建設産業における社会保険加入の徹底について ( 提言 ) 平成 24 年 3 月 14 日 中央建設業審議会 建設産業においては 下請企業を中心に 雇用 医療 年金保険について 法定福利費を適正に負担しない企業 ( すなわち保険未加入企業 ) が存在し 技能労働者の医療 年金など いざというときの公的保障が確保されず 若年入職者減少の一因となっているほか 関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという矛盾した状況が生じている このため 関係者を挙げて社会保険未加入問題への対策を進め 社会保険加入を徹底することにより 技能労働者の雇用環境の改善や不良不適格業者の排除に取り組み 建設産業の持続的な発展に必要な人材の確保を図るとともに 事業者間の公平で健全な競争環境を構築する必要がある 当審議会では 平成 23 年 9 月に社会資本整備審議会産業分科会建設部会と合同の基本問題小委員会を設置し 建設産業が活力を回復し 持続的に発展していくための審議を行い 平成 24 年 1 月に中間とりまとめが行われたところである 今後は 行政 発注者 元請企業 下請企業 建設労働者等の関係者が一体となって 社会保険未加入は許さないとの固い決意をもって対策に取り組むことが不可欠である このため 必要な推進体制を速やかに構築し それぞれの立場からの取組を着実に進めるべきである 国土交通省をはじめとする建設業担当部局においては 社会保険担当部局との連携を図りつつ 建設業許可 更新時や立入検査等における確認 指導 経営事項審査の厳格化 社会保険担当部局への通報等の必要な措置を講じる必要がある また 建設企業 団体においても 下請企業に対する指導や重層下請構造の是正等の取組を講じる必要がある また 社会保険加入の前提となる法定福利費の原資を確保するため 専門工事業界を中心として見積時の法定福利費の明示を進めるとともに 法定福利費は発注者が負担する工事価格に含まれる経費であり 受注者が義務的に負担しなければならない経費であることを踏まえ 個別の請負契約の当事者間において見積時から適正に確保するよう徹底し 発注者から下請企業まで適正に支払われるよう関係者がそれぞれの立場から取組を行うべきである 1
国土交通省直轄土木工事における法定福利費の確保について 別紙 -3 国土交通省では建設業の社会保険の加入徹底に向けた対策を検討しており 関係業界団体 労働者団体等で構成する検討会において 法定福利費については 発注者が負担する工事 価格に含まれる経費であることを周知徹底するとともに 個別の請負契約の当事者間において 見積等から適正に考慮するよう徹底する こととされた ( 平成 24 年 2 月 社会保険未加入対策の 具体化に関する検討会 取りまとめ ) 国土交通省直轄土木工事における現在の積算では 実態調査に法定福利費の支払額に 基づき現場管理費の一部として計上されているが 本来事業者が負担すべき法定福利費 ( 事業 主負担分 ) の額について 予定価格に適切に反映できるように現場管理費率式の見直しを実施 ( 国土交通省土木工事標準積算基準書 ) 見直しの結果 現場管理費に占める法定福利費の割合 見直し前 見直し後 予定価格への影響は 各工種区分毎の平均工事価格 ( 直接工事費 ) で算出 予定価格への影響 21 工事区分平均 18.75% 22.07% 0. 見直し後の現場管理費率の適用は 平成 24 年 4 月 1 日以降入札する工事から適用する 2
現場管理費率の改正について新旧対照表 (1/2) 旧別表第 1 工種別現場管理費率標準値第 1 表 純工事費 700 万円以下 700 万円を超え 10 億円以下 10 億円を超えるもの 河 川 工 事 36.78 832.3-0.1979 13.78 河川 道路構造物工事 25.05 38.7-0.0276 21.84 海 岸 工 事 23.99 76.4-0.0735 16.66 道 路 改 良 工 事 28.67 56.2-0.0427 23.20 鋼 橋 架 設 工 事 34.20 77.5-0.0519 26.44 P C 橋 工 事 25.89 82.2-0.0733 18.00 舗 装 工 事 34.77 460.4-0.1639 15.42 砂防 地すべり等工事 39.81 959.4-0.2019 14.62 公 園 工 事 37.38 282.4-0.1283 19.78 電線共同溝工事 50.52 1,581.6-0.2185 17.08 情報ボックス工事 47.11 1,177.3-0.2042 17.10 ( 注 ) 基礎地盤から堤頂までの高さが 20m 以上の砂防堰堤は, 砂防 地すべり等工事に 2% 加算する 新別表第 1 工種別現場管理費率標準値第 1 表 純工事費 700 万円以下 700 万円を超え 10 億円以下 10 億円を超えるもの 河 川 工 事 38.13 862.8-0.1979 14.28 河川 道路構造物工事 25.89 40.0-0.0276 22.58 海 岸 工 事 24.58 78.3-0.0735 17.07 道 路 改 良 工 事 29.53 57.8-0.0426 23.91 鋼 橋 架 設 工 事 36.07 81.6-0.0518 27.89 P C 橋 工 事 27.79 88.1-0.0732 19.33 舗 装 工 事 36.27 480.3-0.1639 16.08 砂防 地すべり等工事 40.98 987.6-0.2019 15.05 公 園 工 事 38.88 293.3-0.1282 20.58 電線共同溝工事 53.77 1,686.2-0.2186 18.18 情報ボックス工事 48.51 1,214.2-0.2043 17.60 ( 注 ) 基礎地盤から堤頂までの高さが 20m 以上の砂防堰堤は, 砂防 地すべり等工事に 2% 加算する 第 2 表 純工事費 700 万円以下 700 万円を超え 1 億円以下 1 億円を超えるもの 道 路 維 持 工 事 38.79 253.5-0.1191 28.26 河 川 維 持 工 事 31.99 133.0-0.0904 25.16 第 2 表 純工事費 700 万円以下 700 万円を超え 1 億円以下 1 億円を超えるもの 道 路 維 持 工 事 40.50 264.7-0.1191 29.51 河 川 維 持 工 事 34.30 142.6-0.0904 26.97 第 3 表 純工事費 1,000 万円以下 1,000 万円を超え 20 億円以下 20 億円を超えるもの (2) の算定式より算出された率と 共同溝等工事 (1) 44.67 282.8-0.1145 24.35 (2) 34.19 83.9-0.0557 25.45 ト ン ネ ル 工 事 39.81 154.4-0.0841 25.49 (1) 28.45 33.1-0.0094 27.06 下水道工事 (2) 33.30 160.8-0.0977 19.84 (3) 28.33 36.9-0.0164 25.97 第 3 表 純工事費 1,000 万円以下 1,000 万円を超え 20 億円以下 20 億円を超えるもの (2) の算定式より算出された率と 共同溝等工事 (1) 45.93 290.8-0.1145 25.04 (2) 35.00 85.9-0.0557 26.06 ト ン ネ ル 工 事 41.15 159.6-0.0841 26.35 (1) 30.29 35.3-0.0095 28.80 下水道工事 (2) 34.43 166.3-0.0977 20.52 (3) 29.71 38.7-0.0164 27.24 3
現場管理費率の改正について新旧対照表 (2/2) 旧第 4 表 純工事費 3 億円以下 3 億円を超え 50 億円以下 50 億円を超えるもの コンクリートダム 21.18 223.9-0.1208 15.08 フ ィ ル ダ ム 31.21 121.9-0.0698 25.65 新第 4 表 純工事費 3 億円以下 3 億円を超え 50 億円以下 50 億円を超えるもの コンクリートダム 21.73 229.7-0.1208 15.47 フ ィ ル ダ ム 31.70 123.8-0.0698 26.05 (2) 算定式 b J 0 =A N p ただし J 0 : 現場管理費率 (%) N p : 純工事費 ( 円 ) A,b : 変数値 ( 注 ) J 0 の値は, 小数点以下第 3 位を四捨五入して 2 位止めとする (2) 算定式 b J 0 =A N p ただし J 0 : 現場管理費率 (%) N p : 純工事費 ( 円 ) A,b : 変数値 ( 注 ) J 0 の値は, 小数点以下第 3 位を四捨五入して 2 位止めとする 4
社会保険等の加入状況 労働者単位での加入状況をみると 下請企業を中心に 保険未加入の割合が大きくなっている 都道府県別では 地方部と比較して 都市部の加入割合が低い傾向にある 労働者単位での加入状況 1 元請 下請次数別 ( 合計標本数 :77,891) 2 都道府県別 ( 合計標本数 :77,891) 100% 93% 100% 92% 90% 87% 90% 88% 87% 72% 71% 66% 64% 70% 53% 49% 46% 52% 48% 43% 42% 32% 20% 20% 0% 0% < 土木工事 > < 建築工事 > 平成 22 年度公共事業労務費調査のデータにおける 規模が 10 人以上の事業所 65 歳未満 月 18 日以上労働する労働者 ( 交通誘導員 A B を除く ) の有効標本 (77,891 標本 ) のうち 雇用保険 健康保険 ( 一般健康保険 日雇特例保険 全国土建国保 または船員保険等 ) 及び厚生年金保険の法定福利費控除額 ( 本人負担額 ) が 3 保険とも確認できた標本の率を示す 法定福利費控除額 ( 本人負担額 ) が確認できなかった標本の中には国民健康保険 国民年金の加入者等が含まれる 5
社会保険等の加入状況 都道府県別では 地方部と比較して 都市部の加入割合が低い傾向にある 100% 90% 70% 50% 30% 72% 70% 55% 75% 64% 81% 77% 78% 55% 67% 50% 32% 43% 81% 82% 79% 88% 86% 66% 63% 77% 87% 77% 71% 48% 63% 67% 92% 90% 86% 85% 85% 81% 90% 83% 82% 83% 84% 75% 74% 74% 62% 42% 20% 10% 0% 全国平均 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 山梨県 長野県 新潟県 富山県 石川県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 福井県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 平成 22 年度公共事業労務費調査のデータにおける 規模が 10 人以上の事業所 65 歳未満 月 18 日以上労働する労働者 ( 交通誘導員 A B を除く ) の有効標本 (77,891 標本 ) のうち 雇用保険 健康保険 ( 一般健康保険 日雇特例保険 全国土建国保 または船員保険等 ) 及び厚生年金保険の法定福利費控除額 ( 本人負担額 ) が 3 保険とも確認できた標本の率を示す 法定福利費控除額 ( 本人負担額 ) が確認できなかった標本の中には国民健康保険 国民年金の加入者等が含まれる 6
法定福利費の確保 イメージ 見積書の内訳明示 法定福利費確保の要請 見積書の内訳明示 法定福利費確保の要請 公共発注者 法定福利費の支払い 元請企業 法定福利費の支払い 下請企業 保険加入 労働者 見積書の内訳明示の活用と法定福利費確保の働きかけ 標準見積書の活用要請と保険加入の働きかけ ダンピング対策の要請と法定福利費確保の働きかけ 元請団体 標準見積書の活用要請 専門工事業団体 見積書の内訳明示の方針決定 業界内の標準見積書の作成 見積書の内訳明示の要請 法定福利費確保の働きかけ 見積書の内訳明示の要請 保険加入の働きかけ 建設業担当部局 7