IMS付加サービス提供基盤

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1 Service Delivery Platform Implementing IMS あらまし キャリアビジネスの中心は, 音声系の電話からメールやWebを使ったパケット系のに移行してきた また, ネットワークの高速化によって, さらに高度なも提供できるようになりつつある このような背景からを容易に創造できる仕組みが求められている IMS(IP Multimedia Subsystem) は, とアプリケーションが分離されており, 音声とパケットのを融合できるアーキテクチャとして注目されている しかし, 標準勧告に従ったアーキテクチャで構成してもビジネスを行うための機能の不足や, 提供者との接続性に課題がある 本稿では,IMSの課題をネットワークアーキテクチャの観点から紹介し, これらの課題を解決するための基盤を提案する Abstract The focus of telecommunication carrier business has shifted from voice telephony services to packet-based data services for and Web browsing, and the provision of advanced services has become possible as a result of increases in network speed; consequently, there is a need for architectural frameworks that facilitate the creation of new services. One such framework is IMS (IP Multimedia Subsystem). Since IMS separates call control networks and applications, it is attractive as an architecture that enables the convergence of voice and packet services. However, even when an architecture is designed in accordance with industry standards and recommendations, there are still problems such as insufficient functionality for business operations and poor connectivity with service providers. In this paper, we introduce problems related to IMS from the network architecture viewpoint and we propose a service platform that solves these problems. 櫻井健一 ( さくらいけんいち ) ソフトウェア開発センター所属現在,IMS基盤の企画業務に従事 丹下聡一郎 ( たんげそういちろう ) ソフトウェア開発センター所属現在, 基盤ソフトウェアの開発業務に従事 関根久幸 ( せきねひさゆき ) ビジネス推進統括部所属現在, プラットフォームの企画 開発業務に従事 FUJITSU. 60, 4, p (07, 2009) 347

2 まえがき IMS ( IP Multimedia Subsystem ) は,SIP (Session Initiation Protocol) をベースとして多くのを実現可能にし, 音声とパケットを統合させるソリューションとして通信キャリアで導入されている アクセス網の高速化によりマルチメディア 大容量コンテンツの提供といった付加が固定 モバイルともに急速に拡大していくことが予測される しかし, 国内においてはIMS を活用してビジネスを成功に導く ( 付加 ) の出現が待たれて久しいが, なかなか出現してこない こうした状況を踏まえ通信キャリアは,IMSに将来にわたって継続した付加の迅速な提供と, 提供に際してのTCO(Total Cost of Ownership) の削減を期待している 本稿では, ますます期待される付加について, 市場動向などからモデルを考察し, 付加実現のために必要となる基盤の機能モデル アーキテクチャおよび今後の課題を紹介する 市場動向固定通信は移動通信に比べて通信速度や信頼性, 価格面で優位であった しかし, 近年, 国内移動通信網はほぼ3Gに移行しており, モバイルWiMAX ( Worldwide Interoperability for Microwave Access) やLTE(Long Term Evolution) といった技術も導入され, 通信速度は固定通信と移動通信とで差異は少なくなる さらに, 移動通信料金は, 定額制にシフトしてきており, 価格面においても差異は少なくなってきている このような環境の変化から, 固定通信でしか受けることができなかったリッチコンテンツを利用したなども移動通信で受けられるようになる 提供者にとっては, 固定と移動の差異がなくなることは, ビジネスチャンスが増える意味ではメリットがある しかし, 固定や移動のキャリアからしてみれば, 今まで競合していなかった, 固定 移動キャリア同士が競合することになり, 激しい競争を招くことになる したがって, キャリアや提供者にとっては魅力的な付加をいかに早く開発し, 安く提供できるかが重要になってき ている 一方, キャリアネットワークのオープン化の動きも出てきた キャリアにとっては, 加入者からの通信料収入増加が見込めなくなり, キャリアネットワークを利用してを提供する事業者からの収入を得るビジネススキームである キャリアネットワークオープン化の動きは, 総務省発表の MVNO(Mobile Virtual Network Operator) にかかわるガイドライン (1) にも説明されており, 国レベルで推し進められている キャリアは今後提供者にいかにネットワークを利用してもらうかが重要になってきている ネットワークアーキテクチャ提供者がキャリアネットワークを利用してを開発するためには, キャリアネットワークとを分離しておく必要がある キャリアネットワークのIP 化が進んだ現在, ネットワークとを分離し, 音声とデータを一元的に扱うための規格標準として,3GPP ( 3 rd Generation Partnership Project) と3GPP2が標準化を進めているIMSアーキテクチャを固定通信キャリア, 移動通信キャリアが導入し始めている IMSアーキテクチャの概要を図 -1に示す CSCF (Call Session Control Function) を中心とした呼制御を行うネットワークと, 群である (Application Server) が分離されており, 主にSIP を用いて実現されている S-CSCF(Serving-Call Session Control Function) と 間もSIPを用いてインタフェースされ, この部分のインタフェースは ISC(IMS Service Control) と呼ばれている (2) しかし,ISCに準拠したを導入してを行うことを考えた場合でも, 保守者がHSS (Home Subscriber Server) に格納された加入者の契約情報であるiFC(Initial Filter Criteria) を設定してS-CSCFがにSIPメソッドを転送すれば, が開始できるかというとそうもいかないことが多い 例えば,IM(Instant Message) やプレゼンス, 会議などのを行う市販 製品を設置し, キャリアのS-CSCFにISCで接続しても運用を開始できないことが多い 同じISC を実装していても, ベンダ間でのプロトコル差異による接続性の問題, 機器故障や負荷分散への対応, 348 FUJITSU. 60, 4, (07, 2009)

3 SCIM 付加提供基盤 ISC MRFC アクセス NW P-CSCF S-CSCF HSS MRFP SLF SGW アクセス NW P-CSCF I-CSCF BGCF MGCF PSTN MGW 図 -1 IMS アーキテクチャ概要 Fig.1-Outline of IMS architecture. 課金やSLA(Service Level Agreement) の保証への対応などが必要である 3GPPではS-CSCFと 間にSCIM ( Service Capability Interaction Manager) を定義し,ISCの補完を行うようにしてあいまいいる ただし, その定義はまだ曖昧であるため, SCIMを提供するベンダによって, 解釈に差異が見られる このような背景から,SCIMの位置しているS- CSCFととの間に, 運用を開始するための機能が求められる ここを付加提供基盤と位置付けるネットワークアーキテクチャを採ることで, ネットワークのオープン化への対応や, スピード感のある差別化提供につながる 付加提供基盤アーキテクチャ付加提供基盤は,S-CSCFとの接続を補完し運用を開始するための機能を提供するものと説明してきた ここでは, 付加提供基盤のアーキテクチャについて説明する 付加提供基盤アーキテクチャの概要を図 -2に示す 付加提供基盤は, 付加を実行するための機能を提供する, ネットワーク仮想化 仮想化 オーケストレーションと, 付加の実行を制御するポリシー管理から構成される (1) ネットワーク仮想化提供者がネットワークを活用する際, ネットワークを仮想化することが有効である 魅力 的な付加を提供するためには,SIPを用いた接続,HSSに保存されている加入者情報の参照, それらの応用としてプレゼンスやIMを提供すると,HTTP ( Hyper Text Transfer Protocol) を用いたWebを提供するインターネットなどの非 IMSネットワークの二つのネットワークと,との接続が必要である ネットワーク仮想化層は, これらのネットワークと, とをシームレスに接続する機能を提供する (2) 仮想化付加を早く提供するためには,を仮想化することが有効である 付加を早く提供するためには,の追加がネットワークと独立して実施できることが必要である 仮想化層は, インテリジェンスロギング ルーティング アクセス制御機能を持ち, ネットワークから独立した の追加機能を提供する (3) オーケストレーション新たな付加を早く 安く提供するためにオーケストレーションが必要である オーケストレーション層は, 複数のアプリケーションから共通的に ( 再 ) 利用可能な部品と, 部品の組合せを定義した基本シナリオと, それを実行する実行環境から構成される (4) ポリシー管理付加提供基盤は柔軟性を高めるために, システムポリシー ポリシー 加入者ポリシーの3 段階のポリシー管理機能から構成される FUJITSU. 60, 4, (07, 2009) 349

4 付加提供基盤オーケストレーション部品基本シナリオ実行環境システム単位 仮想化 ルーティング アクセス制御 インテリジェンスロギング 単位 加入者単位 ポリシー管理 システムポリシー ポリシー 加入者ポリシー ネットワーク仮想化 SIP Diameter HTTP ISC HSS IF (S-CSCF/HSS) 非 IMS ネットワーク (Web/SOAP) 図 -2 付加提供基盤アーキテクチャ概要 Fig.2-Outline of value added service platform architecture. システムポリシー管理は, 付加提供基盤として定義するポリシーの管理機能を提供する 間の競合制御が代表的な例である ポリシー管理は,ごとに定義するポリシーの管理機能を提供する のフロー制御が代表的な例である 加入者ポリシー管理は, 加入者ごとに定義するポリシー管理機能を提供する インテリジェンスロギングが代表的な例である 付加提供基盤の機能付加提供基盤アーキテクチャは, ネットワーク仮想化 仮想化 オーケストレーション ポリシー管理から構成されると説明してきた ここでは, 付加提供基盤が備える機能について説明する 付加提供基盤が提供する機能の例を図 -3に示す インテリジェンスロギングネットワークからの情報フローの受信ポイントであり, フロー識別機能とリアルタイムデータストア機能を提供する フロー識別部は, レイヤ7の情報の解析機能を持ち, アクセス制御およびリアルタイムデータストア部に情報フロー解析結果を転送する リアルタイムデータストア部は, 加入者ポリシーに従い必要なログデータを格納する ロギングされたデータは, 課金や統計データなどの従来の利用用途に加え, ライフログ, データマイニング, リコメンデーションといったより価値の高いへの利 活用が期待されている アクセス制御アクセス制御は, 加入者とのSLA 契約に基づいた同時接続数制限, プリペイド課金において限度額を超えた場合のアクセス規制, 複数を契約している場合の競合制御機能などを提供する この中でアクセス制御で提供する競合制御は, 同時起動競合チェックと起動順チェックの二つの機能を持っており, システムポリシーに従って動作する SIPベースの間競合制御だけではなく,HTTPベースの, およびそれら相互の競合制御が必要である 電話接続だけではなく, チャット, メール, ゲーム, 映像配信, 映像共有などの情報系のとの競合制御を提供することで, 統合された新たなユーザエクスペリエンスを創生することが期待できる ルーティングルーティングは, ネットワークからのリクエストを, リクエスト単位でどのに振り分けるかを決定する機能を提供する 静的情報に基づく振分けを行うルーティング機能と動的情報に基づく振分けを行うフロー制御機能を提供する (1) ルーティング ポリシーに基づき振分け先 を決定する S-CSCFはiFCによる転送先のの決定を行うが, 転送するのアドレスはiFCに静的に設定されている 実際のシステム構築, 運用に際して,はトラフィック増に応じて増設されたり, スモールス 350 FUJITSU. 60, 4, (07, 2009)

5 付加提供基盤 ポリシールーティングフロー制御ルーティング システムポリシー アクセス制御 競合制御 プロトコル変換 シナリオ Java 実行環境 オーケストレーション インテリジェンスロギング フロー識別 リアルタイムデータストア 加入者ポリシー ログ (S-CSCF) 非 IMS ネットワーク (Web/SOAP) 図 -3 付加提供基盤が提供する機能 Fig.3-Functions of value added service platform. タートしたりする場合, すでにあるに新規を実装してを提供し, トラフィック増加に応じてほかのに実装, もしくは新規のを増設してを配置するということが考えられる ルーティングは, このような柔軟な の配置を可能とし,S-CSCFからの配備を隠ぺいすることができ,の独立した追加を実現可能である (2) フロー制御 ポリシーで決められた負荷分散論理 ( ラウンドロビンなど ) と現状のノード情報 (CPU 使用率, アクセス数, 稼働状況など ) に基づき振分け先 を決定する フロー制御はの安定運用をサポート可能であり, 開発を容易にし, 付加を早く提供することが可能になる オーケストレーションオーケストレーションは部品を連携するだけではなく, シナリオをJavaベースで記述することが可能であり, タイミング制御や条件分岐, 異常処理まで行うことで, 様々な仕様要件に対応することが可能である 今後の課題 IMSでは,とネットワーク間の標準プロトコルとしてISC(SIP) を提唱しているが, 制御上の制限があり拡張性が十分ではない 電話交換機と制御局の間で信号をやり取りする共通線信 号網の標準プロトコルであるINAP(Intelligent Network Application Protocol) 相当のプロトコルをISCに適用することが今後検討されると考えており, 順次付加提供基盤としても対応していく必要がある むすび本稿では, ネットワークの付加価値を高め, 新しいを創出できると期待されているIMS 付加提供基盤開発への取組みを紹介した この IMS 付加提供基盤は, 通信事業者の新たなビジネスの創出, また通信事業者間が連携 協業によって, より使いやすい新を創出でき, さらに提供コストの低減 スピードアップなど, 多くの可能性を秘めている これらの可能性を実現するため, 継続して製品開発に取り組み, 実フィールドにおける付加提供基盤の価値を見える化し, ソリューションビジネスを拡大していく予定である 参考文献 (1) 総務省総合通信基盤局 :MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン ( 再改定 )( 平成 20 年 5 月 ). (2) ゴンザロカマリロほか :IMS 標準テキスト (NGN のコア技術 ). リックテレコム,2006. FUJITSU. 60, 4, (07, 2009) 351