15 松くい虫被害の効率的な防除方法実証試験 宮嶋大介 布川耕市 要旨 : 現行の松くい虫被害対策の防除システムを改良するために試験を行った 最も駆除の優先度が高い被害木は,7 月 ~ 10 月に枯死する夏枯れであり,10 月下旬の時点で針葉が黄色 ~ 褐色に変色していた それ以降に枯れる秋枯れ 年越し枯れは, 比較的寄生率 寄生量とも低かった このため, 夏枯れを優先的に駆除できるように防除システムを改良することが必要である Ⅰ はじめに 新潟県では昭和 52 年に松くい虫の被害が発見され ( 山崎 佐藤 1978) て以来, 被害量 被害地域とも年々 増加 拡大し続け, ピーク時の昭和 63 年には被害材積 4 万 m 3 に達した ( 新潟県 2011) その後, 被害拡大防止の 各種施策の効果もあり, 被害は減少傾向にあるが, 平成 3 21 年度の被害材積は約 7 千 m であり ( 新潟県 2011) 被 害の終息化には至っていない 本県では, 現在, 市町村を中心に被害対策を進めている が, 被害の終息化が見られない地域がある また, 防除予 算が削減される中, 現行防除システムを検証しより効率 的な防除システムを構築することが求められている 本県などの寒冷地における松くい虫被害は, 翌年に枯 れる 年越し枯れ が多いことが特徴とされている ( 在 原 齊藤 1984a, 陳野 1988) 年越し枯れ木は, 産卵期 を過ぎてからの発病となるため, マツノマダラカミキリ ( 以下, カミキリ ) の寄生率や寄生量が少なく ( 滝沢ら 1983, 在原 1988), 寄生しているカミキリも, 遅い時期に 産卵されたものである 産卵時期が遅くなると,2 年 1 化になる割合が多くなるため ( 滝沢ら 1979, 岸 1980), 羽化 脱出するカミキリのマツノザイセンチュウ ( 以 下, センチュウ ) 保持数も 1 年 1 化より少ない ( 在原 1985, 布川 山崎 1988, 小林 2004) このため, カミキリの寄生量が多く, 翌年度以降の感染 源となりやすい 年内枯れ を優先的に駆除していくこ とが, より効率的な防除方法となる 本県においても効 率的な被害木駆除のための選木の優先順位は示されてい るが ( 新潟県 1992), 広く普及はしていないため, 現場 においてより簡便に駆除すべき木 ( 以下, 要駆除木 ) を見分ける基準を示す必要がある そこで本試験では, 県内の森林病害虫防除事業の実施箇所を中心に巡回し, 被害が終息化しない原因を調査した また, 現行防除システムを, カミキリの寄生量が多い要駆除木を優先的に駆除する防除システムに改良するための基礎的なデータを集めることを目的に調査を行った Ⅱ 調査方法 1 現行防除システムにおける問題点の把握新潟県で行われている松くい虫被害対策は, 大きく分けて薬剤散布を中心とした 予防 及び被害木の伐倒くん蒸を中心とした 駆除 に分けられる 予防は, 松くい虫被害の恐れがあるマツ林に対して, あらかじめ地上もしくは空中から薬剤散布し, カミキリの後食を防ぐ方法である 駆除は, 松くい虫被害木を伐倒し, 薬剤処理等でカミキリを殺虫し, 被害の拡散を防ぐ方法である それぞれ効果的な対策であるため, 標準仕様書に基づき実施されている そこで, 県内の事業実施地を中心に巡回し, 期待される効果が上がっていない原因を調査した 2 効果的な防除方法の調査 (1) 調査地調査は, 新発田市のアカマツ林, 新潟市のクロマツ林及び長岡市のクロマツ林で行った 調査期間は 2009 年 6 月 ~ 2011 年 12 月である なお, 本試験では便宜上, 針葉の変色等外観に異常が確認できた ( 以下, 外観的枯死 ) 時期別に 夏枯れ, 秋
16 新潟県森林研究所研究報告 No.53 (2012) 評価寄生なし寄生少寄生中寄生多 表 1 カミキリ寄生の評価基準寄生状況樹皮を数ヵ所剥がして 全く被害の痕跡が無いもの樹皮を数ヵ所剥がして 被害の痕跡が1~3 箇所程度見つかる樹皮を剥がすと比較的簡単に被害の痕跡が見つかるもの外見からでも寄生が確認できるほど大量に寄生している 枯れ, 年越し枯れ の 3 つに区分した 夏枯れ は, 年内枯れのうち 7 月 ~ 10 月に枯れたものを, 秋枯れ は,11 月 12 月に枯れたものとした また, 年越し枯れ は 1 月 ~ 翌年度の 6 月までに枯れたものとした (2) 外観的枯死時期別のカミキリ寄生調査要駆除木の判断基準を示すため, 月別に外観的枯死木 カミキリは, まず樹冠部を後食する このため, 地上散布に限らず薬剤散布のポイントとしては, 十分な量の薬剤を梢端にしっかり散布することである スパウター散布の場合, 地上から薬剤を巻き上げて樹冠部に散布する必要があるため, 図 1 のような点に注意し散布をする必要がある へのカミキリの寄生の有無を調査した 調査は, カミキ リの寄生が多い幹の細い部分を中心に数ヵ所樹皮を剥が し穿入孔や木屑等から寄生の有無を調査した また, カ 散布が必要な所 ミキリの寄生量が多い順に 4 段階で評価した 評価の基 準は表 1 に示す なお, 補足データとして, 過去に調査したデータも使用した (3) 被害木の本数及び外観変化の追跡調査それぞれの調査地を, 月に 1 度巡回し, 松くい虫被害木 梢端に届かない 広葉樹などに よる跳ね返り の本数調査を行った また, 巡回時に発見した被害木を ランダムに抽出し, 外観的枯死月別に, 針葉の色と状態を 図 1 スパウター散布の注意点 基準に 4 区分に分けて追跡調査をおこなった 外観の区 分は, 表 2 に示す (2) 地上散布 ( スパウター ) の失敗事例 2 手前の若いマツの散布忘れの事例 表 2 針葉の判別区分 下越地方の海岸クロマツ林の例であるが, 図 2 のよう に奥にある比較的樹高の高いマツをねらって散布してし 区分黄色赤褐色落葉 変色状況針葉が薄緑 ~ 黄色のもの針葉が鮮やかな赤色のもの針葉がくすんだ赤 ~ 茶色のもの 大部分の針葉が落ちたもの まったため, 手前の比較的樹高の低いマツに十分に薬剤がかからなかった このため, 松くい虫被害木の被害程度に手前と奥で差が生じてしまった事例である このような場合は, 通常通り上向きに散布するだけでなく, 下向きや水平方向などにも散布することにより, 手前の樹高の低いマツにも薬剤が十分かかるように配慮する必要が Ⅲ 結果と考察 1 現行防除システムにおける問題点の事例 (1) 地上散布 ( スパウター ) の失敗事例 1 マツの手前に障害物があり薬剤がマツにかからなかった事例 下越地域のアカマツ林で, スパウターによる地上散布実施地においてマツ樹冠部とスパウターの間に広葉樹の枝葉が生い茂り, 薬剤の散布を妨げている事例がみられ ある スパウター散布は, 運転手と散布者が 2 人 1 組で行う 運転手は, 一定速度で車を動かし, 散布者は荷台から薬剤を散布する ほぼ一様のマツ林が続く場合は, この流れで問題ないが, 今回の事例のような場合は, あらかじめ下見や打合せをしておき, 運転者と散布者は運転速度と散布スピードを調節する必要があるだろう 失敗事例 1 についても言えることであるが, 薬剤散布は運転手と散布者の密接な連携が必要である た
松くい虫被害の効率的な防除方法実証試験 ( 宮嶋 布川 ) 17 よって, 駆除作業をする際は, 幹の太い部分の駆除より 通常通り上向きに散布すると手前のマツに薬剤がかからない もむしろ幹の先端や枝の部分の駆除が重要なことに注意して作業を行う必要がある 特に, 被害木の枯れ枝は伐倒時に折れて飛び散りやすいことから, 見落としに注意する必要がある 下向きもしくは水平方向に散布し手前のマツにも薬剤がかかるように配慮 図 2 スパウター散布の注意点 2 (3) 伐倒駆除 ( くん蒸処理 ) の失敗事例 1 下越地区の伐倒駆除の現場で, 枝により被覆シートが 破れているものが多数見られ ( 写真 1), くん蒸剤 (NCS) の臭いが周辺に充満する事例が見られた シートが破けた場合, くん蒸剤が漏れて効果が弱まり, カミキリを完全に駆除できず, 破れた穴からカミキリが脱出する恐れがある また, 材とシートが密着していると, シートを食い破り脱出することも報告されている ( 在原 1981) ことから, 駆除漏れになる可能性がある シートが破けた原因としては, 集積した丸太の上に枝をのせていたことが考えられる 新潟県松くい虫防除事業 ( 伐倒駆除 ) 標準仕様書 には, 枝条を集積した上に玉切りした材を集積すること 及び シートに穴が空いた場合は, 粘着テープ等で穴をふさぎ, ガス漏れのないように注意すること と作業方法が定められており, これを遵守すべきである (4) 伐倒駆除 ( くん蒸処理 ) の失敗事例 2 5 月中旬に海岸クロマツ林の伐倒駆除の現場を巡回した際, 穿入孔のある枝や幹の細い部分が集積及びくん蒸されずに散乱していた そのうち, 直径 5cm, 長さ 70cm 程度の幹の先端を森林研究所に持ち帰り, 構内の網室に放置したところ,7 月中旬までに 6 匹のカミキリの脱出 ( 写真 2) が確認された 駆除の際, 材積の多い樹幹下部の処理を意識しがちであるが, カミキリは, 樹幹下部の厚い樹皮の部分には, 産卵しにくい傾向が見られ ( 家入 1973, 在原 1984b), 星崎ら (2005) の調査では, 樹幹下部より樹幹上部の幹の細 い部分や枝の方が,m 3 あたりの寄生数は,60 ~ 150 倍多 いとしている また, カミキリの幼虫は, 周囲長 7cm 以上であれば生息する可能性もあり ( 家入 1973), 直径約 2cm 以上の枝や幹の先端などの細い部分の駆除も重要であると言われている ( 小林 2004) 写真 1 被覆シートに穴が空いた例写真 2 林内に残された幹の先端部からのカミキリの脱出 ( 丸が脱出孔 ) 2 効果的な防除方法の調査 (1) 外観的枯死時期別のカミキリ寄生調査各月別の枯死木におけるカミキリの寄生状況を表 3 に, 各時期別の寄生状況を図 3 に示す 寄生率で比較すると, 夏枯れが 79.1%, 秋枯れが 28.1%, 年越し枯れが 13.6% と外観的枯死時期が遅くなるにつれ, 寄生率が低くなり, 全体の寄生割合は 51.2% であった これは, 全量駆除した場合, 夏枯れの場合でも約 2 割, 秋枯れの場合では約 7 割, 年越し枯れにいたっては, 約 9 割がカミキリの寄生していない駆除不要木であり, 全体の約 5 割は必要の無い作業であることを示している 寄生量に関しても図 3 が示すとおり, 外観的枯死時期が遅くなるにつれ, 寄生
18 新潟県森林研究所研究報告 No.53 (2012) 量が少なくなる傾向が見られた 年越し枯れの寄生率が低いことは, 以前から示されており ( 滝沢ら 1983), 今回の調査も同様の傾向が見られた 月毎の寄生率及び寄生量を比較すると,8 月及び 9 月の寄生率及び寄生量が著しく高い傾向が見られた 一方, 4 月 ~ 6 月の春先に枯れるマツに関しては, 寄生率が著しく低い傾向が見られた このことから, 最優先に駆除すべき木は,7 月 ~ 10 月に枯れる夏枯れであり, 優先順位は夏枯れ> 秋枯れ> 年越し枯れという順である事が示 100% なし 80% 寄生少 寄生中 60% 寄生多 40% 20% 0% 夏枯れ (7 月 ~10 月 ) 秋枯れ (11 月 12 月 ) 年越し枯れ (1 月 ~6 月 ) 外観的枯死時期 された 図 3 外観的枯死時期別のカミキリ寄生状況 割合 表 3 外観的枯死月別のカミキリの寄生状況 時期区分 外観的区分 ( 本 ) 枯死月なし寄生少寄生中寄生多 月別寄生率 (%) 時期別寄生率 (%) 7 月 5 6 4 0 66.7 夏枯れ 8 月 2 5 15 12 94.1 9 月 3 7 11 9 90.0 79.1 10 月 14 6 8 8 61.1 秋枯れ 11 月 14 6 2 0 36.4 12 月 9 1 0 0 10.0 28.1 1 月 0 0 0 0-2 月 4 2 0 0 33.3 年越し枯れ 3 月 12 3 1 0 25.0 4 月 9 0 0 0 0.0 13.6 5 月 18 0 0 0 0.0 6 月 14 3 0 0 17.6 計 104 39 41 29 51.2 51.2 (2) 被害木の本数及び外観変化の追跡調査 2009 年及び 2010 年の各時期別の枯死木本数を表 4 に示す なお,2009 年,2010 年という区分はそれぞれの年にセンチュウに感染したものを指している このため,2009 年に区分されたものは,2009 年 7 月 ~ 2010 年 6 月までに枯死したものを,2010 年に区分されたものは,2010 年 7 月 ~ 2011 年 6 月までに枯死したものを指している 新潟県下越地方では, 気象条件などにより年度による差はあるが, 平均すると夏枯れの割合が 50% 程度, 秋枯れが 15% 程度, 年越し枯れが 35% 程度であった 新潟県における年内枯れと年越し枯れの割合は 6:4 といわれており ( 山崎 布川 1984), 過去の結果と概ね一致した 被害木の外観的枯死月別の 10 月下旬時点での外観を, 表 5 及び図 4 に示す 寄生率及び寄生量が最も高い夏枯れの場合,10 月下旬の時点で大部分の被害木の針葉が黄色 ~ 褐色に変化し外観的に異常が発見しやすい状況であった 落葉の段階に進んだ夏枯れのマツも調査木 104 本中 5 本だけみられた しかし, これらは 7 月に外観的枯死となったマツであり, 夏枯れの中では比較的危険性が低いものであった 一方, 前年の秋枯れや年越し枯れは,10 月下旬でほぼす べてが落葉状態となっていた よって最も危険な夏枯れ を 1 回で選木するには,10 月下旬 ~ 11 月にかけて調査 するのがもっとも効率が良いことが示された 図 4 表 4 外観的枯死時期別のマツの枯死本数 時期 2009 年 2010 年平均枯死本数比率 (%) 枯死本数比率 (%) 枯死本数比率 (%) 夏枯れ (7 月 ~10 月 ) 120 48.0 131 52.2 251 50.6 秋枯れ (11 月 12 月 ) 32 12.8 40 16.3 72 14.5 年越し枯れ (1 月 ~6 98 39.2 75 30.5 173 34.9 計 250 246 496 本数 60 50 40 30 20 10 0 前年秋枯れ (11 月 12 月 ) 年越し枯れ (1 月 ~6 月 ) 夏枯れ (7 月 ~10 月 ) 外観的枯死時期 黄色赤褐色落葉 外観的枯死時期別の 10 月下旬時点での針葉の外観
松くい虫被害の効率的な防除方法実証試験 ( 宮嶋 布川 ) 19 表 5 時期区分前年秋枯れ前年年越し枯れ当年夏枯れ計 外観的枯死月別の 10 月下旬時点での針葉の外観 外観的区分 ( 本 ) 枯死月黄色赤褐色落葉 計 11 月 0 0 0 13 13 12 月 0 0 0 7 7 1 月 0 0 0 0 0 2 月 0 0 0 0 0 3 月 0 0 0 4 4 4 月 0 0 0 3 3 5 月 0 0 0 11 11 6 月 0 0 1 9 10 7 月 0 3 14 5 22 8 月 0 10 6 0 16 9 月 0 19 12 0 31 10 月 8 18 9 0 35 8 50 42 52 152 (3) 防除方法の効率的実施への提案 (1), (2) の結果から, 効率的に防除するためには, 一 番の感染源である夏枯れを徹底的に駆除することが最重 要である そのうえで, 秋枯れ及び年越し枯れを駆除す るという流れがよいだろう 枯死木全体の 50% 程度を占める夏枯れはもっとも危険 である 約 8 割の枯死木でカミキリが寄生していること から, 夏枯れは, 寄生 未寄生の判断をせずに駆除してし まう方が効率が良い またこれらは,10 月下旬の時点で, 黄色 ~ 褐色の状態で発見しやすいため, 適切な時期 (10 月下旬 ~ 11 月 ) に選木をすれば特別な知識がなくとも 危険な木を選ぶことが可能である よって 11 月中に駆 除事業の対象地を巡回し, 選木を行い判別できるように テープ等で印をつけたのち駆除する 予算等の関係です べて駆除できない場合は, 春に駆除する ( 図 5) 夏枯れの駆除が終了後は, 予算の余裕がある限り秋枯 れや年越し枯れの被害木を駆除していくという流れが良 いだろう この流れであれば, 被害木をすべて駆除仕切 れない場合でも, 比較的カミキリの寄生量が少ない秋枯 れや年越し枯れが残ることになり, 被害の拡大を抑制す ることができる 作業内容 月 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 選木伐倒駆除 ( 秋 ) 伐倒駆除 ( 春 ) 図 5 夏枯れ被害木の駆除作業時期と内容 夏枯れを 10 月下旬 ~ 11 月中に選木し テープ等で印を付け 判別可能な状態にする その後 秋にできる限り駆除する も し 駆除しきれなかった場合は春に駆除する 夏枯れを重点的に処理する事例としては, 秋田県で行 なわれている駆除方法が挙げられる 新潟県より更に寒 冷地である秋田県では, 要駆除木は,7 月 ~ 10 月に変色 が見られ始めた被害木のみとされており ( 中村ら 2009), 夏枯れ被害木を優先的に駆除する秋田方式 ( 秋田の森林づくり検討委員会 2007) という駆除方法をとっている 次に秋枯れと年越し枯れの扱いである これらは, 寄生率および寄生量は夏枯れに比べ著しく低いが, 寄生の可能性はゼロではない また, 夏枯れのように針葉の色だけで寄生状況を判断することは難しい よって要駆除木と駆除不要木との判断は, カミキリの食痕等から行う必要がある カミキリの寄生を確認する方法としては, 樹皮下の幼虫食痕, 排出された木屑, 穿入孔, 産卵痕, アカゲラの突つき痕などがある ( 写真 3) これらの痕跡がありかつ脱出孔が無いものが要駆除木となる この判断は, 多少専門的な知識が必要であるが, それほど難しいものではない 春駆除を行う現場作業者に, 講習会等を通じて判断基準を周知させる事により, 寄生のないものは伐倒 玉切り 集積まで行い, くん蒸処理は行わないといった方法により駆除費を押さえることは可能である しかし, くん蒸や破砕等の駆除をしない場合, 現在の補助制度では, 補助対象にならない 事業費の総体は低く抑えられたとしても, 補助対象外となるため, 結果的に市町村の負担は大きくなってしまう このため, 従来どおり, 寄生のない被害木も含め駆除した方が市町村の財政負担は少なくなってしまう したがって, 寄生が無いことを判断し, 駆除しなかった場合も, 伐倒 玉切り 集積の分の経費を病害虫防除事業や衛生伐で駆除したときと同程度に助成される工夫が必要と考えられる また, 県内では下越地方で海岸クロマツ林が壊滅状態になるほど被害が拡大した地域もある こうした地域では, 被害木全量の伐倒駆除は, 予算的にも労力的にも難しい この場合, 薬剤散布 + 夏枯れ木のみの駆除 とい
20 新潟県森林研究所研究報告 No.53 (2012) 1 2 3 4 5 写真 3 カミキリ寄生木に見られる痕跡 1, 樹皮下の食痕 木屑とカミキリの幼虫 2, 産卵痕 3, 穿入孔 4, 脱出孔 ( 矢印 ) と穿入孔 ( 脱出孔は穿入孔の少し上部に見られる ) 5, アカゲラの突つき痕 った全量駆除にこだわらない柔軟な対策も必要であろう 現在, 森林保護分野に限られたことではないが, 予算規模が縮小されている その限られた少ない予算で, どのような対策をとるのが最も有効なのかを考え, 個々の箇所の被害状況に応じて, 戦略的に松くい虫対策を進めていく必要がある Ⅳ おわりに本調査では, 被害が終息しない原因のいくつかの事例を紹介した 特に伐倒駆除においては, 作業が標準仕様書通りにおこなわれていない事例が散見された また, カミキリの寄生している割合 寄生量がもっとも多い木は, 夏枯れでありそれらは,10 月下旬の時点で針葉が変色しているものということが示された このため, 今後は伐倒駆除において夏枯れと秋枯れ 年越し枯れを分けて, 効率の良い防除を行うための優先度をつけて対応していく必要があるだろう 引用文献秋田の森林づくり検討委員会 (2007) 秋田の森林づくり検討委員会報告書 ~ 次世代に引き継ごう秋田の森林豊かな自然と共に生きていくために~. 在原登志男 (1985) 福島県におけるマツの枯損動態に関する研究 (Ⅷ) マツ枯損木内におけるマツノザイセンチュウの消長およびマツノマダラカミキリ 2 年 1 世代成虫の線虫保持数. 日林東北支誌 37: 256-257 在原登志男 (1988) 寒冷地におけるマツ材線虫病の特徴.Ⅱ 林分調査による年越し枯れの実態. 森林防疫 37 (5) : 84-87 在原登志男 三瓶俊明 佐藤栄二郎 永山肇一 遠藤恒久 (1981) 被覆法によるマツノマダラカミキリの駆除. 森林防疫 30 (8) : 130-132 在原登志男 齊藤勝男 (1984a) 福島県におけるマツの枯損動態に関する研究 (Ⅰ) マツの枯損時期とマツノザイセンチュウ検出. 日林論 95: 463-464 在原登志男 齊藤勝男 (1984b) 福島県におけるマツの枯損動態に関する研究 (Ⅱ) マツの枯損時期とマツノザイセンチュウ検出. 日林論 95: 465-466 星崎和彦 佐野さやか 桜庭秀喜 吉田麻美 及川夕
松くい虫被害の効率的な防除方法実証試験 ( 宮嶋 布川 ) 21 子 蒔田明史 小林一三 (2005) 被害木の炭化によるマツ材線虫病の防除 : 媒介昆虫抑制のための戦略と秋田の海岸マツ林における取組. 東北森林科学会誌 10 (2) : 82-89 家入忠 (1973) マツノマダラカミキリの産卵部位. 日林九支研論 26: 217-218 岸洋一 (1980) 茨城県におけるマツノザイセンチュウによるマツ枯損と防除に関する研究. 茨城県林試研報 11: 1-83 小林一三 (2004) 松くい虫被害の研究および対策の今昔物語 (1) 我が国の森林防疫研究の近代史をつらぬく特異な流れ. 林業と薬剤 170: 15-21 小林一三 (2004) 東北地方寒冷地におけるマツ材線虫病対策. グリーンエイジ 364: 18-21 中村克典 太田和誠 星崎和彦 蒔田明史 長岐昭彦 小澤洋一 (2009) マツ材線虫病被害木へのマツノマダラカミキリの寄生実態 変色開始時期の異なる被産卵木からの成虫脱出数および線虫保持状況. 日林学術講 120: 272 新潟県 (2011) 平成 22 年度新潟県の森林 林業 ( 資料編 ). 26 新潟県農林水産部 (1992) 普及に移す技術. 38-39 布川耕市 山崎秀一 (1988) 新潟県におけるマツノマダ ラカミキリの生態. 新潟県林試研報 30: 27-41 滝沢幸雄 五十嵐正俊 山家敏雄 庄司次男 佐保春芳 (1979) 東北地方におけるマツノマダラカミキリの 生態 盛岡における飼育結果を中心にして. 森林 防疫 28 (5) : 84-89 滝沢幸雄 山家敏雄 早坂義雄 尾花健喜智 (1983) ク ロマツに対するマツノザイセンチュウの時期別接種 試験 枯損木内の穿孔虫相. 日林論 94: 477-478 山崎秀一 布川耕市 (1984) 新潟県におけるマツの枯損 動態調査. 新潟県林試研報 26: 67-78 山崎秀一 布川耕市 (1986) 新潟県の松くい虫被害 針 葉の変色とマツノマダラカミキリ幼虫寄生数. 日 林関東支論 37: 161-162 山崎秀一 佐藤和彦 (1978) 新潟県に発生したマツノザ イセンチュウ被害実態調査. 森林防疫 27 (5) : 84-86 陳野好之 (1988) 寒冷地におけるマツ材線虫病の特徴 年越し枯れを中心として. 林業と薬剤 106: 13-20