酪 農 田富高品質 堆肥生産利用組合の事例 ニーズに 沿った堆肥 保管庫等によ る利用拡大 付加価 値販売 住民と の交流 密閉式 臭気対策 水 稲 社団法人 藤原 尚 畜産協会 畑作物 野 菜 果 樹
中央市 78
2 組 構 堆 の概要 織 形 成 肥 員 生 産 態 任意組織 数 3戸 酪 農 家 1 戸 経産牛 25 頭 耕種農家 2 戸 トマト キュウリ 量 320t/ 年 平成 19 年度 堆肥化施設の全景 密閉縦型コンポを囲うように堆肥舎を建設 た から での袋詰堆肥販売 配置図 周辺図 所 在 地 市 老人ホーム 道 畑 施設配置図 自宅 牛 舎 牛ふん排出口 堆肥舎 密閉縦型 コンポスト 牛 袋詰め機 舎 脱 臭 装 置 市 道 79
活動の経緯 農業振興地域における土づくりの必要性 本地域は県内一の土地生産性を誇る施設野菜を中心とした都市近郊型農業を行っており 特に 町の南部地区は県下有数の産地としてキュウリは県内 1 位 トマトは県内 2 位の出荷量を誇る ところが近年耕地に対する堆肥等の有機質肥料の施用が減少し 地力が落ちていることが課題と なっていた 一方 酪農を中心とする畜産農家では 家畜排せつ物法の制定により家畜排せつ物処理施設の 設置や さらには耕種側のニーズに応える為の高度処理施設整備が必要だという声が上がり始め ていた 発想の転換 堆肥の処理から製造へ 同じ頃 田富地域で酪農経営を営む渡辺氏も 子ども達に安全で安心な無農薬有機栽培の野 菜を食べさせたい との想いから地域の耕種農家や行政と話し合いを重ね 地域に還元できる 良質な有機肥料を生産するため 堆肥製造施設を整備する必要性を感じるようになっていた そこで 地域で堆肥の 処理 から 製造 へと考え方の転換を図る中で 副産物の堆肥に付 加価値をつけ商品化する取り組みを行うこととした を立ち上げる 以上のような経緯を受けて 酪農経営を営む渡辺氏が中心となり平成 16 年度 家畜ふん尿処 理の生産 流通を円滑化し資源循環型農業の構築を図るために国 県 町の補助事業を利用し を立ち上げた 活動の概要 畜産農家 耕種農家 オガクズ 購入 野菜 家畜ふん 7 2 1 t /年 特 徴 水田 ①密閉堆肥化施設の設置により 臭いの少ない 良質堆肥が生産されている 果樹 原料混合 ②施 設 野 菜 を 中 心 と し た 地 域 農 業 と 連 携 し 堆 肥生産と供給に努めた取り組みが行われてい る 農作物 堆肥生産量 3 2 0 t/ 直 売 所 1 6, 5 0 0 円/2 t 車 6, 5 0 0 円/軽トラ 1. 2 m 3 t バ ラ 農事組合法人た から 袋詰 4 0 0 円/1 袋 80
家畜排せつ物の有効な利活用等 1 地域循環型農業への取り組み の活動 農産物の収量増への取り組み 田富高品質堆肥利用組合の取り組みのひとつとして 組合員であるキュウリ トマト農家の協 力のもと 堆肥の施肥量及び品質に対する野菜の収量 品質について研究を重ねている その経 験を生かし 堆肥販売の際に 堆肥の使い方 として 施肥設計に関するアドバイスをしている 中にはキュウリの収量が 1.5 倍に増えた農家もおり 今では口コミで利用が広がっている 今後はそういった実験データを集積し 地域における耕種農家の土づくりの一助となるよう努 力していきたいとしている 販売所と堆肥製造施設の一貫整備 上記のような耕畜連携での堆肥施用技術研究の他 利用組合では 販売先と堆肥製造施設の一 貫整備 することを目的とし 旧田富町役場や県 畜産協会と協議を重ねながら 平成 17 年に 地域の畜産農家や耕種農家と共に た から農産物直売所運営組合 を立ち上げた そこで 農 産物の販売や後継者育成及び集客アップを目指した体験イベントを行い 地域農業の振興に努め ている で生産された堆肥 主に袋詰 バラ売りは注文を受け付ける や その堆肥を利用した農作物などもここで販売されている 少量でも出荷できるため 市場出 荷が困難な高齢農家や兼業農家も販売することが可能であり 参画者も増えている 製品につい ても品質が良いと好評で 午前中には商品がほぼ売れてしまうこともよくある 直売所の売上に ついても初年度は約 9,900 万円であったが 翌年 平成 19 年度 は 1 億 6,900 万円と約 7 割アッ プしている 今年 平成 20 年 は さらに事業を拡大するために 農事組合法人た から に組織を改編した 8 月 9 日に設立総会を開き 今後は地域の遊休農地 田富地区で約 8ha を利用した野菜生産や 加工品の製造にも取り組む方向で進めている 農事組合法人た からの全景 県外からも購入者が訪れる 81
た から 内部 2 地域社会との調和や地域社会の活性化に対する貢献 地域との交流 生き物を飼育して牛乳や肉等の食料を生産する またそこから出てくるふん尿を資源として循 環する等 畜産の多面的機能を活かし 渡辺氏自身は牧場を教育の場として積極的に提供してい る また 市内の小 中学校へ堆肥を供給し 花壇等緑化への協力も行っている 近隣の小中学 校へ出向き 講義を行うこともある 牧場の向かいにある老人ホームにも 無農薬の野菜を提供したい として 施設の職員と協力 し 堆肥の提供とともに野菜作りも指南しながら交流を行っている 地域との共存あってこその 畜産経営 という信念が根底にある 経営向かいの老人ホーム 手前が供給した堆肥を入れて 施設職員が野菜を作る畑 82
堆肥化等処理技術の創意工夫 1 家畜排せつ物の処理 利活用の流れ 堆 肥 処 理 施 設 原 材 料 生 産 量 約 3 2 0 t/ 販 売 先 年 農事組合法人 水脱式脱臭槽 乳用牛約 42 頭 密閉型堆肥舎 た から バラ出荷 12m 2 2 1 0. 5 t/ 牛ふん約 2 t/日 年 1 6, 5 0 0 円/2 t 車 約 1 t /日 堆積(2 0 日間) 切り返し 1 回/3 日 6, 5 0 0 円/軽トラ 1. 2m 3 密閉縦型発酵処理機 7 1 0 日間 5 0 m 3 果樹農家 堆肥盤 (主に桃等) 1. 5 t /反 (1 0 日間) 袋詰出荷 オガクズ 1 0 9. 5 t /年 0. 3 t /日 堆積 (5 日間) 4 0 0 円/ 袋 袋詰め 野菜農家 2 3 t /反 堆 肥 成 分 水分 C/N 比 EC 全窒素 全リン酸 カリウム 水稲農家 27% 25% 1.5 % 0.77% 2.2% 5 0 0 k g /反 周辺環境への配慮 住宅に囲まれた周辺環境から頻繁に切り返しが出来ない為 組合で密閉縦型堆肥化処理機を導 入し さらに全施設を堆肥舎で覆い この中で堆肥の製造 袋詰め作業まで一貫して行っている 密閉縦型堆肥化処理機から出てくる臭気については 渡辺氏自身が以前設備工であったため その経験を生かして考案した水脱式の脱臭層で処理している 堆肥を荷台に積む作業も購入者に任せるのではなく自ら行い トラックが曲がるときに荷崩れ しないように覆いを被せるなど 細やかな対応が好評を得ている また 堆肥を積んだトラック が出た後は道路の掃除も行い 周辺住民への気遣いも欠かさない 販売についても 店任せの流通 販売ではなく 付加価値をつけた堆肥の商品化をどうするの か 需要者の声をもとに良質堆肥を生産できる技術研究を常に心がけている バラ堆肥の積み込み作業 手前が渡辺氏 カーブを曲がる際にも荷崩れしないように配慮 密閉縦型堆肥化処理機 83
製品堆肥 野菜農家からも 扱いやすく収量が増えた と評判の堆肥 水脱式脱臭機 臭気対策 堆肥盤での切り返しは夜間に行い その際には敷地の境界地点でお香を焚く お香が焚き終る 30 分以内に作業を完了することを心がけている また 敷地の境界線には珊瑚樹を緩衝帯として植えている 緩衝帯として植樹された珊瑚樹 利用者の声 地元野菜栽培農家の声 生育が良く味も良いとの評判で 収穫量も多くなった 果樹栽培農家の声 品質が一定して果物に甘みが多く 収穫量も多くなった た から で売られている堆肥と野菜 84
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