1 年 月 9 日 北海道金融経済レポート 日本銀行札幌支店 北海道における外国人観光客の消費動向と 今後の誘致の課題 本稿の執筆は札幌支店営業課薄井良輔が担当しました 本レポートで示された意見は執筆者に属し 必ずしも日本銀行札幌支店の見解を示すものではありません 照会先 : 日本銀行札幌支店営業課橋本 (TEL:(11)1-) 本レポートはインターネット (http://www.boj.or.jp/sapporo/) からもご覧いただけます 本稿の内容について 商用目的で転載 複製を行う場合は 予め日本銀行札幌支店までご相談ください 転載 複製を行う場合は 出所を明記してください
1. 外国人観光客数 1 と消費動向 1 年以降の外国人入国者数の推移をみると 円安の影響やビザの緩和によって 全国的に外国人観光客が増加している中 北海道においても 国際線の増便も相まって 増加している ( 図表 1) この結果 延べ宿泊者数に占める外国人観光客の割合も全国各地で上昇傾向にあり 特に北海道ではその傾向が強く見られている ( 図表 ) 図表 1 外国人入国者数 (1/1~ 月 =1) 北海道 1 九州 1 関東 全国 図表 延べ宿泊者数に占める外国人の割合 北海道関東 九州全国 1 1 1 1 1 1 1 1 ( 注 ) 北海道 : 新千歳 旭川 函館空港の合計関東 : 羽田 成田空港の合計九州 : 博多港 福岡 鹿児島空港の合計 ( 出所 ) 法務省 出入国管理統計 1 1 1 1 1 1 ( 注 1) 北海道 : 北海道運輸局管内 関東 : 関東運輸局管内 九州 : 九州運輸局管内 沖縄 : 沖縄総合事務局管内 ( 注 ) 観光目的の宿泊客数が % 以上の宿泊施設を集計 ( 出所 ) 観光庁 宿泊旅行統計調査 こうした中 百貨店 ドラッグストア 家電量販店における外国人観光客の消費額を試算すると いずれの業態においても 売上高に占める外国人観光客の割合が高まっている ( 図表 ) 特に 1 年は 同年 1 月の免税対象品目拡大の影響から 一段と上昇している 図表 売上高に占める外国人観光客の割合( 当店試算 ) < 百貨店 > <ドラッグストア > < 家電量販店 > 札幌市内....6.. 1 1.6 1 1.6.9 1 1. 1 1 1 1 1 1 1 1 1 ( 出所 ) 経済産業省 商業動態統計 観光庁 訪日外国人消費動向調査 法務省 出入国管理統計 経済産業省 専門量 販店販売統計 1 本稿で使用している外国人の入り込みや宿泊者数などのデータは 観光目的だけでなくビジネス目的などで訪日する外国人も含んでいる ただし 北海道に来る外国人は 観光目的が多いと考えられることから 本稿では各統計を観光客の動向を表すものとみなす 売上高は 商業動態統計の 百貨店 を使用 外国人観光客の売上高は 訪日外国人消費動向調査の 服 かばん 靴 の購入率 単価に 出入国管理統計の北海道への入国者数を掛け合わせた 札幌市内 は 札幌市内の百貨店 社に対して売上高に占める免税品比率を聞き取り 集計したもの ( ただし データの制約から 期間は 1/~1/ 月 ) 売上高は 専門量販店販売統計の 1 年の計数を基に 1~1 年については商業販売統計の 医薬品 化粧品小売業 の前年比で割戻して算出 外国人観光客の売上高は 訪日外国人消費動向調査の 化粧品 医薬品 トイレタリー の購入率 単価に 出入国管理統計の北海道への入国者数を掛け合わせた 売上高は 専門量販店販売統計の 1 年の計数を基に 1~1 年については商業販売統計の 機械器具小売業 の前年比で割戻して算出 外国人観光客の売上高は 訪日外国人消費動向調査の カメラ ビデオカメラ 時計 電気製品 の購入率 単価に 出入国管理統計の北海道への入国者数を掛け合わせた 1
小売業者からは 外国人観光客が購入する商品は ありとあらゆる品目に広がってい る 売上高に占める外国人観光客の割合は 月によっては 1 割程度に達することもある との声が聞かれている. 外国人観光客の消費単価 もっとも 道内の外国人観光客による消費が増加している一方 入国空港別の外国人観光客による消費単価をみると 新千歳空港は他の空港に比べて低い水準となっている ( 図表 ) この背景には 北海道が他の地域に比べて 1 旅行 1 回あたりの宿泊日数が短いこと 個人客の割合が低いこと 支出額のうち買い物代について単価の低い菓子類の構成比が高いこと が挙げられる 図表 入国空港別の外国人観光客の消費単価 ( 千円 ) 16 1 新千歳の水準 1 1 8 6 新千歳仙台羽田成田中部関西福岡那覇 ( 注 )1~1 年の平均 (1 年は ~1 月 ) ( 出所 ) 観光庁 訪日外国人消費動向調査 ( 消費単価が低い背景 1) 旅行 1 回あたりの宿泊日数が少ない 新千歳空港から入国する外国人観光客の国籍をみると 福岡空港などから入国する外国人観光客と同様に 宿泊日数が短い近隣諸国 ( アジア ) からの割合が高い ( 図表 6) ただし 入国空港別の外国人観光客の平均宿泊日数をみると 福岡空港から入国した場合は 新千歳空港から入国した場合よりも長い ( 図表 7) これは 福岡空港から入国する外国人観光客は 九州内を周遊していることから 宿泊日数が長くなっていることが一因と考えられる 図表 訪日外国人の国籍別割合 ( 入国空港別 1 年 ) < 新千歳空港 > < 福岡空港 > < 全国 >.1% 7.%.% 6.9% 16.% 1.% 88.6% 88.7% 7.8% 主要アジア諸国主要欧米諸国その他 ( 注 ) 主要アジア諸国 : 中国 台湾 韓国 香港 シンガポール タイ 主要欧米諸国 : イギリス フランス ドイツ 米国 カナダ ( 出所 ) 法務省 出入国管理統計調査
栃木県福島県佐賀県秋田県群馬県奈良県山口県茨城県 高知県 図表 6 国籍別平均宿泊日数 ( 全国 ) オーストラリアカナダ米国ロシアフランスドイツ英国インドマレーシアシンガポールタイ中国香港台湾韓国 図表 7 入国空港別の外国人観光客の平均宿泊日数 ( 日 ) 16 1 新千歳の水準 1 1 8 6 新千歳仙台羽田成田中部関西福岡那覇 1 ( 日 ) ( 注 1)1~1 年の平均 (1 年は ~1 月 ) ( 注 ) 全国ベースのデータであり 観光以外の目的で訪日している外国人が含まれる ( 出所 ) 観光庁 訪日外国人消費動向調査 ( 注 )1~1 年の平均 (1 年は ~1 月 ) ( 出所 ) 観光庁 訪日外国人消費動向調査 ( 消費単価が低い背景 ) 個人客の割合が低い 観光客の消費については 団体客に比べて 個人客の方が宿泊単価や飲食単価が高くなる傾向があるが 都道府県別にみると 北海道は団体旅行向けパッケージ商品の割合が高く 個人旅行の割合が低い ( 図表 8) 図表 8 外国人観光客の団体パッケージ旅行の割合 (1 年 ) 6 北 1 石川県沖縄県愛媛県福岡県三重県岐阜県東京都愛知県千葉県熊本県和歌山県山梨県大分県香川県富山県青森県長崎県大阪府静岩宮広兵鹿児京都府滋賀県新潟県山形県宮城県神長野県崎県島県手県海道岡県奈川県庫県島県全国平均 =1.6 福井県鳥取県島根県徳島県岡山県埼玉県( 出所 ) 観光庁 訪日外国人消費動向調査
( 消費単価が低い背景 ) 買い物代のうち 単価の低い菓子類の構成比が高い 外国人観光客の消費額に占める品目別の割合をみると 北海道では菓子類の土産物の種類が充実していることもあって単価の低い菓子類の構成比が高い一方 消費額の大きい関東では単価の高いカメラ 時計や電気製品の構成比が高い ( 図表 9) 家電など単価の高い商品の多くが道内で生産されているわけではないのに対し 菓子類の多くが道内で生産されていることから 経済効果がない訳ではない より付加価値の高い商品を道内で生産し 外国人観光客に購入してもらうことで より大きな経済効果を生むことができる 図表 9 外国人観光客の消費額に占める品目別の割合 < 北海道 > < 関東 > 16.% 8.8% 菓子類 6.% 17.%.6% 8.% 6.%.6%.% 1.7% 9.9% 18.7% カメラ ビデオカメラ 時計電気製品化粧品 医薬品 トイレタリー服 ( 和服以外 ) かばん 靴その他 ( 注 1)1~1 年の平均 (1 年は ~1 月 ) ( 注 ) 各品目の消費額は 訪日外国人消費動向調査の各品目の購入率 単価に 出入国管理統計の北海道への入国者数を掛け合わせて算出 ( 出所 ) 観光庁 訪日外国人消費動向調査 法務省 出入国管理統計 こうした現状認識のもと 今後 北海道を訪れる外国人観光客の消費単価を高めていくためには 1 観光ルートのさらなる拡充を目指すなどといった広域連携等により 外国人観光客が道内各地に足を運ぶように促すこと 個人旅行がしやすくなるように観光 宿泊施設等で外国語対応などのサービスを充実させること 道内で高付加価値の土産品を生み出していくことなどが必要と考えられる. 外国人観光客の入り込みのシーズン 地域格差の状況 外国人観光客の延べ宿泊者数を月毎にみると 北海道ではピークとボトムの差が大きいのに対し 沖縄県ではその差が小さい ( 図表 1) また 北海道では 国内客が少ない冬季に外国人観光客が比較的多く来ていることで 繁閑差を緩和している もっとも 月は国内客 外国人観光客ともに少なくなっていることから 今後 外国人観光客を誘致する際には 月を中心としたオフシーズンでの集客を意識する必要がある
図表 1 訪日外国人の月別延べ宿泊者数 (1 年 ) 18 16 1 1 1 8 6 < 北海道 > ( 注 ) 年平均 =1 ( 出所 ) 観光庁 宿泊旅行統計調査 外国人 国内客 1 6 7 8 9 1 11 1 ( 月 ) 18 16 1 1 1 8 6 < 沖縄県 > 外国人 国内客 1 6 7 8 9 1 11 1 ( 月 ) また 振興局 総合振興局別の訪日外国人の延べ宿泊者数の割合をみると 札幌市を含む石狩に集中しており その集中度合いが高まっている ( 図表 11) こうしたことから 今後は 1 札幌圏以外での外国人観光客の受入れ体制の拡充 新千歳空港と各地域を結ぶ 次交通網の整備などに取り組み 外国人観光客の宿泊日数の長期化につなげていくことが期待される 図表 11 振興局 総合振興局別の訪日外国人延べ宿泊客数の割合 1 年度 11 年度 1 年度 1 年度 1 年度上期 空知.6.7.6..8 石狩 6.7.1 6.9 9.6. 後志 1.6 16.7 18.1 1.9 7. 胆振 18. 17. 1.8 16. 18. 日高.1.... 渡島 7.6 7.9 8. 8.8 8.9 檜山..... 上川 1.9 1.6 9.6 1.6 1.7 留萌..... 宗谷.....6 オホーツク.1.1.6.1. 十勝.8.8.7.9. 釧路.8.8.8.6. 根室..... ( 出所 ) 北海道庁 訪日外国人宿泊客数 以 上