福島赤十字病院産婦人科における内視鏡下手術

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U 開腹手術 があります で行う腎部分切除術の際には 側腹部を約 腎部分切除術 でも切除する方法はほぼ同様ですが 腹部に があります これら 開腹手術 ロボット支援腹腔鏡下腎部分切除術を受けられる方へ 腎腫瘍の治療法 腎腫瘍に対する手術療法には 腎臓全体を摘出するU 腎摘除術 Uと腫瘍とその周囲の腎

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

一般内科

腹腔鏡補助下膀胱全摘除術の説明と同意 (2) 回腸導管小腸 ( 回腸 ) の一部を 導管として使う方法です 腸の蠕動運動を利用して尿を体外へ出します 尿はストーマから流れているため パウチという尿を溜める装具を皮膚に張りつけておく必要があります 手術手技が比較的簡単であることと合併症が少

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下手術を本格導入 東海中央病院では 平成25年1月から 胃癌 大腸癌に対する腹腔鏡下手術を本格導入しており 術後の合併症もなく 早期の退院が可能となっています 4月からは 内視鏡外科技術認定資格を有する 日比健志消化器外科部長が赴任し 通常の腹腔 鏡下手術に

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1) 専門研修基幹施設 藤田保健衛生大学病院 ( 総合型研修病院 ) 指導責任者 藤井多久磨 良性から悪性までの全ての婦人科疾患 母体 胎児救命を含む全ての周産期疾患 腹 腔鏡から体外受精まであらゆる生殖内分泌疾患 女性ヘルスケアなど非常に豊富な症 例をそれぞれの専門家による指導にて研修することがで

腹腔鏡下前立腺全摘除術について

新入職医師のご紹介 2017 年 10 月より新たに常勤医 1 名が加わり 診療体制が充実しました 川崎幸病院婦人科飯田玲 認定資格等 日本産科婦人科学会専門医 平素より大変お世話になっております 本年 10 月より川崎幸病院婦人科で勤務しております 専門分野は婦人科良性疾患の手術 特に骨盤臓器脱手

補足 : 妊娠 21 週までの分娩は 流産 と呼び 救命は不可能です 妊娠 22 週 36 週までの分娩は 早産 となりますが 特に妊娠 26 週まで の早産では 赤ちゃんの未熟性が強く 注意を要します 2. 診断 どうなったら TTTS か? (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊

2. 診断 どうなったら TTTS か? 以下の基準を満たすと TTTS と診断します (1) 一絨毛膜性双胎であること (2) 羊水過多と羊水過少が同時に存在すること a) 羊水過多 :( 尿が多すぎる ) b) 羊水過少 :( 尿が作られない ) 参考 ; 重症度分類 (Quintero 分類

「腎盂尿管がんに対する手術」説明および同意書

2. 転移するのですか? 悪性ですか? 移行上皮癌は 悪性の腫瘍です 通常はゆっくりと膀胱の内部で進行しますが リンパ節や肺 骨などにも転移します 特に リンパ節転移はよく見られますので 膀胱だけでなく リンパ節の検査も行うことが重要です また 移行上皮癌の細胞は尿中に浮遊していますので 診断材料や

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腹腔鏡手術について 〜どんな手術かお話いたします

Vol 夏号 最先端の腹腔鏡下鼠径 ヘルニア修復術を導入 認定資格 日本外科学会専門医 日本消化器外科学会指導医 専門医 消化器がん外科治療認定医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 外科医長 渡邉 卓哉 東海中央病院では 3月から腹腔鏡下鼠径ヘルニ ア修復術を導入し この手術方法を

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体外受精についての同意書 ( 保管用 ) 卵管性 男性 免疫性 原因不明不妊のため 体外受精を施行します 体外受精の具体的な治療法については マニュアルをご参照ください 当施設での体外受精の妊娠率については別刷りの表をご参照ください 1) 現時点では体外受精により出生した児とそれ以外の児との先天異常


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L5214_⑥カリキュラム(産婦人科)

豊川市民病院 バースセンターのご案内 バースセンターとは 豊川市民病院にあるバースセンターとは 医療設備のある病院内でのお産と 助産所のような自然なお産という 両方の良さを兼ね備えたお産のシステムです 部屋は バストイレ付きの畳敷きの部屋で 産後はご家族で過ごすことができます 正常経過の妊婦さんを対

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

外来在宅化学療法の実際

骨盤臓器脱の診断と治療 産業医科大学若松病院産婦人科 吉村 和晃

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(別添様式)

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採択演題一覧

B. 自治医科大学専門研修プログラムの具体例 産婦人科研修プログラムは 自治医科大学附属病院の 4 年間の後期研修プログラムにおける専門コースの一部ではじめの 3 年間が本プログラムに相当する 専攻医は3 年間で修了要件を満たし ほとんどは専門医たる技能を修得したと認定されると見込まれる 修了要件を

凍結胚の融解と胚移植の説明書 平成 27 年 8 月改定版 治療の必要性 / 適応について受精卵 ( 胚 ) の凍結は 体外受精または顕微授精において 以下のような場合に行なわれる治療です 新鮮胚移植後に 妊娠につながる可能性のある受精卵 ( いわゆる余剰胚 ) が残っていた場合 採卵数が多い 血中

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平成 29 年 8 月 31 日 ( 木 ) 発売の週刊文春 (9 月 7 日号 ) 誌上において当院人工関節セン ターの活動内容が取り上げられることになりました 人工関節センターの概要をご案内させて頂きます はじめに近年の高齢化社会の到来により また人工関節自体の耐久性 精度が向上した事により本邦

手術の概要 尿道 膀胱 精嚢 前立腺 直腸 手術の目的は前立腺と付随する精囊を一緒に全部とることです 前立腺を摘出した後に膀胱と尿道をつなげます また 前立腺の近くにあるリンパ節を取ることもあります 高リスクの前立腺がんでは出来るだけ広い範囲のリンパ節をとることもあります 摘出部位 麻酔方法 : 全

不妊外来を受診される方へ

Ⅰ. 女性性器の超音波検査 一般目標子宮 卵巣 卵管 腟 外陰の超音波検査における基本事項と正常および病的状態の超音波所見を理解し, 診断および治療に結び付けることができる. 解剖 生理 [ 子宮 ] (a-1) 経腹走査による子宮の超音波像を説明できる. (c-2) 経腟走査による子宮の超音波像を

褥瘡発生率 JA 北海道厚生連帯広厚生病院 < 項目解説 > 褥瘡 ( 床ずれ ) は患者さまのQOL( 生活の質 ) を低下させ 結果的に在院日数の長期化や医療費の増大にもつながります そのため 褥瘡予防対策は患者さんに提供されるべき医療の重要な項目の1 つとなっています 褥瘡の治療はしばしば困難

多量の性器出血があったとき 装着後数ヵ月以降に月経時期以外の 発熱をともなう下腹部痛があったとき 性交時にパートナーが子宮口の除去糸に触れ 陰茎痛を訴えたとき 脱出やずれが疑われる * 症状があるとき ( 出血や下腹部の痛み 腰痛の症状が続くなど ) * ご自身で腟内の除去糸を確認して脱出の有無を確

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

含む ) 周産期 生殖 内分泌 女性のヘルスケアの4 領域を万遍なく研修することが可能となる 産婦人科専攻医の研修の順序 期間等については 個々の専攻医の希望と研修進捗状況 各施設の状況 地域の医療体制を勘案して 産婦人科研修プログラム管理委員会が決定する B. 産婦人科研修プログラムの具体例 専門

遠隔転移 M0: 領域リンパ節以外の転移を認めない M1: 領域リンパ節以外の転移を認める 病期 (Stage) 胃がんの治療について胃がんの治療は 病期によって異なります 胃癌治療ガイドラインによる日常診療で推奨される治療選択アルゴリズム (2014 年日本胃癌学会編 : 胃癌治療ガイドライン第

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研修計画

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

         体外受精手術の説明と同意書

網田, 五十嵐, 松川, 鈴木, 渡邉, 山谷, 永瀬 図 1. 腹腔鏡手術時の右卵管所見 A. 右卵管峡部 2 か所に腫瘤を認める ( 矢印 ) B. 腫瘤部位の卵管漿膜下にバソプレシン (0.1 単位 /ml) を局所注射した後に線状切開を加えた ( 矢印 ) 図 2. 卵管線上切開右卵管峡部の

リプロダクション部門について

2. 予定術式とその内容 予定術式 : 腹腔鏡補助下幽門側胃切除術 手術の内容 あなたの癌は胃の出口に近いところにあるため 充分に切除するためには十 二指腸の一部を含め胃の 2/3 もしくは 3/4 をとる必要があります 手術は全身麻酔 (+ 硬膜外麻酔 ) の下に行います 上腹部に約 25cm の

配偶子凍結終了時 妊孕能温存施設より直接 妊孕能温存支援施設 ( がん治療施設 ) へ連絡がん治療担当医の先生へ妊孕能温存施設より妊孕能温存治療の終了報告 治療内容をご連絡します 次回がん治療の為の患者受診日が未定の場合は受診日を御指示下さい 原疾患治療期間中 妊孕能温存施設より患者の方々へ連絡 定

がん登録実務について

胎児計測と胎児発育曲線について : 妊娠中の超音波検査には大きく分けて 5 種類の検査があります 1. 妊娠初期の超音波検査 : 妊娠初期に ( 異所性妊娠や流産ではない ) 正常な妊娠であることを診断し 分娩予定日を決定するための検査です 2. 胎児計測 : 妊娠中期から後期に胎児の発育が正常であ

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診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

妊娠分娩と産褥期の管理 ならびに新生児の医療に必要な基礎知識とともに 育児に必要 な母性とその育成を学ぶ また妊産褥婦に対する投薬の問題 治療や検査をする上での制限な どについての特殊性を理解することはすべての医師に必要不可欠である 2. 行動目標 (SBO: Specific Behavior O

乳癌に対して乳線全摘,および腋窩リンパ節郭清を受けられる患者様へ

女性の下腹痛

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特別講演 TLH での前方アプローチ 子宮動脈結紮は必須か 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 林茂徳 現在多くの医師が TLH を行うにあたりまず試みるのが倉敷流の前方アプローチからの子宮動脈結紮を最初に行う方法と思われる しかしながら多くの医師がこのステップを上手く行うことができず 結局子宮動脈

女性用問診票

1) 基幹施設 旭川医科大学病院 指導責任者千石一雄 メッセージ 旭川医科大学産婦人科のセールスポイントは 1) 周産期医療 婦人科がん診療 生殖医療 女性ヘルスケアのすべての領域を網羅する豊富な症例 2) 熱い指導体制 3) 臨床 基礎研究の遂行などリサーチマインドの涵養が十分可能な環境である 産

をすべて摘出 ( 精嚢も ) し 前立腺がんの根治を目的としています 前立腺がんの根治療法として手術以外に放射線治療がありますが 手術の長所として以下のような点があります 1 摘出した標本での病理結果によりきめ細かなフォローができます 病理結果とは顕微鏡での診断結果です 摘出した前立腺はすべて顕微鏡

妊高誌テンプレート

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

限局性前立腺がんとは がんが前立腺内にのみ存在するものをいい 周辺組織やリンパ節への局所進展あるいは骨や肺などに遠隔転移があるものは当てはまりません がんの治療において 放射線療法は治療選択肢の1つですが 従来から行われてきた放射線外部照射では周辺臓器への障害を考えると がんを根治する ( 手術と同

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

妊よう性とは 妊よう性とは 妊娠する力 のことを意味します がん治療の影響によって妊よう性が失われたり 低下することがあります 妊よう性を残す方法として 生殖補助医療を用いた妊よう性温存方法があります 目次 はじめにがん治療と妊よう性温存治療抗がん剤治療に伴う卵巣機能低下について妊娠の可能性を残す方

子宮・卵巣

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その最初の日と最後の日を記入して下さい なお 他の施設で上記人工授精を施行し妊娠した方で 自施設で超音波断層法を用いて 妊娠週日を算出した場合は (1) の方法に準じて懐胎時期を推定して下さい (3)(1) にも (2) にも当てはまらない場合 1 会員各自が適切と考えられる方法を用いて各自の裁量の

I. はじめにここでは大腸癌の治療を受けられる方に病気に対する正しい知識を持っていただき, あなたにとって最も良い治療を選択していただくことを目的にして作成しました. この文章をごらん頂いたうえで, さらに詳しいことをお知りになりたい方は社会医療法人ペガサス馬場記念病院外科のスタッフとご相談ください

ることが証明されています このように手術の結果に応じてより細かな対応が可能になります (PSA 再発の項目参照 ) 2 放射線との比較手術と放射線治療を直接比較してどちらが有効かという大きな問題に結論を出した報告は現在のところありません しかし 間接的に比較した報告では 若年者ほど手術の方が予後の改

はじめに 近年 がんに対する治療の進歩によって 多くの患者さんが がん を克服することができるようになっています しかし がん治療の内容によっては 造精機能 ( 精子をつくる機能のことです ) が低下し 妊娠しにくくなったり 妊娠できなくなることがあります また 手術の内容によっては術後に性交障害を

「手術看護を知り術前・術後の看護につなげる」

目次 1. 胆嚢とはどういうものか 2. 胆石症について 3. 胆石症の原因と症状 4. 胆嚢ポリープについて 5. 胆石症に対する治療について 6. 腹腔鏡下胆嚢摘出術について 7. 腹腔鏡下手術の利点 欠点 8. 単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術について 9. 胆石手術の合併症について 1 0. 麻酔の

甲状腺機能が亢進して体内に甲状腺ホルモンが増えた状態になります TSH レセプター抗体は胎盤を通過して胎児の甲状腺にも影響します 母体の TSH レセプター抗体の量が多いと胎児に甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性が高まります その場合 胎児の心拍数が上昇しひどい時には胎児が心不全となったり 胎児の成

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この PDF では 大腸がんの治療方針を考えるお手伝いをします 大腸がんの治療法には 主に内視鏡的治療 外科療法 放射線療法 化学療法があります が 可能となる治療選択肢は がんの状態やあなた自身の状態によって変わります あなたのご自身の状態を知ることは大切です 不明なことは医師に相談しましょう 2

消化器内科 K7211 内視鏡的大腸ポリープ 粘膜切除術 ( 長径 2cm 未満 ) % K654 内視鏡的消化管止血術 % なし K6532 内視鏡的胃 十二指腸ポリープ 粘膜切除術 ( 早期悪性腫瘍粘膜下

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

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1. 重篤な不正出血の発現状況 ( 患者背景 ) (1) 患者背景 ( 子宮腺筋症 子宮筋腫合併例の割合 ) 重篤な不正出血発現例の多くは子宮腺筋症を合併する症例でした 重篤な不正出血を発現した 54 例中 48 例 (88.9%) は 子宮腺筋症を合併する症例でした また 子宮腺筋症 子宮筋腫のい

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別紙 体外受精胚移植 (IVF-ET) の流れ をご参照ください. まず, 実際に IVF-ET を行う前の周期までに, 治療の説明をお聞きいただき, 術前検査として心電図と血液検査 ( 血液型, 感染症, 血液凝固機能等 ) を行います. 後に採卵という手術が必要になりますので, それが安全に行え

ギガンジウム 子宮頚癌予防ワクチン接種開始 1 年を経過して 我が国では毎年多くの人が癌で亡くなっています ( 死亡率の第 1 位 ) なかでも子宮頸癌は 我が国において毎年 15,000 人の方が罹患 (8,000 人は初期癌 ) し 昨年は 2,486 人の方が亡くなっています これは 20 ~



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Transanal Minimally Invasive Surgery (TAMIS) は 最新のアクセスプラットフォームと従来の腹腔鏡用器具を用いて 遠位 中位直腸の良性腫瘍 および慎重に選択された悪性腫瘍の切除を目的としています Matthew Albert 先生 (Florida Hospi

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

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4 移植手術について原則として右下腹部を切開し 腎移植をします 血管は腎動静脈を足に行く血管に吻合し 尿管は膀胱に吻合します 通常は 輸血はしませんが 必要であれば輸血をすることもあります 術後は 2 日間のベッド上安静を要しその後は歩行も可能となります 通常 4~6 日目に膀胱のチューブを その翌

Transcription:

1 福島赤十字病院産婦人科内視鏡下手術ホームページ はじめに : 内視鏡下手術は 患者さんに対する手術による侵襲をできるだけ少なくする低侵襲手術 (minimal invasive surgery) として 外科系各科において数多く実施されるようになってきております 産婦人科領域でも 近年 急速に普及してきている術式であり 現在では婦人科良性疾患のほとんどが内視鏡下手術の適応疾患となってきております 当福島赤十字病院産婦人科でも 2001 年より婦人科良性疾患に対して内視鏡下手術を積極的に導入してきおります 手術件数は年々確実に増加の傾向にあり 2005 年以降では年間 100 例以上の内視鏡下手術を行なっております 本ホームページでは 婦人科内視鏡下手術の一般的な説明 ( 利点と合併症 手術の具体的な方法など ) および これまでの当科での手術成績についてお示しいたします 本ホームベージをご覧いただくことにより 婦人科疾患を有する患者様に 内視鏡下手術を行なうことの得失と当科での治療内容を十分に御理解していただき 内視鏡下手術の恩恵をできるだけ多くの患者様に受けていただければ幸いと思っております 産婦人科領域での内視鏡下手術とは 婦人科領域での内視鏡下手術には 腹腔鏡下手術 子宮鏡下手術 卵管鏡下手術 ( 卵管閉塞を解除する手術 ) 胎児鏡下手術( 双胎間輸血症候群などの吻合血管を処理する手術 ) などがあります これらのうち当科で現在行なっているのは腹腔鏡下手術と子宮鏡下手術です 以下にこれらの手術の説明と当科での実績をお示しいたします 腹腔鏡下手術 : 腹腔鏡とは 腹壁に数ヶ所小さな孔をあけて そこからスコープ ( 内視鏡カメラ ) や鉗子を入れて手術を行なう方法です 全身麻酔下で行なわれます 手術方法 ; 腹壁の創は 通常はお臍と左右の下腹部に 3~4 ヶ所必要になります お臍の創からスコープを挿入し 炭酸ガスでお腹を膨らませてスペースを作ります スコープから映し出された映像を見ながら下腹部から挿入された鉗子を用いて腹腔内で手術を行ないます また 最近では症例によって創の数を少なくした手術が行えることもあります ( 単孔式 2 孔式手術 ; 後述 ) (A) 腹腔鏡手術用機器 (B) 腹腔鏡模式図 (C) モニターに写しだされた画像 ( 産科と婦人科 2008,10 号より引用 )

2 (D) モニターを見ながらの手術風景 (E) スコープ挿入 (F) 手術後のお腹の創です (12mm が 2 本と 5mm が 1 本 ) (5mm の創部にドレーン挿入 ) 適応疾患 ; 腹腔鏡で手術が可能な疾患と術式は以下の通りです 適応疾患 術式 子宮筋腫 子宮筋腫核出術 子宮全摘術 * 良性卵巣腫瘍 卵巣嚢腫摘出術 附属器摘出術 子宮内膜症 卵巣嚢腫摘出術 癒着剥離術 内膜症病巣除去術 子宮外妊娠 ( 異所性妊娠 ) 卵管摘出術 卵管線状切開術 卵巣出血 卵巣嚢腫摘出術 止血術 不妊症 癒着剥離術 卵管開口術 卵巣多孔術など * 子宮全摘術は腹腔鏡を併用して腟式に子宮を摘出する手術になります ただし これらの疾患の全てが腹腔鏡下手術の適応 ( 対象 ) となる訳ではありません 子宮筋腫であれば筋腫の大きさや形 子宮内膜との位置関係 癒着がありそうかどうかなどによって 卵巣腫瘍では 大きさと形 悪性腫瘍の可能性が高くないかどうかによって 子宮外妊娠 卵巣出血では 出血により全身状態が不安定になっていないかどうか ( 血圧が維持できないくらい出血していないか ) などによって腹腔鏡手術の適応外となる ( 開腹手術を最初から選択する ) こともあります 以下に腹腔鏡下手術の主なメリットとデメリットを示しました これらのことを十分に考慮していただいてご希望のある患者さまに行なわれる手術です 内視鏡下手術のメリットとデメリット : メリット 1. 入院期間が短い 2. 術後の疼痛が軽く早期離床が可能 3. 早期の社会復帰が可能 4. 術後の癒着が少ない 5. 美容上も優れている ( 手術創が小さい ) デメリット 1. 開腹手術への移行が必要になることがあります * 2. 手術時間が長くなることがあります 3. 腹腔鏡特有の合併症 ( 皮下気腫 トロッカーによる血管損傷など ) 4. 腸管損傷 尿管損傷等の可能性があります * 開腹手術移行の可能性について :

3 内視鏡下で開始した手術が必ずしも最後まで内視鏡下で行われるとは限りません いろいろな理由 ( 主に癒着や出血など ) で途中から開腹手術へ移行することもあります 当院では安全性を最優先にした手術を最も重要視しているため 予想外の強い癒着があった場合などで開腹手術の方がより安全であると判断した場合には 内視鏡下手術に必要以上に固執することなく速やかに開腹手術へ移行するようにしております これまで (~2011 年 12 月まで ) の手術のうち開腹手術へ移行した症例は 108 件あり 全内視鏡下手術件数 (1375 件 ) に占める割合は 7.9% でした 開腹手術へ移行する件数は年々減少しており 2011 年では 8 例 168 件 (4.9%) になっておりました 入院期間 : 原則として 手術の 2 日前の午後に入院していただきます 手術前には最終的に手術内容 方法 合併症等に関して詳しく説明いたします 前日からは手術用の食事 ( 低残渣食 ) を食べていただきます 手術翌日から歩行 食事が可能となり 術後 5 日目 ( 子宮全摘術では術後 7 日目 ) に退院の予定となります # 開腹手術になった場合は入院期間が数日長くなります 当院での内視鏡下手術の実績当福島赤十字病院では 2001 年 10 月より婦人科良性疾患に対して内視鏡下手術を積極的に取り入れてきており 2011 年間末までに 1375 件の内視鏡下手術を行っております 手術件数の推移は 年々増加の傾向にあり 2007 年以降では年間 150 件を超える内視鏡下手術を行っております 主な疾患別 年次別の手術件数を下の図に示しました 2011 年には 腹腔鏡下手術 143 件 ( 開腹移行例も含めた件数 ) 子宮鏡下手術 21 件 合計で 164 件行っておりました 手術件数 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 産婦人科内視鏡下手術件数の推移 ( 開腹移行例も含む ) 204 TCR 189 子宮鏡 腹腔鏡 72 89 その他 子宮外妊娠 卵巣腫瘍筋腫核出 子宮全摘 99 114 120 170 154 67 78 91 104 103 149 138 169 腹腔鏡 164 182 143 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 白 赤数字 ; 腹腔鏡 + 子宮鏡下手術件数 黄数字 ; 腹腔鏡下手術件数 その他 ; 卵巣出血 不妊症など TCR; 子宮鏡下手術

4 腹腔鏡下手術の主な合併症 : 手術に際しては 腹腔鏡手術に限らず合併症が発生する可能性があります 合併症とは 手術操作などにより 手術中や手術後に予期しなかったトラブルが起こることです われわれは合併症をゼロにするために細心の注意と努力をして手術を行なっておりますが 残念ながらその発症率はゼロにはなりません 多くの手術を経験し 手術方法の改良や手術手技の向上などにより合併症の発症は確実に減少しておりますが 手術をお受けになる際にはこれらの合併症 後遺症が発生する可能性があることをご理解いただきたいと思います 合併症には 手術一般 ( 開腹手術等も含めで ) に起こり得るものと腹腔鏡特有のものとがあります 手術一般の合併症の主なものとしては 予想外の出血 ( 輸血を必要となる場合もあります ) 他臓器損傷 深部静脈血栓症 ( それに伴う肺塞栓症 ) 術後腸閉塞 感染 創縫合不全などがあります 腹腔鏡に特有の合併症としては トラカール挿入時の血管損傷や腸管損傷 腹腔内操作時の腸管 膀胱 尿管の損傷 皮下気腫 ガス塞栓などがあります これらの合併症が発生することは稀ですが 発生した場合には万全の処置を行ないます 合併症の発生頻度 : 2001 年 10 月から 2011 年 12 月までに当院で行なわれた内視鏡下出術件数は 腹腔鏡下手術が 1222 件 子宮鏡下手術が 153 件 合計で 1375 件でした 主な合併症では 腹腔鏡下手術での腹壁血管損傷が 6 件 (0.44%) 腸管損傷が 4 件 (0.29%) 膀胱損傷 1 件 (0.07%) 手術後出血( 輸血を要した症例 )1 件 重症皮下気腫が 1 件 子宮鏡下手術での子宮穿孔が 2 件 (1.3%) でした これらの発生頻度は 内視鏡下手術をたくさん行なっている他施設と比べても特に多いわけではありません また 血栓症や肺塞栓症などの重篤な合併症 合併症のために再手術が必要になった症例などはこれまでところありません 腹腔鏡下手術の実際 : * 卵巣腫瘍 ; 卵巣腫瘍の手術は腹腔鏡下手術のうちで最も多く行われている手術です 術前の検査で 悪性腫瘍が強く疑われるもの 充実性の腫瘍 強い癒着がありそうなもの等は開腹手術を行いますが それ以外のものではできるだけ腹腔鏡下手術を選択します 腹腔鏡下手術でも開腹手術と同様に 卵巣腫瘍摘出術 ( 正常部分を残す方法 ) と附属器摘出術 ( 卵巣ごと摘出する方法 ) とがあり 腫瘍の種類 大きさ 年齢や今後の妊娠希望の有無などを総合的に検討し よく相談した上で術式を決定するようになります 腹腔鏡下の手術方法には 全ての手術を腹腔内で行なう体腔内法と腫瘍を小切開部分より一度腹腔外に引き出して行なう体腔外法とがあります 以下に 当院での腹腔鏡下卵巣腫瘍手術の例を示します (A): 体腔外法による卵巣腫瘍核出術

5 * サンドバルーンカテーテル ( 固定用風船のついた穿刺針 ) を嚢腫内に刺入し内溶液を吸引した後腹腔外に引き出して腫瘍の部分を切除し縫合して腹腔内に戻します (B): 体腔内法による附属器摘出術 * 卵巣腫瘍周囲の組織 ( 靱帯 卵管 血管 ) を切断して腫瘍を完全に切離後 収容用袋 ( エンドキャッチ ) 内に入れて内容液を吸引し 袋ごと体外に回収します * 子宮筋腫 ; 子宮筋腫は 30 歳以上の女性では約 20~30% の方にみられる疾患です 筋腫があるからといって全ての方で治療が必要となる訳ではありません このうち 筋腫による症状 ( 過多月経 月経痛 異常出血 不妊症など ) を有する方 症状はなくても大きな筋腫 増大傾向にある筋腫を有する方などが治療の対象となります また 子宮筋腫の治療には 手術による治療以外に 薬物療法 (GnRH アゴニストなど ) 子宮動脈塞栓術(UAE) 収束超音波(FUS) などの治療法もあります 子宮筋腫の手術には子宮を残し筋腫だけを取る子宮筋腫核出術と子宮全摘術とがあります 子宮筋腫の手術では 筋腫のサイズを縮小することと筋腫の血流を減少させて手術中の出血量を減らすことを主な目的として 通常 GnRH アゴニストを 3~4 ヶ月間使用してから手術を行うこととが望ましいです (A): 子宮全摘術 ( 腹腔鏡下腟式子宮全摘術 ); 腟式子宮全摘術は腹式の子宮全摘術に比べて低侵襲性の優れた術式であり 以前から行われていましたが 子宮の大きさや腟の伸展性などによりその適応は非常に限られておりました そこで腹腔鏡を併用しながら行うことによりその適応を大幅に拡大することができるようになったのがこの手術方法です 当院ではおおよそ以下のような基準を定めて本術式の適応としております 適応 ;* 大きさが 10cm 程度 ( 推定 500-600g) までのもの * 悪性を疑う所見がないもの ( 子宮筋腫 子宮腺筋症 ) * 子宮の可動性が良好で周囲に強い癒着がないと思われるもの

6 * 経腟分娩をされたことがあり 腟の伸展性が不良でない方 術式 ; 腹腔鏡を用いてまず子宮の周囲組織 ( 卵管 卵巣固有靭帯 骨盤漏斗靭帯 円靭帯 膀胱子宮窩腹膜や子宮動脈など ) を電気メスや超音波メスを用いて切断 切開します その後 腟式に残りの子宮周囲組織 ( 仙骨子宮靭帯 基靭帯など ) を切断して腟式に子宮を摘出する方法です これまでに 250 人以上の方にこの手術を行っておりますが 約 10% の方は癒着などの理由で開腹手術 ( 腹式子宮全摘術 ) に移行しております * 子宮周囲の組織 ( 靱帯 卵管など ) を腹腔鏡下に切断したているところです この後 腟式に子宮を摘出します * 子宮摘出後の腹腔鏡 (B); 子宮筋腫核出術 ; 術式には腹腔鏡を併用しながら下腹部に小切開 (3~4cm) を加えてそこから筋腫核出を行う腹腔鏡下補助筋腫核出術 (LAM) と全腹腔鏡下筋腫核出術 (LM) との 2 法があります 最近では 腹腔鏡下での縫合技術等の向上により より侵襲の少ない LM を主に採用しております 腹腔鏡下手術の明確な適応基準はありませんが 筋腫の大きさ 個数 できている場所 症状などにより総合的に判断してより望ましい術式を決定しております 以下に当院で行う腹腔鏡下筋腫核出術 (LM) の方法を示します * 術前には超音波 MRI 等で筋腫の位置 大きさを確認します この方の筋腫は子宮後壁に 1 個のみ認められました 大きさは 85x65mm 程度で 子宮内膜からは少し離れていました * 子宮筋腫表面の切開部を決定したら その部分を中心に筋腫の表面に止血防止の目的でピトレッシンという薬剤を局所に注射した後 筋腫表面に電気メスで切開を加え筋腫核出を行います

7 * 核出後の子宮の創は吸収糸を用いて縫合します * 核出した筋腫核は 電動モルセレーターという機器を用いて小さく切断して体外に回収します 腹腔内を洗浄し創面からの出血がないことを再確認します 創面には癒着防止のシートなどを貼付しドレーンを留置して手術を終了します ( この手術は 出血は少量のみで 手術時間は 1 時間 45 分の手術でした ) * 子宮外妊娠 ( 異所性妊娠 ); 子宮外妊娠は子宮内膜以外の部分に受精卵が着床して育ち始める病気です 気づかずにいると妊娠部位で流産や破裂を起こして腹腔内に大出血を起こすこともある重大な疾患です 全妊娠の約 1% の頻度で発症しますが 体外受精などの不妊治療後には 3-10% との報告もあります 妊娠部位は 95% 以上が卵管の妊娠ですが まれに 卵巣や腹膜や子宮頚管に妊娠する場合もあります 妊娠 5~6 週を超えても子宮内に胎嚢が見えなければ子宮外妊娠が疑われます 血中のホルモン値 (hcg) や経腟超音波検査やその他の検査で子宮外妊娠が強く疑われるようなときには手術による確認 治療の適応となります 大量の出血でショック症状を示している症例以外は腹腔鏡下手術の適応となります ( 左図 ) 左卵管膨大部妊娠 + 腹腔内出血 ( 右図 ) 右卵管峡部妊娠 以下は卵管妊娠の場合に関しての説明になります 術式 ; 子宮外妊娠 ( 卵管妊娠 ) の手術には 卵管摘出術と卵管線状切開術 ( 卵管温存手術 ) の 2 つの方法があります どちらの手術を選択するかは 妊娠部位の状態 ( 大きさ 破裂の有無など ) 胎児心拍の有無 初めての子宮外妊娠かどうか 血中 hcg 値 将来妊娠を希望するかどうかなどにより卵管の温存の適応があるかどうかを判断したうえで 両手術のメリットとデメリットをご本人 ご家族に十分

8 に説明して決めるようになります (A); 卵管切除術 ; 妊娠部位を含めて 妊娠側の卵管を完全に切除する術式です 根治的な治療法であり 将来の妊娠希望がない方にはこの方法が行われます 今後も妊娠の希望がある方でも 前述のような温存可能な基準に照らし合わせて卵管切除が行われることもあります * 卵管間膜を超音波メスで切開し卵管を子宮の付け根から完全に摘出します (B); 卵管線状切開術 ; 卵管の妊娠部位に切開を加えて卵管内の妊娠組織のみを除去して卵管を温存する方法です この方法では 子宮外妊娠存続症 ( 卵管内に妊娠組織が残ってしまう ) 卵管閉塞 同じ部分に子宮外妊娠を繰り返すといった後遺症を起こすリスクがあります * 卵管に切開を加え内容物を除去し洗浄後 止血縫合しました * 繰り返しになりますが いずれの術式を行うかは 検査結果 卵管の状態 将来の妊娠希望の有無 ご本人の希望 後遺症などの可能性を総合的に検討し 十分な説明と相談をして決定するようになり ます * 卵巣出血 ; 卵巣出血は 文字通り 卵巣から腹腔内に出血する状態です 突然の腹痛で発症する疾患です 排卵時に卵巣皮膜の血管が破綻して起こる場合と 黄体嚢胞 ( または血腫 ) が破裂して起こる場合とがあります 出血量が少量であれば経過観察も可能ですが ある程度より多い出血の場合や 腹腔内の出血が増加している ( 出血が持続している ) 場合には手術の適応となります 大量の出血でショック症状を示している症例以外は腹腔鏡下手術の適応となります

9 大量の腹腔内出血卵巣嚢腫 ( 血腫 ) 破裂による出血卵巣表面血管の破綻による出血 術式 : 卵巣腫瘍と同様の方法で 出血 ( 破裂 ) 部位の血腫 ( または嚢腫 ) を除去して縫合や電気メスで止 血します 腹腔内を生理食塩水で十分に洗浄し 溜まっていた血液をきれいに除去します * 子宮内膜症 ; 子宮内膜症は 子宮内膜細胞が子宮以外の場所に発育する疾患です 卵巣にできて腫瘤を形成したものが卵巣チョコレート嚢胞 子宮筋層内にできたものが子宮腺筋症といわれます その他どこにでも発症する可能性があり 子宮の後方 ( ダグラス窩 ) や卵巣周囲に発生して強い癒着を形成することもあります ごく稀には 腸管や尿管に発症して出血 ( 下血 ) や狭窄の原因となることもあります 月経痛 過多月経 排便痛や性交痛などの症状の原因となる病気です 子宮内膜症の治療法には薬物療法と外科的療法 ( 手術 ) とがあります 外科的療法では 内膜症の病巣のみを除去する手術 卵巣あるいは子宮を摘出する手術 癒着を剥離する手術などがあります 内膜症の程度 ( 重症度 ) によりますがこれらの手術が腹腔鏡下で実施できます * 不妊症 ; 不妊症で 子宮卵管造影検査で異常所見のある方 原因不明で長期間の不妊の方 子宮内膜症が原因ではないかと思われる方などが腹腔鏡の適応となります 腹腔鏡下に 不妊の原因検索 卵管開口術 癒着剥離術 子宮内膜症病巣除去術 腹腔内洗浄等を行ないます # 単孔式または 2 孔式腹腔鏡手術 (Reduced port laparoscopy) について : 近年 さらなる低侵襲と美容上の観点から 腹腔鏡下手術の手術創の数や大きさを減ずる腹腔鏡 (1 つまたは 2 つの創で行う腹腔鏡下手術 ) の試みが行われてきております 当院でも安全性と確実性に留意しながら症例によってこれらの術式を取り入れてきております 子宮鏡下手術 : 子宮鏡とは 子宮口から子宮の内腔に直接スコープ ( カメラ ) を挿入して子宮内腔を観察し 病変部分を切除する手術です 子宮内腔に突出する腫瘍性疾患である粘膜下子宮筋腫や子宮内膜ポリープが子宮鏡下手術の主な適応疾患となります また 子宮奇形や子宮内腔癒着症に行なわれることもあります 当院では子宮鏡下の手術は主に腰椎麻酔下で行なっております 適応 :

10 子宮内腔に突出する粘膜下子宮筋腫または子宮内膜ポリープで 過多月経や不正出血等の症状を有する方 あるいは 不妊症の原因となっていると思われる方などが主に子宮鏡下手術の適応となります 術式 : 下の模式図のように 子宮鏡を経腟的に子宮内腔に挿入し 子宮内をよく観察した後 先端に付属 した電気メスを用いて粘膜下筋腫または内膜ポリープを切除します [ 新女性医学体系 ( 中山書店 ) より引用 ] * 子宮内膜ポリープ * 粘膜下子宮筋腫 * 切除後の子宮内腔 合併症について : 子宮鏡下手術での合併症発生の可能性 頻度等に関しましては 上記の腹腔鏡下手術の合併症の項 目で説明致しました通りです 入院期間 : 原則として 手術前日の午後に入院していただきます 手術前には最終的に手術内容 方法 合併症等に関して詳しく説明いたします 手術翌日から歩行 食事が可能となり 術後 5 日目に退院の予定となります おわりに : 以上 当院産婦人科での内視鏡下手術に関する概要をお示しいたしました 本ホームページが婦人科疾患を有する患者様の治療法選択の一助となれば幸いと思っております 婦人科内視鏡下手術に関しまして何か不明な点や質問等がございましたら 医師またはスタッフまでお気軽にお問い合わせ下さい 実施責任者 : 矢澤浩之 ( 日本産科婦人科内視鏡学会技術認定医 )

11 腹腔鏡手術に関する説明と同意書 福島赤十字病院産婦人科 予定手術 :( 卵巣腫瘍摘出術子宮筋腫核出術子宮全摘術その他 ) 腹腔鏡下手術とは 腹壁に数ヶ所小さな孔をあけて そこからスコープ ( 内視鏡カメラ ) や鉗子を入れて手術を行なう方法です 腹壁の創は 臍周囲と左右の下腹部に 3~4 ヶ所必要になります 炭酸ガスで腹腔内を膨らませてスペースを作り スコープから映し出された映像を見ながら下腹部から挿入された鉗子を用いて腹腔内で手術を行なう方法です 全身麻酔下で行なわれます A) 合併症について手術に際しては 腹腔鏡手術に限らず以下のような合併症や後遺症が発生する可能性があります 1). 開腹手術の可能性 ; 手術中に予期しない出血や癒着があった場合やその他の理由で 開腹手術に移行する必要性が生じることがあります 2). 輸血の可能性 ; 手術中や手術後に予期しない出血や止血困難な状態となり出血量が多くなってしまった場合には輸血が必要になることもあります 輸血に関する詳しい説明は別紙にて入院後に行ないます 手術に際しましては 事前に輸血同意書にサインをしていただくことが必要になります 3). 深部静脈血栓症 肺塞栓症の可能性 ; 骨盤から下肢の深部にある大きな静脈に血栓が形成されて閉塞してしまうのが深部静脈血栓症です この血栓の一部が心臓から肺の動脈につまってしまうのが肺塞栓症です 非常に稀ではありますが重篤な合併症で致命的となるケースもあります 血栓症予防のために 当院では術前からの弾性ストッキングの着用と術中術後の下肢の空気マッサージ ( フットポンプ着用 ) を行います 4). 他臓器損傷 ; 癒着などがあった場合 子宮や卵巣の周囲にあるに腸管 膀胱 尿管 大血管などの臓器を損傷する可能性があります これらの臓器に損傷が生じた場合には それぞれの専門診療科と協力して万全の処置を行ないます 5). 病理診断について ; 全ての摘出物は病理診断へ提出し最終確定診断といたします 病理診断の結果が術前の予想と異なる場合もあります 診断が悪性腫瘍または境界悪性腫瘍であった場合には 結果により術後の治療 ( 再手術や化学療法 ) が必要になる場合もあります 6). 腹壁血管損傷 ; カメラや鉗子の挿入時に腹壁の血管の損傷が起こる可能性もあります 7). 皮下気腫 ; 気腹に伴う合併症で 腹腔内に注入した炭酸ガスが皮下に漏れてしまう状態です 通常は数時間の経過で改善します 8). ガス塞栓 ; 気腹に伴う合併症で現在はほとんどありませんが 発症すると致命的になることがあり集中治療を要します

12 9). その他 ; その他の合併症として 感染 ( 発熱など ) 腸閉塞 創の縫合不全などの可能性もあります 出血や他臓器損傷などの重篤な合併症が手術後の発生した場合には再手術が必要になる可能性もあり ます 当科でのこれまでの合併症発生頻度 : 2001 年 10 月から 2011 年 12 月までに当院で行なわれた内視鏡下出術件数は 腹腔鏡下手術が 1222 件 子宮鏡下手術が 153 件 合計で 1375 件でした このうちで 開腹手術へ移行したのは 108 件 (7.9%) でした 開腹移行例は年々減少しており 2001 年では 164 件中 8 件 (4.9%) でした またその他の主な合併症の発生頻度は以下の通りです * 腹腔鏡下手術 (1222 件中 ); 腹壁血管損傷 :6 件 (0.44 %) 腸管損傷 :4 件 (0.29%) 重症皮下気腫 膀胱損傷 術後の出血 ( 輸血を要し症例 ): それぞれ 1 件 (0.07 %) * 子宮鏡下手術 (133 件中 ); 子宮穿孔 :2 件 (1.3%) これらの合併症等により再手術を要した症例はこれまでのところはありません 深部静脈血栓症 肺塞栓症やガス塞栓症などの重篤な合併症はこれまでは発生しておりません 手術をお受けになる際にはこれらの合併症 後遺症が発生する可能性があることをご理解いただきた いと思います B) 手術記録について : 手術時の腹腔内様子は診療記録のひとつとして写真 ビデオ等に記録しております 写真は手術後にご家族に説明を行なう際にご覧いただくものですが 原則としてお渡ししたりコピーをしたりすることはできません ( カルテと一緒に保管します ) また これらの画像は患者様の氏名などのプライバシーを伏せた状態で学会や研究会などで使用させていただく場合もあります なお 撮影できないこともあり ご覧いただけない場合もあります これらのことをあらかじめご了承下さい 上記の事項について十分理解いたしましたので 同意いたします 平成年月日患者氏名 : 家族氏名 : 説明医師 :