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32 エアフローについて り 室内空気を誘引します 図5 誘引比は一 夏期の除湿モードでは 外気はと全熱交換 次空気100 /hに対し350 /hの室内空気を誘引 器で熱交換し プレクーラーで予冷し相対湿度を し 450 /hの風量として室内に吹出されます 高めます 次にデシカントローターで除湿した

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1. 背景 目的 -1- CO2 排出量 の削減 地球温暖化防止 電力消費の削減と平準化 電力不足への対応 グローバルな要求事項 今後の電力供給体制への影響が大きい 地球温暖化が叫ばれる中 グローバルな要求事項として CO2 排出量の削減が求められている 加えて震災後の電力供給体制に対し 電力消費そ

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発売の狙い 昨今の電力事情から節電に対する関心は高く 業務用エアコンにおいてもより一層の省エネ 節電を強く求められています また エネルギー効率が高い製品の使用を促進するために 省エネルギー法で 2015 年度に具体的に達成すべき基準値が定められています 当社は今回 機器本体の省エネ性の向上を図り

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図 - 1 設備関連改修工事の取組み 2. 自然エネルギーと高効率機器を利用した熱源システム 2.1 熱源システム概要熱源システムは, 自然エネルギーの有効利用 高効率 トップランナーシステムの採用 をポイントとして計画し, 電気とガス, および氷蓄熱システム ( 既設再利用 ) による夜間電力を利

出荷総冷房能力比 効率比 潜熱比 2% 18% 16% 14% 12% 1% 8% 6% 4% 2% % % 蒸発温度 ( ) 35% 3% 25% 2% % 1% 図 2 冷媒蒸発温度と効率

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14/7/4 冷房による消費エネルギーと二酸化炭素排出量 家庭部門 : 電力 kwh 業務部門 : 電力 kwh ガス MJ 石油 MJ 熱 MJ 7 万トン 万トン 引用 : エネルギー 経済統計要覧 ( 日本エネルギー経済研究所計

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3. 測定結果 床吹出し空調は 7 階会議室と 17 階幹部室で実施したが 計測結果は室用途や使用状況から若干の違いはあるものの ほぼ同様な傾向を示すことから本報告はその内容を特徴的に表す 17 階幹部室の計測データを報告する 夏期 (1) 室内温度分布 冬期 図.4 17 階幹部室温度 ( 床吹出

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3.9 最大冷房潜熱出力冷房設備機器が運転時の外気温湿度等の条件に応じて処理できる最大の潜熱能力 3.10 最大冷房潜熱負荷ルームエアコンディショナーにおける室内機の熱交換器において ある処理冷房顕熱負荷が与えられた場合に 最大で処理できる冷房潜熱負荷のことであり 熱交換器表面の温度分布や室内機吹き

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CONTENTS BX300 仕様表... 1 BX600 仕様表... 1 BX900 仕様表... BX1200 仕様表... BX 仕様表... BX LDP 仕様表... 除湿性能表... 4 ご照会 FAX 用紙 BX シリーズ製品特長

補足資料 1-2 運用実施 温水ボイラの空気比低減による燃料消費量の削減 (13A ガス ) 現状 問題点都市ガスボイラを使用 燃料を完全燃焼させるための空気比が大きい ( 排ガス温度 200 空気比 1.5) そのため 排ガス量が増加し 排ガス熱損失が増加している 空気比 21/{21-( 排ガス

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発売の狙い 2010 年の改正省エネルギー法施行に伴う省エネ措置報告義務の対象範囲拡大により 建物のエネルギー消費量のうち大きな割合を占める空調機器や低温機器の省エネ 運用管理がますます重要になり 空調冷熱設備全体の集中管理 エネルギー消費量の見える化に対する需要が拡大しています この空調冷熱設備全

この一連の作業の中で もっとも重要なのは第 3 段階のスクリーニングである 概略でも費用対効果を念頭に置いた判断が必要なので 経験のあるエネルギー管理者と工事管理者の両方の参画が望ましい それでも第 4 段階で行われる詳細検討の結果 候補テーマが採用できない結果になることも珍しくない 理由としては処

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する 熱源システム構成を図 に示す 真空管型太陽熱集熱器と CGS は並列接続されており これらの混合温水が排熱投入型吸収冷温水 機 デシカント空調機の再生コイル 暖房用熱交換器 給湯用熱交換器の順にカスケード利用される 図 2 にデシカント空調機の概要と計測点を示す 対象建物は地下ピットを利用した


自然熱エネルギー 未利用エネルギーを活用し 環境配慮に貢献する 配管システムのご提案 クリーンな エネルギーを 有効利用 で 様々なシーン ギー 利 用 自 然 熱 エネ ル 未利用熱回収タンクユニット ホット Reco FRP製貯湯槽 ホットレージ 熱交換槽 貯湯槽 架橋ポリエチレン管 温泉引湯

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新技術 新製品 ヒートポンプを使った高効率リタンエアデシカント外気処理機 RADESC( ラデック ) 営業本部開発営業部 石川幸次昭和鉄工 東京開発営業 G 1. はじめに昨今,CO2 排出量削減が求められるなか, オフィスビルや商業施設等の業務部門では, 依然として排出量が増加しており, その大半は空調機器のエネルギー消費によるものである 空調機器業界では, 空調機の省エネルギー化, 高効率化が進められているが, 温度と湿度をまとめて処理する冷却減湿方式の空調機では, これ以上の効率を求めるのは困難になりつつある 空調設備設計においては, 新築建物の平均でネット ゼロ エネルギー ビル (ZEB) の実現を目指す動きがある それを実現するためには空調設備の省エネルギー化が必須であり, 省エネルギー空調システムとして各空調学会等でも実証されてきている潜熱顕熱分離空調システムがある ( 図 -1) 潜熱顕熱分離空調システムには外気処理としてデシカント外気処理機が使用されるケースが見受けられ, ここで弊社のデシカント技術を用いた外気処理機 ( 高効率ヒートポンプ式リタンエアデシカント外気処理機 ) を中心に, 特徴および製品の導入事例を説明する 2. リタンエアデシカント方式について 2-1 リタンエアデシカント方式概要新方式のリタンエアデシカント方式を採用した リタンエアデシカント外気処理機 RADESC( ラ 図 -1 潜熱顕熱分離空調システム BE 建築設備 2017 年 2 月号 57

デック ) ( 以下 RADESC) では, デシカントローターに全熱交換器を組み合わせた機器構成となっている ( 室内からの還気 ( リタンエア ) をさらに除湿し, より低湿度となった空気と外気を全熱交換して室内空気と同じ絶対湿度を得ることのできる高効率の外気処理機である )( 図 -2) 従来の2ロータータイプのデシカント ( 図 -3) と比較すると, 熱回収を行うのが顕熱交換器ではなく全熱交換器である点や, デシカントローターの除湿対象が外気ではなく還気である点などが大きな違いである 2-2 リタンエアデシカント方式の特徴 RADESC はデシカントローター自体に求められる必要除湿量が少ないため, 再生温度が低く40 ~60 と抑えられる RADESC の プレクールタイプ ( 冷却コイルの配置を給気流路側から還気流路側のデシカントローター前に移動したタイプ, 図 -4) は, 再生温度が40~50 と低くヒートポンプの凝縮熱レベルでもシステムが成立する 熱源をヒートポンプとした場合, 機器構成において冷却コイルが蒸発器に, 再生コイルが凝縮器に相当する ヒートポンプ内蔵により自己完結型 の装置となるため, 安定した排熱や熱源のない物件にも容易に導入することが可能となる 2-3 リタンエアデシカント方式の動作本機器の主な構成は, デシカントローターと全熱交換器, 加熱コイル, 冷却コイルである 機器構成と流体の流れを図 -5に示す 夏期は, 還気空気を冷却コイルで予め冷却し, その冷却した還気空気をデシカントローターで除湿を行い, 除湿した還気空気と外気を全熱交換器で全熱交換して室内へ給気するプロセスである 夏期の外気処理プロセスを以下に説明する 還気空気 3を冷却コイル ( 蒸発器 ) で4まで冷却し, デシカントローターで 5まで除湿する 5 の空気と外気空気 1を全熱交換器で全熱交換し, 処理した外気空気 2を給気する 全熱交換器の排気側は6になり加熱コイル ( 凝縮器 ) で7まで加熱後, デシカントローターを再生し8を排気する 夏期外気処理プロセスを空気線図 ( 図 6) に示す 続いて冬期の外気処理プロセスを以下に説明する 暖房時の流体の流れを図 -7に示す 図 -2 リタンエアデシカント方式 図 -4 RADESC プレクールタイプ 図 -3 従来のデシカント方式 図 5 流体の流れ ( 冷房時 ) 58 BE 建築設備 2017 年 2 月号

処理プロセスを図 -8に示す 端的にいえば本システムは全熱交換の効率を最大限に引き出す仕様で, デシカントローターをサブに配し, 外気処理は最終的に全熱交換器のみで行うものである RADESC は冷却 放熱の双方が必要なデシカントシステムに, ヒートポンプサイクルの冷却 ( 蒸発器 ) と放熱 ( 凝縮器 ) をバランス良く組み込んでいる 図 6 夏期外気処理プロセス図 7 流体の流れ ( 暖房時 ) 図 -8 冬期外気処理プロセス還気空気 3を加熱コイル ( 凝縮器 ) で4まで加熱し, デシカントローターで 5まで加湿する 5 の空気と外気空気 1を全熱交換器で全熱交換し, 外気空気 1を処理し室内へ給気 2する 全熱交換器の排気側は6になり冷却コイル ( 蒸発器 ) で7 まで冷却後, デシカントローターにて除湿し8を排気する ( 理論上, 無給水加湿を実現 ) 冬期外気 3. ヒートポンプ式リタンエアデシカント外気処理機 3-1 RADESC 機器の構成前項で説明したヒートポンプ式 RADESC は一体型構造である 主要部品であるデシカントローター, 全熱交換器ローター, 給気 FAN, 還気 FAN, 蒸発器, 凝縮器, 圧縮機, 制御盤の全てが本体の中に配置されている ヒートポンプ式であるが, 一体型ゆえに室外機を別設置する必要はない 機器詳細図を図 -9に示す 3-2 RADESC 機器の仕様ヒートポンプ式 RADESC は風量帯別の5 機種があり, 型式 風量は以下のとおりである HCDR-4000G ~ 4,000CMH HCDR-6000G ~ 6,000CMH HCDR-8000G ~ 8,000CMH HCDR-10000G ~10,000CMH HCDR-12000G ~12,000CMH 給気用送風機と還気用送風機はプラグファンを使用し, 電動機にはインバーターを標準装備する ヒートポンプ式 RADESC は外気処理機である ゆえに給気の温度と相対湿度をコントロールする 付属のリモコンで設定された給気温湿度値に従い, 外気全熱処理量に適した機内の最適制御を行う 運転モードは, 手動時には 冷房除湿 暖房加湿 全熱交運転 送風運転 自動運転 と選べ, 自動運転 を選択時には外気温度( 機内外気温 BE 建築設備 2017 年 2 月号 59

風量比でも対応が可能である 2-3 項でRADESC の動作を説明したが, RADESC は給気温湿度 還気温湿度 外気温湿度も機器選定に重要なファクターである 機器選定および性能確認の上で, 風量 風量比 各温湿度条件は必須となることをご理解いただきたい 風量 風量比 各温湿度の条件が揃えば, 弊社ではシミュレーションソフトを使いRADESC システムが成り立つか検証を行っている 採用検討の際は弊社へご相談願いたい 図 -9 ヒートポンプ式 RADESC 詳細図度センサー ) で 冷房除湿 暖房加湿 全熱交運転 の3モードを自動で選択し, 外気処理運転する 外部からの運転入力信号の受け付けも可能で, 冷房除湿 暖房加湿 全熱交運転 送風運転 自動運転 のモード入力と, 変風量信号 (4~ 20mA) の入力も標準で備える また, 希望に応じて夜間送風運転 ( シックハウス対策 ) の対応も行う 3-3 RADESC 機器の選定について RADESC は還気の熱を利用したシステムである ゆえに還気量の確保が必要である 処理外気給気量と還気量の風量バランスについて,( 給気 )100:( 還気 )100 の風量比がもっとも RADESC の性能を維持できる 建物のトイレ換気等により外気給気をプラス風量で送る必要があるが,( 給気 )100:( 還気 )75 の 4. ヒートポンプ式 RADESC の納入事例以下に納入事例を紹介する 4-1 都内某オフィスビル新築設置場所 : 東京都内延べ床面積 : 床面積 8,652.86m 2 階数 構造 : 地上 8 階 地下 2 階,SRC 造働きやすさ, 省 CO2 化等, 環境への優しさを高次元に両立する次世代環境志向オフィス 床吹出空調と天井スラブ放射空調を採用し, ペリメータアイルの緩衝空間でペリメータ空調レス化により快適な放射環境を実現した 吸着式冷凍機からの中温度冷水を使った放射冷房には除湿された外気導入が必須である 過冷却空気では相対湿度の高い処理外気を導入することとなり, 室内環境と同等の温湿度まで処理された外気としてはデシカントが理想である デシカント機を使用するために新たな冷温水の確保はしづらく, 効率の良いヒートポンプを利用したRADESC に注目をいただいた 本件設計者は, 外気側に井水 雨水熱利用コイルを配し ( 外気プレクール ), 外気の1 次顕熱処理を行うことでヒートポンプエネルギー消費の抑制を狙った ( 図 -10 参照 ) 使用したRADESC は8,000CMH のタイプで型式はHCDR-8000G, 地下機械室に4 台設置している ( 写真 -1) 室内設置のCO2 センサーにより外気処理風量を決定し,4 台のRADESC を変風量および台数制御運転し運用している ( 制御は計装工事区分 ) 60 BE 建築設備 2017 年 2 月号

図 -10 RADESC 外気プレクール概要 写真 -2 RADESC 屋外仕様横型 写真 -1 RADESC 設置風景 図 -11 RADESC アフタークール概要 4-2 某メーカー研究棟新築 RADESC12,000CMH のタイプを納品し, 型式 HCDR-12000G を4 台設置した RADESC は縦型が標準であるが, 建物の外観を損なわないよう低高である横型を製作した ( 写真 2) 4-1 項と同じように井水コイルを設置しているが, 本件の設計者の意図は, 自然エネルギーである井水を利用したかったことと,RADESC の給気温度設定値をおさえてヒートポンプの消費エネルギーを抑制することにあった 夏期の運用において効果を発揮する ( 図 -11) 4-3 某学校図書館新築 RADESC10,000CMH のタイプを納品し, 型式 HCDR-10000G を1 台設置した ここではフィールドデータを紹介したい 図 - 12 に外気除湿処理の状況を表す 外気絶対湿度 20.0g/kg(DA) に対し,RADESC は給気絶対湿度 10.5g/kg(DA)(= 設定値 ) まで除湿処理できている 図 -13 に性能評価を示す 図 -12 外気除湿状況 図 -13 性能評価 BE 建築設備 2017 年 2 月号 61

外気全熱処理量とRADESC の装置消費電力値によりエネルギー成績係数 (COP) を算出したところ, 夏期最大でCOP 値 8 以上を記録した 外気全熱処理量が大きいほど高くなる特性がある 5. おわりに RADESC は, 排気される室内還気を効率良く熱回収できるため, 少ないエネルギーで外気処理を行うことができる また, 冷温水型では中温度冷水や低温排熱利用が可能であり, これまで使用していなかった熱を効率よく利用できる 近年, 外 気のCO2 濃度が上昇傾向であり, 室内のCO2 濃度を低下させるために, 外気導入量は今後, 増加していくことが考えられるため, 外気処理機の省エネルギー面での役割は大きくなると予想される 弊社はヒートポンプを使用した外気処理機の分野ではチャレンジャーである RADESC で培った経験や技術をもとに, さらなるRADESC の高効率化や新たな外気処理機の検討を行い, 少しでも空調設備の省エネルギーに貢献できれば幸いである メディアニュース TOTO/ 海外にトイレ技術 / 水の洗浄エネルギー生かす TOTOがトイレの節水洗浄技術の海外展開を進めている 米国では過去の洗浄性能の調査で同社の製品が1~3 位を獲得し, 欧州では洗浄性能評価で1,5,10 位になるなど, 世界的に高い評価を得る 国内で開発した洗浄システムをプラットフォーム化し, 各国に輸出する体制を整えつつある 同社の売り上げに占める海外比率は2009 年には 12%,15 年で 22% と徐々に存在感を増してきた 17 年度には 24% の1580 億円まで引き上げることを目標に掲げる 同社では一連の洗浄動作において, 水の勢いを操作して効率的に便器の中身を押し流す技術を, ガソリンからエネルギーを取り出す車のエンジンになぞらえ 洗浄エンジン と呼称する 便器洗 浄, 汚物の便器内からの排出, 下水管内での搬送性能の3つの機能に着目し, できるだけ少ない水で便器内の汚物を洗い流す技術の開発に取り組んできた タンクレストイレ ネオレスト シリーズでは, 水たまりの下からジェットで水を噴出して汚物を排出するシステムで大幅に節水し, トイレの腰掛け側から強い旋回水流を流す トルネード洗浄 もほぼすべてのトイレに採用する こうした技術は粘土によるモデル作成の後, スーパーコンピューターによる流体解析や3Dプリンターによる試作を繰り返して作り込む 近年では技術の進歩により, 開発プロセスがスマートになり, 製品完成度も向上した 同社は節水便器を販売して40 年目となる 日本の優れた洗浄技術を世界各地の便器デザインに掛け合わせ, さらなる販売拡大を進める ( 建設通信新聞 2016 年 12 月 1 日付 ) メディアニュース 62 BE 建築設備 2017 年 2 月号