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1 プライベートクラウド用サーバの構築 野崎公隆 * 雨宮尚範 * 千代谷一幸 * 早川正人 * 大下弘 * 若松進 * ( 松岡孝 ** ) * 工学系技術支援室情報通信技術系 ** 共通基盤技術支援室情報通信技術系 はじめに現在 サーバ運用形態はスタンドアローンからサーバ集約 ( 仮想サーバ ) へと移行しており 近い将来にはクラウドシステムの導入が予想される そのため 我々技術職員も 仮想サーバの構築やクラウドコンピュータメンテナンスへの対応力を準備しておく必要がある そこで 技術部で運用しているサーバを想定した 小規模なクラウドシステムの構築と運用の可能性について検討を行った 本研修では クラウドの現状把握とベースとなる仮想ホストサーバの構築 運用を行ったので 研修で得られた結果について 以下に記述する 1. ハードウェアの構築実験環境の構成を図 1-1 に示す NAS には技術支援経費で購入した Thecus N7700 PRO を使用した 仮想化サーバ用のコンピュータは PC パーツを組み合わせて用意した ( 表 1-1) パーツの内 HDD は昨年度の研修で購入してあったものを用いた 残りのパーツは研修費で購入した 組み立て作業はグループ分けをして行った 2 つのグループを作り それぞれ 1 台ずつコンピュータを組み立てた NIC ルータ パソコン ハブ 仮想化サーバ 1 ハブ 仮想化サーバ 2 NAS 図 1-1. 実験環境の構成

2 表 1-1. 仮想サーバ用コンピュータの構成 種類 詳細 数量 CPU AMD PhenomII (4Core, 2.5GHz) 1 Memory Transcend (PC , 8GB) 2 HDD Seagate (7200rpm, 1TB) 1 Power Unit Scythe (550watt) 1 Motherboard Biostar (Graphics, GbE, PCI-E) 1 2. ホスト OS のインストール本研修では 仮想化技術 ( ハイパーバイザー ) として KVM(Kernel-based Virtual Machine) を選択した そこで ホスト OS となる Linux ディストリビューションは Red Hat Enterprise Linux をベースとして高い互換性を持ち 無償で配布されている Scientific Linux( サイエンティフィック リナックス ) を選択し インストールを行った 1) インストールメディアの準備 Scientific Linux の公式ページ ( 等から Scientific Linux 6.1 の 64bit 版の ISO イメージをダウンロードし インストール用 DVD(2 枚 ) を作成した 2) サーバ 2 台 (SV1,SV2) へのインストール DVD から起動して OS のインストール作業を行った なお インストール時の各サーバの設定内容を表 2-1 に示す 表 2-1. サーバの設定内容ホスト名 SV1 SV2 NET IP アドレス NET /( ルート ):100GB パーティション構成 swap:16gb /guest: 残り全部 ( 最大容量まで使用 ) インストール Desktop を選択し ソフトウェアのカスタマイズパッケージの選択で仮想化関連のパッケージを選択する 3. 設定作業について 3-1. 仮想サーバ ( ローカルディスク ) 設定 仮想サーバ用の OS はホストとは違う CentOS5.6 を使用した また 後に行うライブマイグレーションの動作テストのために ホストとなるマシンのディスク上と iscsi 機能を有する NAS に対してインストールを行った まず 仮想マシンの管理ツールである仮想マシンマネージャーを起動した ( 図 3-1-1) この仮想マシンマネージャーには現在インストールされている仮想マシンが表示されており 稼働状況を確認することができる また 仮想マシンの起動 停止もここで行うことができる 新たに仮想マシンを追加するため 新しい仮想マシンの作成 ボタンを押して 新しい仮想マシン ウインドウを表示し 初期設定を行った

3 図 仮想マシンマネージャー図 ステップ1 図 ステップ2 最初の画面である図 では 仮想マシン名 ( ここでは centos-nz) を入力したあとインストール方法を選択した 今回は予めダウンロードしておいた ISO イメージを使用するため ローカルのインストールメディアを選択した 次の図 の画面では インストールメディアの場所として ISO イメージを使用 を選び 参照ボタンを押して ISO メディアの検索画面からイメージファイルを指定した 次に OS の種類を Linux バージョンを Red Hat Enterprise Linux 5.4 or later と選択した 図 ステップ3 図 ローカルへのインストール図 ボリューム選択画面図 の画面で仮想マシンに割り当てるメモリ容量 (512MB) と CPU の数 (1) を指定した 次の画面ではインストールするストレージを指定した ホストマシンのディスク上にインストールする場合は コンピュータのハードディスク上にディスクイメージを作成 を選択し ディスク容量を指定した ( 図 3-1-5) NAS へインストールする場合は 管理しているストレージか 他の既存のストレージを選択する を選択し 参照ボタンを押してストレージボリュームを指定した ストレージボリュームの検索または作成 画面 ( 図 3-1-6) で iscsi に対して新規ボリュームボタンを押して図 の作成画面に移り ボリュームの名前と容量 図 ストレージボリュームの追加図 NAS へのインストール図 ステップ5 ( ここでは 20GB) を指定した そして作成したボリュームを選択した ( 図 3-1-8) 図 の画面では接続するネットワークなどを指定した ネットワークにはブリッジ接続を利用するため ホストデバイス eth0 (Bridge 'br0') を選択した そして仮想化の種類として

4 kvm アーキテクチャーとして i686 を選択した ここで 完了 ボタンを押すとゲスト OS のインストールが始まった ( 図 ) インストールが終わると 仮想マシンマネージャーに新たに centos-nz が追加され ホストマシン上で実行中であることが確認できた ( 図 ) 図 CentOS5.6 のインストール 図 新規登録後の仮想マシンマネージャー 3-2. NAS の設定 NAS(Thecus N7700 PRO) の設定を行い iscsi ターゲットとして 5TB の領域を作成した 設定は NAS の機能である Web 管理インターフェースを用いて行う必要があった NAS と設定 用 PC をネットワークに接続し Web ブラウザから設定を行った ( 表 3-2-1) 表 NAS の設定詳細 設定項目 設定値 Network 1 IP Netmask RAID RAID Level RAID 6 RAID ID RAID Data Percentage 50% iscsi Volume Allocation 50% iscsi Target Volume Enable Target Name iscsi ネットワークデバイスの設定ネットワーク設定における混乱を避けるため 設定前に仮想化サーバのネットワークデバイスとして Intel NIC を eth0 オンボード NIC を eth1 に割り当てた ネットワークを使用するためには コンピュータを識別できるようにする必要がある また ゲストマシンをサーバとして利用するためには ネットワークブリッジでゲストマシンと外部コンピュータの相互アクセスを可能にする必要がある 我々はブリッジインターフェース br0 を作成し eth0 をブリッジに参加させた また ホスト名でコンピュータを判定できるようにした

5 設定は hosts およびネットワークスクリプト ifcfg-br0 ifcfg-eth0 ifcfg-eth1 を編集することで行った 以下に設定作業の詳細を示す 1) /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-br0 の作成 DEVICE=br0 ONBOOT=yes BOOTPROTO=none IPADDR= ( 仮想化サーバ 2 は ) NETMASK= GATEWAY= TYPE=Bridge 2) /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth0 への追記 BRIDGE=br0 3) /etc/sysconfig/network-scripts/ifcfg-eth1 への追記 ( 同名の設定項目は置き換えた ) BOOTPROTO=none IPADDR= ( 仮想化サーバ 2 は ) NETMASK= GATEWAY= ) /etc/hosts への追記 iscsi sv sv sv sv iscsi デバイスのマウント iscsi デバイスを Scientific Linux で利用できるようにするための手順を記す 1) iscsi イニシエータパッケージのインストール # yum install iscsi-initiator-utils 2) サービスの起動 # service iscsi start 3) 自動起動の設定 # chkconfig iscsid on # chkconfig iscsi on 4) iscsi ターゲットへの接続今回の iscsi ターゲットの IP は とする # iscsiadm --mode discovery --type sendtargets --portal :3260,1 iqn com.openfiler:tsn.b5ffc134d692 5) iscsi ターゲットへの接続確認 # iscsiadm -m node :3260,1 iqn com.openfiler:tsn.b5ffc134d692

6 6) ノードへの接続 # iscsiadm --mode node --targetname iqn com.openfiler:tsn.b5ffc134d692 --login 7) fdisk でデバイスとしての認識を確認 # fdisk -l 8) パーティションの作成 (/dev/sda を使用 ) # parted /dev/sda (parted) mklabel gpt (parted) mkpart パーティションの名前? [ ]? ファイルシステムの種類? [ext2]? ext3 (parted) mkpartfs パーティションの名前? [ ]? ファイルシステムの種類? [ext2]? ext3 (parted) quit 9) ファイルシステムの作成この作業はファイルシステムの容量により相当な時間を要する場合がある # mkfs.ext3 /dev/sda1 10) マウントと確認 # mkdir /iscsi1 # mount -t ext3 /dev/sda1 /iscsi1 # df h /dev/sda1 Filesystem サイズ使用残り使用 % マウント位置 /dev/sda1 88G 184M 83G 1% /iscsi1 11) 再起動後に自動的にマウントされるよう fstab を編集する ( 末尾に一行追加 ) # tail -1 /etc/fstab /dev/sda1 /iscsi1 ext3 _netdev ライブマイグレーションライブマイグレーションとは稼働中の仮想マシンを停止させずに別のホストマシンに移動する技術のことである この技術により ホストマシンを停止させる計画メンテナンス時においても あらかじめ仮想マシンを別のホストマシンに移行させておくことで 仮想マシンで提供するサービスの無停止でのメンテナンス実施が可能になる 4-1. KVM を用いたライブマイグレーションの方法ライブマイグレーションを行うためには ネットワーク共有ストレージ (iscsi nfs 等 ) を使うのが一般的である 今回は iscsi 領域にゲストサーバを構築した 1) まずネットワーク共有ストレージに iscsi ターゲットを構築し 両 KVM ホストを iscsi イニシエータにして 両ホストで同じ場所にマウントした そして そこへ仮想マシンのイメージを格納した

7 図 マイグレーション前のゲスト OS 図 マイグレーションするゲスト OS の選択 図 マイグレーションの条件を設定して実行 図 マイグレーション実行中 図 マイグレーション実行中の管理画面 図 マイグレーション終了後

8 2) 以上の下準備を行った後 片方の KVM ホストで仮想マシンを起動させた 後は以下のように仮想マネージャでもう片方の KVM ホストに仮想マシンをライブマイグレーションできる なおマイグレーション先の KVM ホストを IP アドレスで指定したとしても 名前解決ができないとマイグレーションは何故か失敗するので お互いの KVM ホストで名前解決ができるようにする必要があった sv2 で centos-waka を動作させ 仮想マシンマネージャでゲストを右クリックしてマイグレーションを選択した その後でマイグレーション先のホストを選択して実行した マイグレーションに要する時間は アプリケーションが動作している状態で約 50 秒程度 誰もログインしていない場合は 36 秒程度であった 4-2. ライブマイグレーションの動作検証ライブマイグレーションの動作検証を以下の方法で行った ゲスト OS に DVD の ISO ファイルを置き それを windows 上の ftp クライアントで受信した ファイルサイズが約 4GB であるため 転送に 6 分程度を要した データ転送中にライブマイグレーションを行って正常にファイルが受け取れるかどうかを確認した その結果 受信ファイルは元のものと一致した したがって ライブマイグレーション中もとぎれることなくサービスが行えることが証明された ただ ライブマイグレーション中の転送速度は 数 % 程度に減少して応答が極端に悪くなった そのため ライブマイグレーションは負荷が少ないときに行う必要がある また ライブマイグレーションに要する時間をゲスト OS のメモリ割り当てを変更して測定した その結果 メモリ割り当てには関係なく実際に使用されているメモリ量に依存することがわかった 4-3. ストレージ ライブマイグレーション研修の最終時に 共有ストレージを用いないライブマイグレーションが可能なことがわかった そこで動作検証を行い 実際に動作することを確認した 以下が参考にした Web サイトである 5. 得られた成果と今後の課題無償版のソフトを使用して専攻程度の規模に対応できるサーバを構築できた また 仮想化サーバを実際に動かして動作確認した さらに ライブマイグレーションができることを確認した 今後の課題は 実際のサーバで運用を行い どの程度安定して使用できるかを調べることである また ひな形のゲストマシンを作製して それを元に効率的にホストを立ち上げる方法を確立する必要がある そして最終的には IaaS と呼ばれるプライベート クラウド環境を構築することが今後の課題である