発達障害研修講座(1)

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3 情緒障害 選択性かん黙等のある児童生徒については 情緒障害の状態になった時期や その要因などに応じて中心となる指導内容が異なります 例えば カウンセリング等を中心とする時期 緊張を和らげるための指導を行う時期 学習空白による遅れなどを補いながら心理的な不安定さに応じた指導を行って自信を回復する時

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回数 テーマ 内容 2 発達障害のある児童の心理 行動特性 1 学習障害のある人の心理 行動特性 3 発達障害のある児童の心理 行動特性 2 ADHD のある人の心理 行動特性 4 発達障害のある児童の心理 行動特性 3 自閉スペクトラム症のある人の心理 行動特性 5 発達障害に対する支援 1 学習

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山口大学教育学部附属特別支援学校通級指導教室におけるICT 活用研修プログラム開発プロジェクト 通級指導教室における ICT 活用に関するアンケート タブレット端末の活用事例 本校では 地域の特別支援教育の充実に貢献することを目的に 山口県教育委員会 山口大学と連携を図りながら

発達障害

(2) 記録用サポートブックの作り方 記録用サポートブックは 一般様式 を使って書きます 一般様式 は 項目 本人の状況 支援方法 の 3 つの枠からできています 様式一般様式支援者 : 場所 : 日付 : < 項目 > 例 ) 話を聞く( 授業中 ) 使い ポイント 方 気になるな 困ったな と思

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■ 第一章 発達障害児に対する適切な指導 ■

発達障害者支援法から場面緘黙や吃音が外される? Sunday02:17 久田信行 からの転載 最近 場面緘黙の当事者の方から 発達障害者支援法の対象から場面緘黙が外される恐れがあるという噂を聞いたけれど どういうこと? と質

乳幼児健診と発達障害 1 歳 6 か月児健診 3 歳児健診 5 歳児健診 1 歳 6 か月児健診と発達障害 自閉症の一部は発見される (Kanner 型 ) 言語発達の遅れ通常は自発言語での判定 非言語的なコミュニケーションの遅れ正確なスクリーニングが難しい ADHD は発見されない 学習障害も発見

ライフステージに応じた 発達障害の人たちへの支援の考え方 山梨県立こころの発達総合支援センター 本田秀夫 第 1 部発達障害とは?

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平成25年度アーチル発達障害基礎講座 「発達障がい児者支援の今後について」 ~新たな視点と支援の方向性~

1 対象児童 省略 2 児童の実態 省略 発達障害 情緒障害通級指導教室自立活動学習指導案 コミュニケーションに課題のある児童の指導 平成 30 年 11 月 6 日 ( 火 ) 第 5 校時 3 指導観これまでに通級指導教室では 落ち着いた環境の中で 精神的安定を図り 本来持っている能力を発揮し

乳幼児新規相談者 主訴別内訳

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

1. 社会性の障害 : 興味や関心を共有しようとする 姿勢の乏しさ 人の気持ちがわかりにくい 常識やルールの把握が困難 2. コミュニケーションの障害 : 一方的で偏った内容の会話 比喩や冗談の理解が困難 言葉の裏の意味や暗黙のルールが理解できない ( 例 : お鍋見といてね 吹きこぼれても見ている

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【講義】 強度行動障害がある者の基本的な理解

無料低額宿泊所等を利用する被保護者等に対する知的障害及び適応行動等に関する調査研究

< 評価表案 > 1. 日本人 ( ロールプレイ当事者 ) 向け問 1. 学習者の言っていることは分かりましたか? 全然分からなかった もう一息 なんとか分かった 問 2 へ問 2. 学習者は, あなたの言っていることを理解し, 適切に反応していましたか? 適切とは言えない もう一息 おおむね適切

Transcription:

発達障害研修講座 (1) 発達障害の理解と情報の収集

発達障害とは? 認知 ( 物事を考えること ) 言語( ことば ) 運動 社会的スキル ( 生活能力 ) の獲得に問題が生じる 発達の遅れ 質的なゆがみがある 症状が発達期に現れ 成人期まで持続する精神遅滞 ( 知的障害 )(MR) 学習障害 (LD) 発達性協調運動障害 (DCD) 広汎性発達障害 (PDD) 注意欠陥多動性障害 (ADHD) 目に見えない発達上のゆがみや遅れを発達障害という

発達障害の気づき 表情? ことばの遅れ 異常? 人とのかかわりかた? 動き ( 緩慢 多動 )? 身辺自立? 全体的な遅れ? 他の子どもと比べ どこか違っている 健診で問題を指摘された? 先入観にとらわれず 子どもをよく見ることが大切

気になる状態と考えられる発達障害 落ち着きがなく衝動的である 人とかかわれず自己中心的である こだわりがありコミュニケーションがとれない 全体的に発達が遅れている 学習につまずいている ことばだけが遅れている 発音がおかしい ADHD アスペルガー障害 高機能自閉症 自閉症 知的障害 LD 言語発達遅滞 言語障害 子どもをよく観察し 主となる問題や困難を特定する

注意欠陥多動性障害 (ADHD) とは 不注意 不注意 注意の持続の困難 聞いていない 物事をやり遂げられない 順序立てられない 物をなくす 忘れる 多動 もじもじする 座っていられない 高いところに上がる 静かに活動できない しゃべりすぎる 衝動 すぐ答える 順番を待てない 他人を妨害する ADHD とは自分の行動が抑制できない障害

ADHD によく見られる特徴 ぼんやり 注意散漫タイプ 声をかけられても気がつかない 話を聞いていない ( 他のことに注意がむく ) 自分の作業より他人のことが気になる 遊びが持続しない 食事に集中せずに遅い おもちゃを置き忘れる キレやすく衝動的なタイプ おしゃべり好きで話に割り込む 集団活動で順番が守れない おもちゃの貸し借りが苦手 食べながらもおしゃべり 一定の場所にじっとしていない すぐに飛び出す すぐに乱暴する 乱暴なことばづかい 混合タイプ ぱっと行動しすぐに別の動きが出る 座っていても指遊び手遊び 興味が次々に移る 常に動き回りちょっかいを出す いただきますが待てない 好きなことには集中する ADHD は一様ではなく さまざまなタイプがある

ADHD 見極めのチェックリスト 今後の特別支援教育の在り方について ( 最終報告 ) より 判断基準 ( 試案 ) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/018/toushin/030301j.htm ADHD 評価スケール DuPaul, et al(1998) 明石書店 日常生活における行動観察が重要

広汎性発達障害 (PDD) とは 1. 社会性の障害 視線が合わない 友達が作れない 喜びを分かち合えない 他人の気持ちが理解できない 2. 行動の特異性 ( 想像力の障害 ) 儀式的行動 常同的な反復行動 こだわり 3. コミュニケーションの特異性 一方的に話す 独り言 場にそぐわない発言 アスペルガー障害 高機能自閉症 (HFA) とは知的能力が高い PDD 自閉症とは 知的障害のある PDD

アスペルガー HFA のある子どもの特徴 場の空気が読めない ( 嫌がっているのに気がつかない ) 暗黙のルールがわからない ( 順番に話す など ) 思ったことをすぐ口にする ( どうしてハゲてるの? ) 話が一方的である ( 自分の興味のある話だけ ) 昆虫の名前 国旗など抜群に記憶力がいい ひとりで遊んでいることが多い ( 一人遊び マニアックな遊び?) 変化を嫌う ( ものや行為へのこだわりがある ) 急に予定が変更になるとパニックを起こす 能力の著しい偏りから 対人関係 情緒の問題を引き起こす

自閉症の子どもの特徴 視線が合わない 合わせようとしない コマーシャルなど 場に合わない独り言を言う ことばがなく 奇声をあげる 特定のもの ( 水 鍵 食べ物など ) にこだわる 回るもの 光るものに強く関心をもつ 人に対する関心が乏しい 意味のない空虚な笑いが見られる 同じ動きを繰り返す ( くるくる回るなど ) 知的な遅れや能力の著しい偏りから 社会適応が困難になる

PDD 見極めのチェックリスト 今後の特別支援教育の在り方について ( 最終報告 ) より 判断基準 ( 試案 ) http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/ shotou/018/toushin/030301j.htm 自閉症幼児チェックリスト ( 資料 ) Toddlers(Robins, Fein, Barton & Green,2001)

知的障害 ( 精神遅滞 ;MR) とは 発達や知的能力が全体的に遅れている状態 同年齢の子どもに比べて著しく幼い 同年齢の子どもに比べて著しく手がかかる 知能指数 (IQ)70 未満がひとつの目安 早生まれや劣悪な養育状態で起こるものではない 早生まれ 養育の悪さでも遅れはあるが 適切な環境で追いつくことができる 知的障害とは発達の全体的遅れ

発達検査をしてみると 満 2 歳の子どもは この赤で囲まれたことができる そこで 発達のプロフィールは平らになる 遠城寺式発達検査

そこで 発達のプロフィールは全体的に標準より下に位置する 知的障害の子どもは 全体的に発達が遅れている

学習障害 (LD) とは 聞く 話す 読む 書く 計算する 推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態 身体障害 知的障害などの障害がない 医学的には 読み障害 書字障害 算数障害などが知られている LD とは知的な遅れのない学習困難教科学習が始まってみないとわからないことが多い

LD によく見られる特徴 靴などの左右をよく間違える 一対一で話すと理解できるが 集団の中での理解が困難 はさみなどの道具の使い方が未熟 不器用で運動がぎこちない 遊びのルール 状況の理解ができない 整理整頓が苦手 語彙が少ない 名前が出てこない 記憶力が弱い 能力の偏りから 学習や生活への適応の問題を引き起こす

認知の偏り そこで 発達のプロフィールは上と下の差が大きく 波打っている 発達障害の子どもは おおむね標準なのだが できない項目があったり 年齢よりできる項目があったりする このことを 発達 ( 認知 ) の偏り という

特異性言語障害 定義 : ことばを話すことの遅れ ことばを話すことと聞いて理解することの遅れがあり コミュニケーションに支障をきたす状態 知的障害 自閉症 LD などの障害ではない よく見られる様子 ことばの遅れ 語彙の少なさ ことばの一部だけ言う 言い誤りが多い 質問に答えられない 理解できることばが少ない 特異性言語障害とは コミュニケーションの困難さ

言語障害 ( 音声機能の障害 ) とは 音声や構音 ( 発音 ) 話し方の障害 脳性まひや聴覚障害でも起こる 音声障害 ( 機能性 器質性 運動障害性 ) からす が たらす (tarasu) などの発音の歪み 全体的に発音が不明瞭 吃音 ( 話し方のリズムの障害 ) はじめの音が出なかったり 一定のリズムで話せない ( ボ ボ ボクネ のような言い方 ) 言語障害とは 話し方 ( スピーチ ) の障害

二次障害

二次障害 虐待二次障害を引き起こす原因 ADHD ODD ( 反抗挑戦性障害 ) アスペルガー障害 CD ( 行為障害 )

虐待を受けている子どもの様子 ( 杉山,2007) 資料参照

反応性愛着障害とは 生後五歳未満までに親やその代理となる人と愛着関係が持てず 人格形成の基盤において適切な人間関係を作る能力の障害 二つの群 抑制型 : 他者に対して無関心 PDDに類似 脱抑制型 : 部分的な愛着関係の状態に取り残され 他者に対して無差別に薄い愛着を示す ADHDに類似 予後自制能力の欠如人間関係構成能力の障害 資料 ( 表 )

ADHD との類似点 相違点 ( 杉山,2007)

子どもを虐待から守る五か条 1. おかしい と感じたら迷わず連絡( 通告 ) を 2. しつけのつもり は言い訳 3. ひとりで抱え込まない 4. 親の立場より子どもの立場 5. 虐待はあなたの周りでも起こり得る 厚生労働省 (2005)

情報収集

必要な情報収集 知的能力 認知の偏り : 知能検査 WIPPSI,WISC-Ⅲ K-ABC,K 式知能検査 田中ビネー 発達の程度 : 発達検査 生活能力検査 遠城寺式 津守式発達検査 社会生活能力検査 問題行動 人間関係 行動観察問題行動の内容 実態他者とのかかわり方 ソーシャルスキル関係者からの聞き取り生育歴 行動様式の実態交友関係 他者理解など 信頼できる必要最小限の客観的なデータ収集

行動観察 どんなときに 場面 ( 場所 ) 設定 かかわり方 ことば 人 状況 どんな問題が ( 起きて ) 泣く 他害行動 自傷行為 暴言 無関心 ( 無反応 ) どう対応したか 叱る 無視 反撃する 逃げる ほめる (?) その効果は? やめる エスカレート 違う問題発生 謝る 無視

行動観察のまとめ 条件行動結果への対応 どんな活動の時間か 場所 設定 誰が どんな働きかけをしたのか 対象の子どもの特徴 教師の働きかけ 気になる行動はどういう行為かを具体的に 問題と考えられる行動のみを書くこと その意味( 何を訴えたいのか ) を考えること 左の行動に対して 教師 ( 子ども ) はどう対応したのか ( 反応したのか ) そしてその結果はどうだったのか ひとつの問題行動について分析することで どのように対応するか きめることができる

障害別行動観察のポイント ( 私見 ) ADHD 誰かに動かされているような感じ 本人の気づき さまざまな場面で アスペルガー障害 言語能力の高さ 記憶力の良さ 精神年齢の幼さ 知的障害 全体的な遅れ 複数の目で さまざまな場面で観察し 検査結果もあわせて判断する

保護者からの聞き取り 家庭の様子 事実を尋ねる 園での様子との比較 事情聴取ではない 保護者の育児に対する考え 保護者の考えを理解する 感情を受け入れる 園の方針への意見 父親のかかわり 存在感 夫婦のコミュニケーション 子どもとの遊び方 子どもに関する客観的な情報親の願いを丁寧に聞き取ること

相談機関 県教育センター教育事務所 ( 専門相談員 ) 市町村教育センター特別支援教育サポートセンター ( 新潟市 ) 特別支援学校児童相談所小児医療センター 精神医療センター発達障害者支援センター障害者就業 生活支援センター 困ったことは気軽に相談できます

大切なこと : 支援すること 何の障害? 集中できない ルールがわからない 医学的診断 よりも 子どもが抱える困難さの把握 保育園 ( 幼稚園 ) 家庭こそが中心に支援を! 治 療 よりも 特別な教育的支援 必要な情報収集子どもの困り感を見つけ支援の早急な提供

長澤研究室 http://www.ed.niigata-u.ac.jp/~nagasawa/ メールマガジン 特別支援教育 発達障害の情報 資料