うものと推認することができる しかしながら, 被告人は, インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ, 金を貸すための条件として被害女児とわいせつな行為をしてこれを撮影し, その画像データを送信するように要求されて, 真実は金を得る目的だけであり, 自分の性欲を刺激興奮させるとか

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(1) 児童ポルノ該当性について所論は, 原判示第 3 及び第 6の動画は, 一般人を基準とすれば性欲を興奮させ又は刺激するものに当たらない旨主張する しかし, 被告人は, 原判示第 3については, 女児である被害児童のパンティ等を下ろして陰部を露出させる姿態をとらせ, これを撮影, 記録し, 同第

するためには, その行為が犯人の性欲を刺激興奮させ又は満足させるという性的意図のもとに行われることを要するとした昭和 45 年判例と相反する判断をしたと主張するので, この点について, 検討する (3) 昭和 45 年判例は, 被害者の裸体写真を撮って仕返しをしようとの考えで, 脅迫により畏怖してい

平成  年(オ)第  号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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平成  年(あ)第  号

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在は法律名が 医薬品, 医療機器等の品質, 有効性及び安全性の確保等に関する法律 と改正されており, 同法において同じ規制がされている )2 条 14 項に規定する薬物に指定された ( 以下 指定薬物 という ) ものである (2) 被告人は, 検察官調書 ( 原審乙 8) において, 任意提出当日

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

平成  年(行ツ)第  号

(イ係)

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

ものであった また, 本件規則には, 貸付けの要件として, 当該資金の借入れにつき漁業協同組合の理事会において議決されていることが定められていた (3) 東洋町公告式条例 ( 昭和 34 年東洋町条例第 1 号 )3 条,2 条 2 項には, 規則の公布は, 同条例の定める7か所の掲示場に掲示して行

13 条,14 条 1 項に違反するものとはいえない このように解すべきことは, 当裁判所の判例 ( 最高裁昭和 28 年 ( オ ) 第 389 号同 30 年 7 月 20 日大法廷判決 民集 9 巻 9 号 1122 頁, 最高裁昭和 37 年 ( オ ) 第 1472 号同 39 年 5 月

がなく, 違法の意識の可能性もなかったのに, 被告人の上記各行為がそれぞれ同条 1 項の私電磁的記録不正作出又は同条 3 項の同供用に該当すると認め, 各罪の故意も認定して, 上記全ての行為について被告人を有罪とした原判決には, 判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認及び同条の解釈適用を誤った法

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

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する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

原判決は, 控訴人ら及び C の請求をいずれも棄却したので, 控訴人らがこれを不服として控訴した 2 本件における前提事実, 関係法令の定め, 争点及びこれに対する当事者の主張は, 後記 3 のとおり, 原判決を補正し, 後記 4 のとおり, 当審における当事者の主張 を付加するほかは, 原判決 事

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

された犯人が着用していた帽子や眼鏡は持っていないなどと供述して, 犯罪の成立を争った イ原審の証拠構造本件犯行そのものに関する証拠本件犯行そのものに関する証拠として, 本件犯行を目撃したという本件マンションの住人の警察官調書 ( 原審甲 2), 精液様のものが本件マンション2 階通路から採取されたこ

Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

併等の前後を通じて 上告人ら という 同様に, 上告人 X1 銀行についても, 合併等の前後を通じて 上告人 X1 銀行 という ) との間で, 上告人らを債券の管理会社として, また, 本件第 5 回債券から本件第 7 回債券までにつき上告人 X1 銀行との間で, 同上告人を債券の管理会社として,

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

Taro-婚姻によらないで懐妊した児

- 2 - 第二編第二十二章の章名中 姦淫 を 強制性交等 に改める かんいん第百七十六条中 男女に を 者に に改める 第百七十七条の見出しを (強制性交等) に改め 同条中 暴行 を 十三歳以上の者に対し 暴行 に 十三歳以上の女子を姦淫した者は 強姦の罪とし 三年 を 性交 肛門性交又は口腔性

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旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

審決取消判決の拘束力

7 平成 28 年 10 月 3 日 処分庁は 法第 73 条の2 第 1 項及び条例第 43 条第 1 項の規定により 本件不動産の取得について審査請求人に対し 本件処分を行った 8 平成 28 年 11 月 25 日 審査請求人は 審査庁に対し 本件処分の取消しを求める審査請求を行った 第 4

平成  年(あ)第  号

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金 ) を規定しました ( 第 26 条の2 第 34 条第 4 項第 12 号関係 ) (2) インターネット上の有害情報等への対応の強化ア携帯電話事業者及びその代理店の説明及び説明書の交付義務携帯電話事業者及びその代理店に対し 契約の相手方又は携帯電話端末等の使用者が青少年であることが判明した場

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成  年(オ)第  号

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

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H 刑事施設が受刑者の弁護士との信書について検査したことにつき勧告

算税賦課決定 (5) 平成 20 年 1 月 1 日から同年 3 月 31 日までの課税期間分の消費税及び地方消費税の更正のうち還付消費税額 6736 万 8671 円を下回る部分及び還付地方消費税額 1684 万 2167 円を下回る部分並びに過少申告加算税賦課決定 (6) 平成 20 年 4 月

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

量刑不当・棄却

(2) B 社に係る破産事件等東京地方裁判所は, 平成 21 年 2 月 24 日,B 社を再生債務者として, 再生手続開始の決定をした しかし, 東京地方裁判所は, 同年 3 月 24 日,B 社の事業継続を不可能とする事実が明らかになったとして, 再生手続廃止の決定をするとともに, 再生手続廃止

(4) 抗告人は, 平成 28 年 8 月 26 日, 本件仮登記の抹消登記を経由した (5) 抗告人は, 平成 28 年 9 月 7 日, 東京地方裁判所に対し, 本件再生手続に係る再生手続開始の申立てをし, 同月 20 日, 再生手続開始の決定を受けた 上記申立てに当たり抗告人が提出した債権者一

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本件合併時にA 信用組合に在職する職員に係る労働契約上の地位は, 被上告人が承継すること,3 上記の職員に係る退職金は, 本件合併の際には支給せず, 合併後に退職する際に, 合併の前後の勤続年数を通算して被上告人の退職給与規程により支給することなどが合意された また, 本件合併の準備を進めるため,

平成21年第57号

平成18年1月13日 最高裁判所は,貸金業者の過払い金の受領は違法と知りつつなされたことを推定するとした判例です

の補正書 において, 審査請求の趣旨を この開示請求は本人の給与のみずましにかかわる書面である為 としているが, 原処分を取り消し, 本件対象保有個人情報の開示を求めている審査請求として, 以下, 原処分の妥当性について検討する 2 原処分の妥当性について (1) 給与所得の源泉徴収票について給与所

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

被上告人に対し, 上記各賦課決定の取消しを求めている事案である 2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は, 次のとおりである (1) 上告人は, 東京都渋谷区内に所在する面積が200m2以下である本件土地及びこれを敷地とする第 1 審判決別紙物件目録記載の建物 ( 以下 旧家屋 という ) を所有

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

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原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

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第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

4 処分行政庁が平成 25 年 3 月 5 日付けでした控訴人に対する平成 20 年 10 月 1 日から平成 21 年 9 月 30 日までの事業年度の法人税の再更正処分のうち翌期へ繰り越す欠損金 4 億 万 6054 円を下回る部分を取り消す 5 処分行政庁が平成 25 年 3 月

O-27567

MJS/ 第 79 回租税判例研究会 ( ) MJS 判例研究会 平成 30 年 8 月 9 日 報告者西野道之助 更正の請求/ 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除 平成 28 年 7 月 8 日 東京地裁 ( 棄却 )( 控訴 ) 平成 29 年 1 月 26 日

返還の必要性を十分説明しており 手続は適法である 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件の争点は 本件保険が法第 4 条第 1 項に規定する 利用し得る資産 に該当するかどうかであるが その判断に当たっては 処分庁が判断の要素

が成立するが 本件処分日は平成 29 年 3 月 3 日であるから 平成 24 年 3 月 3 日以降 審査請求人に支給した保護費について返還を求めることは可能であ る 第 3 審理員意見書の要旨 1 結論本件審査請求には理由がないので 棄却されるべきである 2 理由 (1) 本件処分に係る生活保護

11総法不審第120号

監査に関する品質管理基準の設定に係る意見書

を運転し, 名神高速道路下り線 416.8キロポスト付近の第 1 車両通行帯を北方から南方に向かい進行するに当たり, 前方左右を注視し, 進路の安全を確認して進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り, 左手に持ったスマートフォンの画面に脇見し, アプリケーションソフトの閲覧や入力操作に気

利子相当額 という ) を加えた額に相当する金額 ( 以下 退職一時金利子加算額 という ) の返還に関し, その経過措置を定める 厚生年金保険法等の一部を改正する法律 ( 平成 8 年法律第 82 号 以下 厚年法改正法 という ) 附則 3 0 条 1 項の委任に基づいて定められた, 厚生年金保

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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平成  年(あ)第 号

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民法 ( 債権関係 ) の改正における経過措置に関して 現段階で検討中の基本的な方針 及び経過措置案の骨子は 概ね以下のとおりである ( 定型約款に関するものを除く ) 第 1 民法総則 ( 時効を除く ) の規定の改正に関する経過措置 民法総則 ( 時効を除く ) における改正後の規定 ( 部会資

平成 30 年 ( 受 ) 第 269 号損害賠償請求事件 平成 31 年 3 月 12 日第三小法廷判決 主 文 原判決中, 上告人敗訴部分を破棄する 前項の部分につき, 被上告人らの控訴を棄却する 控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする 理 由 上告代理人成田茂ほかの上告受理申立て理由第

平成  年(オ)第  号

平成19年(ネ受)第435号上告受理申立理由要旨抜粋

取得に対しては 分割前の当該共有物に係る持分割合を超える部分の取得を除いて 不動産取得税を課することができないとするだけであって 分割の方法に制約を設けているものではないから 共有する土地が隣接している場合と隣接していない場合を区別し 隣接していない土地を一体として分割する場合に非課税が適用されない

REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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諮問庁 : 国立大学法人長岡技術科学大学諮問日 : 平成 30 年 10 月 29 日 ( 平成 30 年 ( 独情 ) 諮問第 62 号 ) 答申日 : 平成 31 年 1 月 28 日 ( 平成 30 年度 ( 独情 ) 答申第 61 号 ) 事件名 : 特定期間に開催された特定学部教授会の音声

指針に関する Q&A 1 指針の内容について 2 その他 1( 特許を受ける権利の帰属について ) 3 その他 2( 相当の利益を受ける権利について ) <1 指針の内容について> ( 主体 ) Q1 公的研究機関や病院については 指針のどの項目を参照すればよいですか A1 公的研究機関や病院に限ら

11総法不審第120号

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

答 申 第 1 審議会の結論名古屋市長 ( 以下 実施機関 という ) が 本件異議申立ての対象となる保有個人情報を一部開示とした決定は 妥当である 第 2 異議申立てに至る経過 1 平成 23 年 12 月 21 日 異議申立人は 名古屋市個人情報保護条例 ( 平成 17 年名古屋市条例第 26

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

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平成 28 年 ( う ) 第 493 号児童買春, 児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反, 強制わいせつ, 犯罪による収益の移転防止に関する法律違反被告事件平成 28 年 10 月 27 日大阪高等裁判所第 5 刑事部判決 主 文 本件控訴を棄却する 当審における未決勾留日数中 160 日を原判決の刑に算入する 理 由 本件控訴の趣意は, 弁護人松木俊明作成の控訴趣意書に記載のとおりであるから, これを引用するが, 論旨は, 理由不備及び法令適用の誤りをいうものである そこで, 記録を調査して検討する ( 以下, 原判決別紙記載の女児を 被害女児 という ) 第 1 法令適用の誤り及び理由不備の違法をいう論旨 ( 控訴趣意書の控訴理由第 1) について 1 論旨は, 強制わいせつ罪が成立するためには犯人に性的意図があったことが必要であるとして, 原判示第 1の1の事実について, 被告人には性的意図が全くなかったのに強制わいせつ罪が成立すると判示し, 刑法 176 条後段を適用した原判決には, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあり, ひいては, 原判示第 1の1の犯罪事実 ( 罪となるべき事実 ) には, 被告人に性的意図があった旨の事実摘示を欠いているから, 原判決には理由不備の違法がある, というものである 2(1) 原審で取り調べられた関係証拠によれば, 被告人の行為は, 被害女児 ( 当時 7 歳 ) に対し, 被告人の陰茎を触らせ, 口にくわえさせ, 被害女児の陰部を触るなどしたというものであって, これらが客観的に被害女児に対するわいせつな行為であることは明らかであるから, 通常は, 被告人の行為に性的意図を伴 1

うものと推認することができる しかしながら, 被告人は, インターネットを通じて知り合ったAから金を借りようとしたところ, 金を貸すための条件として被害女児とわいせつな行為をしてこれを撮影し, その画像データを送信するように要求されて, 真実は金を得る目的だけであり, 自分の性欲を刺激興奮させるとか満足させるという性的意図はなかったにもかかわらず, あたかも性的意図に基づきわいせつな行為をしているような演技をしてその様子を撮影して送信した, という趣旨の供述をしている Aとのやり取りや撮影等に関する被告人の供述は,Aの供述や発見された画像データの内容とも整合しており, 被告人の弁解には合理性が認められ, 金を得る目的だけであったとの被告人の供述も信用することができる 被告人の弁解を排斥することができないとして, 被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るとした原判決の判断は相当である (2) ところで, 強制わいせつ罪の保護法益は被害者の性的自由と解され, 同罪は被害者の性的自由を侵害する行為を処罰するものであり, 客観的に被害者の性的自由を侵害する行為がなされ, 行為者がその旨認識していれば, 強制わいせつ罪が成立し, 行為者の性的意図の有無は同罪の成立に影響を及ぼすものではないと解すべきである その理由は, 原判決も指摘するとおり, 犯人の性欲を刺激興奮させ, または満足させるという性的意図の有無によって, 被害者の性的自由が侵害されたか否かが左右されるとは考えられないし, このような犯人の性的意図が強制わいせつ罪の成立要件であると定めた規定はなく, 同罪の成立にこのような特別な主観的要件を要求する実質的な根拠は存在しないと考えられるからである そうすると, 本件において, 被告人の目的がいかなるものであったにせよ, 被告人の行為が被害女児の性的自由を侵害する行為であることは明らかであり, 被告人も自己の行為がそういう行為であることは十分に認識していたと認 2

められるから, 強制わいせつ罪が成立することは明白である 以上によれば, 強制わいせつ罪の成立について犯人が性的意図を有する必要はないから, 被告人に性的意図が認められないにしても, 被告人には強制わいせつ罪が成立するとした原判決の判断及び法令解釈は相当というべきである 当裁判所も, 刑法 176 条について, 原審と同様の解釈をとるものであり, 最高裁判例 ( 最高裁昭和 45 年 1 月 29 日第 1 小法廷判決 刑集 24 巻 1 号 1 頁 ) の判断基準を現時点において維持するのは相当ではないと考える (3) 所論は, 強制わいせつ罪の保護法益を純粋に個人の性的自由とみて, 同罪の成立に犯人の性的意図を要しないと解釈した場合,1わいせつ行為の範囲は, 被害者の性的意思決定の自由が害される行為として被害者個人によって主観的に定められることになり, 極めて不明確となる,2 性的自由を観念できない乳幼児に対する強制わいせつ罪が成立しないことになり, その保護に欠ける, などと主張する しかしながら, 前記のように解釈したとしても, 強制わいせつ罪におけるわいせつな行為の該当性を検討するに当たっては, 被害者の性的自由を侵害する行為であるか否かを客観的に判断すべきであるから, 所論 1のように処罰範囲が不明確になるとはいえない また, 性的な事柄についての判断能力を有しない乳幼児にも保護されるべき性的自由は当然認められるのであり, その点で既に所論 2は失当である上, 犯人の性的意図の要否と乳幼児に対する強制わいせつ罪の成否とは特段関連する問題とは考えられないから, 保護法益を純粋に性的自由とみて性的意図を不要と解釈すると乳幼児の保護に欠ける事態になるとの批判は当たらない その他, 強制わいせつ罪の成立要件について縷々主張する所論は, いずれも失当であって採用することはできない 3 したがって, 被告人に強制わいせつ罪が成立するとして当該法条を適用した原判決には, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるとはいえな 3

い 法令適用の誤りをいう論旨は理由がない また, 強制わいせつ罪の成立には犯人の性的意図があることを必要としないと解されるのであるから, 原判示第 1 の1の犯罪事実 ( 罪となるべき事実 ) に性的意図を記載しなかった原判決に理由不備の違法があるとはいえない 理由不備をいう論旨も理由がない 第 2 理由不備の違法をいう論旨 ( 控訴趣意書の控訴理由第 2) について 1 論旨は, 要するに, 原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪 ( 児童ポルノ法 7 条 3 項前段 ) 及び原判示第 1の3の児童ポルノ提供罪 ( 児童ポルノ法 7 条 2 項後段 ) について, その製造及び提供に係る児童ポルノが児童ポルノ法 2 条 3 項の何号に該当する児童ポルノであるのか事実摘示をしておらず, また, 法令の適用においても明示していない原判決には, 理由不備の違法がある, というものと解される 2 所論は, 児童ポルノの該当号数を罪となるべき事実に摘示すべきとしているのか, 法令の適用に不備があるとするのか, 必ずしも明らかではないが, まず, 有罪判決に示すべき理由 ( 刑訴法 335 条 1 項 ) について, 罪となるべき事実は, どの構成要件に該当するか判定でき, かつ, 罰条を適用する事実上の根拠を確認できる程度に具体的に明示されなければならないところ ( 最高裁昭和 24 年 2 月 10 日第 1 小法廷判決 刑集 3 巻 2 号 155 頁参照 ), 原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪及び原判示第 1の3の児童ポルノ提供罪の各犯罪事実 ( 罪となるべき事実 ) の摘示は十分に具体的に明示されているということができる また, 適用法令の摘示について, 罰条は, 犯罪構成要件及び法定刑を定める法令を摘示する必要があり, かつ, それで足りるものと解され ( 最高裁昭和 24 年 11 月 10 日第 1 小法廷判決 刑集 3 巻 11 号 1751 頁参照 ), さらに, 犯罪構成要件中の概念の定義規定や概念の意味内容を明らかにする規定は, それ自体が当該構成要件を定めるものではなく, 構成要件の意味内容を明らかにするものであるから, 摘示する必要はないものと解される ( 最高裁昭和 26 年 6 月 8 日第 2 小 4

法廷判決 刑集 5 巻 7 号 1261 頁参照 ) そこで, 原判決をみると, 法令の適用において, 原判示第 1の2については児童ポルノ法 7 条 3 項前段,2 項, 原判示第 1の3については同法 7 条 2 項後段と必要かつ十分な記載がされており, そもそも, 所論指摘の児童ポルノ法 2 条 3 項各号は, 同項本文と一体となる児童ポルノの定義規定であるから, 法令の適用に摘示する必要がないのである 3 したがって, 何号の児童ポルノなのかを示す必要があり, これが示されていない原判決には理由不備の違法があるとの論旨は理由がない 第 3 法令適用の誤りをいう論旨 ( 控訴趣意書の控訴理由第 3) について 1 論旨は, 原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪と原判示第 1の3の児童ポルノ提供罪とは牽連犯の関係にあると認められるのに, 両罪を併合罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある, というものである 2 そこで検討するに, 原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪を構成する行為は, 被告人が, 被害女児に対し, 既に説示した内容の原判示第 1の1の強制わいせつ行為に及んだのと同一の機会に, 提供の目的で, 全裸の状態での上記わいせつ行為に係る被害女児の姿態や, 全裸又は半裸の状態で陰部又は胸部を露出した被害女児の姿態を被告人使用のスマートフォンで撮影し, その画像データを記録して保存したというものであり, 原判示第 1の3の児童ポルノ提供罪を構成する行為は, 被告人が, その頃, 上記画像データを被告人使用のスマートフォンからA 使用のスマートフォンに送信して提供したというものである 児童ポルノ法が, 児童ポルノの製造, 所持, 提供等, あらゆる角度から児童ポルノに係る行為を厳しく規制し処罰することにしているのは, これらの行為に伴う児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害するなど重大な害悪をもたらすことに鑑み, 児童を性欲の対象とする風潮を防止するという面から児童一般を保護するとともに, 児童ポルノに描写された当該児童の人格権を 5

保護することを目的とするものである また, 児童ポルノは, 製造, 所持, 提供等の各場面において, その都度, 異なった態様で当該児童の権利侵害を生じさせるということができる このように, 児童ポルノの製造, 所持, 提供等については, それぞれ一罪として別個独立に処罰すべき実質的な理由がある一方で, 児童ポルノの製造, 所持, 提供等は, これら犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められない 以上によれば, 本件提供目的児童ポルノ製造罪及び本件児童ポルノ提供罪については, 被告人がこれらを連続的に犯したとはいえ, 所論がいうような牽連犯ではなく, 併合罪になるものと解するのが相当である 3 そうすると, 所論の指摘を十分に検討してみても, 原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪と原判示第 1の3の児童ポルノ提供罪を併合罪とした原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りはない この点の法令適用の誤りをいう論旨は理由がない 第 4 法令適用の誤りをいう論旨 ( 控訴趣意書の控訴理由第 4) について 1 論旨は, 原判示第 1の1の強制わいせつ罪と原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪とは観念的競合の関係にあると認められ, あるいは包括一罪として処理されるべきであるのに, 両罪を併合罪とした原判決には, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある, というものである 2 そこで検討するに, 原判示第 1の1の強制わいせつ罪及び原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為の内容は, 既に説示したとおりであるから, 両行為には同時性が認められる また, 本件提供目的児童ポルノ製造罪における撮影行為は, 本件強制わいせつ罪の訴因に含まれていないとはいえ, 強制わいせつ罪のわいせつな行為と評価され得るものであるから, その意味では両行為には一部重なり合いもみられる しかしながら, 強制わいせつ罪における行為者の動態 ( 第三者の目に見えるよ 6

うな身体の動静 ) は, 被害者に対して本件において行われたようなわいせつな行為を行うことであるのに対し, 児童ポルノ製造罪における行為者の動態は, 児童ポルノ法 2 条 3 項各号に該当する児童の姿態を撮影, 記録して児童ポルノを製造することであるから, 両行為は, その性質が相当異なっており, 社会的事実として強い一体性があるとはいえない また, 児童ポルノの複製行為も児童ポルノ製造罪を構成し得ることからすると, 児童ポルノ製造罪が時間的な広がりをもって行われて, 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪のそれぞれを構成する行為の同時性が甚だしく欠ける場合も想定される さらに, 強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪とでは, それぞれを構成する行為が必然的あるいは通常伴う関係にあるとはいえず, それぞれ別個の意思の発現によって犯される罪であるとみることができる 以上によれば, 行為の同時性や一部重なり合いの存在を考慮しても, 強制わいせつ罪及び児童ポルノ製造罪における行為者の動態は社会的見解上, 別個のものと評価すべきであって, これを一個のものとみることはできない 本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪についても, 上記のように考えるのが相当であるから, 両罪は観念的競合の関係にはなく, もとより罪質上, 包括して一罪と評価すべきものともいえず, 結局, 両罪は併合罪の関係にあると解するのが相当である 所論は, 強制わいせつ罪のわいせつな行為には撮影行為が含まれることから, 本件では行為の重なり合いがある上, 被告人に性的意図はなく, 金を得るという動機で一連の行為に及んだものであるから, 別個の意思の発現とはいえず, 行為の一体性が明らかであり, 一個の犯意に包摂された一個の行為である, などと主張する しかしながら, 本件において, わいせつな行為の中核をなすものは, 被告人が被害女児に被告人の陰茎を触らせ, 口にくわえさせ, 被害女児の陰部を触るなどした行為であるのに対し, 児童ポルノを製造した行為の中核をなすものは, 前記 7

のような被害女児の姿態を撮影, 記録した行為である そうすると, 本件強制わいせつ罪と本件提供目的児童ポルノ製造罪をそれぞれ構成する行為は, 別個の行為とみるのが相当である また, 被告人が性的意図ではなく金を得るという動機で一連の行為に及んだことは, 所論指摘のとおりである しかしながら, そもそも強制わいせつ罪と児童ポルノ製造罪との罪数関係について, 強制わいせつ罪における性的意図の有無により別異に解することは相当でない上, 被告人には性的意図が認められないとはいえ, 被告人は, 被害女児の性的自由を客観的に侵害する行為を行う意思と, 被害女児を描写した児童ポルノを製造する行為を行う意思を併存的に持ち, 各意思を実現させるため, 別個の意思の発現として性質が相当異なる各行為に及んだものと評価することができる 所論は採用の限りではない その他, この点に関して縷々主張する所論は, いずれも採用することができない 3 したがって, 原判示第 1の1の強制わいせつ罪と原判示第 1の2の提供目的児童ポルノ製造罪を併合罪とした原判決に, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りはない この点の法令適用の誤りをいう論旨も理由がない 第 5 法令適用の誤りをいう論旨 ( 控訴趣意書の控訴理由第 5 及び同第 6) について 1 論旨は, 要するに, 原判示第 1の2の児童ポルノのうち, 児童ポルノ法 2 条 3 項 1 号に該当するとされる児童ポルノについては, その児童の姿態は 児童による性交類似行為に係る児童の姿態 には当たらず, また, 同法 2 条 3 項 2 号あるいは3 号に該当するとされる児童ポルノについては, 性欲を興奮させ又は刺激するもの に当たらないから, 提供目的児童ポルノ製造罪が成立するとして当該罰条を適用した原判決には, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがある, というものであると解される 2 所論は, まず, 原判示第 1の2の児童ポルノのうち, 原審甲 8 号証資料 1 1 8

の各画像は, その製造に至る経緯をみれば, 性交と同視し得る態様ではなく, 異性間の性交とその態様を同じくする状況下における, あるいは性交を模して行われる行為でもなく, そもそも, 口淫行為といえる行為ではないから, 児童による性交類似行為に係る児童の姿態 には当たらない, などというのである しかしながら, 児童ポルノ法 2 条 3 項 1 号の児童ポルノとして規定されている 児童による性交類似行為に係る児童の姿態 というのは, 性交と同視し得る態様における性的な行為をいい, 異性間の性交を模して行われる手淫 口淫行為などを含むものと解される 原審甲 8 号証資料 1 1の各画像は, 被害女児が被告人の陰茎を口に含んでいる様子を撮影したものであり, 被害女児にいわゆる口淫をさせている姿態であることは明らかである 撮影者である被告人に性的意図がなかったにしても, 被害女児のそのような姿態を撮影している以上, 児童ポルノ法 2 条 3 項 1 号の児童ポルノに該当し, 提供目的児童ポルノ製造罪が成立するとした原判決の判断には何ら誤りはない 所論は採用することができない 3 また, 所論は, 被告人は, 借金目的でAの言いなりになり, かつ,Aの要求を聞く振りをして被害女児を撮影したものであるから, 本件において, 児童ポルノ法 2 条 3 項 2 号あるいは3 号に該当するとされる児童ポルノについては, その撮影目的や撮影された内容等に照らし, 見る者の性的興味に訴えようとするものとは認められず, 性欲を興奮させ又は刺激するもの に当たらない, などという しかしながら, 本件の児童ポルノ法 2 条 3 項 2 号あるいは3 号に該当するとされる児童ポルノは, 被告人が本件に至った経緯やその撮影目的を考慮しても, その撮影して記録された内容をみれば, それらの画像が, 一般人を基準として, その性欲を興奮させ又は刺激するものであることは明らかである この点に関しても提供目的児童ポルノ製造罪が成立すると判断した原判決には判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるなどとは到底いえない 所論は採用の限りではない 9

4 これらの法令適用の誤りをいう論旨はいずれも理由がない 第 6 結論その他, 原判決に理由不備の違法があり, また, 判決に影響を及ぼすことの明らかな法令適用の誤りがあるとして, 所論が縷々主張するところを十分に検討してみても, 原判決に理由不備あるいは法令適用の誤りがあるとは認められない よって, 刑訴法 396 条により本件控訴を棄却することとし, 当審における未決勾留日数の算入につき刑法 21 条を適用し, 当審における訴訟費用を被告人に負担させないことにつき刑訴法 181 条 1 項ただし書を適用して, 主文のとおり判決する ( 裁判長裁判官西田眞基裁判官森浩史裁判官福島恵子 ) 10