平成 22 年 12 月 1 日 ビデオオンデマンド市場調査 日本放送協会 NHK オンデマンド室 1. 調査の目的 NHK オンデマンドサービス ( 以下 NOD サービス という ) の料金は 別途 NHK が定めた 放送法第 9 条第 2 項第 2 号の業務の基準 において 放送番組等の提供を行う他の事業者の平均的な料金水準に比し不当に低くならないことを加味し その中心料金を設定するものとする としているため NOD サービスの利用料金と市場料金との比較調査及び分析を外部事業者に委託した 当該事業者からの報告内容は以下の通り 2. 調査の対象 (1) ビデオオンデマンド (VOD) サービスのうち ユーザーにおいて経済的負担を負わないもの ( 広告型サービス等 ) あるいは 視聴期限の定めがないダウンロードサービスのみ行うものについては NOD サービスと事業内容 モデルが大きく異なるため 本調査の対象から除いた 但し これらのサービスと合わせて有料型 VOD サービスを行なっている事業者については 当該有料型 VOD サービス部分のみについて調査した (2)PC STB( セットトップボックス ) 及び TV を受信端末とする VOD サービスを対象とし 携帯電話等の端末による場合は除いた (3) 放送番組を VOD にてサービスしている事業者は少なく かつ 取扱タイトル数も少ないため 市場の全容を把握するために放送番組以外のコンテンツについても調査の対象とした 但し 成人向けコンテンツ等 NOD サービスで提供していないコンテンツについては 調査の対象から除いた 3. 調査方法 (1)VOD 事業者 17 社からのヒアリング及び公にされている情報によった なお 左の方法によって情報が十分に収集することが困難であった事業者 3 社については 有力な事業者であっても 調査の正確性を期すため 最終的に分析の対象から除外した 分析の対象としたのは 14 社 延べ 123,454 作品である (2) 収集した情報は 2010 年 10 月 ~11 月のものであり 具体的な調査時期については 事業者によって多少のずれがある 但し NOD サービスについては 12 月配信予定の情報によった (3) サンプリングを必要とする場合については 公正 中立的な方法により行い 恣意性を排除した 4. 調査結果 1
コンテンツの提供スタイルとしては 1 単品売り 2パック売り 3 月額見放題 の 3 つのスタイルがある (1) 単品料金料金については 図表 1 に示す通り 料金が 315 円までのものが一般的であり 中でも 210 円までのものが 61% となっている ( 注 ) 図表 1 中 ~105 円 ~210 円 の料金帯は それぞれ 105 円 210 円の料金設定がほとんどである (2) パック料金パック売りについては 一部特殊なケースを除くと 概ね 3~54 までのコンテンツ数を含み 料金としては 252 円 ~7,644 円までとかなり幅のある設定がなされている ( 図表 2) 2
パックに含まれるコンテンツが別途単品で販売されている場合において 各単品の料金合計とパック料金を比較すると その割引率は一部特殊なものを除くと 20%~ 60% の間で設定されている ( 図表 3) なお パック売りが行われているコンテンツが単品で販売される場合は 105 円以下のものが 54% と過半を占め 210 円以下で見ると 81% と大多数となる ( 図表 4) (3) 月額見放題料金今回の市場調査のうち月額見放題関係については 以下のような調査結果となっている ( 図表 5) 月額見放題については この形でサービスをしている事業者が限られるが 実施事業者は 525 円 ~3,000 円の範囲で料金を設定している B 社 D 社及び E 社については それぞれ 100 本程度と見放題サービスとしてはかなり本数が少なく むしろパックに近い また これらのうち B 社 (V シネ ) 及び E 3
社 ( 韓国ドラマ ) については ジャンルが特定されている C 社についてはアイドルコンテンツであることから NOD サービスとの比較に馴染まない 以上から 今回の調査の結果 NOD の見逃し見放題パック及び特選見放題パックとの比較に適したサービスは A 社 ( 約 5200 本 ) に限られ 他には同種の月額見放題サービスはないと言える 図表 5 月額見放題の料金とその本数 サービス事業者見放題の本数金額サービス内容 A 社約 5,000 本 2,625 円 毎月 見放題対象になるコンテンツをアップデートし 力を入れている 本数も約 5,000 本を超えている B 社約 100 本 1,500 円 V シネの映画コンテンツをラインアップとして揃えている C 社約 5,000 本 3,000 円アイドルなどのコンテンツを月額固定で見放題 D 社約 100 本 1,050 円 地上波で放送されたドラマ等のコンテンツを月額固定で見放題 E 社約 100 本 525 円韓国ドラマをラインアップとして揃えている 5.NOD 利用料金の妥当性の検討 (1)NOD サービスのサービス携帯と利用料金 NOD サービスにおける 12 月 1 日以降のサービス内容は 見逃し番組を単品と月額見放題として 特選プレミアムを単品とパックで 特選ライブラリーを単品と月額見放題としてそれぞれ提供する 過渡的に従来の料金体系を踏襲するものもあるが 最終的には1 単品は105 円 ~315 円 2パックは3 本 ~10 本のセットで最大割引率 30% ( 一部例外あり ) 3 月額見放題は見逃し見放題 特選見放題のいずれについても 945 円の料金によりサービスを提供する (2) 単品料金 NOD サービスにおいては 見逃し番組 特選プレミアム及び特選ライブラリーのいずれについても 30 分以下のコンテンツに 105 円 同 30 分超のコンテンツに 210 円の料金を設定している 但し 特選プレミアムに含まれる海外ドラマ等の購入コンテンツについては 315 円であり また 運用準備上当分の間はかなりの量のコンテンツについて 315 円の価格のものが残る ( 図表 6) 他方 他の事業者が取り扱うコンテンツは 20 分超 30 分以下のものが最多であるが ( 図表 7) 30 分以下のコンテンツの料金を見ると 105 円以下が 60% とかなりの割合を占める ( 図表 8) 従って 30 分以下のコンテンツについて 105 円の一律料金の設定 4
することは 妥当と言える 30 分超のコンテンツについて 210 円の一律料金を設定することについては 他の事業者において 315 円の価格を設定しているものがある程度あることとの関係で問題になる しかしながら そもそも 315 円の価格を設定した他の事業者のコンテンツは 海外からの調達コンテンツ 売れ筋コンテンツ 2 時間前後の長尺のものが多いという傾向にある 海外からの調達コンテンツについては 他の事業者においても同一コンテンツが提供される可能性が高く その場合に一物二価となると 他の事業者を圧迫するおそれがあるが NOD サービスにおいても海外ドラマ等は 315 円の価格設定をしている 従って その虞はない また 売れ筋コンテンツについては NHK を含めた他の事業者において 210 円以下のコンテンツが多いか否かによって売れ行きが左右それることはなく 単純に比較すべきではない さらに 2 時間前後の長尺コンテンツは そもそも NOD では極稀であり 他の事業者が制作費が高くなる長尺コンテンツに 315 円の価格設定をしていのはむしろ自然と言える 5
(3) パック料金他の事業者の割引率が 概ね 10%~50% の間に分布し 最も多いのが 10% 超 ~20% 次に多いのが 20% 超 ~30% であるのに対して ( 図表 3) NOD サービスでは 20% 超 ~ 30% の割引率がかなりの割合を占めている これによれば 他の事業者との比較においては平均的な割引率だと言える (4) 月額見放題料金 NOD サービスの月額見放題パックと同種のサービスと言いうる A 社の場合と比較する A 社についてみると 2,625 円で提供しているコンテンツの総数は約 5,200 で これを単品で提供した場合の総合計利用料金は約 866,000 円となっている よって 1 コンテンツあたりの単品提供価格は平均 167 円であるところ 月額見放題として提供する1コンテンツあたりの提供価格は 0.50 円となっている 他方 NOD サービスにおいては 見逃し見放題パックの視聴可能本数は約 800 本で 6
ある 見逃し見放題コンテンツを単品で提供した場合の総合計利用料金は約 176,190 円となっている 従って 1コンテンツあたりの単品提供価格は 220 円であるところ 見逃し見放題として提供する1コンテンツあたりの提供価格は 1.18 円となっている また 特選見放題パックの場合は 視聴可能本数は約 2,700 本である 特選見放題コンテンツを単品で提供した場合の総合計利用料金は約 591,150 円となっている 従って 1コンテンツあたりの単品提供価格は 218 円であるところ 見逃し見放題として提供する1コンテンツあたりの提供価格は 0.35 円となっている 見逃し見放題パックの 220 円 1.18 円 特選見放題パックの 218 円 0.35 円と A 社における 167 円 0.5 円とを比較すると 見逃し見放題パックについては問題なく安価に過ぎることはない 他方 特選見放題パックについては A 社のサービスとの間では割安感がある 但し A 社について昨年度調査した際には 156 円 0.32 円の数字となっていた このような差が生じたのは A 社において 見放題サービスに含まれるコンテンツを雑多なものからある程度選び抜かれたコンテンツに限って見放題サービスとして提供するという編成方針を取ったからとの情報を得ている このことは 昨年度 A 社の見放題サービスに含まれるコンテンツ数が約 8,200 と現在と比較して 1.5 倍以上であったことからも伺える このことを加味すれば 編成上の絞込みをしていない特選見放題パックの利用料金が安価に過ぎるとは言えない 6. 検討結果 以上の調査と分析から 放送番組等の提供を行う他の事業者の平均的な料金水準に比 し NOD サービスの利用料金が不当に低いとは言えない 以上 7