判決【】

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

最高裁○○第000100号

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

最高裁○○第000100号

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

最高裁○○第000100号

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

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ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

主位的に自筆証書 ( 後述の本件文書 ) による遺言に基づいて遺贈を受けたこと, 予備的に死因贈与を受けたことを主張して, 不当利得 ( 主位的 ) 又は死因贈与契約 ( 予備的 ) に基づく3000 万円 ( 内金請求 ) 及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成 27 年 12 月 5 日か

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

第 1 請求 1 被告は, 別紙 1 被告製品目録記載の製品 ( 以下 被告製品 という ) を製造し, 販売し, 貸し渡し, 又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない 2 被告は, 被告製品及び半製品 ( 別紙 2 被告意匠目録記載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないもの

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

最高裁○○第000100号

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

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原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

3 被告は, 原告に対し, 金 3453 万 2652 円及びこれに対する平成 23 年 12 月 14 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件訴訟は, 原告が, 被告の製造販売に係るデジタルカタログについて, 原告の特許権を侵害している旨主張して, 被告に対し

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

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主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 1 本件は, 別紙作品目録記載 1(1) ないし2(2) の各作品 ( 作品名及び作詞者により特定される歌詞並びに作品名及び作曲者により特定される曲 以下, 個別には 同目録の番号に応じて 本件作品 1(1) などといい, 本件作

同訴訟代理人弁護士同同同同同同同同同同同 三好徹石田央子津田直和井川真由美鶴﨑有一石井修平山崎哲内田尚成前田香織本田雄巳黒木義隆籔之内千賀子 主文 1 控訴人の本件控訴を棄却する 2(1) 被控訴人の附帯控訴に基づき 原判決主文 1 2 項を次のとおり変更する (2) 控訴人は 被控訴人に対し 78

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

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ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

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めた事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実又は文中掲記した証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実 ) (1) 当事者ア原告は, 映画プロデューサーである ( 甲 1,2) イ被告は, 新聞社であり, ウェブサイト 朝日新聞デジタルAJW を運営するものである (2) 原告の著

裁判年月日 平成 25 年 9 月 19 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 24( ワ )26067 号 事件名 区分所有建物使用差止請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA 事案の概要 原告が 被告に対し 管理組合集会決議がないのに住宅以外の用途

最高裁○○第000100号

求めるなどしている事案である 2 原審の確定した事実関係の概要等は, 次のとおりである (1) 上告人は, 不動産賃貸業等を目的とする株式会社であり, 被上告会社は, 総合コンサルティング業等を目的とする会社である 被上告人 Y 3 は, 平成 19 年当時, パソコンの解体業務の受託等を目的とする

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

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☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

登録番号第 号指定商品 役務第 25 類被服, 空手衣第 41 類空手の教授, 空手の興行の企画 運営又は開催登録商標別紙原告商標目録 1 記載のとおりイ本件商標権 2( 以下これに係る登録商標を 本件商標 2 という ) 出願年月日平成 16 年 10 月 15 日登録年月日平成

期分本税 831 万 1900 円の合計 以下 本件租税債権 という ) (3) 東京国税局国税徴収官 B( 以下 B 徴収官 という ) は 同局特別国税徴収官 C( 以下 C 特官 という ) の決定に基づき 平成 20 年 3 月 6 日 原告がA 証券に対して有していた本件証拠金の返還請求権

(イ係)

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

(1) 主文 1ないし4 項と同旨 (2) 仮執行宣言 2 被告 (1) 原告の請求をいずれも棄却する (2) 訴訟費用は原告の負担とする 第 2 事案の概要 1 前提事実 ( 当事者間に争いがない ) (1) 当事者原告は, 一般運輸業, その他娯楽施設の経営, 不動産事業, 駐車場の経営, 物販

<4D F736F F D A A835290B695FA BC96BC8F88979D8DCF816A2E646F63>

し, 譲渡し, 貸し渡し, 輸入し, 又は譲渡若しくは貸渡しの申出をしてはならない 2 被告は, 被告製品を廃棄せよ 3 被告は, 原告に対し,1 億円及びこれに対する平成 27 年 8 月 25 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 発明の名称を 分散組

職選挙法等の改正により一部改められたものの,1 人別枠方式は維持されたまま, 衆議院が解散され, 選挙区割りの未了を理由に, 従前の選挙区割りに基づいて本件選挙を施行するものとされたことにより, 投票価値の平等が害されたまま投票を行わざるを得ないという重大な損害を被ることとなったのであり, 憲法違反

定している (2) 通達等の定めア 生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について ( 昭和 29 年社発第 382 号厚生省社会局長通知 以下 昭和 29 年通知 という 乙 1) は, 一項本文において, 生活保護法第 1 条により, 外国人は法の適用対象とならないのであるが, 当分の間,

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平成20年7月11日判決言渡 同日原本交付 裁判所書記官

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平成 28 年 1 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 15005 号著作権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 10 月 27 日 判 決 原告 A 同訴訟代理人弁護士大熊裕司 島川知子 被 告 株式会社復刊ドットコム 同訴訟代理人弁護士 北 村 行 夫 大 井 法 子 杉 浦 尚 子 雪 丸 真 吾 芹 澤 繁 亀 井 弘 泰 名 畑 淳 山 本 夕 子 都 行 志 吉 田 朋 杉 田 禎 浩 近 藤 美 智 子 主 文 原告の請求をいずれも棄却する 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 - 1 -

1 被告は, 別紙書籍目録記載の書籍 ( 以下 本件書籍 という ) を複製し, 頒布してはならない 2 被告は, 本件書籍及びその印刷用原版を廃棄せよ 3 被告は, 原告に対し,737 万円及びこれに対する平成 27 年 6 月 11 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 別紙イラスト目録記載のイラスト ( 以下 本件イラスト と総称する ) の著作者であると主張する原告が, 被告に対し, 被告による本件書籍の複製等が本件イラストに係る原告の著作権 ( 複製権 ) 及び著作者人格権 ( 氏名表示権 ) を侵害すると主張して, 著作権法 112 条に基づき本件書籍の複製の差止め及び廃棄等を, 同法 114 条 3 項, 民法 709 条に基づき損害賠償金 7 37 万円及びこれに対する不法行為の後 ( 訴状送達日の翌日 ) である平成 27 年 6 月 11 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める訴訟である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) ⑴ 当事者ア原告は, 昭和 40 年頃から各種イラストを創作して雑誌, 図鑑等に掲載しており, 現在もイラストレーターとして活動している ( 甲 1) イ被告は, 書籍, 雑誌その他印刷物及び電子出版物の企画, 製作, 発行及び販売等を業とする株式会社である ⑵ 原告の著作権原告は, 本件イラストの著作者である ( 別紙イラスト目録記載 6,8 及び 9の各イラストにつき甲 23,25,26 その余のイラストにつき当事者間に争いなし ) ⑶ 本件書籍の発行 - 2 -

被告は, 平成 24 年 3 月 30 日, 本件書籍を発行した 本件書籍は, 株式会社秋田書店が発行した 写真で見る世界シリーズカラー版怪獣ウルトラ図鑑 ( 昭和 43 年 5 月 30 日発行 以下 原書籍 という ) の復刻版であり, 本件イラストが掲載されている また,2ページの目次の左側に さの氏名が記載されているが, 本件イラストが掲載された各ページには著作者の氏名の表示はない ( 甲 16) 2 争点 ⑴ 本件書籍発行についての原告の許諾の有無 ⑵ 原告の許諾についての錯誤の有無 ⑶ 本件書籍における氏名表示権侵害の有無 ⑷ 損害額 3 争点についての当事者の主張 ⑴ 争点 ⑴( 本件書籍発行についての原告の許諾の有無 ) について ( 被告の主張 ) 被告の担当者が, 平成 24 年 1 月 6 日, 原告に対し, 本件書籍の趣旨及び概要を説明し, 許諾料を告げて本件書籍に本件イラストを複製して出版することについて許諾を求めたところ, 原告はこれを許諾した このことは, 同年 2 月 5 日に原告が許諾料の振込先を教示する電子メールを送信していることからも明らかである ( 原告の主張 ) 原告は, 担当者から本件書籍の発行及びイラストの許諾料の支払について話があった際, 本件書籍の元となった原書籍の発行を知らなかったので, 原書籍を見せるよう依頼したが, これを拒絶されたことから, 許諾するか否かの回答を留保した したがって, 振込先の教示にかかわらず, 本件書籍の発行について原告は許諾していない ⑵ 争点 ⑵( 原告の許諾についての錯誤の有無 ) について - 3 -

( 原告の主張 ) 被告の担当者は, 原告への電話で本件書籍の発行について説明した際, 原書籍にはイラストに名前がないので著者名が分からない旨述べた 本件イラストは, 元々, 雑誌の 特集ページ に掲載されていたものであり, 特集ページでは, 他のページ ( 記事ページ ) と異なり, 著作者である原告の氏名 ( 筆名を含む 以下 原告名 という ) がイラストごとに表示されていたことから, 原告は, 原書籍に掲載されているのは本件イラストとは別のイラストであると勘違いしたものであり, イラストごとに原告名が表示されていないことが分かっていれば, 許諾の意思表示をすることがなかった したがって, 仮に原告の許諾があったと認められるとしても, 意思表示の要素に錯誤があった ( 被告の主張 ) 本件書籍に掲載されるイラストが元々雑誌の 特集ページ とそうでないページのいずれに掲載されていたものかは原告の内心の問題にすぎず, 仮に錯誤があるとしても動機の錯誤であるが, こうした動機は全く表示されていないから, 意思表示の錯誤とならない ⑶ 争点 ⑶( 本件書籍における氏名表示権侵害の有無 ) について ( 原告の主張 ) 本件イラストは, 雑誌に掲載された際, イラストごとに原告の氏名が表示される 特集ページ に掲載されていた にもかかわらず, 本件書籍では, こうしたイラスト付近にあった原告名を抹消し, 目次において他の著作者と一緒に原告名が表示されている こうした方法は, 氏名の表記方法について公正な慣行に従ったものとはいえず, 原告の氏名表示権を侵害する なお, 被告は, 本件書籍における表記方法は原書籍と同一である旨主張するが, 原書籍 ( 甲 34) にそのような表示はなく, 被告主張は前提を欠いている - 4 -

( 被告の主張 ) 本件書籍の2ページにおいて, 挿絵の著作者として原告名が記載されている この表記方法は, 原書籍 ( 乙 5) のそれと同一である上, 単行本におけるイラストレーターの表記についての公正な慣行に従っており, 原告の氏名表示権を侵害しない ⑷ 争点 ⑷( 損害額 ) について ( 原告の主張 ) ア複製権侵害による損害被告は, 平成 24 年 3 月 30 日から平成 27 年 5 月 31 日までに本件書籍を少なくとも1 万 5000 部発行している 原告は, 被告に対し,10% の印税相当額を請求するのが相当であるところ, 本件書籍の定価は3800 円であるから, 原告の損害額は, 次の計算式のとおり,570 万円を下らない ( 計算式 )3800 円 1 万 5000 部 10%=570 万円イ氏名表示権侵害に対する慰謝料本件書籍において本件イラスト付近に原告の氏名を表示することに何ら問題がないにもかかわらず, 被告が原告名を省略して本件書籍を発行したことによって, 原告は精神的苦痛を受けた この苦痛を慰謝するのに必要な金員は,100 万円を下らない ウ弁護士費用原告は, 本件訴訟を提起するに当たり, 弁護士に依頼せざるを得なかったところ, これによって生じた費用のうち, 被告の行為によって通常生ずべき損害に当たる部分は,67 万円を下らない ( 被告の主張 ) 否認ないし争う 本件書籍の発行部数は5900 部である また, 本件書籍全体に占める原 - 5 -

告のイラストのあるページ割合はおよそ14% にすぎない上, 印税率 10% はイラストの使用料として通常考えられないほど高率である 第 3 当裁判所の判断 1 争点 ⑴( 本件書籍発行についての原告の許諾の有無 ) 及び⑵( 原告の許諾についての錯誤の有無 ) について ⑴ 後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば, 次の事実が認められる ア被告においては, 編集長のB( 以下 B という ) が本件書籍の発行を担当していた Bは, 平成 24 年 1 月頃, 原告に対し, 本件イラストを掲載した本件書籍を発行することを伝えた Bは, 同年 2 月 3 日, 原告に対し, 本件書籍が原書籍の復刻版であることその他の本件書籍の仕様, 発行時期等を記載した上で, 本件イラストの復刻使用料として1 万円を支払うとの申出をし, この使用料の振込先を教示願いたい旨の電子メールを送信した ( 乙 1) イ原告は, 同月 5 日,Bに対し, 原告名義の普通預金口座を振込先として指定し, これに続けて 以上宜しくお願い致します と記載した電子メールを返信した ( 乙 2) ウ被告は, 同年 5 月 7 日頃, 原告に対し,1 万円を上記口座に振り込んで支払った また, 原告は, その頃, 被告から本件書籍の送付を受けた ( 乙 4) エ原告は, 平成 26 年 6 月頃,Bに対し, 本件イラストの権利処理について説明を求めた Bが上記ア~ウの経緯を説明したところ, 原告は, 同月 26 日,Bに対し, 今回 2 年前に復刊ドットコム様には承諾した事は認識しております としつつも, 原書籍を見た記憶がなく, 原書籍の発行元である株式会社秋田書店の担当者に対して疑問や不満を抱いている旨を伝える電子メールを送信した ( 乙 4) ⑵ 上記認定事実によれば, 原告は, 被告が本件書籍の内容を説明して本件イ - 6 -

ラストの使用料の支払を申し出たのに対し, その振込先を伝えたものであり, さらに, 本件書籍の発行を承諾したことをその2 年後にも認識していたのである そうすると, 原告は, 遅くとも振込先を伝えた時までに, 本件書籍の内容とこれに本件イラストが掲載されていることを理解した上で, 本件書籍の発行を承諾する意思表示をしたものであって, この点につき原告に錯誤があるとは認められないと判断するのが相当である ⑶ これに対し, 原告は,1 原書籍を見たことがなく, その閲覧を被告の担当者が拒んだことから, 本件書籍の発行についての許諾を留保した,2 上記 ⑴ エの電子メールは振込先を伝えた事実を確認したものにすぎないとして, 本件書籍の発行を許諾したことを否定する そこで判断するに, 上記 1については, 本件書籍の発行の許諾が原書籍についての許諾を必ずしも前提しないこと, 原告による原書籍の閲覧を被告担当者が拒む理由が見当たらないことに加え, 仮に許諾を留保しているのであれば, 使用料の振込先を伝える際に許諾を留保する旨を併せて告げることに支障はないと考えられるのに, 原告が何らの留保なく振込先の預金口座を伝えていることからすれば, 原告の主張に係る事実を認めることはできない また, 上記 2については, 本件書籍の発行を許諾しないまま振込先を伝えることを 承諾 と表現すること自体が不自然であると解される したがって, 原告の上記各主張はいずれも採用することができない ⑷ 原告は, また, 仮に許諾があったと認められるとしても錯誤がある旨主張する そこで判断するに, この点に関する原告の主張は, 本件イラストの掲載に当たり原告名が表示されていないことが分かっていれば許諾をしなかったなどというものであって, 意思表示の動機に錯誤があった旨の主張と解される ところが, 本件の関係各証拠上, 上記の動機が表示されていたことはうかがわれないから, 原告の主張は失当と解すべきである 2 争点 ⑶( 本件書籍における氏名表示権侵害の有無 ) について - 7 -

⑴ 本件書籍には, 前記前提事実 ⑶のとおり, 目次の左側に原告名が記載されているが, イラストごとに著作者名の表示はない 原告は, イラストの付近に原告名が表示されていないことが, 氏名表示における公正な慣行に従っておらず, 氏名表示権を侵害する旨主張する そこで判断するに, 前記前提事実 ⑶に加え, 証拠 ( 個別に摘示するほか, 甲 16) 及び弁論の全趣旨によれば, 次の事実が認められる ア本件書籍は, テレビ番組 ウルトラセブン 及び ウルトラマン に登場する主人公, 武器, 怪獣等を専ら子供向けに紹介する図鑑であり, 本文は約 170ページで, ほとんどのページにイラスト又は写真が掲載され, これに説明文が付されている 本件イラストは, 本件書籍中 21ページにわたり掲載されており, 見開きページのほぼ全体を占めるもの, ページの下部に小さく表示されたものなどがある イ本件書籍には, 目次のページの さし絵 欄に原告を含む6 名の氏名が列記されているが, 本件イラスト及びその他のイラストのいずれについても, イラストが掲載されたページ内又はその付近に当該イラストの作成者の氏名が記載されたものはない ウ本件書籍は昭和 43 年 5 月 30 日に初版が発行された原書籍 ( 乙 5) をほぼそのまま復刻したものであり, 本件書籍における上記イのイラスト作成者の表示方法は, 原書籍におけるものと同一である ( なお, 昭和 53 年 9 月 30 日発行の原書籍の24 版 ( 甲 34) には, 目次のページに上記 さし絵 欄の氏名の記載がないが, これが初版と異なるものとされた事情は本件の証拠上明らかでない ) エ本件イラストは, 原書籍の発行以前に他の雑誌に掲載された原告のイラストをそのまま, 又はレイアウトを一部修正するなどして, 本件書籍に使用したものである 上記雑誌に掲載された際, 原告の氏名は, 当該イラストの付近に記載される場合 ( 別紙イラスト目録記載 1~7,10~13の - 8 -

各イラスト ) と, 雑誌の最終ページに 絵 として他のイラスト作成者の氏名と列記される場合 ( 同 8 及び9の各イラスト ) があった ( 甲 18~ 30) ⑵ 上記事実関係によれば, 本件イラストは, 原告以外の者が作成したイラスト及び記述した文書と共に本件書籍の一部を構成するにとどまるのであって, 復刻版である本件書籍の元となった原書籍の作成に当たり, その素材として, 既に雑誌に発表されていた原告作成のイラストが使用されたものとみることができる そうすると, 本件書籍のような複数の者のイラストが掲載されている書籍において, その作成者の氏名をイラストごとに個別に表示することを省略し, これを特定のページにおいてまとめて表示することが公正な慣行に反するということはできず, 氏名表示権を侵害することはないと判断するのが相当である ⑶ これに対し, 原告は, 雑誌の 特集ページ に掲載されていた本件イラスト付近にあった原告名を抹消したことなどから氏名表示権の侵害がある旨主張するが, 以上に説示したところに照らし, これを採用することはできない 3 結論以上によれば, その余の争点について判断するまでもなく, 原告の請求はいずれも理由がないから, これを棄却することとし, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 46 部 裁判長裁判官長谷川浩二 裁判官藤原典子 - 9 -

裁判官萩原孝基 - 10 -

( 別紙 ) 書籍目録 題号カラー版怪獣ウルトラ図鑑 [ 復刻版 ] 著者 C 発行者発行所発売元発行年月日 D 株式会社秋田書店被告平成 24 年 3 月 30 日初版発行 平成 25 年 2 月 28 日 5 刷発行 - 11 -

( 別紙 ) イラスト目録 1 ウルトラセブンの必殺わざ総まくり 2 これが地球防衛軍だウルトラホーク出動せよ! 3 ウルトラ警備隊の戦闘兵器ウルトラホーク1 号 4 ウルトラ警備隊のていさつ兵器ウルトラホーク3 号 5 ウルトラ警備隊の宇宙兵器ウルトラホーク2 号 6 これが地球防衛軍だこれがひみつ地下基地だ! 7 ペガッサ星人のマンモス宇宙都市 8 ガマクジラ 9 ペスター 10 金食い怪獣カネゴン 11 シャプレー星人の円盤 12 ベル星人の円盤 13 カネゴンのアイディア工作法 - 12 -