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手法 という ) を検討するものとする この場合において 唯一の手法を選択することが困難であるときは 複数の手法を選択できるものとする なお 本規程の対象とする PPP/PFI 手法は次に掲げるものとする イ民間事業者が公共施設等の運営等を担う手法ロ民間事業者が公共施設等の設計 建設又は製造及び運営

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スタープラン を策定し 2015 年 12 月に閣議承認された 同マスタープランにおいて ヤンゴン~マンダレー鉄道整備事業は早期に実施すべき優先度が高いプロジェクトの一つとして位置付けられており 2013 年 10 月にミャンマー政府から要請された円借款案件においてヤンゴン~マンダレー鉄道整備事業が最も優先度が高い案件として要請され 2014 年 9 月にヤンゴン マンダレー鉄道整備事業フェーズⅠ( 以下 本事業 という ) 第一期分の円借款契約が締結に至っている 2016 年 3 月に発足した国民民主連盟率いる新政権は 同年 7 月に新しい経済政策を発表し その中で基礎的経済インフラの迅速な整備に力を入れる方針である 政権交代後に示された運輸通信省の 100 日行動計画 の中でも 鉄道セクターについて ヤンゴン マンダレー鉄道の改善が最優先課題 と記載されており 本事業は新政権の中でも重要な事業として位置付けられている (3) 鉄道セクターに対する我が国及び JICA の援助方針と実績 2012 年 4 月策定の我が国の対ミャンマー経済協力方針において 持続的成長のために必要なインフラや制度の整備等の支援 を重点分野の一つに位置付け 具体的施策の一つとして 鉄道の運営改善 近代化 が挙げられている 本事業はこれら方針に合致する また ヤンゴン~ネピドー ~マンダレーという主要都市を繋ぐ本事業は 日本政府とミャンマー政府が共同で策定した 日本ミャンマー協力プログラム における重点分野のうち IV. 都市部と地方を結ぶ運輸インフラ整備 に合致する ミャンマー鉄道セクターに対しては 有償資金協力 チャンギンセメント工場内鉄道増強事業 (1982 年 ) 鉄道近代化計画 (1982 年 1984 年 ) 車両改修事業 (1984 年 ) 等の支援実績がある (4) 他の援助機関の対応ドイツは 1981 年に鉄道技術訓練センター設立を支援し 1990 年代に鉄道施設の維持管理に関する技術支援を実施 中国は現在 車両 ( 機関車 客車 ) 工場建設及び車両 ( 機関車 客車調達支援 ) インドは車両調達等を それぞれ借款により支援している 韓国は 1969 年にミンゲ客車製造工場設立を支援し 2015 年には 経済協力開発基金を通じた新規客車調達支援に係る契約を締結した なお これらの活動について本事業との重複はない (5) 事業の必要性ミャンマーの第一 第二の都市であるヤンゴンとマンダレーを結ぶ既存鉄道路線の一部を改修 近代化する本事業は ミャンマーの開発課題及び我が国の経済協力方針に合致し 鉄道輸送能力の強化を通じて強靭なインフラの構築に資するものであり SDGs のゴール 9 に貢献すると考えられることから 本事業の実施を支援する必要性は高い 3. 事業概要 (1) 事業の目的 : 本事業は ミャンマー第一 第二の都市であるヤンゴン~マンダレーを結ぶ既存鉄道路線のうちヤンゴン~タングー間において 老朽化した施設 設備の改修 近代化 新規車両の調達を実施することにより より安全で高速の列車運行と旅客 貨物の輸送能力増強を図り もって同国の経済発展に寄与するものである

(2) プロジェクトサイト / 対象地域名 : ヤンゴン~マンダレー間の既存鉄道路線 ( 約 620km) のうち ヤンゴン~タングー間 ( 無償資金協力 鉄道中央監視センター及び保安機材整備計画 で支援するヤンゴン~パズンダン区間を除く ) 約 260km が本事業の対象 なお ヤンゴン マンダレー鉄道整備事業フェーズⅡ において 残るタングー ~マンダレー間 ( 約 360km) を対象とする予定 (3) 事業概要 : ヤンゴン~マンダレー間の既存鉄道路線 ( 約 620km) のうちヤンゴン ~タングー間 ( 約 260km) の既存鉄道路線及び関連施設 機材等ア ) 土木工事 ( 軌道を含む土木構造物の修復 改良 車両基地建設 ) イ ) 鉄道システム ( 信号通信設備の更新 ) ウ ) 車両 ( 新規車両の導入含む ) エ ) 電力設備 (66kv/6.6kv 変電所含む ) オ ) コンサルティング サービス ( 入札補助 施工監理等 ) 第一期からの主な変更点 : 詳細設計の結果 車両基地が次期フェーズから前倒しに また 軌道レールを ASEAN 基準に沿った高規格品に変更 (4) 総事業費 :112,735 百万円 ( 円借款対象額 :91,291 百万円 うち 今次借款額 : 25,000 百万円 ) (5) 事業実施スケジュール :2014 年 9 月 ~2025 年 1 月を予定 ( 計 125 ヶ月 ) 工事完了時 (2023 年 1 月 ) をもって事業完成とする ( 現在使用中の線路を対象とした活線工事のため 工事が終わった区間から順次使用開始 ) (6) 事業実施体制 1) 借入人 : ミャンマー連邦共和国政府 (the Government of the Republic of the Union of Myanmar) 2) 事業実施機関 : ミャンマー国鉄 (Myanma Railways(MR)) 3) 操業 運営 / 維持 管理体制 : 事業の完成後は MR が運営 / 維持管理にあたる予定 (7) 環境社会配慮 貧困削減 社会開発 1) 環境社会配慮 1 カテゴリ分類 :B 2 カテゴリ分類の根拠 : 本事業は 国際協力機構環境社会配慮ガイドライン (2010 年 4 月 ) 公布に掲げる鉄道セクターのうち 大規模なものに該当せず 環境への望ましくない影響等は重大でないと判断され かつ 同ガイドラインに掲げる影響を及ぼしやすい特性および影響を受けやすい地域に該当しないため 3 環境許認可 : 本事業に係る環境影響評価 (EIA) 報告書は 2014 年 10 月に環境保全森林省 (MOECAF) の環境保全局 (ECD) により承認済み 事業対象に加わった車両基地については ミャンマー環境法令上 追加的な環境手続きは不要 4 汚染対策 : 工事中に想定される 大気汚染 水質汚濁に関して 散水によるダストの低減 排水路や必要に応じ沈砂池を設けるという緩和策が実施され また想定される騒音に関しては作業工程を調整し 騒音が最小限になるよう建設

機器のメンテナンスを行うという緩和策が実施されることにより 影響は最小限であると想定される 供用後には 列車の運行による騒音等が発生することが予見されるが 居住地域から離れていることから重大な影響は想定されない 5 自然環境面 : 事業対象地域は国立公園等の影響を受けやすい地域又はその周辺に該当せず 自然環境への望ましくない影響は最小限であると想定される 6 社会環境面 : 本事業の被影響住民は 7 世帯 32 名 うち物理的な移転が生じるのは 6 世帯 31 名で 80 エーカーの用地取得も見込まれている 住民移転及び用地取得は ミャンマー法令及び JICA 環境社会配慮ガイドラインに基づき作成された簡易住民移転計画 (ARAP) に沿って進められる 住民協議では特段の反対意見は出ていない 7 社会環境面 : 本事業の被影響住民は 7 世帯 32 名 うち物理的な移転が生じるのは 6 世帯 31 名で 80 エーカーの用地取得も見込まれている 住民移転及び用地取得は ミャンマー法令及び JICA 環境社会配慮ガイドラインに基づき作成された簡易住民移転計画 (ARAP) に沿って進められる 住民協議では特段の反対意見は出ていない 8 その他 モニタリング : 工事中は MR が水質 騒音等のモニタリングを実施する また 供用後は MR が騒音等のモニタリングを実施する 2) 貧困削減促進 : 特になし 3) 社会開発促進 : 工事期間中に HIV 対策が実施される (8) 他ドナー等との連携 : 特になし 4. 事業効果 (1) 定量的効果 1) アウトカム ( 運用 効果指標 ) 指標名 基準値 (2013 年実績値 ) 目標値 (2027 年 ) 事業完成 4 年後 旅客輸送量 ( 人 km/ 日 )* 3,317,908 27,524,873 貨物輸送量 ( トン km/ 日 )* 2,789,477 15,815,649 運行本数 ( 列車本数 / 日 ) 27.5 164 車両キロ (km/ 日 ) 11,112 52,119 ヤンゴン~タングー間所要時間 ( 旅客の場合 ) 6 時間 54 分 3 時間 20 分 * ヤンゴン~マンダレー全区間の効果を測定 ( 注 ) フェーズⅠ( ヤンゴン~タングー間 ) の完工は 2023 年であるが 目標値は ヤンゴン~ マンダレー全区間の改修 近代化の完了予定時点 (2025 年 ) から 2 年後と設定 (2) 定性的効果 : 安全な列車運行 地域経済の活性化 物流の活性化 (3) 内部収益率以下の前提に基づき 本事業の経済的内部収益率 (EIRR) は 24.3% 財務的内部収益率 (FIRR) は 13.0% となる

EIRR 費用 : 事業費 ( 税金を除く ) 運営 維持管理費便益 : 鉄道利用者の移動時間減 自動車走行費減 自動車走行時間減 運賃収入増プロジェクト ライフ :30 年 FIRR 費用 : 事業費 ( 税金を含む ) 運営 維持管理費便益 : 運賃収入 貨物輸送収入プロジェクト ライフ :30 年 5. 外部条件 リスクコントロール 軌道整備用の枕木及びバラストの遅滞ない調達(MR が自己予算で実施 ) 車両基地建設予定地の盛土工事の遅滞ない完了(MR が自己予算で実施 ) 6. 過去の類似案件の教訓と本事業への適用 (1) 類似案件からの教訓インドネシア共和国 デポック車庫建設事業 の事後評価結果等から 作業工程を機械化し業務効率化を図るような施設の設計を行う場合 相応の技術の導入がなければ導入した機器を十分に活用できないため 実施機関の技術水準を把握した上で運用 管理の適切な実施が可能な施設のデザインを行い 施設の運用 管理を含む包括的な技術支援を検討することが重要との教訓を得ている (2) 本事業への教訓の活用本事業でも 車両基地や車両 信号システム等について比較的高性能な機材 設備の導入を予定していることから 本事業のコンサルティング サービスによる技術移転を行うだけでなく 2016 年 12 月に終了した 車両メンテナンスに係る情報収集 確認調査 の結果を踏まえ 有償勘定技術支援 鉄道車両維持管理 サービス向上プロジェクト (2017 年 3 月開始予定 ) 等により必要な技術支援を実施する予定である 7. 今後の評価計画 (1) 今後の評価に用いる指標 1) 旅客輸送量 ( 人 km/ 日 ) 2) 貨物輸送量 ( トン km/ 日 ) 3) 運行本数 ( 列車本数 / 日 ) 4) 車両キロ (km/ 日 ) 5) ヤンゴン~タングー間所要時間 (2) 今後の評価のタイミング事業完成 4 年後 (EIRR が十分に見込める次期フェーズ完成 2 年後に評価することとする ) 以上