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メソポーラスなカーボンブラックを配合した電気二重層キャパシタの特性 宮崎大学田島大輔 電気二重層キャパシタ (EDLC: Electric Double Layer Capacitor は 燃料電池自動車などの始動用電源や無停電電源として利用され始めており 今後の市場拡大が期待されている しかし 問題点としてエネルギー密度が小さく 価格が高いという点があり それらを克服しなければならない 本研究は 安価で大容量の EDLC を開発することを大きな目標としている これまでの研究において導電材料に通常用いられるアセチレンブラック (AB: Acetylen black) よりも 電気二重層の形成に寄与するメソ孔を多く含むケッチェンブラック (KB: Ketjenblack) を用いた方がより静電容量が高くなることを明らかにしている そこで 本研究では導電材料のメソ孔に着目し KB にミクロ孔除去処理を施してメソ孔の割合を増やし 分極性電極に配合した際のメソ孔が EDLC 特性に与える影響を評価した 1. 使用した導電材料 導電材料として KB(EC-600JD) 前駆体である KB にミクロ孔除去処理が施されメソ孔の割合を多くした改質ケッチェンブラック (MKB: Modified Ketjenblack) を用いた 更に メソ孔の影響を検討するため 比較対象にミクロ孔を多く有する導電材料として Cabot 社製の Black pearls 2000(BP) を使用した 2. 導電材料の性状比較 実験に使用する導電材料について 文献及び企業提供のデータシートから性状の確認を行った 表 1 に導電材料の性状を示す 各導電材料は 揮発分 ph DBP( ジブチルフタレート ) 吸油量より評価している 表 1 より BP が最も高い揮発分を示し MKB は前駆体である KB より低い揮発分をとることが分かる 揮発分は 試料を 950 で加熱した際の揮発分を測定したものであり 一般に表面官能基が多くなるほど揮発する成分が多くなる そのため BP は官能基が最も多いため揮発分も最大の値を示した また MKB の揮発分が KB より低下していることからミクロ孔除去処理の過程で官能基が減少したと考えられる また 導電材料によって DBP 吸油量に差異があることを確認できる DBP 吸油量は ストラクチャーの発達を定量的に測定する手法で ストラクチャーが発達しているほど吸油量が大きく 1

なる よって KB 及び MKB は BP と比較してストラクチャーが発達していると言える MKB は前駆体である KB と比較して DBP 吸油量が約 5.07% と減少し 処理の前後でストラクチャーの発達が僅かであるが低下している しかしながら KB との DBP 吸油量に大差がないため EDLC の分極性電極に配合した際に良好な導電性を付与できると考えられる 表 1 導電材料の性状 Sample 揮発分 [%] ph DBP 吸油量 [ml/100g] 備考 KB 0.7 9.8 493 EC-600JD MKB 0.5 10.4 468 ミクロ孔除去処理 BP 2.0 7 330 ミクロ孔発達 3. 電子顕微鏡による観察 導電材料の SEM 画像と TEM 画像をそれぞれ 図 1 と図 2 に示す 各導電材料は球状の一次粒子がランダムに融着連結し ストラクチャーを形成していることが分かる 各ストラクチャー間は 20~100nm 程の空隙が存在し これはメソ孔からマクロ孔のサイズに該当する よって EDLC の分極性電極に適用した際に この空隙が電解質イオンの吸着に寄与するものと考えられる また 図 2 の TEM 画像から 導電材料によって粒子構造の違いが確認できる BP の一次粒子は空隙が無いのに対し KB 及び MKB は中空シェル構造を有しており 電気二重層の形成されやすいメソ孔を多く含んでいることが分かる よって KB 及び MKB を分極性電極に使用した際に 二重層容量の向上に寄与すると考えられる また TEM 画像から KB と MKB の一次粒子径は約 34nm と約 38nm BP のそれは約 24nm である 一般にカーボンブラックの粒子径と比表面積は反比例の関係にあることから 粒子径の最も小さな BP で比表面積が大きくなると予想される また MKB では粒子径が前駆体の KB より僅かに大きくなっている この原因としてミクロ孔除去処理による影響が考えられ 前駆体の KB より比表面積が低下すると考えられる さらに MKB では黒鉛化が進んだ形状が一部で確認できた MKB の黒鉛化部分の TEM 画像を図 3 に示す グラファイトの格子縞が明確に確認でき 一次粒子の形状も球形とは異なることが分かる この原因として高温処理による黒鉛化の進行が考えられる 2

200nm (a) KB 200nm (b) MKB 200nm (c) BP 図 1 導電材料の SEM 画像 3

20nm (a) KB 20nm (b) MKB 20nm (c) BP 図 2 導電材料の TEM 画像 4

10nm 図 3 MKB の黒鉛化部分 4. 導電材料の比表面積及び細孔径分布測定 EDLC の性能向上には 分極性電極に用いる炭素材料の比表面積や細孔構造が大きく関わる そこで 導電材料の比表面積及び細孔径分布について窒素ガス吸着法により測定を行った 測定試料として 3 種類の導電材料を用い 比表面積 メソ孔容積 ミクロ孔容積の測定を行った 測定試料は水分やその他の汚染物質を除去するため 温度 150 o C 到達圧力 100mTorr の加熱真空排気下で 24 時間脱ガスを行った 測定に Micromeritics 株式会社社製の自動比表面積 / 細孔分布測定装置 (Tristar 3000) を用い 77K での窒素吸着等温線を測定した 尚 測定より得られた窒素吸着等温線から 比表面積及びメソ孔容積 ミクロ孔容積を BET(Brunauer, Emmet, Teller) 法 BJH(Brrett, Joyner, Halenda) 法 t-plot 法により求めた 図 4 に導電材料の窒素吸着等温線 表 2 に導電材料の比表面積 ミクロ孔容積 メソ孔容積を示す また 図 5 及び図 6 にミクロ孔細孔径分布 メソ孔細孔径分布を示す 各導電材料の窒素吸着等温線は国際純正 応用化学連合 (IUPAC:International union of pure and applied chemistry) の定義から Ⅳ 型のメソ孔発達型であることが分かった IUPAC 分類から 各導電材料はメソ孔が発達した特性を有することが推測される また 表 2 図 5 図 6 から BP は全試料中 ミクロ孔が最も発達し 比表面積が最大であることが分かる また MKB は前駆体の KB に対してミクロ孔が確認できず 比表面積が約 11.7% 低下している これはミクロ孔除去処理により 2nm 未満のミクロ孔及び 2nm 付近のメソ孔が除去された影響であると言える 更に MKB はメソ孔容積が僅かに増加し 7~20nm 及び 32nm 以降の細孔容積が増加している これは観察された一次粒子径の拡大により 中空部分及び一次粒子間の容積が増えたことが考えられる よって KB へのミクロ孔除去処理はミクロ孔の消失だけでなく メソ孔容積の増大に繋がると言える 5

メソ孔の存在は細孔全体への電解質イオンの浸透に寄与することから メソ孔が発達した MKB で高い静電容量の発現が期待できる 図 4 導電材料の窒素吸着等温線 表 2 導電材料の比表面積 ミクロ孔容積 メソ孔容積 Sample BET surface area [m 2 /g] Micropore volume [cm 3 /g] Mesopore volume [cm 3 /g] KB 1482 0.450 2.10 MKB 1309 * 2.15 BP 1630 0.674 1.38 * 同一条件で測定不可 6

図 5 ミクロ孔細孔径分布 図 6 メソ孔細孔径分布 5. メソポーラスな導電材料を用いた EDLC の特性評価 導電材料のメソ孔が EDLC 特性に与える影響を調査するため 分極性電極に各導電材料を用 いて 水系電解液における EDLC の特性評価を行った 特性評価には イオン別の静電容量 7

レート特性 温度特性から導電材料のメソ孔が及ぼす影響を検討する 分極性電極の測定方法には 3 電極式のクロノポテンショメトリ (CP: Chronopotentiometry) サイクリックボルタンメトリ (CV: Cyclic Voltammetry) 及び交流インピーダンス法を用いた 分極性電極の材料として宝泉 ( 株 ) の水蒸気賦活処理を行った比表面積 2000m 2 /g 程度の活性炭を用いた また 導電材料には 3 種類の導電材料を用いた 分極性電極は活性炭と PTFE( ポリテトラフルオロエチレン ) 導電材料を配合し作製する PTFE はバインダーの役割を果たしている 分極性電極の配合量は PTFE の量を分極性電極の全重量に対して 5wt% 一定とし 活性炭を 85wt% 導電材料を 10wt% とした 配合した後 各試料を 150 o C で 1 時間乾燥し アズワン社製ホットプレス機 AH-2003 で直径 10mm 重量 17.5mg の大きさに圧粉成型した 圧粉成型の条件を表 5.1 に示す 作製した電極は電解液に含浸し 圧力 5kPa の真空デシケーター内で 30 分間減圧脱気処理を行い 実験に使用した 表 3 圧粉成型の条件 Temperature [ o C] Pressure [MPa] Time [min] 130 5 5 6. メソポーラスな導電材料を用いた EDLC のイオン別の静電容量 CP 法を用いてイオン別の脱離時の静電容量の測定を行った CP 法には北斗電工社製電気化学測定システム (HZ-5000) を用いた 測定条件を表 4 に示す 静電容量は CP 法より得られるクロノポテンショグラムより 各イオン脱離時の静電容量を算出した 尚 電解液の温度を一定にするため アズワン社製低温インキュベータ (CSB-900N series-2) を用いた また 測定には対極に Pt 参照電極に Ag/AgCl を使用した 尚 電解液中の溶存酸素を除去するため 測定前に窒素ガスによるバブリングを 10 分間行った 表 4 CP 法の測定条件 Electrolyte H 2 SO 4 0.5mol/L Temperature [ o C] 20 Potential [V] 0~1 Current [A/g] 0.5 8

図 7 に導電材料配合電極のクロノポテンショグラム 図 8 にクロノポテンショグラムから算出したアニオンとカチオンの静電容量を示す 各配合電極の自然電位 [V vs. Ag/AgCl] は KB 配合電極で約 0.367 MKB 配合電極で約 0.361 BP 配合電極で約 0.417 である 各配合電極において自然電位より高い電位領域はアニオンの吸着脱離によるものであり 低い電位領域はカチオンの吸着脱離である 各配合電極でクロノポテンショグラムの勾配が異なっている これは 導電材料の細孔径分布によって アニオンとカチオンの脱離時の静電容量に差異があることを示唆している 図 8 より 各配合電極でアニオンの静電容量がカチオンの静電容量を上回る結果となった 各サンプルのカチオン脱離に対するアニオン脱離の静電容量は KB 配合電極で 12.7% MKB 配合電極で 36.1% BP 配合電極で 7.79% と上昇しており アニオン脱離時で高い値を示す傾向にある 特に メソ孔が支配的である MKB 配合電極で顕著な変化が確認でき イオンの吸着脱離に寄与する比表面積が最低であるにも関わらず アニオン脱離時の静電容量が 181F/g と最も高い値を示すことが分かる これは 電解液中のアニオンがカチオンよりも大きく 導電材料の有するメソ孔がアニオンのサイズに適していたことが考えられる 電解液として使用した H 2 SO 4 では アニオンは SO 2-4 カチオンは H 3 O + として水和した状態で存在しており それぞれの水和イオン半径は SO 2-4 が 0.533nm H 3 O + が 0.42nm である よって イオンのサイズがミクロ孔に近いため 水和イオン半径が大きいアニオンでは吸着脱離に寄与できないミクロ孔が存在すると考えられる そのため 水和イオン半径より十分大きいメソ孔を多く有する MKB 配合電極は アニオンの吸着脱離にメソ孔が寄与したことで静電容量の向上に繋がったと考えられる 一方で 比表面積が大きい KB 配合電極と BP 配合電極ではミクロ孔がアニオンの吸着脱離に寄与しなかったため 静電容量の向上に繋がらなかったものと考えられる 以上のことから MKB 配合電極は水系電解液を用いた場合 メソ孔がイオンサイズの大きいアニオンの吸着脱離に寄与し 静電容量の向上に繋がることが分かった 9

Capacitance [F/g] Potential [V vs Ag/AgCl] 1.2 KB MKB BP 1 0.8 0.6 0.4 0.2 0 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 Time [s] 図 7 導電材料配合電極のクロノポテンショグラム 200 Anion capacitance C a [F/g] Cation capacitance C c [F/g] 150 100 50 0 KB MKB BP 図 8 アニオンとカチオンの静電容量 10

作製した分極性電極について 掃引速度を変化させた際の静電容量を測定し レート特性評価を行った 測定には北斗電工社製電気化学測定システム (HZ-5000) を用いた レート特性評価における測定条件を表 5 に示す 静電容量は CV 法より得られるサイクリックボルタモグラムより算出した 尚 電解液の温度を一定にするため アズワン社製低温インキュベータ (CSB-900N series-2) を用いた また 測定には対極に Pt 参照電極に Ag/AgCl を使用した 尚 電解液中の溶存酸素を除去するため 測定前に窒素ガスによるバブリングを 10 分間行った 表 5 レート特性評価における測定条件 Electrolyte H 2 SO 4 0.5mol/L Temperature [ o C] 20 Potential [V] -0.2~0.8 Sweep rate [mv/s] 1~200 Cycles 3 図 9 に導電材料配合電極のレート特性を示す 各導電材料配合電極において 掃引速度の上昇に従って静電容量が減少していることが分かる CV 法は電位走査により測定を行う その掃引速度が速いと分極性電極表面へのイオンの吸着が多くなり 分極性電極を構成する炭素材料の細孔の奥までイオンが達しなくなる そのため 静電容量が減少したものと考えられる 掃引速度の上昇に伴い MKB 配合電極の静電容量の減少は他の試料と比較して最も低く 掃引速度 10mV/s 以降で高い静電容量を示している 掃引速度 1mV/s 時の静電容量を基準とし掃引速度 10mV/s 時の静電容量を比較すると KB 配合電極で約 16.5% MKB 配合電極で約 13.4% BP 配合電極で約 17.9% 減少している 更に 掃引速度 1mV/s 時の静電容量を基準とし掃引速度 100mV/s 時の静電容量は KB 配合電極で約 70.9% MKB 配合電極で約 53.4% BP 配合電極で約 71.2% であり 100mV/s で MKB 配合電極の高い静電容量が顕著となっている この原因として導電材料のメソ孔がイオンの吸着速度に影響したものと考えられる ミクロ孔へのイオンの吸着はメソ孔への吸着と比較して困難であり 電流密度の増加に伴ってその影響が顕著になることが報告されている よって KB 配合電極と BP 配合電極が有するミクロ孔は 掃引速度の上昇に伴ってイオンの吸着が困難となり 静電容量への寄与が低下した推察される 一方で MKB 配合電極はメソ孔を多く有しているため 掃引速度の上昇に対してもメソ孔へイオンの吸着が行われ 電気二重層を形成したと考えられる 従って メソポーラスな導電材料を EDLC の分極性電極に用いることで 急速充放電が可能となることが期待できる 11

Capacitance/ F/g 以上のことから MKB 配合電極は水系電解液を用いたレート特性において 掃引速度の上昇 に対してメソ孔がイオンの吸着脱離に影響し 高い静電容量を示すことが分かった 200 150 KB10wt% MKB10wt% BP10wt% 100 50 0 0 50 100 150 200 Scan rate/ mv/s 図 9 導電材料配合電極のレート特性 7. まとめ メソポーラスな導電材料である MKB は比表面積が前駆体より低下する一方で イオンの吸着脱離に寄与するメソ孔を多く有することを確認した メソポーラスな導電材料である MKB のメソ孔が EDLC 特性に与える影響を調査するため 水系電解液におけるイオン別の容量特性 レート特性 温度特性を評価した その結果 イオン別の容量特性から イオン径によって静電容量に差異が表れ メソ孔がイオンサイズの大きいアニオンの吸着脱離に寄与し MKB でアニオン脱離時の静電容量向上に繋がった また レート特性では掃引速度の上昇に対してメソ孔へイオンの吸着が行われ 高い掃引速度においても静電容量の減少率は低いことが分かった 参考論文 D. Tashima, T. Kishita, S. Maeno and Y. Nagasawa, Mesoporous graphitized Ketjenblack as conductive nanofiller for supercapacitors, Materials Letters, Vol.110, pp.105-107, November 2013 12