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船舶 海洋特集技術論文 37 海洋資源の調査に貢献する自律型深海巡航探査機 (AUV) への取組み Development of Autonomous Underwater Vehicle for Detecting the Deep Sea Marine Mineral Resources *1 脇田典英 *2 広川潔 Norihide Wakita Kiyoshi Hirokawa *3 市川卓示 *4 山内由章 Takuji Ichikawa Yoshiaki Yamauchi ここ数年来, 海洋資源開発の重要性が再認識されその機運の高まりと共に, 開発に先立つ資源調査ニーズに貢献する自律型深海巡航探査機 (AUV) の整備 展開が期待されている. 本稿では当社が平成 12 年に納入した試験機 AUV うらしま の建造と保守整備実績並びにその後の客先での運用成果を通しての探査技術を紹介すると共に自律型深海巡航探査機 (AUV) への当社の開発の取組みについて述べる. 1. はじめに 当社では, 海洋潜水機種製品を数多く生み出してきている. この製品群には有人深海潜水調査船から無人潜水機, 飽和潜水装置などを含み多種多様である. 試験機 AUV うらしま は, これらの深海用ビークル開発技術に加え最新技術を折込んで建造されたものである. この うらしま の建造とその後の保守整備を通じて得られた自律航行の技術と客先にて実施された運用試験の中から海洋資源探査技術の概要を紹介する. また, 最近, 燃料電池用水素燃料について金属水素の要素技術開発及び次世代 AUV の概念設計も実施したのでその取組み状況を紹介する. 2. 海洋資源探査と AUV 従来, 海洋調査観測を行う機材としては有索式無人潜水機 (ROV;Remotely Operated Vehicle) が主流であったが, 自律型無人潜水機 (AUV) が実現し, 海洋データ観測 探査用のセンサプラットフォームとして製造台数が漸次増えてきている. これは母船とアンビリカルケーブルで結ばれほぼ定点での調査観測を行う ROV に比べ AUV は無索で自律航行できることから広範囲の海洋 ( 海中, 海底, 海底下地層 ) データを調査するためのセンサプラットフォームに適すためであろう. この AUV の探査ニーズとなる海洋資源には 熱水鉱床, コバルトリッチクラスト, メタンハイドレート がある. これらの資源探査にAUVが展開している様子を模式図で図 1に示す. 図に概念で示される海洋資源探査は, 広域探査 ( 100km レンジ ), 中域探査 ( 10km レンジ ), 特定域探査 ( 1kmレンジ) の3 段階に分けて実施されるであろう. *1 神戸造船所潜水艦部主幹技師 *2 神戸造船所潜水艦部主席チーム統括 *3 神戸造船所潜水艦部 *4 神戸造船所潜水艦部工博

38 図 1 海中資源探査の概念図 3. AUV うらしま の概要と運用成果 3.1 うらしま の概要 AUV うらしま は, 北極海の海洋環境や海底地形等の探査を行うことを目的とする試験機として平成 10,11 年に機体が建造され, 以降燃料電池の開発, 搭載を経て客先である ( 独 ) 海洋研究開発機構 (JAMSTEC) により平成 17 年 2 月に駿河湾において世界最長である 317kmの自律航行を達成した. この うらしま 開発の経緯を図 2に示す. 図 2 試作 AUV うらしま の開発経緯 うらしま の仕様, 概観及び探査機器配置は図 3に示すとおりであるが,JAMSTEC で装備した主な海洋資源探査用音響センサを簡潔に解説すると次の通りである. サイドスキャンソナー ; 海底面の地形 地質を調べるセンサで, 左右舷から扇型に広がる音波を発振し, 海底面からの反射又は散乱音波の強弱を濃淡表示して海底面の音響画像データを得る.

39 マルチビーム測深機 ; 海底面の深さ ( または高度 ) を測定するセンサで, 扇型に広がる音波を発振し, 進行方向に直交する複数地点の地形データが得られ, 航走しながら海底近傍から超音波を送受信するため, 高分解能の地形図を作成することができる. サブボトムプロファイラ ; 海底下の地層を探査するセンサで, 航行しながら音波の送受信をくり返すことにより, 海底下の極表層の地層情報が得られる. うらしま概観写真 底面から見た探査センサ配置 主要目 (1) 主要寸法等 : (2) 動力源 : (3) 探査機器 : 寸法約 10.7 m 長 1.3 m 幅 1.5 m 高空中重量約 10 トン ( 燃料電池搭載時 ) 最大潜航深度 3 500 m 航続距離 ( 実績 ) 317 km (H17 年 2 月 26~28 日 ) PEFC 型燃料電池又は油漬 Li- イオン二次電池 CTDO, サイドスキャンソナー, ビデオカメラ, サブボトムプロファイラ, マルチビーム測深機 図 3 試作 AUV うらしま の概観, 主要目と探査機器配置 3.2 うらしま の諸性能 (1) 潜航性能ビークルの重量浮量調整は潜航バラストによる調整だけでは不十分で, 潜航に伴う海水密度変化 ( 浮力増 ) と深度圧増加 水温低下による機器収縮 ( 浮力減 ) による浮力の影響も調整し, 機体を精密な中性浮力状態とすることができる油ブラダ式の浮力調整装置を開発した ( 図 4). 図 4 うらしま の浮量調整装置の概念図

40 (2) 運動性能水平面内の運動制御は垂直舵により行われ, 垂直面内の制御は前述の浮力調整装置及びトリム調整装置 ( 錘を前後させることで機体の俯仰角度を調整する装置 ) 及び水平舵で行われる. (3) 航行制御性能あらかじめ設定された計画測線に対し, 慣性航法で計測した座標と計画計測線のズレを計算し, これを修正すべく垂直舵を制御してズレが1m の範囲に収まるようにする. なお, 慣性航法はビークル装備のドップラー速度計による対地速度で計出されるが, 微弱な海潮流によるドリフト誤差が集積した場合には, 母船の追尾機能により音響コマンドで, 水中航行中でも真座標をポジションアップデートすることが可能である ( 図 5). 図 5 航行制御性能の実績 (4) 動力装置閉鎖型燃料電池システム (1) を搭載し補助電源に油漬均圧型 Liイオン電池を用いた. 3.3 うらしま の運用成果 うらしま の運用成果として音響センサデータと画像処理による海底地形等の探査結果を紹介する. なお, データはすべて JAMSTEC が取得したものである (2)~(7). (1) 泥火山観測 ( サイドスキャンソナーによる探査 ; 図 6) 熊野トラフに位置する活動中の第 5 海丘が観測された. 計測の要領は芝刈り状に3 次元航行しながら行うものであらかじめ作成された計画測線に沿って自律航行により海底地形が探査された. 画像中央に見られる散乱強度の強い地点は最近噴出した噴出口であろうと予想された.

41 図 6 うらしま による音響探査結果 (1/2) (2) 海底熱水プルーム観測 ( マルチビームによる探査 ; 図 7) 図 7はマルチビーム音響測深機で観測された海底熱水プルームの3 次元地形図である. 図ではいくつかのプルームが鮮明に識別できその分布が初めて明らかにされた. 図 7 うらしま による音響探査結果 (2/2) (3) 海底下地質構造の探査 ( サブボトムプロファイラによる探査 ; 図 7) 図 7に併記して示した探査結果では海底下 40~50m の地質構造が微細に観察され, 地層の乱れから断層の存在が考察された. これらの成果は客先の数年にわたる運用技術開発の賜物であり, うらしま はこの期待にこたえられ十分に海洋資源探査に供する能力を有しているといえる. 4. 次世代 AUV の開発について 今後の AUV( 次世代 AUV と呼ぶ ) としては次の2 通りの開発方向が考えられる. (1) 長期巡航型 AUV うらしま の試作目的に沿ったもので巡航距離を飛躍的に延伸し航続距離 1000~3000km

42 を実現し北極海下の海中データの計測を行い環境評価などに資する AUV である. 実現のための開発課題は,( ア ) 動力源としての燃料電池のより小型化 効率化,( イ ) 燃料 酸化剤となる水素源, 酸素源の飛躍的な小型軽量化,( ウ ) 長距離水平方向の音響通信技術が考えられ, いずれも研究開発が進められつつある. ここでは当社で最近開発した水素化アルミを用いた水素発生貯蔵システムの開発について紹介する. (2) 複数機巡航型 AUV システム直近の課題である海洋鉱物資源開発に資する AUV システムを考えるとき大幅に効率化した探査システムを短期間で開発することが望まれている. これには うらしま を一回り小型化した規模の AUV を複数機同時運用するシステムの整備が有望と考える. 機体性能は うらしま の技術の応用でまとめ複数機運用時の概念を作りその際の問題点を探求し解決していくことが課題となろう. 以下にこれら次世代 AUV の検討状況について述べる. 4.1 水素化アルミ水素発生貯蔵システムの開発 (1) システムの概要と原理本方式は, 金属化水素を使用して大量に水素を製造するもので, 室温で不安定な AlH 3 を効率よく内包させた金属アルミ ( 微粒子 ) に大気中 常温で水を加えるだけで反応する画期的な方式である. この方式は各種水素発生装置の中でも重量貯蔵効率が最も高いとされ既に陸上小規模用 (8) (9) としては実用化のレベルにあるものを水中航走体用に開発した ( 図 8). 原材料は活性アルミ微粒子であり, これを海中使用に際して単純に耐圧容器内に貯蔵すると長期巡航型 AUV では容器重量が極めて重くなり成り立たない. そこで, この微粒子をスラリー化し均圧容器に貯蔵し軽量化を図れるシステムの開発を目指した. スラリー化に当たっての課題は不活性状態で保存し使用時に活性化し水素を発生させるように制御することである. 開発の結果, 不活性化できるスラリー溶媒と活性液の組合せを得た. 図 8 水素化アルミ方式の水素発生原理 (2) 試作プラントによる検証結果反応抑制のため貯槽では不活性溶媒によりスラリー化しこれを活性化反応液槽に移送して水素を発生するプラントを試作し試験した. 検証の結果, 深々度圧下でも水素発生状況に問題はなくその反応制御性能は図 9に示すように良好であった.

43 水素発生検証試験結果 図 9 試作プラントと検証結果 試作プラント (3) 長期巡航型 AUV の試設計本システムを適用して長期巡航型 AUV( 深度 6000m, 航続距離 3000km 級 ) に搭載する水素発生貯蔵装置を試設計し水素吸蔵合金 ( 耐圧型 ) の場合と比較したところ装置容積でみて耐圧容器型の 49m 3 に対して水素化アルミ方式 ( 均圧型 ) の場合は 11m 3 となり約 1/4 以上の大幅な小型化が可能であることが解った. また, この装置を搭載した機体規模の試設計を実施したところ機体規模は, 長さ 幅 高さ * 重量 =9.5m 3.4m 2.0m*50t となった. 更なる小型軽量化が必要なレベルではあるが, 水素吸蔵合金の場合非現実的な機体規模となるのに対し, 現実味のあるものとなっている. 実用化を目指して今後, 海域試験による評価に取り組んでいきたい. 4.2 複数機巡航型 AUVシステムの概念についてここではシステムの概念を紹介するに留めるが, 図 10に示すシステムは, 母船に監視されつつ自律的に, 与えられた海域の探査を行う考えで作成したものである. 今後, 安全性 坑堪性の確保, 非常時の対応策, 協調制御ロジックの構築, などの検討から進めていき実現できる提案を検討していきたい. 図 10 複数機巡航システム AUV の概念

44 5. まとめ 当社のこれまでの自律型深海巡航探査機 (AUV) への取組みを紹介してきた. 本稿では うらしま が装備している音響センサによる海洋資源探査について述べたが, これ以外にも 電磁探査, 重力探査, 磁力探査 なども資源探査には必要である. また, より高精度なセンサーを求めて 基盤ツール の開発が進められている. センサプラットフォームである AUV はこれらの開発センサに柔軟に対応できるものとすべきであり, 今後もこの視点を大切にしていきたい.AUV のニーズにはこのほかに海溝直下型地震の減災を目的とした海底ケーブルネットワークの保守点検システムの整備構想もあり, 当社ではこれに関する AUV の開発にも取り組んでいるところである. いずれも社会に貢献し得る技術であり, 次世代 AUV の実現に向けて鋭意努力していく所存である. 最後に, 本稿の執筆に当たって多くの貴重な技術資料, データの使用を許可頂いた ( 独 ) 海洋研究開発機構の関係者の方々に感謝の意を表す. 参考文献 (1) 前田ほか, 燃料電池搭載深海巡航探査機 うらしま の開発, 三菱重工技報, Vol.41 No.6 (2004) p.344 ~347 (2) Advanced Technologies for Cruising AUV URASHIMA,(Plenary session),proceedings of The Seventeeth ISOPE,pp750-757. 著者 :Taro Aoki, Satoshi Tsukioka, Hiroshi Yoshida, Tadahiro Hyakudome, Shojiro Ishibashi, Takao Sawa, Akihisa Ishikawa, Junichiro Tahara, Ikuo Yamamoto, Makoto Ohkusu (3) The PEM Fuel Cell System for Autonomous Underwater Vehicles, Marine Technology Society Journal, Fall 2005, pp. 56-64 著者 :Satoshi Tsukioka, Tadahiro Hyakudome, Hiroshi Yoshida, Shojiro Ishibashi, Taro Aoki, Takao Sawa, Akihisa Ishikawa (4) 自律式無人探査機による海底探査技術 ~ 計測事例と課題 ~, 海洋音響学会 J. Marine Acoust. Soc. Jpn. Vol. 34. No. 2 Apr. 2007 著者 : 月岡哲 (5) 泥火山の微細構造と発達過程 - 深海巡航探査機 うらしま による熊野トラフ海底調査 -, 地質学会第 114 年学術大会 (2007 年 9 月 ) 著者 : 芦寿一郎 ( 東大 ), 森田澄人 ( 産総研 ), 清川昌一 ( 九大理 ), 月岡哲 (JAMSTEC) (6) 海洋理工学会平成 21 年 5 月招待講演 AUV による海底精細マッピング, 月岡哲 (7) AUV うらしま を用いた沖縄トラフ伊平屋北海丘の高分解能地形 地質調査, 山本富士夫 牧哲司 百留忠洋 澤隆雄 月岡哲 ( 海洋研究開発機構 ), 斎藤文誉 石川暁久 千葉和宏 ( 日本海洋事業 )(H21 年度海洋調査技術学会予稿 ) (8) Chemical reactions in cracks of aluminum crystal: Generation of hydrogen from water, Masao Watanabe, Journal of Physics and Chemistry of Solids, vol. 71(2010), in press (9) 活性アルミ微粒子を用いた燃料電池発電, 渡辺正夫, 菅原浩, 月刊ディスプレイ,2010 年 4 月号, p.24-29