市場単価方式に関する調査研究 ( 平成 28 年度 ) 調整役 柳谷和正 調整役 山田隆清 調整役 月居 章 総括主席研究員 岩松 準 主席研究員 佐野和延 主席研究員 明瀬明史 主席研究員 鹿窪 努 1 はじめに建築工事市場単価方式は 積算の機動性の確保 客観性 説明性の向上及び積算の省力化等の観点から平成 11 年 4 月より本施行され その後順次工種の拡大が図られ 平成 23 年度までに建築工事 電気設備工事 機械設備工事において 18 工種 40 分類 ( 文末の参考資料を参照 ) の建築工事市場単価 ( 以下 市場単価 という ) が本施行されている しかし 平成 23 年度をもって市場単価の工種拡大は困難との結論に至り 平成 24 年度からは 市場単価へ移行した工種の安定的な運用を図るため フォローアップ等の取り組みを行っている 2 平成 28 年度の取り組み市場単価のフォローアップ等に関する内容は 学識者 発注者 受注者 第三者機関 調査機関 当研究所 ( 事務局 ) 等で構成する 建築工事市場単価方式調査研究会 及び研究会の下に設置した 検討部会 並びに 作業部会 において以下の検討を行った 建築工事市場単価の本施行調査要領等について 市場単価調査票の改善について 調査標本数の確保について 市場単価の調査方法の判定結果について 建築市場単価の経年変化の動向について 3 研究内容 3.1 建築工事市場単価の本施行調査要領等について 建築工事市場単価本施行調査要領 に記載のある 基本調査 と 定点調査 の調査対象事業所の内容について 昨年度に引き続き 調査機関である両調査会 ( 建設物価調査会 経済調査会 ) と打合せを行った その結果 基本調査 と 定点調査 の調査対象事業所について解り易い表現に改定することとした また 建築工事市場単価フォローアップ要領 についても 同様の改定を行った 3.2 市場単価調査票の改善について 市場単価調査票 と 公共建築工事標準単価積算基準 及び 公共建築工事標準仕様書 と 116
の整合性について内容を検討した 建築工事では塗装工事の錆止め塗り 機械設備工事では衛生器具取付工事の調査票について改定を行った また 各市場単価の細目名称 規格 仕様 ( 適用 ) について 字句等の表現を一部改定したが 来年度も継続して調査票の改善に向け 検討することとした 3.3 調査票本数の確保について建築工事市場単価フォローアップ要領の 3-1 既細目データの確保が困難になった場合 の細目について 昨年度に引き続き 検討した 調査票本数の減少の原因は SRC 造の減少にみられる建物構造の変化も一因と考えられるため 両調査会から作業部会への標本数の情報提供を受け 取り組みを継続した 3.4 市場単価の調査方法の判定結果について市場単価に急激な価格変動等があった場合にはフォローアップ要領に基づき 調査方法の変更にて対応している 対応方法は 原則として対象工種を定点調査 ( 代表細目 ) から基本調査 ( 全細目 ) としている 平成 28 年度の調査方法の判定結果は下記による 平成 28 年 4 月期建築工事 : 鉄筋工事と型枠工事を基本調査とした 電気設備工事 機械設備工事 : 変更無 平成 28 年 7 月期変更無 : 実施要領により 全工種を基本調査としている 平成 28 年 10 月期建築工事 : 鉄筋工事 型枠工事 左官工事を基本調査とした 電気設備工事 機械設備工事 : 変更無 平成 29 年 1 月期建築工事 : 鉄筋工事 圧接工事を基本調査とした 電気設備工事 機械設備工事 : 変更無 3.5 市場単価の経年変化の動向について最近の建築コスト ( 市場単価 施工単価 材料単価 労務単価 ) の価格変動の有無 価格動向 傾向等についての調査 分析を行った (1) 検討品目 市場単価:40 品目 ( 建築 18 電気 13 機械 9) 施工単価:6 品目 ( 建築 4 電気 1 機械 1) 材料単価:18 品目 ( 建築 12 電気 4 機械 2) 労務単価:11 工種 ( 建築 9 電気 1 機械 1) (2) 検討内容 長期的な価格変動の傾向 四半期ごとの最新価格動向の把握 地域ごとの価格状況の比較 117
(3) 最近 6 年間の市場単価の価格変動 ( 両調査会の平均値 ) 図 1 図 2に価格変動の大きい 鉄筋加工組立費 ( 施工費のみ ) 及び普通合板型枠の2011 年 4 月 ~2017 年 1 月の価格変動 ( 両調査会の平均値 ) の推移を示す グラフの値は3カ月ごとの調査結果であるため 説明本文と実際との間で数カ月のずれが生じている 例えば 2011 年 10 月にし という説明は 実際は2011 年 10 月 ~12 月にしたことを意味している 停止 価格下落 ( 仙台 ) 価格下落 ( 東京 ) 価格下落 ( 名古屋 ) 図 1 6 年間の価格変動の推移鉄筋加工組立費 ( 施工費のみ ) 図 1は鉄筋加工組立 ( 施工費のみ ) の価格変動の推移を表したものである 2011 年 10 月にを始め 2013 年 7 月 ~2015 年 1 月 ( 東京は2014 年 10 月 ) に大きく上昇した その後は落ち着いた状況になったが 東京 名古屋は2015 年 10 月 仙台は2016 年 4 月以降 値下がりが続いている 東京 仙台 新潟のが著しかったことから 東京 仙台 新潟と他地域との間に大きな価格差が生じたが 最近は東京との価格差がなくなりつつある 停止 価格下落 ( 仙台 ) 価格下落 ( 東京 ) 図 2 6 年間の価格変動の推移普通合板型枠 図 2は普通合板型枠の価格変動の推移を表したものである 鉄筋加工組立と同様 2011 年 10 月にを始め 2013 年 7 月 ~2015 年 1 月に大きく上昇した その後は落ち着いた状況にな 118
市場単価導入リーマンショック東日本大震災市場単価導入リーマンショック東日本大震災ったが 東京は2015 年 7 月 仙台は2015 年 10 月以降 値下がりが続いている 東京と仙台の価格が大きく上昇したことから 東京 仙台と他地域との間に大きな価格差が生じたが 最近は価格差が小さくなりつつある (4) 市場単価導入後の長期価格変動の推移 ( 両調査会の平均値 ) 図 3 図 4に価格変動の大きい 鉄筋加工組立費 ( 施工費のみ ) 及び普通合板型枠の市場単価導入後の価格変動の推移を示す 価格は両調査会の平均値としている 図 3 市場単価導入後の価格変動の推移鉄筋加工組立費 ( 施工費のみ ) 図 4 市場単価導入後の価格変動の推移普通合板型枠 市場単価の長期的な価格変動は 1999 年 4 月に導入後 2004 年 10 月まで値下がりし 2006 年 10 月頃から上昇気配にあったところ 2008 年のリーマンショック以降大きく値下がりした そして 2011 年の東日本大震災後 東京や仙台を中心に上昇に転じ 2015 年 1 月以降 落ち着いた状況が続いている 119
(5) 市場単価と設計労務単価の推移 2011 年度以降 東日本大震災の復興需要や労務需給のひっ迫により 建築躯体工事を中心に市場単価が大きく上昇し 他方 2013 年度には 公共工事設計労務単価 も上昇した 代表的な工種の市場単価と関連職種の設計労務単価について 東京の最近 6 年間の変動状況を比較した 市場単価は年度ごとの両調査会の平均値とし 変動状況は2010 年度の値をとした場合の指数を比較した 表 1に市場単価の変動状況 表 2に設計労務単価の変動状況を示す また 図 5に市場単価と設計労務単価の変動状況の比較を示す 表 1 市場単価の変動状況 ( 東京 ) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 1 鉄筋加工組立 ( 施工費のみ ) 2 普通合板型枠 3 床コンクリート面直均し仕上げ 4ケーブルラック 5 衛生器具取付 ( 取付費のみ ) 円 /ton 円 / m2円 / m2円 /m 円 / 組 26,250 2,621 374 8,146 19,703 31,250 2,659 373 7,958 19,690 39,375 3,684 380 7,930 19,690 44,375 4,263 386 8,043 19,690 54,500 5,213 435 8,573 19,920 56,125 5,400 495 8,908 20,425 52,500 5,075 505 8,945 20,438 指数指数指数指数指数 119 101 98 150 141 102 97 169 163 103 99 208 199 116 105 101 214 206 132 109 104 200 194 135 110 104 ( 注 ) 指数は2010 年度の値をとする 表 2 設計労務単価の変動状況 ( 東京 ) 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 a. 鉄筋工 b. 型枠工 c. 左官 d. 電工 e. 配管工 円円円円円 / 組 17,800 17,000 18, 18,800 18,500 18,200 16,600 17,700 19,200 18,000 18,700 17,000 18,200 19,300 17,300 22,200 20,200 22,300 21,700 19,500 24,000 22,800 24, 22,600 20,400 24,800 23,500 24,900 23,600 20,700 25,700 24,300 25,800 23,300 20,500 指数指数指数指数指数 102 98 98 102 97 105 101 103 94 125 119 123 115 105 135 134 133 120 110 139 138 138 126 112 144 143 143 124 111 ( 注 ) 指数は2010 年度の値をとする 東日本大震災 設計労務単価上昇 図 5 市場単価と設計労務単価の変動状況 ( 東京 ) 120
2010 年度以降 東京では 建築躯体の鉄筋加工組立 ( 施工費のみ ) 普通合板型枠は 市場単価と設計労務単価の双方が大きく上昇した 市場単価の上昇が設計労務単価の上昇を大きく上回っている 4 今後の取り組み 建築工事市場単価本施行調査要領及びフォローアップ要領等 に基づき 市場単価のフォローアップを下記項目について重点的に取り組むことにしている 市場単価の動向について 市場単価調査票の改善( 標準単価基準との整合を含む ) 市場単価の追加細目の検討 各団体との情報交換の実施 市場単価本施行調査要領等に対する検討 参考資料市場単価 ( 本施行 ) 導入工種及び分類 年度 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 建築工事 電気設備工事 機械設備工事 工種 分類 工種 分類 工種 分類 型枠工事 型枠 配管工事 電線管 ダクト設備工事 アンク ルフランシ 工法 鉄筋工事 加工組立 コーナーホ ルト工法 防水工事 アスファルト防水 スハ イラルタ クト (3 分類 ) (1 分類 ) (3 分類 ) コンクリート工事打設手間 配管工事 ケーブルラック 衛生器具設備工事衛生器具取付け コンクリート工事ポンプ圧送 位置ボックス 鉄筋工事 圧接 (3 分類 ) (2 分類 ) (1 分類 ) 左官工事 左官 配管工事 プルボックス ダクト設備工事 チャンバー 動力設備工事 電動機その他接続材料 組立てチャンバー 接地工事 接地極 ボックス 雷保護設備工事 接地極埋設標 (1 分類 ) (4 分類 ) (3 分類 ) 土工事 土工 配管工事 2 種金属線ぴ ダクト設備工事 制気口等 塗装工事 塗装 排煙口ダンパー類取付け (2 分類 ) (1 分類 ) (3 分類 ) 金属工事 軽量鉄骨下地 配管工事 防火区画貫通処理保温工事 ダクト ( ケーフ ルラック 金属管用 ) (1 分類 ) (1 分類 ) (1 分類 ) 内外装工事 内装ボード (1 分類 ) 内外装工事 内装床 配線工事 絶縁電線 (1 分類 ) (1 分類 ) 建具工事 ガラス (1 分類 ) 防水工事 シーリング 配線工事 絶縁ケーブル (1 分類 ) (1 分類 ) H20 H21 左官工事吹付け保温工事配管 (1 分類 ) (1 分類 ) H22 H23 防水工事左官工事 防水入隅処理 ( コーナーキャント ) 防水入隅処理 ( 入隅面取モルタル ) (2 分類 ) 計 10 工種 17 分類 5 工種 11 分類 3 工種 12 分類 121