法成立を受けて制定された条例の内容を見ても このようなことを確認することができる 自治体の条例制定状況は 平成 29 年 12 月時点において 大田区と新宿区が条例を制定済みであり 京都市 世田谷区 横浜市などで条例制定に向けた手続が進められている 制限の内容を見ると 住居専用地域において月曜日から木曜日まで ( 新宿区 ) ホテル 旅館の建築が規制されている地域 ( 住居専用地域 工業地域等 ) においてすべての期間 ( 大田区 ) 低層住居専用地域( 第 1 2 種低層住居専用地域 ) において月曜日から木曜日 ( 祝日等を除く ) まで ( 横浜市 ) 低層住居専用地域( 第 1 2 種低層住居専用地域 ) 及び第 1 2 種中高層住居専用地域において月曜日の正午から土曜日の正午 ( 祝日等を除く ) まで ( 世田谷区 ) としている さらに 京都市の場合は 住居専用地域 ( 家主居住型や市が定める基準を満たす京町家は除外 ) において1 月から2 月の60 日に限定している 住宅宿泊事業の実施の制限は 住宅宿泊事業を実施しようとする者の利益と周辺住民や既存のホテル 旅館の経営者等の利益が先鋭に対立する場合が多いことからすると これらの相反する利益の調整が大きい課題となることが予想される 次に 都道府県等の住宅宿泊事業者に対する届出及び取締り 監督権限 ( 報告徴収 立入検査 質問検査 ) の行使である 住宅宿泊事業者らがこれらの権限行使に従わない場合は罰則を課すことができるが これは改正旅館業法上の無許可住宅民泊営業者に対する取締りと一体的に実施されることが予想されている また 都道府県等の住宅宿泊管理業者に対する監督権限 ( 業務改善命令 国土交通大臣への業務停止命令の要請 報告徴収及び立入検査の実施など ) の行使も新たな事務とされた 実際の監督の実施に当たっては 旅

268 館業法に基づいた取締り 監督権限行使の経験を踏襲することになると思うが 経験不足及び組織的 人的財源の不足が大きく問題となることが予想される すでに 本法の審議過程において様々な問題が発生することが予想されており 新しい制度の創設であることから 想定できなかった事態が発生する可能性も十分にあり このような事態への対処が 地方自治体にとっては大きな課題となるであろう そして これらのケースで集積された課題を 施行後 3 年を経過した時点で予定されている制度の見直しに活用すべきことは言うまでもない 5. その他 本法の審議過程で度々出ていた旅館業法の改正は 平成 29 年 12 月 8 日成立し 同月 15 日に公布された 本法と関連する違法民泊の取締りに関する内容としては 1 無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の権限を規定し 2 無許可営業者等に対する罰金の上限額を3 万円から100 万円に その他旅館業法に違反した者に対する罰金の上限額を2 万円から50 万円に引き上げたことである 本法に関わる政省令等の整備は完了している 具体的には 住宅宿泊事業法の施行期日を定める政令 ( 政令 272 号 ) は 施行期日を平成 30 年 6 月 15 日とし 住宅宿泊事業法施行令として政令第 273 号が制定された また 厚生労働省令 国土交通省令第 2 号としての住宅宿泊事業法施行規則 ( 平成 29 年 10 月 27 日 ) が制定されている さらには 国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則として国土交通省令第 65 号 ( 平成 29 年 10 月 27 日 ) が 厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則として厚生労働省令第 117 号 ( 平成 29 年 10 月 27 日 ) が制定されている ほかにも 国土交通省告示第 1109 号 ( 平成 29 年 10 月 27 日 ) 住宅宿泊事業法施行要領 ( ガイドライン )( 平成 29 年 12 月厚生労働省医薬 生活衛生局国土交通省土地 建設産業局国土交通省住宅局国土交通省観光庁 ) が策定され公表されている ( こんぎぼぶ愛媛大学法文学部准教授 )

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270 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 4 月 26 日法律第 24 号 ) 権 奇法 はじめに 高齢者 子育て世帯 低所得者 障害者 被災者など住宅市場において適切な住宅の確保が困難な 住宅確保要配慮者 に対応するための法律である 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律 ( 平成 19 年法律第 112 号 )( 以下 住宅セーフティネット法 という ) の一部を改正する法律 ( 以下 改正法 という ) が 平成 29 年 4 月 19 日に可決 成立し (4 月 26 日公布 ) 同年 10 月 25 日から施行された 今回の改正は 増加する民間の空き家 空き室を有効活用することで同じく増加傾向にある住宅確保要配慮者への対応を図ろうとするものである 主な改正内容は 都道府県及び市町村による賃貸住宅供給促進計画の作成 都道府県等による賃貸住宅の登録制度の創設 登録住宅の改修 入居支援 住宅確保要配慮者居住支援法人の指定 家賃債務保証の円滑化 生活保護受給者の住宅補助費等に関する代理納付の推進等である 以下では 法改正の背景と経緯 改正の内容 国会における審議内容を整理し 法改正の意義と課題 地方公共団体への影響について述べることとする 1. 法改正の背景 経緯 (1) 住宅政策の変遷 日本の住宅政策は 戦後の絶対的な住宅不足に対処するため 住宅金融公庫 ( 現独 立行政法人住宅金融支援機構 ) 公営住宅制度及び日本住宅公団 ( 現独立行政法人都

271 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 市再生機構 ) を 3 本柱 として 住宅建設計画法 ( 昭和 41 年法律第 100 号 平成 18 年住生活基本法の制定に伴い廃止 ) に基づく住宅建設 5ヵ年計画のもと 住宅の量の確保や水準の向上に一定の役割を果たしてきたということができる 地方公共団体は低所得者のために低家賃の公営住宅を建設し 住宅公団は大都市の中間層に向けて集合住宅の団地を開発し また住宅金融公庫では中間層の持ち家取得に対する低利の住宅ローンを提供する 階層別住宅供給 政策 (1) が採られていたのである このような公共部門が中心となった 新規 大量供給 の住宅政策は 次第に 市場重視 への方向転換が行われた その方向付けを行ったのが 規制緩和による市場化を進めるよう政策転換すべきとした 平成 7 年の社会資本整備審議会住宅宅地分科会答申 21 世紀に向けた住宅 宅地の基本体系について であると言われている その後も 量の確保から質の向上への移行 と 市場重視 ストック重視 が維持され 例えば 同審議会の平成 17 年答申においては 1 国民 事業者 行政が共有して目指すべき住宅政策の基本理念を確立し 2その実現のための各主体の役割を明確化し 3 基本理念に基づき 他の行政分野との連携を緊密にしつつ 各種施策を総合的かつ計画的に進めるための制度的枠組み すなわち 住宅政策に関する基本法制と これに基づく新たな計画体系を整備するための新たな制度の構築が必要であるとした (2) このような理由から 平成 18 年 住生活基本法 ( 平成 18 年法律第 61 号 ) が制定され 住生活の安定の確保及び向上の促進に関する施策について その基本理念 国等の責務 住生活基本計画の策定等を定めた 同法においては 4 項目の基本理念の一つとして いわゆる住宅セーフティネットの構築により 居住の安定の確保 が図られるべきことを規定した 平成 19 年 この基本理念を踏まえ 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本方針の策定 地方公共団体 宅地建物取引業者 住宅確保要配慮者に対し居住に係る支援を行う団体等による住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関し必要な措置について協議するための居住支援協議会等について定める 住宅セーフティネット法 が成立した また 同法に基づき 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針 が策定された (1) 平山洋介 住宅セーフティネット法をどう読むか 国民生活 2017 年 12 月号 11 頁 (2) 社会資本整備審議会住宅宅地分科会答申 新たな住宅政策に対応した制度的枠組みについて ( 平成 17 年 9 月 26 日 )12 頁

272 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - (2) 住宅セーフティネットに関する施策住宅セーフティネットに関する法律上の制度は以下のようなものがある 1 公営住宅制度公営住宅とは 公営住宅法 ( 昭和 26 年法律第 193 号 ) に基づき 地方公共団体が 建設 買取り又は借上げ (3) を行い 低額所得者に賃貸し 又は転貸するための住宅及びその附帯施設で 公営住宅法の規定による国の補助に係るものである ( 同法 2 条 ) 住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し 又は転貸することにより 国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とする ( 同法 1 条 ) 公営住宅の入居者資格には収入基準が設けられており 収入分位 50%(25 万 9,000 円 ) を上限として 収入分位 25%(15 万 8,000 円 ) を参酌基準として 条例で定めることとしている また 公営住宅の家賃は 入居者の収入及び公営住宅の立地条件 規模 建設時からの経過年数その他の事項に応じ かつ 近傍同種の住宅の家賃以下で 政令で定めるところにより 事業主体が定めることとなっている ( 同法 16 条 1 項 ) 2 地域優良賃貸住宅制度地域優良賃貸住宅制度は 高齢者世帯 障害者世帯 子育て世帯等 各地域における居住の安定に特に配慮が必要な世帯の居住の用に供する 居住環境の良好な賃貸住宅の供給を促進するため 賃貸住宅の整備等に要する費用に対する助成や家賃の減額に対する助成を行う制度であり 複雑な過程を経て現在の制度に至っている まず 特定優良賃貸住宅の供給を促進する法律 ( 平成 5 年法律第 52 号 ) に基づいた 特定優良賃貸住宅制度 ( 特優賃 ) と 高齢者の居住の安定確保に関する法律 ( 平成 13 年法律第 26 号 ) に基づいた 高齢者向け優良賃貸住宅制度 ( 高優賃 ) が導入された 平成 19 年の 住宅セーフティネット法 の制定によって 特優賃 は 地域優良賃貸制度 ( 地優賃 ) として再編され 高齢者向け優良賃貸住宅に対する助成は 地域優良賃貸住宅として実施することとなった その後 平成 23 年に 高齢者住まい法 の改正により 高優賃 は サービス付き高齢者向け住宅制度 ( サ高住 ) として地域優良賃貸住宅制度に一体化された つまり 現行の地域優良賃貸住宅制度は 中間所得者向け住宅制度 ( 旧特優賃 ) と高齢者向け住宅 ( 旧 (3) 民間事業者が建設又は所有している住宅を地方公共団体が借り上げて 公営住宅として供給する制度として 平成 8 年に導入された制度である

273 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 高優賃 ) 障害者世帯 子育て世帯向け住宅( 旧地優賃 ) の他に サ高住も束ねる制度となっている 3 住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業 住宅セーフティネット法 に基づいて 空き家を活用した公営住宅の補完を目的として創設された制度として 住宅に困窮している低所得の高齢者 障害者 子育て世帯の居住の安定確保に向け 居住支援協議会等との連携や適切な管理の下で 空き家等を活用し一定の質が確保された賃貸住宅の供給を図るため 空き家等のリフォームやコンバージョンに対する支援を行うものである 2015 年に導入されたが 今回の法改正で新たな住宅セーフティネット制度が導入されたことで 2016 年限りで廃止された 4 住宅確保要配慮者居住支援協議会制度住宅確保要配慮者居住支援協議会とは 住宅確保要配慮者 ( 低額所得者 被災者 高齢者 障害者 子供を育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者 ) の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進を図るため 地方公共団体や不動産関係業者 居住支援団体等が連携し 住宅確保要配慮者及び民間賃貸住宅の賃貸人の双方に対し 住宅情報の提供等の支援を実施するものである 2017 年 9 月 30 日時点において 全ての都道府県を含む69 協議会が設立されている (4) このような制度のうち 民間の住宅ストックを活用した住宅セーフティネット制度を比較すると 表 1 のように整理することができる (4) 国土交通省 居住支援協議会制度の概要 ( 参照

274 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 表 1 民間住宅を活用した住宅確保要配慮者向け賃貸住宅制度の比較 概 要 施策対象 ストック数 借上公営住宅 低所得者の居住の安定を図るため 地方公共団体が 民間住宅を借り上げ 公営住宅として転貸 低額所得者 2.5 万戸 ( 公営住宅全体では216 万戸 ) 地域優良賃貸住宅 地域の住宅政策推進の観点から 地方公共団体が必要と認めるものについて 民間事業者等が賃貸住宅を供給高齢者世帯 障害者世帯 子育て世帯等 ( 一定の所得要件あり ) 0.6 万戸 ( 前身の特優賃等を含め17 万戸 ) 住宅確保要配慮者あんしん居住推進事業住宅 公営住宅を補完する観点から 民間空き家等の既存ストックを改良し 民間事業者等が賃貸住宅を供給 低額所得者である 高齢者世帯 障害者世帯 子育て世帯 0.02 万戸 ( 前身の民間住宅活用型住宅セーフティネット整備推進事業を含め2.9 万戸 ) 事業主体地方公共団体民間事業者等民間事業者等 入居者の収入及び住宅の立 近傍同種家賃と均衡を失し 公営住宅の家賃に準ずる 家 賃 家賃低廉化支援を行う地 規模 築年数 利便性ない額に基づく応能応益家賃地方公共団体は任意の額の 収入超過者は明渡努力義務継続居住可能 ( 収入調査は継続居住可能 ( 収入調査は収入超過者高額所得者の場合 明渡命入居時のみ ) 入居時のみ ) の取扱い令の対象になり得る 整備 改良及び家賃低廉化 整備 改良及び家賃低廉化 既存ストックの改良費用に に要する費用について 地に要する費用について 事ついて 民間事業者等を直国の支援方公共団体を支援業主体を支援する地方公共接支援 団体を支援 注 ) ストック数は 公営住宅は平成 26 年度末時点 地域優良賃貸住宅は平成 25 年度末時点 住宅確 保要配慮者あんしん居住推進事業住宅は平成 27 年度末見込み 出典 : 平成 28 年 4 月国土交通省住宅局発表資料 住宅セーフティネットを巡る現状と課題 (3) 住宅セーフティネットに関する法案提出までの議論状況ハウジング プア向けの住宅セーフティネットに関する議論は従来から行われてきたが 今回の法改正に直接繋がる議論は次のように整理することができる まず平成 26 年 9 月 高齢者 子育て世帯 障害者等の多様な世帯の安心な住まいの確保に向けた目指すべき方向性 今後取り組むべき対策等を検討するため 国土交通省によって

275 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 安心居住政策研究会 が設置され 同研究会は 平成 27 年 4 月 住宅確保要配慮者の現状と課題を整理するとともに 安心な住まいの実現に向けて 今後取り組むべき対策等を整理した中間とりまとめを公表した この中間とりまとめにおいては 今後の住まいのあり方と政策の方向性として 1 環境に優しく 多様な世帯 が コミュニティ の中で 安心 して 健康 快適 に 自己実現 して暮らせる場としていくことが重要 2 各地の実情を踏まえたまち全体のコンパクト化に合わせ まちのしかるべき単位に 高齢者 子育て世帯 障害者など 多様な世帯が安心して健康に暮らすことができる日常生活圏域 ( 住生活クラスター ) の形成を進めるべきとしたうえで このような方向性を踏まえ 高齢者 子育て世帯 障害者の各々について 現状と課題を整理し 今後 安心な住まいの確保に向けて 取り組むべき具体的な対策を整理している そして これらの取組みはいずれも 持続可能なものとなるよう 地域における産学協働や市場 ( マーケット ) 機能の活用などの視点を踏まえながら行うものとされている その後 平成 28 年 4 月 さらに取り組むべき対策及び中間とりまとめで整理した対策等の進捗状況について整理したとりまとめ 多様な世帯が安心して暮らせる住まいの確保に向けた当面の取組みについて を公表した 同とりまとめにおいては 今後さらに取り組むべき対策として居住支援協議会の取組強化を挙げている そのための対策として 国として居住支援協議会の早期設立を促進するとともに 居住支援協議会を支援するため 1 居住支援協議会の全国会議やシンポジウムの開催等による情報共有 設立促進のための相談対応 新たな取組みの働きかけ 2 地方公共団体や関係団体等への居住支援 ( 協議会 ) に係る活動指針の整理及び周知徹底 3モデル的な取組みを行う居住支援協議会に対する重点的な支援など 各地域の居住支援協議会の活動を支援することを通じて 要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居に向けた取組みの全国的な実施を促進することが必要であるとしている また 中間とりまとめで示した 今後取り組むべき対策 ( 当面の工程表 ) 等の進捗状況を整理している ほぼ同時期の平成 28 年 3 月に閣議決定された 住生活基本計画 ( 全国計画 ) においては 住宅確保要配慮者の増加に対応するため 空き家の活用を促進するとともに 民間賃貸住宅を活用した新たな仕組みの構築も含めた 住宅セーフティネット機能を強化 することとされ これを受けて 平成 28 年 4 月 住宅セーフティネット機能を強化する上での課題の整理 制度の基本的方向などについて必要な検討を行うため 社会資本整備審議会住宅宅地分科会に 新たな住宅セーフティネット検討小委員

276 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 会 が設置された 同小委員会は 平成 28 年 7 月に 中間とりまとめを公表し 平成 29 年 2 月に 法的枠組みや予算の検討状況を踏まえた最終とりまとめを公表した そ の概要は以下のとおりである 最終とりまとめ 検討の基本的な方向性 ( 概要 ) 1 新たな住宅セーフティネット制度は 公営住宅を補完するものとして 公営住宅の入居対象世帯も含め 多様な住宅確保要配慮者を対象とする 2 高齢者等の住宅確保要配慮者が円滑に入居でき かつ 安全な民間賃貸住宅について 適切に情報提供を行う 3 子育て世帯等の住宅確保要配慮者が比較的広い住宅に居住できるようにするため 現在の住宅市場において十分に活用されていない空き家 空き室を有効活用する 4 地域の多様な住宅事情等を踏まえ 地方公共団体の住宅政策に応じた柔軟な施策展開が可能な制度とする 家賃債務保証については 新たな住宅セーフティネット検討小委員会 の中間とりまとめにおいて 一定の能力等を備えた適正な事業者が提供するものの活用を図るとともに 住宅確保要配慮者が事業者や保証内容に関する情報を容易に入手できる仕組みとすることが具体的な施策の方向性として位置付けられたことを受け 平成 28 年 10 月に 家賃債務保証の情報提供等に関する検討会 が設置された 同検討会は 同年 12 月に 家賃債務保証の情報提供等に関する方向性 をとりまとめ公表した その内容は以下のとおりである 1 一定の要件を満たす家賃債務保証業者を国に登録し 情報提供する制度を設けることにより 家賃債務保証業の適正な運営の確保 家賃債務保証業の健全な発達 賃貸人等の利益の保護に資すること 2 家賃債務保証業の業界団体における自主ルールの制定及びその遵守等を推進すること 3 登録業者に対するインセンティブの付与など 登録業者の活用が促進されるような制度的枠組みを検討すること 4 家賃債務保証の利用を希望する住宅確保要配慮者について 居住支援協議会

277 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - の関与等により家賃債務保証の引受けを促し賃貸人の不安感を取り除くこと また 家賃債務保証業者の居住支援協議会への参画を促すこと また 平成 28 年 11 月には 住宅に困窮する若者や高齢者の単身世帯に対して提供できる低廉な住宅として 既存ストックを活用したシェアハウス等の共同居住型住宅の活用が期待できることから 既存ストックの活用による共同居住型住宅の居住水準に関する検討会 が設置され 同年 12 月の第 3 回検討会では 住宅全体の面積や専用居室の数及び面積 共用空間に設ける設備の設定等に関する基本的な条件及び検討の方向性 留意点が整理された (5) その他に 平成 28 年 12 月には 生活困窮者 高齢者 障害者 子育て世帯等のうち生活や住宅に配慮を要する者の住まいの確保や生活の安定 自立の促進に係るセーフティネット機能の強化に向けて 福祉行政と住宅行政のより一層の緊密な連携を図るため 厚生労働省と国土交通省の両省の関係職員による情報共有や協議を行うための 福祉 住宅行政の連携強化のための連絡協議会 が設置された (6) (4) 住宅ストックの現状 表 2 で見るように 住宅ストックの総量は約 6,060 万戸であり 総世帯数 ( 約 5,250 万世帯 ) に対して約 16% 多く 量的には充足している状況にある このうち居住世帯のある住宅総数の約 28%( 約 1,460 万戸 ) を占める民間賃貸住宅が微増している 一方 住宅確保要配慮者の住宅セーフティネットである公営住宅については 平成 17 年をピークに微減傾向にあり 応募倍率も大都市を中心に高い状況にある ( 平成 26 年東京都約 22.8 倍 全国約 5.8 倍 ) (7) 住宅ストックのうち約 820 万戸が空き家 空き室であり そのうち賃貸用の住宅が約 429 万戸 2 次的利用や賃貸 売却用以外のいわゆる その他空き家 が約 318 万戸ある その他空き家 には 旧耐震基準時代に建築されたストックが多く さらに腐朽 破損状況 立地を勘案すると利活用可能なストック数は限定的であるものの 利活用が有望なストックも全国で約 48 万戸あると推計されている 賃貸用の住宅についても 利活用が有望なストックが約 137 万 (5) 国土交通省資料 第 3 回既存ストックの活用による共同居住型住宅の居住水準に関する検討会資料 (3) 検討の方向性について (6) 平成 29 年 11 月 8 日までに計 4 回の協議会が開催されている (7) 社会資本整備審議会住宅宅地分科会新たな住宅セーフティネット検討小委員会 最終とりまとめ ( 平成 29 年 2 月 )4 頁

278 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 表 2 住宅ストックと世帯数の推移 注 : 世帯数には 親の家に同居する子供世帯等 (2013 年 =35 万世帯 ) を含む 出典 : 総務省 住宅 土地統計調査 ( 平成 25 年 ) 戸あると推計されている (8) 今後も空き家 空き室はさらに増加する見込みであり 国土交通省としては それ らの活用が重要な課題となっている 2. 改正内容 改正法は 低額所得者 高齢者 子育て世帯等の賃貸人から入居を制限される懸念のある者を 住宅確保要配慮者 と位置づけ 民間の空き家 空き室を有効活用した住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録制度を創設するとともに 住宅確保要配慮者に家賃債務の保証 円滑な入居の促進に関する情報の提供 相談その他の援助等を行う 住 (8) 総務省 住宅 土地統計調査 ( 平成 25 年 ) と国土交通省 空家実態調査 ( 平成 26 年 ) をもとにした国土交通省推計

279 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 宅確保要配慮者居住支援法人を指定することができることとするなど 重層的な住宅セー フティネット機能の強化を図るものである (1) 住宅確保要配慮者の範囲改正法は 住宅確保要配慮者として 1その収入が国土交通省令で定める金額を超えない者 ( 低所得者 ) 2 被災者 ( 発生後 3 年以内 ) 3 高齢者 4 障害者 5 子育て世帯 (18 歳未満 ) 6その他 住宅の確保に特に配慮を要する者として国土交通省令で定める者 と規定している 低所得者の収入について 国土交通省令は 公営住宅法に定める算定方法と同じく 15.8 万円以下 ( 収入分位 25% 以下 ) の者としている (9) 被災者を発生後 3 年以内に限定したのは 災害による住宅不足は3 年以上経過すれば解消されることが通常であることと 3 年が経過しても住宅確保が困難な場合は その他 住宅の確保に特に配慮を要する者 として対応できるとの理由からであるとされている その他 住宅の確保に特に配慮を要する者として国土交通省令で定める者 としては 外国人 中国残留邦人 児童虐待被害者 ハンセン病療養所入所者 DV 被害者 海外からの引揚者 犯罪被害者 更正対象者 生活困窮自立支援対象者 被災者等を定めている (10) ( 第 2 条 ) (2) 基本方針国の基本方針において定めるべき事項として 既存の1 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方向 2 住宅確保要配慮者に対する公的賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な事項 3 住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する基本的な事項 4その他住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する重要事項に加え 新たに 1 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の目標の設定に関する事項 2 住宅確保要配慮者が入居する賃貸住宅の管理の適正化に関する基本的な事項 3 都道府県賃貸住宅供給促進計画及び市町村賃貸住宅供給促進計画の作成に関する基本的な事項 が追加された ( 第 4 条 ) (9) 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則 ( 平成 29 年国土交通省令第 63 号 ) 第 2 条 (10) 同施行規則第 3 条

280 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - (3) 都道府県賃貸住宅供給促進計画及び市町村賃貸住宅供給促進計画都道府県及び市町村は 基本方針に基づき 賃貸住宅供給促進計画を作成することができることとなり 供給促進計画の作成については 国土交通省から 賃貸住宅供給促進計画の検討 策定の手引き が提示されている 1) 都道府県賃貸住宅供給促進計画都道府県賃貸住宅供給促進計画においては 当該都道府県の区域内における住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の目標を定め この目標を達成するために必要なものとして 1 住宅確保要配慮者に対する公的賃貸住宅の供給の促進に関する事項 2 住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する事項 3 住宅確保要配慮者が入居する賃貸住宅の管理の適正化に関する事項を記載することとした 都道府県賃貸住宅供給促進計画には 必要に応じて UR 又は地方住宅供給公社による住宅確保要配慮者専用賃貸住宅の整備及び賃貸その他の管理に関する事業の実施に関する事項や特定優良賃貸住宅の住宅確保要配慮者に対する賃貸に関する事項を記載することができるが この場合 事業の実施主体又は都道府県の区域内の市 ( 特別区を含む ) の長にあらかじめ同意を得なければならない 都道府県賃貸住宅供給促進計画の策定に当たっては 案の作成段階からより地域の実情に精通している市町村と協議しなければならないこととされ また この場合 住宅確保要配慮者居住支援協議会又は地域住宅特別措置法による地域住宅協議会を組織している都道府県は 当該住宅確保要配慮者居住支援協議会又は地域住宅協議会の意見を聴かなければならない 都道府県は 都道府県賃貸住宅供給促進計画を作成したときは 遅滞なく これを公表するよう努めるとともに 国土交通大臣及び当該都道府県の区域内の市町村にその写しを送付しなければならない ( 第 5 条 ) 2) 市町村賃貸住宅供給促進計画市町村は 基本方針 ( 都道府県賃貸住宅供給促進計画が作成されている場合にあっては 都道府県賃貸住宅供給促進計画 ) に基づき 市町村賃貸住宅供給促進計画を作成することができる 市町村賃貸住宅供給促進計画においては 当該市町村の区域内における住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の目標を定め この目標を達成するために必要なものとして 1 住宅確保要配慮者に対する公的賃貸住宅の供給の促進に関する事項 2 住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の

281 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 促進に関する事項 3 住宅確保要配慮者が入居する賃貸住宅の管理の適正化に関す る事項を記載することとなっている ( 第 6 条 ) (4) 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業住宅確保要配慮者向けの民間賃貸住宅の供給を促進するため 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅について 都道府県知事等による登録制度を創設し 登録を受けた賃貸住宅の改修及び入居への支援措置を講じることとするとともに 賃貸人に対して必要な監督を行うこととした 1) 登録制度と受入れ義務住宅確保要配慮者の入居を受け入れることとしている賃貸住宅を賃貸する事業 ( 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業 ) を行う者は 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業に係る賃貸住宅を構成する建築物ごとに 都道府県知事の登録を受けることができ この登録を受けた住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業 ( 登録事業 ) を行う者 ( 登録事業者 ) は 国土交通省令で定めるところにより 登録事項を公示しなければならない (11) そして 登録事業者は 登録住宅に入居を希望する住宅確保要配慮者 ( 当該登録住宅について入居を受け入れることとする住宅確保要配慮者の範囲を定めた場合にあっては その範囲に属する者 ) に対し 住宅確保要配慮者であることを理由として 入居を拒んではならない ただし 登録事項において受け入れる住宅確保要配慮者の範囲を登録事項に定めた場合はその範囲に限られる ( 第 8 条から第 17 条 ) 2) 登録住宅に係る特例地方住宅供給公社は 地方住宅供給公社法第 21 条に規定する業務のほか 都道府県又は市町村の賃貸住宅供給促進計画に記載した都道府県又は市町村の区域において 委託により 住宅確保要配慮者専用賃貸住宅 ( 登録住宅であるものに限る ) の整備及び賃貸その他の管理の業務を行うことができる ( 第 18 条 ) そして 独立行政法人住宅金融支援機構は 独立行政法人住宅金融支援機構法第 13 条第 1 項に規定する業務のほか 登録住宅の改良 ( 登録住宅とすることを主たる目的とする人の居住の用その他その本来の用途に供したことのある建築物の改良を (11) 登録事項の公示の方法としては インターネットの利用又は公衆の見やすい場所に掲示することにより行うものとする とされた 施行規則第 18 条

282 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 含む ) に必要な資金を貸し付けることができる 登録住宅は既存の空き家 空き室を想定していることから これらの住宅を融資の対象とすることで 登録を促すための措置である ( 第 19 条 ) また 同機構は 適切な家賃債務保証業者が保証する登録住宅に入居する住宅確保要配慮者の家賃債務について 機構による保険の引き受けができる 住宅確保要配慮者の家賃の滞納等に不安を抱えている賃貸人が多い一方 住宅確保要配慮者の家賃滞納リスクが高い理由で保証保険契約ができない場合が多い状況において 家賃滞納に係る不安を払しょくさせることで 住宅確保要配慮者に係る家賃債務保証の円滑化を図るための措置である また 家賃債務保証について 一定の能力等を備えた適正な事業者が提供するものの活用を図るとともに 住宅確保要配慮者が事業者や保証内容に関する情報を容易に入手できるようにするため 省令等により家賃債務保証業者の任意の登録制度が創設されることとなった (12) ( 第 20 条 ) さらに 登録事業者 ( 第 51 条第 1 項の住宅確保要配慮者居住支援協議会の構成員であることその他の国土交通省令 厚生労働省令で定める要件に該当する者に限る ) は 生活保護受給者である登録住宅入居者 ( 入居予定者を含む ) が家賃の請求に応じないことその他の被保護入居者の居住の安定の確保を図る上で支障となるものとして国土交通省令 厚生労働省令で定める事情があるときは 国土交通省令 厚生労働省令で定めるところにより その旨を保護の実施機関に通知することができる 生活保護法 ( 昭和 25 年法律第 144 号 ) 上の代理納付制度 (13) の活用を図るため 登録住宅に居住する生活保護受給者が家賃の請求に応じない場合など居住の安定の確保を図る上で支障となる事情がある場合は 登録事業者は保護の実施機関に通知をすることができ 保護の実施機関は速やかに事実確認を行うこととされている 代理納付の判断が円滑化されることにより 代理納付による入居の円滑化を図るねらいである 国土交通省令 厚生労働省令で定める事情としては 被保護入居者が1 家賃等の請求に応じない場合 2 家賃等を滞納している場合 3 過去に他の賃貸住宅において家賃等を滞納していた事実があることその他被保護入居者が家 (12) 省令においては 住宅確保要配慮者居住支援法人のほか 家賃債務の保証を適切かつ確実に実施することができる者として国土交通大臣の登録を受けているものとしている 施行規則第 19 条 (13) 生活保護の実施機関が被保護者に代わり直接賃貸業者に家賃を支払う制度

283 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 賃等を滞納するおそれが明らかである場合である (14) ( 第 21 条 ) 3) 監督都道府県知事は 登録事業者に対し 登録住宅の管理の状況について報告を求めることができ 虚偽の報告をした者等は20 万円以下の罰金に処される ( 第 63 条 ) また 1 登録事項が事実と異なる場合 2 登録事業が基準に適合しない場合 3 登録事業者が登録事項の公示又は入居拒否の制限に違反した場合は是正の指示をすることができる さらに 都道府県知事は 登録事業者が登録拒否要件に該当するに至った場合及び登録事業者が不正な手段により登録を受けた場合は登録を取り消さねばならず 登録事業者が登録事項の変更に係る届出義務に違反した場合又は是正指示に違反した場合は 登録を取り消すことができる ( 第 22 条から第 24 条 ) (5) 指定登録機関都道府県知事は その指定する者 ( 指定登録機関 ) に 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業の登録及び登録簿の閲覧の実施に関する事務の全部又は一部を行わせることができるとし (25 条 ) 指定登録機関の欠格条項(26 条 ) 指定の基準(27 条 ) 公示 (28 条 ) について定めている そして 指定登録機関及びその職員の秘密保持義務 (29 条 ) と指定登録機関の事務 (30 条 ) 及び都道府県知事の監督等 (31 条 ~36 条 ) についても規定している 登録に係る手数料を徴収する場合 指定登録機関は 地方自治法 ( 昭和 22 年法律第 67 号 ) に基づき 条例で定めるところにより 当該手数料を自らの収入とすることができる (37 条 ) なお 地方住宅供給公社は 指定登録機関としての指定を受けることはできないが その本来の業務に支障のない範囲内で 都道府県等から業務委託を受けることは差し支えないとされている (15) (6) 住宅確保要配慮者居住支援法人都道府県知事は NPO 法人 一般社団 財団法人 社会福祉法人 居住支援を目的とする会社等であって 業務に関し一定の基準に適合すると認められるものを その申請により 住宅確保要配慮者居住支援法人 ( 支援法人 ) として指定すること (14) 平成 29 年厚生労働省 国土交通省令第 1 号第 2 条 (15) 国土交通省住宅局長通知 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律等の施行について ( 平成 29 年 10 月 25 日国住備第 102 号 国住心第 252 号 国住民支第 150 号 )

284 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - ができる 従来 法的位置づけがされていなかったこれらの主体を支援法人として指定することで より積極的な居住支援活動を期待するものである 指定の基準は 1 職員 支援業務の実施の方法その他の事項についての支援業務の実施に関する計画が 支援業務の適確な実施のために適切なものであること 2 支援業務の実施に関する計画を適確に実施するに足りる経理的及び技術的な基礎を有するものであること 3 役員又は職員の構成が 支援業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること 4 支援業務以外の業務を行っている場合には その業務を行うことによって支援業務の公正な実施に支障を及ぼすおそれがないものであること 5そのほか 支援業務を公正かつ適確に行うことができるものであること となっている ( 第 40 条 ) 都道府県知事は 支援法人の指定をしたときは 支援法人の名称及び住所並びに支援業務を行う事務所の所在地を公示しなければならず 支援法人がその名称若しくは住所又は支援業務を行う事務所の所在地を変更しようとするときは 事前に都道府県知事に届け出なければならない ( 第 41 条 ) 支援法人は 当該都道府県の区域内において 1 登録事業者からの要請に基づき 登録住宅入居者の家賃債務の保証をすること 2 住宅確保要配慮者の賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する情報の提供 相談その他の援助を行うこと 3 賃貸住宅に入居する住宅確保要配慮者の生活の安定及び向上に関する情報の提供 相談その他の援助を行うこと 41から3までに掲げる業務に附帯する業務を行うこととされた 支援法人は 必ずしもこれら業務を全て行う必要はないが 定款に各業務の実施に関することが記載されているかなど 各業務を行う備えがあることについては 指定の際に 都道府県が確認する必要がある ( 第 42 条 ) 支援法人は 都道府県知事の認可を受けて債務の保証の決定以外の家賃債務保証業務の全部または一部を金融機関等に委託することができる そして 債務保証業務規程及び毎事業年度の支援業務に係る事業計画等について都道府県知事の認可を受けなければならず 支援業務に係る事業報告書等を都道府県知事に提出しなければならない 都道府県知事は 債務保証業務規程が不適当となったと認めるときは変更命令ができる ( 第 43 条から第 45 条 ) そして 支援法人は 債務保証業務及びこれに附帯する業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならず 支援業務に関する事項で国土交通省令で定めるものを記載した帳簿を備え付け これを保存しなければならない ( 第 46 条から第 47 条 )

285 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 都道府県知事は 支援法人に対し 支援業務に関する監督命令 報告徴収及び立入検査をすることができ 支援法人が1 変更の届出 事業計画等の認可 事業報告書等の提出 区分経理及び帳簿の備付け等の義務規定に違反した場合 2 債務保証業務規程によらないで債務保証業務を行った場合 3 債務保証業務規程の変更命令及び支援業務に関する監督命令に違反した場合 4 支援法人の指定基準に適合していないと認める場合 5 支援法人又はその役員が支援業務に関し著しく不適当な行為をした場合 6 不正な手段により指定を受けた場合は その指定を取り消すことができる ( 第 48 条から第 50 条 ) 支援法人において 支援事業に関する帳簿を備え付けなかった者や 虚偽の報告をしたもの等は 30 万円以下の罰金に処せられることとされている ( 第 62 条 ) (7) 住宅確保要配慮者居住支援協議会地方公共団体の住宅部局と福祉部局 住宅確保要配慮者居住支援法人 社会福祉法人 NPOなどの居住支援団体 宅地建物取引業者 賃貸住宅管理業者 家主などの不動産関係団体など住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に資する活動を行う者は 住宅確保要配慮者又は民間賃貸住宅の賃貸人に対する情報の提供その他の住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に関し必要な措置について協議するため 住宅確保要配慮者居住支援協議会を組織することができる ( 第 51 条及び第 52 条 ) (8) 雑則大都市等に関する特例として 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業の登録等については 都道府県又は都道府県知事の権限に属するものとされている事務は 政令指定都市若しくは中核市又は政令指定都市の長若しくは中核市の長が行うこととされた ( 第 58 条 ) 3. 国会における審議 (1) 審議の経過 本法案は 平成 29 年 2 月 3 日に内閣提出法案として衆議院に提出され 同年 4 月

286 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 日に法律第 24 号として公布された 国会における審議の経過は以下のとおりである 項 目 内 容 衆議院付託年月日 / 衆議院付託委員会 平成 29 年 4 月 4 日 / 国土交通 衆議院審査終了年月日 平成 29 年 4 月 7 日 / 可決 ( 全会一致 ) 衆議院審議終了年月日 平成 29 年 4 月 11 日 / 可決 ( 全会一致 ) 参議院付託年月日 / 参議院付託委員会 平成 29 年 4 月 12 日 / 国土交通 参議院審査終了年月日 / 参議院審査結果 平成 29 年 4 月 18 日 / 可決 ( 全会一致 ) 参議院審議終了年月日 / 参議院審議結果 平成 29 年 4 月 19 日 / 可決 ( 全会一致 ) (2) 参考人招致法案の審議過程において 衆議院と参議院いずれにおいても 参考人を招致し意見を聴取している 衆議院国土交通委員会における参考人招致は 浅見泰司氏 ( 東京大学大学院工学系研究科教授 ) 稲葉剛氏( 立教大学大学院特任准教授 ) 坂庭國晴氏 ( 国民の住まいを守る全国連絡会代表幹事 ) の3 名 参議院国土交通委員会においても 中川雅之氏 ( 日本大学経済学部教授 ) 土肥真人氏( 東京工業大学環境 社会理工学院建築学系准教授 ) 塩崎賢明氏( 立命館大学政策科学部特別招聘教授 ) の3 名に対する参考人招致が行われた 本法案の審議に直接関係する冒頭陳述の内容としては まずは 住宅セーフティネットの柱である公的賃貸住宅の供給促進がおろそかにされていることの問題指摘があった ( 坂庭 塩崎 ) 住宅確保要配慮者の範囲をめぐっては 犯罪被害者 あるいは矯正施設を退所した者 外国人が含まれていないこと ( 浅見 ) や生活保護受給者 ホームレス 若年低所得世帯を明記すべき ( 坂庭 土肥 ) 災害発生から3 年を経過していない者に限定することは現実に合わない ( 塩崎 ) などの問題点が指摘された また 社会の持続可能性の面から 家族政策 少子化対策の一環としての若者向けの住宅政策が求められているとの指摘 ( 稲葉 ) もあった 家賃低廉化措置の不十分さと予算措置にとどまっていることの問題点 ( 稲葉 坂庭 ) や 新制度が 貧困ビジネス に悪用されないようにするための地方公共団体の監督の重要性が指摘されている ( 坂庭 ) (16) (16) 衆議院に係る内容は 第 193 回国会衆議院国土交通委員会会議録第 7 号 ( 平成 29 年 4 月 7 日 ) 参議院に係る内容は 第 193 回国会参議院国土交通委員会会議録第 9 号 ( 平成 29 年 4 月 18 日 ) を参照した 以下の審議内容においても同じである

287 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - (3) 審議内容 住宅確保要配慮者の数 定義 岩田和親 ( 衆 ) 民間借家にお住まいの 低額所得であり かつ高家賃負担であり さらに最低居住面積水準を下回る住居に住んでいる者はどのくらいか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 平成 25 年の住宅 土地統計調査をもとに推計した資料によると 公営住宅を除く借家に居住している収入分位が25%( 月収約 15 万 8,000 円 ) 以下の世帯及び収入分位 25% から50%( 月収約 31 万 3,000 円 ) その高齢者 障害者 子育て世帯で 最低居住水準未満の面積の住宅に高家賃負担で居住する世帯は 合わせて約 28 万世帯と推計 黒岩宇洋 ( 衆 ) 子育て世帯は法律に明記されているが 生活保護受給者や外国人が法律に明記されていない理由はなぜか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 生活保護受給世帯は 住宅確保要配慮者として規定されている低額所得者に該当するためであり 外国人については 住宅確保要配慮者として国土交通省令で定める予定 本村伸子 ( 衆 ) 災害被災者について 発災時から3 年以内と限定しているが 発災から3 年を超えたからといって機械的に被災者を切り捨てるようなことは許されないのでは 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 公営住宅法及び被災市街地復興特別措置法のいずれにおいても 通常の災害を念頭に 住宅不足が解消する発災後 3 年まで 公営住宅で被災者の住まいを確保するための特例が措置されていることと整合している 一方 大規模災害につきましては 3 年が経過しても 住宅不足が解消せず 住宅に困窮する場合があり 例えば東日本大震災においては 東日本大震災復興特別区域法において 被災者に関する特例を最長 10 年間としている 今回の改正案においても 省令において 個別の災害状況に応じて丁寧かつきめ細かい対応をしていく予定 〇椎木保 ( 衆 ) 住宅確保要配慮者の範囲については 地方公共団体がそれぞれの地域の実情に応じて定められるようにすべきではないか 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 本法案において 住宅確保要配慮者とは 低額所得者 被災者 高齢者 障害者 子供を養育している者のほか 住宅の確保に特に配慮を要するものとして省令で定める者と定義をしており 省令で定める者として 地方公共団体が作成する賃貸住宅供給促進計画において 地域の住宅事情に

288 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 応じて 要配慮者を追加できるよう規定する予定 鉢呂吉雄 ( 参 ) ホームレスあるいは外国人 あるいはDV 被害者とか例えば被生活保護者というような方は やっぱりこの定義の中で明記することが至当ではないか 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 法律では この住宅確保要配慮者には低額所得者が明記をしているが ホームレスや 住居を失い不安定な雇用等によりインターネットカフェなどで寝泊まりしている方については 通常この法律案で住宅確保要配慮者として定義している低額所得者に該当するため 法律上規定がなされているものと考えている 入居資格 黒岩宇洋 ( 衆 ) 住宅確保要配慮者の専用賃貸住宅への入居要件は入居時のみにかかるのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 入居資格については 入居段階において要件を満たしていればよく 例えば 入居後に所得が上がって住宅確保要配慮者に該当しなくなったとしても 入居資格が失われるわけではない 登録住宅の改修 入居支援 行田邦子 ( 参 ) 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅に登録することのインセンティブとして改修費の補助があるが 地方自治体が補助金制度を創設しなければ補助を受けることができない 地方自治体にどのように補助金制度設置を促すのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 公共団体に対する説明会の実施などを通じて 先進事例 優良事例を紹介することで 事業の必要性や意義を訴えていく なお 当分の間ではあるが 公共団体の負担がなくても改修費の3 分の1を国が直接補助をするという制度を当初設けることとしており 大家さんに対してはまずその措置もインセンティブになると考える 賃貸住宅の供給促進計画 椎木保 ( 衆 ) 地方公共団体が行う登録基準については 住宅事情等はそれぞれの地域によって異なり 地域の主体性を尊重する観点からも 住宅の登録基準については 地方公共団体が柔軟に設定することができるように配慮すべきでは 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 登録住宅の基準においては 原則的な全国共通の基準として 耐震性能や一定の床面積を有すること等を定めることを予定 しかし

289 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - ながら 住宅事情等は地域によって異なることから 地方公共団体が供給促進計画を定める場合には 例えば床面積の基準を強化 緩和できるなど 地域の実情に応じて柔軟な運用ができるようにしていきたい 家賃保証制度 代理納付制度 黒岩宇洋 ( 衆 ) 住宅金融支援機構が家賃債務保証保険契約を締結できる家賃債務保証業者の要件は何か 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 適正な家賃債務保証業者の要件については 今後 省令において 一つは 新たに設けられる国土交通大臣による登録制度の登録を受けた家賃債務保証業者であること または都道府県の指定を受けた居住支援法人であること のいずれかということで定める予定 石井正弘 ( 参 ) 生活保護受給者の住宅扶助費等の代理納付は 全般としてどのように実施をされており 本法案第 21 条の規定によって生活保護行政の現場において何か変わっていくのか 中井川誠 ( 厚生労働大臣官房審議官 ) 現在 代理納付は 住宅扶助を支給している全国約 139 万世帯のうち22% の世帯で実施している 一方で 現状においては 生活保護受給者が家賃を滞納している状況を福祉事務所が知る機会が必ずしも十分ではなく 福祉事務所が 例えばその家計管理の支援などをケースワークを通じて適切なタイミングで必要な支援を行うことが困難な状況もある 今般の法律改正により 登録住宅の賃貸人から家賃滞納のおそれ等の事情を福祉事務所に通知することができることになり この情報を基に福祉事務所が速やかに代理納付を始めとする所要の措置を講ずることができることから 生活保護受給者の地域における安定した居住につながると考えている 行田邦子 ( 参 ) 居住支援法人が引き受けることになるであろう家賃債務保証は特にリスクの高いものになろうが このようなリスクの高い家賃債務を保証しても問題がないのか 藤井比早之 ( 国土交通大臣政務官 ) 居住支援法人につきましては その指定や債務保証業務規程の認可に当たり 家賃債務保証等の支援業務を公正かつ適確に行うことができることを都道府県知事が判断する また 都道府県知事は 必要があると認めるときは居住支援法人に対して指導監督を行うことができる これらに加え 居住支援法人が行う家賃債務保証については 住宅金融支援機構による保険引受けの対象とすることを予定しており 仮に家賃滞納が発生して居住支

290 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 援法人が家賃債務保証を実施した場合には その金額の7 割を住宅金融支援機構が保険金として支払うことにより居住支援法人のリスク低減を図ることとしている 家賃低廉化措置 黒岩宇洋 ( 衆 ) 本村伸子( 衆 ) 家賃の低廉化が法律に明記せず 予算措置としたのはなぜか 法定補助とすべきではないか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 一定の要件に該当するものを広く対象とするような制度の場合には 予算補助となっているのが通例である 今般の制度では 民間の住宅ストックを活用して 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅を広く供給して 市場においてマッチングが図られることを狙いとし 登録住宅全てについて助成がなされるというわけでもないため 公的関与の度合いが強い認定などによるのではなく 一定の要件に該当するものは登録をするという制度に仕立てている 法律に助成措置を書き込むということではなくて 柔軟かつ機動的な支援が可能な予算補助として措置をしている 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 本制度における家賃低廉化等については 継続的な支援を行い 住宅確保要配慮者の居住の安定を図る必要があり 地方公共団体における取り組み状況等を踏まえながら 必要な予算の確保に努めたい 居住支援協議会 岩田和親 ( 衆 ) 居住支援協議会がさらに実効性を持って機能していくためには 国レベルでは国土交通省と厚生労働省など関係部局の連携 自治体レベルでは住宅部局と福祉部局などとの連携が十分になされること そして 最前線で活動する居住支援法人やNPO 地域の実情をよく知る社会福祉協議会や民生委員などが一体となって機能することが必要であるが どのように取り組んでいくのか 石井啓一 ( 国土交通大臣 ) 国及び地方公共団体における住宅部局と福祉部局の連携や 居住支援を行うNPOなどの民間団体との連携など さまざまなレベルで連携を進め 一体となって取り組むことが重要 特に 市町村レベルでの取り組みが重要であることから 住宅部局 福祉部局が連携して居住支援に取り組む居住支援協議会について 市町村レベルでの設立や参画を進めるとともに NP Oや社会福祉協議会などの民間団体の居住支援協議会への参画を働きかける また 国レベルでの連携の観点からは 昨年 厚生労働省との間で局長級の連絡協議会を設置した

291 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 佐藤英道 ( 衆 ) 自治体によって財政力も違い 居住支援協議会を支える行政職員の数も全く違う状況である そうしたことを踏まえて きめ細やかな対応を国交省にはお願いしたいが 自治体の実情に対応するため 国交省として具体的にどのような取り組みを行うのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 規模が小さい市町村など みずから設立することが困難な場合には 都道府県の居住支援協議会に参画をしてもらいたい 事務局を公共団体が務める場合もあるが 例えば 社会福祉協議会などの公共団体以外の団体が居住支援協議会の事務局を務めている例も現に出ている 国においては こうした団体の活動への助成も行うので いろいろな工夫をした取り組みについて御紹介をして それぞれの実情に応じて取り組んでもらえるようにしていきたい 黒岩宇洋 ( 衆 ) 現行の支援協議会と改正後の支援協議会とでは 法律上 位置づけは変わるのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 法律の名称を変更しただけで 既に設立されている居住支援協議会と何ら位置づけが変わるものではない 小宮山泰子 ( 衆 ) 支援法人の対象活動範囲は都道府県の全域を対象としている必要があるのか あるいは 都道府県内の一部の区域を示すものなのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 必ずしも都道府県の全域を対象とする必要はなく 一部の区域においても活動することが可能である 監督 黒岩宇洋 ( 衆 ) 登録事業者が入居拒否制限に違反した場合 すなわち 要配慮者であることを理由に入居を断った場合 この場合の罰則はどうなっているのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 任意で登録する制度で 罰則を科すことにはなじまない 一方で 必要な指示とか 指示に従わない場合の登録の取り消しができる形にしており この指導権を的確に都道府県知事が行使することが必要 椎木保 ( 衆 ) 今回の住宅セーフティネット制度が社会的弱者を利用した貧困ビジネスに悪用されることは考えられないのか 由木文彦 ( 国土交通省住宅局長 ) 今回の登録を受ける住宅については まず 安全性を確保するという観点から 耐震性を有することや消防法等に適合していることを要件としたいと考えており 居住水準を確保する観点から トイレ 台所等の設備が設置されていることや 最低居住面積以上であることを定めること

292 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - としたい さらに 不当な利益を得ることを防ぐ観点からは 近傍同種の賃貸住宅の家賃の額と均衡を失しない点について審査を行うこととしたい また 都道府県知事等による登録を受けた住宅の賃貸人に対する指導監督により 今般の制度が貧困ビジネスに悪用されることがないよう担保していきたい 自治体への財政支援 石井正弘 ( 参 ) 登録住宅に対する改修費の補助 あるいは住宅金融支援機構による登録住宅に対する改修費融資等 さらには低額所得者の入居負担軽減のための支援措置などを地方が実施をした場合において国がその半分を財政的に支出する仕組み いわゆる間接補助の仕組みのようであるが 地方公共団体の負担も相当なものになりかねないかということが懸念される 国の財政的支援はどのように考えているのか 末松信介 ( 国土交通副大臣 ) 本制度の登録住宅の改修費や家賃対策への支援における地方公共団体に対する財政支援については 地方交付税の算定の基礎となる基準財政需要額において 人口に応じた所要の費用が新たに計上されることとしている これは 公営住宅や特定優良賃貸住宅の家賃対策等と同様 (4) 附帯決議 1 衆議院国土交通委員会における附帯決議 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法の施行に当たっては 次の諸点に留意し その運用について遺漏なきを期すべきである 一本法による住宅セーフティネット機能の強化とあわせ 公営住宅をはじめとする公的賃貸住宅政策についても 引き続き着実な推進に努めること 二低額所得者の入居負担軽減を図るため 政府は必要な支援措置を講ずること 三高齢者 低額所得者 ホームレス 子育て世帯等の住宅確保要配慮者について 入居が拒まれている理由など各々の特性に十分配慮した対策を講ずること 四住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう

293 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること 五住宅セーフティネット機能の強化のためには 地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携の強化が不可欠であることから 政府はそのために必要な支援措置を講ずること 六災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても 必要が認められるときには 住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること 2 参議院国土交通委員会における附帯決議 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議政府は 本法の施行に当たり 次の諸点について適切な措置を講じ その運用に万全を期すべきである 一本法による住宅セーフティネット機能の強化と併せ 公営住宅を始めとする公的賃貸住宅政策についても 引き続き着実な推進に努めること 二低額所得者の入居負担軽減及び安定的な住宅確保を図るため 政府は予算措置を含め必要な支援措置を講ずること 三高齢者 障害者 低額所得者 ホームレス 子育て世帯等の住宅確保要配慮者の入居が拒まれている実態について 国土交通省と厚生労働省とが十分に連携し 住宅政策のみならず生活困窮者支援等の分野にも精通した有識者や現場関係者の意見を聞きながら 本法律の趣旨を踏まえ 適宜調査を行うなど 各々の特性に十分配慮した対策を講ずること 四住宅確保要配慮者が違法な取立て行為や追い出し行為等にあわないよう 政府は適正な家賃債務保証業者の利用に向けた措置を速やかに講ずること 五地方公共団体による賃貸住宅供給促進計画について その策定の促進を図るとともに 地域の住宅確保要配慮者の実情に即し かつ空き家対策にも資する実効性のあるものとなるよう 必要な支援を行うこと 六住宅セーフティネット機能の強化のためには 住宅確保要配慮者居住支援協議会の設立の促進とその活動の充実等を図ることが重要であり また 地方公共団体の住宅部局及び福祉部局の取組と連携を強化することが不可欠であることに鑑み 各地域の実態を踏まえ 必要な支援を行うこと

294 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 七災害が発生した日から起算して三年を経過した被災者についても 必要が 認められるときには 住宅確保要配慮者として支援措置を講ずること 4. おわりに 課題と地方公共団体への影響 日本における住宅政策は 住宅難に対応するための積極的な住宅の建設 供給の時期を経て 市場機能 ストックの重視の方向への転換を迎えた 住宅セーフティネットも公営賃貸住宅ではなく 市場機能 住宅ストックを重視し 民間の住宅ストックを活用する方向に向かっている 行財政基盤の変化による国 地方公共団体の厳しい財政事情とともに 近年の空き家 空き室の増加とその活用が大きな課題となっていることがこのような政策転換に拍車をかける一つの要因となっているといえる 一方 社会 経済情勢の変化に伴い 拡大する高齢者の貧困 単身高齢者の増加 低所得若者の増加などによる住宅確保要配慮者は増加の傾向にある 本改正はこのような市場重視 ストック重視方針に則り 近年増加している空き家 空き室を活用した住宅セーフティネットの強化を目的とするものとされている 新しい制度が有効性の検証に当たっては 空き家 空き室の活用の面と住宅セーフティ機能の強化の両面における検証が必要となる 本改正に当たっては 幾つかの課題も浮き彫りになった まずは 住宅セーフティネット政策全般に関わる問題として 住宅セーフティネット政策の市場化に対する懸念である 政府は 市場の中で住まいを確保できない世帯が存在することから セーフティネットを用意せざるを得ず そして同時に 市場領域を拡張するためにセーフティネットの役割 (17) を最小限に抑制するという矛盾した政策 であるとする指摘からも分かるように 住宅政策の市場化と住宅セーフティネットの強化との間には 根源的な矛盾が存在することに留意しなければならない 住宅政策全体を視野に入れ この矛盾にどう対処するかが大きな課題となっている 本改正で 住宅セーフティネットにおける公的賃貸住宅の重要性が後退していることへの憂慮とともに やはり公的賃貸住宅の充実を図るべきという主張も同様の考え方である 次に 多様な住宅確保要配慮者に配慮した政策推進が求められる 高齢者 障害者 低 (17) 平山 前掲 12 頁

295 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 額所得者 子育て世帯などの住宅確保要配慮者は 例えば 高齢者の中にも 要介護の人がいれば認知症ケアが必要な人もいるように 同じカテゴリーの中でも実情は様々であり それぞれに求められる住居の形も様々である 地方公共団体において 住宅確保要配慮者の実情に詳しいのは住宅部局ではなく福祉部局であり 両部局の連携が欠かせないところである また 法案の審議過程においても複数回指摘されたが 家賃低廉化措置が法律補助ではなく予算措置にとどまっていることの問題である ここには住宅セーフティネットに係る財政支出を極力抑えようとする姿勢が見え隠れしていると考えられ 財政状況によっては住宅セーフティネットがおろそかにされかねない問題がある 今後 住宅セーフティネットの整備に当たっては やはり財政的基盤の確保が何より重要な課題となっていくであろう 最後に 本改正の地方公共団体への影響である 改正を受けて 都道府県 ( 政令指定都市 中核市を含む ) は 賃貸住宅供給促進計画の策定 住宅確保要配慮者円滑入居賃貸住宅事業の実施 指定登録機関の指定 居住支援法人の指定 住居支援協議会の設置 各種監督などを行うこととなっており 都道府県の業務が大幅に拡大されている 一方 制度運用の実効性を高めるためには 各々の住宅確保要配慮者の実情に詳しいはずの市町村の役割に期待せざるを得ず 住居支援協議会などを通じた都道府県と市町村の協力体制の構築が必要となる 法改正に係る地方公共団体の事務はいずれも法的義務ではなく努力義務として設けられており 耐震強度以外の登録住宅の条件については 地方公共団体が 賃貸住宅供給促進計画で定めることにより 緩和 強化することができる 地方自治法ないし条例との関連では 指定登録機関への登録の際に 地方自治法 227 条に基づく手数料を徴収しその手数料を当該指定登録機関の収入とさせようとする場合は条例で定める必要がある なお 法案成立後の政省令の整備などもほぼ完結している 施行期日に関しては 公布の日から起算して6 月を超えない範囲内において政令で定める日 ( 附則 1 条 ) とされていたが 平成 29 年 9 月 8 日の政令 ( 平成 29 年政令第 236 号 ) により同年 10 月 25 日から施行された また 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則 ( 平成 29 年国土交通省令第 63 号 ) は同年 10 月 20 日に 国土交通省 厚生労働省関係住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則 ( 平成 29 年厚生労働省 国土交通省令第 1 号 ) は同年 10 月 24 日にそれぞれ公布された さらに 住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律施行規則第 11 条ただし書及び第 12 条第 2 号ロの

296 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 国土交通大臣が定める基準 ( 平成 29 年 10 月 20 日国土交通省告示第 941 号 ) と住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する基本的な方針の全部を改正する告示 ( 平成 29 年国土交通省告示第 965 号 ) 等が同年 10 月 25 日に告示された ( こんぎぼぶ愛媛大学法文学部准教授 )

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298 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 水防法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 5 月 19 日法律第 31 号 ) 権 奇法 はじめに 近年 全国各地で集中的な豪雨が増加し水害が頻発 激甚化することによって 甚大な人的 経済的被害をもたらしている また これらの現象は 気候変動の影響によるものとされ 今後さらに増加することが懸念されている これまでこのような状況を踏まえ 水防法や河川法などの改正などを通じた対策を講じてきたが (1) その後も 例えば 2015 年 9 月の関東 東北豪雨や翌 2016 年 8 月の台風 10 号等の一連の台風による北海道 東北豪雨による水害が発生し また甚大な人的 経済的被害が発生した 政府においては 2015 年 9 月の関東 東北豪雨による水害発生を受け 施設では防ぎきれない大洪水は発生するもの との考えに立ち 社会全体でこれに備えるため ハード ソフト一体となった 水防災意識社会再構築ビジョン の取組を国管理河川を中心に進めていたが 今回の水防法等の一部を改正する法律は 水防災意識社会再構築ビジョン の取組を中小河川も含めた全国の河川でさらに加速させ 洪水等からの 逃げ遅れゼロ と 社会経済被害の最小化 を実現し 関東 東北豪雨や台風 10 号のような被害を二度と繰り返さないための抜本的な対策を講ずるため 水防法 河川法 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律 独立行政法人水資源機構法の一部を改正するものである (1) 2013 年の 水防法及び河川法の一部を改正する法律 ( 平成 25 年法律第 35 号 ) では 水防活動及び河川管理をより適切なものとし その連携を強化するため 河川管理者等による水防活動への協力の推進を図るための措置 事業者による自衛水防 河川管理施設等の維持 修繕の基準の創設 河川協力団体制度の創設等の措置が講じられていた

299 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 1. 法律案提出の経緯 まず 今回改正の直接のきっかけとなった2015 年 9 月の関東 東北豪雨及び2016 年 8 月の北海道 東北豪雨による被害状況は次のようになっている 関東 東北豪雨では 関東東北の19 河川で堤防決壊 67 河川で氾濫が発生し 死者 8 名 重軽傷者 80 名の人的被害に加え 全壊 80 棟 半壊 7,022 棟を含む19,723 棟の住宅被害が報告された (2) また 北海道 東北豪雨による被害状況であるが 北海道においては 一級水系の支川などの国管理区域において 4 河川で堤防が決壊し5 河川で氾濫が発生するとともに 道管理河川等においても5 河川で堤防が決壊し 73 河川で氾濫が発生するなど 死者 3 名 不明者 2 名 重軽傷者 13 名 住宅の全壊 30 棟 半壊 一部損壊 1,019 棟 床上 床下浸水 927 棟など甚大な被害が発生した また 東北地方の県管理河川 ( 岩手 青森 宮城県 ) では 12 水系 20 河川で浸水被害が発生し 岩手県では死者 20 名 不明者 3 名 重軽傷者 4 名 住宅の全壊 472 棟 半壊 一部損壊 2,359 棟 床上 床下浸水 1,466 棟など甚大な被害が発生した (3) 次に 主な審議会等における審議 答申の内容は以下のように要約できる (1) 社会資本整備審議会答申 大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について~ 社会意識の変革による 水防災意識社会 の再構築に向けて~ (2015 年 12 月 10 日 ) 2015 年 10 月 国土交通大臣から社会資本整備審議会会長に対して 大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について の諮問がなされ 同会長より河川分科会長あてに付託された これを受け 社会資本整備審議会河川分科会大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会 が2015 年 10 月に設置された その後 計 2 回の小委員会を開催し 答申をとりまとめた 答申においては 今後 気候変動により 今回の鬼怒川のような施設の能力を上回る洪水の発生頻度が高まることが予想されることを踏まえると 河川管理者を筆頭とした行政や住民等の各主体が 施設の能力には限界があり 施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの へと意識を変革し 社会全体で洪水氾濫に備える必要がある としたうえ 大 (2) 内閣府資料 平成 27 年 9 月関東 東北豪雨による被害状況等について (3) 平成 29 年 1 月社会資本整備審議会資料

300 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 規模氾濫に対する減災のために 速やかに実施すべき対策 及び 速やかに検討に着手し 早期に実現を図るべき対策 を具体的に提示している まず 速やかに実施すべき対策 として 1 市町村長による避難勧告等の適切な発令の促進 2 住民等の主体的な避難の促進 3 的確な水防活動の推進 4 減災のための危機管理型ハード対策の実施を挙げている そして 速やかに検討に着手し 早期に実現を図るべき対策 としては 1 円滑かつ迅速な避難の実現 2 的確な水防活動の推進 3 水害リスクを踏まえた土地利用の促進 4 危機管理型ハード対策とソフト対策の一体的 計画的な推進 5 技術研究開発の推進を挙げている (2) 国土交通省水管理 国土保全局 水防災意識社会再構築ビジョン (2015 年 12 月 11 日 ) 上記の答申を踏まえ 全ての直轄河川とその沿川市町村 (109 水系 730 市町村 ) において 平成 32 年度を目途に水防災意識社会を再構築する取組を行うこととし 河川管理者 都道府県 市町村等からなる協議会等を新たに設置して減災のための目標を共有し 以下のハード ソフト対策を一体的 計画的に推進することを内容とする 水防災意識社会再構築ビジョン を策定公表した 主な内容は 以下のとおりである 住民目線のソフト対策 水害リスクの高い地域を中心に スマートフォンを活用したプッシュ型の洪水予報の配信など 住民が自らリスクを察知し主体的に避難できるよう住民目線のソフト対策に重点的に取り組む 洪水を安全に流すためのハード対策 流下能力が著しく不足している あるいは漏水の実績があるなど 優先的に整備が必要な区間約 1,200kmについて 平成 32 年度を目途に堤防のかさ上げや浸透対策などの対策を実施 危機管理型ハード対策 氾濫リスクが高いにも関わらず 当面の間 上下流バランスの観点から堤防整備に至らない区間など約 1,800kmについて 平成 32 年度を目途に粘り強い構造の堤防など危機管理型のハード対策を実施

301 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - (3) 社会資本整備審議会河川分科会 大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会 答申 中小河川等における水防災意識社会の再構築のあり方について (2017 年 1 月 11 日 ) 上記答申及び 水防災意識社会再構築ビジョン に基づいた取組を進めている最中 2016 年 8 月の北海道 東北豪雨による水害が発生した これらの状況を踏まえて この答申では以下のように述べ 基本的な方針と実施すべき対策を示している 基本的な方針 1 水害リスク情報等を地域と共有することにより 要配慮者利用施設等を含めて命を守る確実な避難を実現すること 2 治水対策の重点化 集中化を進めるとともに 既存ストックの活用等 効率的 効果的な事業を推進し 社会経済に大きな影響を与える施設の保全を図ること 3 逃げ遅れによる人的被害をなくすとともに 地域社会機能の継続性を確保するため 関係機関が相互に連携 支援し 総力を挙げて一体的に対応すること 実施すべき対策 1 関係機関が連携したハード ソフト対策の一体的 計画的な推進 水防災意識社会再構築のための協議会を活用した減災対策の推進 ( 河川管理者と市町村長等による減災対策協議会設置の促進等 ) 2 水害リスク情報等の共有による確実な避難の確保 水害リスク情報等の共有 要配慮者利用施設における確実な避難等 3 河川管理施設の効果の確実な発現 ICT 等の最新技術活用による河川管理の高度化に向けた取組の推進等 4 適切な土地利用の促進 適切な土地利用の促進のための水害リスク情報の提供等 5 重点化 効率化による治水対策の促進 浸水被害の拡大を抑制する連続盛土や高台となっている自然地形等の保全等による人口 資産が点在する地域等における治水対策の推進 都道府県管理河川において 洪水調節施設の機能向上等の高度な技術を要する工事については 国等が代わって工事を実施するなどの技術的支援が実施できる仕組

302 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - みの構築等 6 災害復旧 水防活動等に対する地方公共団体への支援 早期復旧のため 緊急的かつ高度な技術を要する災害復旧工事等については 国等が代わって工事を実施するなどの技術的支援が実施できる仕組みの構築 出水時に建設業者等がより円滑に水防活動を実施できる仕組みの構築 本改正は 上記のような水害からの教訓と答申等を受け 水害からの 逃げ遅れゼロ 社会経済被害の最小化 を実現し 同様の被害を繰り返さないための措置を講ずるものである 具体的には 最近の気候変動の伴う大規模水害に対応すべく 多様な主体が連携して大規模な洪水等に対する防災 減災対策を推進するため 要配慮者利用施設における避難体制の強化 都道府県知事等が管理する河川管理施設の改築等及び災害復旧の国土交通大臣等による権限代行制度の創設等を主な内容とする 水防法等の一部を改正する法律案 が 2017 年 2 月 10 日閣議決定され 193 回国会に提出された 2. 改正の概要 (1) 水防法の改正 1 大規模氾濫減災協議会の創設 (15 条の 9 及び 15 条の 10 関係 ) (4) 国土交通大臣は いわゆる洪水予報河川又は水位周知河川 (5) について 想定 最大規模降雨により当該河川が氾濫した場合の水災による被害の軽減に資する取組 を総合的かつ一体的に推進するために必要な協議を行うための協議会 ( 大規模氾濫 減災協議会 ) を組織するものとした (4) 洪水予報河川とは 流域面積が大きい河川で 洪水により国民経済上重大又は相当な損害を生じるおそれがある河川で国土交通大臣又は都道府県知事が指定した河川のことをいう 洪水のおそれがあるときは 水位又は流量等を示して 河川の状況を水防管理者等に通知し 必要に応じ 一般に対する周知を行うこととなっている ( 水防法 10 条 11 条 ) (5) 水位周知河川とは 洪水予報河川以外で洪水により国民経済上重大又は相当な損害を生じるおそれがある河川で 国土交通大臣又は都道府県知事が指定した河川のことをいう 特別警戒水位を定め 河川の水位がこれに達したときは その旨を水防管理者等に通知し 必要に応じ 一般に周知することとなっている ( 水防法 13 条 )

303 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 水防災意識社会再構築ビジョン が策定され 各地域において 河川管理者 都道府県 市町村等からなる協議会等を新たに設置して減災のための目標を共有し ハード ソフト対策を一体的 計画的に推進するために 国直轄河川について協議会の設置が進められてきたが ( 平成 29 年 1 月現在 設置することが想定されている 129の協議会全てが設置済み ) これを法定化し必置協議会とした 協議会は 国土交通大臣及び関係する都道府県の知事 市町村長 水防管理団体の水防管理者 (6) 河川管理者 気象台長の他 隣接する市町村長その他の国土交通大臣が必要と認める者で構成される 国土交通大臣が必要と認める者としては 消防 警察 自衛隊等からの参加が想定されている 協議会では 的確な避難や被害拡大防止のため関係者の役割 連絡体制を時系列で整理した 水害対応タイムライン 等の作成 広域避難体制を構築するための近隣市町村との避難先の調整 広域水防体制構築のための水防団間の連携体制の調整 近隣市町村と広域に影響する盛土構造物等の保全の調整等について協議を行うこととされている そして 協議会において協議が調った事項については 構成員は その協議の結果を尊重しなければならない また 都道府県においても 知事は 洪水予報河川又は水位周知河川について 想定最大規模降雨により当該河川が氾濫した場合の水災による被害の軽減に資する取組を総合的かつ一体的に推進するために必要な協議を行うための協議会 ( 都道府県大規模氾濫減災協議会 ) を組織することができる 2 市町村長による水害リスク情報の周知制度の創設 (15 条の11 関係 ) 洪水予報河川及び水位周知河川については リアルタイムの予報又は水位周知 水害リスク情報の周知 避難確保との連動のための措置 制度が実施されていたが 平成 28 年 8 月豪雨では 洪水予報河川等に指定されていない河川においても被害が発生したことを踏まえ 上記制度のうち 水害リスク情報の周知制度 を 洪水予報河川及び水位周知河川を除く河川で当該市町村長が特に必要と認める河川について導入した 市町村長は 過去の降雨により当該河川が氾濫した際に浸水した地点 その水深その他の状況を把握するよう努めるとともに これを把握したときは 当該河川において予想される水災の危険を住民等に周知させること (6) 水防管理者は 水防管理団体である市町村の長 または水防事務組合 水害予防組合の管理者をいう

304 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - とした 周知の具体的な方法としては 地図としての配布 ハザードマップに付加しての配布 電柱や看板等への記載など 地域の実情に合わせて適切な方法で行われるとされている 市町村長の把握すべき水害リスク情報は 市町村長の過大な負担を考慮し 水害統計調査や既存の文献等を参照した過去の氾濫実績によるもので足り 浸水想定区域の指定制度に用いられるような河川測量及び氾濫シミュレーションを用いた想定図の作成までは要求していない 3 要配慮者利用施設の利用者の避難の確保のための措置に関する計画の作成等の義務化 (15 条の3 関係 ) 改正前の水防法においては 市町村地域防災計画にその名称及び所在地が定められた要配慮者利用施設の所有者又は管理者に努力義務として課せられていた洪水時の避難確保計画の作成及びこれに基づく避難訓練の実施を義務化するとともに 要配慮者利用施設の所有者又は管理者がこれらの義務を履行しない場合において 必要があると認めるときは 当該施設の所有者又は管理者に対し必要な指示をすることができ 正当な理由がなくその指示に従わなかったときは その旨を公表することができるようにした なお 自衛水防組織の設置については 施設の規模や形態等施設によって事情が異なることから 引き続き努力義務とされている 4 浸水被害軽減地区の指定制度の創設 (15 条の6から15 条の8 関係 ) 水防管理者は 洪水浸水想定区域内で輪中堤防その他の帯状の盛土構造物が存する土地 ( その状況がこれに類する土地を含む ) の区域であって浸水の拡大を抑制する効用があると認められるものを浸水被害軽減地区として指定することができる 水防管理者が浸水被害軽減地区の指定をしようとするときは あらかじめ 当該指定をしようとする区域をその区域に含む市町村の長の意見を聴くとともに 当該指定をしようとする区域内の土地の所有者の同意を得なければならない 浸水被害軽減地区において土地の掘削 盛土又は切土その他土地の形状を変更する行為をしようとする者は 当該行為に着手する日の30 日前までに 行為の種類 場所 設計又は施行方法 着手予定日等を水防管理者に届け出なければならない また この規定に違反して 届出をしないで 又は虚偽の届出をして 土地の形状を変更する行為をした者等に対しては 30 万円以下の罰金に処することとされた 水防管理者は 洪水浸水想定区域を指定するときは 当該区域を公示するとともに 市町村長及び土地の所有者に通知し 浸水被害軽減地区の区域内に 浸水被害

305 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 軽減地区である旨を表示した標識を設けなければならない 標識の形状 設置場所等については 国土交通省令で定める基準を参酌して 市町村又は水防事務組合の場合は条例で 水害予防組合の場合は組合会の議決で定めることとしている 水防管理団体は 標識の設置により損失を受けた者に対して 時価によりその損失を補償しなければならない また 何人も 標識を水防管理者の承諾を得ないで移転し 若しくは除却し 又は汚損し 若しくは損壊してはならず これに違反した者は30 万円以下の罰金が科せられる 5 民間を活用した水防活動の円滑化 (19 条及び28 条関係 ) 近年の豪雨の激甚化等により 水防活動の重要性はますます増している一方で 水防団員の減少 高齢化 サラリーマン団員の増加が進んでおり 地域の水防力の低下が懸念されている このような状況の中 地域水防において 大型建設機材を所有し技術力も備えている建設業者等の民間事業者の役割が期待され 実際にも 災害協定などを通じて水防管理者から委任を受け地域の水防活動を担う事例も増えてきている このような現状を踏まえ 法改正においては 水防管理者等に水防活動のために認められている権限 ( 緊急通行及び公用負担 ) の一部を 委任を受けた民間事業者に与えることができるようにしている これまで緊急通行に伴う損失の補償に関する規定はなかったが 民間事業者に対しても緊急通行を認めることとしたことから 水防管理団体による 時価による損失補償の規定が新たに設けられた (2) 土砂災害防止法の改正要配慮者利用施設の利用者の避難の確保のための措置に関する計画の作成等の義務化土砂災害は 台風に伴う大雨や前線に伴う集中豪雨など 水害と同じ原因で発生する災害であることから 同時に発生することや 被災する区域が重複することがある そのため 土砂災害防止法においても 洪水時と同じく 土砂災害に備えた市町村地域防災計画にその名称及び所在地を定められた要配慮者利用施設の利用者の避難計画作成及び訓練を義務化し 義務を履行しない場合の措置として市町村長の指示とこれに従わない場合の公表制度を定めた

306 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - (3) 河川法 水資源機構法の改正都道府県管理河川における改良工事 災害復旧工事等の権限代行制度の創設激甚化する豪雨等に対応するためには迅速かつ高度な災害復旧工事や ダム等の施設能力を向上させるための高度な再開発工事等を実施する必要性が高まっている一方 都道府県等では人員や経験の不足 技術力の低下が懸念されており 今後 都道府県管理河川等においてこれらの工事が的確に実施できなくなるおそれがあることから これらの工事について 国及び水資源機構が代わって実施できる権限代行制度を創設した (7) 河川法の改正においては 国土交通大臣は 都道府県知事又は指定都市 ( 当該都道府県等 ) の長から要請があり 当該都道府県等における河川の改良工事若しくは修繕又は災害復旧事業に関する工事の実施体制等を勘案して 当該都道府県知事等が管理の一部を行う指定区間内の一級河川若しくは管理する二級河川に係る政令で定める改良工事等若しくは修繕又は災害復旧事業に関する工事 ( いずれも高度の技術を要するもの等に限る 以下 特定河川工事 という ) を当該都道府県知事等に代わって自ら行うことが適当であると認められる場合においては その事務の遂行に支障のない範囲内で これを行うことができるとした 政令で定める改良工事等とは ダム 導水路 放水路 捷水路その他これらに類する施設で国土交通大臣が指定するものに関する改良工事等と 災害復旧事業の施行のみでは再度災害の防止に十分な効果が期待できないと認められるため これと合併して行う改良工事とされている ( 河川法施行令 10 条の7) また 特定河川工事を行う場合においては 政令で定めるところにより 当該都道府県知事等に代わってその権限を行うものとした 政令においては 国土交通大臣が都道府県知事等に代わって行うことができる権限を 損失補償や調査のための土地の立入り等の 特定河川工事の実施のために必要な権限としている ( 河川法施行令 10 条の8 第 2 項 ) 独立行政法人水資源機構は50 年以上にわたり いわゆるフルプラン水系内において (7) 新たに創設された権限代行制度の適用 1 号事例は 2017 年 7 月の九州北部豪雨において 筑後川右岸側を中心に甚大な被害が発生し 特に 大量の土砂や流木により河道が埋塞し 次の出水時に 2 次災害が発生するおそれが極めて高い状況となっていて 緊急的な対策が必要であった そして これらの対策工事は 土砂の流動性が高いことなどにより高度な技術を要することから 福岡県知事から国土交通省九州地方整備局に要請書が提出され 改正河川法に基づく権限代行制度による緊急的な河道の確保に向けた土砂等の除去工事が実施されたのである

307 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 水資源開発を担ってきており ダムに関する工事や管理については 国土交通省と同 等の高度な技術力を有していることから 水資源機構法の改正によりフルプラン水系 内における前記国土交通大臣によるものと同様の工事の権限代行制度を導入した 3. 国会における審議等 本法案は 内閣提出法案として 193 回国会衆議院に提出され 同年 5 月 19 日に法律第 31 号として公布された 国会における審議の経過は以下のとおりである (1) 審議の経過 項 目 内 容 衆議院付託年月日 / 衆議院付託委員会 平成 29 年 4 月 13 日 / 国土交通 衆議院審査終了年月日 / 衆議院審査結果 平成 29 年 4 月 19 日 / 可決 衆議院審議終了年月日 / 衆議院審議結果 平成 29 年 4 月 21 日 / 可決 参議院付託年月日 / 参議院付託委員会 平成 29 年 5 月 8 日 / 国土交通 参議院審査終了年月日 / 参議院審査結果 平成 29 年 5 月 11 日 / 可決 参議院審議終了年月日 / 参議院審議結果 平成 29 年 5 月 12 日 / 可決 (8) (2) 法案の提案理由及び概要 近年 全国各地で洪水等の水災害が頻発 激甚化しております 平成二十七年九月の関東 東北豪雨 平成二十八年八月に北海道 東北地方を襲った台風十号等の一連の台風では 住民の逃げおくれや家屋の浸水により甚大な被害が発生しました このため 一昨年来 施設では防ぎ切れない大洪水は必ず発生するものとの考えに立ち ハード ソフト一体となった対策により社会全体で洪水に備える水防災意識社会再構築ビジョンの取り組みを進めてまいりましたが この取り組みをさらに加速し 洪水等からの逃げおくれゼロと社会経済被害の最小化を実現するための抜本的な対策を講ずる必要があります (8) 第 193 回国会国土交通委員会第 9 号 (2017 年 4 月 14 日 )

308 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - このような趣旨から このたびこの法律案を提案することとした次第です 次に この法律案の概要につきまして御説明申し上げます 第一に 地方公共団体や河川管理者 水防管理者等の多様な関係者の連携体制を構築するため 大規模氾濫減災協議会を設置することとしております 第二に 地域の中小河川における住民等の円滑かつ迅速な避難を確保するため 市町村長が可能な限り浸水実績等を把握し これを水害リスク情報として住民等に周知しなければならないこととしております 第三に 高齢者等の要配慮者の確実な避難を図るため 浸水想定区域及び土砂災害警戒区域内の要配慮者利用施設の管理者等に対し 避難確保計画の作成及び避難訓練の実施を義務づけることとしております 第四に 地域の河川の安全度を高めるため 実施に高度な技術等を要するダム再開発事業や災害復旧事業等を国土交通大臣または独立行政法人水資源機構が都道府県知事等にかわって行うことができることとする等 洪水等からの社会経済被害を最小化するための措置を講ずることとしております (3) 国会における審議内容 避難確保計画の作成及び避難訓練 村岡委員これまでの要配慮者施設の避難確保計画の作成状況は? 山田政府参考人市町村地域防災計画に位置づけられている施設が対象となり 全国には 平成二十八年三月末で 対象となる施設三万一千二百八施設のうち七百十六施設で避難確保計画を作成している ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 高瀬弘美君要配慮者利用施設の避難確保のための取組はどのように大規模氾濫減災協議会の中で取り扱われるのか? 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 大規模氾濫減災協議会の場において 計画作成状況のフォローアップ あるいはモデルとなる地区で得られた効果的な避難等に関する知見の共有などを行うことによって 福祉部局等との関連機関と連携をしつつ 要配慮者利用施設における避難の実効性を高めていきたい なお 関係者と一体となって避難確保のための取組を検討することも有効なので 地域の実情に応じ要配慮者利用施設の管理者等をこの大規模氾濫減災協議会の構成

309 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 員にするということも可能である ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 山添拓君今後 広域の避難計画をどう作るかが課題 障害者や高齢者などに対応する避難先が被災地の中にあるのでは用を成さない 隣の自治体などへの搬送を考えているが そのためには複数の市町村との事前の協定が必要になる 今度の法改正では 社会福祉施設や学校あるいは医療施設など要配慮者利用施設について避難確保計画の策定を義務付けることになるが 義務付ける以上は こうした市町村間の協定など事前の条件整備が必要ではないか? 国務大臣 ( 石井啓一君 ) 要配慮者利用施設の避難確保計画は 地域における避難の在り方を踏まえ 施設の管理者が市町村と相談しつつ作成することが重要である 一方 市町村による水害時の広域的な避難の検討に当たっては 近隣市町村などと一体となった地域全体での取組が必要 このため 要配慮者利用施設の避難確保計画において 広域的な避難が必要となる場合には 流域の複数の市町村や河川管理者等が参画した大規模氾濫減災協議会での検討が有効と考えている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 室井邦彦君現在の土砂災害警戒区域の指定状況と指定に向けた取組状況は? 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 土砂災害警戒区域の全国総区域数の推計値は約六十七万区域となっており 平成二十九年三月末現在 約四十八万八千区域 約七三 % の指定が完了している 今後の見通しとして 土砂災害警戒区域については 平成三十一年度末までに全ての都道府県において基礎調査を完了させて できるだけ早期に指定を完了させる予定 ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 水害リスク情報周知制度 足立敏之君水害対応タイムラインの効果について実例と 今後の普及方法は? 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 平成二十八年三月に策定した荒川氾濫に対するタイムライン試行版を運用するとともに 対象地域を拡大したタイムラインの検討を進めている また 昨年八月の常呂川における洪水では 作成された水害対応タイムラインを活用して河川事務所長から北見市長へのホットラインが実施をされて 通常より早い段階で避難勧告が発令され 北見市からは円滑な避難が実施できたという声もある タイムラインの普及に当たっては 本年四月末現在 国管理河川沿川の六百八十市町村で策定されている避難勧告着目型のタイムラインの策定を引き続き進めると

310 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - ともに 荒川下流地域のタイムラインの経験も踏まえて 全国二十地域において荒川同様の多機関連携型の水害対応タイムラインの取組を進めていく さらに これらの先行的な取組を参考として 各河川において設置される大規模氾濫減災協議会の場等を活用して 水害対応タイムラインの取組を更に促進していきたい ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 鉢呂吉雄君中小河川については 過去の実績ではなくて 今の気候変動の関係に照らして やっぱり一つの関係機関 気象庁等含めて関係機関を糾合して 降水量の把握 予測をすべきではないか? 国務大臣 ( 石井啓一君 ) 氾濫シミュレーションに必要な河川の基本データがない等の技術的な課題や解析に要する財政的負担が大きいといった課題により 全ての中小河川で想定最大規模の洪水浸水想定区域図を策定することは難しい このことから 今回の水防法改正では 可能な限り過去の浸水実績等を活用するという簡易な方法で水害リスク情報を周知することとした ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 大規模氾濫減災協議会 村岡委員水防災意識社会再構築ビジョンに基づく協議会の設置状況は? 山田政府参考人平成二十九年三月末までに 国管理河川では 百二十九地区全てで協議会が設置済みであり 都道府県管理河川では 三百二地区の設置見込みに対して 六十七地区で協議会が設置されている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 椎木委員大規模氾濫減災協議会の設立が都道府県の大きな負担にはならないか? 山田政府参考人大規模氾濫減災協議会の設置に当たっては 協議会の構成員となる地方公共団体等の負担を軽減するため 圏域や行政界などを考慮して複数河川をまとめて協議会を設置することとしている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 民間事業者の緊急通行及び損失補償 村岡委員水防管理者から水防活動の委任を受けた者による緊急通行及び公用の負担等はどのような場合を想定しているのか? 山田政府参考人水防活動を迅速に行うために 水防団長等には 緊急の必要がある場合に 他人の土地を通過する緊急通行 あるいは 必要な土石あるいは車両の使用等の公用負担が認められている そして 水防管理団体は 公用負担により損

311 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 失を受けた者に対して 時価によりその損失を補償することとされており これまで 水防活動で車両を使用した際等に 水防管理団体が適切に損料や修理費用を補償した事例がある 法改正において 水防活動の委任を受けた民間事業者にも緊急通行や公用負担を認めることとあわせて これらに伴う損失についても 水防管理団体が補償することとしており 緊急通行や公用負担に伴う損失補償について明確化され 民間事業者が実施する水防活動も含め 迅速な水防活動が実施できる ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 足立敏之君水防活動の担い手としての建設産業にどのような役割を期待するのか そしてその役割を継続的に果たしていくために国としてどのような取組が必要と考えるのか 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 建設業者にこのような役割を継続的に担ってもらうためには 安定的な経営が必要不可欠である このため 国土交通省では 必要な公共事業予算の安定的 持続的な確保に努めるとともに 建設業者が適正な利潤を確保できるように 改正品確法に基づき 予定価格の適正な設定や あるいは効果的なダンピング対策の実施等に取り組んでいる さらに 国土交通省や多くの都道府県の公共工事の発注において 水防活動を含めた災害活動の実績や災害協定の締結を総合評価落札方式の評価対象としており 建設業者の水防活動への参画に寄与していると考えている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 権限代行制度 村岡委員どのような場合に国や水機構などの権限代行が可能になるのか? 山田政府参考人権限代行制度の実施に当たっては 都道府県知事等から要請があること 当該工事が高度の技術力または機械力を使用して実施することが適当であると認められるものであること そして 都道府県等の工事の実施体制その他の地域の実情を勘案して 代行することが適当と認められることの三つを要件としている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 水戸委員国による代行と水資源機構による代行の相違点と どういう形で役割分担されるのか? 山田政府参考人都道府県からの要請に基づくものであり 基本的には都道府県の方で どちらに権限代行するかを決め 要請することになる ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 )

312 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - 水戸委員公用負担について どういうことを想定しているのか また 損失補償をどういう形でやるのか? 山田政府参考人具体的には 堤防とか水防活動の現場に向かう際に 私道や田畑を緊急に通行すること 水防工法に使用する竹木等の資材を使用すること等を想定している 損失補償については これらの緊急通行や公用負担に伴い 土地や資機材等の所有者等に損失を与えた場合には 必要な費用等を所有者等に補償する ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 国の支援措置 荒井委員新しい財源なり新しい人材の育成 創出のための対策は? 山田政府参考人国としても 交付金による支援あるいはさまざまな技術的支援 特に 手引等を改正し できるだけ簡易に避難確保計画ができるような支援も視野に 考えている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 10 号 2017 年 4 月 19 日 ) 青木愛君国の直轄管理河川における取組を今後都道府県が管理する河川にも拡大をすると 対象となる河川数が一千九百九十一河川と増えることや また河川が複数の自治体を流れているためにほかの自治体との連携を図る必要性が生じるなど 都道府県には相当の負担も生じるのではないかという懸念もあるが 国はどのような支援を行っていくのか 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 大規模氾濫減災協議会の設置に当たっては その対象となる洪水予報河川 あるいは水位周知河川の指定数に鑑み 協議会の構成員となる地方公共団体等の負担を軽減するために 圏域あるいは行政界などを考慮して複数河川をまとめて協議会を設置することとし また 都道府県による大規模氾濫減災協議会の設置に際しては 各地方整備局に相談窓口を設置し 都道府県協議会を国の協議会との合同開催 あるいは都道府県協議会への国のアドバイザー等参画するなど 都道府県の取組を支援していく ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) その他 高瀬弘美君地下街における避難確保とか浸水防止のための協議会というものもあり 同じ水害対策で幾つも協議会を立ち上げていくことになるが これを立ち上げていく地方自治体として大変な負担になるのではないか 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 地下街を対象とした協議会は これは地下街管理者を主たる構成員として 地下街の避難確保とかあるいは浸水防止のための計画作成等

313 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - を目的としたもので 大規模氾濫減災協議会とは設置の趣旨及び構成員が異なるものである そのため それぞれの目的に応じ協議会が設置されることが必要だと考えている ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 行田邦子君河川から放置艇を所有者が排除しない場合 都道府県など水域管理者が行政代執行法に基づいて取り除くということになる ただ この行政代執行法に基づく処置というのは非常に手間が掛かる そして 災害等の緊急時においては 行政代執行法の手続を省略をして放置船 放置艇の排除を行うことは可能か 政府参考人 ( 山田邦博君 ) 行政代執行法に基づき代執行を行うためには 通常 相当の履行期限を定めて その期限までに履行がなされないときは代執行を行う旨をあらかじめ文書で戒告し 指定の期限までにその義務を履行しないときには代執行令書を発行して 代執行をなすべき時期 派遣する執行責任者の氏名及び代執行に要する費用の概算による見積書を義務者に通知するという手続を経る必要がある 他方 行政代執行法第三条第三項では 非常の場合又は危険切迫の場合で 代執行の急速な実施について緊急の必要があるためこれらの手続を取るいとまがないときは手続を省略することができることとされている 一般的には 災害の発生時等がこの場合に当たるものと考えられており 具体的にどのような場合に手続を簡素化できるかは各現場において個別具体的に判断されることになる ( 第 193 回国会国土交通委員会第 13 号 5 月 11 日 ) 以上のような審査をへて 衆参の国土交通委員会及び本会議いずれにおいても全会 一致で原案とおり可決され 法案が成立した (4) 政省令 通知等の対応法律の成立を受けた政省令の改正は一通り完了し 関連通知が出されており 以下のとおりである 水防法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令 ( 平成 29 年政令第 158 号 ) 水防法等の一部を改正する法律の施行に伴う国土交通省関係省令の整備に関する省令 ( 平成 29 年国土交通省令第 36 号 ) 水防法等の一部を改正する法律の施行について ( 平成 29 年国水政第 12 号 ) 水防法第 15 条の9 及び第 15 条の10に基づく 大規模氾濫減災協議会 の運用につい

314 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - て ( 平成 29 年国水政第 13 号 国水河計第 13 号 国水環第 20 号 国水治第 26 号 国水防第 52 号 ) 河川法第 16 条の4 及び独立行政法人水資源機構法第 19 条の2に基づく権限代行制度の創設について ( 平成 29 年国水政第 14 号 国水環第 21 号 国水治第 27 号 国水防第 53 号 国水策第 19 号 ) 4. 地方公共団体への影響など 今回の法改正を受け 地方公共団体は水防災のための諸対策に取り組むことになるが 技術的能力の低下 人的資源の不足 厳しい財政状況に鑑みると 今後 地方公共団体がこれらの政策を進めていくには多くの難関を乗り越えなければならない それぞれの局面における 国又は都道府県の支援が欠かせない また 市町村としては 義務付けられた水害リスク情報の周知及び要配慮者利用施設への監督を徹底する必要があり これを怠った場合には 法的責任が問われる場合も考えられることから 慎重かつ確実に対応していく必要がある 今回の河川法及び水資源機構法の改正によって権限代行制度が創設されたが 地方公共団体の事務に関する国の権限代行制度は他の分野でも確認することができる たとえば 2013 年の道路法改正によって創設された 高度な技術力を要する等の修繕工事等を当該地方公共団体に代わって国土交通大臣が実施できる代行制度 ( 同法 17 条 6 項 ) また 2015 年の災害対策基本法の改正によって導入された 被災市町村長の要請に基づいて環境大臣が災害廃棄物の処理を代行する制度 ( 同法 86 条の5 及び108 条の4) がその例である 今回創設された代行制度のうち 主にダム等の再開発工事を想定しているように思われる水資源機構による河川管理施設の改築又は修繕工事の代行制度は 必ずしも災害復旧事業であることを要件としていないことから 道路法上の修繕工事等の代行制度と同じく理解することができる このような国による 権限の代行 制度をどう評価すべきかについては種々意見があり得 またメリットとデメリットが共存することは否定できないであろう 国による復旧工事の代行制度は 大規模水災害時において 住民の安全や生活の安定を確保すると同時に 行政遂行能力が低下し また専門的な知識経験が不足している地方公共団体の負担軽減を図るという 制度本来の趣旨は肯定的に評価することができる 一方 地方分権の観点か

315 - 自治総研通巻 472 号 2018 年 2 月号 - ら国の出先機関の縮小 廃止を求める立場からすれば このような代行制度は出先機関の存在意義の再確認ないし機能強化につながる恐れがあることから批判的に捉えられる可能性が高い また 国による権限の代行によって 地方公共団体の災害対策能力の低下や専門的な知識経験が不足という状態が膠着化されてしまうという懸念も出てくる 災害対策基本法上の被災市町村長の要請に基づいた環境大臣の災害廃棄物の処理の代行制度に関連して 権限代行制度は 地方公共団体を補完するものであり 国が本来果たすべき役割 に属するとの位置づけも可能であって 代行 という形態をとることの是非も改めて問われるべき検討課題であるとの指摘もなされている (9) 終わりに 今回の法改正は 水害による被害を予防するために早急に実施すべき政策のうち 法定化する必要があるものについて規定したものである これらの内容は 社会資本整備審議会の答申 大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について~ 社会意識の変革による 水防災意識社会 の再構築に向けて~ 及び 中小河川等における水防災意識社会の再構築のあり方について で示された諸対策の一部に留まっており 法定されていない対策は 今後 政策として実行していくことが予想される さらなる制度改革の動きも含め 今後の実際の運用に注目する必要がある ( こんぎぼぶ愛媛大学法文学部准教授 ) (9) 下山憲治 廃棄物処理及び清掃に関する法律及び災害対策基本法の一部を改正する法律 (2015 年 7 月 17 日法律第 58 号 ) 自治総研 448 号 (2016 年 2 月 )137 頁

316 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年 6 月 2 日法律 52 号 ) 上林陽治 はじめに 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 29 年法律 52 号 )( 以下 地域包括ケアシステム法 という ) は 2017 年 2 月 7 日に閣議決定され 193 通常国会において 5 月 26 日に参議院本会議で可決 成立し 6 月 2 日に法律 52 号として公布された 地域包括ケアシステム法は 高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止 地域共生社会の実現を図るとともに 制度の持続可能性を確保することを目的として取りまとめられ 主に介護保険法 医療法 社会福祉法 障害者総合福祉支援法 児童福祉法などの31 本の法律の関連部分を一括して改正するいわゆる束ね法である その内容は 以下の5 点にまとめられる 地域包括ケアシステムの深化 推進 1 自立支援 重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進 2 医療 介護の連携の推進等 3 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等 介護保険制度の持続可能性の確保として 4 2 割負担者のうち特に所得の高い層の負担割合を3 割 5 介護納付金への総報酬割の導入

317 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 1. 法案策定までの経過 ~3 つのルーツ ~ (1) 介護保険法の改正 2011 年の改正介護保険法は 地域包括ケアの推進を国 地方公共団体の責務と位置づけ 2025 年を目途に 高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援という目的のもとで 可能な限り住み慣れた地域で 自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう 地域の包括的な支援 サービス提供体制を構築するとした そして 自助 共助 (= 介護保険 ) 公助(= 税 ) 互助( 地域組織の支援 ) のもと 介護 医療 予防 すまい 生活支援福祉サービスの連携に基づき 実施する目標を定めた 一方 2012 年 8 月には 社会保障と税の一体改革関連法 社会保障制度改革推進法 ( 平成 24 年法律第 64 号 ) が成立し 翌 2013 年 8 月 6 日には 社会保障制度改革推進法に基づき設置された社会保障制度改革国民会議が 確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋 と題する報告書を取りまとめ 12 月 5 日には 同報告書を踏襲しつつ 今後の改革の進め方を規定した 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律 が成立した 同法では 少子化対策 医療制度 介護保険制度 公的年金制度における改革の進め方を規定するとともに 関係閣僚から成る社会保障制度改革推進本部及び有識者から成る社会保障制度改革推進会議を設置することとした そして 2014 年 6 月 17 日に医療介護総合確保推進法が成立し 介護分野では 2015 年 8 月から 年金収入 280 万円以上の人の介護保険の自己負担を現行の1 割から2 割に引き上げることとした また 特別養護老人ホームについても 新規入所は原則要介護 3 以上の中 重度者に限るとし 介護保険で最も軽度な 要支援 1 2 を対象としたヘルパーによる家事援助 デイサービスセンターでの食事や入浴といった訪問 通所介護サービスを 2015 年度から3 年間で市町村事業に移すこととした 介護 医療の制度見直し議論は ここで一旦 小休止すると思われたが 2015 年 6 月 30 日に取りまとめられた 経済財政運営と改革の基本方針 2015 は 社会保障分野の改革を重点分野として取り上げ そして 同年 12 月 24 日の政府 経済 財政再生アクション プログラム では 次のように制度改革の方向性を示すことになった 介護保険事業 ( 支援 ) 計画及び医療計画に基づく取組を推進し 在宅や介護施設等における看取りも含めて対応できる地域包括ケアシステムの構築に向け 必要な介

318 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 護インフラの整備等を進める 介護給付費の適正化については 要介護認定率や一人当たり介護費等の地域差の 見える化 とデータ分析を進めた上で 各保険者において給付費適正化の取組を進める 取組を更に進めるため データ分析の結果を活用した介護保険事業計画の PDCAサイクルの強化や 保険者機能の強化や市町村による給付の適正化に向けた取組へのインセンティブ付けなどに係る制度的枠組み等について関係審議会等において検討し 2016 年末までに結論を得て その結果に基づいて必要な措置を講ずる ( 法改正を要するものに係る2017 年通常国会への法案提出を含む ) 介護保険における利用者負担の在り方について 関係審議会等において検討し 2016 年末までに結論を得て その結果に基づいて必要な措置を講ずる ( 法改正を要するものに係る2017 年通常国会への法案提出を含む ) 上記の 経済 財政再生アクション プログラム を受け 厚生労働省社会保障審議会介護保険部会において 2016 年 2 月から同年 12 月まで 16 回にわたって審議が重ねられ 2016 年 12 月 9 日 同部会は 地域包括ケアシステム法に結びつく 介護保険制度の見直しに関する意見 を取りまとめた ( 図 1 参照 ) 図 1 介護保険制度の見直しに関する意見 ( 概要 )

319 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 出典 ) 社会保障審議会介護保険部会 ( 第 70 回 ) 平成 28 年 12 月 9 日資料 1 (2) 療養病床と介護療養病床の一体化療養病床と介護療養病床については 社会的入院という批判が強かったことから 2011 年度末をもって再編 廃止することが2006 年に決定していたものの 実態上の解消は進まず 2011 年には 介護療養病床の廃止期限の延長 (2017 年度末まで ) がされることになった 事態が動かないことを重く見た厚生労働省では 慢性期の医療 介護ニーズに対応するための療養病床の在り方等にかかる研究会を立ち上げ 同研究会は 2016 年 1 月 28 日に 療養病床の在り方等に関する研究会報告 をまとめた これを受け社会保障審議会に療養病床の在り方等に関する特別部会が設置され 同部会は2016 年 6 月から 12 月まで7 回にわたって審議を重ね 同年 12 月 20 日に 療養病床の在り方等に関する特別部会報告 をまとめた 同特別部会報告では 地域の実情に応じた柔軟性を確保した上で 必要な機能を維持 確保していくことが重要 とし 介護療養病床については 入院生活が長期にわたり 実質的な住居となっていることに鑑み 生活施設 として機能を備えた新たな施設類型への転換を進めることとした また 新たな施設では 日常的な医学管

320 - 自治総研通巻 475 号 2018 年 5 月号 - 理が必要な重介護者の受け入れの場とし 看取り ターミナル等の機能を付加するな どとした (3) 地域共生社会実現 = 地域福祉政府は 2016 年 6 月 2 日 ニッポン一億総活躍プラン を策定した これを受け 厚生労働省では 同年 7 月 15 日 厚生労働大臣を本部長とする 我が事 丸ごと 地域共生社会実現本部 を設置した これに引き続き厚生労働省は 10 月 4 日 ニッポン一億総活躍プラン に掲げられている地域共生社会の実現について 具体的な実例に基づく検討を行うため 地域における住民主体の課題解決力強化 相談支援体制の在り方に関する検討会 ( 地域力強化検討会 ) ( 座長 : 原田正樹日本福祉大学教授 ) を設置し 2016 年 10 月から12 月まで 4 回にわたって審議を重ね 地域課題の解決力を強化し 総合的相談体制を確立するための方策について検討した そして 地域力強化検討会は 12 月 26 日 中間取りまとめを行い そこで 次のような提言を行った ( 図 2も参照 ) 1. 住民に身近な圏域 で 我が事 丸ごと 他人事を 我が事 に変える働きかけをする機能が必要 1 複合課題丸ごと 世帯丸ごと とりあえず丸ごと 受け止める場を設けるべき 2 2. 市町村における包括的な相談支援体制 協働の中核を担う機能が必要 3 3. 地域福祉計画等法令上の取扱い 地域福祉計画の充実 1 2の 我が事 丸ごと の体制整備を記載 地域福祉の対象や考え方の進展を社会福祉法に反映すべき 守秘義務に伴う課題 法制的な対応を含め検討 4. 自治体等の役割 自治体組織も 福祉部局の横断的な体制 保健所等も含めた包括的な相談体制の構築を検討すべき

321 自治総研通巻475号 2018年5月号 図2 地域における住民主体の課題解決力強化 包括的な相談支援体制のイメージ 出典 厚生労働省 地域における住民主体の課題解決力強化 相談支援体制の在り方に関する検討会 地域力強化検討会 中間とりまとめの概要 従来の福祉の地平を超えた 次のステージへ 2. 地域包括ケアシステム法の概要 地域包括ケアシステム法は 高齢者の自立支援と要介護状態の重度化防止 地域共生社 会の実現を図るとともに 制度の持続可能性を確保することに配慮し サービスを必要と する者に必要なサービスが提供されるようにする というものである その内容は 大きく2つに区分され 第1が 地域包括ケアシステムの深化 推進 第2が 介護保険制度の持続可能性の確保 である (1) 地域包括ケアシステムの深化 推進 地域包括ケアシステムの深化 推進にむけ 改正法は ①自立支援 重度化防止に 向けた保険者機能の強化等の取組の推進 ②医療 介護の連携の推進等 ③地域共生 6 320

322 自治総研通巻475号 2018年5月号 社会の実現に向けた取組の推進等の3つの方策を用意し それぞれの内容に即して関 連法を改正している ① 自立支援 重度化防止に向けた保険者機能の強化等の取組の推進 介護保険法等 全市町村が保険者機能を発揮し 自立支援 重度化防止に向けて取り組む仕組み を制度化するものである 具体的には 以下について介護保険法に位置づけるとし た 国から提供されたデータに基づく課題分析を進め 取組内容 目標を介護保険事 業 支援 計画へ記載する 介護保険事業計画に位置づけられた目標の達成状況について 適切な指標による 実績評価 要介護状態の維持 改善度合い/地域ケア会議の開催状況等 を行い 公表及び報告を行う 財政的インセンティブの付与の規定を設ける ② 医療 介護の連携の推進等 介護保険法 医療法 今後 増加が見込まれる慢性期の医療 介護ニーズへの対応のため 日常的な 医学管理が必要な重介護者の受入れ や 看取り ターミナル 等の機能と 生 活施設 としての機能を兼ね備えた 新たな介護保険施設を創設する というもの である 新たな介護保険施設の概要は 次の通り 名 称 介護医療院とする ただし 病院又は診療所から新施設に転換した場 合には 転換前の病院又は診療所の名称を引き続き使用できる 機 能 長期療養のための医療 と 日常生活上の世話 介護 を一体的 に提供する このため 介護保険法上の介護保険施設だが 医療法上 は医療提供施設として法的に位置づける 開設主体 地方公共団体 医療法人 社会福祉法人 現行の介護療養病床の経過措置期間については 6年間延長する ③ 地域共生社会の実現に向けた取組の推進等 社会福祉法 介護保険法 障害者総 合支援法 児童福祉法 ア 我が事 丸ごと の地域作り 包括的な支援体制の整備 地域福祉の推進と地域福祉計画の策定については 2000年の社会福祉法の制定 法律名称の変更を含む改正 時に 新たに規定された 厚生労働省によれば これまで同計画の策定は自治事務とされ 2015年度末時点で全1,741市区町村の 7 321

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