資料 4 ファンディング改革に向けた提案 独立行政法人科学技術振興機構 中村道治 平成 27 年 3 月 4 日
提案のポイント 1 研究開発に関わる総予算の拡充 2 戦略的な研究開発の充実 3 ファンディングのあり方への提案 2
1 研究開発に関わる総予算の拡充 わが国は科学技術のリーディングカントリーとなるのか? そうであれば相応の投資は必要不可欠 わが国の科学技術関係予算は諸外国に比して相対的に低下 研究費の政府負担割合は 主要国と比較して低く その対 GDP 比も横ばい傾向 科学技術によるイノベーションの創出を国是とするのであれば 主要国以上の予算措置が必要 3
主要国等の政府研究開発投資の推移 我が国の科学技術関係予算の伸びは諸外国に比較して低調 研究費の政府負担割合は 主要国と比較して低く その対 GDP 比も横ばい傾向 900 800 700 600 500 400 300 200 100 0 2000 年度を100 とした場合の指数 2000 年度を 100 とした場合の各国の科学技術関係予算の推移 日本 EU-15 韓国 米国中国 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 中国 808 ト イツ 161 フランス 136 イキ リス 93 ( 全て 2011 年 ) 韓国 263 EU-15 148 米国 128 日本 111 ( 年度 ) 注 ) 各国の科学技術関係予算をIMFレートにより円換算した後 2000 年度の値を100として出 資料 ) 日本 : 文部科学省調べ 各年度とも当初予算中国 : 科学技術部 中国科技統計数据 EU-15: Eurostat その他の国 : OECD Main Science and Technology Indicators IMFレート :IMF International Financial Statistics Yearbook 算 出典 : 文部科学省作成 (%) 1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 (%) 政府負担研究費対 GDP 比の推移 日本 Japan 米国 United States ドイツ Germany フランス France 英国 United Kingdom EU-15 中国 China 韓国 Rep. of Korea 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料 ) 日本 :( 政府負担研究費 ) 総務省 科学技術研究調査 (GDP) 内閣府 国民経済計算確報 EU:( 研究費 国内総生産 ) Eurostat database その他 :OECD Main Science and Technology Indicators 研究費の政府負担割合の推移 日本 Japan ドイツ Germany 英国 United Kingdom 中国 China 米国 United States フランス France EU-15 韓国 Rep. of Korea 韓国 1.00 米国 0.92 ドイツ 0.85 フランス 0.83 EU-15 0.72 日本 0.68 英国 0.57 中国 0.40 ( 年度 ) FY 0 2000 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 資料 ) 日本 : 総務省 科学技術研究調査 その他 :OECD Main Science and Technology Indicators フランス 37.0 EU-15 34.5 米国 33.4 英国 32.2 ドイツ 30.3 韓国 24.9 中国 21.7 日本 18.6 ( 年度 ) FY 4
2 戦略的な研究開発の充実 世界は研究開発をイノベーション重視型にシフト基礎研究の成果をイノベーションに繋げる戦略的取組みが必須 迅速にイノベーションを起こしていくためには 戦略的な基礎研究の推進や展開 知識移転等機能の充実が重要な役割を果たす 戦略的な競争的資金で新しい改革を先導 大学の基盤的経費やボトムアップの研究資金では限界あり 米国や欧州主要国もこの部分に多彩なマネジメントを導入した多様なファンディングを充実 PM マネジメントにより出口に導く DARPA や ARPA-E のファンディング 一定の研究開発マネジメントの導入を促したり組織の枠組みを超えた拠点を構築するようなファンディング (NSF の ERC プログラム等 ) 5
米国と欧州の公的研究開発システムの相違 ( 資金供給面を中心に ) 米国型と欧州型で大きく研究開発システムモデルが異なり 日本は欧州のモデルに近い 米国型欧州 ( 英 独 仏 )/ 日本型 DOD 陸海空軍 / 研究所 ファンディング機能 産業界 DOE,NASA,DOC 等各研究所等ファンディング機能 大学 NSF HHS NIH 内部研究所 教育研究省他の省 ブロックグラント ( 運営費交付金 ) 中間配分機構 プロジェクトファンディング ( 競争的資金 ) 産業界 公的研究機関 大 学 分野縦割り的に 連邦政府の各省が先端的な基礎研究から応用 開発研究に至るまでを推進 各省が 国立研究所およびファンディング機能 ( 外局または内局として ) の双方を持つ (NSF は 省と同格のファンディングに特化した独立機関 ) 文部科学省相当の省が中心となり 分野横断的に ブロックグラント プロジェクトファンディングの組み合わせ 資金配分において 中間機構 ( エージェンシー等 ) を活用 仏 / 独では プロジェクトファンディングを強化 6
欧州各国と日本の公的研究開発システム ( 資金供給面を中心に ) 欧州では 科学技術イノベーションの創出を促進するために 産学等の間でのパートナーシップ構築 産業界 社会への知識移転の支援機能を強化している 欧州では 国の R&D システムを活性化するため 柔軟性 翻訳できる専門性を持った機構を強化 我が国では JST が相当 英 国 ドイツ フランス 日 本 応用研究 基礎研究 産業界 / 社会での実用化の支援 知識移転 知識交換の促進 戦略的な研究 ( 社会経済ニーズを指向した基礎研究 ) 学術研究基盤の確保 発展 ( 知の苗床の確保 ) TSB ( 技術戦略会議 ) 連携 RCs ( 研究会議 ) 他の国立研究機関 HEFCs ( 高等教育資金会議 ) AiF PT ( プロジェクト マネジメント エージェンシー ) DFG ( ドイツ研究振興協会 ) 研究協会等 FhG MPG WGL HGF 大学向け基盤的経費 ( 州補助金 ) オゼオ ANR( 国立研究機構 ) シフト 国立研究所 ( 内部資金配分 ) (CNRS) ( 宇宙研究センター ) ( 原子力庁 ) 等 CNRS 等 + 大学 (UMR: 混成研究室 ) JST NEDO 厚労科研費 独法研究所 ( 運営費交付金 ) JSPS, 科研費 大学向け基盤的経費 ( 運営費交付金 私学助成等 ) : ブロックグラント ( 運営費交付金に類する資金 ) : プロジェクトファンディング等 ( 競争的資金に類する資金等 ) 7
基礎研究研究加速研究開発製品化 1999 2011 1995 透明 フレキシブル 高速応答の IGZO 系酸化物半導体薄膜トランジスタ開発における材料研究から研究開発 製品化までの経緯 2004 TAOSのコンセプトを提案(国際会議で発表)最初は 反響なし だった JSPS 等による基礎研究の成果 JST 等での戦略研究の推進 展開国内メーカーが電子ペーパーを試作発表(2006)複数の海外メーカーがIGZOーTFT搭載のディスプレイを試作発表(2007)海外メーカーが37 インチ液晶ディスプレイを試作発表(2010)海外メーカーが70インチ3次元液晶ディスプレイを試作発表(2010)金属 ns 軌道 O 2p 軌道 2012 国内メーカーがIGZO TFT搭載の中小型液晶パネルの量産開始(2012)8 TAOSが持つポテンシャルについて決定版と言えるアモルファスIGZO薄膜を活性層とする薄膜トランジスタに関する成果を Nature で発表c軸に配向したエピタキシャルI IGZO薄膜を活性層とする薄膜トランジスタに関する成果を Science で発表国内メーカーとの共同研究多くの応用 周辺特許を出願自社開発を行う企業に対し技術指導等を実施JSTのパッケージ特許数十件をライセンス(サムスン シャープ等)TLO 理事長 技術参事のアドバイス内外の多くの企業が IGZO ー TFT に注目問い合わせ相次ぐ
ips 細胞の樹立から臨床研究導入までの経緯 2003 2010 2015 JSPS 等による基礎研究の成果 JST 等の戦略研究での推進 展開 ips 作製 岸本 PO ヒト ips 細胞 ヒト ips 樹立 (2007) 山中教授 基盤整備 北澤元理事長 研究加速 西川 PO RPE 細胞 網膜細胞の産生 拠点整備 中村理事長 再生医療実現化ネットワーク 臨床研究 高橋 PL 加齢黄斑変性 臨床研究着手 (2014) 9
3 ファンディングのあり方への提案 (1) 1. ファンディングプログラムの大括り化と明確化 科学の新展開やイノベーションの創出において分厚く重層的な支援は必須であり 異なる視点を持つ FA が様々なプログラムを提供するのは本来の姿であるが 現状はプログラムが林立 いわゆる非競争的資金と府省直轄ファンディングも含めた全体的な再整理が必要 2. ファンディングプログラムの安定化 プログラムを大括り化 柔軟化し プログラム自体を長寿命化 フェーズに応じた他プログラムへの移行を容易にし 個別研究課題の支援の切れ目をなくす 拠点構築や組織的なファンディングについては 少なくとも 10 年程度の支援を行う 10
3 ファンディングのあり方への提案 (2) 3. プログラム運用手法の改革 新規プログラムを開始する際の準備期間の導入 (1 年 ~1 年半程度 ) 戦略的なファンディングにおいては公募のみならず 課題の作り込みを活用 4. 間接経費の拡充 非競争的資金も含め 競争的資金並の 30% 以上に 前提として 間接経費の使途の明確化と使用における大学 ( 学部 学科 付置研レベル含む ) 等研究組織のマネジメントの確立 強化 さらに 共用機器設備の整備を促す仕組みや 5. に示す研究基盤構成経費の導入を検討 5. 研究基盤構成経費 ( 仮称 ) の創設 研究から生じる論文やデータを体系的に保存 蓄積 利用の促進 科学コミュニケーション活動 ELSI 対応を推進する等の経費 11
3 ファンディングのあり方への提案 (3) 6. 予算執行管理の柔軟化 プロジェクト期間に応じた複数年度契約の実施 基金の創設 費目間流用の柔軟化 ( 直接経費の 50% 以内 ) PI の人件費を措置 7. 我が国のイノベーション創出能力の強化 ( 組織的なファンディング ) オープンイノベーション推進 技術のシステム化 統合化の体制構築 人材育成 人材の流動性確保のための組織的な取組を推進 8. 研究開発人材の育成確保 プログラム運営に人材育成 確保 ( 若手人材 インフォマティクス人材等 ) の観点を明確に位置づける 12
3 ファンディングのあり方への提案 (3) 9. ファンディングプログラム及び FA の連携強化 各 FA におけるデータベースの整備とネットワーク化の推進 他制度への展開の柔軟化 10. 審査 評価体制の拡充 ファンディングプログラムごとの最適な審査 評価体制の構築 ピアレビュー ( サイエンスメリット ) に加えて 社会的インパクト ( 波及効果 人材育成効果 国際展開効果等 ) も重視 審査 評価の一層の透明化 11. 論文 データのオープン化 第 4 の科学への対応 公的ファンディングによる成果論文のオープンアクセスの義務化 データのオープン化とそれらを戦略的に活用する第 4 の科学を推進 * 以上の項目を含む提案を近日中に取りまとめ予定 13