はじめに 本資料は NTTグループで使用する高電圧直流で動作するICT 装置等に関わる給電インタフェースや機能について 必要な要求条件を述べたものです 本文中に記載する条件等は 情報通信システムに対する給電システム全体の信頼性 安全性を確保する上で必要とされるものです なお 本資料に記載する内容は

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Transcription:

ICT 装置等の高電圧直流給電インタフェース に関するテクニカルリクワイヤメント 第 1.2 版 TR176002 号 平成 30 年 9 月 3 日制定 日本電信電話株式会社

はじめに 本資料は NTTグループで使用する高電圧直流で動作するICT 装置等に関わる給電インタフェースや機能について 必要な要求条件を述べたものです 本文中に記載する条件等は 情報通信システムに対する給電システム全体の信頼性 安全性を確保する上で必要とされるものです なお 本資料に記載する内容は 関連規格の改定時 最新技術の導入時 調達における物品要求条件の変更等により予告なく変更する場合があります 本資料の内容についての問合せ先は次の通りです 日本電信電話株式会社ネットワーク基盤技術研究所環境基盤プロジェクト E-mail powersystem-tr-ml@hco.ntt.co.jp 2018 日本電信電話株式会社本資料を無断で複製または転載することを禁じます

1 概要 1 2 関連規格等及び用語の定義 1 2.1 関連規格等 1 2.2 用語の定義 2 3 ICT 装置の要求基準 4 4 高電圧直流を入力とする ICT 装置の技術条件 4 4.1 ICT 装置のインタフェース条件 4 4.2 ICT 装置の機能条件 8 4.3 ICT 装置の最大動作電流値 最大電力値の表記 8 付録 9

1 概要 ICT 装置等の高電圧直流給電インタフェースに関するテクニカルリクワイヤメント ( 以下 本 TRとする ) は 通信ビル及びデータセンタ等における高電圧直流で動作するICT 装置等に関わる給電インタフェースや機能についての必要な要求条件を示すものである 本 TRで引用された技術基準は ITU-T 勧告 L.1200[1] TTC 標準 JT-L1200[2] 等の規格に準拠している なお 装置の用途や使用環境によっては本 TRで規定しない条件を調達時に要求されることがある 2 関連規格等及び用語の定義 2.1 関連規格等以下の規格は 本 TR に引用することにより本 TR の一部となる 本 TR では 日付のある規格は当該規格を使用することとし 当該規格の最新版または修正 改定版は適用しない ただし 本 TR の使用者は 以下に示される規格の最新版の適用が可能かどうか もしくは妥当であるか調査 判断することを奨める なお 引用規格に変更が生じた場合 引用規格の扱いについて見直しを実施する [1] ITU-T L.1200 (2012) Direct current power feeding interface up to 400 V at the input to telecommunication and ICT equipment [2] TTC JT-L1200 第 1.2 版 (2014) 電気通信および ICT 装置の入力端における 400V までの直流給電インタフェース [3] IEC 60445 (2010) Basic and safety principles for man-machine interface, marking and identification Identification of equipment terminals, conductor terminations and conductors [4] IEC 60950-1 (2005) Information technology equipment-safety-part1:general requirements [5] IEC 61000-4-5 (2005) Electromagnetic compatibility (EMC) Part 4-5: Testing and measurement techniques Surge immunity test Reference 1

[6] IEC 61000-4-29 (2000) Electromagnetic compatibility (EMC) - Part 4-29: Testing and measurement techniques - Voltage dips, short interruptions and voltage variations on d.c. input power port immunity tests [7] ETSI EN 300 132-3-1 (2011) Power supply interface at the input to telecommunications and datacom (ICT) equipment; Part 3: Operated by rectified current source, alternating current source or direct current source up to 400 V; Sub-part 1: Direct current source up to 400 V [8] NTT TR 176001 号第 1 版 (2008) 通信装置の給電インタフェースに関するテクニカルリクワイヤメント [9] NTT TR 550004 号第 4 版 (2009) 通信装置から発生する妨害波に関するテクニカルリクワイヤメント [10] NTT TR 549001 号第 3 版 (2005) 通信装置の電磁妨害波耐力 ( イミュニティ ) に関するテクニカルリクワイヤメント [11] NTT TR 189001 号第 2 版 (2012) 通信装置の過電圧耐力に関するテクニカルリクワイヤメント 2.2 用語の定義本 TRにおいて使用する用語について以下の通り定義する (1) 高電圧直流情報通信分野において 給電電圧が260~400Vの直流 (2) 通信装置交換機 ルータ イーサネットスイッチ 伝送装置等の音声信号やデータ信号の通信に供する装置 (3) ICT 装置通信装置 及びサーバ ストレージ等の情報処理をする装置 2

(4) 給電システム ICT 装置に電力を供給するシステム ( 直流電源装置 蓄電池 電流分配装置 ( 直流電力を各 ICT 装置に分岐供給する装置 ) 給電線 遮断器等を含む ) (5) ICT 装置の搭載電源 ICT 装置に搭載され 給電システムから供給される直流電圧を ICT 装置内の各部で使用する電圧に変換する電源 (6) 搭載電源の2 重化片系 (0 系または1 系 ) の搭載電源が停止した場合でもサービスが停止しないように搭載電源を2つ以上備えた冗長構成 (7) 動作電圧範囲 ICT 装置の入力端において供給されている電圧が当該範囲内で変動した場合でも ICT 装置が正常に動作することを保証する電圧範囲 (8) 最大動作電流値 ICT 装置及びICT 装置に実装されるパッケージが 最大の電力を消費するときにICT 装置及びICT 装置に実装されるパッケージの入力端における定格電圧に対する電流値 ( 突入電流等 過渡的な電流は考慮しない ) (9) 定格容量定格電圧における最大負荷電力値 (10) 給電系統電流分配装置に搭載されている 1 個ないしは1 対の遮断器を介して給電する系統 3

3 ICT 装置の要求基準 本 TRは 高電圧直流を入力とするICT 装置の入力端における要求条件を示す なお 直流 48V 及び交流を入力とするICT 装置についての技術条件は NTT TR176001 号 (2008) に示す 4 高電圧直流を入力とする ICT 装置の技術条件 4.1 ICT 装置のインタフェース条件 本項では 高電圧直流を入力とする ICT 装置のインタフェース条件を定める (1) 入力方式 規定 1 ICT 装置におけるインタフェースは 図 4-1 に示すインタフェース P であり ICT 装置は 正極給電線 負極給電線 保安用接地線が接 続できること 図 4-1 ICT 装置の給電インタフェース (2) 電圧 規定 2 定格電圧及び動作電圧範囲は以下とすること 1 ICT 装置の定格電圧は 380Vとする 2 ICT 装置の動作電圧範囲は 260V~400V とする ICT 装置は ICT 装置の入力端に供給される直流電圧が動作電圧範囲内において正常に動作すること (3) 定格容量 規定 3 ICT 装置の搭載電源の定格容量は 1 給電系統当たり7.8kW 以下とすること 4

(4) 絶縁抵抗 規定 4 正極給電線と保安用接地線間 負極給電線と保安用接地線間は 1MΩ 以上の絶縁抵抗を有すること (5) 異常条件動作電圧範囲 (260V~400V) を逸脱した電圧が発生するような 異常条件に対する試験とその際の基準を示す なお 異常直流電圧範囲は0V 以上 260V 未満および400V 超 410V 未満であり 異常直流電圧範囲を超える電圧は410V 以上である 試験時において 試験機が定格電圧 380Vに未対応の場合 試験時の定格電圧を350Vもしくは300Vとして良い ICT 装置の動作判定基準 基準 a) ICT 装置は 試験中及び試験後 所望の動作を続けなければならない すなわちICT 装置を意図通りに使用した場合に 性能低下或いは機能欠損が製造業者と製品の購入者または装置仕様書主管との間で合意された性能レベルを下回ってはならない 基準 b) ICT 装置は 運用者の操作がなくても一時的な性能低下或いは機能欠損の原因となる障害解消後に 性能低下或いは機能欠損が製造業者と製品の購入者または装置仕様書主管との間で合意された性能レベルに復帰しなくてはならない 規定 5 ICT 装置は 表 4-1 に示す電圧変動試験において 指定の動作判定基準を満足すること なお 試験は IEC 61000-4-29 に準拠して実施しなければならない 表 4-1 電圧変動の試験レベル 継続時間 及び準拠基準 (JT-L1200[2] を参考 ) 電圧継続時間 ICT 装置の動作判定基準備考 定格電圧から260Vへその後定格電圧に戻る 1 分基準 a) 定常直流電圧範囲内の最低動作電圧の試験 定格電圧から400Vへその後定格電圧に戻る 1 分基準 a) 定常直流電圧範囲内の最高動作電圧の試験 定格電圧から410Vへその後定格電圧に戻る 1 秒基準 b) 異常直流電圧範囲への電圧上昇変動の試験 定格電圧から420Vへその後定格電圧に戻る 10 ミリ秒基準 b) 異常直流電圧範囲を超える電圧上昇変動の試験 5

規定 6 ICT 装置は 表 4-2 に示す電圧ディップ試験において 指定の動作判定基準を満足すること なお 試験は IEC 61000-4-29 に準拠して実施しなければならない 表 4-2 電圧ディップの試験レベル 継続時間 及び準拠基準 (JT-L1200[2] を参考 ) 電圧継続時間 ICT 装置の動作判定基準備考 定格電圧から 260 V へ その後定格電圧に戻る 10 ミリ秒基準 a) 定常直流電圧範囲内の 最低動作電圧の試験 規定 7 ICT 装置は 表 4-3 に示す瞬停試験において 指定の動作判定基準を満足すること なお 試験は IEC 61000-4-29 に準拠して実施しなければならない 表 4-3 瞬停の試験レベル 継続時間 及び準拠基準 (JT-L1200[2] を参考 ) 電圧供給回路継続時間 ICT 装置の動作判定基準備考 定格電圧から 0V へその後定格電圧に戻る 低いインピーダンス ( 短絡 ) 10 ミリ秒基準 a) 給電システム中の短絡による障害除去中の停止時間の試験 定格電圧から0Vへその後定格電圧に戻る 高いインピーダンス ( 開回路 ) 1 秒基準 b) 動作電圧の長時間 (>1 秒 ) 中断後の復旧の試験 注記 : IEC61000-4-29 6.1.1 節及び 6.1.2 節を参照にして 発電装置出力インピーダンスを低いインピーダンスでは < 0.5Ω 高いインピーダンスでは > 100kΩ と設定する 6

規定 8 ICT 装置は 表 4-4 に示す試験の条件において 指定の動作判定基 準を満足すること なお 試験は IEC 61000-4-5 および NTT TR 189001 号第 2 版に準拠して実施しなければならない 表 4-4 電圧サージ / 過渡電圧の試験レベル 継続時間 及び準拠基準 (JT-L1200[2] を参考 ) 電圧供給回路波形 ICT 装置の動作判定基準備考 500V 給電線と給電線 1.2/50μs (8/20μs) 基準 a) 異常直流電圧範囲を超えた電圧上昇変動 ( ヒューズブローや切換えなどに起因する ) の試験 試験電圧の極性は通常給電時と同一にすること 500V 給電線と接地 1.2/50μs (8/20μs) 基準 a) 異常直流電圧範囲を超えた電圧上昇変動 ( ヒューズブローや切換えなどに起因する ) の試験 試験電圧の極性は通常給電時と同一にすること 2kV 給電線と給電線 1.2/50μs (8/20μs) 基準 b) 給電線と給電線の短絡後のシステム復旧の試験 試験電圧の極性は通常の給電時と同一にすること 2kV 給電線と接地 1.2/50μs (8/20μs) 基準 b) 給電線と接地 ( 給電線と PE) の短絡後のシステム復旧の試験 試験電圧の極性は通常の給電時と同一にすること 注記 : このような過渡波を適用した結果として いくつかの敏感な装置では 瞬間的あるいは一時的なサービス停止が起こることがある ソフトウェアの復旧に起因するサービスに対する ( 装置が意図したように機能しないなどの ) 停止の長さ ( 時間 ) を考慮しなければならない サービス停止に関するより詳細な情報は運用者の要求により製造業者より提供されるものとする 規定 9 ICT 装置は ICT 装置の入力端に供給される電圧が 0V 以上 260V 未満および 400V 超 410V 未満の異常直流電圧が印加された後 動作電圧範囲に復旧した場合は 所望の動作を行うこと なお 所望とは製造業者と製品の購入者または装置仕様書主管との間で合意された性能レベルのことである (6) 突入電流 規定 10 ICT 装置の突入電流は 遮断器の意図しない保護動作を防止するため 電流値及び継続時間で制限されなければならない なお 試験は ETSI EN 300-132-3-1 に準拠して実施しなければならない (7) EMC 規定 11 NTT TR 550004 号第 4 版 通信装置から発生する妨害波に関するテクニカルリクワイヤメント に準拠すること 7

4.2 ICT 装置の機能条件 本項では ICT 装置の機能に関する条件を定める 規定 12 サービスの信頼性を高める場合は ICT 装置において搭載電源の 2 重化等を行うこと 規定 13 2 系統入力構成のICT 装置は 両系間に電位差が生じた場合でも動作に影響が無いこと 規定 14 ICT 装置は 内部短絡等の異常動作に備え ヒューズ等による過電流遮断機能または装置停止等の 保護機能を有すること 規定 15 ICT 装置は 外部で主電源を切り離す箇所において ICT 装置内に接続したコンデンサに蓄積された電荷による感電の危険が減少するように設計すること なお 試験はIEC60950-1に準拠して実施しなければならない 規定 16 ICT 装置の搭載電源入力部は 感電の危険が生じない構造とすること 4.3 ICT 装置の最大動作電流値 最大電力値の表記本項では ICT 装置の最大動作電流値と最大電力値の表記を定める 規定 17 ICT 装置の最大動作電流値もしくは最大電力値を表記すること 規定 18 ICT 装置に実装される各種パッケージ1 枚あたりの最大動作電流値もしくは最大電力値を表記すること 8

付録 本付録に記載されている内容は参考情報であり 本 TRの規定には含まれない 但し 装置の用途や使用環境により装置調達時に 4 章へ記載されている規定以外に 本付録に記載された内容が追加で要求される場合がある このとき 本付録に記載された内容を要求条件として適用する旨を仕様書に表記することで 本 TRの規定の一部として扱うことができる 1. ICT 装置の構成 付録 1 ICT 装置の搭載電源を2 重化し 片系 (0 系または1 系 ) の搭載電源が停止した場合でもサービスを停止させないこと 2. 入力電圧逸脱時のICT 装置の対応 付録 2 ICT 装置は給電電圧が異常に低下した場合 装置を停止すること 装置停止は以下の規定を満たすこと 1 ICT 装置は 入力電圧が 260V 未満となった場合に速やかに停止すること 2 ICT 装置は 入力電圧が 220V 以上 260V 未満の電圧範囲内で停止すること 3. 突入電流 付録 3 ICT 装置の入力電源プリチャージ回路より前段に接続されているコンデンサ容量の総計は搭載電源 1ユニット当たり13μF 以下であること 4. EMC 付録 4 NTT TR 549001 号第 3 版 通信装置の電磁妨害波耐力 ( イミュニティ ) に関するテクニカルリクワイヤメント に準拠すること 付録 5 NTT TR 189001 号第 2 版 通信装置の過電圧耐力に関するテクニカルリクワイヤメント に準拠すること 9