検察審査会制度の運用改善及び制度改革を求める意見書

Similar documents
< E B B798E7793B188F5936F985E8ED EA97975F8E9696B18BC CBB8DDD816A E786C7378>

< E B B798E7793B188F5936F985E8ED EA97975F8E9696B18BC CBB8DDD816A E786C7378>

22. 都道府県別の結果及び評価結果一覧 ( 大腸がん検診 集団検診 ) 13 都道府県用チェックリストの遵守状況大腸がん部会の活動状況 (: 実施済 : 今後実施予定はある : 実施しない : 評価対象外 ) (61 項目中 ) 大腸がん部会の開催 がん部会による 北海道 22 C D 青森県 2

通話品質 KDDI(au) N 満足やや満足 ソフトバンクモバイル N 満足やや満足 全体 21, 全体 18, 全体 15, NTTドコモ

 

平成 31 年 3 月 20 日更新 全国女性の参画マップ 平成 30 年 12 月作成 内閣府男女共同参画局

1 1 A % % 税負 300 担額


129

PowerPoint プレゼンテーション

文字数と行数を指定テンプレート

2. 長期係数の改定 保険期間を2~5 年とする契約の保険料を一括で支払う場合の保険料の計算に使用する長期係数について 近年の金利状況を踏まえ 下表のとおり変更します 保険期間 2 年 3 年 4 年 5 年 長期係数 現行 改定後

平成 26 年 3 月 28 日 消防庁 平成 25 年の救急出動件数等 ( 速報 ) の公表 平成 25 年における救急出動件数等の速報を取りまとめましたので公表します 救急出動件数 搬送人員とも過去最多を記録 平成 25 年中の救急自動車による救急出動件数は 591 万 5,956 件 ( 対前

法律学入門12

»°ËÞ½ŸA“⁄†QŸA“⁄Æ�°½No9

第 40 回 看護総合 2009 年 平成 21 年 2009/7/18-19 京都府京都市 2009 年 2010 年 精神看護 2009/7/23-24 島根県松江市 2009 年 2010 年 母性看護 2009/8/6-7 佐賀県佐賀市 2009 年 2010 年 看護教育 2009/8/2

平成 26 年の救急出動件数等 ( 速報 ) 消防庁

H ( 火 ) H ( 水 ) H ( 金 ) H ( 火 ) H ( 月 ) H ( 火 ) H ( 土 ) H ( 日 ) H ( 木 ) H ( 火 ) H

<925089BF955C81698CF6955C816A2E786C73>

平成 27 年 2 月から適用する公共工事設計労務単価 1 公共工事設計労務単価は 公共工事の工事費の積算に用いるためのものであり 下請契約等における労務単価や雇用契約における労働者への支払い賃金を拘束するものではない 2 本単価は 所定労働時間内 8 時間当たりの単価である 3 時間外 休日及び深

2 受入施設別献血量 ( 推計値 ) ブロ都ック道府県 合計 全国血液センター献血者数速報 (Ⅰ) 血液センター 平成 30 年 12 月分 L % L % 日 L L % 日 L L % 台 L L % 台 L 8, ,768

公益財団法人全国競馬 畜産振興会役員慰労金支給規程 ( 平成 25 年 8 月 1 日会長達第 3 号 ) ( 趣旨 ) 第 1 条この規程は 公益財団法人全国競馬 畜産振興会 ( 以下 振興会 という ) 役員及び評議員の報酬等の支給に関する規程第 5 条の規定に基づき 役員 ( 常勤の者に限る

住宅宿泊事業の宿泊実績について 令和元年 5 月 16 日観光庁 ( 平成 31 年 2-3 月分及び平成 30 年度累計値 : 住宅宿泊事業者からの定期報告の集計 ) 概要 住宅宿泊事業の宿泊実績について 住宅宿泊事業法第 14 条に基づく住宅宿泊事業者から の定期報告に基づき観光庁において集計

メ 札幌市オンブズマン条例 平成 12 年 12 月 12 日条例第 53 号 改正 札幌市オンブズマン条例 平成 15 年 10 月 7 日条例第 33 号 平成 20 年 11 月 7 日条例第 36 号 目次第 1 章総則 ( 第 1 条 第 4 条 ) 第 2 章責務 ( 第 5 条 第 7

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

< E188CA8C9F8FD88A65955C2E786C73>

年齢 年齢 1. 柏 2. 名古屋 3. G 大阪 4. 仙台 5. 横浜 FM 6. 鹿島 -19 歳 0 0.0% 0 0.0% 2 2.7% 1 1.4% 3 4.0% 3 4.6% 歳 4 5.0% 5 6.7% 7 9.6% 2 2.7% 2 2.7% % 25-2

「公立小・中・高等学校における土曜日の教育活動実施予定状況調査」調査結果

市町村合併の推進状況について

教員評価システムの取組状況(その1)~(その3)

<4D F736F F D2081A030308B4C8ED294AD955C8E9197BF955C8E862E646F63>

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

社会福祉法人○○会 個人情報保護規程

平成 27 年の救急出動件数等 ( 速報 ) 消防庁

A-1_中央年報 「野菜」品目別産地別月別取扱高表H28(A4横)

機関 公益財団法人日本スポーツ 1 H 仲裁機構 平成 19 年度 平成 20 年度 H 大阪弁護士会

調査実施概況 小学校 ( 都道府県 ( 指定都市除く )) 教育委員会数 ( 1) 学校数児童数 ( 2) 全体 実施数 調査対象者在籍学校数 実施数国語 A 国語 B 主体的 対話的で深い学びに関する状況 ( 3) 算数 A 算数 B 質問紙 平均正答率 13~15 問 国語

<4D F736F F D20486F744E E D BD90AC E93788AEE8AB28AC CF906B89BB97A6816A817C82BB82CC A2E646F63>


厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患等生活習慣病対策総合研究事業)

公文書管理条例等の制定状況調査結果 平成 3 0 年 3 月総務省自治行政局行政経営支援室

共通基準による観光入込客統計 ~ 共通基準に基づき 平成 22 年 月期調査を実施した 39 都府県分がまとまりました~ 平成 23 年 10 月 31 日観光庁 各都道府県では 平成 22 年 4 月より順次 観光入込客統計に関する共通基準 を導入し 信頼 性の高い観光入込客統計調査を

平成 22 年第 2 四半期エイズ発生動向 ( 平成 22(2010) 年 3 月 29 日 ~ 平成 22(2010) 年 6 月 27 日 ) 平成 22 年 8 月 13 日 厚生労働省エイズ動向委員会

(2) 総合的な窓口の設置 1 各行政機関は 当該行政機関における職員等からの通報を受け付ける窓口 ( 以下 通報窓口 という ) を 全部局の総合調整を行う部局又はコンプライアンスを所掌する部局等に設置する この場合 各行政機関は 当該行政機関内部の通報窓口に加えて 外部に弁護士等を配置した窓口を

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

(別紙1)

法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

別紙様式 3( 付表 1) 平成 年度介護職員処遇改善加算実績報告書積算資料 薄い黄色のセルに必要事項を入力してください 1. 加算受給額 ( 現行の加算 Ⅰと 現行の加算 Ⅱの比較額について ) 別紙様式 3の56を記載する場合のみ記載 別紙様式 3の34により報告した場合は記載不要です 単位 :

裁判員法103条公表速報版(制度施行~10月末(データは9月末までのもの))

Contents 1 Section Chapter Part Part Chapter Part1 9 Part2 12 Part3 14 Part4 16 Chapter Part1 17 Par

関東 優良産廃処理業者認定制度で優良認定を受けている許可証 組合員都道府県 許可地域組合員名所在地 茨城県 黒沢産業 ( 株 ) 茨城県 関 茨城県 茨城県 ( 株 ) マツミ ジャパン 茨城県 茨城県 ( 株 ) 国分商会 埼玉県

表紙

Microsoft Word - 認知度調査HP原稿

(2) 電子計算機処理の制限に係る規定ア電子計算機処理に係る個人情報の提供の制限の改正 ( 条例第 10 条第 2 項関係 ) 電子計算機処理に係る個人情報を国等に提供しようとする際の千葉市情報公開 個人情報保護審議会 ( 以下 審議会 といいます ) への諮問を不要とし 審議会には事後に報告するも

これだけは知っておきたい地震保険

○ 第1~8表、図1~4(平成25年度公立学校教員採用選考試験の実施状況について)

厚生年金保険の保険給付及び国民年金の給付の支払の遅延に係る加算金の支給に関する法律

untitled

11 m2~15 m2 7m2~10 m2 6m2以下 1 級地別記 7 別記 8 別記 9 2 級地別記 7 別記 8 別記 9 3 級地別記 7 別記 8 別記 9 ただし 次に掲げる当該世帯の自立助長の観点から引き続き当該住居等に居住することが必要と認められる場合又は当該地域の住宅事情の状況に

処分に関する規則(案)

1. 社会福祉法人経営動向調査 ( 平成 30 年 ) の概要 目的 社会福祉法人と特別養護老人ホームの現場の実感を調査し 運営実態を明らかにすることで 社会福祉法人の経営や社会福祉政策の適切な運営に寄与する 対象 回答状況 対 象 特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人 489 法人 (WAM

平成29年3月高等学校卒業者の就職状況(平成29年3月末現在)に関する調査について


中央年報 「野菜」品目別産地別月別取扱高表H26(A4横)

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

警察署長又は本部捜査担当課長は 犯罪の検挙状況 被害者等からの相談 関係機関からの通報等により再被害防止対象者に指定する必要がある被害者等を認めるときは 再被害防止対象者指定等上申書 ( 様式第 1 号 ) により警察本部長に再被害防止対象者の指定を上申するものとする この場合において 警察署長は

( 図表 1) 特別養護老人ホームの平米単価の推移 ( 平均 ) n=1,836 全国東北 3 県 注 1) 平米単価は建築工事請負金額および設計監

(Microsoft Word - \223o\230^\220\\\220\277\217\221\201iWord\224\305\201j.doc)

社会福祉法人春栄会個人情報保護規程 ( 目的 ) 第 1 条社会福祉法人春栄会 ( 以下 本会 という ) は 基本理念のもと 個人情報の適正な取り扱いに関して 個人情報の保護に関する法律 及びその他の関連法令等を遵守し 個人情報保護に努める ( 利用目的の特定 ) 第 2 条本会が個人情報を取り扱

平成13-15年度厚生労働科学研究費補助金

平成 24 年度職場体験 インターンシップ実施状況等調査 ( 平成 25 年 3 月現在 ) 国立教育政策研究所生徒指導 進路指導研究センター Ⅰ 公立中学校における職場体験の実施状況等調査 ( 集計結果 ) ( ) は 23 年度の数値 1 職場体験の実施状況について ( 平成 24 年度調査時点

Microsoft Word - 第二章

<944D92868FC75F8F578C D834F F E F1817A35302E786C736D>

第 18 表都道府県 産業大分類別 1 人平均月間現金給与額 ( 平成 27 年平均 ) 都道府県 鉱業, 採石業, 砂利採取業建設業製造業 円円円円円円円円円 全国 420, , , , , , , ,716 28

会員に対する処分等に係る手続に関する規則 (2018 年 7 月 30 日制定 ) 第 1 章総則 ( 目的 ) 第 1 条本規則は 定款第 15 条に規定する会員に対する処分及び不服の申立てに係る手続の施行に関し 必要な事項を定めることを目的とする ( 定義 ) 第 2 条本規則において 次の各号

新潟県 富山県 2. 派遣場所の 3. 期間の具体性 4. 議決方法備考具体性 当県では県内派遣の場合は市町村名 国内 ( 県外 ) 派遣の場複数の派遣をとりまとめて議合は都道府県名 国決外派遣の場合は州等の名称まで記載している 市町村まで 国内の場合は都道府県名複数の派遣をとりまとめて議まで 海外

改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも

別添2 乳児家庭全戸訪問事業の実施状況

satsujinjiken_murder2

平成19年度環境ラベルに関するアンケート調査集計結果報告

日商協規程集

介護職員処遇改善加算実績報告チェックリスト 提出前に 次の書類が揃っているか最終の確認をお願いします このチェックリストは 提出する実績報告書類に同封してください チェック 介護職員処遇改善実績報告書 ( 別紙様式 3) 事業所一覧表 ( 別紙様式 3 添付書類 1) 必要に応じて 別紙様式 3 添

厚生労働科学研究費補助金 (地域健康危機管理研究事業)

PowerPoint プレゼンテーション

「交通マナー」に関するアンケート調査結果

都道府県ごとの健康保険料率 ( 平成 30 年 ) 基本保険料率 / 特定保険料率の合算料率 都道府県 料率 都道府県 料率 都道府県 料率 都道府県 料率 北海道 東京 滋賀 香川 青森 神奈川 京都

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

宮城県道路公社建設工事総合評価落札方式(簡易型及び標準型)実施要領

体罰の実態把握について(セット)公表資料250423

2 前項の規定による通知を行った場合において 市長は 当該特定空家等の所有者等が除却 修繕 立木竹の伐採その他周辺の生活環境の保全を図るために必要な措置を講じたことにより特定空家等の状態が改善され 特定空家等でないと認めるときは 遅滞なくその旨を 特定空家等状態改善通知書 ( 様式第 7 号 ) に


級が6 級以上であるもの ( これらの職員のうち 組合規則で定める職員を除く 以下 特定管理職員 という ) にあっては 100 分の102.5) 12 月に支給する場合においては100 分の137.5( 特定管理職員にあっては 100 分の117.5) を乗じて得た額 (2) 再任用職員期末手当基

統計トピックスNo.96 登山・ハイキングの状況 -「山の日」にちなんで-

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

第 4 条 ( 取得に関する規律 ) 本会が個人情報を取得するときには その利用目的を具体的に特定して明示し 適法かつ適正な方法で行うものとする ただし 人の生命 身体又は財産の保護のために緊急に必要がある場合には 利用目的を具体的に特定して明示することなく 個人情報を取得できるものとする 2 本会

更後変更年月日年月日変更前更後変更年月日年月日変更前( 第二面 ) 受付番号 届出時の免許証番号 年月日項番 役員に関する事項 ( 法人の場合 ) 21 変更年月日 2. 役コード変 役コード 21 変更年月日年月日変役コード 2. 役コード

表 3 の総人口を 100 としたときの指数でみた総人口 順位 全国 94.2 全国 沖縄県 沖縄県 東京都 東京都 神奈川県 99.6 滋賀県 愛知県 99.2 愛知県 滋賀県 神奈川

情報公開に係る事務処理規則 ( 平 18 規則第 16 号平成 18 年 8 月 1 日 ) 改正平 19 規則第 52 号平成 19 年 9 月 21 日平 26 規則第 2 号平成 26 年 5 月 13 日平 26 規則第 22 号平成 27 年 3 月 31 日 第 1 章総則 ( 目的 )

ている しかしながら 本件処分は条例の理念と条文の解釈運用を誤った違法なものであり 取り消されなければならない ⑶ 条例第 7 条第 1 項本文は 個人情報の外部提供の原則禁止を規定している また 同条同項ただし書の趣旨は 単に外部提供の原則禁止規定を解除したにとどまる すなわち 当該法令等が存在す

共同住宅の空き家について分析-平成25年住宅・土地統計調査(速報集計結果)からの推計-

Transcription:

検察審査会制度の運用改善及び制度改革を求める意見書 2016 年 ( 平成 28 年 )9 月 15 日 日本弁護士連合会 第 1 意見の趣旨当連合会は, 現行の検察審査会法について, 次のとおりの運用改善及び制度改革を求める 1 運用改善について (1) 被疑者が求めた場合には, 必ず意見陳述ができるようにし, その方法は口頭だけでなく書面による陳述の利用ができるようにすべきである (2) 後記 2(2) の制度改革がなされるまでの間, 犯罪被害者やその遺族を含む審査申立人の口頭の意見陳述を認める運用が更に拡充されるべきである (3) 検察審査会は, 法的な知見が重要であったり, 証拠評価等に困難を伴うことが見込まれるケースにおいては審査補助員を委嘱するようにすべきである (4) 審査補助員の手当については, 検察審査会議への出席だけでなく, それ以外の活動を含めて支払うべきである (5) 検察審査会議の外形的事実のうち, 開催日時, 審議時間及び審議対象については, 議決日以降において, 行政情報として積極的に国民に対して公開すべきであるとともに, それ以外の審査員の男女別, 年齢構成等については, 検察審査員の検察審査会議における自由闊達な議論の保障という趣旨に反しない限り, 公開すべきである 2 制度改革について (1) 検察審査会に審査の申立てがなされたときは, 被疑者に審査申立てがあったことを通知する制度を新設するとともに, 被疑者に対し, 口頭又は書面による意見陳述権や弁護人選任権を保障すべきである (2) 犯罪被害者及びその遺族を含む審査申立人が口頭の意見陳述をすることを, 権利として保障すべきである (3) 審査補助員を複数選任できる制度とすべきである (4) 審査補助員に支給される手当の基準額を増額すべきである (5) 指定弁護士が, 検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮を直接できるようにすべきである (6) 指定弁護士の手当の上限を撤廃すべきであり, その支払方法や支払時期に - 1 -

ついても検討されるべきである 第 2 意見の理由 1 検察審査会法による検察審査会制度とその運用に対する評価 (1) はじめに検察審査会の制度は, まさに公訴権の行使に関し市民感覚を反映させてその適正を図るために設けられたものであり, 裁判員制度と並んで, 国民の司法参加の制度の一つとして重要な意義を有している 2004 年 ( 平成 16 年 ) に検察審査会法 ( 以下 法 という ) が改正され,2009 年 ( 平成 21 年 )5 月から施行されているが, この改正により, 検察審査会の権限が強化されている 当連合会は,2005 年 ( 平成 17 年 )6 月に, 改正検察審査会法対策ワーキンググループ ( 現在は 検察審査会ワーキンググループ に名称変更 ) を設置し, 会員に対する情報提供を行ったり, 審査補助員や指定弁護士の経験交流集会を実施し, 検察審査会制度の運用改善及び制度改革について検討してきた 法施行から約 7 年の間の実務の状況も踏まえ, ここに意見を述べるものである (2) 審査補助員制度について 1 審査補助員制度について審査補助員制度は,2004 年 ( 平成 16 年 ) の法改正により導入された制度である 検察審査会は, 審査を行うに当たり, 法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときは, 弁護士の中から事件ごとに審査補助員 1 名を委嘱することができる ( 法第 39 条の2 第 1 項及び第 2 項 ) 審査補助員は, 検察審査会長の指揮監督を受けて, 法律に関する学識経験に基づき,1 当該事件に関係する法令及びその解釈を説明すること,2 当該事件の事実上及び法律上の問題点を整理し, 並びに当該問題点に関する証拠を整理すること,3 当該事件の審査に関して法的見地から必要な助言を行うことをその職務とする ( 法第 39 条の2 第 3 項 ) また, 審査補助員に検察審査会の議決書の作成を補助させることができることとされている ( 法第 39 条の2 第 4 項 ) ただし, 審査補助員は, その職務を行うに当たっては, 検察審査会が公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため置かれたものであることを踏まえ, その自主的な判断を妨げるような言動をしてはならないと規定されている ( 法第 39 条の2 第 5 項 ) - 2 -

2 求められる審査補助員制度の在り方審査補助員制度は, 検察審査会議での審査を充実させるために, 法律に関する専門的な知見を補い, 市民感覚を不起訴処分の当否の判断に適切に反映させて法的に見ても適正な判断をすることを担保する制度である このため審査補助員は, 法令の適用や解釈の問題点や, 証拠関係が複雑であったり, 証拠評価に困難を伴うことが見込まれ, 事実認定が容易でないようなケースについて, 一方で素朴な市民の処罰感情のみで結論が急がれることのないよう慎重で冷静な審査を求め, 他方で法律解釈の在り方や実務の運用等に関する知見を提供して検察審査員が自ら判断する道筋を示すなど, 法的な専門家の立場からの助言を行うことが求められている 特に, 検察審査会制度では, 裁判員裁判のように裁判官が法的な説示等を行うことがないため, このような助言を行うことも審査補助員の重要な職務とされるべきである (3) 起訴議決制度について 1 起訴議決制度について起訴議決制度は,2004 年 ( 平成 16 年 ) の法改正により導入された制度である それまでは, 検察審査会が不起訴不当又は起訴相当の議決をしても, 検察官が再度不起訴処分をすれば, 起訴されることがなかった ところが, 改正法では, 検察審査会が, 第 1 段階の審査において, 起訴相当議決をしたのに対し, 検察官が, 当該議決に係る事件について, 再度不起訴処分をしたとき又は一定期間内に公訴を提起しなかったときは, 当該検察審査会は, 改めて審査を行わなければならない ( 法第 41 条の2 第 1 項及び第 2 項 ) そして, その審査において, 改めて起訴を相当と認めるときは, 検察審査員 8 人以上の多数により, 起訴をすべき旨の議決 ( 起訴議決 ) をすることができる ( 法第 41 条の6 第 1 項 ) 起訴議決があると, これに基づき, 裁判所は指定弁護士を選任し ( 法第 41 条の9 第 1 項 ), その指定弁護士が公訴を提起することになる ( 法第 41 条の10 第 1 項 ) この制度は, 司法制度改革審議会が, 検察審査会制度の機能を更に拡充させるために, 検察審査会の一定の議決に対し法的拘束力を付与する制度 の導入を求めたことを受けて設けられたものであり, 公訴権の行使に市民感覚を直截に反映させる制度として評価することができる 2 起訴議決制度の運用状況これまでに, 全国 ( 兵庫, 東京, 沖縄, 徳島, 鹿児島, 長野 ) で,9 件で13 人について, 起訴議決がなされており,4 件で無罪判決 ( いずれも - 3 -

指定弁護士が控訴したが, 東京の政治資金規正法違反事件の事案では, 控訴審でも無罪となり, 指定弁護士が上訴権を放棄して確定した 沖縄の未公開株詐欺事件の事案では上告棄却されて確定 JR 福知山線脱線事故に関する事案では指定弁護士が上告中 鹿児島の準強姦事件の事案では上告棄却されて確定 ),2 件で有罪判決 ( 暴行事件の事案について, 徳島地方裁判所は科料 9000 円を言い渡し, 高松高等裁判所が被告人の控訴を棄却し, 最高裁判所が被告人の上告を棄却して確定した 業務上過失傷害事件の事案について, 長野地方裁判所は禁錮 1 年, 執行猶予 3 年の判決をし, 被告人は控訴せずに確定した ),1 件で公訴棄却決定 ( 中国漁船衝突事故に関する公務執行妨害事件の事案で, 起訴状の送達ができず, 那覇地方裁判所は公訴棄却決定をした ),1 件で免訴判決 ( 明石歩道橋事故に関する事案では, 指定弁護士が控訴したが控訴棄却され, 指定弁護士が上告したが上告棄却されて確定 ),1 件で第一審において審理中 ( 東京電力福島第一原子力発電所事故に関する事案 ) となっている 最近では, 暴行罪 ( 徳島 ), 準強姦罪 ( 鹿児島 ), 業務上過失傷害罪 ( 長野 ), 業務上過失致死傷罪 ( 東京 ) の起訴議決がされた事例がある この制度については, これが国民の司法参加の制度であり, 市民感覚を反映させて公訴権の行使の適正を図るという制度趣旨からすると, 一定の評価をすることができる 例えば, 未公開株詐欺事件で指定弁護士が起訴した事案 ( 沖縄 ) について, 不起訴にした検察官の判断や弁護人の主張を退けて, 指定弁護士が補充捜査によって収集した書証や指定弁護士が請求した証人尋問によって, 欺罔文言が認定されたこと ( 結論としては故意が否定されたため無罪となっている ), 準強姦事件で指定弁護士が起訴した事案 ( 鹿児島 ) の控訴審判決では, 無罪の結論は維持されたものの抗拒不能であったことが認められたこと等は, 検察審査会における起訴議決制度がなければ実現できなかったことである 3 検察審査会の起訴基準について従来, 検察官による起訴については, 的確な証拠に基づき有罪判決が得られる高度の見込みがある場合に限って起訴するという原則に厳格に従っているとされてきた これに対して, 検察審査会が起訴相当又は起訴議決をする場合には, どのような基準で判断すべきかが議論されている 過去に検察審査会が起訴議決をした際の議決書の中には, 起訴議決の基 - 4 -

準について, 公訴権の行使に市民感覚を直截に反映させるという検察審査会制度の趣旨からすれば, そのような高度な要件を要求するのは相当ではなく, これまでの検察官の起訴の基準よりも低いレベルで良いと明言するものもあった この点については, 検察審査会による起訴議決を受けて, 被疑者が起訴されることによって被告人の地位に置かれ, 刑事裁判を受ける間, 被告人として多大な負担や不利益を受けることになる現状からすれば, 同じ起訴でありながら, 検察審査会による起訴議決の場合に, 検察官による起訴よりも低い基準で良いとすることは, 被告人にとって過酷であるとして, 検察官の起訴基準と同じであるという考え方がある ( この考え方によっても, 有罪判決が得られる高度の見込みがあるかどうかについては, 検察審査員の健全な市民感覚によって判断されるべきであるから, 検察官による起訴の場合とは異なる結果となることはあり得ると考えられる ) この点については, 現時点において, いずれかに決めることは困難であり, 今しばらくその運用状況を見ていく必要がある 4 無罪率とその評価について起訴議決制度は, これまでであれば検察官の不起訴処分によって終わっていた事件の一部について, 検察審査会が市民感覚を反映させて起訴議決を行い, 指定弁護士によって起訴させるという制度であるが, 無罪率が高いことから, このような制度は廃止すべきであるとの意見もある 確かに, 検察審査会の起訴議決を受けて, これまで9 件で13 人が起訴されている中で, 現在進行中の事件を除けば,8 件で10 人が起訴され, うち2 件で2 人が有罪となっているだけであり, 無罪率が高いことは否定できない しかしながら, 元々, 検察官が嫌疑不十分等を理由に不起訴にした事件を起訴しているのであるから, そのこと自体をもって直ちに検察審査会の起訴議決制度に問題があるとは言えないし, 検察審査会における不起訴不当議決や起訴相当議決を受けて検察官が起訴して有罪に至っている事案もあることも考慮する必要がある 最近, 最高検察庁が調査したところ,2013 年 ( 平成 25 年 ) から2 015 年 ( 平成 27 年 ) までの間に, 不起訴不当議決が合計 203 件, 起訴相当議決が9 件の合計 212 件あるうち, 再捜査後に38 件 (18%) が起訴されていることが2016 年 ( 平成 28 年 )4 月 2 日付け毎日新聞等で報じられており, その多くが有罪と考えられる - 5 -

このような運用は, 検察審査会による起訴議決制度が設けられ, 検察官が再び不起訴処分をしても, 検察審査会の起訴議決によって起訴されることがあり得る制度となったことがその背景にあると考えられる したがって, 検察審査会の起訴議決制度の評価に当たっては, 上記のような不起訴不当議決や起訴相当議決に基づいて検察官が起訴して有罪になる事案もあることを併せて考慮する必要がある (4) 指定弁護士制度について 1 指定弁護士制度について指定弁護士制度は,2004 年 ( 平成 16 年 ) の法改正により, 起訴議決制度が導入されたことに伴って導入された制度である 検察審査会による起訴議決の議決書の謄本の送付を受けた地方裁判所は, 起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければならない ( 法第 41 条の9 第 1 項 ) 指定弁護士は, これを法令により公務に従事する職員とみなすこととされ ( 法第 41 条の9 第 5 項 ), 一定の場合を除いて, 速やかに, 起訴議決に係る事件について公訴を提起しなければならないこととされている ( 法第 41 条の10 第 1 項 ) 2 指定弁護士制度の運用状況ア補充捜査について指定弁護士による補充捜査権限については, 指定弁護士は一定の訴訟条件の欠如という極めて例外的な場合を除き, 公訴提起義務が課されており, 訴追裁量権が認められていないことから ( 法第 41 条の10 第 1 項 ), 検察官のような補充捜査権限, すなわち公訴を提起するに足りるだけの犯罪の嫌疑や起訴価値の有無を判断するための捜査を行うべきではないとして, 指定弁護士の補充捜査権限の行使について消極的な意見も存している しかしながら, 検察審査会が起訴議決をした事件については, 検察官が不起訴処分をした事件であるから, 指定弁護士として記録を精査した結果, 公訴の提起及び維持のために必要な補充捜査を行う必要がある場合が多いと考えられる そのため, 指定弁護士としては, 補充捜査として, 被疑者や参考人からの事情聴取を行って供述調書を作成したり ( その場合, 可能な限り, 取調べの可視化を行うことが望ましい ), 捜査関係事項の照会を行うことができるだけでなく, 法律上, 裁判所から令状の発付を受けて, 捜索, 差押え及び検証を実施することも可能であるが, 実際には利用され - 6 -

ていないのが現状である 現行法上, 指定弁護士が自ら補充捜査を行うことは可能であるが ( 法第 41 条の9 第 3 項本文 ), 検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮は, 検察官に嘱託してこれをしなければならないことになっている ( 同条同項ただし書 ) 付審判事件の場合, 警察官の職権濫用事件について, 司法警察職員が事実上捜査に協力しないという事態があったことは確かである しかし, 検察審査会の起訴議決がなされた場合には, それ以外の罪種の事件が大部分であると考えられるので, 付審判事件とは異なり, 司法警察職員が事実上捜査に協力しないという事態は考えにくい したがって, 司法警察職員に対する捜査の指揮がなされれば協力してくれることが期待される イ証拠開示における全面開示の運用について指定弁護士は, 検察官とは異なり, 証拠開示については柔軟に対応しており, 多くの事件において全面証拠開示をしていることが報告されている ( 例えば, 明石歩道橋事故に関する事案やJR 福知山線脱線事故に関する事案など ) これは, 検察官一体の原則の下で検察庁の上司の決裁を受けている検察官とは異なり, 証拠開示を広く認めるべきであるという弁護士会の考え方を踏まえて, 指定弁護士制度において, 柔軟に訴訟活動が行われているという同制度の良い面が発揮されていると考えられるものであり, 評価すべきである (5) 当連合会による会員への情報提供や研修について当連合会は,2007 年 ( 平成 19 年 )8 月には, 審査補助員 指定弁護士のためのQ&A~ 新 検察審査会法 ~ を,2009 年 ( 平成 21 年 ) 2 月には, 審査補助員 指定弁護士のためのマニュアル~ 改正検察審査会法対応 ~ を作成し,2013 年 ( 平成 25 年 )3 月にはその改訂版として, 検察審査会法における審査補助員 指定弁護士のためのマニュアル(20 13 年版 ) を作成して, 会員に提供してきた 2014 年 ( 平成 26 年 )12 月には, 東京三弁護士会での研修内容を録画編集して, 当連合会の会員専用サイトの総合研修サイトに,e ラーニング教材として, 審査補助員 指定弁護士の職務について~ 改正検察審査会法対応 ~(2014 年度 ) を掲載し, 会員が閲覧できるようにしている さらに, 刑事弁護 少年付添 医療観察付添に関する発展型研修の1つと - 7 -

して 検察審査会のすべてがわかる を提供しており, これまでに, 岐阜県, 茨城県, 島根県の各弁護士会において, 検察審査会ワーキンググループの委員を派遣して研修を実施している 今後も, 会員への情報提供や研修を充実させていく予定である (6) 犯罪被害者等の権利保障の拡充 2004 年 ( 平成 16 年 ) の法改正により, 犯罪被害者やその遺族 ( 以下 犯罪被害者等 という ) にとっても, 以下の点で有用な制度となったと考えられる 1 起訴されること自体及び捜査情報の開示の意義これまで, 犯罪被害者等が告訴し, 検察審査会が不起訴不当議決をしても, 検察官が不起訴処分をすれば, その事件が起訴されることはなく, 刑事処分を求める犯罪被害者等の声が反映されないままとなっていた しかしながら, 検察審査会による起訴議決制度により, 不起訴になって犯罪被害者等が審査申立てをすることによって, 検察官が2 度不起訴処分をしても, 起訴されることになったことは犯罪被害者等にとっては大きな意義を有する また, これまでは不起訴になった事件については, 犯罪被害者等にはほとんど証拠も開示されず, ブラックボックスとなっていた そのことと比較すると, 検察審査会の議決を受けて当該事件が起訴されれば, 犯罪被害者等には証拠が開示され, また, 公判の場において証拠調べ手続が行われ, 被告人の弁明や被告人側の反証の内容等を知ることができることから, 犯罪被害者等にとっては, 捜査情報が広く開示されることになり, 意義のある制度となっていると考えられる 2 起訴後の被害者参加犯罪被害者等は, 被害者参加制度を利用することができる事件においては, 自ら審理に参加し, 証人や被告人に対して直接に尋問 質問することが可能であり, 審理が終結する際には, 求刑を含む事実上 法律上の意見を述べることも可能である これも, これまで不起訴になっていたような事件に関しては, 法が改正されて起訴議決制度ができたことに伴う効果であるが, 犯罪被害者等にとっては大きな意義を有することになる (7) 検察審査会制度に対する評価以上を踏まえると, 検察審査会制度には課題も多いが, 公訴権の行使に市民感覚を直截に反映させるという制度趣旨自体は正当なものであり, また, 犯罪被害者等にとっても意義のある制度となっており, これまで述べた運用 - 8 -

状況からすれば, 有意義な制度であると評価することができる したがって, 検察審査会制度は, 検察官による起訴独占主義に対するチェックと公訴権の行使に市民感覚を直截に反映させる制度として, 裁判員制度とともに, 今後, 改善すべき点は改善しつつ, 拡充 発展させるべき制度であると評価すべきである 2 被疑者の防御権保障の必要性について (1) 起訴議決制度の下での被疑者の防御権保障の必要性 2004 年 ( 平成 16 年 ) の法改正の際には, 起訴されるという不利益を受ける被疑者の防御権については何らの規定も設けられず, 検察審査会議において被疑者に防御権を認める明文規定は存しない そのため, 被疑者には, 現に検察審査会で審査されている事実も告知されず, 検察審査会議に対して意見を陳述すること等の防御権が一切保障されていないことになる 前述したように, 起訴議決制度は, 犯罪被害者等にとっては大きな意義があると考えられるが, 他方で, 起訴される被疑者の立場からすると, いったん, 検察官による不起訴処分を受けて平穏に日常生活を過ごしていたにもかかわらず, その事件について起訴され, 毎回の公判への出廷が義務付けられ, 公開の法廷で被告人質問を受けるなど刑事裁判への対応を求められ, 場合によっては起訴されたことが大きくマスコミで報道されることもあるなど大きな不利益を受けることになる 被疑者のそのような不利益を考慮すると, 検察審査会制度が前述したように有意義な制度であることを認めるとしても, その制度を維持 発展させていくためには, 被疑者に, 憲法第 31 条の適正手続保障における弁明権という観点から防御権が保障されなければならないと考えられる (2) 運用改善による防御権保障の必要性について ( 意見の趣旨 1(1) について ) 前述したように, 検察審査会議において, 被疑者に弁解の機会を与える明文規定は存しない この点について, 被疑者が意見書を提出したことが報じられたことがあるが, 被疑者に口頭での意見陳述を認めた事例の報告はない しかしながら, この点についての制度改革がなされるまでの間, 被疑者から意見を述べたい旨の申出がある場合には, 被疑者の意見陳述を認めるように運用されるべきである なお, 検察審査会議の1 度目の審査の結果, 不起訴不当議決がされるか起訴相当議決がされるかは被疑者にとって重大な利害を有することからすれば, 検察審査会議の1 度目の審査の段階から被疑者の - 9 -

意見陳述を認めるべきである もっとも, 常に検察審査員の面前での意見陳述を認めると, 事案によっては検察審査員に不安感を与えたり反発を招くことも予想されるので, 意見陳述の仕方については工夫をする必要があると考えられる したがって, 被疑者が求めた場合には, 必ず意見陳述ができるようにし, その方法は口頭だけでなく書面による陳述の利用ができるようにすべきである (3) 制度改革による防御権保障の必要性について ( 意見の趣旨 2(1) について ) 不起訴処分になっていた被疑者が一転起訴されるという不利益を考慮すると, まず, 検察審査会の審査の申立てがなされたときは, 被疑者に審査申立てがあったことを通知する制度を新設すべきである その上で, 少なくとも, 被疑者の意見陳述権を保障することは必要であると考えられる 前述したように, 意見陳述の仕方については工夫の余地はあるが, 口頭又は書面による意見陳述権は必ず保障されるべきである さらに, 被疑者に弁護人の選任権を保障すべきである その際, 資力がない被疑者については国選弁護人制度を利用できるようにすべきかどうかも検討されるべきである 被疑者の防御権を効果的に保障するためには, 将来的には, 重要な証拠の開示請求権や証人等の証拠調請求権を認めるかどうかについても検討がなされることが望ましい 3 犯罪被害者等を含む審査申立人の意見陳述権の確保の必要性 ( 意見の趣旨 1 (2) 及び2(2) について ) 現行法上, 審査申立人は検察審査会に意見書又は資料を提出することができるが ( 法第 38 条の2), 審査申立人が検察審査会議において口頭で意見陳述をする権利を認める規定は存しない ただ, 検察審査会は, 審査申立人及び証人を呼び出し, これを尋問することができる ( 法第 37 条第 1 項 ) ことから, 実務的には, この規定を利用して, 審査申立人の口頭の意見陳述を認めている例がある 後述する制度改革がなされるまでの間, この運用は更に拡充されるべきである ただ, この規定は審査申立人の口頭の意見陳述権を認めていないので, 申立人が口頭の意見陳述を希望しても, 検察審査会が不要と判断して認めない可能性がある したがって, 犯罪被害者等を含む審査申立人が, 口頭の意見陳述をすることは, その固有の権利として保障されるべきであり, 明文で, 犯罪被害者等を含 - 10 -

む審査申立人の口頭の意見陳述権を認めるべきである 4 検察審査会の情報公開の必要性 ( 意見の趣旨 1(5) について ) 検察審査会による起訴議決に至る審理についての情報公開があまりにも狭いことから, より広く情報公開が行われるように運用を改善すべきである 現在, 検察審査会議が, いつ開催されたかも含め, ほとんどの情報が公開されていないのが現状であり, 政治資金規正法違反事件の事案においては, 検察審査会議が開かれていないのではないかとの疑念が一部で表明されたこともある 法は, 検察審査員等に対して守秘義務を課し, これに違反した場合に罰則を設けているが ( 法第 44 条 ), その対象となる秘密は, 検察審査会議において検察審査員が行う評議の経過又は各検察審査員の意見若しくはその多少の数 ( 評議の秘密 ) その他の職務上知り得た秘密である 会計検査院情報公開 個人情報保護審査会において, 検察審査会の関係文書の情報公開に関して検討された際に, 検察審査会の審査は,1 起訴前の捜査段階の手続であることから, 被疑者その他の関係人の名誉やプライバシーの保護を確保する必要があり, かつ,2 捜査の延長としての面から, 捜査の秘密を保護しながら行う必要がある さらに,3 検察審査員は, くじにより選ばれた一般国民であるため, 審査中はもとより, 審査後も審査の有り様について批判を受けたり, 事件関係者等から不当な影響を受けたりすることなく, 検察審査会議において自由闊達な議論ができるよう保障する必要がある ( 平成 25 年 ( 情 ) 諮問第 1 号 同第 2 号に対する平成 26 年 12 月 3 日付け答申 15 頁 ) との意見が諮問庁である会計検査院長によって述べられているが, このような趣旨を尊重して情報開示を検討すべきである 検察審査会議の外形的事実のうち, 開催日時, 審議時間及び審議対象は, 議決後において, 行政情報として積極的に国民に対して公開すべき事項であり, それ以外の審査員の男女別, 年齢構成等についても, 上記の趣旨に反しない限り, 公開すべきである 5 審査補助員制度の改善について (1) 審査補助員の選任について法には, 審査補助員の選任方法について特に規定は存しないが, 各弁護士会と各検察審査会事務局との間の取決めにより, 検察審査会事務局から弁護士会に対して審査補助員候補者の推薦依頼をし, 弁護士会が推薦した弁護士を審査補助員に選任するという運用がなされている そして, その推薦手続の透明性の確保のため一部の弁護士会においては, 審査補助員と指定弁護士 - 11 -

の推薦手続を定める規則が制定されている (2) 審査補助員の推薦依頼の現状と運用改善の必要性について ( 意見の趣旨 1 (3) について ) 審査補助員が委嘱される例は, 実際にはあまり多くはないのが実情である 特に, 審査補助員の委嘱数については地域的な不均衡があることが認められる 当連合会が,2015 年 ( 平成 27 年 )4 月 28 日から同年 6 月 12 日までに,52の弁護士会に審査補助員候補者の推薦状況について照会したところ, 改正法が施行された2009 年 ( 平成 21 年 )5 月以降, 検察審査会から弁護士会に対して推薦依頼があった弁護士会は24 会であり ( 東京三会, 神奈川県, 埼玉, 茨城県, 長野県, 大阪, 兵庫県, 滋賀, 富山県, 山口県, 島根県, 福岡県, 熊本県, 鹿児島県, 宮崎県, 沖縄, 仙台, 福島県, 岩手, 秋田, 釧路, 徳島 ), これまで一度も推薦依頼がなかった弁護士会は27 会であった ( 千葉県, 栃木県, 群馬, 静岡県, 山梨県, 新潟県, 京都, 奈良, 和歌山, 愛知県, 三重, 岐阜県, 福井, 金沢, 岡山, 鳥取県, 佐賀県, 長崎県, 大分県, 山形県, 青森県, 札幌, 函館, 旭川, 香川県, 高知, 愛媛 なお, 広島は2012 年 ( 平成 24 年 ) 以降は推薦依頼がないがそれ以前は不明との回答であり, これを入れると28 会となる ) 全国を8つに分けた地方別に見ると, 推薦依頼が少ないのは, 北海道, 中部, 中国, 四国であり, 愛知県のような大きな弁護士会に対しても1 件も推薦依頼がないのが目立つところである 他方, 推薦依頼数が多い弁護士会は, 沖縄が22 件, 福岡県が17 件, 仙台が16 件, 兵庫県が10 件となっている このように, 審査補助員の推薦依頼の現状については, かなりの地域差があることが明らかになっている 推薦依頼が多い弁護士会の中には, 弁護士会と検察審査会事務局との協議を続ける中で徐々に弁護士会との信頼関係が構築されて, 審査補助員候補者の推薦依頼が増えた例 ( 福岡県, 仙台 ) もある 地域によって1 件も推薦依頼がない実情は大いに疑問であり, 検察審査会は, 検察審査会議での審査を充実させるために, 法律に関する専門的な知見を補い, 市民感覚を不起訴処分の当否の判断に適切に反映させるために, 法令の適用や解釈の問題点や, 証拠関係が複雑であったり, 証拠評価に困難を伴うことが見込まれ, 事実認定が容易でないようなケースについては, 審査 - 12 -

補助員を委嘱するようにすべきである 審査申立てを代理する弁護士においても, 上記のようなケースにおいては, 申立てに際して審査補助員の委嘱を求めるべきであり, その場合には, 検察審査会はできる限り審査補助員を委嘱すべきである (3) 審査補助員の手当について ( 意見の趣旨 1(4) 及び2(4) について ) 審査補助員の手当は, 検察審査会議への出席の日数 時間を基準として算定されている そのため, 膨大な記録を事前に検討したり, 検察審査会事務局と事前に進行等について打合せをする時間は一切考慮されていない しかしながら, それでは, 検察審査会議の審理を充実させるために審査補助員制度を導入したのに, その職務を真面目に務めようと考えて熱心に取り組もうとする審査補助員の意欲をそぐことになり, 多くの無償の仕事を強いることになる したがって, 検察審査会議への出席だけでなく, それ以外の活動を含めて審査補助員の手当を支払うべきである また, 後述するように, 今般, 指定弁護士の報酬が増額された 他方で, 審査補助員に対して支払われる手当の額については, 審査補助員に支給すべき手当の額について と題する最高裁判所事務総長から地方裁判所長宛ての通達等によって定められており,2015 年 ( 平成 27 年 )4 月 1 日以降, 勤務 1 日につき,1 審査事件について執務をしたときは30700 円,2 審査事件について執務をした時間が1 時間以下のときが15300 円,3 登庁したものの, 審査員の不出頭等の事由により, 審査事件について執務をしなかったときが7700 円と定められているが, 検察審査会議の出席以外の活動について手当が支払われていない現状においては, これでも低額に過ぎるので, 手当の基準自体を増額する必要がある その際, 審査補助員の手当について検察審査会法第 39 条の4が 別に法律で定めるところ と規定する法律に当たる裁判所職員臨時措置法が準用する一般職の職員の給与に関する法律第 22 条が, 勤務一日につき 三万四千二百円 ( その額により難い特別の事情があるものとして人事院規則で定める場合にあつては 十万円 ) を超えない範囲内において 各庁の長が人事院の承認を得て手当を支給することができる と規定していることから, 審査補助員の手当の上限を増額するためには, その額により難い特別の事情があるものとして人事院規則で定める ことが検討される必要がある (4) 審査補助員の複数選任の必要性 ( 意見の趣旨 2(3) について ) 審査補助員は, 現行法上,1つの事件について1 人しか審査補助員を選任できないこととされている ( 法第 39 条の2 第 2 項 ) - 13 -

しかしながら, その職務内容から見て,1 人で行うには大変な負担になっているし ( 記録が膨大な事件が多い ), 審査補助員の活動をより充実させるためにも, 複数選任を可能にするように制度を改める必要がある 6 指定弁護士制度の改革について (1) 指定弁護士の補充捜査について ( 意見の趣旨 2(5) について ) 指定弁護士の補充捜査の在り方については, 前記 1(4)2アで述べたとおりであるが, 補充捜査のためには, 裁判所から令状の発付を受けて, 捜索, 差押え及び検証を実施することができるのであり, 現行法上は検察事務官及び司法警察員に対する捜査の指揮は検察官に嘱託してしなければならないことになっているが ( 法第 41 条の9 第 3 項ただし書 ), 補充捜査の充実のために円滑かつ迅速な執行のためには, 当連合会が2003 年 ( 平成 15 年 ) 12 月 20 日付け 検察審査会制度に関する意見書 で述べたとおり, 検察事務官及び司法警察職員に対する捜査の指揮を直接できるようにすべきである (2) 指定弁護士の手当について ( 意見の趣旨 2(6) について ) 当連合会は, 改正法の施行前から, 法における指定弁護士に対して給すべき手当の額について, 検察官の職務を行う弁護士に給すべき手当の額を定める政令 ( 以下 本件政令 という ) 第 1 条に定められた上限額は著しく合理性を欠いているとの意見を述べてきたところである (2008 年 ( 平成 2 0 年 )5 月 28 日付け 検察官の職務を行う弁護士に給すべき手当の額を定める政令案 に関する意見書 ) 2015 年 ( 平成 27 年 )12 月 4 日に改正された本件政令によると, その上限額が315 万円に引き上げられ,2016 年 ( 平成 28 年 )1 月 1 日に施行されている 当連合会としては一定の前進であると考えるが, 依然として不十分であり, 上限額の更なる引上げや上限の撤廃について, 速やかに検討がなされるべきである (2015 年 ( 平成 27 年 )11 月 5 日付け 検察官の職務を行う弁護士に給すべき手当の額を定める政令の一部を改正する政令案 に関する意見書 ) すなわち, これまでに, 検察審査会が起訴議決をして指定弁護士が選任された事案のうち大規模 困難事件としては, 多数の被害者や被害者遺族がいた明石歩道橋事故に関する事案,JR 福知山線脱線事故に関する事案, 政治資金規正法違反事件の事案, 東京電力福島第一原子力発電所事故に関する事案があり, こうした事件については, 膨大な記録を検討し, 補充捜査を実施 - 14 -

し, 被害者参加する多数の犯罪被害者等との対応が必要であり, ほとんどの事件で公判前整理手続が実施され, 証拠開示への対応などが求められており, 事案によってはマスコミ対応にも追われることになる このように, 指定弁護士の職務は極めて多岐にわたるとともに, 弁護士業務とは全く異なる検察官業務を行うものであり, 事案によっては, その負担は極めて大きいだけでなく, 物理的な時間も相当程度とられ, 本来の弁護士業務にも影響が出ているのが現状である したがって, このような大規模 困難事件があることを想定すると, 将来的には速やかに, 上限を撤廃することが検討されるべきである なお, 指定弁護士の手当は, 現在, 審級ごとに, 判決後に支払われているが, 長期間の審理がなされる事案の場合には, 判決までの数年間を無報酬で指定弁護士の業務に従事しなければならず, そのことが指定弁護士の大きな負担となっているので, 今後は, 手当の支払方法や支払時期についても検討されるべきである 7 結語当連合会は, 検察審査会制度をより良い制度にしていくため, 意見の趣旨記載のとおりの運用改善及び制度改革を求める なお, 当連合会としても, この制度に精通した弁護士を増やすために, 会員への情報提供や研修を充実させるよう取り組む所存である 以上 - 15 -