Microsoft Word - 68（02）特集-中村大井.doc

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1 特集 : 意匠権商標権 UDC 02: : 商標調査と商標データベース中村哲 *, 大井麻美 * 日本国内の商標については様々な書籍等も出版され, また特許庁やその関連組織, または弁理士事務所, 地方自治体などからも多くの情報が発信されている web 検索などでも比較的容易に情報を得ることができる対して海外商標調査や海外商標及びデータベースについて必要な情報を収集することは, それほど容易とはいえない本稿では当社が多く扱う海外商標調査の概要について説明し, その中でどのように海外庁商標データベースが使われ, 何に留意すべきかを簡単に述べたいまた重要な海外庁商標データベース, 特筆すべき機能, 注意すべき点などについても触れるキーワード : 商標調査, 商標検索, 商標データベース 1. はじめに当社, 株式会社マークアイは日本企業向けにネーミングの開発から海外展開のための商標関連サービス, 管理システムの提供と運用, 権利侵害監視まで商標を中心としたサービスを提供しており, そのなかで筆者らは商標調査に関連する部門に従事している海外商標調査のご依頼を頂く際, 最近では依頼者が事前にある程度まで商標検索を行い, 特定の商標についての評価と見解を重点的に入手したいとリクエストされることも増えてきたこれは商標データベースを運用する海外庁が増加したことに加え, 複数国商標を一括して検索できる WIPO(World Intellectual Property Organization) の運用する Global Brand Database 1) や EUIPO(European Union Intellectual Property Office ) の運用する TMview 2) ASEAN TMview 3) によるところも大きい国内商標調査, 及び国内商標の検索が可能な J-PlatPat 4) ( 特許情報プラットフォーム ) についての解説や情報は, 書籍や特許庁 web サイト等, 充実していることから, 本稿では当社が多く扱う海外商標調査と海外庁商標データベースについて述べていきたい 2. 商標調査 2.1 先行商標類似調査一般的に商標調査という場合先行商標類似調査を指す当社での先行商標類似調査は概ね下図フローで実施している ( 図 1) 調査に先立って調査対象の国や商品役務, 商標の態様, 商標展開の特性 ( 新商標, 既存商標 ) やロゴ案の有無等, * なかむらてつ, おおいあさみ株式会社マークアイ商標調査業務部東京都港区六本木泉ガーデンタワー 33F sh@mark-i.jp ( 原稿受領 ) 図 1 先行商標類似調査フロー調査商標を取巻く状況を依頼者へ確認する依頼者の関連商標の状況や競合他社製品商標の指定商品役務の確認には J-PlatPat や海外庁商標データベースを活用している確認した内容を現地への依頼書にまとめ, 現地代理人は依頼書に基づき調査を実施する特許庁 / 商標局へ調査を依頼できる一部の国を除いては, 有償商標データベースと海外庁データベースを併用して商標検索を行う検索結果の商標と調査商標の類似性を検討し, 登録可能性と使用時リスクについて定量的評価と見解を調査報告書にまとめる当社で現地代理人の調査報告書を確認する際, 引例商標の書誌的事項の確認に海外庁商標データベースを活用しているまた特に図形商標調査では Global Brand Database のイメージ検索を行い, 必要に応じ現地代理人へフィードバックする試みも行っている先行商標類似調査は, 商標の出願登録へ進むか否かの最終判断材料であるため, 商標制度, 審査実務などの法的側面だけでなく, 対象国の市場や流通経路, 需要者を熟知し 65 情報の科学と技術 68 巻 2 号,65~70(2018)

2 た現地代理人による評価と見解先行商標に対するリスク低減策や克服方法の提案も必要となる 2.2 商標スクリーニング調査商標スクリーニング調査は複数の商標候補案からほぼ同一の商標の有無により候補案を取捨選択する目的で行われる無料で複数国の広い商品役務区分を一括検索することが可能な統合型海外庁商標データベース Global Brand Database や TMview は有効な調査ツールであるどちらのデータベースも対応国が順次追加されておりそのビジネス面での重要性から中国の追加が待たれる商標スクリーニング調査での留意点担当者が自分で商標データベースを検索し検索結果で候補案の取捨判断をするにあたり選択を誤らないよう考慮すべき国地域について記載する (1) アメリカ合衆国アメリカ合衆国連邦商標は USPTO United States Patent and Trademark Office の運用する TESS5) Trademark Electronic Search System 又は WIPO が運用する Global Brand Database で連邦商標の検索ができるが各州の商標法で保護される商標権や使用によって生じるコモンロー上の権利としての商標権は調査できないためその後実施する先行商標類似調査で使用登録が困難と評価される可能性があることは認識する必要があるまた識別力が弱い商標を補助登録簿 Supplemental Register に登録する制度があるが Global Brand Database の調査結果にはこの登録簿 Register の項目が無い図 2 商標案の選別を決定付けるようなアメリカの商標を発見した場合は念のため Global Brand Database の Serial number でリンクする TESS の該当商標情報で登録簿が PRINCIPAL 主登録簿か SUPPLEMENTAL 補助登録簿かを確認する必要があ図 3 補助登録商標例 TESS ばれる国が多いため同一商標でも異議を申し立てられなければ登録することができる商標案の選別を決定付けるような EU 等の無審査国の商標が発見された場合判断は難しいが権利者について確認しておく必要があるまた日本やアメリカ中国といった当局が先行商標との類似を審査する審査国での商標スクリーニング結果とは重みづけを変えるなどの工夫も必要である (3) 中国日本と同様に商品役務に類似群サブクラスコードが付けられているが日本とは異なり類似群の中がさらに段で分類され異なる段の商品役務は類似しない場合がある例えばサブクラス 0902 は内部が 6 段に分類されている 6) 中国商標局のデータベース中国商標網 7) での検索結果はサブクラスまでの表示であるためこの結果に基づいて候補案を取捨選択すると実際にはリスクの低い候補案まで除外してしまう可能性があるる図 3 (2) EU や欧州諸国 EU をはじめとする欧州諸国は先行商標との類似について当局は審査しない無審査や異議待ち審査と呼図 4 中国商標局のデータベース検索結果図 2 補助登録商標例 Global Brand Database 66

2.3 保有商標調査特定の出願人権利者名で出願登録されている商標を抽成にかかる規模だけでなく定期的な操作と更新も必要となりなかなか一企業では難しい特許庁やジェトロ日本出する調査である他者の商標保有状況を調べるだけでなく関連会社や自社権利の確認のために行うこともある貿易振興機構が各国の商標検索マニュアルを作成し情報発信しているが予告無く機能追加や改変される個別国

の検索が可能になっているかし殆どの海外庁商標データベースで検索結果の精度は担保されていない旨の注意がされていることは認識しておく検索システムはサーチ条件商標テキスト権利者代理人番号登録出願権利存続等の期日ニース分必要がある類等を複数指定して抽出抽出結果をフィルタ条件国図形ステータス権利者出願権利存続年ニース分 3 海外庁商標データベースと機能類等他

3 2.3 保有商標調査特定の出願人権利者名で出願登録されている商標を抽成にかかる規模だけでなく定期的な操作と更新も必要となりなかなか一企業では難しい特許庁やジェトロ日本出する調査である他者の商標保有状況を調べるだけでなく関連会社や自社権利の確認のために行うこともある貿易振興機構が各国の商標検索マニュアルを作成し情報発信しているが予告無く機能追加や改変される個別国担当者自身による商標データベース検索も可能だが出願人権利者名の表記の揺れや旧社名で登録現地語表記をのデータベースにタイムリーに対応し続けることは非常に難しそうであるデータベースに格納する段階での英訳不備等による抽出漏れが無いよう複数のスペルで広めに検索した後不要デー 3.2 代表的な海外庁商標データベースの概要と特徴タを削除するといった考慮が必要となる Global Brand Database 2011 年 03 月に国際登録商標リスボン協定に基づく原 2.4 ステータス調査特定商標の状態ステータス確認であり出願番号や産地名称パリ条約 6 条の 3 に基づく国の紋章等について WIPO がサービスを開始した Global Brand Database で登録番号で検索する検索表記や言語の問題は無いので担当者自身による商標データベース検索も可能であるしは 2017 年 10 月のフランスの追加で 36 ヶ国の国内商標の検索が可能になっているかし殆どの海外庁商標データベースで検索結果の精度は担保されていない旨の注意がされていることは認識しておく検索システムはサーチ条件商標テキスト権利者代理人番号登録出願権利存続等の期日ニース分必要がある類等を複数指定して抽出抽出結果をフィルタ条件国図形ステータス権利者出願権利存続年ニース分 3 海外庁商標データベースと機能類等他で絞り込むことができる図海外庁商標データベースへのアクセス 2014 年に発生した中国商標局データベースの接続トラブルや停止ではアクセス方法や代替手段について多くの問合せを受けたこのことを契機に海外庁商標データベースの情報収集と情報発信の必要性を認識し 2015 年より当社 web サイト内に各国商標データベース一覧図 5 の掲載を行っている2017 年 11 月現在 95 ヶ国を掲載している図 6 Global Brand Database 初期表示 (1) 充実した文字列検索ロジック商標の文字要素を検索するには Text 欄に文字列を入力する日本語文字の入力も可能下記の検索条件の指定ができる図 7 図 5 各国商標データベース一覧図 7 Global Brand Database TEXT 欄掲載している全てのデータベースに常にアクセスできることを目標に情報収集と更新を行っている各データベースの機能や操作説明も欲しいとの要望も受けるが作 Normal 67 入力された文字列と同一の商標を検索する完全一致で

はなく他の文字列と空白や記号及び異なる文字種で接続された商標は検索される一般的な演算子 / /AND/OR/ 込みは緩く表示件数が多いこと等問題に感じるところはあるが今後に期待したいまた本来の用途では無いが調 NOT やを組み合わせた指定も可能 "ABC DEF" 5 の指定で ABC と DEF を含み両語の間は 5 文字以下空査対象の図形コードの調査ツールとしても使用できる

Database の Help に Using the Phonetic option lets you 言語で日本語を選択すると操作画面だけでなくヘルプ等も日本語表示される初期表示は検索項目欄が 1 つそこ search for terms that sound like the term you enter. e.g. Searching for coco will match 'koko', 'cocoa', 'choko' and に商標文字列出願番号登録番号のいずれかを入力する形式になっている図 9 many others.

4 はなく他の文字列と空白や記号及び異なる文字種で接続された商標は検索される一般的な演算子 / /AND/OR/ 込みは緩く表示件数が多いこと等問題に感じるところはあるが今後に期待したいまた本来の用途では無いが調 NOT やを組み合わせた指定も可能 "ABC DEF" 5 の指定で ABC と DEF を含み両語の間は 5 文字以下空査対象の図形コードの調査ツールとしても使用できるこれらの Global Brand Database の特徴的な機能は国白含むといった指定も可能複数文字列を入力した場合は or 検索になり and 検索を行うには一旦 Search ボタン際登録商標検索システムである Madrid Monitor でも採用されているを押した後に次の文字列を入力する Fuzzy TMview Global Brand Database より約 1 年早い 2010 年 04 月に入力された文字列と近似する文字列を持つ商標を検索する例えば INFOSTA の入力で INFOSTAY や INFOSPA 当時の OHIM 欧州共同体商標意匠庁現在の EUIPO がサービスを開始した TMview は 2017 年 10 月のサンマも抽出されたHolder 出願人/権利者や Representative 代理人の検索にもこの指定が可能近似度は固定で指定リノの追加で 55 ヶ国の各国商標と国際登録商標の検索が可能になっているまた EU-ASEAN Project によるできない Phonetic ASEAN TMview も基本的に同様の操作で検索が可能である入力された文字列の発音で検索するGlobal Brand Database の Help に Using the Phonetic option lets you 言語で日本語を選択すると操作画面だけでなくヘルプ等も日本語表示される初期表示は検索項目欄が 1 つそこ search for terms that sound like the term you enter. e.g. Searching for coco will match 'koko', 'cocoa', 'choko' and に商標文字列出願番号登録番号のいずれかを入力する形式になっている図 9 many others. 1) coco の検索で 'koko', 'cocoa', 'choko' 他多数がヒットするとあるが発音を算出するロジックの説明は無い片仮名ココで COCO KOKO 等が検索できたが漢字此処では検索できなかった表音文字についてのみの機能である可能性がある Stemming 指定された語の語幹を検出し派生語も抽出する例えば DATABASE の入力で DATABASED や DATABASICS も抽出された (2) イメージデータでの図形検索アップロードしたイメージに類似する図形商標を抽出する機能ウィーン図形コードを採用していない国について図 9 TMview 初期表示も図形検索できるイメージの何に着目あるいは無視して抽出するかの指定が可能図 8 カメラのアイコンをクリックすると図形商標検索のための画像をアップロードする欄が開く現時点はβ版で EUTM イギリスフランスのみが画像検索可能である検索結果からの筆者の印象ではあるが Global Brand Database のイメージ検索より進化していると感じる図高度な検索をクリックすると細かい検索条件の入力画面が表示されるここではイメージによる検索はできない図図 8 Global Brand Database イメージ検索 Shape 色を無視 Color 色とその分布を見る Texture 色と線の分布を無視線の特徴を重視 Composite 色と線を同時に見る検索する図形による検索精度に差も感じられ全般に絞 68 図 10 TMview 画像アップロード画面

3 中国商標網ビジネス的にも商標的にも日本企業にとって重要な中国商標データベースについて少しだけ触れたい操作説明等は特許庁利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法について 8) や利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法 3139) が具体的で詳細である日本の J-PlatPat と同様に類似検索と総合検索を使い検索することになる図 13

5 図 11 TMview 画像検索結果面図 13 中国商標網の初期表示 Brand Database 等での検索が可能になることを期待したい 4 おわりに商標調査と商標データベースについて商標関連サービス企業の商標調査業務担当者としての立場から述べてきたWIPO や EUIPO といった国際組織や国際的な協調による商標データの統合と今後の AI 等の活用による検索技術の進化により精度の高い先行商標チェックが誰でも簡単にできるようになりネーミングやデザイン等の時点図 12 TMview 高度な検索でも適宜商標のチェックがなされ商標調査出願登録へと業務が円滑に流れるようになることを期待したい 12 Global Brand Database と同様に検索結果をフィルタで註参考文献絞り込めるが検索結果の表示後にフィルタの条件を指定する形式である 1) (1) 充分な文字列検索ロジック文字列検索ロジックは Global Brand Database と同様 2) Fuzzy 検索が可能で抽出対象とする類似度をパーセント指定できることが特徴 3) (2) ステータス監視機能異議申立て期間内商標という条件設定が可能ユーザー登録することで検索結果の商標一覧を保存しそれらのステータス等に更新があった場合登録したユーザーのメールアドレスに alerts メールが送られる機能がある中国商標網ビジネス的にも商標的にも日本企業にとって重要な中国商標データベースについて少しだけ触れたい操作説明等は特許庁利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法について 8) や利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法 3139) が具体的で詳細である日本の J-PlatPat と同様に類似検索と総合検索を使い検索することになる図 13 機能面での要望はあるが最大の問題はシステムの不安 4) 5) 6) 7) 8) 9) 定さであろう中国商標の件数が多いこともあるが接続できず検索を断念するということもある早期に Global 69 Global Brand Database. World Intellectual Property Organization. (accessed ) TMview. European Union Intellectual Property Office. (accessed ) ASEAN TMview. European Union Intellectual Property Office. (accessed ) J-PlatPat. 特許庁独立行政法人工業所有権情報研修館 (参照 ) TESS. United States Patent and Trademark Office. (accessed ) 岩井智子李菲菲中国商標に関する商品及び役務の類似基準日本語英語訳付及びその解説国際分類第 11 版対応第 3 版発明推進協会 p 中国商標網中华人民共和国国家工商行政管理总局商標局 (accessed ) 利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法について特許庁 an_service_houkoku.htm, (参照 ) 利用目的に応じた海外特許情報サービスのアクセス方法 313 特許庁 ai_jouhou_access/313.pdf, (参照 )

6 Special Feature: Intellectual Property Rights-Design and Trademark. Trademark research and trademark database. Tetsu Nakamura, Asami Oi (Trademark Search Department Mark-i Inc., 33F Izumi Garden Tower, Roppongi, Minato-ku, Tokyo , JAPAN) Abstract: For Japanese trademarks, various books have been published, and much information is available from Japan Patent Office and related organizations, IP law firms, local governments, etc. Also, it is relatively easy to find information via online searches. On the other hand, it is not so easy to gather necessary information on the overseas trademark searches, trademarks applied / registered abroad and overseas databases offered by foreign trademark offices. This article will explain the overview of the overseas trademark searches, and then briefly describe how the overseas databases are utilized during these searches and the things one should take note of. The article will also refer to important overseas databases, their noteworthy functions, points to watch out for, etc. Keywords: Trademark / Trademark search / Trademark database 70 情報の科学と技術 68 巻 2 号 (2018)

米国における商標を対象にした出願前調査 Q 自社製品 ( ドローン - 無人飛行機 ) の商標権を米国で取得したい出願する前にやっておいた方が良いことはあるか? 1) 調査ツールの選択米国における連邦登録商標は米国での直接出願によるものと国際登録出願によるものがあるこれら

6.6.2.13 米国における商標を対象にした出願前調査 Q 自社製品 ( ドローン - 無人飛行機 ) の商標権を米国で取得したい出願する前にやっておいた方が良いことはあるか? 1) 調査ツールの選択米国における連邦登録商標は米国での直接出願によるものと国際登録出願によるものがあるこれらは米国特許商標庁 ( 以下 USPTO) が提供するデータベースの Trademark Electronic