Microsoft Word - 修正2_建設業における社会保険未加入対策について

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中央建設業審議会による提言について ( 平成 24 年 3 月 14 日 ) 建設産業における社会保険の徹底について ( 提言 ) 建設産業においては 下請企業を中心に 雇用 医療 年金保険について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など

働き方改革 魅力ある建設業の構築に向けて 特集 域によっても大きな差があり, 北陸地方や北海道 など一部の地方では平成 28 年 10 月調査の加入率が 80% を超えているのに対し, 大都市部のある関東 地方 (55%) や近畿地方 (60%) は低い加入率に 留まっている ( ) 建設マネジメン

基本問題小委員会における提言 ( 平成 26 年 1 月 ) 社会保険等未加入対策関係 1. これまでの中央建設業審議会 社会資本整備審議会基本問題小委員会における提言 1 行政 元請企業による加入指導 法定福利費確保に向けた取組等の総合的な対策を推進すべき 2 平成 29 年度を目途に 事業者単位

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れている者 個人事業所で5 人以上の作業員が記載された作業員名簿において 健康保険欄に 国民健康保険 と記載され 又は ( 及び ) 年金保険欄に 国民年金 と記載されている作業員がある場合には 作業員名簿を作成した下請企業に対し 作業員を適切な保険に加入させるよう指導すること なお 法人や 5 人

2 低入札対策の拡充

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社会保険等未加入に対する取組 平成 29 年度を目途に 企業単位では加入義務のある建設業許可業者の加入率 100% となるよう社会保険等未加入企業に対する加入指導を強化します 実施項目経営事項審査の厳格化 平成 24 年 7 月より実施 建設業担当部局による立入検査 実施内容 経営事項審査において

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Microsoft Word - 01社会保険等加入対策に係る事務処理要領

国土入企第 5 4 号 平成 31 年 2 月 22 日 建設業団体の長殿 国土交通省土地 建設産業局長 技能労働者への適切な賃金水準の確保について 技能労働者の確保 育成のためには 適切な賃金水準の確保等による処遇改善が極めて重要です 国土交通省においては これまでの 6 度にわたる公共工事設計労

一般社団法人送電線建設技術研究会関西支部社会保険等の加入促進計画 1. はじめに 平成 27 年 4 月 24 日制定 建設産業においては 健康保険 厚生年金保険及び雇用保険 ( 以下 社会保険等 という ) の 1 法定福利費を適正に負担しない企業が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというと

PowerPoint プレゼンテーション

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社会保険等加入及び法定福利費を内訳明示した見積書に関する実態調査について 1. 調査の目的 これまでに実施してきた各施策に関する各建設企業における取組状況および施策の現場への浸透状況等を総合的に把握し 社会保険等未加入対策の目標達成を見据えた加入徹底方策を検討することを目的とする 2. 調査の概要

ただし 受注者が下請業者と直接契約を締結 ( 以下 一次下請契約 という ) した請負代金の総額が3,000 万円 ( 建築一式工事の場合は4,500 万円 ) 以上の場合は 次のとおり取り扱うものとする ア主管部長 ( 岐阜市契約規則 ( 昭和 39 年規則第 7 号 ) 第 4 条に規定する部長

p10 建設産業における社会保険加入の徹底について(提言)

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1 これまでの社会保険加入状況 2 社会保険の加入及び賃金の状況等に 関する調査結果 3 入札契約適正化法に基づく実施状況 調査結果 4 建設業許可業者の加入率 ( 推計値 ) 1

Q&A 集 Q1 社会保険等とは何か A1 社会保険等とは 健康保険 ( 協会けんぽ 健康保険組合等 ) 厚生年金保険 及び雇用保険をいいます Q2 国民健康保険組合に加入しているが 社会保険等未加入建設業者となるのか A2 法人や常時 5 人以上の従業員を使用する国民健康保険組合に加入している建設

ア事業担当課長 ( 岐阜市上下水道事業部契約規程 ( 昭和 41 年水道部管理規程第 3 号 ) 第 4 条に規定する部長 ) は 工事請負契約約款第 7 条の2 第 2 項の規定に基づき 受注者に対して 期限を定め 当該下請契約を締結した具体的な理由を載した書面を求めるものとする ( 様式 1)

A4 経営事項審査の受審状況により確認方法が異なります なお 適用除外は 労働者の就業形態等によって適用除外とならない場合もあることから 元請負人は 年金事務所等に適用除外となる要件を確認した上で判断してください 経営事項審査を受審している場合 有効期間にある経営規模等評価結果通知書総合評定値通知書

これまで建設業界では 厳しい状況の中で企業経営を成り立たせるため 従来からの直庸など雇用関係が不明確な労働慣行 重層化した下請構造の中で 技能労働者の非社員化 非常勤化 月給制から日給月給制への転換などを進めてきました その結果 本来固定費であるはずの労務費が変動費化し 賃金が低下するとともに 法令

法定福利費の明示について 1 社会保険等未加入対策 建設業者の社会保険等未加入対策として 社会保険等への加入を一層推進していくためには 必要な法定福利費が契約段階でも確保されていることが重要です 建設工事における元請 下請間では 各専門工事業団体が法定福利費を内訳明示した 標準見積書 を作成しており

Microsoft PowerPoint 記者発表資料別添(セット)

Microsoft Word - QandA-tyougai

(2) 法定福利費の基本的な算出方法 法定福利費 = 労務費総額 法定保険料率 法定福利費は 通常 年間の賃金総額に各保険の保険料率を乗じて計算します しかし 各工事の見積りでは 労働者の年間賃金を把握することは不可能です そのため 見積額に計上した 労務費 を賃金とみなして それに各保険の保険料率

財営第   号

3. 保険加入義務のあるのある営業所 ( 適用事業所 ) について社会保険法人の事業所 ( 営業所 ) 及び個人経営で常時 5 人以上の労働者を使用する事業所 ( 営業所 ) が適用事業所に該当します 雇用保険については 労働者を 1 人でも雇用する事業所 ( 営業所 ) が適用事業所に該当します

様式 3 社会保険等一括管理届 ( 一括適用 継続事業一括 ) 11 ページ 本社や支社等ごとに適用されている適用事業所について 本社で人事 給与等が集中的に管理されており 事業主が同一である等 一定の基準を満たすときは 本社において支社等を含めた一つの適用事業所とされる場合があります ( 健康保険

特別の事情 が認められる場合( 2) 特殊な技術 機器又は設備等 ( 以下 特殊技術等 という ) を必要とする工事で 特殊技術等を有する者と下請契約を締結しなければ契約の目的を達することができないことや その下請業者でなければ目的を達することが困難となることが明らかな場合 特別の事情 に該当しない

工事費構成内訳書の提出について ~ 法定福利費の明示が必要になります ~ 平成 29 年 12 月 6 日 中日本高速道路株式会社

Ⅱ 取組み強化のためのアンケート調査等の実施 (1) 建設技能労働者の賃金水準の実態調査国土交通省から依頼を受けて都道府県建設業協会 ( 被災 3 県及びその周辺の7 県を除く ) に対し調査を四半期ごとに実施 (2) 適切な賃金水準の確保等の取組み状況のアンケート調査国は 平成 25 年度公共工事

建設業における社会保険未加入問題への行政の取り組み

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プレゼンテーションタイトル

平成23年度第1回人材確保・育成部会

Ⅰ 概要について 一次下請契約者を社会保険等加入業者に限定します 平成 29 年 4 月 1 日以降に契約締結した工事において 受注者は 原則として社会保険等未加入業者を下請契約 ( 受注者が直接契約締結するものに限る 以下 一次下請契約 という ) の相手方としないこととします 追加 建設工事契約

社会保険等未加入業者との下請契約 (1 次 ) 禁止にかかる事務手続フロー 施工体制台帳により加入状況を確認 工事監督員 添付された加入を証明する書類にて確認します 未加入 加入 適用除外 契約担当に報告するとともに, 受注者に対し, 書面にて当該下請契約を締結した具体的な理由を記載した書面を提出す

貴社についてご記入下さい 貴社の概要について 会社名会社の形態 ( は一つ ) 1 法 2 個 本社所在地 [ ] 都道府県 建設業許可 ( は一つ ) 複数の許可をお持ちの場合 年間完成工事高が一番多いものを一つ回答して下さい 主な許可業種 ( はいくつでも ) 従業者数 ( は一つ ) 期間の定

1. 休日 適正工期の確保について 働き方改革関連法がいよいよ今年 4 月に施行します そんな中で建設業界でも 大手ゼネコンで組織する日本建設業連合会 ( 日建連 ) が 2019 年度末までに 4 週 6 閉所以上を実現することを中間目標とし 2021 年度末までにすべての事業所で週休二日 ( 土

下請契約からの社会保険等未加入建設業者の排除等に係る Q&A Q1 社会保険等とはなんですか A1: 雇用保険 健康保険 厚生年金保険の 3 保険のことをいいます Q2 社会保険等に未加入 というのはどういう場合か A2: 社会保険等に未加入 とは 社会保険等の適用を受ける事業所でありながら 各保険

特別の事情 が認められる場合 ( 2) 特殊な技術 機器又は設備等 ( 以下 特殊技術等 という ) を必要とする工事で 特殊技術等を有する者と下請契約を締結しなければ契約の目的を達することができないことや その下請業者でなければ目的を達することが困難となることが明らかな場合 特別の事情 に該当しな

なお 受注者から指定した期日までに保険加入を確認できる書類が提出されない場合は 埼玉県流域下水道事業建設工事標準請負契約約款第 7 条の3 第 1 項の規定に違反することとなる旨を併せて通知します 3 発注者が 理由書 ( 一次 ) によっても当該特別の事情を有すると認めないと判断した場合は 受注者

スライド 1

社会保険等の未加入対策 ( 建設業 ) に関する FAQ 平成 31 年度以後 Q1 発注者として 社会保険等の未加入対策に取り組んでいるのはなぜか A1 社会保険等に加入し 法定福利費を適正に負担する建設業者を確実に契約の相手方とすること等を通じて 技能労働者の処遇の向上を図り 建設業の持続的な発

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1 医療保険 年金保険についての確認書類 弊社が施工する建設現場に入場する協力業者および作業員の方には 作業所長の指示により 見積書提出時 新規入場時 安全書類提出時に 医療保険 年金保険の加入状況を確認する書 類 ( 下記 A~E いずれか一点 ) を提出または呈示していただきます A. 直近の保

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公共事業労務費調査 ( 企業別 労働者別 )1 公共事業労務費調査 ( 平成 27 年 10 月調査 ) における社会保険加入状況調査結果をみると 企業別の加入率は 雇用保険では 98% [ 対前年度比 +1.4% ] 健康保険では 97% [ 対前年度比 +2.4% ] 厚生年金保険では 96%

社会保険加入促進計画 平成 24 年 4 月 19 日 社団法人日本建設業連合会 1. 基本的な方針社会保険等の加入促進の実効性を確保するためには 行政 元請企業 下請企業等が一体となって推進していくことが必要である 日建連は 元請企業としての責務を果たすべく 団体が取り組むべき対策 正会員 ( 以

1 標準見積書とは 1-1 目的は 法定福利費 の原資確保 社会保険未加入の対策を進めるためには法定福利費の原資確保が重要である しかし従来は見積時から法定福利費が明確になっておらず その扱いが分かりにくい状況となっていた 今後は工事費総額ではなく その中に含まれる法定福利費を明示して必要な原資を確

Q4 建設業の許可を有しない下請負人 ( 下請業者 ) も対象になるのか A4 本対策は 建設業許可を有する者のうち 社会保険等の加入義務を履行していない者を取組みの対象としています 建設業の許可を有しない者との一次下請契約の締結を禁止していません ( 交通誘導員等の警備業のみを行う者も対象外 )

社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン改訂案 現行第 1 趣旨建設産業においては 健康保険 厚生年金保険及び雇用保険 ( 以下 社会保険 という ) について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未加入企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというときの公的保障が確保さ

4 受注者による社会保険等の加入状況の確認 (1) 確認方法 1 下請負契約の締結前に, 相手方の社会保険等への加入状況を, 保険料の領収済通知書等により確認してください ( 適用除外の場合, 除外事由を相手方から資料等で確認してください ) 2 下請負契約の締結後, 施工体制台帳等を作成し, 工事

懸念事項

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資料3 国土交通省における取組み等<再修正>

他方で 下請企業を中心に保険未加入企業が存在している状況を改善していくためには 元請企業において下請企業の保険加入を指導する役割を担うことが求められる これについては 従来から 建設産業における生産システム合理化指針 ( 平成 3 年 2 月 5 日建設省経構発第 2 号 ) において 元請企業が下

懸念事項

イドライン が策定されたところです こうした中 平成 30 年 6 月 29 日に第 196 回通常国会で成立した 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律 ( 以下 働き方改革関連法 という ) に基づく改正後の労働基準法において 建設業については 平成 31 年 4 月の法施行から5

建設業における社会保険未加入対策 ( 今までの主な取組 ) 中央建設業審議会 建設産業における社会保険加入の徹底について ( 提言 ) ( 平成 24 年 3 月 ) 関係者を挙げて社会保険未加入問題への対策を進めることで 技能労働者の処遇の向上 建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保 法定福利費

標準請負契約約款の概要 標準請負契約約款は 請負契約の片務性の是正と契約関係の明確化 適正化のため 当該請負契約における当事者間の具体的な権利義務関係の内容を律するものとして 中央建設業審議会が公正な立場から作成し 当事者にその実施を勧告するもの 建設業法第 34 条第 2 項 建設業法 ( 昭和

( ウ ) 支出負担行為担当者は 工事監督員から理由書の送付があった場合は 特別の事情に該当するか否かを決定するものとする また 理由書が提出されなかった場合には 当該特別の事情を有しないものとみなして差し支えない イア以外の下請負人が社会保険等未加入建設業者である場合工事監督員は 当該社会保険等未

合は 当該出向社員と当該出向先の会社との間に直接的かつ恒常的な雇用関係があるものとして取り扱うこととする ただし 当該出向先の会社が当該出向社員を主任技術者又は監理技術者として置く建設工事について 当該企業集団を構成する親会社若しくはその連結子会社又は当該親会社の非連結子会社 ( 会社計算規則第 2

1 標準見積書とは 1-1 目的は 法定福利費 の原資確保 社会保険未加入の対策を進めるためには法定福利費の原資確保が重要である しかし従来は見積時から法定福利費が明確になっておらず その扱いが分かりにくい状況となっていた 今後は工事費総額ではなく その中に含まれる法定福利費を明示して必要な原資を確

社会保険未加入企業の減点措置の厳格化に係る運用 新基準による受付時期及び再審査に係る運用 ( 参考 ) 関係通達 事務連絡 版 重要 経営事項審査の審査基準の改正について平成 24 年 5 月 1 日改正 ( 同年 7 月 1 日施行 ) に係る関東地方整備局の運用等 1 国土交通省関

工事の定義 1. 工事 建設業法等に定義なし 建設業法における用例 : この法律において 建設工事 とは 土木建築に関する工事で別表第一の上欄に掲げるものをいう ( 建設業法第 2 条第 1 項 ) 出典 意味 広辞苑 明鏡国語辞典 デジタル大辞泉 振動規制法 ( 昭和 51 年法律第 64 号 )

(2) 法定福利費の算出方法 1 法定福利費 = 労務費総額 社会保険料率法定福利費は 通常 年間の賃金総額に各保険の保険料率を乗じて計算します しかし 各工事の見積りでは 労働者の年間賃金を把握することは不可能です そのため 見積額に計上した 労務費 を賃金とみなして それに各保険の保険料を乗じて

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技術者等及び現場代理人の適正配置について

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元請企業から下請企業への指導 25. 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン とは P10 平成 27 年 4 月 1 日から適用する 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン の具体的な改訂内 26. 容は P 元請企業に求められる保険未加入者の排除措置はどのようなものか P11

別記様式 2 地方整備局長 知事 支社支社長 印 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律第 11 条 社会保険等未加入 業者 の通知について 公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 ( 以下 法 という ) 第 11 条に基づき 弊社の発注工事において社会保険等未加入業者の存在が

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所において施工する場合 2 施工にあたり相互に調整を要する工事で かつ 工事現場の相互の間隔が 10km 程度の近接した場所において同一の建設業者が施工する場合 ( 別添 建設工事における現場代理人の常駐義務の緩和に係る取扱いについて に示す 参考 第 2 第 1 項第 3 号に定める該当工事 参照

2. 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン の改訂について 平成 27 年 4 月 建設業における社会保険の加入について 元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にするため 平成 24 年 11 月に 社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン を施行 本ガイドラインは 平成 2

監督職員用 社会保険等未加入対応マニュアル 1 目的これまで県土整備部においては 県営建設工事入札参加資格審査における社会保険等未加入業者の排除や 建設業許可申請時等における加入指導等の社会保険等加入促進に向けた取組を行ってきたところであるが 国の直轄工事においては 平成 29 年度からすべての下請

スライド 1

( 別紙 ) 施工体制台帳に係る書類の提出に関する実施要領 1 目的公共の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 ( 平成 12 年法律第 127 号 ) 及び建設業法 ( 昭和 24 年法律第 100 号 ) に基づく適正な施工体制の確保等を図るため 発注者から直接建設を請け負った建設業者は 施工

株式会社殿 住所 株式会社 見積金額 L ( 消費税込 ) ( 内訳 ) 項目数量歩掛単価金額 工事材料費 A 労務費 B 経費 ( を除く ) D=A+B +C 事業主負担額対象金額金額雇用保険料 B 1.050% p E B p 消費税等合計 御見積書 ( 例 ) 料率 健康保険料 ( 1 )

プレゼンテーションタイトル

状況を目指すべきである とされており 本ガイドラインは この目標を達成するため 建設業における社会保険の加入について 元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割 と責任を明確にしたものであり 建設企業の取組の指針となるべきものである 第 2 元請企業の役割と責任 (1) 総論元請企業は 請け負った工

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適正化法に係る書類 ( 様式目次 ) 下記書類は( 甲 ) 第 23 号に添付の上提出のこと 名 称 様 式 備 考 頁 請負工事において 元 施工体制台帳 請が下請契約を締結し工事適正化推進要領様式第 1 号た場合に提出する 110 再下請負通知書工事適正化推進要領様式第 2 号 112 施工体系

利用目的と共同利用

重要 建設工事の標準請負契約約款の改正について ( 社会保険への加入の促進 ) 平成 31 年 2 月 6 日 総務部財政課 須坂市では 建設工事等入札参加資格者に社会保険の加入を義務付けており 未加入の下請け企業についても元請企業から加入指導するよう求めています 平成 29 年 7 月 中央建設業

公共工事における予定価格設定時の 歩切り に関する調査の結果について 平成 27 年 4 月 28 日総務省国土交通省 昨年 6 月の公共工事の品質確保の促進に関する法律 ( 平成 17 年法律第 18 号 以下 公共工事品質確保法 という ) の改正により 予定価格の適正な設定が発注者の責務として

平成 29 年度の目標達成に向けた今後の取組方針 平成 28 年 5 月 23 日第 6 回社会保険未加入対策推進協議会資料 1. 社会保険加入に向けた対策の強化 2. 法定福利費の確保 元請企業による加入指導の強化 社会保険加入について元請企業の下請企業に対する指導責任の強化を検討 公共工事におけ

株式会社殿 住所 株式会社 見積金額 L ( 消費税込 ) ( 内訳 ) 項目数量歩掛単価金額 工事材料費 A 労務費 B 経費 ( を除く ) D=A+B +C 事業主負担額対象金額金額雇用保険料 B 1.050% p E B p 消費税等合計 御見積書 ( 例 ) 料率 健康保険料 ( 1 )

該当するか否かについて判断し その結果を式第 3により記録しなければならない 3 社会保険等未加入建設業者と下請契約を締結することについて 提出期限内に理由書の提出がなかった場合は 工事担当課長は 式第 4により以下の額について制裁金を請求する旨を受注者に通知するものとする P=C 0.1 P: 制

標準見積書に計上する 法定福利費 の算出は次の2つの方法とし 手順は以下の通り 1 施工見積の取付費総額から労務費を算出し それに法定福利費の保険料率を乗じる 2 これまでの施工実績をもとに施工従事者に支払った正味労務費から各商品の単位当りの法定福利費をあらかじめ算出した上で 法定福利費を簡便に算出

建設業における社会保険未加入対策の概要 参考 1 背景 ( 建設業における課題 ) 社会保険未加入企業が多く存在し いざというときの公的保障が確保されず 若年入職者減少の一因となっている 適正に保険に加入し 法定福利費を負担している事業者が競争上不利になる 中央建設業審議会提言 ( 平成 24 年


業界で躍進する 工事現場 の 要 登録基幹 技能者 登録基幹技能者制度推進協議会 一財 建設業振興基金

役務契約における労働社会保険諸法令遵守状況確認実施方針

2011年9月30日

9. システムの利用規約 Q&A Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism 44

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建設業における社会保険未加入対策について 橋本嘉雄 1 1 建政部計画 建設産業課 ( 950-8801 新潟県新潟市中央区美咲町 1 丁目 1 番 1 号 ) 建設業は, これまでの建設投資の減少による競争の激化により, 就労環境の悪化等による若年入職者の減少や, 不公正な競争環境の発生という課題がある. この課題の対策の一つとして行政 元請業者 下請業者が一体となって取り組んでいる社会保険未加入対策について報告する. キーワード建設業の許可, 経営事項審査, 立入検査, 法定福利費, 標準見積書, 担い手確保 1. はじめに 建設業は河川, 道路, 港湾等の社会資本や, 各種の産業施設, そして学校 病院といった文教 福祉施設の建設工事のほか 災害時の応急対応 除雪等を担う我々の社会を支える重要な基幹産業である. 建設業には他の産業と比較をした場合に次の 5 つの特徴がある.1 受注生産が基本で, 規模 内容が工事ごとに異なるため元請 下請の関係が成立しやすいこと 2 建設工事の生産物を完成させるため, 多種類の工事の施工が必要になること 3 建設工事の生産物が土地に定着するため, 工事の施工場所が限定されること 4 施工場所の多くが屋外であるため, 施工条件が天候に影響を受けやすいこと 5 肉体的労働に依存し, 少ない資本で経営することができるため, 他の産業と比べて建設業への参入が容易であること等である. これらの特徴により, 次の 2 つの問題が生じやすい. 1 建設業には参入が容易な部分がある一方で, 資力 技術力 信用等が不足する企業の参入により, 公衆危害や労働災害等の問題が発生すること 2 建設業は受注産業であるため, 注文者の立場が強く, 建設企業の立場が弱いため, 建設工事の請負契約に不平等 不合理な問題が発生することである. この建設業の特徴から発生する問題に対して, 建設業を営む者の資質の向上, 発注者と請負人との契約関係や元請業者と下請業者の契約関係の適正化等により, 建設工事の適正な施工の確保, 発注者の保護そして建設業の健全な発達の促進を目的として制定した法律が建設業法 ( 昭和 24(1949) 年法律第 100 号 ) である. これまでの建設業行政では, 建設業法に基づき, 国土交通省 都道府県が担当部局となり, 建設業の許可, 建設工事の請負契約とその紛争の処理, そして, 施工技術の確保等の対策を実施してきたところである. 一方で, これまでの建設投資の減少により, 契約関係において立場が弱い建設企業によるダンピング受注や下 請業者へのしわ寄せを招いた. そして, このことが一因となり, 下請業者を中心にして, 社会保険 ( 本書では 雇用保険, 健康保険および厚生年金保険 をいう.) に必要な法定福利費を適正に負担しない企業が存在している. 企業が法定福利費を適正に負担しないことは, 技能労働者がいざというときに公的保障を受けられないことを意味し, 若年入職者数の減少の一因となるほか, 法定福利費を適正に負担する事業者ほど, 負担しない企業に比べて, 競争上では不利になるという矛盾した状況を生じさせている. そして, これらの状況が続くことにより, 建設業の担い手確保や, 建設業の技能 技術の継承に支障をきたし, 建設業の健全な発達を阻害する懸念がある. そのため, これまでの建設業法の規定に基づく建設企業への指導 監督に加えて, 建設業における担い手確保の一環として, 行政 元請業者 下請業者が一体となり, 社会保険未加入対策を総合的に推進し, 技能労働者の就労環境の改善や, 不良不適格事業者の排除に取り組むこととした. この取組の計画期間は平成 24(2012) から平成 28(2016) までとしており, 平成 29(2017) 以降の目指す姿としては, 建設業許可業者単位で 100% の加入とし, 労働者単位では製造業相当の加入としている. 本書では 2015 年 5 月末時点における関係法令, 告示および通達等に基づき, 行政 元請業者 下請業者が取り組む社会保険未加入対策の概要について報告する. 2. 社会保険未加入の背景について 本章では, 建設業における社会保険未加入の背景について各種資料を引用し, 分析する. (1) 社会保険の未加入の背景を示す各種資料

a) 建設投資額および建設業就業者に関する資料建設投資の推移を以下に示す ( 図 -1). 図 3 から, 製造業と建設業とを比較すると, 建設業では 55 歳以上の割合が約 3 割と高くなっている一方で,29 歳以下の割合が約 1 割と低い傾向にある. b) 公共工事設計労務単価の推移および入職 離職の原因に関する資料就業者の処遇に関する資料を以下に示す ( 図 -4). 単価 ( 円,1 日 8 時間あたり ) 図 -1 建設投資の推移 ( 出所 : 国土交通省 建設投資見通し ) 25,000 20,000 15,000 19,121 15,394 13,577 13,072 図 -1 から, 建設投資額は, 平成 4(1992) の約 84 兆円をピークとしてからは減少傾向となり, 平成 26(2014) は約 48 兆円 ( ピーク比約 42% 減 ) となっている. 建設業就業者の推移を以下に示す ( 図 -2). 10,000 5,000 0 平成 9 (1997) 平成 14 (2002) 平成 19 (2007) 平成 24 (2012) 図 -4 公共工事設計労務単価における全国全職種平均値の推移 ( 出所 : 国土交通省 公共工事設計労務単価 から抜粋 ) 図 -2 技能労働者等の推移 ( 出所 : 総務省 労働力調査 ( 暦年 平均 ) を基に国土交通省で算出 平成 23(2011) 年デ ータは東日本大震災の影響により推計値 ) 図 4 から, 公共工事設計労務単価は平成 9(1997) から平成 24(2012) まで, 下落傾向に推移していたことがわかる. 建設技能労働者について, 若手が入職しない原因と若手 中堅が離職する原因に関する資料を以下に示す ( 図 -5). 図 -2 から, 建設業就業者は, 平成 9(1997) 年の 685 万人をピークとして, 減少傾向となり, 平成 26(2014) 年は 505 万人 ( ピーク比約 26% 減 ) となっている. 建設業の就業者の年齢構成に関する資料について, 以下に示す ( 図 -3). 図 -5 建設技能労働力の確保に関する調査報告書 ( 平成 19 (2007) 年 3 月 ) ( 出所 :( 一社 ) 建設産業専門団体連 合会 ) 図 -3 建設業就業者の高齢化の進行 ( 出所 : 総務省 労働力調 査 を基に国土交通省で算出 ) 図 5 から, 若年者が入職しない原因および若手 中堅の離職する原因として 収入の低さ を第一位に挙げており, さらに, 社会保険等福利の未整備 も挙げられ, 処遇の低さが入職しない理由と, 離職する理由に共通していることがわかる.

c) 社会保険未加入に関する資料建設業における社会保険の加入 未加入に関する資料を示す ( 表 -1). 表 -1 公共事業労務費調査における社会保険加入割合 ( 出所 : 国土交通省平成 23(2011) 年 10 月公共事業労務費調査 ) 雇用保険健康保険 厚生年金保険 3 保険 企業 94% 86% 86% 84% 労働者 75% 60% 58% 57% 表 1 から, 社会保険未加入の企業 ( 以下 未加入企業 という.) および未加入の労働者 ( 以下 未加入者 という.) の存在がわかる. 元請業者と下請業者の社会保険加入状況を以下に示す ( 図 -6). 図 -6 元請 下請次数別の社会保険加入状況 ( 出所 : 平成 22 (2010) 公共事業労務費調査 ) 図 6 から, 土木工事および建築工事ともに, 元請業者に比べて, 下請業者の加入割合が低いことがわかる. 都道府県別の社会保険加入状況を以下に示す ( 図 -7). (2) 各種資料の分析 (1) に挙げたデータから 1 建設投資の減少に比例して建設業の就業者も減少しており, さらに, 高齢化が進行していること ( 図 -1, 図 -2, 図 -3)2 建設業の就業者の処遇が低く, 収入が低いというイメージがあること ( 図 -4, 図 -5)3 企業と労働者それぞれに未加入企業と未加入者が存在すること ( 表 -1)4 調査項目によっては加入割合に開きがあること ( 図 -6, 図 -7) がわかる. 雇用保険については建設事業主の場合, 個人経営か法人かにかかわらず, 労働者を 1 人でも雇用する限り, 必ず加入手続をとらなければならない. そして, 健康保険と厚生年金保険については, 法人の場合にはすべての事業所について, 個人経営の場合でも常時 5 人以上の従業員を使用する限り, 必ず加入手続を行わなければならない. これらの社会保険に要する費用は, 建設企業が義務的に負担しなければならない法定福利費である. 建設業法第 19 条の 3 には 注文者は, 自己の取引上の地位を不当に利用して, その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる原価に満たない金額を請負代金の額とする請負契約を締結してはならない. と規定しており, 法定福利費は 通常必要と認められる原価 に含まれるものである. しかし, 建設投資が減少している状況下では, 建設業は受注産業であるため, 建設企業の立場が弱く, 注文者の立場が強いため, 義務的に負担しなければいけない法定福利費が確保されない請負契約が発生し, さらに, 未加入企業が存在することにより, 技能労働者の就労環境が悪化し, 建設業の担い手減少の一因となっている. 一方で, 適正に法定福利費を負担している企業は, 未加入企業と比べてコスト高となるため, 企業間の競争では不利になるという矛盾が生じている. このように法定福利費の確保は, 企業活動のみで確保を実現することが困難な状況にあるため, 建設業に関わる行政 元請業者 下請業者が一体となり, 総合的に取り組むことが必要である. 次章では行政 元請業者 下請業者それぞれの具体的な社会保険未加入対策を説明する. 3. 各分野における社会保険未加入対策 図 -7 都道府県別の社会保険加入状況 ( 出所 : 平成 22(2010) 公共事業労務費調査 ) 図 7 から, 地方部と比べて都市部の加入割合は低い傾向にある. (1) 行政による取組 a) 建設業の許可申請時における確認 指導建設業法第 3 条の規定により, 建設工事の完成を請け負う営業を行うためには, 建設工事 (1,500 万円未満の建築一式工事および建築一式工事以外の 500 万円未満の工事を除く ) が公共工事であるか民間工事であるかを問わず, 建設業の許可を受けなければならない.

一方で, 建設業の許可制度では, 未加入企業を把握する仕組みが存在しなかった. そのため, 建設業担当部局が所管する建設業の許可制度に未加入企業をチェックする機能を持たせ, さらに, 建設業担当部局から未加入企業に加入指導をしても加入しない場合に, 社会保険担当部局との連携を図るため, 平成 24(2012) 年 11 月以降は, 建設業の許可申請をする建設企業は, 健康保険等の加入状況を示す書面を添付書類として提出することになった. b) 経営事項審査における確認 指導, 減点幅拡大競争参加資格の審査に用いる経営事項審査についても社会保険未加入対策を行った. 経営事項審査は, 建設業法第 27 条の 23 の規定により, 建設企業が公共工事を発注者から直接請け負う場合, 原則として, その経営に関する客観的事項について, 国土交通大臣または都道府県知事から受ける審査のことである. 経営事項審査の結果は, 主に公共工事の発注者である国 地方公共団体等が競争参加資格の審査において利用する. 経営事項審査の位置づけ ( 図 -8) を以下に示す. 経営事項審査においては, 表 -2 の その他審査項目 ( 社会性等 )1 労働福祉の状況 において, 平成 24 (2012) 年 7 月前は雇用保険と健康保険および厚生年金保険の 2 つに分類し, 審査をしていた. しかし,3 保険とも保険制度の目的 給付内容は別個のものであり, 一定の手続により適用除外を受ける仕組みがあることや, 各保険制度ごとの加入状況を適正に把握し, 評価を行う必要があるため, 平成 24(2012) 年 7 月以降は, 項目を 2 分割し, 健康保険 と 厚生年金保険 のそれぞれを審査の対象とし, さらに, 未加入の場合の減点幅を大きくし, 未加入企業への審査を厳格化した ( 表 -3). 表 -3 経営事項審査での社会保険未加入業者の減点幅拡大 改正前 ( 平成 24(2012) 年 7 月前 ) 改正後 ( 平成 24(2012) 年 7 月以降 ) 雇用保険 30 点雇用保険 40 点 健康保険厚生年金保険 30 点 健康保険 厚生年金保険 40 点 40 点 合計 60 点合計 120 点 図 -8 経営事項審査の位置づけ 次に経営事項審査の審査項目を以下に示す ( 表 -2). 表 -2 経営事項審査の審査項目 ( 出所 : 中央建設審議会資料 ) c) 法令遵守推進本部による立入検査平成 19(2007) 年 4 月以降, 建設業を取り巻く厳しい環境を踏まえ, 建設生産物の品質を確保するとともに, 技術と経営に優れた企業が伸びる環境を整備していくうえで, 建設業者に対する法令違反への対応を強化するため, 建設業法第 31 条の規定により, 北陸地方整備局をはじめとする全国の地方整備局等において, 建設業法令遵守推進本部 を設置し, 建設業者に立入検査を行い, 建設業における法令遵守の徹底を強化している. 北陸地方整備局は管内 ( 新潟県 富山県 石川県 ) の建設業者について, 平成 25(2013) は 113 社, 平成 26 (2014) は 114 社に立入検査を実施している. 立入検査では, 書面による請負契約締結の徹底や, 下請企業に対する適正な下請代金支払の確保のほか, 社会保険加入状況の確認や, 下請契約における法定福利費を内訳明示した見積書 ( 以下 標準見積書 という.) を尊重した下請契約の締結について検査を実施している. 法定福利費は, 第 2 章第 2 節で記述したとおり, 建設業法第 19 条の 3 の 通常必要と認められる原価 であり, 法定福利費を満たさない金額は建設業法 19 条の 3 に違反するおそれがあるため, 検査項目としているものである. (2) 元請業者および下請業者による取組 a) 施工体制台帳による社会保険加入状況の確認建設業法は建設工事の適正な施工の確保も目的としており, その方法の一つが建設業法第 24 条の 7 の規定による施工体制台帳である. 施工体制台帳は下請業者の建設工事内容や工期等を記載した台帳のことである.3,000 万円 ( 建築一式工事では 4,500 万円 ) 以上の工事 ( ただし, 平

成 27(2015) 年 4 月以降に契約する公共工事についてはすべての工事 ) については, 発注者から直接請け負った元請業者は施工体制台帳を作成する義務がある. 平成 24(2012) 年 11 月以降は, 施工体制台帳の記載事項および下請負人が元請業者に通知すべき事項に, 社会保険保険加入状況を追加し, 元請業者は下請業者の社会保険加入状況についても確認することとした. b) 標準見積書の作成 提出平成 24(2012) 年 5 月に行政, 建設業団体等が建設業における社会保険未加入対策を総合的かつ継続的に推進する場として, 社会保険未加入対策推進協議会を開催した. この協議会では, 参画した元請業者が所属する総合工事業団体が標準見積書の提出を下請業者に促すとともに, 提出した標準見積書を尊重すること, そして, 下請業者が所属する各専門工事業団体が法定福利費を明示した標準見積書およびその作成手順書を検討することを決定した. 平成 25(2013) 年 9 月からは各専門工事業団体が作成した標準見積書の様式およびその作成手順書の活用を開始している. 従来, 下請業者が元請業者に提出する見積書の様式について, これまでは材料費と工事費を一式で計上したものや, m2単価そしてトン単価等で表記したものが多く, 法定福利費の有無を確認することが困難であったが, 法定福利費を内訳明示した標準見積書の活用により, 法定福利費を確保することが可能となる. 国土交通省は, 各業界団体が定めた標準見積書の作成様式について, 国土交通省ホームページに掲載するなどし, 活用を支援している. 標準見積書の作成例を以下に示す ( 図 -9). 本章第 1 節 c 項で記述したように法定福利費を確保するためには, 標準見積書を下請業者が作成し, 元請業者が尊重することが必要である. しかし, 個々の企業の努力だけではなく, 業界全体で取り組むことも重要である. 標準見積書の活用にあたっては, 各総合工事業団体および各専門工事業団体が主体となって取り組み, 国土交通省が取り組みを行うよう働きかけ 課題の集約を行うこととしている. 4. おわりに 社会保険加入状況について, 直近の資料を以下に示す ( 図 -10). 法定福利費図 -10 公共事業労務費調査 ( 平成 26(2014) 年 10 月調査結果 ) における社会保険加入状況調査 ( 出所 : 国土交通省 ) 図 -9 標準見積書の作成例 ( 出所 : 国土交通省ホームページ http://www.mlit.go.jp/common/001023918.pdf) 図 -10 から,3 保険の加入割合は, 平成 23(2011) 年 10 月調査結果と比較して, 平成 26(2014) 年 10 月調査結果では, 元請業者および一次 二次 三次下請業者のいずれにおいても,3 保険全体の加入割合は高まっている. しかし, 元請業者と三次下請業者との加入割合の比較をした場合, 三次下請業者の加入割合は元請業者の加入割合より 10 ポイント以上低い.

さらに, 公共事業労務費調査 ( 平成 26(2014) 年 10 月調査結果 ) における社会保険加入状況調査のうち, 以下の調査結果を示す ( 表 -4). 表 -4 公共事業労務費調査 ( 平成 26(2014) 年 10 月調査結果 ) 企業別 における保険加入状況調査 ( 企業別 労働者別の調査 結果から抜粋 )( 出所 : 国土交通省,( ) 内の割合は 3 保険の加入割合 ) 調査項目 加入率高 ( 例 ) 加入率低 ( 例 ) 都道府県別 富山 (99%) 千葉 (78%) 事業所規模別 500~999 人 (97%) 1 人 (59%) 労働者別 調査項目 加入率高 ( 例 ) 加入率低 ( 例 ) 給与形態別 月給制 ( 欠勤差引あり ) 日給制 ( 日雇 臨時 ) (97%) (13%) 職階別 職長 (83%) 指導者以外の労働者 (64%) 表 -4 からは, 企業別および労働者別ともに, 各調査項目において, 加入率が高い例と加入率が低い例が明確になっている. 企業別では, 就業者が多い企業と地方部での加入割合は高いが, 就業者が少ない企業や都市部では加入割合が低いことがわかる. 一方で, 労働者別では, 月給制 や職長といった労働者は高く, 日給制や指導者以外の労働者の加入割合は低い. 調査項目によっては加入割合が上がっていることを示す調査結果 ( 図 -10) がある一方で, 別の調査結果 ( 表 -4) では, 加入割合の差が大きい場合があることもわかる. 社会保険加入の徹底にあたっては, 今後も行政 元請業者 下請業者等の様々な関係者が一体となり, 様々な角度から社会保険未加入対策を進めていくことが必要である. そして, 社会保険未加入対策を進めることによって建設業の持続的な発展に必要な担い手確保および事業者間の公平で健全な競争環境の構築を実現することが必要である. 今後も建設業行政を担当する職員として, 社会保険未加入対策に取り組んでいきたい. 謝辞 : 本書作成にあたり, ご指導をいただいた皆様に対して, 心から御礼を申し上げます. 参考文献 : 1) 山口康夫著 : 逐条解説建設業法 2) 建設業法研究会編著 : 逐条解説建設業法解説改訂 11 版