4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以

Similar documents
統合失調症発症に強い影響を及ぼす遺伝子変異を,神経発達関連遺伝子のNDE1内に同定した

脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

統合失調症モデルマウスを用いた解析で新たな統合失調症病態シグナルを同定-統合失調症における新たな予防法・治療法開発への手がかり-

<4D F736F F D208DC58F4994C581798D4C95F189DB8A6D A C91E A838A838A815B83588CB48D EA F48D4189C88

Microsoft Word - 博士論文概要.docx

( 続紙 1 ) 京都大学 博士 ( 薬学 ) 氏名 大西正俊 論文題目 出血性脳障害におけるミクログリアおよびMAPキナーゼ経路の役割に関する研究 ( 論文内容の要旨 ) 脳内出血は 高血圧などの原因により脳血管が破綻し 脳実質へ出血した病態をいう 漏出する血液中の種々の因子の中でも 血液凝固に関

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

報道発表資料 2006 年 8 月 7 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人大阪大学 栄養素 亜鉛 は免疫のシグナル - 免疫系の活性化に細胞内亜鉛濃度が関与 - ポイント 亜鉛が免疫応答を制御 亜鉛がシグナル伝達分子として作用する 免疫の新領域を開拓独立行政法人理化学研究所 ( 野依良治理事

共同研究チーム 個人情報につき 削除しております 1

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

( 図 ) IP3 と IRBIT( アービット ) が IP3 受容体に競合して結合する様子

Microsoft Word - 【確定】東大薬佐々木プレスリリース原稿

1. 背景血小板上の受容体 CLEC-2 と ある種のがん細胞の表面に発現するタンパク質 ポドプラニン やマムシ毒 ロドサイチン が結合すると 血小板が活性化され 血液が凝固します ( 図 1) ポドプラニンは O- 結合型糖鎖が結合した糖タンパク質であり CLEC-2 受容体との結合にはその糖鎖が

サカナに逃げろ!と指令する神経細胞の分子メカニズムを解明 -個性的な神経細胞のでき方の理解につながり,難聴治療の創薬標的への応用に期待-

生物 第39講~第47講 テキスト

2019 年 3 月 28 日放送 第 67 回日本アレルギー学会 6 シンポジウム 17-3 かゆみのメカニズムと最近のかゆみ研究の進歩 九州大学大学院皮膚科 診療講師中原真希子 はじめにかゆみは かきたいとの衝動を起こす不快な感覚と定義されます 皮膚疾患の多くはかゆみを伴い アトピー性皮膚炎にお

( 様式乙 8) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 米田博 藤原眞也 副査副査 教授教授 黒岩敏彦千原精志郎 副査 教授 佐浦隆一 主論文題名 Anhedonia in Japanese patients with Parkinson s disease ( 日本人パー

Microsoft Word - 【広報課確認】プレスリリース原稿(乘本)池谷‗RIKEN最終版

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

マスコミへの訃報送信における注意事項

表紙.indd

平成 29 年 6 月 9 日 ニーマンピック病 C 型タンパク質の新しい機能の解明 リソソーム膜に特殊な領域を形成し 脂肪滴の取り込み 分解を促進する 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長門松健治 ) 分子細胞学分野の辻琢磨 ( つじたくま ) 助教 藤本豊士 ( ふじもととよし ) 教授ら


赤色 camp 可視化蛍光タンパク質センサーの開発 1. 発表者 : 原田一貴 ( 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻博士課程 2 年 ) 伊藤幹 ( 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻修士課程 2 年 ( 研究当時 )) 坪井貴司 ( 東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻准教授 )

M波H波解説

いて認知 社会機能障害は日々の生活に大きな支障をきたしますが その病態は未だに明らかになっていません 近年の統合失調症の脳構造に関する研究では 健常者との比較で 前頭前野 ( 注 4) などの前頭葉や側頭葉を中心とした大脳皮質の体積減少 海馬 扁桃体 視床 側坐核などの大脳皮質下領域の体積減少が報告

<4D F736F F D20322E CA48B8690AC89CA5B90B688E38CA E525D>

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

化を明らかにすることにより 自閉症発症のリスクに関わるメカニズムを明らかにすることが期待されます 本研究成果は 本年 京都において開催される Neuro2013 において 6 月 22 日に発表されます (P ) お問い合わせ先 東北大学大学院医学系研究科 発生発達神経科学分野教授大隅典

法医学問題「想定問答」(記者会見後:平成15年  月  日)

生物時計の安定性の秘密を解明

世界初! 細胞内の線維を切るハサミの機構を解明 この度 名古屋大学大学院理学研究科の成田哲博准教授らの研究グループは 大阪大学 東海学院大学 豊田理化学研究所との共同研究で 細胞内で最もメジャーな線維であるアクチン線維を切断 分解する機構をクライオ電子顕微鏡法注 1) による構造解析によって解明する

報道発表資料 2002 年 10 月 10 日 独立行政法人理化学研究所 頭にだけ脳ができるように制御している遺伝子を世界で初めて発見 - 再生医療につながる重要な基礎研究成果として期待 - 理化学研究所 ( 小林俊一理事長 ) は プラナリアを用いて 全能性幹細胞 ( 万能細胞 ) が頭部以外で脳

く 細胞傷害活性の無い CD4 + ヘルパー T 細胞が必須と判明した 吉田らは 1988 年 C57BL/6 マウスが腹腔内に移植した BALB/c マウス由来の Meth A 腫瘍細胞 (CTL 耐性細胞株 ) を拒絶すること 1991 年 同種異系移植によって誘導されるマクロファージ (AIM

Microsoft Word - PRESS_

るマウスを解析したところ XCR1 陽性樹状細胞欠失マウスと同様に 腸管 T 細胞の減少が認められました さらに XCL1 の発現が 脾臓やリンパ節の T 細胞に比較して 腸管組織の T 細胞において高いこと そして 腸管内で T 細胞と XCR1 陽性樹状細胞が密に相互作用していることも明らかにな

の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異の同定と病態メカニズムの解明 ポイント 統合失調症の発症に関与するゲノムコピー数変異 (CNV) が 患者全体の約 9% で同定され 難病として医療費助成の対象になっている疾患も含まれることが分かった 発症に関連した CNV を持つ患者では その 40%

RNA Poly IC D-IPS-1 概要 自然免疫による病原体成分の認識は炎症反応の誘導や 獲得免疫の成立に重要な役割を果たす生体防御機構です 今回 私達はウイルス RNA を模倣する合成二本鎖 RNA アナログの Poly I:C を用いて 自然免疫応答メカニズムの解析を行いました その結果

植物が花粉管の誘引を停止するメカニズムを発見

Microsoft Word - 【広報課確認】 _プレス原稿(最終版)_東大医科研 河岡先生_miClear

神経細胞での脂質ラフトを介した新たなシグナル伝達制御を発見

Microsoft Word - 01.doc

Microsoft Word - 【確定】プレスリリース原稿(坂口)_最終版

統合失調症の病名変更が新聞報道に与えた影響過去約 30 年の網羅的な調査 1. 発表者 : 小池進介 ( 東京大学学生相談ネットワーク本部 / 保健 健康推進本部講師 ) 2. 発表のポイント : 過去約 30 年間の新聞記事 2,200 万件の調査から 病名を 精神分裂病 から 統合失調症 に変更

報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

報道発表資料 2006 年 6 月 21 日 独立行政法人理化学研究所 アレルギー反応を制御する新たなメカニズムを発見 - 謎の免疫細胞 記憶型 T 細胞 がアレルギー反応に必須 - ポイント アレルギー発症の細胞を可視化する緑色蛍光マウスの開発により解明 分化 発生等で重要なノッチ分子への情報伝達

Microsoft Word - プレス原稿_0528【最終版】

-2-

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 小川憲人 論文審査担当者 主査田中真二 副査北川昌伸 渡邉守 論文題目 Clinical significance of platelet derived growth factor -C and -D in gastric cancer ( 論文内容の要旨 )

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

別紙 自閉症の発症メカニズムを解明 - 治療への応用を期待 < 研究の背景と経緯 > 近年 自閉症や注意欠陥 多動性障害 学習障害等の精神疾患である 発達障害 が大きな社会問題となっています 自閉症は他人の気持ちが理解できない等といった社会的相互作用 ( コミュニケーション ) の障害や 決まった手

論文題目  腸管分化に関わるmiRNAの探索とその発現制御解析

PowerPoint プレゼンテーション

Transcription:

ドーパミンの脳内報酬作用機構を解明 依存症など精神疾患の理解 治療へ前進 1. 発表者 : かさいはるお河西春郎 ( 東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター構造生理学部門教授 ) やぎしたしょう柳下祥 ( 東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター構造生理学部門特任助教 ) 2. 発表のポイント : 快楽中枢である側坐核 ( 注 1) の神経細胞において グルタミン酸とドーパミン刺激を独立に制御し シナプス ( 注 2) の結合強度の変化に対するドーパミンの作用をマウスにおいて解明した ドーパミンの報酬作用は スパイン ( 注 3) が活性化された直後 2 秒以内の狭い時間枠でのみ シナプスの結合を強化することが明らかとなった 報酬作用の神経基盤を明らかにした本成果は 依存症や強迫性障害などの精神疾患の理解 治療に新しい展望をもたらすと期待される 3. 発表概要 : パブロフの犬 の実験などにより 100 年以上前から知られている 条件付け は 行動選択 の基本機構として医学的 心理学的にも広く研究 利用されている 最近では 神経伝達物質で あるドーパミンがヒトや動物の報酬学習に関与すると言われている しかしながら ドーパミン がどのような機構により報酬信号として働くかは不明であった 一般に 学習が成立する際にはグルタミン酸を興奮性伝達物質とする神経細胞のシナプス ( 注 2) の結合強度が変わる ( シナプス可塑性 ) 東京大学大学院医学系研究科の河西春郎教授らの グループは マウスの快楽中枢である側坐核において グルタミン酸とドーパミンをそれぞれ独 立に放出させ シナプス可塑性に対するドーパミンの作用を調べた すると シナプスがグルタ ミン酸で活性化され その直後の狭い時間枠でドーパミンが作用した時のみスパインの頭部増大 ( 注 3) が起き シナプス結合を強化することが明らかになった また この時間枠は行動実験において条件付けが成立するために 行動後に報酬を与えなければならない時間枠とほぼ一致し た 本研究により 行動の 条件付け が起きる分子細胞機構が世界で初めて明らかとなった 側 坐核は 依存症 強迫性障害などと密接に関係するため 本成果は 精神疾患の理解 治療に新 しい展望をもたらすと期待される 本研究は 文部科学省脳科学研究戦略推進プログラム ( 課題 G 神経情報基盤 ) の一環とし て実施され 科学研究費特別推進研究 基盤 (S) の支援を受けて行われた

4. 発表内容 : 研究の背景 イヌに お手 を新しく教える場合 お手 ができた時に餌を与えるとイヌはまた お手 をして餌をもらおうとする このように動物が行動を起こした直後に報酬 ( 餌 ) を与えると そ の行動が強化され 繰り返し行動するようになる ( 図 1 左 ) このことは 100 年以上前にソーン ダイクやパブロフにより報告された 報酬は行動の直後に与えられると効率的な学習を起こすが 行動と報酬までの時間が長くなると学習の効率は著しく下がる また 単に報酬 ( 餌 ) だけを与 えて待っていても お手 をするようにならない このように報酬学習では 行動に対してどのようなタイミング ( 時間枠 ) で報酬が与えられるかが学習の効率を決定する このように行動に おける報酬を与えるタイミングの重要性ははっきりしていたが この報酬のタイミングを検出す る神経基盤は不明であった これまでの知見から 中脳のドーパミンを放出する神経細胞の活動 つまり そこから放出さ れるドーパミンが報酬信号を表すと考えられてきた ドーパミン神経細胞は報酬に反応して 1 秒 以下の一過性の発火を示し これにより報酬学習が誘引される また学習の基盤にはグルタミン 酸作動性シナプスにおけるシナプスの結合強度の変化 ( シナプス可塑性 ) があるとされ ドーパ ミン神経細胞の投射先である線条体や側坐核 ( 図 1 右 ) といった脳領域でのドーパミンが グル タミン酸作動性シナプスの可塑性を修飾すると考えられてきた ドーパミンが報酬作用を持つと すれば 行動の報酬タイミングに対応してドーパミンの一過性発火が直前に活性化されたシナプ スのみを選択的に強化する特性を持つ必要がある しかし これまでの電極による電気刺激を使 った実験技術ではグルタミン酸やドーパミンを放出する神経線維を区別して刺激することができず この重要な問題を明らかにすることができなかった 研究内容 東京大学大学院医学系研究科の河西春郎教授らの研究グループは 本研究グループでこれまで に開発した光によるグルタミン酸刺激 (2 光子アンケイジング法 注 4) と 光遺伝学 ( 注 5) によるドーパミン神経刺激とを組み合わせることで グルタミン酸とドーパミンを独立して制御 できるような実験系をマウスにおいて構築し ドーパミン作用の時間枠の解明に挑戦した これまでに 本研究グループの成果として 海馬という脳領域において スパインの頭部が大 きくなる運動 ( スパインの頭部増大 ) によりシナプス結合が増強することを報告している そこ で 側坐核の神経細胞の一群である D1 受容体発現 - 中型有棘神経細胞 ( 注 6) において 2 光子 アンケイジング法によりスパインをグルタミン酸で刺激しながら ドーパミン神経細胞の一過性 発火を起こしてドーパミンの作用を観察した ( 図 2 左 ) すると グルタミン酸刺激の直後にドーパミン刺激を加えると顕著なスパイン頭部増大が観察されたが ( 図 2 右上 ) グルタミン酸刺 激の直前や 5 秒ほど後にドーパミン刺激をしてもスパイン頭部増大は見られなかった さまざま な時間枠でドーパミン刺激を与えたところ グルタミン酸刺激の 0.3 2 秒の間に与えられた時に のみスパイン頭部増大が見られ ドーパミンがシナプス結合を増強する時間枠が世界で初めて明 らかになった ( 図 2 右下 ) この時間枠は ドーパミン神経細胞の電気自己刺激や報酬と行動を 調べた実験において 学習が成立するために報酬を与えなければいけない時間枠とほぼ一致して いた

社会的意義 今後の展望 本研究により 側坐核の 1 つ 1 つのスパイン シナプスはグルタミン酸により活性化された後 報酬信号であるドーパミンが与えられた時にのみスパイン頭部増大することが示された その際 スパイン頭部増大を強化する時間特性が存在し ドーパミンは一定の時間枠においてのみ報酬作 用を持ち 動物個体の報酬学習を起こすと示唆された 報酬学習は依存症や強迫性障害などの精 神疾患の病態の根幹である 覚醒剤やアルコールは快感物質として強い報酬学習を引き起こして しまい 物質の使用をやめることができないことから依存症に至ると考えられている これまで の治療ではこの 快 の記憶を消すことができないため 一度薬物の使用をやめられたとしても すぐに再発してしまうことが問題になっていた 今回の研究を発展させ 快記憶の形成過程や消 失過程に関わるシナプスや分子機構を明らかにすることで これまでとは全く異なる新しい治療 戦略を考案していくことができるかもしれない さらに 本研究により明らかになった ドーパ ミンがシナプス結合を増強する時間枠は ロボットの強化学習理論が用いている 報酬時間枠 によく対応するので 脳が強化学習機構を用いていることはほぼ確かとなり 学習理論にも重要 な示唆を与える 5. 発表雑誌 : 雑誌名 : Science 9 月 26 日号 (9 月 25 日オンライン版 ) 論文タイトル : A Critical Time Window for Dopamine Actions on the Structural Plasticity of Dendritic Spines 著者 : Sho Yagishita, Akiko Hayashi-Takagi, Graham C.R. Ellis-Davies, Hidetoshi Urakubo, Shin Ishii, and Haruo Kasai DOI 番号 :10.1126/science.1255514 アブストラクト URL http://www.sciencemag.org/content/345/6204/1616.abstract 6. 問い合わせ先 : 東京大学大学院医学系研究科附属疾患生命工学センター構造生理学部門教授河西春郎 TEL:03-5841-1439 携帯 : 090-3565-0601 Fax: 03-5841-1442 Email:hkasai@m.u-tokyo.ac.jp 文部科学省脳科学研究戦略推進プログラムに関するお問い合わせ 文部科学省 脳科学研究戦略推進プログラム 事務局担当 : 丸山 TEL:0564-55-7803 Fax:0564-55-7805 Email:srpbs@nips.ac.jp

7. 用語解説 : ( 注 1) 側坐核快楽中枢と知られ ヒトにおいて依存症やうつ病などの精神疾患との関連が深い脳領域である 新皮質や海馬 扁桃体といった脳領域から興奮性入力 ( グルタミン酸 ) を受けると同時に腹側被蓋野からドーパミン神経の入力を受ける このような基本的な神経回路や機能にはマウスとヒトは相同している ( 注 2) シナプス神経細胞間の接合部位でグルタミン酸が放出され 受容される箇所 ( 注 3) スパインの頭部増大興奮性シナプスは特有の棘構造 ( スパイン 樹状突起スパインともいう ) を持つ このスパインの頭部の形態が増大することで シナプス結合強度を増加させる このようなスパインの持つ運動性が 私たちの速い精神活動の基盤になるのではないかと考えられている ( 注 4)2 光子アンケイジング法 2 つの光子が同時に分子に吸収される非線形な現象を用いて点状に分子を励起する顕微鏡を2 光子顕微鏡という この顕微鏡を グルタミン酸を放出する化学反応に用いて 点状にグルタミン酸を放出して単一のスパインを刺激する方法 ( 注 5) 光遺伝学光活性化タンパク質を細胞に遺伝子導入することで 細胞機能を光により制御する技術 本研究においては青色光の照射により細胞を発火させることができるチャネルロドプシン 2 遺伝子をドーパミン神経細胞に導入し 青色光によるドーパミン神経細胞の操作を可能にしている ( 注 6)D1 受容体発現 - 中型有棘神経細胞側坐核の 9 割ほどの神経細胞は中型有棘神経細胞と呼ばれる樹状突起スパインに富む神経細胞である この中型有棘神経細胞はドーパミン 1 型 (D1) 受容体を発現する神経細胞とドーパミン 2 型受容体を発現する神経細胞の 2 種類に大別される このうち D1 受容体発現 - 中型有棘神経細胞は報酬学習の獲得に関わることが知られている 8. 添付資料 : 図や更に詳細な解説は下記のサイトからダウンロードいただけます http://www.bm2.m.u-tokyo.ac.jp/press2014.html

図 1. 動物の報酬学習と関連する神経回路 図 2. 側坐核のシナプスにおけるスパインの頭部増大と そのドーパミン遅延依存性