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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

基本的な考え方の解説 (1) 立体的形状が 商品等の機能又は美感に資する目的のために採用されたものと認められる場合は 特段の事情のない限り 商品等の形状そのものの範囲を出ないものと判断する 解説 商品等の形状は 多くの場合 機能をより効果的に発揮させたり 美感をより優れたものとしたりするなどの目的で

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

異議の決定 異議 東京都荒川区東日暮里 3 丁目 27 番 6 号商標権者株式会社エドウイン 東京都渋谷区広尾 商標異議申立人 EVISU JAPAN 株式会社 東京都港区西新橋 1 丁目 18 番 9 号西新橋ノアビル4 階朝比 増田特許事務所代理人弁理士朝比

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

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最新判決情報 2013 年 12 月分 〇レディーガガ事件 知財高裁 H H25( 行ケ )10158 審決取消請求事件 ( 清水節裁判長 ) LADY GAGA/ レディー ガガ はアメリカの世界的な人気女性歌手であるが 同人が代表者を務める米 国法人が 標準文字で表記された商標

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

2018 年 2 月 8 日第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法部会担当 : 弁護士佐竹希 バカラ電子カードシュー 事件 知財高裁平成 29 年 9 月 27 日判決 ( 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号 ) I. 事案の概要原告 ( エンゼルプレイングカード株式会社 : カー

審決取消判決の拘束力

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

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平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

間延長をしますので 拒絶査定謄本送達日から 4 月 が審判請求期間となります ( 審判便覧 の 2.(2) ア ) 職権による延長ですので 期間延長請求書等の提出は不要です 2. 補正について 明細書等の補正 ( 特許 ) Q2-1: 特許の拒絶査定不服審判請求時における明細書等の補正は

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

1 アルゼンチン産業財産権庁 (INPI) への特許審査ハイウェイ試行プログラム (PPH) 申請に 係る要件及び手続 Ⅰ. 背景 上記組織の代表者は

Taro-052第6章1節(p ).jtd

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

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第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

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平成 27 年度特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書 商標制度におけるコンセント制度についての 調査研究報告書 平成 28 年 2 月 株式会社サンビジネス

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

平成 29 年 5 月 15 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 3 月 6 日 判 決 原 告 BERNARD FRANCE SERVICE 合同会社 訴訟代理人弁護士笹本摂 向多美子 訴訟代理人弁理士木村高明 被 告 ラボラ

【資料3】商標制度に係る検討事項

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

1 特許庁における手続の経緯 (1) 原告は, 平成 25 年 11 月 19 日, 山岸一雄 の文字を標準文字で表して成る商標 ( 以下 本願商標 という ) について, 商標登録出願をした ( 商願 号 以下 本願 という 甲 7) (2) 原告は, 上記商標登録出願に対

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

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平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

Microsoft Word - クレームにおける使用目的に関する陳述 ☆米国特許判例紹介☆ -第105号-

Microsoft Word - 中国商標判例(5)-HPメルマガ 3/10UP

原告は, 平成 26 年 12 月 9 日, 指定役務を第 35 類 市場調査又は分析, 助産師のあっせん, 助産師のための求人情報の提供, 第 41 類 セミナーの企画 運営又は開催, 電子出版物の提供, 図書及び記録の供覧, 図書の貸与, 書籍の制作, 教育 文化 娯楽 スポーツ用ビデオの制作

(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

知的財産権の権利活用 ~警告から訴訟まで

ある 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 23 年 6 月 8 日, 下記本願商標につき商標登録出願 ( 商願 号 ) をし, 平成 23 年 11 月 25 日, 指定商品の補正をしたが, 平成 24 年 1 月 30 日, 拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 4

2.2.2 外国語特許出願の場合 2.4(2) を参照 2.3 第 184 条の 5 第 1 項に規定された書面 (1) 日本語特許出願 外国語特許出願を問わず 国際特許出願の出願人は 国内書面提出期間 ( 注 ) 内に 出願人 発明者 国際出願番号等の事項を記載した書面 ( 以下この部において 国

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

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実体審査における審査官面接に関して GPE には面接における協議の方法 時期および内容など 詳細な要件が定められている 例えば GPE には 最初のオフィスアクションの応答書が出願人により提出された後 審査官は当該出願の審査を継続しなければならない と規定されている (GPE 第 II 部第 2 章

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主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

■「歌手名・音楽グループ名」の識別力についての考察

ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

130306異議申立て対応のHP上の分かりやすいQA (いったん掲載後「早く申請してください」を削除)

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1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

平成  年(行ツ)第  号

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

色彩を視覚的に表したことにはならない 文字による orange の記載は認められない ただし 世界的に公認されたカラーコードを用いて特定すれば 視覚的に表すという要件を正確に永続的に満たすことができる (iii) 自他商品役務識別力を有すること * 市場における販売活動や広告宣伝を通して 色彩それ自

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告

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2016 年 5 月 25 日 JETRO アセアン知財動向報告会 ( 於 :JETRO 本部 ) ASEAN 主要国における 司法動向調査 TMI 総合法律事務所シンガポールオフィス弁護士関川裕 TMI 総合法律事務所弁理士山口現

第 1 民法第 536 条第 1 項の削除の是非民法第 536 条第 1 項については 同項を削除するという案が示されているが ( 中間試案第 12 1) 同項を維持すべきであるという考え方もある ( 中間試案第 12 1 の ( 注 ) 参照 ) 同項の削除の是非について どのように考えるか 中間

平成  年(オ)第  号

書籍の題号も通常 商標的使用 の観点から判決されているが 気孔術実践講座事件 ( 東地判 H4( ワ ) 3845) では商標法 号の品質表示を適用しているので まずは法適用の可能性を判断すべきかも知れない この点については 本年末刊行予定の 最新判例からみる商標法の実務 Ⅱ 2012

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号 ) をしたが, 同年 11 月 17 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 28 年 1 月 26 日, これに対する不服の審判請求をした ( 不服 号 ) ( 甲 3, 甲 4の1, 乙 1) 特許庁は, 平成 28 年 7 月 28 日, 本件審判の請求

意匠法第十七条の三意匠登録出願人が前条第一項の規定による却下の決定の謄本の送達があつた日から三月以内にその補正後の意匠について新たな意匠登録出願をしたときは その意匠登録出願は その補正について手続補正書を提出した時にしたものとみなす 2 前項に規定する新たな意匠登録出願があつたときは もとの意匠登

東京地方裁判所委員会 ( 第 36 回 ) 議事概要 ( 東京地方裁判所委員会事務局 ) 第 1 日時平成 27 年 10 月 22 日 ( 木 )15:00~17:00 第 2 場所東京地方裁判所第 1 会議室第 3 出席者 ( 委員 ) 貝阿彌誠, 足立哲, 大沢陽一郎, 大野正隆, 岡田ヒロミ

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

 

2.5 中国中国では, 書籍の題号についても, 極端に記述的でない限り, 識別力がないとの理由により拒絶とはならず, 又は 社会主義道徳風習を害し, 又はその他の有害な影響を及ぼすもの ではなく, 先行商標との関係で同一又は類似のものがなければ登録となる (1) 識別力に関連する商標法上の規定につい

Transcription:

第一東京弁護士会総合法律研究所知的所有権法研究部会平成 26 年 3 月部会レジュメ 平成 26 年 3 月 6 日乾裕介 1. 題材知財高裁平成 25 年 ( 行ケ ) 第 10158 号審決取消請求事件 ( 商標出願の拒絶査定不服審判請求を不成立とした審決の取消しを求める訴え ) 平成 25 年 12 月 17 日判決言渡し原告エイトマイハートインコーポレイテッド被告特許庁長官 2. 商標出願 商標 : LADY GAGA( 標準文字 ) 出願番号 : 商願 2011-21592 出願人 : エイトマイハートインコーポレイテッド指定商品 : 第 9 類 レコード, インターネットを利用して受信し 及び保存することができる音楽ファイル, 映写フィルム, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ 出願人 (Ate My Heart, Inc.) は レディー ガガ自身が代表を務める会社 ( 訴訟における原告の主張 ) 3. 手続きの経緯 平成 22 年 4 月 12 日 原出願 ( 商願 2010-28913) 出願 平成 23 年 3 月 28 日 原出願の分割出願として本願を出願 平成 23 年 10 月 4 日 拒絶査定 平成 23 年 12 月 27 日 拒絶査定不服審判を請求 ( 不服 2011-27961) 平成 25 年 1 月 28 日 審決 ( 請求不成立 ) 平成 25 年 6 月 6 日 提訴 平成 25 年 12 月 17 日 判決 ( 請求棄却 ) 原出願については 商標登録第 5405058 号として平成 23 年 4 月 8 日に登録済み ( 第 3 9 14 16 18 25 35 41 類 ) 4. 審決

- 2 - LADY GAGA ( レディ ( ー ) ガガ ) は アメリカ合衆国出身の歌手として 我が国を含め世界的に広く知られているといい得るものであるから LADY GAGA の欧文字からなる本願商標は これに接する者をして 上記歌手名を表示したものと容易に認識するものである ところで 本願の指定商品中の レコード の媒体表面及びジャケットや インターネットを利用して受信し 及び保存することができる音楽ファイル を購入するためのウェブサイトの画面には これら商品の発売元 販売元の名称 ロゴ 曲名 歌手名等が表示されているところ これら商品の取引者 需要者は その表示中の発売元 販売元の名称 ロゴから その商品の出所を認識し 曲名から 当該曲が収録されていることを認識し 歌手名から その者が歌唱していることを認識するものである また 本願の指定商品中の 録画済みビデオディスク及びビデオテープ ( 特に音楽関係のもの ) についても 上記 レコード と同様に その媒体表面及びジャケットに 商品の発売元 販売元の名称 ロゴ 出演する歌手名等が表示されているところ これら商品の取引者 需要者は その表示中の発売元 販売元の名称 ロゴから その商品の出所を認識し 歌手名から その者が出演し 歌唱している映像が収録されていることを認識するものである 以上によれば アメリカ合衆国出身の人気歌手名として広く認識されている LADY GAGA の文字からなる本願商標を その指定商品中 レコード, インターネットを利用して受信し 及び保存することができる音楽ファイル, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ に使用した場合 これに接する取引者 需要者は 当該商品に係る収録曲を歌唱する者 映像に出演し 歌唱している者を表示したもの すなわち その商品の品質 ( 内容 ) を表示したものと認識するというのが相当である してみると 本願商標は 商品の品質を表示したものと認識されるにすぎないことから 自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものといわざるを得ず また 本願商標をその指定商品中 上記 LADY GAGA ( レディ ( ー ) ガガ ) と何ら関係のない商品に使用した場合 商品の品質について誤認を生ずるおそれがあるといわなければならない したがって 本願商標は 商標法第 3 条第 1 項第 3 号及び同法第 4 条第 1 項第 16 号に該当する 5. 本件訴訟において原告が主張した審決の取消理由 (1) 取消理由 1( 本願商標の自他商品の識別力を認定するに当たり 具体的な使用態様を限定して判断を行ったことの誤り ) 自他商品の識別力を有するか否かといった登録要件の審査は 願書に記され

- 3 - た商標の構成それ自体に基づいて判断されるべきであり その商標の使用態様をある特定の態様に限定した上で商標が自他商品の識別力を有するか否かの判断をしなければならないとする合理的根拠は存在しない 本願商標のような 歌手名 音楽バンド名 ( 著作者名 ) の文字からなる商標の登録自体を一律に排除しなければならないという特段の要請はなく 登録を認めたとしても商標法 26 条 1 項による手当てが可能であり 特段の不都合は生じない 取引界においては 歌手名 音楽グループ名と管理 運営会社の名称を共通にしている実例が存在し それらの場合 特許庁の過去の審決例においては 歌手名 音楽グループ名 の商標登録が認められている また 原告は その会社名を将来 LADY GAGA,Inc. に変更することもできる 過去の審決例や本件審決の考え方からすれば 歌手名 音楽グループ名 からなる商標について 査定 審決時に同名の法人が存在するか否かで結論が異なるものであるが これは不合理である 現実の取引界においては 歌手 音楽グループ名 と同名の音楽レーベルを立ち上げる者も存在する レディー ガガが将来自らレコードレーベルを立ち上げ そのレーベルに属する様々なアーチストの歌唱 演奏に係る楽曲を収録した媒体に レーベル名として LADY GAGA の文字を使用する可能性も十分想定される (2) 取消理由 2( 本願商標の自他商品識別力の有無に関する判断の誤り ) ある歌手の才能や技量に基づく歌唱力 演奏力等は極めて抽象的であいまいな概念であり これらを一定の明確な基準による品質として理解 把握することは困難であるから 本願商標が 歌手名 と同じであるからといって レコード等の商品との関係で特定の性質等の品質を直ちに理解させるものではない 本願商標は レディー ガガが歌手として歌唱した音楽 レディー ガガが好きな音楽を集めたアルバムなど レディー ガガに何らかの関連がある商品であると理解することができたとしても それが直ちに需要者等をして具体的な商品の品質を理解 把握することはない 本願商標がレコード等のレーベル名として使用されるような場合には L ADY GAGA 以外の歌手が歌唱した音楽等が収録されることもあり得る 商標法が周知 著名商標に特に厚い保護を与えていることに鑑みれば 本願

- 4 - 商標にも商標登録が認められ 商標法による保護が与えられるべきである 仮に 原告による本願商標の登録を認めず 第三者による使用 ( 商標的使用 ) を自由に認めるとすれば レディー ガガが日本において精力的活動を行ってきた結果得ることとなった名声 信用を害するばかりでなく 需要者 取引者をして出所についての混同を生じさせ それらの者の利益をも害する結果となる 歌手名からなる商標の レコード 等の商品についての過去の登録例 MICK JAGGER BRITNEY SPEARS ALICIA KEYS BEYONCE BILLY JOEL JIMI HENDRIX ユーミン \YUMING 倉木麻衣 UTADA HIKARU\ 宇多田ヒカル (3) 取消理由 2( 本願商標のような歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことの認定の誤り ) 発売元 販売元であるレコード会社 音楽レーベルの名称 ロゴを目印として商品が選択されるよりは 歌手名 音楽グループ名それ自体を目印として商品の選択がなされることの方が一般的である 現実の取引界においては 歌手名や演奏者名は 出所表示 としても機能し 需要者等が商品を選択し 購入している実情もある 6. 判決結論 : 請求棄却 理由 : (1) 本願商標の識別機能 LADY GAGA ( レディ ( ー ) ガガ ) は, アメリカ合衆国出身の女性歌手として, 我が国を含め世界的に広く知られており, LADY GAGA の欧文字からなる本願商標に接する者は, 上記歌手名を表示したものと容易に認識することが認められる そうすると, 本願商標を, その指定商品中, 本件商品である レコード, インターネットを利用して受信し, 及び保存することができる音楽ファイ

- 5 - ル, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ に使用した場合, これに接する取引者 需要者は, 当該商品に係る収録曲を歌唱する者, 又は映像に出演し歌唱している者を表示したもの, すなわち, その商品の品質 ( 内容 ) を表示したものと認識するから, 本願商標は, 自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない したがって, 本願商標は, 商標法 3 条 1 項 3 号に該当する また, 本願商標を, 本件商品である レコード, インターネットを利用して受信し, 及び保存することができる音楽ファイル, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ のうち LADY GAGA ( レディ ( ー ) ガガ ) が歌唱しない品質 ( 内容 ) の商品に使用した場合, LADY GA GA ( レディ ( ー ) ガガ ) が歌唱しているとの誤解を与える可能性があり, 商品の品質について誤認を生ずるおそれがある したがって, 本願商標は, 商標法 4 条 1 項 16 号に該当する したがって, 審決が, 本願商標は商標法 3 条 1 項 3 号及び 4 条 1 項 16 号に該当すると判断したことに誤りはない (2) 取消理由 1 について ( 審決が本願商標の自他商品の識別力を認定するに当たり レコード 等の媒体表面における表示などに基づき 具体的な使用態様を限定して判断を行ったことは誤りである との原告の主張に対し ) 審決は, 本願商標を, 本件商品である レコード, インターネットを利用して受信し, 及び保存することができる音楽ファイル, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ に使用した場合に, 取引者 需要者が, 当該商品に係る収録曲を歌唱する者, 映像に出演し, 歌唱している者を表示したものと認識することを理由として, 本願商標の商標法 3 条 1 項 3 号及び 4 条 1 項 16 号該当性を判断したものであるところ, 上記の認識は, 本件商品の媒体表面やジャケットにおける一般的表示に基づいて認定されたものであり, 特定の表示方法を前提としたわけではないから, 具体的な使用態様を限定して判断を行ったものとは認められない ( 歌手名 音楽バンド名 ( 著作者名 ) の文字からなる商標の登録自体を一律に排除しなければならないという特段の要請はなく 登録を認めたとしても商標法 26 条 1 項による手当が可能であり 特段の不都合は生じない との原告の主張に対し ) 商標法 26 条 1 項は, 登録査定された商標権の効力について定めた規定であり, 同規定により商標権の効力が制限される場合があるからといって, 登録査定の要件を定めた商標法 3 条 1 項 3 号又は 4 条 1 項 16 号の該当性の判断が緩和されるものでないことは明らかである

- 6 - ( 歌手名や音楽グループ名と管理 運営会社の名称を共通にしたり 同名の音楽レーベルを立ち上げる者も存在するという取引の実情があることに加え 原告はその会社名を将来 LADY GAGA,Inc に変更することができる との原告の主張に対し ) 原告の主張は, 歌手や音楽グループが設立した, 歌手名や音楽グループ名と同名の法人が, 自己の名称を商標登録出願する場合には, 当該歌手名や音楽グループ名が広く知られているとしても, 商標法 3 条 1 項 3 号又は 4 条 1 項 16 号の該当性の判断が回避ないし緩和されることを前提とするものであって, その理由のないことは明らかである (3) 取消理由 2 について ( 歌手の才能や技量に基づく歌唱力 演奏力というような抽象的であいまいな概念を ある一定の明確な基準による具体的な品質として理解 把握することは困難であるから 本願商標が 歌手名 と同じであるからといって レコード等の商品との関係で特定の性質等の品質を直ちに理解させるものではない との原告の主張に対し ) 本願商標の指定商品中, 本件商品である レコード, インターネットを利用して受信し, 及び保存することができる音楽ファイル, 録画済みビデオディスク及びビデオテープ においては, 当該商品に係る収録曲を歌唱する者, 又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかは, 当該商品の主要な品質 ( 内容 ) に該当するから, 原告の主張には理由がない ( 周知 著名商標には特に厚い保護を与えている商標法の趣旨に鑑みれば 本願商標も商標登録が認められるべきであり 仮に 原告による本願商標の登録を認めず 第三者による商標的使用を自由に認めるとすれば レディー ガガの名声 信用を害し 本願商標に接する需要者 取引者をして出所についての混同を生じさせる結果となる との原告の主張に対し ) 自他商品の識別標識としての機能を果たし得ない以上, 本件商品において本願商標が表示されて使用された場合, 品質 ( 内容 ) の誤認を生じることがあり得るとしても, 出所混同を生じさせることはないから, 原告の主張には理由がない ( 原告が挙げる過去の登録例に対し ) 本件商品においては, 当該商品に係る収録曲を歌唱する者, 又は映像に出演し歌唱している者が誰であるかは, 当該商品の主要な品質 ( 内容 ) に該当することは, 上記 3(1) に判示したとおりであり, 本件商品のうち L

- 7 - ADY GAGA ( レディ ( ー ) ガガ ) が歌唱しないものに本願商標を使用した場合, 商品の品質について誤認を生ずるおそれがあることは, 上記 1(2) に判示したとおりである このことは, 原告の指摘する登録例の存在によって左右されるものではない (4) 取消理由 3 について ( 審決が 本願商標のような歌手名等が現実に自他商品の識別標識として機能している事実を看過したことは認定の誤りである との原告の主張に対し ) 本件商品の取引においては, 販売元 発売元であるレコード会社 音楽レーベルの名称 ロゴを目印として商品が選択されるより, 歌手名 音楽グループ名それ自体を目印として商品が選択されることが一般的であると認められ, このことは当事者間にも争いがない これは, 前記 1(2) のとおり, 本件商品の性質上, その取引者 需要者が, 当該商品に係る収録曲を歌唱 演奏する者又は映像に出演し歌唱 演奏する者に最も注目し, これを当該商品の品質 ( 内容 ) と認識するためであると認められる 取引される商品によっては, 人の名称やグループ名が当該商品に表示された場合に出所表示機能を有することは否定できないが, 本件商品については, 商品に表示された人の名称やグループ名を, 取引者 需要者が商品の品質 ( 内容 ) とまず認識するものといわなければならない そして, 表示された人の名称やグループ名が, 著名な歌手名 音楽グループ名である場合には, 取引者 需要者は, これを商品の品質 ( 内容 ) とのみ認識し, それとは別に, 当該商品の出所を表示したものと理解することは通常困難であると認められる したがって, 審決に原告主張の誤りはなく, 取消事由 3 は理由がない 7. コメント (1) 日本弁理士会による調査 特許庁に対する要望 日本弁理士会の第 2 商標委員会第 1 小委員会 ( 平成 23 年度 ) は 近年 国内 外国のミュージシャンらが本人 事務所名義で第 9 類 録音又は録画済みの記録媒体 等を指定して商標出願を行った場合に 商品の品質 ( 内容 ) を表示するものに過ぎない等と審査段階で判断されるケースがあるとして 歌手名 音楽グループ名 について識別力が争われた審決を整理 検討するとともに 海外における同様の商標の識別力の取扱いについて調査を行った 同小委員会は 上記調査の結論として (1) 日本においては 審決の段階では登録審決 拒絶審決が混在している (2) 海外においては 音楽 CD との関係では 歌手名 音楽グループ名 について識別力があるとするのが

- 8 - 国際的趨勢である としている また 同小委員会は 考察として 歌手名 音楽グループ名 についても混同防止等の観点から商標登録を認めることが良いと考えられ また 世界的ミュージシャンらは日本を含め世界各国で商標出願を行っており ハーモナイゼーションの観点からは日本でも商標登録を認める方が良いと考えられる としている さらに 同小委員会は 商標登録を認めた場合の問題点 ( 例えば ミュージシャンの所属会社において商標登録がなされた後 ミュージシャンが事務所を辞めた場合に ミュージシャンが継続してその名称を使用できるか否か ) については 商標法第 26 条の解釈 援用等によって大きな不都合を回避し その調整が図れるから 歌手名 音楽グループ名 については商標登録を認めた上で 問題が生じる場合には調整を図っていくというアプローチが良い としている また 日本弁理士会の商標委員会は 平成 24 年 10 月 4 日 特許庁に対して要望書を提出し 歌手名 音楽グループ名 よりなる商標が第 9 類 録音又は録画済みの記録媒体 等を商標出願された場合に 商標法第 3 条第 1 項第 3 号に該当するとして拒絶している 現在の特許庁の運用を改めることを要望している (2) 私見 音楽 CD やミュージック DVD 等の商品それ自体やパッケージの表面にアーティスト名が表示されていた場合 需要者は 当該アーティスト名は当該商品に収録されている楽曲の歌唱者 演奏者を表示する ( 言い換えれば 当該商品には 当該アーティスト名によって示される者が歌唱 演奏した楽曲が収録されている ) と理解するのが通常であると思われる この場合 当該アーティスト名は当該商品の出所を表示するものというよりは むしろ 当該商品の内容 ( 当該商品に収録されている楽曲を示すもの ) を示すものとして使用されており いわゆる 商標的使用 ではないと考えられる このような使用について ある特定の者 ( 当該アーティストを含む ) に独占権を付与することは 少なくとも商標法が想定していることではなく ( 著作権等は別として ) 従って 独占権を認める必要は無いと思われる 問題は このような場合に 商標登録は認めた上で どの独占権が上記のような使用には及ばないとするのか それとも 商標登録をそもそも認めるべきではないとするのか という点である この点 判決は 周知 著名なアーティスト名が音楽 CD やミュージック D VD 等の商品について使用された場合 それは 当該商品に収録されている

- 9 - 楽曲の歌唱者 演奏者を表示するもの以外のものとして理解されることは困難であるとしている ( 取消理由 3 についての判断 ) この認定が正しいのであれば 結局 周知 著名なアーティスト名が 音楽 CD やミュージック DVD 等の商品について商標的に使用される可能性はほぼ皆無であることになるから 商標登録は認めるべきではない ということになる しかしながら 本当にそう言い切っていいかどうかは やや疑問の残るところである この点 原告は審判段階において レコードの裏面の片隅に小さく 発行元 等の文字とともに 発行元 LADY GAGA のように表示される場合には 周知 著名なアーティスト名であっても自他商品の識別力を有すると主張している これに対し 審決は そのような使用態様を取引の実情として考慮すべきか否かにつき 何ら立証がないとして これを一蹴している しかしながら 登録を受けた商標の使用方法としては 原告が主張するような使用態様も当然考えられるのであり その立証がないとして一蹴するのは やや乱暴であるように思われる あるいは 審決は 周知 著名なアーティスト名を 原告が主張するような使用態様で使用することは およそ現実には考えられない ということを述べているのかも知れないが 本当にそう言い切っていいかどうかは やはり やや疑問である 私見としては 周知 著名なアーティスト名について 商標登録を一切認めないよりも 商標登録それ自体は認めた上で 商標法第 26 条の規定や いわゆる 商標的使用 の考え方を適用して独占権の範囲を狭く解釈する方が 落ち着きとしては良いのではないか という印象である とりわけ 商標的使用 については 日本は主な外国 ( 米国 ) と比較して商標的使用の要件を相当に厳格に解する傾向にあり 結果 商標権侵害となり得る商標の使用態様もまた 相当に限定されているという印象である そうであるとすれば 周知 著名なアーティスト名について商標登録を認めたところで その独占権は相当に限定的なものに留まるのであり 弊害は少ないように思われる また 不使用取消審判の場面においても 商標権者には 商標的使用 の立証が求められる以上 商標登録の維持は容易ではなく ( 商標権者がアーティスト名を音楽 CD 等の歌唱者 演奏者の名称としてのみ使用した場合には 商標的使用 が無い以上 商標登録は維持されない ) そのような意味でも 弊害は少ないと思われる 以 上