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SC-85X2取説


説明文書作成上の留意点

京都府がん対策推進条例をここに公布する 平成 23 年 3 月 18 日 京都府知事山田啓二 京都府条例第 7 号 京都府がん対策推進条例 目次 第 1 章 総則 ( 第 1 条 - 第 6 条 ) 第 2 章 がん対策に関する施策 ( 第 7 条 - 第 15 条 ) 第 3 章 がん対策の推進


リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ


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がんの診療の流れ この図は がんの 受診 から 経過観察 への流れです 大まかでも 流れがみえると心にゆとりが生まれます ゆとりは 医師とのコミュニケーションを後押ししてくれるでしょう あなたらしく過ごすためにお役立てください がんの疑い 体調がおかしいな と思ったまま 放っておかないでください な

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

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アレルギー疾患対策基本法 ( 平成二十六年六月二十七日法律第九十八号 ) 最終改正 : 平成二六年六月一三日法律第六七号 第一章総則 ( 第一条 第十条 ) 第二章アレルギー疾患対策基本指針等 ( 第十一条 第十三条 ) 第三章基本的施策第一節アレルギー疾患の重症化の予防及び症状の軽減 ( 第十四条

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

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3 医療安全管理委員会病院長のもと 国府台病院における医療事故防止対策 発生した医療事故について速やかに適切な対応を図るための審議は 医療安全管理委員会において行うものとする リスクの把握 分析 改善 評価にあたっては 個人ではなく システムの問題としてとらえ 医療安全管理委員会を中心として 国府台

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困ったときのQ&A

第 2 章 1 診療ガイドライン作成手順およびスケジュール 診療ガイドラインは, 以下の作成手順により作成される 計画にあたっては, 全体を通してどのくらいの時間が必要か, 各手順にどの程度の時間と費用をかけるかを考慮し, 具体的に立案する必要がある 1 作成目的の明確化 2 作成主体の決定 3 事

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1.[ 慢性腰痛症患者の生活実態について ] 1-1. 仕事への影響 -3 人に1 人が慢性的な腰痛で仕事を辞めたいと思ったことがあると回答 - 慢性的な腰痛 が仕事へ与える影響について調査したところ 3 人に1 人が 仕事を辞めたいと思ったことがある (35.2%) と回答しました さらに 5 人

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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2. 平成 9 年遠隔診療通知の 別表 に掲げられている遠隔診療の対象及び内 容は 平成 9 年遠隔診療通知の 2 留意事項 (3) イ に示しているとお り 例示であること 3. 平成 9 年遠隔診療通知の 1 基本的考え方 において 診療は 医師又は歯科医師と患者が直接対面して行われることが基本

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3) 適切な薬物療法ができる 4) 支持的関係を確立し 個人精神療法を適切に用い 集団精神療法を学ぶ 5) 心理社会的療法 精神科リハビリテーションを行い 早期に地域に復帰させる方法を学ぶ 10. 気分障害 : 2) 病歴を聴取し 精神症状を把握し 病型の把握 診断 鑑別診断ができる 3) 人格特徴

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案要綱


要望番号 ;Ⅱ 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 1) 1. 要望内容に関連する事項 要望 者 ( 該当するものにチェックする ) 優先順位 学会 ( 学会名 ; 日本ペインクリニック学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 2 位 ( 全 4 要望中 )

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別添 1 抗不安薬 睡眠薬の処方実態についての報告 平成 23 年 11 月 1 日厚生労働省社会 援護局障害保健福祉部精神 障害保健課 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業 向精神薬の処方実態に関する国内外の比較研究 ( 研究代表者 : 中川敦夫国立精神 神経医療研究センタートラン

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平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下鼠径 ヘルニア修復術を導入 認定資格 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会指導医 専門医 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 外科医長 渡邉 卓哉 東海中央病院では 3月から腹腔鏡下鼠径ヘルニ ア修復術を導入し この手術方法を

総会名簿 代表区分 氏 名 現 役 職 名 1. 健康保険 船 員保険及び国民 幸 野 庄 司 健康保険組合連合会理事 健康保険の保険 平 川 則 男 日本労働組合総連合会総合政策局長 者並びに被保険 間 宮 清 日本労働組合総連合会 患者本位の医療を確立する連絡会 委員 者 事業主及び 宮 近 清

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セッション 6 / ホールセッション されてきました しかしながら これらの薬物療法の治療費が比較的高くなっていることから この薬物療法の臨床的有用性の評価 ( 臨床的に有用と評価されています ) とともに医療経済学的評価を受けることが必要ではないかと思いまして この医療経済学的評価を行うことを本研

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医療関係者 Version 2.0 RET 遺伝学的検査の実施について Ⅰ.RET 遺伝学的検査の対象 甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査 平成 28 年 4 月より甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査が保険収載された 診療報酬点数表によると 保険適用による RET 遺伝学的検査は 遺

Transcription:

腰痛診療ガイドライン 2012

Japanese Orthopaedic Association(JOA)Clinical Practice Guideline for the Management of Low Back Pain The Japanese Orthopaedic Association, 2012 Published by Nankodo Co., Ltd., Tokyo, 2012

監修 日本整形外科学会日本腰痛学会 編集 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会腰痛診療ガイドライン策定委員会 診療ガイドライン策定組織 < 日本整形外科学会 > 理事長岩本幸英九州大学大学院教授 < 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 > 担当理事 久保 俊一 京都府立医科大学大学院教授 委員長 金谷 文則 琉球大学大学院教授 < 腰痛診療ガイドライン策定委員会 > 委員長 白土 修 福島県立医科大学会津医療センター準備室教授 委員 新井 嘉容 国立印刷局東京病院部長 稲見 聡 獨協医科大学講師 内田 研造 福井大学准教授 川口 善治 富山大学准教授 木村 敦 自治医科大学講師 竹下 克志 東京大学大学院准教授 辻 崇 慶應義塾大学 土井田 稔 高槻病院副院長 宮本 雅史 日本医科大学准教授 矢吹 省司 福島県立医科大学教授 アドバイザー高橋 和久 千葉大学大学院教授 米延 策雄 大阪南医療センター院長 iv

< 構造化抄録作成協力者 > 新井 嘉容 石川 哲大 稲見 聡 岩井智守男 内田 研造 江口 和 遠藤 健司 大島 寧 大鳥精司 荻久保 修 小野寺 剛 折田純久 恩田 啓 角谷賢一朗 加藤 剛 加藤 仲幸 鴨田 博人 川口善治 川端 茂徳 北村 繁行 木村 敦 金 竜 元文 芳和 今野俊介 坂井顕一郎 佐々木真一 白土 修 杉田 守礼 杉田 大輔 鈴木 都 須藤賢太郎 関 庄二 相馬一仁 高橋 和久 竹下 克志 筑田博隆 張 鍾穎 辻 崇 土井田稔 富澤 將司 中嶋 隆夫 中嶋秀明 中野 正人 並川 崇 二階堂琢也 西田康太郎 原 慶宏 前野耕一郎 増田 和浩 宮城 正行 宮本雅史 村上 秀樹 森井 次郎 森山徳秀 安田 剛敏 矢吹 省司 山本潤哉 由留部 崇 吉井 俊貴 米澤郁穂 米延 策雄 渡邉 修司 v

日本整形外科学会診療ガイドライン策定にあたって 高齢社会を迎えたわが国では,2010 年時点の平均寿命が男性 79.6 歳, 女性が 86.4 歳,65 歳以上の高齢者人口が 2,956 万人に及んでいます.1947 年時点の平均寿命は男性 50.1 歳, 女性 54.0 歳でしたから, わずか 60 余年の間に平均寿命が男女とも約 30 年も延長したことになります. 急激な高齢化により疾病構造も様変わりし, 骨粗鬆症や変形性関節症, 腰部脊柱管狭窄症などが, 整形外科の主要疾患に仲間入りしました. 一方, 診断 治療技術も近年めざましい進歩をとげました. 画像診断をはじめとする診断技術の進歩により病変の早期かつ正確な診断が可能となり, 数々の優れた薬剤や高度な手術法の開発により優れた治療成績が得られるようになったのです. しかし一方で, 幾多の診断技術や治療法のオプションの中から, 個々の患者さんのために最も適切な方法を選ぶにあたり, 何らかのガイドラインが必要になってきました. ほとんどの患者さんが求めている医療は, 安全で確実な医療, すなわち標準的な医療です. 日本整形外科学会では, 運動器疾患の患者さんに標準的な医療を提供するために, 各疾患に対するエビデンスに基づいた ガイドライン を策定し, 時間が経過したものについては改訂作業を進めています. この診療ガイドラインが, 医療の現場, および医師教育の場で十分に活かされ, 運動器医療の向上につながっていくことを願ってやみません. 2012 年 10 月 日本整形外科学会理事長 岩本 幸英 vi

運動器疾患ガイドライン策定の基本方針 2011 年 2 月 25 日 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会委員長金谷文則 1. 作成の目的本ガイドラインは運動器疾患の診療に従事する医師を対象とし, 日本で行われる運動器疾患の診療において, より良い方法を選択するための1つの基準を示し, 現在までに集積されたその根拠を示している. ただし, 本書に記載されていない治療法が行われることを制限するものではない. 主な目的を以下に列記する. 1) 運動器疾患の現時点で適切と考えられる予防 診断 治療法を示す. 2) 運動器疾患の治療成績と予後の改善を図る. 3) 施設間における治療レベルの偏りを是正し, 向上を図る. 4) 効率的な治療により人的 経済的負担を軽減する. 5) 一般に公開し, 医療従事者間や医療を受ける側との相互理解に役立てる. 2. 作成の基本方針 1) 本ガイドラインはエビデンスに基づいた現時点における適切な予防 診断と適正な治療法の適応を示すものとする. 2) 記述は可能な限りエビデンスに基づくことを原則とするが, エビデンスに乏しい分野では, 従来の治療成績や理論的な根拠に基づいて注釈をつけた上で記述してもよい. 3) 日常診療における推奨すべき予防 診断と治療法をエビデンスに基づいて検証することを原則とするが, 評価が定まっていない, あるいはまだ普及していないが有望な治療法について注釈をつけて記載してもよい. 3. ガイドラインの利用 1) 運動器疾患を診療する際には, このガイドラインに準拠し適正な予防 診断 治療を行うことを推奨する. 2) 本ガイドラインは一般的な記述であり, 個々のケースに短絡的に当てはめてはならない. 3) 診療方針の決定は医師および患者のインフォームド コンセントの形成の上で行われるべきであり, とくに本ガイドラインに記載のない, あるいは推奨されていない治療を行う際は十分な説明を行い, 同意を得る必要がある. 4) 本ガイドラインの一部を学会方針のごとく引用し, 裁判 訴訟に用いることは本ガイドラインの主旨ではない. 4. 改訂本ガイドラインは, 運動器疾患診療の新たなエビデンスの蓄積に伴い随時改訂を行う. vii

序文 腰痛は一つの疾患単位ではなく, 症状の名称である. しかし, これが最も代表的な common disease( 誰でもなり得るありふれた病気, 頻度の高い疾患 ) の一つであることは疑いの余地がない. 事実, 厚生労働省国民生活基礎調査でも, 常に上位に名を連ねる.Common disease であるが故に, その具体的な詳細に関する研究, 文献, 書籍は膨大な数に上る. 一般大衆向けの雑誌, テレビなどのマスメディアでも腰痛に関わる記事, 番組の特集は枚挙に遑がない. 医療者, 非医療者が腰痛という 国民病 に関心を持ち, 時に正しい行動を取り, 時に誤った情報を流す. しかし, 我々整形外科医は, 骨 軟骨 関節 脊椎 脊髄 神経 筋肉という運動器のエキスパートである. 腰痛の研究, 治療に携わって 100 年以上という確固たる歴史を有する. 我々が腰痛治療の王道を行かずして, 誰がその道を行こうか? 腰痛診療ガイドラインは係る状況を鑑み, 日本整形外科学会が企画し, 日本腰痛学会が主体となり作成された. その理念は, 腰痛治療のプライマリケアに焦点を絞り, 腰痛に苦しむ患者に対して正しく, 的確なトリアージを可能せしめることである. 腰痛に最も豊富な治療経験を有する整形外科医はもちろん, 内科を始めとする各専門医家にとって,EBM に則った適切な情報を提供することを目的とした. その理念 目的を基に, 平成 20 年冬, 第一回腰痛診療ガイドライン策定委員会が開催された. 爾来 4 年の歳月が流れ, ここに日本版腰痛診療ガイドラインが上梓された. 読者諸氏が, 委員会メンバーの真意と労苦を汲み取り, 本ガイドラインを有効活用して下さることを心よりお願い申し上げたい. 本ガイドライン作成に際しては, 数多くの方々の御協力を得た. 特に, 腰痛診療ガイドライン策定委員会委員とアドバイザーの諸先生方には, 計 20 回に及ぶ委員会でお世話になった. 彼らとは時に激論を交わし, 時に腰痛診療に対するシンパシーを共有した. 今では, 戦友 のような感慨を抱く. 深甚なる感謝の意を表したい. 日本整形外科学会理事長岩本幸英先生, 同診療ガイドライン委員会担当理事久保俊一先生, 同委員長金谷文則先生の御支援 御配慮が無ければ, もとより本ガイドラインは日の目を見るに至らなかった. 作製の過程においては, 日本整形外科学会, 日本脊椎脊髄病学会, 日本腰痛学会の代議員, 評議員の先生方から, 多数の貴重な御意見を頂戴した. この場を借りて, 心からの御礼を申し上げたい. 文献検索, 構造化抄録作成等の実務面では, 国際医学情報センター逸見麻理子氏に無理難題を常に快くお引き受け戴いた. 併せて御礼を申し上げる. 本ガイドラインが腰痛診療に携わる全ての医師, 腰痛に苦しむ全ての患者さんの福音となることを祈念して, 本書の序に代える. 2012 年 10 月 日本整形外科学会腰痛診療ガイドライン策定委員会委員長白土修 viii

目 次 前文 1 1 2 はじめに 1 診療ガイドラインの作成手順 1 2.1. 作成のための基本理念 1 2.2. 章立てとクリニカルクエスチョン 2 2.3. 文献の検索と選択, 内容の記載 2 2.4. エビデンスレベルと推奨度の決定 8 3 おわりに 8 第 1 章定義 11 CQ 1. 腰痛はどのように定義されるか 12 第 2 章疫学 15 CQ 2. 腰痛と職業との間に関係はあるか 16 CQ 3. 腰痛は生活習慣と関係があるか 18 CQ 4. 腰痛は心理社会的因子と関係があるか 21 CQ 5. 腰痛の自然経過はどのようであるか 23 第 3 章診断 25 CQ 6. 腰痛患者が初診した場合に必要とされる診断の手順は 26 CQ 7. 腰痛診断において有用な画像検査は何か, またはその他に有用な検査は あるか 30 第 4 章治療 37 CQ 8. 腰痛の治療に安静は必要か 38 CQ 9. 腰痛に薬物療法は有効か 40 CQ 10. 腰痛に物理 装具療法は有効か 46 CQ 11. 腰痛に運動療法は有効か 48 CQ 12. 腰痛に患者教育と心理行動的アプローチ ( 認知行動療法 ) は有効か 54 目次 ix

CQ 13. 腰痛に神経ブロック 注射療法は有効か 57 CQ 14. 腰痛に手術療法 ( 脊椎固定術 ) は有効か 59 CQ 15. 腰痛に代替療法は有効か 61 CQ 16. 腰痛の治療評価法で有用なものは何か 64 第 5 章予防 67 CQ 17. 腰痛は予防可能か, 可能であるならば有効な予防法は 68 用語解説 71 索引 74 x 目次