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同訴訟代理人弁護士末吉剛 同訴訟代理人弁理士寺地拓己 主 文 1 原告の請求を棄却する 2 訴訟費用は原告の負担とする 事実及び理由第 1 請求特許庁が無効 号事件について平成 28 年 11 月 7 日にした審決を取り消す 第 2 事案の概要本件は, 特許無効審判請求を不成

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では理解できず 顕微鏡を使用しても目でみることが原理的に不可能な原子 分子又はそれらの配列 集合状態に関する概念 情報を使用しなければ理解することができないので 化学式やその化学物質固有の化学的特性を使用して 何とか当業者が理解できたつもりになれるように文章表現するしかありません しかし 発明者が世

達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

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市町村合併の推進状況について

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に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

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訂正情報書籍 170 頁 173 頁中の 特許電子図書館 が, 刊行後の 2015 年 3 月 20 日にサービスを終了し, 特許情報プラットフォーム ( BTmTopPage) へと模様替えされた よって,

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

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REPORT あいぎ特許事務所 名古屋市中村区名駅 第一はせ川ビル 6 階 TEL(052) FAX(052) 作成 : 平成 27 年 4 月 10 日作成者 : 弁理士北裕介弁理士松嶋俊紀 事件名 入金端末事件 事件種別 審決取消

目次 1. 訂正発明 ( クレーム 13) と控訴人製法 ( スライド 3) 2. ボールスプライン最高裁判決 (1998 年 スライド 4) 3. 大合議判決の三つの争点 ( スライド 5) 4. 均等の 5 要件の立証責任 ( スライド 6) 5. 特許発明の本質的部分 ( 第 1 要件 )(

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法第 20 条は, 有期契約労働者の労働条件が期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合, その相違は, 職務の内容 ( 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度をいう 以下同じ ), 当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して, 有期契約労働者にとって不合

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にした審決を取り消す 第 2 前提事実 1 特許庁における手続の経緯被告は, 発明の名称を レーザ加工方法, 被レーザ加工物の生産方法, およびレーザ加工装置, 並びに, レーザ加工または被レーザ加工物の生産方法をコンピュータに実行させるプログラムを格納したコンピュータが読取可能な記録媒体 とする特

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控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

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Taro-052第6章1節(p ).jtd

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ら退去を迫られやむを得ず転居したのであるから本件転居費用について保護費が支給されるべきであると主張して 本件処分の取消しを求めている 2 処分庁の主張 (1) 生活保護問答集について ( 平成 21 年 3 月 31 日厚生労働省社会援護局保護課長事務連絡 以下 問答集 という ) の問 13の2の

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第1回 基本的な手続きの流れと期限について ☆インド特許法の基礎☆

作成日 :2006 年 10 月 1 日 世界知的所有権機関 World Intellectual Property Organization (WIPO) 所在地 :34 chemin des Colombettes, 1211 GENEVE 20, Switzerland Tel : (41 2

主文第 1 項と同旨第 2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等 (1) 原告は, 平成 24 年 6 月 14 日, 発明の名称を 遊技機 とする特許出願をし ( 特願 号 請求項数 3 ), 平成 26 年 5 月 12 日付けで拒絶理由通知 ( 甲 8 以下 本件

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上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

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く 特許異議申立制度と無効審判制度が併存していた平成 15 年特許法改正以前は 請求人適格を限定する明文規定こそ存しなかったものの 特許無効審判は利害関係人に限り請求できるとの解釈がなされていた このことからも 特許無効審判の請求人適格に限定を付すか否かは 特許異議申立制度と特許無効審判制度との併存

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応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

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という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

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4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

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定していました 平成 25 年 4 月 1 日施行の 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律 では, 継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みの廃止について規定されていますが, 平成 25 年 4 月 1 日の改正法施行の際, 既にこの基準に基づく制度を設けている会社の選定基準につい

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< 知的財産推進計画 2015 の構成 > 第 1 部重点 3 本柱 第 1. 地方における知財活用の推進 第 2. 知財紛争処理システムの活性化 << 知財紛争処理システムの機能強化 >> 証拠収集手続 権利の安定性 今回のテーマ 損害賠償額 差止請求権 << 知財紛争処理システムの活用促進 >>

保険給付に関する決定についての審査請求に係る労働者災害補償保険審査官の決定に対して不服のある者は 再審査請求をした日から 3 か月を経過しても裁決がないときであっても 再審査請求に対する労働保険審査会の裁決を経ずに 処分の取消しの訴えを提起することはできない (H23-4B)

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2018.06.11 発行 No. 29 知財高裁大合議 クレストール特許の有効性を肯定 物質特許の有効性が争われた事案において 知財高裁大合議は 1 特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益が特許権消滅後に失われるか 2 刊行物に化合物が一般式の形式で記載され 当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合の引用発明適格性に関し 新たな判断を下した 事案の概要塩野義製薬株式会社 ( 以下 塩野義 という ) は 発明の名称を ピリミジン誘導体 とする特許 ( 特許第 2648897 号 以下 本件特許 という ) の特許権者である Xは 本件特許に対し無効審判請求をし 日本ケミファ株式会社 ( 以下 日本ケミファ という ) は 本件審判に請求人として参加し アストラゼネカユーケイリミテッド ( 以下 アストラゼネカ という ) は 本件審判に被請求人を補助するため参加した 本件訂正後の本件特許の請求項 1の発明に係る特許請求の範囲の記載は 以下のとおりである ( 以下 当該発明を 本件発明 1 という ) 請求項 1 ( 本件発明 1) 式 (I): 化 1 ( 式中 R 1 は低級アルキル ; R 2 はハロゲンにより置換されたフェニル ; 1

R 3 は低級アルキル ; R 4 は水素またはヘミカルシウム塩を形成するカルシウムイオン ; Xはアルキルスルホニル基により置換されたイミノ基 ; 破線は2 重結合の有無を それぞれ表す ) で示される化合物またはその閉環ラクトン体である化合物 特許庁は 本件審判の請求は 成り立たない との審決をした 日本ケミファらは 審決の取り消しを求めて 知財高裁に出訴した 審決取消訴訟継続中に本件特許権が消滅したことから 塩野義は 日本ケミファらは 本件特許権存続期間中に 本件特許権の実施行為に相当する行為を行っておらず 塩野義は損害賠償請求権 告訴権等を有していないことは明らかであるから 日本ケミファらの訴えの利益は既に消滅しており 本件訴えは 却下すべきである等と主張した 知財高判大合議平成 30 年 4 月 13 日の判断知財高判大合議 ( 清水裁判長 ) は 次のように判示して 日本ケミファらの請求を棄却した (1) 訴えの利益本件審判請求が行われたのは平成 27 年 3 月 31 日であるから 審判請求に関しては同日当時の特許法 ( 平成 26 年法律第 36 号による改正前の特許法 ) が適用される 平成 26 年法律第 36 号による改正前の特許法の下において 特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益は 特許権消滅後であっても 特許権の存続期間中にされた行為について 何人に対しても 損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり 刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情がない限り 失われることはない 本件において 本件特許権の存続期間は 特許出願の日である平成 4 年 5 月 28 日から25 年の経過をもって終了しているが 上記のような特段の事情が存するとは認められないから 本件訴訟の訴えの利益は失われていない なお 平成 26 年法律第 36 号による改正によって 特許無効審判請求をすることができるのは 特許を無効にすることについて私的な利害関係を有する者のみに限定された 特許権侵害を問題にされる可能性が少しでも残っている限り そのような問題を提起されるおそれのある者は 当該特許を無効にすることについて私的な利害関係を有し 特許無効審判請求を行う利益 ( したがって 特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益 ) を有することは明らかであるから 訴えの利益が消滅したというためには 特許権の存続期間が満了し かつ 特許権の存続期間中にされた行為について 原告に対し 損害賠償又は不当利得返還の請求が行われたり 刑事罰が科されたりする可能性が全くなくなったと認められる特段の事情が存することが必要である (2) 進歩性進歩性に係る要件が認められるかどうかは 特許請求の範囲に基づいて特許出願に係る発明 ( 本願発明 ) を認定した上で 特許法 29 条 1 項各号所定の発明と対比し 一致する点及び相違する点を認定し 相違する点が存する場合には 当業者が 出願時 ( 又は優先権主張日 以下同じ ) の技術水 2

準に基づいて当該相違点に対応する本願発明を容易に想到することができたかどうかを判断する このような進歩性の判断に際し 本願発明と対比すべき同条 1 項各号所定の発明 ( 主引用発明 ) は 通常 本願発明と技術分野が関連し 当該技術分野における当業者が検討対象とする範囲内のものから選択されるところ 同条 1 項 3 号の 刊行物に記載された発明 については 当業者が 出願時の技術水準に基づいて本願発明を容易に発明をすることができたかどうかを判断する基礎となるべきものであるから 当該刊行物の記載から抽出し得る具体的な技術的思想でなければならない 引用発明として主張された発明が 刊行物に記載された発明 であって 当該刊行物に化合物が一般式の形式で記載され 当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合には 特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り 当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず これを引用発明と認定することはできない この理は 刊行物から副引用発明を認定するときも 同様である 甲 1 発明は (M=Na) の化合物 であると認められる 本件発明 1 と甲 1 発明との一致点及び相違点 一致点 ( 式中 R 1 は低級アルキル ; R 2 はハロゲンにより置換されたフェニル ; R 3 は低級アルキル ; 破線は2 重結合の有無を それぞれ表す ) で示される化合物またはその閉環ラクトン体である化合物 である点 相違点 (1-ⅰ) 3

X が 本件発明 1 では アルキルスルホニル基により置換されたイミノ基であるのに対し 甲 1 発 明では メチル基により置換されたイミノ基である点 (1-ⅱ) R 4 が 本件発明 1では 水素又はヘミカルシウム塩を形成するカルシウムイオンであるのに対し 甲 1 発明では ナトリウム塩を形成するナトリウムイオンである点原告らは 相違点 (1-ⅰ) につき 甲 1 発明に甲 2 発明を組み合わせること 具体的には 甲 1 発明の化合物のピリミジン環の2 位のジメチルアミノ基 (-N(CH3)2) の二つのメチル基 (-C H3) のうちの一方を甲 2 発明であるアルキルスルホニル基 (-SO2R (R はアルキル基 )) に置き換えること すなわち 甲 1 発明の化合物のピリミジン環の2 位の ジメチルアミノ基 を -N (CH3)(SO2R ) に置き換えることにより 本件発明 1に係る構成を容易に想到することができる旨主張している そこで 甲 2 発明について検討する 甲 2( 特開平 1-261377 公報 ) には 次の記載がある (a) 特許請求の範囲 1. 一般式 式中 R 1 は アルキルを表わし R 2 はアリールを表わし R 3 は アルキルを表わし 該基は 式 -NR 4 R 5 但し R 4 及びR 5 は同一もしくは相異なるものであり アルキル アルキルスルホニル を表わす Xは -CH=CH-の基を表わし そして 4

A は式 の基を表わし ここに R 6 は水素 を表わし そして R 7 は カチオンを表わす 置換されたピリミジン 甲 2の一般式 (I) で示される化合物は 甲 1の一般式 Iで示される化合物と同様 HMG-Co A 還元酵素阻害剤を提供しようとするものであり ピリミジン環を有し そのピリミジン環の2 4 6 位に置換基を有する化合物である点で共通し 甲 1 発明の化合物は 甲 2の一般式 (I) で示される化合物に包含される 甲 2には 甲 2の一般式 (I) で示される化合物のうちの 殊に好ましい化合物 のピリミジン環の2 位の置換基 R 3 の選択肢として -NR 4 R 5 が記載されるとともに R 4 及びR 5 の選択肢として メチル基 及び アルキルスルホニル基 が記載されている しかし 甲 2に記載された 殊に好ましい化合物 におけるR 3 の選択肢は 極めて多数であり その数が 少なくとも2000 万通り以上あることにつき 原告らは特に争っていないところ R 3 として -NR 4 R 5 であってR 4 及びR 5 を メチル 及び アルキルスルホニル とすることは 2 000 万通り以上の選択肢のうちの一つになる また 甲 2には 殊に好ましい化合物 だけではなく 殊に極めて好ましい化合物 が記載されているところ そのR 3 の選択肢として -NR 4 R 5 は記載されていない さらに 甲 2には 甲 2の一般式 (I) のXとAが甲 1 発明と同じ構造を有する化合物の実施例として 実施例 8(R 3 はメチル ) 実施例 15(R 3 はフェニル ) 及び実施例 23(R 3 はフェニル ) が記載されているところ R 3 として -NR 4 R 5 を選択したものは記載されていない そうすると 甲 2にアルキルスルホニル基が記載されているとしても 甲 2の記載からは 当業者が 甲 2の一般式 (I) のR 3 として -NR 4 R 5 を積極的あるいは優先的に選択すべき事情を見いだすことはできず -NR 4 R 5 を選択した上で 更にR 4 及びR 5 として メチル 及び アルキルスルホニル を選択すべき事情を見いだすことは困難である したがって 甲 2から ピリミジン環の2 位の基を -N(CH3)(SO2R ) とするという技術的思想を抽出し得ると評価することはできないのであって 甲 2には 相違点 (1-ⅰ) に係る構成が記載されているとはいえず 甲 1 発明に甲 2 発明を組み合わせることにより 本件発明の相違点 (1-ⅰ) に係る構成とすることはできない 5

Practical tips 特許無効審判請求を不成立とした審決に対する取消しの訴えの利益が特許権消滅後に失われるかに関し 本判決は 特段の事情がない限り 失われないと判示した 物質特許に関しては 特許庁により無効審決が下されない限り 厚生労働省による承認は下りないとの日本版パテントリンケージの運用の下では 本件の事実関係においては訴えの利益を否定する方向に働く事情も相応に存するようにも思えるが 本判決はこのような場合でも訴えの利益が失われることはないとした 法律論としては 特許権消滅後の審決取消訴訟への門戸は閉じられなかったが 審決取消訴訟を提起せずとも 特許権消滅後に後発品の承認がなされる以上 本件はビジネス的には意味のない訴訟であり 今後同種訴訟が増えるとは思われない 刊行物に化合物が一般式の形式で記載され 当該一般式が膨大な数の選択肢を有する場合の引用発明適格性に関し 本判決は 特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情がない限り 当該特定の選択肢に係る具体的な技術的思想を抽出することはできず これを引用発明と認定することはできないと判示した 膨大な数 とはどの程度の数を言うのかについて 今後争いが生じ得るであろうが 本件では 少なくとも2000 万通り以上 とされており この数字が一つの指標となるであろう また 特定の選択肢に係る技術的思想を積極的あるいは優先的に選択すべき事情の有無については 当該刊行物が特許文献である場合には 特定の選択肢が実施例として記載されているか否かが1つの目安となると思われる 本判決は 上告されることなく確定した 執筆者紹介 弁護士 NY 州弁護士 阿部隆徳 TEL 06-6949-1496 FAX 06-6949-1487 MAIL abe@abe-law.com www.abe-law.com 540-0001 大阪府大阪市中央区城見 1 丁目 3 番 7 号松下 IMP ビル 本ニュースレターは 法的アドバイスまたはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません 本ニュースレター記載の情報の著作権は当事務所に帰属します 本ニュースレターの一部または全部について無断で複写 複製 引用 転載 翻訳 貸与等を行なうことを禁止します 本ニュースレターの配信または配信停止をご希望の場合には お手数ですが abe@abe-law.com までご連絡下さいますようお願い申し上げます 6