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公民科教育におけるコンピュータの活用 長期研修員松岡正晃 Matsuoka Masaaki 要旨公民科教育におけるコンピュータの活用について その有効性を探るとともに その活用に当たりどのような課題があるか考察した また 簡単に活用できる公民科の学習教材を開発した キーワード : コンピュータ活用 インターネット Web ページ 集 1 はじめに現代の学校教育では 高度情報社会に生きるために学校教育の情報化が求められている また コンピュータなどの情報機器の普及により 多くの生徒がメールなどの体験をしており コンピュータに対する興味 関心も高い さらに高等学校学習指導要領公民科にも コンピュータや情報通信ネットワークなどを活用して学習の効果を高めるよう工夫するものとする と示されている そこで 公民科の授業の中にコンピュータを効果的に活用できるように考察を深めようと考えた 2 研究目的従来の公民科の授業形態は ともすれば講義一辺倒の単なる詰めこみ あるいは暗記中心という面があった 公民科は 実社会に直接かかわることのできる身近な教科であり コンピュータを活用して身近な事象を分析するなど できるだけ生徒の興味 関心に応える授業を展開する必要があると考える そのために公民科教育におけるコンピュータの活用についてその有効性を探るとともに その活用に当たりどのような課題があるか考察したい さらに簡単に活用できる公民科の学習教材を開発したい 3 研究方法 (1) 公民科教育におけるコンピュータ活用の実態調査ア先行事例の調査 研究を行う イ学習ソフトウェアの調査と研究を行う (2) コンピュータを活用した学習活動についての研究ア身近な事象を基にした学習教材の開発を行う イ学習指導案 学習計画などの作成を行う - 1 -

4 研究内容 (1) 公民科教育におけるコンピュータ活用の実態調査ア先行事例の調査 研究インターネットを活用して全国各都道府県の教育研究所及び教育センターなどのWebページを検索して先行事例の調査 研究を行った また 教科書出版会社などのWebページを検索して先行事例の調査 研究を行った イ学習ソフトウェアの調査と指導方法の研究既存の公民科における学習ソフトウェアの調査と研究を行った (2) コンピュータを活用した学習活動についての研究ア身近な事象を基にした学習教材の開発 ( ア ) 教材開発のためのコンピュータソフトウェアの研究教材開発のため Webページ作成用ソフトウェア ( ホームページビルダー ) やプレゼンテーション作成用ソフトウェア ( パワーポイント ) などの使用を検討した結果 教材が比較的容易に作成でき 各生徒がそれを個別に操作できるという点で Webページ作成用ソフトウェア ( ホームページビルダー ) を活用するのが適切だと考え それを活用して教材開発を行った ( イ ) Webページ作成用ソフトウェアを活用した教材開発 a 鎌倉仏教の思想( 倫理 ) に関する教材開発復習を中心とした教材を開発した 表 1 鎌倉仏教の思想 ( 倫理 ) に関する教材の展開例 2 鎌倉仏教についての各問題 1 鎌倉仏教のトップページ 各問題の解答に - 2 -

3 法然の説明 3 日蓮の説明 3 道元の説明 4 浄土宗の HP 4 久遠寺の HP 4 曹洞宗の HP 一人でも学べるクイズ形式を採用した 各宗派 各寺院などのWebページへできるように作成 ( 例 ) 書物 ( 選択本願念仏集 ) 人物 ( 法然 ) 浄土宗のWebページ 知恩院のWebページ 比叡山延暦寺のWebページ 専修念仏 親鸞などのページにできるように作成 b 選挙制度( 政治経済 ) に関する教材開発授業の流れに沿って使えるような教材を開発した 表 2 選挙制度 ( 政治 経済 ) に関する教材の展開例 1 選挙制度についてのトップページ 2 衆議院と参議院の違い 関連ページに - 3 -

3 ドント方式の説明 ( 島根県選挙管理委員会 HP より ) 3 連座制の説明 ( 埼玉県選挙管理委員会 HP より ) 4 子供向けコーナー 5 ザ選挙ゲーム 3 神奈川県選挙管理委員会 HP 6 正解なら 6 間違いなら 7 結果 選挙制度全般から各都道府県の選挙管理委員会などのWebページへできるように作成 ( 例 ) 衆議院と参議院の選挙制度の違い ドント方式 連座制の説明などにできるように作成 衆議院と参議院の選挙制度の違い 神奈川県選挙管理委員会のWebページ 子供向けコーナー ザ選挙ゲームへして体験できるように作成 各国の選挙権年齢 日本の新しい住民投票などのWebページにして選挙権の年齢について考える イ 学習指導案 学習計画などの作成教材開発を行った単元の学習指導案 学習計画 ワークシートなどを作成した 表 3 選挙制度( 政治 経済 ) の教材についての指導案 公 民 科 ( 政治経済 ) 学 習 指 導 案 単 元 現代政治の課題と現状全 3 時間 指 導 第一次 政党政治と選挙 2 時間 計 画 第 1 時 政党の役割と圧力団体 現代の政党政治とその課題 第 2 時 日本の選挙制度とその課題 ( 本時 ) - 4 -

第二次 行政機能の拡大と民主化 世論と現代政治の課題 1 時間 本 時 案 ( 第一次の第 2 時 ) 日本の選挙制度とその現状を理解させ 国民主権のもとで国民の意思が正確に反映される選挙制度の在り方を考える 目 標 世界の選挙区制度にもふれながら 各選挙区制の長所 短所 特に死票の問題について理解させ 国民の意思が正確に反映される選挙区制の在り方を考えさせる 指導の内容 ねらい 学 習 活 動 指導上の留意点 導 入 前時までの確認をする 今回の参議院選挙のことについて幾つかの質問を 前時までの確認 しながら導入を行う 選挙区制度について イギリス アメリカ 中国などの政治制度 選挙制 教科書 資料集を使用しながら説明を行う ( 諸 度などを思い出す 外国の制度にもふれながら ) 衆議院と参議院の選挙制度の 衆議院と参議院の選挙制度の違いについて理解す ホームページビルダーで作成した教材を見せる 違いについて る 地方選挙にも少しふれる 各国の選挙権の年齢を調べる インターネットを利用して各国の選挙権の年齢を調 アジア 南北アメリカ ヨーロッパ アフリカ べる オセアニアの4グループに分ける それぞれが責任 4つのグループを作る を持って調べるように指導する インターネットを利用して調べる 18 歳以上のところが多い ( 世界的な流れだけ 各班の代表者が主な国の選挙権の年齢を発表する おさえる ) 日本の地方公共団体の住民投 住民投票の権利年齢の引下げについて知る 18 歳以上 定住外国人にも認めている地方公共 票について 選挙権の引下げについて討論をして考える 団体は全国で10 市町村である 6~7 人のグループを作る 世界的に低年齢化 日本でも地方自治の住民投票 各班の代表者が班の意見を発表する レベルでは低年齢化してきている現実を伝える 選挙の新しい方向について 地方選挙に限って電子投票が可能になったことを知 実際の例を挙げながら説明する ( 岡山県新見 る 市 )(2004 年 2 月現在 10 市町村で実施 ) まとめ 復習のワークシートを考える 復習のワークシートをさせる 各自 集を利用しながらインターネットなど 選挙制度は変わってきているが 政治を変えるこ で疑問点を解決する とができるのは我々国民一人一人の意識が大切であることを理解させる 5 研究結果と考察 (1) 各都道府県の授業におけるコンピュータの活用の実態については 程度の差がかなりみられる 先進の都道府県では 授業に活用できる教育ソフトウェアを開発しているところもあるが 大部分の都道府県は まだそのような状況ではない また 教科書出版会社も すぐ授業に使える事例集 などは多く発行しているが コンピュータを活用した授業展開などを紹介したものは あまりみることができないのが現状である (2) 既存の公民科の学習ソフトウェアは windows95 あるいはそれ以前のOSに対応していたものをウインドウズに乗せ換えただけのものが多く 内容なども現在の公民科の授業に活用できるものは皆無に等しい しかし一部に やってみコンビニ店長 ( ベネッセコーポレーション ) のように生の経済学を学ばせるためのコンビニ経営のシミュレーションソフトで 学校の授業を想定して作られた教材も見られる 内容としては 生徒がコンビニ経営者になって 販売方針 出店場所 店内の配置やアルバイト人員を決定して開店する 決めた条件によって 客の数 売り上げ 人件費などが変化し収益が変わる 生徒はよりよい収益を求めて 条件を変化させる 一定期間営業し 営業成績を争う 経営が下手だと倒産することもある そのようなことを通して現実の経済学を学ぼうとするものである それを実際に活用している授業実践も見られる (3) 今回の学習教材の 鎌倉仏教の思想 ( 倫理 ) と 選挙制度( 政治 経済 ) では コンピュータを活用する場面が異なっている 具体的には 倫理 は先哲の考え方を学ぶことが多く 特に今回は 鎌倉仏教の思想 といった歴史的な分野に近いので 特に新しい知識が必要でもないため Webページへのは少なくして 生徒自身が一人でも学ぶことができるクイズ形式を採用して復習を中心に活用できるように工夫した - 5 -

また 政治 経済 は 刻一刻と変化する現代の社会を扱う科目であり 高等学校学習指導要領公民科編政治 経済の一節 民主政治の本質や現代政治の特質について探求させるとともに 政党政治や選挙などに着目して 望ましい政治の在り方及び主権者としての参政の在り方について考察させる とあるように 今回の 選挙制度 の教材作成に当たっては Webページへのを多くして 上記の例にあったようにクイズを体験させたり 具体的な事項を学ばせたり また 新しい選挙制度を考えるに当たって 電子投票の疑似体験をさせたり インターネットを利用して各国の選挙権の年齢を調べさせて 日本の選挙について考えさせる機会になるように工夫した 6 おわりにコンピュータ活用の今後の方向としては テーマや課題を解決するために インターネットを利用するようになると思われる これまでの印刷物中心の教材が映像や画像 音声などで提供され 生徒が自ら探していくことにより 感動やインパクトが大きくなる また これまでの授業形態が大きく変わる可能性もある これからはコンピュータ室の使用頻度はかなり高くなっていくと思われるが 多くの生徒が利用するには限界がある 今後は 普通教室におけるコンピュータの活用の促進が重要だと思われる 例えば校内 LANを整備し サーバー内に必要なデータを整理したり 提示用検索のための集などを作成 充実させたり さらに活用場所に応じた教材作りも必要になってくると思われる また 公民科に限らず 今後情報教育を推進するに当たっては 生徒の情報活用能力の向上を図るために教科 情報 の授業はもちろん 各教科の関連を明確にしながら 情報教育の年間指導計画などを作成する必要がある また 中教審が 情報量の豊富さは プラスに生かせば子供たちの発想を膨らませ 日常生活の幅を広げ 豊かにするものであることは間違いない しかし 情報は常に正しいとは限らないし また意義あるものとも限らない と論じているように インターネットなどの情報を活用する時は 生徒の正しい知識とモラルを育成することが求められる さらに 既存のアプリケーションソフトウェアは 制作者の考えと活用する授業者の考えがなかなかマッチしないものが多いが 部分的に活用することは有効だと思う 前述の やってみコンビニ店長 のように 考え方がマッチしたものも一部見られるのだが 費用がかなり高額で 学校現場に市販ソフトウェアを導入するのは難しい その点 自作の学習教材は生徒の実態に合わせて作成でき 費用もかからず有効ではあるが 日々の学校現場の活動の中で 自作ソフトウェアを作成する時間がとれないのが現状である 最後に Web 作成用ソフトウェアを利用した教材作りは コンピュータの初心者である私が比較的容易に作成することができたので かなり有効であると思われる また インターネットエクスプローラーなどのWebブラウザさえあれば特別なソフトウェアも必要なく いつでもどこでも簡単に展開することができるので 作成した教材活用の際にも有効だと思われる 参考 引用文献 (1) 文部省 高等学校学習指導要領解説 公民編 平 11 (2) 日本教育工学振興会 コンピュータを教育に活かす 情報教育環境整備ハンドブック 2002-6 -

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