次世代ネットワークの「見える化」を 実現するProactnesⅡ

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1 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ roactnes II: Visualization for Next-Generation Network あらまし 現在, それぞれ独立して存在している既存の音声通信 映像配信 データ通信の各ネットワークは, 世界のキャリアにおいてIネットワークへ統合化が進められている この統合された次世代オールIネットワークには, 品質要件の異なるデータが混在し, 多種多様なサービスが提供されていく roactnesⅡは, ネットワークサービスの運用管理をサポートするシステムであり, ネットワークの 見える化 を実現し, 安全 安心なサービス ネットワークの提供に貢献する 本稿では,roactnesⅡが保有する, ネットワークセンシング技術, 音声品質管理技術, 故障解析技術, ダッシュボード技術を概説する Abstract The voice telephony, video distribution, and data transmission services provided over independent legacy networks are being progressively integrated into Internet protocol (I) networks by telecommunications carriers around the world. Each integrated nextgeneration all-i network, which handles data for services having different quality requirements, will provide a multitude of services. roactnes II is a system for supporting the operational management of network services by providing network visualization. It will contribute to the provision of safe and reliable services and networks. In this paper, we outline the network sensing, voice quality control, failure analysis, and dashboard technologies incorporated into roactnes II. 松田英幸 ( まつだひでゆき ) 藤中紀孝 ( ふじなかのりたか ) 小川淳 ( おがわじゅん ) 村本智宏 ( むらもとともひろ ) ネットワーク管理ソリューション事業部所属現在, キャリア向けI 運用管理のソリューション企画開発業務に従事 ネットワーク管理ソリューション事業部所属現在, キャリア向けI 運用管理のソリューション企画開発業務に従事 ソフトウェア開発センター所属現在, キャリア向けI 運用管理のソリューション研究開発業務に従事 ソフトウェア開発センター所属現在, キャリア向けI 運用管理のソリューション企画開発業務に従事 FUJITSU. 60, 4, p (07, 2009) 387

2 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ まえがき現在, それぞれ独立して存在している既存の音声通信 映像配信 データ通信の各ネットワークは, 世界のキャリアにおいてIネットワークへ統合化が進められている この統合された次世代オール Iネットワークには, 音声通信などのリアルタイム型コンテンツ 映像配信などの帯域消費型コンテンツといった品質要件の異なるデータが混在し, 多種多様なサービスが提供されていく 次世代オールIネットワークにおいて, 安全 安心なサービス ネットワークを提供するには, ネットワークの 見える化 による, サービス品質の見える化, 提供サービス状況のリアルタイムでの把握, サービス故障の影響特定 迅速対応, 高品質なサービス ネットワークの維持が必要である 富士通では, 多数のキャリアネットワークの運用管理で商用実績のあるroactnesシリーズ (1) で, 次世代オールIネットワーク運用管理に対するソリューション開発を進めている 本稿では, 次世代ネットワークの 見える化 を実現するroactnesⅡが保有するネットワークセンシング技術, センシングした情報を活用し実現する音声品質管理技術 故障解析技術, ネットワークの運用高度化を実現するダッシュボード技術を概説する ネットワークセンシング技術現在のIネットワーク監視は, ネットワーク装置が保有する情報 ( 障害 トラフィックなど ) を監視装置で収集し,Iネットワーク構成情報に重ね合わせる代行監視が主流となっている 次世代オールIネットワークでは, 品質要件の異なるサービスが混在するが,Iネットワークを構成するネットワーク装置は, サービス品質要件に影響するI レイヤより上位レイヤの情報は保持しておらず, 代行監視の手法では, 次世代オールIネットワークにおけるサービス品質の見える化を実現することができない 富士通では, 次世代オールIネットワークにおけるサービス品質の見える化を実現するプローブ型監視装置を開発した このプローブ型監視装置の中心技術がネットワークセンシング技術である ネットワークセンシング技術とは,Iネットワークに伝送されるトラフィックをすべてキャプチャし, サービスごとに要求品質から逸脱しているトラフィックを抜き出し, 送信元, 送信先を明らかにし, サービスごとの品質劣化を検知する技術である 他社のプローブ型監視装置と富士通のプローブ型監視装置の違いを図 -1に示す 他社のプローブ型監視装置では, トラフィックの全キャプチャが必要であり, 保存すると膨大なディスク容量が必要となる 収集するデータ : ヘッダ部 ( 宛先 ) 収集するデータ : ヘッダ部データ部 ( 内容 ) ヘッダ部ヘッダ部データ部 品質劣化表示 ディスク容量 : 小分析効率 : 高 ディスク容量 : 膨大分析効率 : 低 品質劣化表示 品質劣化判定プログラム 1 全キャプチャ 1 リアルタイム分析 2 膨大なデータ分析 品質劣化判定プログラム 1 全キャプチャ I ネットワーク装置 I プロトコルヘッダでトラフィックを転送している (a) 富士通 (b) 他社 図 -1 プローブ型監視装置の違い Fig.1-Difference on probe-type monitoring system. 388 FUJITSU. 60, 4, (07, 2009)

3 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ また, サービスごとの品質劣化を検知するには, 保存済のトラフィックデータからサービスごとの要求品質から逸脱しているトラフィックデータを抜き出すため, 保存済みトラフィックデータの検索に時間がかかる 富士通のプローブ型監視装置では全キャプチャを行うが, 保存する前にネットワークセンシング技術でサービスごとの品質劣化をリアルタイムに分析 検知し, 判定結果のみを保存する方式を採用した この結果, ディスク容量の大幅削減とサービス品質劣化のリアルタイム検知が可能となった 一方, 監査証跡の一環として全トラフィックの加工前データを保存したいというニーズもある このニーズに対し, 加工前データを一時的に公開可能な構造としており, 音響解析 ( 人の耳に聞こえるエコー, ノイズをリアルタイムに検知する技術 ) では, 加工前データを利用している また, これからの新しいサービスにも速やかに対応できるよう拡張性を備えた構造にしている 音声品質管理技術既存の音声通信ネットワークでは, 交換機が音声品質を監視しており, 交換機のアラーム監視により音声品質管理を実現している 次世代オールI ネットワークでは, 呼制御トラフィックと音声トラフィックの伝送経路が異なるため, 交換機に相当するサーバの監視では音声品質管理が実現できない 富士通では, プローブ型監視装置で取得した情報をリアルタイムに分析することで, 次世代オール Iネットワークにおける音声品質管理を実現した 3G(3rd Generation artnership roject) をベースとしたIMS(I Multimedia Subsystem) のアーキテクチャにおけるプローブ型監視装置の配置を図 -2 (2) に示す アクティブプローブ型監視装置を1 局舎ごとに1 台設置する またパッシブプローブ型監視装置をI-CSCF/S-CSCF/-CSCF などのユーザトラフィックが集約する箇所ごとに1 台設置し, ユーザトラフィックの全キャプチャを実施する また, 設置されたプローブ型監視装置の状態や計測結果を一括管理するroactnesⅡ 統合マネージャを設置する 各パッシブプローブ型監視装置で取得した情報は,Iパケットレベルでの解析ではなく, 音声プロトコル ( 呼 ) レベルでの解析がリアルタイムに実施されることで, 隣接サーバごとや電話番号ごとの呼量, および異常要因ごとに呼量表示し, 異常時の被擬箇所と影響範囲の切分けを行い, 次世代オールIネットワーク保守運用に要する工数の削 A : アクティブプローブ型監視装置 サービス制御 : パッシブプローブ型監視装置 roactnesⅡ 統合マネージャ ( 各プローブに接続 ) S-CSCF AS MRF A HSS アクセスネットワーク -CSCF A SLF -CSCF MGCF AS: Application Server HSS: Home Subscriber Server I-CSCF I-CSCF: Interrogating Call Session Control Function 他 I 網とのGW MGCF: Media Gateway Control Function MGW: Media Gateway SGW MGW MRF: Multimedia Resource Function 回線交換網とのGW -CSCF: roxy Call Session Control Function インターネットなど S-CSCF: Serving Call Session Control Function 回線交換ドメイン電話網 (STN 網 ) SGW: Signaling Gateway SLF: Subscription Locator Function 図 -2 プローブ型監視装置の配置 Fig.2-Distribution of probe-type monitoring devices. FUJITSU. 60, 4, (07, 2009) 389

4 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ 減を可能とする また, パッシブプローブ型監視装置で取得した解析結果をもとに, アクティブプローブ型監視装置では, 局舎内, 局舎間で擬似の測定パケットの送受信を行い, 各拠点間の測定結果を総合的に見て, より詳細な故障箇所の推測を行うとともに, ユーザの体感品質を示すR 値 (ITU-T 勧告 G.107およびTTC 標準 JJ 準拠 ) をリアルタイムに測定することが可能である 故障解析技術次世代オールIネットワークは, 高度で多様なサービスを提供する社会的に重要な役割を担うネットワークであり,I 電話や映像配信などのサービスの急速な普及とともに, ネットワーク障害の発生による社会的影響は増大している これまでは, ネットワーク装置自身が検出した警報を契機に予備系のネットワークへ切り替えてサービスを維持するとともに, 故障装置の復旧を実施してきた しかし, ネットワーク装置が故障しても, 装置自身が警報をあげられないサイレント故障が発生し, 予備系への切替えができずサービス停止に至るケースや, 一つの故障をきっかけに他装置へ障害が伝播し, 複数の警報があがるなどにより故障箇所の特定, および復旧に時間がかかるケースなどが問題となっている このような高度化 複雑化したネットワークを管理し, ネットワークの故障を早期に検出 対処することが要求されている 故障箇所を特定するには, 三つのプロセスが必要 である 第一に Iパケットが流れる経路を見える化 し, 第二に Iパケットによるサービスの劣化やサービス断が発生している事実を検出 し, 第三に 総合的に故障箇所を特定 することで実現できる しかし, 拡大発展し続ける次世代ネットワークにおいては,Iパケットが流れる経路は, 刻々と変化しており, サービスの劣化やサービス断が発生したルートを特定するのは困難であった 富士通では, プローブ型監視装置を活用することで, 変化する経路をとらえ, 故障を早期に検出し対処する故障解析を実現した Iパケットが流れる経路を見える化 の概要を図 -3に示す パッシブプローブ型監視装置によるネットワークセンシングにより, ネットワーク上の OSF ( Open Shortest ath First ) 内の (Link-State Advertisement) 情報を採取し, 経路情報を解析することで, 次世代オールIネットワーク全体の接続構成と経路を算出し可視化する Iパケットによるサービスの劣化やサービス断が発生している事実を検出 においては, アクティブプローブ型監視装置によりEnd to Endで実トラフィックによる疎通確認を行い, 疎通できないルートや, 伝送 サービス品質の劣化したルートを検知する 総合的に故障箇所を特定 においては, 図 -4に示すように見える化した経路情報と, アクティブプローブ型監視装置で検出した疎通異常や品質劣化ルートを経由リンク表にマーキングし, トモグラフィ解析することにより品質故障区間を特定する 3 エッジルータ間の始点 終点間の経路情報を生成 2 複数エリアにまたがる経路のつながりを算出 経路情報 パッシブプローブ型監視装置 1エリアごとの 情報をキャプチャ エリア 1 エリア 0 ( バックボーン ) OSF ネットワーク エリア1 エリア0 エリア4 始点 エリア 2 エリア 3 エリア 4 エリア 2 エリア 3 終点 図 -3 OSF ネットワーク内のトポロジー情報, 経路情報の見える化の流れ Fig.3-Visualization mechanism of topology and route information in OSF network. 390 FUJITSU. 60, 4, (07, 2009)

5 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ 見える化した経路情報 + プローブの疎通確認結果 トモグラフィ解析 故障区間特定 この場合,2 リンク ( 最小 ) で異常フローを説明可能 : アクティブプローブ型監視装置の試験によるトラフィックの流れ 図 -4 見える化した経路と疎通確認結果による故障箇所の特定 Fig.4-Identifying faulty point from visualized route and path verification result. 従来のトモグラフィ解析は,Endのルータ数の二乗に比例して計算量が増大するため, 高性能なサーバ, または複数のサーバで分散処理する必要があった さらに, 全経路の異常を多数決論理で計算するため, 二重障害の見逃しが発生する可能性があった 本方式においては, 実トラフィックの通過実績により異常ルートを特定するため, 従来の10 倍以上の性能を持ち, 障害を見逃さずリアルタイムの障害箇所特定が可能となる ダッシュボード技術複雑化 大規模化が進む次世代オールIネットワークにおいては, 障害も複雑化 大規模化する このため運用管理者がいかに直感的なオペレーションで障害原因や発生箇所を切り分けられるかがダウンタイム短縮のために重要である つまり, ネットワークから収集した品質管理情報を, 現場の運用管理シナリオに即した形で見える化することが課題となる しかし, 運用管理シナリオは, 運用現場個々のノウハウの集積であるため, 唯一の解はなく, 運用者との対話を通して, カスタマイズしていくことが求められる よって, 短納期かつ低コストで画面開発できる仕組みが必要となる roactnes Ⅱでは, 個々の画面を 部品 ( ガジェット ) とし, それらに共通して必要な基盤部から成るダッシュボードアーキテクチャを採用することで, カスタマイズの柔軟性と, 開発の短納期 短手番化の両立を実現した 基盤部の特徴的な仕組みである, 共通変数管理とイベント制御について図 -5に示す (1) 共通変数管理あるガジェットにより変数が変更された場合, その変数に登録されているガジェットに対して, 変更通知を行う仕組みを持つ 例えば, 日時変数 (Date Time) がガジェットAにより変更されると, 基盤部がこの変数の利用を宣言しているほかのガジェットB,Dへ日時変数が変更された旨を通知し, ガジェットB,Dは, 変更された日時に基づく処理をそれぞれ行う (2) イベント制御ガジェット間にまたがるイベント制御を行う 例えば, ガジェットAでダブルクリックイベントの発生を検知すると, イベント制御は設定情報に基づいて, ガジェットBのウィンドウをアクティブ化する このように, ガジェット間の振舞いは基盤部が一括して制御し, 個々のガジェットはそれぞれに閉じ FUJITSU. 60, 4, (07, 2009) 391

6 次世代ネットワークの 見える化 を実現する roactnesⅡ ガジェットA 表示期間指定 ガジェット B ガジェット A ガジェット B ガジェット C ガジェット D ガジェット C ガジェット D (1) 変更 (2) 通知 (1) イベント (2) アクション イベント制御部 AI 基盤部 日時の変数 (DateTime) 登録 : ガジェット A,B,D 共通変数管理部 AI イベント制御部共通変数管理部 基盤部 設定情報 ガジェット A をダブルクリック ガジェット B をアクティブ化 (a) 共通変数管理 (b) イベント制御 図 -5 共通変数管理とイベント制御 Fig.5-Management of common variables and control events. た処理のみを行うため, ガジェットを再利用することができ, ストックビジネスが可能となる 今後, ダッシュボードアーキテクチャでは顧客自身がガジェットを開発できることを目指して, 基盤部分の AI(Application rogram Interface) の整理 開示を進める むすび本稿では, 次世代ネットワークの 見える化 を実現するroactnesⅡが保有する技術を概説した 世界のキャリアにおいては既存ネットワークのI ネットワークへの統合化が着実に進められており, サービスの多様化とともにネットワーク運用管理シ ステムに対する要求も多様化している この状況の中で, 新たなビジネスの創造を支援し, お客様のニーズを早期に実現できるオペレーションシステムとして着実に進化するべく,roactnesシリーズのネットワーク運用管理の技術開発を進めていく 参考文献 (1) 沼崎雅雄ほか :Iネットワークの効率的な運用管理を実現するroactnesシリーズ.FUJITSU,Vol.57, No.4,p (2006). (2) ゴンザロ カマリロほか :IMS(I Multimedia Subsystem) 標準テキスト NGNのコア技術. リックテレコム,2006,p FUJITSU. 60, 4, (07, 2009)