代理母出産の是非
各国の法制度をみて 法制度がない日本における 代理母出産について考える
代理母 (SURROGATE MOTHER) とは? 生殖医学の進歩 生体外での受精が可能になったことによって夫の精子を契約によって妻以外の女性に人工授精して出産させたり 受精卵を卵子提供者以外の女性の子宮に着床させることが可能になった このような方法で妊娠した女性を代理母という ( ブリタニカ国際百科事典より )
各国の現状 代理母出産が認められている国 ギリシャ イスラエル インド ロシア イギリス ほとんどの国が条件付きで認めている 代理母出産が認められていない国 ドイツ フランス スウェーデン 中国 韓国 台湾 場合によって認められている国 アメリカ ( 州ごとに異なる ) 日本では代理出産に関する法的制度が設けられていない ( 平成 21 年 1 月 )
代理母出産が認められている国 イスラエル イスラエルでは 1996 年代理母を次の条件の下で合法としている 依頼父の精液を使う 依頼母または代理母ではないドナーの卵子を使う 代理母は未婚でイスラエルの住民である 代理母は裁判所の承認を持って子供を渡さない権利 堕胎をする権利を持っている 代理母の契約は特別委員会の承認が必要だ ( 当事者が自由に契約したのか 健康に問題はないか ) イスラエルでも必要以上に代金を払うことは不法である
ギリシャ 代理母の契約には書面同意と裁判所の承認が必要 依頼母が医学的に妊娠が不可能である必要がある 配偶者も書面に同意しなくてはならない ( 代理母が既婚である場合 ) 代理母と依頼夫婦はギリシャの住民ではなくてはならない 代理母から子供が生まれたら依頼母が母だと推定されるが 6 ヶ月以内に意義を申し立てることで逆転できる ロシア妊娠ができないのを証明する処方が必要 しかし 依頼人が結婚をしたのかは問題にならない 一人親でも代理出産の資格を取るのができる
イギリス 営利を目的とする代理懐胎の斡旋と広告は 代理出産取り決め法 (1985 年 ) により犯罪 しかし 当事者及び施術をした医師の行為は犯罪とされない 代理懐胎契約は無効ではないが 裁判所に訴えて強行することはできない 代理母に必要 ( 保険の費用 収入 時間 苦痛の補いなど ) 以上代金を払うことは不法 親権を譲渡するのには依頼人たちは 18 歳以上で 子供が少なくても依頼人の一人と遺伝的連関があり 代理母が子供の誕生以後 6 ヶ月以内に同意することが必要
アメリカ 12 州で代理母をビジネスとすることを禁止 3 州では代理母斡旋は犯罪となり 業者は刑務所に送られる 代理母ビジネスの最も盛んなカリフォルニア州とニューヨーク州でも 弁護士や医師からなる特別委員会が設置され 禁止の方向に向かっている 代理懐胎契約については 制定法で有効とするのは 10 州 無効とするのは 9 州とされ 大半の州が態度を明確にしていない
アメリカで代理出産を依頼する際かかる費用は? 代理母への報酬が2 万ドル ( 約 230 万円 ) エージェンシーの仲介料が2 万 ~3 万ドル ( 約 230 万円 ~345 万円 ) 日本人経営のエージェンシーとなると 日本人による細かなサービスを受けられる分 仲介料が割高になる このほかに 体外受精や胚移植にかかる医療費 代理母への医療保険 生命保険 弁護士 カウンセラー費用 マタニティードレス代 航空費など さまざまな経費が必要となる 日本在住の日本人が代理出産を依頼する場合 最低でも 1 千万円はかかる
インド インドは世界的に商業的代理母が多く行われる国である 2 年以上結婚している夫婦なら代理母を求めるためのビザが取れる インドでは代理出産について直接規制する法律がなかったが 2010 年に生殖補助技術規制法案の草案ができた 2013 年 1 月ゲイの代理出産が禁止された
代理母出産ビジネス大国 : インド 2003 年 インド西部グジャラート州の田舎町アナンドにある アカンクシャ不妊治療センターが世界の注目を集めた ナヤナ パテル医師が 外国人カップルのために地元の女性の子宮を レンタル する代理母ビジネスを始めた インドの代理母ビジネスは現在 年間 4 億 5000 万ドル規模に拡大している 急成長の要因は 欧米のカップルからすればわずかな費用で済むところ アメリカやイギリスで 7 万ドルは掛かる代理母の費用が インドでは 1 万 2000 ドルで済む
2009 年 7 月 このセンターに登録する 45 人の代理母のうち 27 人が妊娠していた 彼女たちは 1 回の妊娠で 地元住民の年収の 10 年分に当たる 5000 7000 ドルを報酬として受け取る センターでは過去 3 年間に代理母が 50 人以上の赤ん坊を出産し このうち半数は欧米のカップルか国外に住むインド人カップルの赤ん坊だった 代理母ビジネスは貧困層の搾取だという批判がある一方で 協力 の一形態という見方もある 事実 代理母の女性たちは報酬を自分の子供の教育費や住居費に充てており 家族のためにより良い将来を切り開く機会になっていることは否定できない
その裏で起きている問題 日本人夫婦がインド人女性に代理出産を依頼して誕生した赤ちゃんが 誕生を前に夫婦が離婚したことが原因でパスポートがなく インドを出国できないでいる 2008 年におきた出来事 父親が引き取ろうとしたが インドの法律では独身男性を女児の義父とする事ができず また法律上 孤児はインドを出国できなかった このような問題は現在も起こっている 障害や病気のある子が生まれて 依頼者にも代理母にも引き取りを拒否されたケースは多々あり 業者は子供を児童養護施設に送る また 代理母の事故死で病院の免許剥奪は起こらない
代理母出産が認められていない国 ドイツ胚保護法および養子 代理母斡旋規制法により 代理懐胎は認められない 代理母の斡旋者が処罰されるが 代理母及び依頼夫婦は処罰対象ではない フランス 代理母 契約 は 産みの親に子の遺棄をそそのかし 産まれた子を売買することになるからである 当然 このような契約は無効とされる また子を引き取った親がこれを実子として身分簿に登録させるのは 5 年以上 10 年以下の懲役に当たる犯罪とされている ( 刑法 354 条 ) 代理懐胎契約は公序に反して無効であり 認められない 生まれた子と母親との養子縁組についても裁判所は効力を認めていない
スウェーデン胚の提供が認められてない以上 借り腹は認められない 代理母についても 非配偶者間の体外受精は 利用者について医学的 心理的 社会的審査がなされ 精子の提供者の選択は医師に任されていることや人工授精法に違反した場合の罰則の存在があることから 実施されることは考えにくい 韓国大韓医師協会の 医師倫理指針 が 金銭目的での代理母を禁止しているが 大韓産婦人科学会の 補助生殖術倫理 では 非配偶者間の人工授精の実施に準じることとし 代理懐胎の実施を間接的に許容している 女性の身体を守らなければならないとする女性団体と 容認を主張する医師団体の立場が対立している
中国 代理懐胎は 人類補助生殖技術管理弁法 により禁止されている 台湾 台湾では 儒教や仏教による影響で血縁主義が重視される傾向があったが 一方で家系を維持するためには養子縁組を選択する方法もとられていた ところが 今日の生殖医療技術の普及に伴い 不妊に悩む夫婦によっては 養子を迎えるより体外受精や代理懐胎のほうが望ましい選択肢にみえ 自分と遺伝的つながりのある子を欲する傾向が強まっているとされる
日本 日本産婦人科学会は昭和 58(1983) 年 10 月の会告 ( 体外受精 胚移植 に関する見解の第 3 項 ) において 代理懐胎は禁止した ( 法的効力はない ) しかし 2001 年 5 月長野県の産婦人科医であり 諏訪マタニティークリニック院長の根津八紘氏が妹による姉夫婦の子供の出産という国内初の代理母出産の事実を発表した これを受け平成 15 年 4 月 日本産婦人科学会は改めて検討し そしてやはり代理母出産は認めないという結論に至った また 厚生労働省も同様の結論に至った
日本産婦人科学会が代理母出産を禁止する理由 1 生まれてくる子の福祉を最優先するべきである 2 代理懐胎は身体的危険性 精神的負担を伴う 3 家族関係を複雑にする 4 代理懐胎契約は倫理的に社会全体が許容していると認められない
日本の大学生の代理母に対する意見 日本初の代理母出産が行われてから 1 か月後の 2001 年 6 月に行った女子大生 76 名への代理母出産に関するアンケートでは賛成 9.2% 条件付き賛成 76.3% 反対 14.5% であった 反対, 14.5 条件付き賛成, 76.3 賛成, 9.2
賛成理由 反対理由 賛成理由 当事者同士が納得していれば 第三者が口出しする必要はない 子供が欲しいという気持ちを尊重したい反対理由 代理出産する女性が抱えうる問題( リスク 道具扱い 産む機械 母性の発生 ) 神の領域 であり 自然に逆らうべきでない 依頼人の問題 ( その子を本当に愛せるのか?) 子供が抱えうる問題( 二人の母親がいるという葛藤 ) 派生してくる社会問題
条件付き賛成者が提示した条件 当事者間の話し合いと合意(37.9%) 子供の人権への配慮(31.0%) 他の方法がないとき(19.0%) 代理出産する人と依頼人の心のケア(17.2%) 安全性の確立(13.8%) 依頼人は必ず子供を引き取り育てる(13.8%) 金銭的条件(12.1%) 家族の理解と合意(10.3%) 代理出産した人は必ず子供を渡す(8.6%) 社会的認知と保障(8.6%) 両者の健康条件など一定の条件を付与(6.9%) 代理出産は見知らぬ人(5.2%) 情報公開 医師の十分な説明 判断 助言(5.2%) 代理出産は身内のみで行う(3.4%) ある一定の条件を満たせば代理母出産を認めていいと考えているようである
参考資料 Jong Hee Seo The Study on Surrogacy Agreement (2009) Svitnev K. Legal control of surrogacy international perspectives (2011) www.findsurrogatemother.com http://matome.naver.jp/odai/2138058961776257701 あなたの子宮を貸してください 平井美帆講談社 Because It s There 代理出産児 インドから出国できず~ 日本人夫婦が誕生前に離婚したことが影響 ~ 健康フレンドハローフレンドスタッフだより 鈴木道子女子大生の代理出産に関する意識調査日本女性心身医学会雑誌 Vol6,No,2pp.253-259( 平成 13 年 12 月 ) 公益社団法人日本産婦人科学会ホームページ http://www.jsog.or.jp/about_us/index.html 三修社すぐに使える基本法律用語辞典 代理母 項
DISCUSSION 1 代理出産に賛成か反対か 2 代理母が認められていない国において 代理母の制度は整えられるべきか 3 代理母を制度化する または 代理母を認めない上で生じる問題