3 被控訴人は, 中古自動車及びその部品等の売買契約の締結をしようとし, 又は自動車の修理 整備等の請負契約を締結しようとして, 被控訴人宛来店或いは電話, メールその他の手段で連絡をしてくる別紙顧客情報目録記載の者に対し, 中古自動車及びその部品等の売買契約の締結, その締結方の勧誘, 又は自動車

Similar documents
平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

最高裁○○第000100号

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

25 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 5 訴訟費用は, 第 1,2 審とも, 被控訴人らの負担とする 6 仮執行宣言第 2 事案の概要 1 本件は, 服飾品の販売等を業とする控訴人が, 控訴人の従業員であった被控訴人 Y2 及び同 Y3 が控訴人を退職し, 被控訴人 Y1 が経

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

最高裁○○第000100号

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

(イ係)

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

 

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

事実及び理由控訴人補助参加人を 参加人 といい, 控訴人と併せて 控訴人ら と呼称し, 被控訴人キイワ産業株式会社を 被控訴人キイワ, 被控訴人株式会社サンワードを 被控訴人サンワード といい, 併せて 被控訴人ら と呼称する 用語の略称及び略称の意味は, 本判決で付するもののほか, 原判決に従う

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

21855F41214EA DB3000CCBA

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

賦課決定 ( 以下 本件賦課決定 といい, 本件更正と併せて 本件更正等 という ) を受けたため, 本件更正は措置法 64 条 1 項が定める圧縮限度額の計算を誤った違法なものであると主張して, 処分行政庁の所属する国に対し, 本件更正等の一部取消し等を求める事案である 原審は, 控訴人の請求をい

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

式会社 (A) の債務に係る保証債務及び清算人を務める株式会社 (B) の債務の履行にそれぞれ充てた控訴人が 上記各債務の履行に伴って生じた求償権を一部行使することができなくなったとして これに相当する金額につき 譲渡所得の金額の計算上なかったものとみなす所得税法 ( 法 )64 条 2 項の規定を

0 月 22 日現在, 通帳紛失の総合口座記号番号 特定番号 A-B~C 担保定額貯金 4 件 ( 特定金額 A): 平成 15 年 1 月 ~ 平成 16 年 3 月 : 特定郵便局 A 預入が証明されている 調査結果の回答書 の原本の写しの請求と, 特定年月日 Aの 改姓届 ( 開示請求者本人

4 処分行政庁が平成 25 年 3 月 5 日付けでした控訴人に対する平成 20 年 10 月 1 日から平成 21 年 9 月 30 日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金 4 億 万 6054 円を下回る部分を取り消す 5 処分行政庁が平成 25 年 3 月

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

いう ) に対し, 本件周辺道路整備工事の係る公金の支出 ( ただし, 支出命令を除く ) の差止めを求めるとともに, 文京区と東京大学との間で締結した 小石川植物園と区道の整備に関する基本協定書 による本件周辺道路整備工事に関する基本協定 ( 以下 本件基本協定 という ) に基づく年度毎の協定の

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

Microsoft Word - ○指針改正版(101111).doc

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

PowerPoint プレゼンテーション

第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙原告商標目録記載の各商標権を有し, その各登録商標を自己の商品等表示として使用する控訴人が, 被控訴人は, インターネット上の検索エンジンにおける検索結果表示画面の広告スペースに, 原判決別紙表示目録記載の文言に自社サイトへのハイパーリンクを施す

諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

平成23年12月17日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

従業員 Aは, 平成 21 年から平成 22 年にかけて, 発注会社の課長の職にあり, 上記事業場内にある発注会社の事務所等で就労していた (2) 上告人は, 自社とその子会社である発注会社及び勤務先会社等とでグループ会社 ( 以下 本件グループ会社 という ) を構成する株式会社であり, 法令等の

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

査請求人 ) が 平成 5 年分所得税確定申告書 ( 以下 本件請求保有個人情報 1 という ) の開示を求めるものである 処分庁は, 本件開示請求に対し, 本件請求保有個人情報 1は文書保存期間 (7 年 ) が満了し, 既に廃棄しているとして, 平成 27 年 12 月 2 2 日付け特定記号第

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

主 文 本件控訴を棄却する 控訴費用は, 控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 外務大臣が控訴人に対して平成 18 年 4 月 27 日付けでした行政文書の開示請求に係る不開示決定 ( 情報公開第 号 ) を取り消す 3 訴訟費用は, 第 1,2 審を通じ,

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

<4D F736F F D2095BD90AC E D738CC2816A939A905C91E D862E646F63>

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

8FDEC4DDAFB890A249256E BC

イ -3 ( 法令等へ抵触するおそれが高い分野の法令遵守 ) サービスの態様に応じて 抵触のおそれが高い法令 ( 業法 税法 著作権法等 ) を特に明示して遵守させること イ -4 ( 公序良俗違反行為の禁止 ) 公序良俗に反する行為を禁止すること イ利用規約等 利用規約 / 契約書 イ -5 (

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

最高裁○○第000100号

2 当事者の主張 (1) 申立人の主張の要旨 申立人は 請求を基礎づける理由として 以下のとおり主張した 1 処分の根拠等申立人は次のとおりお願い書ないし提案書を提出し 又は口頭での告発を行った ア.2018 年 3 月 23 日に被申立人資格審査担当副会長及び資格審査委員長あてに 会長の経歴詐称等

民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

270826答申について

国籍確認請求控訴事件平成 12 年 11 月 15 日事件番号 : 平成 12( 行コ )61 大阪高等裁判所第 4 民事部 裁判長裁判官 : 武田多喜子 裁判官 : 正木きよみ 松本久 原審 : 大阪地方裁判所平成 11 年 ( 行ウ )54 < 主文 > 一. 原判決を 取り消す ニ. 訴訟費用

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

平成  年(あ)第  号

平成  年(オ)第  号

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

それぞれ改める 原判決 7 頁 9 行目の 国の機関 から同頁 14 行目末尾までを次のとおり改める 国の機関, 独立行政法人等, 地方公共団体又は地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって, 公にすることにより, 次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上, 当該事務又は事業の適正

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

非常に長い期間, 苦痛に耐え続けた親族にとって, 納得のできる対応を日本政府にしてもらえるよう関係者には協力賜りたい ( その他は, 上記 (2) と同旨であるため省略する ) (4) 意見書 3 特定個人 Aの身元を明らかにすること及び親子関係の証明に当たっては財務省 総務省において, 生年月日の

の対象として 人事院事務総長引継書 を特定し, 同年 9 月 29 日付け行政文書開示決定通知書を審査請求人に送付した 2 審査請求人が主張する本件審査請求の趣旨及び理由審査請求人は, 事務引継書が1 名分しか存在しないという決定は不自然である, 他の職員についても事務引継書がなければ, 前任者から

拍, 血圧等 ) を, ユーザー本人または当社の提携先からと提携先などとの間でなされたユーザーの個人情報を含む取引記録や, 決済に関する情報を当社の提携先 ( 情報提供元, 広告主, 広告配信先などを含みます 以下, 提携先 といいます ) などから収集することがあります 4. 当社は, ユーザーが

F6B746A854C

録された保有個人情報 ( 本件対象保有個人情報 ) の開示を求めるものである 処分庁は, 平成 28 年 12 月 6 日付け特定記号 431により, 本件対象保有個人情報のうち,1 死亡した者の納める税金又は還付される税金 欄,2 相続人等の代表者の指定 欄並びに3 開示請求者以外の 相続人等に関

被告は 高年法 9 条 2 項に規定する協定をするため努力したにもかかわらず協議が調わ なかったものと認めることはできず 本件就業規則 29 条が高年法附則 5 条 1 項の要件を具 備していないというべきである 本件継続雇用制度の導入を定める本件就業規則 29 条は 手続要件を欠き無効であり 原

Transcription:

平成 30 年 11 月 22 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 10047 号不正競争行為差止請求控訴事件 ( 原審 : さいたま地方裁判所川越支部 平成 27 年 ( ワ ) 第 565 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 20 日 判 決 控訴人 ( 第 1 審原告 ) 株式会社オーベイオート 同訴訟代理人弁護士寺島哲 備藤拓也 被控訴人 ( 第 1 審被告 ) 欧米自動車株式会社 同訴訟代理人弁護士山田宰 桐山直之 高田怜奈 主 文 1 本件控訴を棄却する 2 控訴費用は控訴人の負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 別紙顧客情報目録記載の者に対し, 面会を求め, 電話をし又は郵便物を送付するなどして, 中古自動車及びその部品等の売買契約, その締結方の勧誘, 又は自動車の修理 整備等の請負契約の締結, その締結方の勧誘, 及びこれらに付随する営業行為をしてはならない 1

3 被控訴人は, 中古自動車及びその部品等の売買契約の締結をしようとし, 又は自動車の修理 整備等の請負契約を締結しようとして, 被控訴人宛来店或いは電話, メールその他の手段で連絡をしてくる別紙顧客情報目録記載の者に対し, 中古自動車及びその部品等の売買契約の締結, その締結方の勧誘, 又は自動車の修理 整備等の請負契約の締結, その締結方の勧誘, 及びこれらに付随する営業行為をしてはならない 4 被控訴人は, その営業において OHBEI という標章を使用してはならない 5 被控訴人は, 別紙顧客情報目録記載の顧客名簿の写しを廃棄せよ 6 被控訴人は,HDD,SSD,CD-ROM,DVD-ROM,USBメモリ等の電磁的記録媒体に記録された別紙顧客情報目録記載の情報を削除せよ 7 被控訴人は, 控訴人に対し,2000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 17 日から支払済みまで年 6パーセントの割合による金員を支払え 8 訴訟費用は, 第 1,2 審を通じて, 被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 ( 略語は特に断らない限り原判決の例による ) 1 事案の要旨本件は, 控訴人が, 控訴人の元従業員らが設立した会社である被控訴人に対し, 被控訴人は, 控訴人の元従業員らが在職中に控訴人代表者に無断で持ち出した控訴人の顧客情報からなる営業秘密を使用して営業行為を行っており, また, 控訴人の周知な標章又は営業表示である OHBEI, OHBEI A UTO 及び OHBEI-AUTO ( 以下, これらを総称して 本件控訴人表示 という ) と同一又は類似の OHBEI との標章を店舗外看板に掲げる等して控訴人の営業と混同させる行為を行っていると主張して, 不正競争防止法 2 条 1 項 1 号, 同項 4 号, 同法 3 条に基づき,1 別紙顧客情報目録記載の者に対する営業行為の差止め,2 別紙顧客情報目録記載の情報の廃棄等, 3 OHBEI という標章の使用の差止めを求めるとともに,4 被控訴人の 2

上記各不正競争行為によって損害を被ったと主張して, 同法 4 条に基づき,2 000 万円 ( 原審での請求額 6053 万 1984 円を当審において減縮した ) の損害賠償金の支払及びこれに対する不法行為の日以後である平成 27 年 9 月 17 日 ( 訴状送達の日の翌日 ) から支払済みまで商事法定利率年 6パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案である 原判決は, 被控訴人による営業秘密不正取得行為及び周知表示混同惹起行為があったと認めることができないとして, 控訴人の請求をいずれも棄却した そこで, 控訴人は, 原判決を不服として, 本件控訴を提起した 2 前提事実後記 (1) 及び (2) のとおり改めるほかは, 原判決 事実及び理由 第 2 事案の概要 1(2 頁 23 行目から4 頁 5 行目まで ) に記載のとおりであるから, これを引用する (1) 原判決 3 頁 2 行目の 川越市 の後に 大字 を加える (2) 原判決 3 頁 26 行目の 一覧 の後に 表 を加える 3 争点及び争点に関する当事者の主張本件の争点は,(1) 被控訴人による営業秘密不正取得行為の有無,(2) 被控訴人による周知表示混同惹起行為の有無,(3) 控訴人の損害及びその額であるところ, 各争点に関する当事者双方の主張の要旨は, 次のとおりである (1) 争点 (1)( 被控訴人による営業秘密不正取得行為の有無 ) について ( 控訴人の主張 ) ア控訴人が保有する顧客名簿の営業秘密該当性控訴人は, ブロードリーフのサーバーで 得意先 車両自由検索一覧表 ( 得意先 ) との名称のフォームで管理されていた顧客情報であって, 別紙顧客情報目録記載の顧客名簿 ( 以下 本件顧客名簿 ) を保有している 本件顧客名簿は, 控訴人代表者であるAが, 控訴人の前身といえる欧米自動車工業株式会社からその営業を譲り受ける際に, 多額の費用を支払っ 3

て買い受けた同社の顧客に関する情報に, その後, 控訴人が自ら多額の広告費等をかけて新規に開拓した顧客に関する情報を加えた, 業務上有用なものである また, 本件顧客名簿は, ブロードリーフのサーバーに保存され, これにアクセスするにはパスワード等を入力する必要があった このように, 本件顧客名簿は, 秘密として管理されていた上に, 公然と知られたものではない したがって, 本件顧客名簿は不正競争防止法 2 条 6 項の営業秘密に該当する イ元従業員らによる不正取得行為 ( ア ) 元従業員らは, 平成 25 年 6 月ころ, 控訴人設置のパソコンのパスワードを無断で変更し,Aが本件顧客名簿にアクセスすることができないようにした その上で, 平成 26 年 2 月 14 日, 同月 21 日, 同年 4 月 14 日, 同月 16 日, 同月 19 日 ( 当審における追加主張 ) 及び同月 2 5 日に, 本件顧客名簿にアクセスし, その情報を印刷して持ち出した 元従業員らは, 業務遂行のためにアクセスしたにすぎないと主張するが, 同人らは, 平成 26 年 2 月中旬ころには, 控訴人の業務をほとんどしていなかった 仮に業務上確認する必要があったとしても, パソコンで確認すれば足りるのであるから, 複数回にわたって本件顧客名簿の全てを印刷する必要はない ( イ ) また, 元従業員らは, 平成 26 年 2 月 14 日, 本件顧客名簿をPDF 化して持ち出した 被控訴人は, 情報を画面に表示するだけでPDF 出力との履歴が残ると主張するが, ブロードリーフのシステムでは,PD F 出力をすることなく, 顧客情報や車両情報を画面上で閲覧できるから, わざわざ PDF 出力 というボタンを押すという行為自体, 通常業務では考えられない不自然なものである したがって, 元従業員らがPD 4

F 出力をしたのは,PDF 化した情報を他の記録媒体等に保存するためであったことが強く推認される ( ウ ) Aは, 平成 25 年 7 月以降, 控訴人の経営再建のための方策を模索しており,Bに対し, 十分な金額が提示されるのであれば,Bらが引き合わせるスポンサー候補者に事業譲渡をしてもよいと伝えていた しかし, 当該スポンサー候補者の提示額が安く,A が事業譲渡を断ったことから, これを知ったBらは, 控訴人から事業譲渡を受けることが難しいと判断し, 独立を見越して, 控訴人設置のパソコンのパスワードを開示しなくなった上,Aに無断で被控訴人を設立した このように, 平成 26 年 2 月中旬の時点で, 元従業員らが控訴人の顧客情報などを取得する必要性があったことは明らかである そして, 被控訴人は, 上記のようにして持ち出した本件顧客名簿を使用して営業行為を行っている ウしたがって, 被控訴人の上記行為は, 不正競争防止法 2 条 1 項 4 号の不正競争行為に当たる ( 被控訴人の主張 ) ア本件顧客名簿が営業秘密に該当するとの主張について控訴人事務所内に設置されていたパソコンにはパスワードが設定されていたものの,A を含め, 控訴人の従業員らは, 皆パスワードを知っており, ダイレクトメールの送付等業務上の必要がある場合には, 顧客の情報にアクセスすることができた また, 従業員らは, 自分の従業員コードでブロードリーフのサーバーにログインした後, そのままログインした状態にしておくことがたびたびあり, その間, 他の従業員がその状態を利用して作業するのが常態であった このように, 本件顧客名簿は, 秘密として管理されていなかったから, 不正競争防止法 2 条 6 項の営業秘密に当たらない 5

イ元従業員らによる不正取得行為に関する主張について控訴人は, 平成 26 年 4 月 30 日まで, 通常業務を行っていた 同年 2 月 14 日, 同月 21 日, 同年 4 月 14 日, 同月 16 日及び同月 25 日にされた控訴人の顧客情報の印刷は, 控訴人の通常業務の一環として行われたものである 控訴人は, 元従業員らが控訴人の顧客情報をPDF 化して持ち出したとも主張するが, 元従業員らはこれを持ち出していない ブロードリーフのシステムでは, 顧客情報等のデータをパソコンで確認するとP DF 出力という履歴が残るから, かかる履歴があるからといって, 直ちに顧客情報が PDF 化されて持ち出された ことにはならない なお, 元従業員らは, まだ控訴人において稼働していた平成 26 年 4 月 19 日に, 控訴人の顧客情報を利用して, 元従業員らが担当していた顧客 250 人分 ( 元従業員 1 人につき30 人 ) の情報をラベルシールに印刷した上で, 被控訴人開業の挨拶状の宛名として貼付し発送したが, これはA の承諾を得て行ったものである (2) 争点 (2)( 被控訴人による周知表示混同惹起行為の有無 ) について ( 控訴人の主張 ) ア ( ア ) 控訴人は, 予てから OHBEI AUTO を屋号として使用するとともに, 本件控訴人表示を店舗外看板, 名刺, 封筒, 自動車整備士のツナギ, 社用車, 広告等に使用していた ( イ ) 控訴人のような自動車 自動車部品 自動車用品, 自動車用機械工具の輸出入業並びに販売を業とする会社は, 川越市及び隣接する上尾市でも多くない また, 控訴人の顧客は営業所のある地域だけでなく, 近隣地域にも多い さらに, 従前の顧客が複数回繰り返し来店して固定された顧客となっていく業種でもある オーベイオート, OHBEI-AUTOS との名称は, 控訴人が平成 16 年 4 月に欧米自動車工業株式会社から営業を譲り受ける以 6

前から同社において長年使用されて営業に用いられており, 控訴人が営業を譲り受けた際の営業譲渡契約においても, 以後控訴人がこれらの名称を引き継いで表示することが譲渡代金に含まれている旨が明示されていた これを受けて, 控訴人は, 自社の広告などにも, OHBEI A UTO, OHBEI との表示を用いてきた ( ウ ) 以上のとおり, 本件控訴人表示は, 川越市及び上尾市において, 控訴人の業務に係る標章又は営業表示として周知のものである イ被控訴人は, 本件控訴人表示と同一又は類似の標章である OHBEI を, 被控訴人の店舗外看板, 封筒, 名刺, 従業員のツナギ, 顧客に頒布するステッカー, 社用車のほか, 自社のメールアドレスに使用している この被控訴人の行為は, 顧客に対し, あたかも控訴人と連続性を有する営業であるかのように装い, 控訴人の営業と混同を生じさせるものであるから, 不正競争防止法 2 条 1 項 1 号の不正競争行為に当たる ( 被控訴人の主張 ) ア ( ア ) 控訴人が, OHBEI という標章を店舗外看板, 名刺, 封筒, 社用車等に使用していたこと, OHBEI-AUTO という標章を使用していたことは認める しかし, 控訴人が OHBEI AUTO という標章を使用していたことは否認する また, 被控訴人の従業員らが控訴人に在籍していた当時, OHBEI との記載があるツナギはなかった ( イ ) OHBEI という表示は, 字体や形状に特色がなく, 埼玉県内でも所沢市の他の業者が OHBEI CARS との営業表示を使用している このように, OHBEI という表示は汎用されており, 控訴人を表すものとして需要者の間に広く認識され, 周知されているとはいえない イ被控訴人は, 店舗を開店した平成 26 年 7 月から, 店舗外看板, ツナギ, 7

封筒, 名刺, 社用車及び自社のメールアドレスに OHBEI という文字を使用していたことがあった しかし, 被控訴人は, 平成 28 年 3 月ころに, 当該店舗外看板を撤去したほか, 社用車については同年 7 月ころに, ツナギについては平成 29 年 6 月ころに, それぞれ OHBEI という文字の使用を止めた また, 被控訴人は, 平成 29 年 9 月に, 店舗を上尾市から川越市に移転した際, 店舗外看板を 欧米自動車 と表記するようにした さらに, 海外との取引における被控訴人の表記を, OHBEI JIDOSHA から Oubei Co.,Ltd に変更したし, メールアドレス及びホームページのURLも, oubei を用いるものに変更済みである このように, 被控訴人は, 現在, OHBEI という標章を使用していない ウ日本における外国車の輸入先は, 専らヨーロッパやアメリカ, すなわち 欧米 であるから, 外国車を取り扱っている業者であれば, これをローマ字で OHBEI と表記することは何ら特別なことではない また, 被控訴人は, 海外とも取引をしており, 自社のローマ字表記は, 必然的に OHBEI JIDOSHA CO.LTD. とせざるを得なかった したがって, 仮に被控訴人による OHBEI の使用が不正競争防止法 2 条 1 項 1 号の不正競争に当たるとしても, これは普通名称を普通に用いられる方法で使用又は表示するものにすぎず, 同法 19 条 1 項 1 号に当たる (3) 争点 (3)( 控訴人の損害及びその額 ) について ( 控訴人の主張 ) 控訴人の売上げは, 平成 26 年 3 月期において約 2 億 9000 万円であったが, 平成 27 年 3 月期にはその10 分の1にも満たない約 2800 万円に 8

まで激減し, 経常利益が6305 万 0809 円から,251 万 8825 円に減少した 控訴人は, 被控訴人の上記各不正競争行為によって, 経常利益の減少分 6 053 万 1984 円の損害を被った ( 被控訴人の主張 ) 控訴人における売上げの減少は, 被控訴人の不正競争行為によるものではない 控訴人は, 従業員 8 名を雇用して営業していたが, 平成 26 年 3 月 2 9 日, 全ての従業員に対して解雇予告をし, その頃から積極的な営業をしていなかった また, 控訴人は, 同年 6 月から,( 住所省略 ) に店舗を移転して営業を再開したが, 取り扱っている車種, 台数はかつてとは同等ではなく, 従業員も雇用せず, 控訴人代表者が一人で営業をしていたものであった したがって, 人的, 物的に以前と同程度の営業ができるはずはなく, その売上げが減少するのは当然のことである 第 3 当裁判所の判断 1 当裁判所も, 控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する その理由は, 以下のとおりである 2 認定事実後記 (1) 及び (2) のとおり改めるほかは, 原判決 事実及び理由 第 3 当裁判所の判断 1 認定事実 (7 頁 15 行目から12 頁 11 行目まで ) に記載のとおりであるから, これを引用する (1) 原判決 11 頁 13 行目冒頭の 及び同年 4 月 25 日 を, 同年 4 月 19 日及び同月 25 日 と改める (2) 原判決 12 頁 10 行目の 商号として表示し を 営業表示として使用し と改める 3 争点 (1)( 被控訴人による営業秘密不正取得行為の有無 ) について (1) 事案に鑑み, まず, 元従業員らによる不正取得行為の有無について検討す 9

る ア ( ア ) 控訴人は, 元従業員らが, 平成 26 年 2 月 14 日, 同月 21 日, 同年 4 月 14 日, 同月 16 日, 同月 19 日及び同月 25 日に, 本件顧客名簿にアクセスし, これを印刷して持ち出したと主張する そこで検討するに, 引用に係る原判決第 3,1(12) のとおり, ブロードリーフのサーバーのログに, 平成 26 年 2 月 14 日, 同月 21 日, 同年 4 月 19 日及び同月 25 日付けで, 操作内容を 自由検索一覧 ( 得意先 ) の印刷を行いました とする履歴, 同年 4 月 14 日及び同月 16 日付けで, 操作内容を 自由検索一覧 ( 車両 ) の印刷を行いました とする履歴, 同年 2 月 14 日付けで, 操作内容を 自由検索一覧 ( 得意先 ) のPDF 出力を行いました とする履歴がそれぞれ記録されていることが認められる しかし, 同 (11) のとおり, 元従業員らは, 平成 26 年 4 月末ころまで, 残務整理のほか, 通常業務を行っていたと認められるところ, 顧客からの問い合わせに対応したり, 顧客に対する通知をしたりするために, ブロードリーフのサーバーに保存されている顧客情報にアクセスし, 得意先や車両に関する事項に基づいて検索操作をすることは, 控訴人の業務を遂行するために通常行われる行為であるというべきであるから, 得意先や車両に関する事項に基づいて検索操作がされ, その検索結果の一覧が印刷されたとか,PDF 形式で出力されたとの一事をもって, 当該各行為が不正に営業秘密を取得する行為であると断ずることはできない また, 元従業員らが, これらの機会に印刷した書類等を社外に持ち出したことを認めるに足りる的確な証拠も見当たらない ( イ ) この点に関連して, 控訴人は, ブロードリーフのシステムでは,PD F 出力をすることなく, 顧客情報や車両情報を閲覧することができるから, わざわざ PDF 出力 をしたのは, 他の記録媒体等に保存するた 10

めであったと主張する しかし, 情報処理システムにおいて, 他の記録媒体等にデータを保存したり, 複製したりすることを目的としてPDF 形式で出力する場合があることは否定できないものの,PDF 形式で出力する目的がそれに限定されるものでないことは明らかである そして, ブロードリーフのシステムに関し, 被控訴人関係者は, 氏名と電話番号程度の簡単な顧客情報だけであれば,PDF 出力することなく画面上で確認できるものの, 住所, 車両の登録番号, 車種, 車検時期及び検査履歴等を見るためには,PDF 形式で出力しなければならないと陳述している ( 乙 27) ところ, この陳述の信用性を否定し, ブロードリーフのシステムにおいては, 他の記録媒体等に保存する場合以外に, PDF 形式で出力することが予定されていなかったと認めるに足りる証拠はない したがって, この点についての控訴人の主張を採用することはできない ( ウ ) 以上によれば, 元従業員らの上記各行為が, 不正な取得行為に当たるということはできない イ次に, 元従業員らが, 平成 26 年 4 月 19 日に, 控訴人の顧客情報を利用して, 顧客 250 人分について, ラベルシールに印刷した上で, 被控訴人開業の挨拶状の宛名として貼付し発送した行為について検討する 乙 2の2(15~16 頁 ) によれば, 平成 26 年 4 月 8 日に行われたA とBの話合いにおいて, 既に両者が別々に事業を行うこととし, そのために, それぞれが懇意にしている顧客に案内状を送付することを視野に入れた話合いがされていることがうかがわれるところ, 引用に係る原判決第 3, 1(11) のとおり,A とBが同月 16 日に話合いをした際,A は,B に対し, 元従業員らが懇意にしている顧客をAが引き継ぐことは無理であるとして 11

( 乙 3の2 4 頁 ), 元従業員らが, 各自が懇意にしている顧客に被控訴人開業の挨拶のダイレクトメールを発送するために, 控訴人の顧客情報の一部を使用することに関し,Aの顧客と重複しても構わないとした上で, 大人のマナーで行こうよ などと述べ, さらに,Bが じゃあ, 社長も, そういう, それは了承してくれるっていうことで, いいわけですね と尋ねたのに対し, はがきを出すのはな と答えている( 同 5 頁 ) そうすると, 上記の会話によれば,Aは, 元従業員らが懇意にしていた顧客については, 従業員らが被控訴人開業の挨拶のダイレクトメールを発送する目的で控訴人の顧客情報を使用することを承諾したと認めるのが相当である そして, その後, 平成 26 年 4 月 19 日に元従業員らが控訴人の顧客情報から選別してラベルシールに印刷した顧客の中に, 元従業員らが懇意にしていた顧客以外の者が含まれていたと認めるに足りる証拠はない ( なお, 元従業員らが印刷した顧客数は250 名程度であったところ, 元従業員らが合計 8 名であり, 控訴人の設立以前から勤務していたことを考慮すると, この数が過度に多いとまでいえず, 元従業員らが懇意にしていた顧客に限定して印刷したことと矛盾しない ) し,BがA 用の顧客リストをAの机の上に置いておいた ( 被控訴人代表者本人 ) のに対し,Aが顧客の数が少ないとか,Aの客が入っていないなどといった異議を述べたことをうかがわせる証拠はない したがって, 元従業員らの上記行為についても, 不正な取得行為に当たるということはできない (2) 以上によれば, その余の点について認定, 判断するまでもなく, 被控訴人による営業秘密不正取得行為に基づく請求は理由がない 4 争点 (2)( 被控訴人による周知表示混同惹起行為の有無 ) について (1) 控訴人は, 本件控訴人表示は, 川越市及び上尾市において, 控訴人の業務 12

に係る標章又は営業表示として周知のものであると主張する アそこで検討するに, 引用に係る原判決第 3,1(1) 及び (2) のとおり, 控訴人は, 平成 16 年 4 月 1 日, 欧米自動車工業株式会社から, 同社川越支店に係る営業を譲り受け, その際, オーベイオート 及び OHBEI -AUTOS の名称を控訴人に係る営業において引き続き使用することが合意されたこと, 控訴人は, 同日ころから, 旧本店所在地において, O HBEI, OHBEI-AUTOS, OHBEI AUTO の標章を店舗外看板等に掲げる等して, 営業を開始したことが認められる 特に, 旧本店所在地の店舗においては, 道路に面した外壁に意匠化された OHBEI とのかなり大きな標章が掲げられていた( 甲 4) もっとも, 当該標章の使用期間を認めるに足りる的確な証拠はない また, 控訴人は, OHBEI-AUTO との表示がされた封筒を使用していたことが認められるが ( 甲 5), その具体的な使用時期や使用態様, 枚数などを認めるに足りる的確な証拠は見当たらない イ平成 26 年 3 月期 ( 平成 25 年 4 月 1 日から平成 26 年 3 月 31 日まで ) における控訴人の売上高は,2 億 9374 万 0593 円であった ( 甲 11) なお, 引用に係る原判決第 3,1(15) のとおり, 平成 29 年 4 月 19 日の時点において, 川越市内では, 旧本店所在地のままとなっている控訴人を含め,13 の営業所で輸入車の販売が行われているとされているところ, 川越市及び上尾市における控訴人の市場占有率等上記地域において控訴人が占める地位を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない ウ次に, 広告宣伝の状況についてみると, 同 (3) のとおり, 控訴人は, 自社の宣伝, 顧客誘引の方法として, インターネットを利用したり, 川越市の商工会議所等にチラシを配布したりしていたことが認められる しかし, 控訴人のホームページや当該チラシにおいて, 本件控訴人表示がどのように用いられていたのかなど, その具体的な態様は明らかでない上に, ホー 13

ムページの開設時期や開設期間, チラシの配布時期や枚数についても, これを認めるに足りる証拠はない エなお, 控訴人は, 自動車の販売業及び修理業は, 従前の顧客が複数回繰り返し来店して固定された顧客となっていく業種でもあると主張するところ, 仮にそのようなことがいえるとしても, それは控訴人と取引関係のない新規の顧客に対し, 本件控訴人表示を認知してもらうことがより困難になるということにほかならないから, 本件控訴人表示が周知性を有することを積極的に肯定する事情とはいい難い オ以上のとおり, 控訴人は, 平成 16 年ころから, 本件控訴人表示を使用しており, 特に, 旧本店所在地の店舗においては, 道路に面した外壁に意匠化された OHBEI とのかなり大きな標章が掲げられていたことが認められるものの, それ以外の具体的な使用態様を認めるに足りる的確な証拠は見当たらない また, 川越市及び上尾市において控訴人が占める地位や広告宣伝の具体的態様についても, これを認めるに足りる的確な証拠はない そうすると, 本件に現れたその余の事情を考慮しても, 本件控訴人表示が, 川越市及び上尾市において周知のものであると認めるに足りないというべきである (2) したがって, その余の点について認定, 判断するまでもなく, 被控訴人による周知表示混同惹起行為に基づく請求は理由がない 第 4 結論以上によれば, その余の点について認定, 判断するまでもなく, 控訴人の請求をいずれも棄却した原判決は相当であり, 本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 3 部 14

裁判長裁判官 鶴岡稔彦 裁判官 高橋彩 裁判官 間明宏充 15