ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

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事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

最高裁○○第000100号

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

最高裁○○第000100号

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

最高裁○○第000100号

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

2006 年度 民事執行 保全法講義 第 4 回 関西大学法学部教授栗田隆

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

3 被告は, 原告に対し, 金 3453 万 2652 円及びこれに対する平成 23 年 12 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件訴訟は, 原告が, 被告の製造販売に係るデジタルカタログについて, 原告の特許権を侵害している旨主張して, 被告に対し

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

競走馬の馬名に「パブリシティ権」を認めた事例

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

判決【】

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

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なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

(イ係)

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

< F2D8CA48B8689EF8E9197BF31352E6A7464>

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

21855F41214EA DB3000CCBA

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

民事訴訟法

当法 22 条 2 項,3 項により本件滞納社会保険料等の徴収に関する権限を承継した被告に対し, 本件滞納社会保険料等のうち平成 17 年 5 月分以前のもの ( 以下 本件請求対象社会保険料等 という ) についての納付義務は時効等により消滅しているとして, 本件交付要求のうち本件請求対象社会保険

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

11総法不審第120号

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

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平成  年(オ)第  号

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

( 事案の全体像は複数当事者による複数事件で ついての慰謝料 30 万円 あり非常に複雑であるため 仮差押えに関する部 3 本件損害賠償請求訴訟の弁護士報酬 分を抜粋した なお 仮差押えの被保全債権の額 70 万円 は 1 億円程度と思われるが 担保の額は不明であ を認容した る ) なお 仮差押え

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

の上記アの期間に係る標準報酬月額を44 万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした ( 甲 1の18ないし21 頁, 丙 4) (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法 ( 平成 24 年法律第 62 号による改正前のもの 以下 厚年法 という )100 条の4 第 1 項 3 号及び4 号

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

(Microsoft Word -

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

Microsoft PowerPoint - procedure210

平成  年(行ツ)第  号

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

平成 24 年 8 月 24 日判決言渡 平成 23 年 第 284 号代議員会議決無効確認請求事件 判 主 決 文 1 原告が, 平成 23 年 1 月 18 日をもって被告の設立事業所でないことを確認する 2 被告は, 原告のために,A 厚生年金基金規約別表第 1から 株式会社 B, 長野県諏訪

保険業務に係る情報提供料は 請求人の事業に基づいた収入であるとは いえない 第 4 審理員意見書の結論 本件各審査請求は理由がないから 行政不服審査法 4 5 条 2 項によ り 棄却すべきである 第 5 調査審議の経過 審査会は 本件諮問について 以下のように審議した 年月日 審議経過 平成 30

期分本税 831 万 1900 円の合計 以下 本件租税債権 という ) (3) 東京国税局国税徴収官 B( 以下 B 徴収官 という ) は 同局特別国税徴収官 C( 以下 C 特官 という ) の決定に基づき 平成 20 年 3 月 6 日 原告がA 証券に対して有していた本件証拠金の返還請求権

 

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

最高裁○○第000100号

平成  年(あ)第  号

点で 本規約の内容とおりに成立するものとします 3. 当社は OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用申込みがあった場合でも 任意の判断により OCN ID( メールアドレス ) でログインする機能 の利用をお断りする場合があります この場合 申込者と当社の間に利用契約は成立し

物品売買契約書

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

国籍確認請求控訴事件平成 12 年 11 月 15 日事件番号 : 平成 12( 行コ )61 大阪高等裁判所第 4 民事部 裁判長裁判官 : 武田多喜子 裁判官 : 正木きよみ 松本久 原審 : 大阪地方裁判所平成 11 年 ( 行ウ )54 < 主文 > 一. 原判決を 取り消す ニ. 訴訟費用

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平成 29 年 7 月 27 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 25969 号債務不存在確認請求事件 口頭弁論の終結の日平成 29 年 6 月 13 日 判 決 原告オリオン電機株式会社 同訴訟代理人弁護士小倉秀夫 合併前会社ワイラン インク訴訟承継人 被 告 クオーターヒル インク 同訴訟代理人弁護士 田 中 伸一郎 同 佐 竹 勝 一 主 文 1 本件訴えを却下する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求被告が原告に対し米国特許第 6359654 号に係る米国特許権 ( 以下 本件米国特許権 という ) の侵害による損害賠償請求権を有しないことを確認する 第 2 事案の概要本件は, 原告が 被告が原告に対し本件米国特許権の侵害による損害賠償請求権を有しないこと の確認を求める事案である これに対し, 被告は, 本件訴えの適法性を争う 1 前提事実 ( 証拠を掲記したほかは, 当事者間に争いがない ) ⑴ 当事者 1

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法人 7 社と合併して, 被告となった ( 弁論の全趣旨 ) 以下では, 合併前会社ワイラン インクも含めて, 単に 被告 という なお, 被告は, 日本国内にその支店や営業所等を有しない ( 弁論の全趣旨 ) ⑵ 別件米国訴訟被告は, 平成 28 年 (2016 年 )1 月 15 日, 米国デラウェア地区連邦裁判所に対し, 原告外 2 社 (SANSUI AMERICA,INC 及びO RION AMERICA,INC 以下, 併せて 原告ら と総称する ) を相手方として, 原告らによるディスプレイ製品 ( 以下 原告製品 という ) の販売等が被告の有する本件米国特許権を侵害する行為であるとして, 上記行為の差止め及び損害賠償等を求める訴訟を提起した ( 甲 1 以下 別件米国訴訟 という ) 本件の口頭弁論終結時において, 別件米国訴訟は係属中であるが, 被告は未だ同訴訟の訴状送達を受けていない ( 弁論の全趣旨 ) 2 本案前の争点 ( 本件訴えの適法性 ) ⑴ 国際裁判管轄の有無 ( 争点 1) ⑵ 特別の事情 による却下の可否( 争点 2) 3 争点に関する当事者の主張 ⑴ 争点 1( 国際裁判管轄の有無 ) について ( 原告の主張 ) ア民訴法 3 条の3 第 8 号に基づく管轄について積極的給付訴訟において民訴法 3 条の3 各号により日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる場合, 消極的確認訴訟にも, 同各号の適用又は類推 2

適用若しくは条理に基づき, 日本の裁判所に国際裁判管轄が認められる 不法行為があった地が日本国内にあるとき ( 同条 8 号 ) とは, 加害行為地又は結果発生地のいずれかが日本国内であればよいから, 別件米国訴訟において, 被告の主張する加害行為地又は結果発生地が日本国内に存在すれば, 日本の裁判所に管轄が認められることになる この点, 別件米国訴訟の訴状において被告の主張する原告の不法行為は,1 直接的に, 米国及び本地区で原告製品を出荷, 流通, 売出し及び販売すること,2 中間業者, 子会社, 分身及び代理店を介して, 間接的に, 米国及び本地区で原告製品を出荷, 流通, 売出し, 販売すること,3 本地区で消費者によって購入されることを認識又は ( かつ ) 意図しながら原告製品を意図的かつ自主的に通商の流れに投入すること,4 定着した流通経路を介して原告製品を意図的に本地区に及び本地区内で出荷すること,5これらの行為を介して, 本地区で他人に特許権侵害行為を行うように仕向けること, であり, これらの行為のうち,1 以外の行為は, 米国又は本地区 ( デラウェア地区 ) 以外でも行うことができ, 日本国内でも行い得るし, 上記訴状でも米国内又は本地区内に限定されていないから, これらの行為に係る損害賠償請求権の不存在確認訴訟については日本の裁判所に管轄が認められる なお, 仮に, 日本国内で行われたとされる加害行為に基づく損害賠償請求権と日本国外で行われたとされる加害行為に基づく損害賠償請求権についての不存在確認請求訴訟の訴訟物が異なるとしても, 両者は密接に関連しているから, 後者の行為に係る損害賠償請求権の不存在確認訴訟についても, 民訴法 3 条の6に基づき, 日本の裁判所に管轄が認められる イ民訴法 3 条の3 第 3 号に基づく管轄について特許権侵害に基づく損害賠償請求訴訟は 財産権上の訴え ( 民訴法 3 条の3 第 3 号 ) に当たるから, 差押え可能な原告の財産が日本国内にあれば, 本件の管轄は日本の裁判所に認められる 3

この点, 原告は日本国内に事務所や工場等を有しており, 差押え可能な財産が日本国内にあるから, 同号に基づき, 日本の裁判所に本件の管轄が認められる ( 被告の主張 ) ア民訴法 3 条の3 第 8 号に基づく管轄について米国特許法 271 条 (a) によれば, 米国特許権の侵害行為となる行為は, 米国内における製造, 販売, 販売の申出, 輸入等の行為でなければならないところ, 被告は, 別件米国訴訟において, 原告による米国内における原告製品の製造, 販売, 販売の申出及び輸入等の行為が特許権侵害行為であると主張しており, これらの行為が米国外で行われた行為であるとは主張していない また, 上記 ( 原告の主張 ) アの5の行為 ( 以下 積極的誘引行為 という ) についても, 被告は, 別件米国訴訟において日本国内の行為であるとは主張していない 仮に, 同訴訟において, 日本国内における積極的誘引行為も対象とすると主張していると解されるとしても, 米国特許権を侵害する行為を日本国内で積極的に誘引する行為は, 日本法の下では適法な行為とされている そうすると, 当該行為を加害行為として民訴法 3 条の 3 第 8 号により日本の裁判所の管轄権を認めることは, 法的正義に反する上, 同号が 不法行為があった地 に管轄を認める趣旨 ( 被害者に即時の訴え提起を容易にするとともに, 証拠が偏在する地であって証拠調べも迅速かつ容易に行うことができる便宜を考慮したこと ) とも整合しない なお, 別件米国訴訟の訴状には, 原告の所在地が日本国内であると記載されているが, 訴訟当事者を特定するための記載であって, 原告の本店所在地は不法行為地と何ら関係がない よって, 本件訴えについて, 民訴法 3 条の3 第 8 号に基づく管轄は認められない 4

イ民訴法 3 条の3 第 3 号に基づく管轄について争う ⑵ 争点 2( 特別の事情 による却下の可否) について ( 被告の主張 ) 仮に, 日本の裁判所に本件訴えの管轄が認められるとしても, 本件訴えについては 日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し, 又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情 ( 民訴法 3 条の9) があると認められるから, これを却下すべきである すなわち, 本件訴えの訴訟物は, 別件米国訴訟の訴訟物と全く同一であるから, 日本で二重に審理を求めることは訴訟経済的に無駄である また, 日本においては, 不存在確認の訴えは, 請求訴訟が提起されると却下されるところ, 適法な請求訴訟が米国の裁判所に係属していると, カナダ法人である被告が日本での審理を強要され, 原告が日本での防御が可能となるのは不合理である さらに, 本件訴えの訴訟物は, 本件米国特許権の侵害に基づく損害賠償請求権であって, その主要な争点は, 本件米国特許権に係る発明の技術的範囲の解釈, 対象製品との対比及び同特許権の有効性であり, これらに関する証拠の大部分は米国内に所在するから, 日本における審理の迅速性が害されるおそれが大きい そして, 本件米国特許権侵害に係る準拠法は, 加害行為の結果地の法律であり, 米国の裁判所で審理を行う方が迅速かつ適切である 以上に加えて, 原告は, 米国における営業にも関与していること, 原告の会社規模, 既に相被告に係る別件米国訴訟の審理は進行していることなどの事情も併せ考慮すると, 上記 特別の事情 ( 民訴法 3 条の9) があると認められるから, 本件訴えを却下すべきである ( 原告の主張 ) 原告が本件において予定する主張の内容は,1 原告が米国内で本件製品を 5

生産 又は販売若しくは米国内への輸入を行っておらず, 第三者による本件製品の米国内での生産又は販売及び米国内への輸入に一切関与していない, 2 原告は, 平成 27 年 3 月 31 日にオリオン電機株式会社 ( 同年 4 月 1 日の変更後の商号はFKサービス株式会社 以下 旧オリオン電機 という ) から事業譲渡 ( 以下 本件事業譲渡 という ) を受けた後, 遅滞なく, 旧オリオン電機の債務を弁済する責任を負わない旨登記したから, 仮に, 本件事業譲渡前に旧オリオン電機が本件米国特許権を侵害していたとしても, これにより生じた損害賠償債務等は承継しない, という内容である そして, 1については, 原告の事業内容と活動拠点が問題となり,2については, 本件事業譲渡の有無, 債務承継に係る特約の内容及び商法 17 条 2 項所定の手続の有無が問題となるところ, これらの点に関する証拠は日本語で記載され, 日本国内に存在し, 証人も日本語を母国語とする者であるから, 日本の裁判所で審理をした方が簡便である また, 原告は, 福井県に本店を置く中小企業であり, 米国の裁判所での訴訟活動を強いられることによって, 会社経営の土台が揺らぐことが十分予想されるのに対し, 被告は,NASDAQ 証券市場やトロント証券市場に上場する大企業であり, 日本での訴訟を遂行することはさほど困難ではない さらに, 別件米国訴訟において, 訴状が原告に送達された上で本格的な審理が開始されるまでにはかなりの時間を要することが予想される 加えて, 一般的に, 日本の裁判所においては, その平均審理期間がデラウェア連邦地方裁判所より短い上, 陪審制が採られていないから, 迅速な審理を期待できる これらの事情に加えて, 我が国において国際二重起訴は禁止されていないことなども考慮すると, 本件訴訟につき日本の裁判所が審理及び裁判することが当事者間の衡平を害し, 又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があるとは認められない 第 3 当裁判所の判断 6

1 争点 1( 国際裁判管轄の有無 ) について ⑴ 別件米国訴訟の訴状の記載別件米国訴訟の訴状 ( 甲 1) には, 次の各記載がある ア 管轄区域および裁判地 10 オリオン電機は米国内および本地区内で過去に事業を営んでおり現在も日常的に事業を営んでいる オリオン電機は本地区で消費者により購入されることを認識かつ意図 ( またはいずれか一方 ) しながら定着した流通経路を介して 通商の流れ に特許権侵害製品を投入することでデラウェア州法の保護を求め, 恩恵を得てきた 11. オリオン電機は単独で, 自身の代理店を介しておよびSans ui Americaの代理店として ( またはいずれか一方 ), 直接か ( 販売店や小売業者などの ) 中間業者, 子会社, 分身, および代理店 ( またはいずれか1つ ) を介するかを問わず, 米国および本地区で自社製品を出荷し, 流通し, 売りに出し, 販売する ( またはいずれか1つ ) オリオン電機は以下に記載される通り, 本地区で消費者によって購入されることを認識かつ意図 ( またはいずれか一方 ) しながら1つ以上の自社の特許侵害製品を意図的かつ自主的に通称の流れに投入している オリオン電機は定着した流通経路を介して特許侵害製品を承知の上で意図的に本地区におよび本地区内で出荷している これらの特許侵害製品は本地域の消費者によって引き続き購入されている これらの活動を介してオリオン電機は本地区で特許侵害の不法行為をして本地区で他の人が特許侵害を行うよう仕向けている ( またはいずれか一方 ) 特許侵害に関する原告の訴因は本地区でのオリオン電機の活動に直接起因している イ 背景 B. 被告の侵害行為 17. 被告は訴訟対象の特許が取り扱う基盤技術を組み込んでい 7

るディスプレイ製品を米国内で製造し, 使用し, 使用されるようにし, 売り出し, 販売しており, 米国に輸入している ( またはいずれか1つ ) 19. 被告は本地区を含めて米国でオリオン電機ならびに第三者の製造業者, 販売店, および輸入業者 ( またはいずれか1つ ) により製造される, 使用される, 使用されるようにしている, 売り出される, 販売される, または米国に輸入される特許を侵害しているディスプレイ製品を購入している ⑵ 民訴法 3 条の3 第 8 号に基づく管轄についてア原告は, 別件米国訴訟において被告の主張する原告の不法行為 ( 本件米国特許権の侵害行為 ) は, 米国内の行為及び日本を含む米国以外の行為であるから, 民訴法 3 条の3 第 8 号及び3 条の6に基づき, 本件訴えの管轄が日本の裁判所に認められる旨主張する イしかしながら, 被告は, 別件米国訴訟において本件米国特許権の侵害行為として日本国内における原告の行為は対象としていない 旨主張している また, 別件米国訴訟の訴状の記載を検討しても, 被告の上記主張が裏付けられる すなわち, 上記 ⑴アのとおり, 別件米国訴訟の訴状の 管轄区域および裁判地 欄には, オリオン電機は米国内および本地区内で過去に事業を営んでおり現在も日常的に事業を営んでいる とか, 特許侵害に関する原告の訴因は本地区でのオリオン電機の活動に直接起因している として, 不法行為地を本地区 ( デラウェア地区 ) に限定するものと解される記載がある また, 上記 ⑴イのとおり, B. 被告の侵害行為 欄には, 被告は訴訟対象の特許が取り扱う基盤技術を組み込んでいるディスプレイ製品を米国内で製造し, 使用し, 使用されるようにし, 売り出し, 販売しており, 米国に輸入している ( またはいずれか1つ ) とか, 被告は本地区を含めて米国でオリオン電機ならびに第三者の製造業者, 8

販売店, および輸入業者 ( またはいずれか1つ ) により製造される, 使用される, 使用されるようにしている, 売り出される, 販売される, または米国に輸入される特許を侵害しているディスプレイ製品を購入している として, 本地区を含めて米国で の行為を侵害行為として整理している そうすると, 別件米国訴訟で不法行為として主張されている対象行為は, 米国内における原告の行為であると認められる ウこの点につき, 原告は, 別件米国訴訟の訴状の 管轄区域および裁判地 欄における オリオン電機は本地区で特許侵害の不法行為をして本地区で他の人が特許侵害を行うよう仕向けている ( またはいずれか一方 ) との記載等を指摘するが, 上記イ説示の記載など別件米国訴訟の訴状全体の記載を総合すれば, 上記イのように認めるのが相当である エしたがって, 民訴法 3 条の3 第 8 号に基づき, 本件訴えの管轄が日本の裁判所にあると認めることはできない ( なお, 念のため付言すると, この点を措いても, 被告が 別件米国訴訟において本件米国特許権の侵害行為として日本国内における原告の行為は対象としていない 旨主張している以上, 本件訴えのうち, 当該行為に基づく損害賠償請求権の不存在確認を求める部分は, 訴えの利益を欠くことになる ) ⑶ 民訴法 3 条の3 第 3 号に基づく管轄について原告は, 被告の原告に対する損害賠償請求において差し押さえることのできる 原告 の財産が日本国内にあるから, 民訴法 3 条の3 第 3 号に基づき, 本件訴えの管轄が日本の裁判所に認められる旨主張する しかしながら, 本件訴えが消極的確認訴訟であることをもって, 直ちに同号の 被告 を 原告 に読み替えることが相当であるということはできない 同号の趣旨が, 日本に生活の本拠を有しない者に対する権利の実行を容易にするために, 請求の目的物の所在地又は財産所在地に管轄原因を認め, 執行の対象となる財産の所在地で債務名義を獲得する途を確保するところに 9

あることに照らせば, このような趣旨は本件のような債務不存在確認訴訟に当てはまるものとはいえない したがって, 執行可能な 原告 の財産が日本国内にあることをもって, 同号に基づき, 本件訴えの管轄が日本の裁判所にあると認めることはできない 2 争点 2( 特別の事情 による却下の可否) について以上によれば, 本件訴えの管轄が日本の裁判所にあるとは認められないが, 念のため, 仮にその点を措いた場合に, 民訴法 3 条の9にいう 事案の性質, 応訴による被告の負担の程度, 証拠の所在地その他の事情を考慮して, 日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し, 又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情 があるか否かについても検討する 本件訴えは, その提起前に米国デラウェア地区連邦裁判所に提起されていた別件米国訴訟において被告の主張する損害賠償請求権の不存在確認を求めるものである また, 別件米国訴訟において被告の主張する原告の不法行為は, 上記 1⑴のとおりであり, その内容に照らせば, 本件訴訟の本案の審理において想定される主な争点は, 米国内において流通する原告製品の構成, 原告製品の本件米国特許権に係る発明への技術的範囲の属否及び本件米国特許権の有効性等であると解されるところ, これらの争点に関する証拠方法は, 主に米国に所在するものと解される そして, 上記の証拠の所在等に照らせば, これを日本の裁判所において取り調べることは, 外国法人であって日本国内にその支店や営業所等を有しない被告に過大な負担を課することになるといえる これらの事情に照らせば, 原告と被告の会社規模の差異や旧オリオン電機からの本件事業譲渡の経緯に関する証拠の所在など原告の主張する事情を考慮しても, 本件については, 民訴法 3 条の9にいう 日本の裁判所が審理及び裁判をすることが当事者間の衡平を害し, 又は適正かつ迅速な審理の実現を妨げる 10

こととなる特別の事情 があるというべきである 3 結論よって, 本件訴えは不適法であるからこれを却下することとして, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 47 部 裁判長裁判官沖中康人 裁判官矢口俊哉 裁判官島田美喜子は, 差支えのため署名押印できない 裁判長裁判官沖中康人 11