にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

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平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

審決取消判決の拘束力

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第24号-

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

第 1 原告の求めた判決 特許庁が無効 号事件について平成 23 年 12 月 28 日に した審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 被告の請求に基づき原告の本件特許を無効とした審決の取消訴訟であり, 当裁判所が取り上げる争点は, 実施可能要件及びサポート要件の充足性の

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 13 日 判 決 原告株式会社コーエーテクモゲームス 訴訟代理人弁護士 佐 藤 安 紘 高 橋 元 弘 吉 羽 真一郎 末 吉 亙 弁理士 鶴 谷 裕 二

1 特許庁における手続の経緯原告は, 名称を 5 角柱体状の首筋周りストレッチ枕 とする発明につき, 平成 20 年 10 月 31 日に特許出願 ( 本願 特願 号, 特開 号, 請求項の数 1) をし, 平成 25 年 6 月 19 日付けで拒絶

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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Microsoft Word 資料1 プロダクト・バイ・プロセスクレームに関する審査基準の改訂についてv16

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求の趣旨 1 特許庁が無効 号事件について平成 25 年 5 月 9 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ( 当事者間に争い

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

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を構成し, その結果, 本願意匠が同法 3 条 1 項柱書の 工業上利用することができる意匠 に当たるか否かである 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 27 年 3 月 16 日, 意匠法 14 条 1 項により3 年間秘密にすることを請求し, 物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠

最高裁○○第000100号

に係る発明についての特許を無効とする 審判費用は, 被請求人の負担とする との部分を取り消す 第 2 事案の概要特許庁は, 原告の有する後記本件特許について, 被告から無効審判請求を受け, 原告が後記本件訂正により削除した請求項 6 及び9を除く請求項に係る発明について特許を無効とする旨の審決をした

下 本件特許 という ) の特許権者である 被告は, 平成 23 年 11 月 1 日, 特許庁に対し, 本件特許を無効にすることを求めて審判の請求をした 特許庁は, 上記請求を無効 号事件として審理をした結果, 平成 25 年 9 月 3 日, 特許第 号の

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平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

本件は, 特許無効審判請求を不成立とした審決の取消訴訟である 争点は, 進歩性の有無である 1 特許庁における手続の経緯 (1) 被告は, 平成 23 年 10 月 7 日に特許出願をした特願 号 ( 以下 原出願 という ) の一部である, 発明の名称を 位置検出装置 と

平成 30 年 3 月 28 日判決言渡 平成 29 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 14 日 判 決 原告株式会社 K A L B A S 同訴訟代理人弁護士 櫻 林 正 己 同訴訟代理人弁理士 後 呂 和 男 寺 尾 泰 一 中 山 英

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

争点は,1 引用例 2 記載事項の発明該当性の判断の遺脱の有無,2 同発明該当性の判断の誤り及び3 本願発明の進歩性判断の誤りの有無である 1 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 24 年 5 月 2 日, 名称を 放射能除染装置及び放射能除染方法 とする発明につき, 特許出願 ( 特願 201

最高裁○○第000100号

第 1 原告の求めた判決 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要本件は, 特許無効審判請求を不成立とする審決の取消訴訟である 争点は, 特許法 36 条 1 項 ( サポート要件 ) 適合性, 進歩性, である 1 特許庁における手続の経緯被告 ( 脱退 ) は, 発明の名称を 印刷物 とする特

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

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被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

平成25年5月  日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

例 2: 組成 Aを有するピアノ線用 Fe 系合金 ピアノ線用 という記載がピアノ線に用いるのに特に適した 高張力を付与するための微細層状組織を有するという意味に解釈される場合がある このような場合は 審査官は 請求項に係る発明を このような組織を有する Fe 系合金 と認定する したがって 組成

O-27567

同法 46 条 1 項 1 号により, 無効とすることはできない, というものである 第 3 当事者の主張 1 審決の取消事由に関する原告の主張 (1) 取消事由 1( 商標法 3 条 1 項柱書該当性判断の誤り ) 審決は, 本件商標に関し, 願書に記載された指定商品又は指定役務に使用していること

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

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認められないから, 本願部分の画像は, 意匠法上の意匠を構成するとは認めら れない したがって, 本願意匠は, 意匠法 3 条 1 項柱書に規定する 工業上利用する ことができる意匠 に該当しないから, 意匠登録を受けることができない (2) 自由に肢体を動かせない者が行う, モニター等に表示される

Microsoft Word - CAFC Update(107)

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

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令和元年 5 月 30 日判決言渡 平成 30 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 23 日 判 決 原告ジー エス エフ ケー シー ピー株式会社 被告ケーシーピーヘビーインダスト リーズカンパニーリミテッド 訴訟代理人弁護士 小 林 幸 夫

平成 23 年 11 月 29 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 22 年 ( ワ ) 第 号特許権侵害差止等請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 10 月 4 日 判 決 広島県呉市 < 以下略 > 原 告 株 式 会 社 H D T 同訴訟代理人弁護士 稲 元 富 保 同

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

特許庁が無効 号事件について平成 29 年 2 月 28 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 ⑴ 被告は, 平成 27 年 5 月 26 日, 発明の名称を 気体溶解装置及び気体溶解方法 とする特許出願をし, 平成 28 年 1 月 8

31 日にした審決を取り消す 2 訴訟費用は被告の負担とする 第 1 原告の求めた裁判 主文同旨 事実及び理由 第 2 事案の概要 本件は, 商標登録を無効とした審決の取消訴訟である 争点は, 商標法 4 条 1 項 10 号該当性 ( 引用商標の周知性の有無 ) である 1 特許庁における手続の経

次のように補正するほかは, 原判決の事実及び理由中の第 2に記載のとおりであるから, これを引用する 1 原判決 3 頁 20 行目の次に行を改めて次のように加える 原審は, 控訴人の請求をいずれも理由がないとして棄却した これに対し, 控訴人が控訴をした 2 原判決 11 頁 5 行目から6 行目

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号 以下 本願 という ) をしたが, 平成 23 年 10 月 26 日付けで拒絶査定を受けたので, 平成 24 年 1 月 31 日, これに対する不服の審判を請求するとともに, 手続補正書を提出した ( 以下 本件補正 という ) 特許庁は, この審判を, 不服 号事件とし

平成  年(オ)第  号

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

平成22年 月 日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

平成 28 年 10 月 11 日判決言渡 平成 28 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結の日平成 28 年 7 月 7 日 判 決 原 告 オーガスタナショナルインコーポレイテッド 同訴訟代理人弁護士 中 村 稔 同 松 尾 和 子 同 田 中 伸 一 郎 同訴訟代

( 平成 12 年 )9 月 11 日に国際出願をし, 平成 21 年 3 月 12 日付け手続補正書により補正をした ( 以下 本件補正 という 本件補正後の発明の名称 1,1- ビス (4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサンの製造方法 ) が, 同年 8 月 18 日付け

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(1) 被告は, 次の商標 ( 以下 本件商標 という ) に係る商標権 ( 以下 本件商標権 という ) を有している ( 甲 25) 商標登録第 号商標の構成千鳥屋 ( 標準文字 ) 登録出願日平成 23 年 12 月 21 日設定登録日平成 25 年 2 月 8 日指定商品第

BA4D5EEABEB21E2A E002B12A

一括して買い受けた なお, 本件商品である コンタクトレンズ は, 本件商標の指定商品 眼鏡 に含まれる商品である (3) 使用商標は, ハートO2EXスーパー の文字からなるところ, 本件商品の容器に表示された使用商標は, ハート の文字部分だけが赤い字で, かつデザイン化されており, これに続く

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

平成 25 年 4 月 24 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 3 月 11 日 判 決 原 告 X 訴訟代理人弁理士 松 下 昌 弘 被 告 特 許 庁 長 官 指定代理人 井 出 英一郎 同 水 莖 弥 同 堀 内 仁 子

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平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

(Microsoft Word \224\255\225\\\201yMSH\201z \224\273\214\210\201i\217\244\225W\201j.doc)

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

事実及び理由 第 1 請求主文同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を 経皮吸収製剤, 経皮吸収製剤保持シート, 及び経皮吸収製剤保持用具 とする特許第 号 (2006 年 1 月 30 日国際出願 ( パリ条約による優先権主張 2005 年 1 月

1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告製品目録記載の研磨布を製造し, 譲渡し, 貸し渡し, 譲渡及び貸渡しの申出をしてはならない 3 被控訴人は, その占有にかかる前項の研磨布を廃棄せよ 4 被控訴人は, 控訴人に対し,7 億 8489 万 5000 円及び内金 4 億

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

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平成 25 年 5 月 30 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 4 月 25 日 判 決 原告 X 訴訟代理人弁理士田中聡 被告東洋エンタープライズ株式会社 訴訟代理人弁理士野原利雄 主 文 原告の請求を棄却する 訴訟費用は原

年 1 月 9 日に第 40 類 布地 被服又は毛皮の加工処理 ( 乾燥処理を含む ), 裁縫, ししゅう, 木材の加工, 竹 木皮 とう つる その他の植物性基礎材料の加工 ( 食物原材料の加工を除く ), 食料品の加工, 廃棄物の再生, 印刷 を指定役務 ( 以下 本件指定役務 という ) とし

で, 特許法 29 条 2 項に違反する等, としたものである 記 引用例 1 特開昭 号公報 ( 審判甲 1 本訴甲 4) 引用例 2 特開昭 号公報 ( 審判甲 2 本訴甲 5) イなお, 本件審決は, 引用例 1 には, 引用例 1 発明及び引用例 1 方法

最高裁○○第000100号

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

 

では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

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Transcription:

平成 25 年 7 月 31 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 10305 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 7 月 8 日 判 決 原告株式会社アマダ 訴訟代理人弁護士 高 橋 元 弘 同 末 吉 亙 訴訟代理人弁理士 豊 岡 静 男 同 廣 瀬 文 雄 被告三菱電機株式会社 訴訟代理人弁護士 近 藤 惠 嗣 同 重 入 正 希 同 前 田 将 貴 訴訟代理人弁理士 加 藤 恒 同 小 川 文 男 同 中 根 孝 之 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求特許庁が無効 2012-800011 号事件について平成 24 年 7 月 19 日 - 1 -

にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特許第 3512634 号 ( 平成 10 年 5 月 11 日出願, 平成 16 年 1 月 16 日設定登録 請求項の数は9である 以下 本件特許 といい, その明細書 ( 甲 12) を 本件明細書 という ) の特許権者である 原告は, 平成 24 年 2 月 15 日, 特許庁に対し, 本件特許の請求項 3 及び9 を無効にするとの無効審判を請求した ( 無効 2012-800011 号 ) 特許庁は, 平成 24 年 7 月 19 日, 本件審判の請求は, 成り立たない との審決をし, その謄本を同月 27 日原告に送達した 2 特許請求の範囲の記載本件特許の特許請求の範囲の記載は, 次のとおりである ( 甲 12 以下, 請求項 3の発明を 本件発明 1 といい, 請求項 9の発明を 本件発明 2 といい, これらを併せて 本件発明 という ) 請求項 3 被覆材を表面に設けた被加工物を, アシストガスを用いたレーザ光により加工するにあたり, 最終加工とは異なる加工条件により最終加工軌跡上の被覆材を除去する第 1 加工工程と, 被覆材を除去した被加工物の所定経路上にレーザ光を照射し, 加工を行う第 2 加工工程とを含むレーザ加工方法において, 最終加工軌跡上における加工開始部位または / および加工終了部位を前記第 1 加工工程による被覆材の除去範囲としたことを特徴とするレーザ加工方法 請求項 9 前記請求項 1~5のいずれか一つに記載されたレーザ加工方 - 2 -

法, または, 前記請求項 6に記載された被レーザ加工物の生産方法を, コンピュータに実行させるプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータが読取可能な記録媒体 3 審決の理由 (1) 審決の理由は, 別紙審決書写し記載のとおりであり, 要するに, 本件発明は, 特開平 7-241688 号公報 ( 甲 1 以下 甲 1 公報 という ) に記載された発明 ( 以下 甲 1 発明 という ) 及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず, 本件特許を無効とすることはできないというものである (2) 審決が認定した甲 1 発明の内容, 同発明と本件発明 1との一致点及び相違点は, 次のとおりである ア甲 1 発明の内容 保護シート5を表面に貼付したワーク4を, アシストガス300を用いたレーザビーム100により加工するにあたり, 切断加工とは異なる加工条件により切断加工経路 102 上の保護シート5を焼付ける工程と, 保護シート5を焼付けたワーク4の切断加工経路 102 上にレーザビーム1 00を照射し, 加工を行う切断加工工程とを含むレーザ加工方法において, 切断加工経路 102 上に沿った焼付け面 101を前記焼付工程による保護シート5の焼付け範囲としたレーザ加工方法 イ一致点 被覆材を表面に設けた被加工物を, アシストガスを用いたレーザ光により加工するにあたり, 最終加工とは異なる加工条件により最終加工軌跡上の被覆材を処理する第 1 加工工程と, 被覆材を処理した被加工物の所定経路上にレーザ光を照射し, 加工を行う第 2 加工工程とを含むレーザ加工方法において, - 3 -

最終加工軌跡上における加工部位を前記第 1 加工工程による被覆材の処理範囲としたレーザ加工方法 ウ相違点 ( ア ) 相違点 1 被覆材を 処理する 第 1 加工工程が, 本件発明 1では 除去する 工程であるのに対し, 甲 1 発明では 焼付ける 工程である点 ( イ ) 相違点 2 第 1 加工工程による被覆材の処理範囲 が, 本件発明 1では 最終加工軌跡上における加工開始部位または / および加工終了部位 のみであるのに対し, 甲 1 発明では 最終加工軌跡上に沿った焼付面 すなわち, 加工部位全体である点 第 3 原告主張の取消事由審決には, 本件発明 1についての相違点 1の判断の誤り ( 取消事由 1), 本件発明 1についての相違点 2の判断の誤り ( 取消事由 2) 及び本件発明 2についての判断の誤り ( 取消事由 3) があり, これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから, 審決は違法であり, 取り消されるべきである 1 取消事由 1( 本件発明 1についての相違点 1の判断の誤り ) (1) 審決は, 甲 1 発明における被覆材は被加工物を保護するため, 被覆材を被加工物上に 残すこと を目的とするものであるのに対し, 特開昭 63-33191 号公報 ( 甲 2 以下 甲 2 公報 という ) 及び特開昭 60-1 74289 号公報 ( 甲 3 以下 甲 3 公報 という ) によって認められる周知技術は, 被覆材が被加工物上に溶着することがないように, 最終加工軌跡上の被覆材を除去するものであるから, 両者は相容れないものであり, 甲 1 発明の 焼付ける 工程を 除去する 工程とする相違点 1を容易とすることはできないと判断している (2) しかし, 甲 1 発明において保護シートを 焼付ける 工程を採用してい - 4 -

るのは, 保護シートの剥離を防止するためであるが, 保護シートが剥離するのは, 保護シートとワークとの間にアシストガスが流入するためであるから, 保護シートを 焼付ける 工程を設ける代わりに, アシストガスが流入する範囲の保護シートを 除去する 工程を設けてもよいのは自明である このことは, 特開平 2-295688 号公報 ( 甲 6 以下 甲 6 公報 という ) に, 母材の切断と同時ではあるが, 保護シートを溶解蒸発させて除去することにより, 保護シートの剥離を防止することが記載されていることからも明らかである (2 頁左下欄 7 行 ~17 行 ) そして, 甲 2 公報及び甲 3 公報の記載によれば, 被覆材を表面に設けた被加工物を, レーザ光により加工するにあたり, 被覆材を剥離することなく, かつ, 被加工物を損傷することなくレーザ加工することを目的として, 弱い出力のレーザにより被覆材のみを除去する第 1 工程と, 強い出力のレーザ光により被覆材が除去された部分の被加工物を切断する第 2 工程とを含むレーザ加工方法は周知技術である そして, 甲 1 発明と上記周知技術とは, 被覆材の被覆された被加工物のレーザ加工という同一の技術分野に属し, また, 被覆材の被覆された被加工物のレーザ加工において, 被覆材を剥がさずにレーザ切断加工を行うことを可能にするという共通の課題を有するものである そうすると, 甲 1 発明において, 保護シートを 焼付ける 工程を設ける代わりに, アシストガスが流入する範囲の保護シートを 除去する 工程を設けることは, 当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎないものである (3) また, 甲 2 公報及び甲 3 公報の記載によれば, 被覆材を表面に設けた被加工物に対して, 被覆材を残したままレーザ光により加工すると, 被覆材が被加工物に溶着して損傷することは周知である そして, 甲 1 発明においても, 被覆材を残したままレーザ光により加工すると, 被覆材が被加工物に溶着して損傷するという課題を有しているといえる ( 甲 1の 0011 ) - 5 -

そうすると, 当該課題を解決するために, 甲 1 発明に甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された上記周知技術を適用する動機付けはあり, かつ, 保護シートの剥離を防止できることは同様であって適用の阻害要因もないから, 甲 1 発明に上記周知技術を適用して, 甲 1 発明の 焼付ける 工程を本件発明 1の 除去する 工程にすることに格別の困難性は存在しない (4) 以上のとおり, 甲 1 発明において, 被覆材を 処理する 第 1 加工工程としての 焼付ける 工程に代えて, 従来周知の技術である 除去する 工程とすることは, 単なる設計的事項あるいは当業者が容易に想到できたものであるから, 審決の判断は誤りである 2 取消事由 2( 本件発明 1についての相違点 2の判断の誤り ) (1) ア審決は, 原告が周知であると主張した 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工するにあたり, 被覆材の剥離を防止するため, ピアシング時だけ被覆材の剥離が生じないように特別の工夫をして被加工物を穿設し, ピアシング後の切断時には, 被覆材に何らの措置も施すことなく通常の被加工物の切断作業を行うこと が周知であるとは認められないとして, 相違点 2を容易とすることはできないと判断している イしかし, 特開平 2-284780 号公報 ( 甲 4 以下 甲 4 公報 という ) 及び特開平 9-192871 号公報 ( 甲 5 以下 甲 5 公報 という ) に記載されているように, 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工するにあたり, 被覆材の剥離を防止するため, ピアシング時には, アシストガスを排出しやすくしたり, あるいは被覆材を母材に押しつけたりして, 被覆材の剥離が生じない工夫をするとともに, ピアシング後の切断時には, アシストガスが切断溝から下方に排出されることから, 通常の切断作業を行うようにすることは, 従来周知であったのであり, 特開平 7-1 00683 号公報 ( 甲 13 以下 甲 13 公報 という ) の記載からも, 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工するにあたり, 被覆材の剥 - 6 -

離を防止するため, ピアシング時だけ被覆材の剥離が生じないように特別の工夫をして被加工物を穿設し, ピアシング後の切断時には, ピアシング時に行う特別の工夫を行わない切断作業を行うことは周知である したがって, 審決の周知技術の認定は誤りである ウまた, 審決は何ら判断していないが, 甲 4 公報, 甲 5 公報及び甲 6 公報に記載されているように, 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工する際, 被覆材と母材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離を起こし, 切断加工に支障をきたすこと, 特に, 切断開始点における穿孔作業であるピアシング時において被覆材の剥離が顕著であることは, 従来周知であった また, 甲 5 公報及び甲 6 公報に記載されているように, 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工する際, 被覆材の剥離を防止するため, まず, レーザビームをデフォーカスさせた状態で切断経路上の被覆材を溶融させ, その後, レーザビームの焦点を合わせた状態で再度同じ経路をピアシング及び切断することが行われていたこと, 及び, この場合には, 加工時間が2 倍近く必要になるという問題があることは, 従来周知であった エ以上の点を踏まえれば, 以下のとおり, 相違点 2は容易想到である ( ア ) 甲 5 公報及び甲 6 公報に記載された上記の周知な課題からすれば, 甲 1 発明のように, 被覆材の前処理を行い, その後, レーザビームの焦点を合わせた状態で再度同じ経路をピアシング及び切断する場合には, 加工時間が 2 倍近く必要になるという課題が認識できる そして, 切断開始点における穿孔作業であるピアシング時において被覆材の剥離が顕著であり, また, 被覆材が被覆された被加工物をレーザ加工するにあたり, 被覆材の剥離を防止するため, ピアシング時だけ被覆材の剥離が生じないように特別の工夫をして被加工物を穿設し, ピアシング後の切断時には, 被覆材に当該特別の工夫もすることなく被加工物の切断作業を行うことも, 甲 4 公報, 甲 5 公報及び - 7 -

甲 13 公報に記載されているように, レーザ加工方法において従来周知である そうすると, 当業者であれば, 甲 1 発明に潜在する周知の問題を認識した場合には, その問題の解決のために甲 4 公報, 甲 5 公報及び甲 13 公報に記載されたレーザ加工方法における周知技術の適用に想到するはずである したがって, 甲 1 発明に上記周知技術を適用する動機付けは十分に存在する そして, 上記周知技術における特別の工夫とは, ピアシング時に被覆材の剥離が生じないようにするための工夫であり, 甲 1 発明は, 保護シートがアシストガスによって剥離することなく, レーザ切断加工を行うことができるようにするために, ワークにあらかじめ保護シートの焼付けを施すものであって, 相違点 2では, 第 1 加工工程による被覆材の処理 とされているものである よって, 甲 1 発明に上記周知技術を適用すると, 甲 1 発明において第 1 加工工程による被覆材の処理範囲を最終加工軌跡上におけるすべての加工部位としているものを, 最終加工軌跡上におけるピアシング位置, すなわち加工開始部位とするという相違点 2の構成となることは明らかである ( イ ) また, 本件発明 1は, レーザ切断中は, アシストガスの通気性が良くなり, 被覆材の膨張や剥離が生じにくくなること, 被覆材の接合度や被覆材の厚さが一定程度あれば, レーザ切断中は, 被覆材を除去しなくても剥離が生じないことを見いだし, 加工開始部位または / および加工終了部位を被覆材の除去範囲としたものと解されるところ, 甲 4 公報, 甲 5 公報, 甲 6 公報及び甲 13 公報によれば, 加工開始部位においては, アシストガスによる被覆材の剥離が生じやすく, 切断作業時には, ピアスや切断スリットからアシストガスが流れるので剥離は生じにくいとの知見は周知である また, 被覆材の接合度や被覆材の厚さが被覆材の剥離に関連することは自明であるから, これらが一定程度あればレーザ切断中には剥離が生じないことも当業者であ - 8 -

れば当然に想到することであり, 実際, 甲 4 公報には, ピアスや切断スリットからアシストガスが流れるので, 切断作業時に剥離は生じないことが明示されている 上記のとおり, 本件発明 1の発想は, 従来周知の事項から自明であるか, 少なくとも公知のものであり, 発想さえあれば, 本件発明 1は甲 1 発明から容易に想到できるものであるから, 本件発明 1に進歩性があると考える余地はない (2) ア審決は, 特開平 9-47888 号公報 ( 甲 7 以下 甲 7 公報 という ) に記載された事項 ( 以下 甲 7 事項 という ) を, 所定の塗装厚の合成樹脂塗料からなる弊害物が表面に付着した被加工材に対し, レーザ光を照射すると共にアシストガスを噴射して加工するにあたり, ピアシングとは異なる加工条件によりピアシング位置上の弊害物を除去する弊害物除去工程と, レーザ光を照射しピアシングを行う穿孔工程と, 集光レンズ位置を設定し切断を行う切断工程を行うレーザ加工方法において, ピアシング位置を弊害物の除去範囲としたレーザ加工方法 ( 審決 29 頁 5 行 ~11 行 ) と認定した上, 甲 7 事項の 所定の塗装厚の合成樹脂塗料からなる弊害物 は, 本来は被加工物上に残すことは効率の良い穿孔の支障となるものであって, 本件発明 1 及び甲 1 発明と技術的思想を異にする甲 7 事項は, 弊害物除去工程, 穿孔工程, 切断工程の3 工程からなり, 第 1 加工工程, 第 2 加工工程 の2 工程からなる甲 1 発明とは前提を異にするから置き換える動機がないと判断している しかし, 甲 7 公報では塗料を弊害物と称しているが, レーザ光が照射される箇所にある塗料は弊害物といえるとしても, それ以外の箇所にある塗料は被加工物を保護するものであって, 甲 1 発明の保護シートと変わるところはない ( 甲 7の 0009 ) また, 審決は, 甲 1 発明は被覆材を被加工物上に残すことを目的とする - 9 -

ものであることを前提として判断しているが, 甲 1 発明においても, レーザ加工によって, 切断加工幅より少し広い幅の保護シートは熔けてなくなり, それ以外の保護シートがワーク上に残るのであり, 残っている保護シートや塗料等が被加工材の表面を保護している点に変わりはない さらに, 甲 1 発明は焼付けているのに対し, 甲 7 事項は除去している点で異なるとしても, 焼付けか除去かについては相違点 1で判断される事項であり, 被覆材の剥離防止のためには, 焼付けても除去してもよいから, 相違点 1は容易である 相違点 2は, 第 1 加工工程による被覆材の処理範囲 について, 加工開始部位または / および加工終了部位のみか, 加工部位全体であるかであり, 相違点 1が容易であると判断される以上, 甲 1 発明の 第 1 加工工程による被覆材の処理 として, 焼付けを除去に置き換えたもので, 相違点 2を判断をすることに何ら問題はないというべきである さらに, 甲 1 発明の 第 2 加工工程 はピアシング加工と切断加工からなるものであるから,2 工程からなる甲 1 発明と前提を異にするとの審決の認定は誤りである イまた, 本件明細書には, 表面が低融点物質で被覆されている被加工物にレーザ加工を施す場合, 加工中に低融点物質が加工範囲に侵入し, 加工品質に欠陥が生じることを防止することが課題として挙げられており, 本件発明の従来例として挙げられた特開平 7-236984 号公報 ( 甲 15) には, 表面に被覆されている低融点物質としてコーティング材, 酸化膜, 錆が例示されている これに対して, 甲 7 公報に記載されているのは, 錆やマーキングあるいは塗料等の弊害物であるから, 上記例示と同様のものである したがって, 本件発明 1の被覆材は, 甲 7 事項の錆やマーキングあるいは塗料等の弊害物と甲 1 発明のシートの両者を含むものであるから, 本件発明 1の進 - 10 -

歩性の判断において, 両者は互いに関連のあるものであることは明らかであり, 塗料等の弊害物に関する甲 7 公報に記載された公知技術を, 甲 1 発明のような被覆材の剥離に適用して本件発明 1の構成とすることは, 当業者が容易に想到し得るものである (3) 以上のとおり, 相違点 2は, 甲 1 発明に甲 4 公報若しくは甲 7 公報に記載された公知技術, 又は, 甲 1 発明に甲 4 公報, 甲 5 公報, 甲 6 公報及び甲 13 公報に記載された周知技術を適用して, 当業者が容易に想到し得るものであるから, 審決の判断は誤りである 3 取消事由 3( 本件発明 2についての判断の誤り ) 上記 1,2のとおり, 本件発明 1と甲 1 発明の相違点 1 及び相違点 2についての審決の判断は誤りであり, 相違点 1 及び相違点 2は容易想到である したがって, 本件発明 2も容易に想到することができたものであるから, 審決の判断は誤りである 第 4 被告の反論 1 取消事由 1( 本件発明 1についての相違点 1の判断の誤り ) に対し甲 1 発明と甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された発明とでは, 保護シート ( 保護材, 被膜 ) がワーク ( 母材 ) に焼付くことに対する評価が正反対である すなわち, 甲 1 発明では焼付けることを積極的に目的としているのに対して, 甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された発明ではそれを避けるために除去を行っている したがって, 甲 1 発明における焼付けに代えて甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された除去を用いることには全く動機がなく, 明白な阻害事由がある 原告は, 保護シートを焼付ける工程を設ける代わりに, アシストガスが流入する範囲の保護シートを除去する工程を設けてもよいことは自明である と主張し, その理由として, 保護シートを焼付ける工程を採用しているのは, 保護シートの剥離を防止するためであるが, 保護シートが剥離するのは, 保護シートとワークとの間にアシストガスが流入するためであるから と主張 - 11 -

している しかし, 甲 2 公報及び甲 3 公報には, 切断加工工程において保護シートとワークとの間にアシストガスが流入することによって保護材 ( 被膜 ) が剥離することなどが述べられていない 甲 2 公報及び甲 3 公報では, 保護材 ( 被膜 ) が母材に焼付くことを防止するために, 切断加工前に保護材を剥離しておくことが述べられており, その場合の剥離に代わる手段として, 甲 2 公報及び甲 3 公報では保護材 ( 被膜 ) の除去工程を設けることが記載されている 除去工程によって, 母材に焼付く保護材 ( 被膜 ) がなくなることが除去工程の効果であり, 甲 2 公報にも, 甲 3 公報にも, 切断加工工程において保護材 ( 被膜 ) が剥離するか否かについての記載は一切ない 原告の主張は典型的な後知恵である 以上のとおりであるから, 取消事由 1は成り立たない 2 取消事由 2( 本件発明 1についての相違点 2の判断の誤り ) に対し (1) 相違点 2の容易想到性に係る原告の主張は, ピアシング時だけ被覆材の剥離が生じないように特別の工夫をして被加工物を穿設し, ピアシング後の切断時には, 被覆材に当該特別の工夫もすることなく被加工物の切断作業を行うこと という周知事項の存在を前提としている しかし, かかる周知事項は認められない したがって, 審決の判断は正当であり, 取消事由 2は成り立たない (2) 甲 7 事項に係る原告の主張は, 要するに,( ア ) 本件発明 1の被覆材と甲 7 事項の弊害物とは異ならない,( イ ) 甲 7 事項の弊害物除去工程は本件発明 1の第 1 加工工程に対応し, 甲 7 事項の穿孔工程と切断工程は本件発明 1の第 2 加工工程に対応するから, 甲 1 発明の 被覆材 を甲 7 事項の 所定の塗装厚の合成樹脂塗料からなる弊害物 に置き換えることは, 動機がない という審決の認定は誤りであるという点にある しかし, 以下に述べるとおり, 審決の認定は, 結論において誤っていない まず, 審決が 甲 7 事項は, 3 工程からなり, 2 工程からな - 12 -

る甲 1 発明と, 前提を異にする と述べた部分に表現上の不適切さが存在することは否めない また, 審決が 甲 1 発明の 被覆材 を甲 7 事項の 所定の塗装厚の合成樹脂塗料からなる弊害物 に置き換えることは, 動機がない と述べている点も的外れの感を否めない なぜなら, 審決が判断した争点は, 甲 1 発明の 被覆材 を甲 7 事項の 所定の塗装厚の合成樹脂塗料からなる弊害物 に置き換えること ではなく, 甲 1 発明の 被覆材除去工程 ( 切断加工軌跡全体に及ぶ ) を甲 7 事項の 弊害物除去工程 ( ピアス加工前のみ ) に置き換えること の容易性であったからである しかし, 審決の理由を全体として理解すれば, 審決が 甲 1 発明の 被覆材除去工程 ( 切断加工軌跡全体に及ぶ ) を甲 7 事項の 弊害物除去工程 ( ピアス加工前のみ ) に置き換えること の容易性を判断したことは明らかであり, 以下のとおり, その動機がないと判断した結論には誤りがない まず, 甲 1 発明の目的は, 保護シートの剥離防止にあるのに対して, 甲 7 事項の目的は, 錆やマーキング或いは塗装等の弊害物が形成された被加工材に於いては, 該弊害物によって照射したレーザ光が吸収或いは反射されてしまい, その結果被加工材へのレーザエネルギーが低下することにより穿孔に時間がかかるといった問題 や, 被加工材表面に施された塗料などが蒸発或いは燃焼することによって発生したガスや燃焼生成物質がアシストガスに作用してアシストガスの純度を低下させ, ピアシングに時間がかかるといった問題 を解決することにあり ( 0007, 0008 ), 両者は目的を異にする したがって, 一方の解決手段が他方の解決手段にもなるという関係にはない すなわち, 保護シートの剥離防止に有効な手段が弊害物によるピアシング時間の長時間化の防止にも役立つという技術常識は存在しないし, 反対に, 弊害物によるピアシング時間の長時間化の防止に有効な手段が保護シートの剥離防止に役立つという技術常識も存在しない 次に, 穿孔工程に先立って穿孔加工点付近の弊害物除去工程を行い, 切断 - 13 -

工程に先立っては弊害物除去工程を行わないという甲 7 事項の構成を甲 1 発明に適用する動機はない すなわち, 甲 7 事項が解決課題として挙げている, 錆やマーキング或いは塗装等の弊害物が形成された被加工材に於いては, 該弊害物によって照射したレーザ光が吸収或いは反射されてしまい, その結果被加工材へのレーザエネルギーが低下することにより穿孔に時間がかかるといった問題 や, 被加工材表面に施された塗料などが蒸発或いは燃焼することによって発生したガスや燃焼生成物質がアシストガスに作用してアシストガスの純度を低下させ, ピアシングに時間がかかるといった問題 はピアシング時に特有な問題であり, 切断時には大きな問題とはならないというのが, 甲 7 事項における前提である 他方, 甲 1 発明の目的である保護シートの剥離防止という課題は, ピアシング時のみに存在するものではない そして, 甲 1 発明では, 保護シートの焼付処理を切断加工軌跡全体に沿って行っている したがって, 仮に, 甲 1 発明に接した当業者が甲 7 事項にも接したとしても, ピアス穴付近のみで保護シートの焼付処理を行えば, そのまま切断加工を行っても保護シートの剥離が生じることはないとの効果を予測することはあり得ない したがって, 甲 1 発明に甲 7 事項を適用するという動機は全く存在しない (3) 以上のとおりであるから, 取消事由 2は成り立たない 3 取消事由 3( 本件発明 2についての判断の誤り ) に対し取消事由 3は取消事由 2が成り立つことを前提とするものであるところ, 取消事由 2が成り立たないことは前記のとおりである したがって, 取消事由 3 も成り立たない 第 5 当裁判所の判断 1 取消事由 1( 本件発明 1についての相違点 1の判断の誤り ) について (1) ア本件発明 1と甲 1 発明とは, いずれも, 被覆材を表面に設けた被加工 - 14 -

物を, アシストガスを用いたレーザ光により加工するレーザ加工方法に関するものであり, 両発明の技術分野は共通する ( 本件明細書の 000 1, 甲 1 公報の 0001 ) また, 本件発明 1と甲 1 発明とは, レーザ加工中に, 被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために, 第 1 加工工程として, 最終加工とは異なる加工条件により被覆材を処理する点でも共通する ( 本件明細書の 0 002 ~ 0008, 0014, 0050, 甲 1 公報の 0 002 ~ 0006, 0008, 0018 ) しかし, 本件発明 1は, 被覆材をあらかじめ除去するものであるのに対し, 甲 1 発明は, 保護シート ( 被覆材 ) が剥離するのを防止するために, ワーク ( 被加工物 ) にあらかじめ保護シートを焼付けるものであり, この点において, 両発明は相違する 甲 1 公報には, 保護シートをあらかじめ除去することについては記載も示唆もなく, 甲 1 発明の保護シートが剥離するのを防止するために, 保護シートをあらかじめ除去することを動機付けるものはない かえって, 甲 1 公報には, 保護シートがワーク上に貼付されたままであることが望ましい ( 0003 ) が, 保護シート付きワークにレーザビーム及びアシストガスを照射して切断加工を行うと, 保護シートが剥離してしまうため, 保護シートをワーク上に残すことを目的とするレーザによる切断加工は実際には行われていなかった ( 0005 ) ことが記載されている このような記載に照らすと, 甲 1 発明は, 保護シートをあらかじめ除去してワークを露出させることは, 望ましくないとの認識を前提とするものと解される そうすると, 甲 1 発明においては, 保護シートをあらかじめ除去してワークを一定範囲にわたり露出させることは, 保護シートが剥離するのを防止するためであるとはいえ, そもそも意図するところではないともいえる - 15 -

イ一方, 甲 2 公報には, 表面を合成樹脂等の保護材で覆った状態の金属材に対して, レーザによる溶断加工を実施すると, 保護材が金属材に溶着して表面を汚すこと ( 甲 2 1 頁右下欄 16 行 ~2 頁左上欄 8 行 ), また, このような溶着を防止するために, 低い出力のレーザ光エネルギで保護材を溶断した後, 高い出力のレーザ光エネルギで金属部材を加工すること ( 同 特許請求の範囲 ) が記載されている また, 甲 3 公報には, ステンレスなどの金属からなる母材の表面に合成樹脂の被膜を付着させた材料を, レーザ光で切断する際に, これらを同時に切断すると, 被膜が炭化した状態で母材の表面に焼付いてしまうこと ( 甲 3 1 頁左下欄 18 行 ~2 頁左上欄 2 行 ), また, このような被膜の炭化を防止するために, 弱いエネルギのレーザ光で被膜だけ切断してから, 強いエネルギのレーザ光で母材を切断すること ( 同 特許請求の範囲 ) が記載されている 甲 2 公報及び甲 3 公報の上記記載によれば, 被覆材を表面に設けた被加工物をレーザ光により加工する際に, 被覆材が被加工物に溶着したり, 被覆材が炭化して被加工物に焼付いたりするのを防止するために, 低いエネルギのレーザ光で被覆材をあらかじめ除去した後, 高いエネルギのレーザ光で被加工物を加工することは, 周知技術であると認められる しかし, 甲 1 発明は, ワークと保護シートとの間にアシストガスが流入して保護シートが剥離するのを防止するために, ワークにあらかじめ保護シートを焼付けるものであるのに対し, 上記周知技術において, 被覆材の除去は, 被覆材が被加工物に溶着すること等を防止するために行われるものであり, 被加工物と被覆材との間にアシストガスが侵入して被覆材が剥離するのを防止するために行われるものではない そもそも, 甲 2 公報及び甲 3 公報には, アシストガスについての記載はなく, アシストガスが被加工物と被覆材との間に侵入して, 被覆材が剥離することについても何ら記載はない そうすると, 上記周知技術における 被覆材を除去する - 16 -

ことと, 甲 1 発明における ワークに保護シートを焼付ける ことは, 相互に置換可能な手段であるとはいえないから, 甲 1 発明において, ワークにあらかじめ保護シートを焼付けることに代えて, 保護シートをあらかじめ除去する動機付けがあるということはできない ウ以上のとおりであるから, 甲 1 発明において, ワークにあらかじめ保護シートを焼付けることに代えて, 保護シートをあらかじめ除去することは, 当業者が容易に想到することができたものとはいえない (2) 原告の主張についてア原告は, 保護シートを 焼付ける 工程を設ける代わりに, アシストガスが流入する範囲の保護シートを 除去する 工程を設けてもよいのは自明であり, このことは, 甲 6 公報の記載 ( 甲 6 2 頁左下欄 7 行 ~17 行 ) からも明らかであると主張し, この主張を前提として, 甲 1 発明に, 甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された周知技術とを組み合わせて, 保護シートを 焼付ける 工程を設ける代わりに, アシストガスが流入する範囲の保護シートを 除去する 工程を設けることは, 当業者が適宜選択できる設計的事項にすぎないものであると主張する しかし, まず, 甲 6 公報に記載されている発明は, 母材の切断と同時に, フィルムコーティング材を溶かして蒸発させるものであり ( 甲 6 特許請求の範囲,2 頁右上欄 19 行 ~ 左下欄 17 行 ), 本件発明 1や甲 1 発明とは異なるものである また, 前記 (1) のとおり, 甲 2 公報及び甲 3 公報から認められる周知技術における 被覆材を除去する ことと, 甲 1 発明における ワークに保護シートを焼付ける ことは, 相互に置換可能な手段であるとはいえない以上, 甲 6 公報に記載されている発明の内容のいかんにかかわらず, 甲 1 発明において, ワークにあらかじめ保護シートを焼付けることに代えて, 保護シートをあらかじめ除去する動機付けがあるといえないことに変わり - 17 -

はない したがって, 原告の上記主張を採用することはできない イ原告は, 甲 2 公報及び甲 3 公報の記載によれば, 被覆材を表面に設けた被加工物に対して, 被覆材を残したままレーザ光により加工すると, 被覆材が被加工物に溶着して損傷することは周知であり, 甲 1 発明においても, 被覆材を残したままレーザ光により加工すると, 被覆材が被加工物に溶着して損傷するという課題を有しているといえる ( 甲 1の 001 1 ) から, 当該課題を解決するために, 甲 1 発明に甲 2 公報及び甲 3 公報に記載された上記周知技術を適用する動機付けはあり, かつ, 保護シートの剥離を防止できることは同様であって適用の阻害要因もないから, 甲 1 発明に上記周知技術を適用して, 甲 1 発明の 焼付ける 工程を本件発明 1の 除去する 工程にすることに格別の困難性は存在しないとも主張する しかし, 甲 1 発明は, ワークにあらかじめ保護シートを焼付けるものであるから, このような発明に甲 2 公報及び甲 3 公報から認められる上記周知技術を適用したとしても, 保護シートを焼付けたワークを切断加工する際に, その切断加工前に, 焼き付けた保護シートの一部をあらかじめ除去するという発明に想到するにすぎず, 甲 1 発明の 焼付ける 工程を 除去する 工程に置換することにならないことは明らかである したがって, 原告の上記主張を採用することはできない (3) 小括よって, 取消事由 1は理由がない したがって, 取消事由 2( 本件発明 1についての相違点 2の判断の誤り ) について検討するまでもなく, 本件発明 1は, 当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない 2 取消事由 3( 本件発明 2についての判断の誤り ) について - 18 -

取消事由 3は取消事由 1の存在を前提とするものであるから, 取消事由 1に理由がない以上, 取消事由 3は理由がなく, 本件発明 2は, 当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない 3 まとめよって, 本件特許を無効とすることはできないとした審決の判断に誤りはなく, 審決に取り消すべき違法はない 第 6 結論よって, 原告の請求は理由がないから, これを棄却することとし, 主文のとおり判決する 知的財産高等裁判所第 3 部 裁判長裁判官設樂 一 裁判官西理香 裁判官田中正哉 - 19 -