カーボン系導電性フィラーの種類と特徴 機能性カーボンフィラー研究会 副会長前野聖二 はじめに導電性フィラーには 金属系 金属酸化物系 カーボン系など様々な種類があるが 中でも カーボン系導電性フィラーは 導電助剤や導電性フィラーとして エレクトロニクス分野においては 絶縁性の高分子材料に導電性を付与する材として また 高性能な二次電池やキャパシタ等のニューパワーソース分野においては 電子を集電体まで移動させるための導電パスとして 更には 昨今急速に開発が進められている燃料電池においては触媒の担持体として広く使われている 本稿では 各種導電性フィラーの種類と特徴について概要を述べ 導電性フィラーの中でも最も汎用性の高いカーボン系導電性フィラーについて詳述する 1. 各種導電性フィラーの特徴導電付与材あるいは導電パスとして利用される導電性フィラーには表 1に示すとおり 大きく分けてカーボン系 金属系 金属酸化物系 金属被覆系フィラーの四種類がある それぞれ メリット デメリットがあり 用途や訴求点に応じて使い分けられている 以下 各種導電性フィラーの特徴を本稿の主題であるカーボン系導電性フィラーとの比較で詳述する 表 1 導電性フィラーの種類
1.1. 金属系フィラー粉末状 フレーク状 繊維状のフィラーが各社から市販されている 繊維状 フレーク状の金属フィラーは導電性プラスチック成形体用に 粉末状フィラーは導電性塗料や接着剤用の導電材として用いられている 最も優れた点は カーボン系に比べ フィラー自体の導電性が非常に良いことにある 例えば銀や銅の場合 フィラー自体の導電性は体積固有抵抗率で2 10-8 Ω cm であり カーボン系フィラーの10-2 ~10-1 Ω cm と比べ数値上 数百 ~ 数千万倍優れた導電性を保有している その理由は カーボン系フィラーの導電性はグラファイト構造から起因する共役二重結合 (π 電子 ) の移動により発現するが 金属系フィラーでは 自由電子の移動により発現するためである 優れた導電性を利用し 電磁波シールド材やプリント回路 ジャンパー回路 スルーホール等 高導電性が要求される用途に用いられている 一方 デメリットとしては アルミニウム以外の金属系フィラーは 比重 (ex. 銅 :8.9) が高く 高充填する必要があるため 金属系フィラー充填複合材料は カーボン系フィラー ( 比重 : 2) 複合材料より重たくなる そのため 薄 小部品や導電塗料 / ペーストを塗布し厚さ数ミクロンの塗膜として用いる用途などが主流となっている また 高価な金 銀以外の金属は 酸化により導電性が劣化するなどのデメリットもある 酸化劣化については 酸化防止剤 カップリング剤や銅粉の形状等による改良が試みられており 詳細は参考文献を参照いただきたい 1) 1.2. 金属酸化物系導電フィラー基材として 酸化チタン 酸化亜鉛 酸化インジウム 酸化スズを用い これら基材にアルミニウム 酸化アンチモンをドープすることにより数 10-3 ~10 2 Ωcm の導電性をもたせている 表 2に金属酸化物系導電性フィラーの種類と性状を示す 2) 黒色のカーボンブラックとは異なり白色あるいは淡色であるため 顔料により着色でき また 酸化スズ系導電性フィラー含有塗料を塗布した基材は透明 3) となる等 色調の点でカーボンブラックよりも有利となる そのため ディスプレーのコート材や太陽電池などの用途には必要不可欠な素材となっている 4) また 金属化物であるため 耐熱性 耐薬品性に優れるという特徴がある デメリットとしては アンチモンの安全性に対する懸念 相対的にカーボン系フィラーより高価であることなどが挙げられる 安全性の懸念を払拭する目的で アンチモンフリーの金属酸化物系フィラーの開発が各社により進められている
表 2 金属酸化物系導電性フィラーの種類と特徴 1.3. 金属被覆系導電フィラー絶縁性のマイカ 炭酸カルシウム ガラスビーズなどの安価な無機フィラーや炭素繊維 ( 芯材 ) にアルミニウムやニッケルなどの金属を被覆したフィラーが知られている 金属と同程度の高い導電性を示し 比重はベースとなる基材に従うため 金属系フィラーに比べ軽量であり カーボン系フィラーよりも高導電性という特徴がある 例えば 0.25ミクロン厚のニッケルを被覆した炭素繊維は 比重は2.7であり 10-5 5) Ωcmの高導電性を有している 一方で 無電解メッキなど複雑な工程により製造されるため結果として高価となる 複合化する際の分散エネルギーにより被覆した金属が剥がれて導電性が劣化してしまうなどのデメリットがある 用途に応じ自由に芯材が選定でき しかも金属めっきによる高導電化が可能となることから 将来 導電性は金属と同レベル 比重はカーボン系フィラー以下 しかも透明用途にも応用できる といったフィラーが開発される可能性もあり 非常に興味深いフィラーである
2. カーボン系導電性フィラー表 3に導電性カーボンフィラーの種類と特徴についてまとめた 繊維状 フレーク状 粉末状などの構造の違い グラファイト結晶化度の違い 更には 粉末状であれば 粒子径や後述するアグロメレートやアグリゲートの長さの違い 多孔度の違い 繊維状であれば 繊維径の違いでカーボンファイバー 気相成長法炭素繊維 (VGCF) カーボンナノチューブ(CNF) など様々な特徴をもった素材があり それぞれメリット デメリットがある 表 3 カーボン系導電性フィラーの種類と特徴 2.1. 導電性カーボンブラック表 4に代表的導電性カーボンブラックを示す また 表 5には 各種導電性カーボンブラックの物性値をHAF SRFカーボン ( 代表的汎用カーボンブラック ) グラファイト 活性炭との比較で示す ケッチェンブラックはメソ孔が多いことに起因し 比表面積やDBP 吸収量の値が高い アセチレンブラックはアグリゲートやアグロメレートが長いことに起因して Dmed 径やDBP 吸収量の値が高い 同じ導電性カーボンブラックと呼ばれていながらその構造や特性値は全く異なっており非常に興味深い また 図 1には 高密度ポリエチレン (HDPE) 樹脂に各種カーボンブラックを充填した場合の体的固有抵抗率を示す 図 1に示すように一般的にDBP 吸油量が高いカーボンブラックを用いる場合ほど少量添加で導電性を付与できることが判る 詳細は カーボンフィラー研究会 HPの技術資料 導電性カーボンブラック関連 を参照いただきたい
表 4 導電性カーボンブラック 表 5 各種カーボン系フィラーの物性値 図 1 各種カーボン系フィラーの添加量と体積抵抗率
2.2. カーボンナノチューブ近年 非常に注目されているカーボンナノチューブに関して詳述する カーボンナノチューブは 縮合ベンゼン環からなるグラッフェンシートが円筒状にまるまったものであり 単層 (SWCNT) 多層(MWCNT) ナノチューブおよび気相成長炭素繊維 (VGCF) が知られている ( 表 6) 導電性フィラーとしての期待が高まっているものはMWCNTであり MWCNTでは 直径 :2~50nm 長さ:1-10μmと非常に微細な繊維状の物質である アスペクト比が高いため マトリックス樹脂中にネットワークを形成しやすい 微細であるため 単位重量当たりの本数が多い ことより導電性カーボンブラックよりも少量で高分子材料に導電性を付与できる可能性がある 図 2には MWCNTの電子顕微鏡写真を示す 糸まり状に絡まった形態をしており 黒い粒子は カーボンナノチューブを生成させるための金属触媒である 樹脂コンパンウンドや塗料 ペースト化で用いられる一般的な分散方法では この絡み合い ( 凝集 ) をほぐすことは困難であり その結果期待した導電性が得られない また 分散条件の微妙な違いにより 凝集 / 分散の度合いが変化し 最終製品の導電性が安定しない ある種の二次電池や樹脂の種類によっては CNTに残存する金属触媒により性能や強度が低下する などの問題点もある 表 6 カーボンナノチューブ
図 2 カーボンナノチューブの構造 2.3. その他のカーボン系導電性フィラー ( グラファイト 炭素繊維 ) 詳細は割愛させていただくが 著者が所属する機能性カーボンフィラー研究会がまとめたグラファイトと炭素繊維について表 7 表 8に掲載する グラファイトはカーボンブラックと比較して結晶性が発達しているため フィラーそのもの自体の導電性が良い 炭素繊維は 導電性ばかりでなく 樹脂強度 ( 剛性 ) を向上させることができる という特徴をもっている 表 7 グラファイト
表 8 カーボンファイバー 終わりにカーボン系導電性フィラーを用いて製品開発をする場合 様々な種類のカーボン系導電性フィラーの特性や構造を熟知した上で用途に応じた最適配合技術を確立していくことが 特徴ある製品を生み出すポイントとなる 本分野に従事する技術者として今後とも素材がもつ新しい特性の把握や探求に努めたい < 参考文献 > 1) 接着の技術, 金属フィラーの概説,Vol30,No2 P-44(2010). 2) カーボン系導電性フィラーの選定 配合設計, 技術情報協会セミナーテキスト (2014 年 4 月 22 日 ). 3) 石原産業 ( 株 ) ホームページ 機能材料酸化チタン 4) 村上雅昭,DNT コーティング技報,No10,P-8(2010). 5) 東邦テナックス ( 株 ) ホームページ 金属被覆繊維(MC)