輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800, , , , , , , ,

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日本 中国間コンテナ荷動きの動向について 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO1206 日本海事センター企画研究部研究員松田琢磨 はじめに ( 公財 ) 日本海事センターでは 日本 中国間コンテナ荷動き ( 以下日中航路 ) のトンベース荷動き量を算出し 11 年 5 月から毎月発表している 今回

平成18年8月31日

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る 韓国の大田には米国キンバリー クラーク社の製品である ハギーズ の工場があるため おもにそれが輸入されているものとみられる 07 年から 12 年までは韓国からの輸入量が日本からの輸入を上回る状況が続いてきた しかし 13 年と 14 年には日本からの輸入が急激に増加し 韓国を逆転した しかも

< 図表 1> 米国の仕出し国 地域別自動車部品輸入実績 ( 単位 :100 万ドル ) 輸出国 シェア 1 メキシコ 11,740 13,692 16,045 17,056 19, % 2 カナダ 7,638 8,253 8,932

と船種によって異なる通航料が適用されている 05 年にはコンテナ船に関する通航料が TEU ベースに変更された コンテナ船通航料を見ると 05 年から 11 年までの間に 95.2%( 年当たり 11.8%) にのぼる値上げが行われており TEU 当たりの通航料は 05 年に 42 米ドルであったが

第1章

平成18年8月31日

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平成18年8月31日

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,798 14, kg ,560 10, kg ,650 2, kg ,400 19, kg ,

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

Ⅰ. 世界海運とわが国海運の輸送活動 1. 主要資源の対外依存度 わが国は エネルギー資源のほぼ全量を海外に依存し 衣食住の面で欠くことのでき ない多くの資源を輸入に頼っている わが国海運は こうした海外からの貿易物質の安定輸送に大きな役割を果たしている 石 炭 100% 原 油 99.6% 天然ガ

アジア近隣 5 カ国における牛乳乳製品の輸入動向 資料 5-2 各国とも輸入額全体に占める脱脂粉乳及び全脂粉乳の割合が高い 高付加価値商品の販売が見込めるチーズ 育児用粉乳等についても各国で一定の割合を輸入 中国の輸入市場は規模が大きく 最近伸びているが割合の小さい LL 牛乳 (2.6%) 市場で

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

年 年 に設定した 世界合計 の輸出金額は 年 3 兆 2,310 億ドルから 年 6 兆 1,930 億ドル 年 14 兆 6,520 億ドルと 4.5 倍に拡大した後 年秋のリーマンショックを契機として 2009 年には前年の約 3/4 に急激に落ち込み その後 徐々に回復が進み 年 16 兆

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2. 利益剰余金 ( 内部留保 ) 中部の 1 企業当たりの利益剰余金を見ると 製造業 非製造業ともに平成 24 年度以降増加傾向となっており 平成 27 年度は 過去 10 年間で最高額となっている 全国と比較すると 全産業及び製造業は 過去 10 年間全国を上回った状況が続いているものの 非製造

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

2007年12月10日 初稿

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沖縄を中心とした我が国のクルーズ市場は今後も成長していくと考えて差し支えないだろ う 日本におけるクルーズ船 未利用者 の選好クルーズ市場のさらなる活性化のためには 新規乗客の開拓が必要である そこで クルーズ船の潜在需要である未利用者がクルーズ船に何を求めているのか分析した結果を紹介したい クルー

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

にかかるコストをまかなえればよいという発想で安い運賃をオファーし 古紙 スクラップ 穀物 パルプなどの輸送を行っていたという話を聞かせていただいたことがある その際にはコンテナ回送の代わりに運賃を極端に低くして貨物を運んだり リーファーコンテナでも電源を入れずにドライコンテナと同じようにして運用する

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企業物流短期動向調査 ( 日通総研短観 ) 調査結果 ( 抜粋 ) (2008 年 9 月調査 ) 2008 年 10 月 株式会社日通総合研究所 ホームページはこちら

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

近畿圏における電気機器の貿易動向 平成 24 年 10 月 22 日大阪税関調査統計課 貿易額推移 近畿圏における電気機器の貿易額は 2000 年に初めて輸出額が 3 兆円を突破し 輸入額が 1 兆円を突破しました 輸出額は 2001 年に一旦減尐しますが その後は右肩上がりで増加し 2005 年に

第2部

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化繊輸入は 近年上昇を続けており 2016 年は前年比 10% 増の 43 万トンとなりました 素材別には ポリエステル F 長繊維不織布が中心ですが 2016 年はポリエステル S の輸入も大幅増となりました 化学繊維輸出推移 化学繊維輸入推移 生産が微減 輸出が横ばい 輸

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第2部

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第2章_プラントコストインデックス

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

特集 切花の輸入 平成 29 年 2 月 24 日東京税関 成田空港の輸入品にも春が来る! 輸入される切花は 菊 と カーネーション で 6 割を占める 毎年 3 月は ばら が輸入のピークを迎える 3 月が最初のピーク 春が近づき 花の話題が増える季節となりました 輸入品においても季節ごとの商品が

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仕出国別 中国来の知財侵害物品の差止件数は 1,131 件であり 仕出国別の構成比では 前年に続き全体の約 8 割 (78.7%) を占めるに至っています 一方 2 位のフィリピン来が構成比 9.7% 3 位の香港来が同 4.8% を占めるにとどまっており 中国来への一極化の傾向にあると言えます な

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シニア層の健康志向に支えられるフィットネスクラブ

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第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

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レバレッジETF・インバースETFについて

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

フ ァ ン ド の 特 色 ハイグレード ハイグレード オセアニア オセアニ ニア ボンド マザーファンド マザーファンド を通じて オーストラリア ドル建ておよびニュージーラ ドル建ておよびニュージーランド ドル 建ての 債券等 に投資します 債券等 には コマーシャル ペーパー等の短期金融商品を

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目 次 Ⅰ. 総括編 1. 世界各地域の人口, 面積, 人口密度の推移と予測およびGDP( 名目 ) の状況 ( 1) 2. 世界の自動車保有状況と予測 ( 5) 3. 世界の自動車販売状況と予測 ( 9) 4. 世界の自動車生産状況と予測 ( 12) 5. 自動車産業にとって将来魅力のある国々 (

高値となった後 下がり始めた 前述の通り CI 一致指数は 生産や雇用など様々な経済指標を統合し算出されている そのため CI 一致指数の上昇 下降にどの指標 が寄与しているのかについても 内閣府は詳細に発表している 表 1は 各指標がCI 一致指数に対してプラスに寄与したのか マイナスに寄与したの

2. 景気後退の影響 (2) 2008 年 10 月以降の世界的な景気後退の影響 ( 業種別 ) 大きなマイナス若干のマイナス影響なし 若干のプラス 大きなプラス 製造業 印刷 出版 (n=14) ゴム製品 (n=35) 金属製品 ( メッキ加工を含む

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2. トピックス 中国 インドを除くアジア主要国の特徴について 中国やインドが高い成長を続けている中にあって 韓国 台湾 タイ インドネシアなどの東南アジアの国々の成長率は過去 7 年間を平均すると 4.3% と安定している しかし 成長率には国によって差があり フィリピン ベトナム インドネシアな

資料1

211 年 2 月 25 日発行 TVI( タス空室インデックス )( 過去 2 年推移 ) ポイント 全域 23 区市部神奈川県埼玉県千葉県 年月 東京都全域 23 区市部 神奈川県 埼玉県 千葉県 29 年 1 月

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3 流動比率 (%) 流動資産流動負債 短期的な債務に対する支払能力を表す指標である 平成 26 年度からは 会計制度の見直しに伴い 流動負債に 1 年以内に償還される企業債や賞与引当金等が計上されることとなったため それ以前と比べ 比率は下がっている 分析にあたっての一般的な考え方 当該指標は 1

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4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

6 月調査 (5 月実績 ) 結果概況 景気判断 DI は現状 見通し共に小幅に下降も 50 を上回る高水準を維持 5 月のスーパーマーケット中核店舗における景気判断 DI 現状判断は前月から-0.3 の 54.8 見通し判断前月から-0.9 の 51.0 となり 共に小幅な下降となったが 引き続き

通期 連結の売上高 営業利益 経常利益としては 過去最高 のれん及び固定資産に係る減損損失を特別損失として 517 億円計上 当期純利益が 3 月 30 日付での予想数値より増加したのは 予想数値公表時の見込み額と比べ 最終決算数値により確定した減損損失額が 53 億円 減少したことによる 事業環境

定期調査の質問のうち 代表的なものの結果 1. 日本の株価を 企業のファンダメンタルズと比較してどう評価するか 問 1. 日本の株価は企業の実力( ファンダメンタルズ ) あるいは合理的な投資価値にくらべて 1. 低すぎる 2. 高すぎる 3. ほぼ正しく評価されている 4. わからないという質問で

73,800 円 / m2 幹線道路背後の住宅地域 については 77,600 円 / m2 という結論を得たものであり 幹線道路背後の住宅地域 の土地価格が 幹線道路沿線の商業地域 の土地価格よりも高いという内容であった 既述のとおり 土地価格の算定は 近傍類似の一般の取引事例をもとに算定しているこ

平均値 () 次のデータは, ある高校生 7 人が ヵ月にカレーライスを食べた回数 x を調べたものである 0,8,4,6,9,5,7 ( 回 ) このデータの平均値 x を求めよ () 右の表から, テレビをみた時間 x の平均値を求めよ 階級 ( 分 ) 階級値度数 x( 分 ) f( 人 )

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

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EPA に関する各種試算 試算 1 EPA のマクロ経済効果分析 (3 ページ ) 内閣官房を中心に関係省庁と調整したシナリオに基づき 川崎研一氏 ( 内閣府経済社会総合研究所客員主任研究官 ) が分析 WTO はじめ広く関係機関が活用している一般均衡モデル (GTAP モデル ) を使用 EPA

ご参考資料 オーナー経営者経営者の意識調査 - 概要 - 調査期間 2003 年 9 月 1 日 ~10 月 31 日 調査機関日本では ASG グループが本調査の主体になり 日経リサーチ社に調査を委託した 調査の一貫性を保つために 各国のデータの取りまとめは 国際的な調査機関である Wirthli

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ぶり ( 冷凍したフィレ ) の輸出 2011 年は 数量 価額ともに過去最高 平成 24 年 11 月 21 日 門司税関 はじめに ぶり は 刺身 寿司 照り焼きなど日本の食卓には欠かせない食材の一つですが 近年 その ぶり ( 冷凍したフィレ ) の輸出が増加しています 2011 年全国税関別

Transcription:

海上輸送 航空輸送の競合と経済市況の関係性 ~ 日米間トランジスタ輸送を例として ~ 掲載誌 掲載年月 : 日刊 CARGO 201512 日本海事センター企画研究部客員研究員川﨑智也 ( 日本大学理工学部助教 ) はじめに本連載では 海上 航空輸送 ( 以降 海空輸送 ) 間の競合性について 2014 年 9 10 月発表の記事で報告した ( 詳しくは 14 年 9 月 12 日付 10 月 17 日付の本紙を参照 ) これらの記事では アジア 米国航路における海上コンテナ輸送と航空輸送の間で競合する ( 海空競合の ) 品目を特定 分類することにより 海空競合貨物の特性を把握した しかしながら 海空競合貨物のうち 海上貨物として輸送される比率と ( 海上分担率 ) の決定メカニズムはいまだに解明されていない そこで今回のリポートでは 日本発米国向け貨物のうち 海上輸送 ( 大半は海上コンテナ輸送 ) と航空輸送の間での競合度合いが比較的高い トランジスタ に着目し 海上分担率と経済 運賃市況を対比させることにより 海上分担率に影響を与える要因について示唆を得ることを試みたい 日本発米国向けトランジスタ輸送の概況はじめに 日本発米国向けトランジスタ輸送の概況を確認しておく 今回の記事で取り扱うトランジスタ (HS コード 854129) とは 音響装置のアンプや回路内でスイッチの役割を果たす装置を指しており 日本発米国向け輸送品目では軽量かつ高価格であることが特徴となっている たとえば 14 年の日本発米国向け全貨物の平均貨物価値は Zepol 社の TradeView データベースによると 8.27 米ドル /kg( 海上輸送 ) 139.61 米ドル /kg( 航空輸送 ) である一方 トランジスタの平均貨物価値は 56.93 米ドル /kg( 海上輸送 ) 255.57 米ドル /kg( 航空輸送 ) だった これより トランジスタの単価は全品目と比較して 海上輸送が 6.9 倍 航空輸送が 1.8 倍高価格であることが分かる また トランジスタは海上輸送と航空輸送の競合度が比較的高い品目であるが 他品目と同様に 航空で輸送される貨物の方がより高い付加価値を有している 具体的には 航空で輸送されているトランジスタは 海上輸送されるものよりも 4.5 倍の価値を有している これは 当然のことであるが 高付加価値品ほど運賃負担力が高いためと推測される 1

輸送量 (kg) 海上分担率 図 1 に 07~14 年の日本発米国向けトランジスタ輸送の海上 航空輸送量と海上分担 率の推移を示す 800,000 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 70.0% 60.0% 50.0% 40.0% 30.0% 20.0% 10.0% 0.0% 海上輸送量航空輸送量海上分担率 ( 右軸 ) 図 1 日本発米国向けトランジスタ輸送量と海上分担率の推移 分析の対象とした 8 年間 (07~14 年 ) の海上 航空平均輸送量はそれぞれ 49.3 万 kg 48.2 万 kg と拮抗している 対象 8 年間の前半である 07~11 年は 09 年を除いて航空輸送量が上回っており 後半の 12~14 年では 海上輸送量が航空輸送量を逆転している すなわち 日米間の輸送において トランジスタは 徐々に海運シフトが発生している可能性がある品目と言える なお 09 年の輸送量が落ち込んでいるのはリーマンショックの影響であると考えられる ただし この年の減少幅は海上輸送と比較して航空輸送の方が大きい これは リーマンショックにより経営状況の悪化に直面した企業が 輸送コストが割高である航空輸送を切り上げる という行動を取った可能性が考えられる 海上分担率と経済市況の関係性日米間トランジスタ輸送について 海上分担率と各経済指標の関係性について分析し 海上分担率に影響を与える可能性のある要因の特定を試みたい 経済指標については 海上分担率に影響を与えると考えられる 米国の実質 GDP コンテナ運賃 ケース シラー住宅価格指数 を取り上げる 米国の実質 GDP は 輸入元である米国の経済状況 さらには需要を示しており 米国の経済が上向く ( 下向く ) ことにより輸入需要が増加 ( 減少 ) し 相対的に大量輸送が可能な海上輸送量が増加 ( 減少 ) することが考えられる なお GDP は四半期データであるため 該当する 3 ヶ月については同じ値を用いた これは 1 月から 3 月は第 2

一四半期の GDP を用いたということを意味している コンテナ運賃については 中国 米国東岸および西岸間コンテナ運賃の平均値を採用した コンテナ運賃が上昇 ( 下降 ) すると 当然のことながら海上輸送量は減少 ( 増加 ) すると考えられ 海空分担率にも影響を及ぼしうる指標と考えられる ケース シラー住宅価格指数は 米国内における住宅価格指数であり スタンダード アンド プアーズ社が毎月公表している 住宅の購入や建設は派生需要が多く発生し 個人消費に大きな影響を与えることが知られており 米国の景気指標として重要な指標である 派生需要が多く発生すればするほど 日米間の輸送量も増加することが見込まれるため 同指標を採用した 図 2 には 07 年 1 月 ~14 年 12 月の各指標の推移 ( 月次データ ) を示す なお 海上分担率は右軸 そのほかの経済指標については指標化 (07 年 1 月を 100) して示している 凡例中のカッコ内の値は 海上分担率との相関係数である なお 相関係数とは 2 つのデータ間の相関関係 ( 類似度 ) の度合いを表す統計量の一つで -1 から 1 の値を取る 1 に近いほど 2 つのデータ間には正の相関が存在し -1 に近いほど負の相関が存在することになる また 0 に近づくと両データ間には相関関係が存在しないことを示している 以上を踏まえて 海上分担率と各経済指標に相関関係が存在するか分析する 分析の結果 相関係数は 米国実質 GDP が 0.18 ケース シラー住宅価格指数が 0.24 コンテナ運賃が 0.11 と すべての指標において 0 に近い値が得られる結果となり 海上分担率と各経済指標との間に関連性を見出すことができなかった しかしながら 海上分担率と各経済指標 ( 米国 GDP コンテナ運賃 ケース シラー住宅価格指数) の間に何の関連性も存在しないという結果も 一つの重要な知見であると考える つまり 海上分担率の分析をする際には 今回の記事で対象とした各経済指標は説明変数として不十分である可能性が高いと言えるためである 3

2007 年 1 月 2007 年 5 月 2007 年 9 月 2008 年 1 月 2008 年 5 月 2008 年 9 月 2009 年 1 月 2009 年 5 月 2009 年 9 月 2010 年 1 月 2010 年 5 月 2010 年 9 月 2011 年 1 月 2011 年 5 月 2011 年 9 月 2012 年 1 月 2012 年 5 月 2012 年 9 月 2013 年 1 月 2013 年 5 月 2013 年 9 月 2014 年 1 月 2014 年 5 月 2014 年 9 月 120 110 100 90 80 70 60 90% 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 米国実質 GDP(0.18) ケース シラー住宅価格指数 (0.24) コンテナ運賃 (0.11) 海上分担率 ( 右軸 ) 図 2 各指標の推移 ( 月次データ ) 海上分担率低下の原因図 1 に示した海上分担率低下の原因を各経済指標に見出すことができなかったため 他の原因を考えることとしたい あらためて図 1 を見てみると 両端の 2 年間である 07~08 年の海上輸送量 (55.1 万 kg) と 13~14 年の海上輸送量 (57.4 万 kg) にはほとんど差がない 一方の航空輸送量は 07~08 年 (60.4 万 kg) と 13~14 年の航空輸送量 (33.1 万 kg) で 27.3 万 kg の差が存在している そのため同品目では 海運シフトが発生したというよりも 航空輸送量が減少したために海上分担率が上昇したと解釈するのが適当であると考えられる 日本発の航空輸送量の減少分が海上輸送にシフトしていないとすると その減少分はどこに移ったのだろうか 東アジア 4 ヶ国 ( 日本 中国 韓国 台湾 ) 発米国向けトランジスタ輸送について確認してみる 07~14 年の日本発トランジスタ輸送の平均輸送量 ( 海空合計 ) は 97.5 万 kg 中国発は同 90.3 万 kg 韓国発は同 13.4 万 kg 台湾発は同 6.4 万 kg であり 韓国発 台湾発は減少傾向にあり 東アジア 4 ヶ国の中でシェアも極めて小さい 日中発の輸送量 ( 日中 海空合計 ) がおおむね 1000 万 kg と横ばいで推移しており 両国は比較的競合関係にあることが推量される 図 3 と図 4 にそれぞれ日中発トランジスタ貨物の海上輸送量と航空輸送量の推移を示す 4

航空輸送量 (kg) 海上輸送量 (kg) 700,000 600,000 500,000 400,000 300,000 200,000 100,000 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 日本発 中国発 図 3 日中発トランジスタ輸送量の推移 ( 海上 ) 1,200,000 1,000,000 800,000 600,000 400,000 200,000 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 日本発 中国発 図 4 日中発トランジスタ輸送量の推移 ( 航空 ) 図 4 の日中発トランジスタ貨物の航空輸送量をみると 中国の航空輸送量が増加傾向にあることが分かる 2014 年は 100 万 kg を超えており 2007 年の 33.0 万 kg から約 3 倍以上増加している 一方の 2014 年の日本発航空輸送量は 37.1 万 kg に留まっており 同時期の中国発輸送量と比較して 64.5 万 kg 少ない 以上のデータを見る限りにおいては 一概には言い切ることはできないものの 日本発トランジスタ貨物の航空輸送量の減少分は中国発の航空輸送にシフトした可能性を指摘できる 図 3 の日中発トランジスタ貨物の海上輸送量の推移について確認しておくと 日本発の輸送量はおおむね 100 万 kg 弱の横ばいで推移しており 特筆すべき変化は見られな 5

いが 中国発の輸送量は明らかに減少傾向であり 2014 年には 7.2 万 kg にまで減少している 以上の日中発トランジスタ輸送について海上 航空輸送量別に確認することにより 日中両国で海上輸送と航空輸送の分担がなされている可能性を指摘することができる おわりに今回の記事では 2007~2014 年の 8 年間において 海上輸送と航空輸送が比較的競合していると考えられるトランジスタに着目し 海上分担率と各経済指標 ( 米国 GDP コンテナ運賃 ケース シラー住宅価格指数 ) を対比させることにより相関関係を分析した その結果 海上分担率は経済指標との間に相関関係は存在しないことが明らかとなった つまり 日米間のトランジスタ輸送における海上分担率は米国内の景気やコンテナ運賃に影響されることなく推移しているものと解釈される また 日米間のトランジスタ輸送の海空輸送量を分析すると 海上分担率が下降傾向にあったのは海上シフトによるものではなく 航空輸送の減少によるものである可能性が高い さらに 日米間の航空輸送量の減少分は中国発にシフトした可能性があることも示した 今回の記事で報告したように 海上分担率を説明することは比較的困難な研究課題であり そのために関連研究は進んでいない その理由としては 海空選択は多くの要因が複雑に絡み合っていることが挙げられる 例えば今回のリポートでは輸入先 ( 米国 ) の経済指標と対象品目の輸出元 ( 日本 中国 ) の動向のみを対象に分析を行ったが 実際には海空輸送手段の意思決定を下す荷主のビジネス戦略 港湾 空港までのアクセスまたはイグレス状況など 数多くの要因を考慮する必要があると考えられる これら要因の考慮は今後の課題としたい 6