2010函館学_第1回資料の表紙

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教員の専門性向上第 3 章 教員の専門性向上 第1 研修の充実 2 人材の有効活用 3 採用前からの人材養成 3章43

研究内容 2016 年 9 月時点 自治体の協力を得つつ 国立教育政策研究所や外部の研究者 有識者により実証研究を実施 関連施策の費用と効果について把握 分析 研究テーマ実施主体研究内容 ( 学力 非認知能力等 ) 国立教育政策研究所 埼玉県 大阪府箕面市等 国立教育政策研究所等 都道府県 :6 程

2 5, ,3 6, % 8.% % 8.%.%.%.6%.5% 2.9%.%.9% 6.3% 6.3%.% 88.%.% 9.6% 9.8% 9.8% A B C D E B/A C/B E/B

目次 1 当法人に関する事項 (1) 事業の計画 (2) 損益の計画と財産の見通し (3) 主要な事業内容 (4) 会員に関する事項 (5) 職員に関する事項 (6) 役員会等に関する事項 (7) 対処すべき課題 2 役員等に関する事項 (1) 理事 (2) 監事 (3) 評議員 1

01 【北海道】

OTEMON GAKUIN

教育目的 教育目標について (1) 多くの短期大学が複数の学科等を設置しています その場合 それぞれの学科等では建学の精神や教育理念から導き出された より具体的な教育目的や教育目標を掲げているものと思います ( 例えば 設置認可の際に 設置の趣旨 等で示されたもの等 ) ここでは全学的に示された教育

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評価項目 評価ポイント 所管部局コメント 評価 国際交流に関する情報の収集及び提供事業国際交流活動への住民の参加促進事業国際理解推進事業在住外国人に対する相談事業在住外国人に対する支援事業 安定 確実な施設運営管理 公正公平な施設使用許可や地域に出向いた活動に取り組むなど新たな利用者の増加に努め 利

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様式 重点項目 産業を担う人材確保対策の推進 雇用情勢の改善を背景に 就職相談者の減少が見込まれる中にあっても 本県産業の持続的な発展を図るため 優れた人材を確保していく必要があることから 県内外の学生や若年者をはじめとした幅広い世代 UI ターン希望者に対するきめ細かな支援により 人材確保を図りま

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34 県立鶴岡工業高等学校 ( 全日制 ) 工業科 ( 機械科 電気電子科 情報通信科 建築科 環境化学科 ) 次のいずれかに該当する者 1 文化的活動や体育的活動において地区大会を経て 県大会に出場した者 2 部長 副部長 選抜選手として活動した者で 部活動 研究活動で活躍することを強く望む者 3

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実習指導に携わる病棟看護師の思い ‐ クリニカルラダーのレベル別にみた語りの分析 ‐

総論 地方拠点強化税制とは? 税制等の支援措置を受けるためには? 3ページ 4ページ 拡充型事業とは? 5 ページ 移転型事業とは? 6 ページ 目次 各論 ステップ 1 ( 整備計画 ) 本社機能とは? どのような支援措置があるの? 支援のメリットについて整備計画の認定はいつまでに受ければいいの?

Transcription:

北大水産学部のいま むかし 北海道大学名誉教授米田義昭 レジメ Ⅰ. 水産学部の沿革 1) 札幌時代 1879~1934 年 [ 明治 12 年 ~ 昭和 9 年 ]] (55 年間 ) 水産学の誕生から学科創設まで 1879~1906 [ 明治 12 年 ~ 明治 39 年 ] 農学校水産学科から北海道帝国大学付属水産専門部まで (1907~1935 年 ) [ 明治 40 年 ~ 昭和 9 年 ] 2) 函館時代 1935~ 現在 [ 昭和 10 年 ~ 現在 ] (75 年間 ) 函館高等水産学校 1935~1944 年 ( 昭和 10 年 ~ 昭和 18 年 ) 函館水産専門学校 1945~1949 年 ( 昭和 19 年 ~ 昭和 24 年 ) 北海道大学水産学部 1948~2000 年 ( 昭和 24 年 ~ 平成 11 年 ) 北海道大学大学院水産学研究科 ( 院 ) 2000 年 ~ 現在 ( 平成 12 年 ~) Ⅱ. 教師と学生の気質 1) 札幌農学校時代に水産学を講じたカッター博士 2) 海藻博士遠藤吉三郎教授と函館 3) 疋田豊治教授のガラス乾板写真 4) 斉藤教授 石原助教授と愛弟子の話 Ⅲ. 更なる飛躍をめざす大学院水産科学研究院 1) オープンキャンパス 2) 高校生限定プログラム 1

講話の概要はじめに 明治維新から間もない時期より幾度かの変遷を経て今日に至った水産学部の沿革をかいつまんで話します 次に 一世紀にわたる国内外の動乱の時代に生きた何人かの教師やその弟子たちを通して水産学徒の気質に触れてみたいと思います 最後に 現在の大学院水産科学研究院の活動の様子を紹介します Ⅰ. 水産学部の沿革 1) 札幌時代 (1879~1934) 官制による水産学科の設置は19 07 年 ( 明治 40 年 ) で 2007 年に10 0 周年を迎えましたが 御雇い教師だったカッター博士が札幌農学校一期生に海洋生物を講じた1879 年 ( 明治 12 年 ) から数えると131 年になります この年に行われた水産の教育は国の内外における水産学教育の始まりであったと思います その後 水産学の教育と研究は札幌を本 北大水産学部七十五年史よりコピー 拠地として 55 年間にわたり様々な組織改革を経 北海道帝国大学付属水産専門部を最後に札幌から函館に移ることになりました 2) 函館時代 (1935~ 現在 ) 国の予算が決まり 函館市の寄付による土地 実験室 養魚用温室などを含む諸施設が完成した1 935 年 ( 昭和 10 年 ) に函館の地に移りました 校名も北海道帝国大学付属水産専門部から函館高等水産学校となりました 以来 組織変更などはありましたが 今日までの 75 年間の長きにわたって函館市民と共に歩んでまいりました 何故札幌から函館に また大学から専門学校に変わったかについては 疋田豊治教授 (1882~1974) のガラス乾板写真集より引用 大変複雑な事情があり短時間では述べ切れませんが 当事の国内の情勢 教官およ 2

び学生達の思い 函館市の強い支援などが大きな要因になっていると思います Ⅱ. 教師と学生の気質函館市民の年配の方は 水産の学生達は やんちゃ バンカラな気風 男っぽい などの印象を持っている方が多いと思います 札幌時代から歌われてきた 男の歌 を1つ聴いても その雰囲気が感じられると思いますので その一節を紹介します 私しゃ大島荒磯育ちハイノハイト糧は尽きても元気は尽きぬよハイノハイト板子一枚地獄でござるハイノハイト忍路出るときゃ涙で出たがハイノハイト 波も荒いが気も荒いよヨハイノハイト意気でかためた荒男よヨハイノハイト腰の短刀は伊達じゃないヨサハイノハイト今じゃ千島で鯨とりヨサハイノハイト 水産学を志した教師や学生の中には 刹那的な水産魂を謳歌した凡人ばかりでなく すぐれた仕事を残した非凡な人も多くいます 世界的に見てもそれらの人たちが残した業績はいまなお燦然と輝いております 思いつくままに何人かの先輩を紹介すると共に彼らのエピソードを述べたいと思います 遠藤吉三郎教授が発見し 函館の名を付けて命名した海藻ウガノモク Ⅲ. さらなぬ飛躍をめざす大学院水産科学研究院最後になりますが 21 世紀に入り 平成の大改革と言われる時期を凌ぎ いま学部は大きく変貌しました 北海道大学は大学院を主体とするいわゆる大学院大学になりましたが 水産学部も平成 12 年の大学院重点化を経て 現在は水産科学研究院と称しております したがって 水産学部は研究院の下に釣り下がった教育組織であると言えます 現役のスタッフ 学部学生や大学院生に求められている大きなミッションは3つあると思います 1つは水産科学分野における世界に冠たる 知の集積 そしてもう1つは地域貢献 ( 水産 海洋分野における産業拠点の形成をめざす研究 技術の開発 ) そして最後に何よりも重要な若い人材の育成の3つです 最後に 水産学部のホームページからつぎの 2 つを引用して後輩たちが地域の皆さ んと共に歩む姿を紹介したいと思います 3

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新水産 海洋都市はこだてを支える人材養成 申東煥 ( 北海道大学大学院水産科学研究院水産 海洋コーディネーター養成事務局 ) 函館市は 海に囲まれた自然および歴史 文化に恵まれた観光都市であり 古くから水産業を基幹産業のひとつとしてきた 函館市には 水産 海洋をとりまく課題解決や産業創出を担う多くの学術研究機関や関連産業が集積し 学術研究開発を高度化できる環境が整っている このような地域の優位性を活かし 水産 海洋に関連した学術研究の発展を基盤として 現代社会が抱えている食糧 環境等の課題克服と産業発展に貢献できる豊かなまちづくりを目指している 市は 地域再生の取り組みとして 函館国際水産 海洋都市構想 を策定し 一般財団法人函館国際水産 海洋都市推進機構 を設立した この国際水産 海洋都市の実現のために 海洋 水産科学分野をはじめとする広い知的経験を有し 機構の機能的な運営をコーディネートできる人材の養成が急務である そこで 大学等が有する個性 特色を活かし 将来的な地域産業の活性化や地域の社会ニーズの解決に向け 地元で活躍し 地域の活性化に貢献し得る人材の育成を行うため 地域の大学等が地元の自治体との連携により 科学技術を活用して地域に貢献する優秀な人材を輩出する 地域の知の拠点 を形成し 地方分散型の多様な人材を創出するシステムを構築する 地域再生人材創出拠点の形成 として 新水産 海洋都市はこだてを支える人材養成 事業が平成 21 年度より始まった 本事業は 水産 海洋コーディネーター および 海のサポーター を育成することを目標としている 水産 海洋コーディネーター は 選抜された行政人 企業人等を対象として 基礎的な海洋 水産科学知識および技術を習得し 産業や政策に結びつける知的経験基盤を養うことを到達レベルとする 養成された人材は 函館国際水産 海洋都市推進機構に 水産 海洋コーディネーター として登録され 本プログラムで修得した能力を構想実現に活かし 持続可能な産業活力 産学官連携の強化 新産業を創設 観光と学術研究の融合 水産 海洋と産業 市民生活の調和など函館国際水産 海洋都市の実現にむけ広範囲での活躍が望まれている 一方 海のサポーター は 本プログラムの一部に市民が参加し 水産 海洋科学と市民をつなぐ様々な関連事業で協働できることを活動目標とし 豊かで生き生きとした 新水産 海洋都市はこだてを支える応援団 として期待されている 講義および実習 実験の様子 5