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1. 今月のトピック 和製 Google は生まれるか 日本の産業界には新興企業が少ない また新興企業を育てる環境がないと言われて久しい 新興企業の多寡を計る指標としては開業率があるが 日本の開業率は 1990 年以降 5% 前後で推移しており 開業率が最も高かったバブル期では 7% 強という水準で

米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

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月例経済報告

平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

1 概 況

月例経済報告

1 ( ) 4.1% 4.4% 4.% 1 ( ) 1.2%( ) 1.6% 3.8% 1( ) 5.6% 4, % 8 6.5% % 2 4.3% 47.8% 18.8% % 13 2, % 2.2% 13.% 218 ( ).

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

富山県金融経済クォータリー(2018年秋)

資料1

富山県金融経済クォータリー(2018年夏)

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【No

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管内 ( 東北 6 県 ) の経済動向 平成 27 年 1 月 15 日 < 管内の経済動向 > ~26 年 11 月の経済指標を中心として ~ 全体の動向 : 緩やかな持ち直し傾向にあるものの 一部に弱い動きがみられる 鉱工業生産 : 生産は一進一退で推移している 個人消費 : 持ち直し傾向にある

日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

平成10年7月8日

けた この間 生産指数は 上昇傾向で推移した (2) リーマン ショックによる大きな落ち込みとその後の回復局面平成 20 年年初から年央にかけては 米国を中心とする金融不安 景気の減速 原油 原材料価格の高騰などから 景気改善の動きに足踏みが見られたが 生産指数は 高水準で推移していた しかし 平成

2018年夏のボーナス見通し

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

October vol

平成 31 年 1 月 17 日東北経済産業局 管内 ( 東北 6 県 ) の経済動向 ( 平成 30 年 11 月分 ) ~ 一部に弱い動きがみられるものの 緩やかに持ち直している ~ 鉱工業生産 : 個人消費 : 住宅着工 : 公共投資 : 設備投資 : 持ち直しの動きとなっている足踏み状態とな

平成 25 年 3 月 19 日 大阪商工会議所公益社団法人関西経済連合会 第 49 回経営 経済動向調査 結果について 大阪商工会議所と関西経済連合会は 会員企業の景気判断や企業経営の実態について把握するため 四半期ごとに標記調査を共同で実施している 今回は 2 月下旬から 3 月上旬に 1,7

[ 調査の実施要領 ] 調査時点 製 造 業 鉱 業 建 設 業 運送業 ( 除水運 ) 水 運 業 倉 庫 業 情 報 通 信 業 ガ ス 供 給 業 不 動 産 業 宿泊 飲食サービス業 卸 売 業 小 売 業 サ ー ビ ス 業 2015 年 3 月中旬 調査対象当公庫 ( 中小企業事業 )

目次 調査結果の概要 1 小企業編 中小企業編 概況 3 概況 15 調査の実施要領 4 調査の実施要領 16 業況判断 5 業況判断 17 売上 1 売上 2 採算 11 利益 21 資金繰り 借入 12 価格 金融関連 22 経営上の問題点 13 雇用 設備 23 設備投資 価格動向 14 経営

2014~2016年度 東海経済見通し

1. 世界における日 経済 人口 (216 年 ) GDP(216 年 ) 貿易 ( 輸出 + 輸入 )(216 年 ) +=8.6% +=28.4% +=36.8% 1.7% 6.9% 6.6% 4.% 68.6% 中国 18.5% 米国 4.3% 32.1% 中国 14.9% 米国 24.7%

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タイトル

PowerPoint プレゼンテーション

金融政策決定会合における主な意見

○ユーロ

( 平成 31 年 1 月判断 ) 平成 31 年 1 月 財務省北陸財務局 富山財務事務所 富山市丸の内 1 丁目 5 番 13 号 ( 富山丸の内合同庁舎 5 階 ) TEL(076) ( 財務課直通 )

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

2017年夏のボーナス見通し

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別紙2

平成 22 年基準 秋田県鉱工業生産指数月報 平成 30 年 12 月分 鉱工業生産指数の推移 季節調整済指数全国 東北 : 平成 27 年 =100 秋田 : 平成 22 年 =

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中小企業の動向

現代資本主義論

関西経済レポート (2019 年 9 月 ) 令和元年 (2019 年 )9 月 30 日 ~ 輸出減少が継続 インバウンド消費はプラスの伸びを維持 ~ 足元の経済情勢と当面の見通し 関西経済は輸出 生産が斑模様であるが 内需が下支えとなり底堅く推移している 企業部門では 輸出は中国経済の減速等によ

第2章_プラントコストインデックス

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歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

管内 ( 東北 6 県 ) の経済動向 平成 28 年 8 月 12 日 < 管内の経済動向 > ~28 年 6 月の経済指標を中心として ~ 全体の動向 : 一部に弱い動きがみられるものの 緩やかに持ち直している 鉱工業生産 : 生産は一進一退となっている 個住 人宅 消着 費 : 個人消費は足踏

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第1章

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経済・物価情勢の展望(2017年7月)

【東南アジア経済】ASEANの貿易統計(1月号)~輸出の好調続くも新型スマホ関連がピークアウトへ

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SERIまんすりー2月号 今月のみどころ

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(216 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43

関西の景気動向 2013 年 11 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直しのペースがひところと比べて鈍化している 輸出 ( 円ベース )


第 3 節食料消費の動向と食育の推進 表 食料消費支出の対前年実質増減率の推移 平成 17 (2005) 年 18 (2006) 19 (2007) 20 (2008) 21 (2009) 22 (2010) 23 (2011) 24 (2012) 食料

1. 総論 総括判断 都内経済は 回復している 項目前回 ( 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断回復している 回復している ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 1 月判断以降 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判断している ( 判断の要点 ) 個人消費

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わが国の経済・物価情勢と金融政策

関西の景気動向 2013 年 5 月株式会社日本総合研究所調査部関西経済研究センター 1. 景気の現状関西の景気は 持ち直している 輸出は 円安が進み 米国経済も回復基調をたどるなど 環境が

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

チーフエコノミスト : 高田創 [ 経済予測チーム ] 山本康雄 ( 全体総括 ) 米国経済小野亮 山崎亮

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経済見通し

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第45回中期経済予測 要旨

我が国中小企業の課題と対応策

日本国債

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個人消費の回復を後押しする政策以外の要因~所得の減少に歯止め、節約志向も一段落

1. 総論 総括判断 県内経済は 平成 28 年 (216 年 ) 熊本地震の影響が一部に残るものの 緩やかに回復している 項目前回 (29 年 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 総括判断 平成 28 年 (216 年 ) 熊本地震の影響が一部に残るものの 緩やかに回復している 平成

1.ASEAN 概要 (1) 現在の ASEAN(217 年 ) 加盟国 (1カ国: ブルネイ カンボジア インドネシア ラオス マレーシア ミャンマー フィリピン シンガポール タイ ベトナム ) 面積 449 万 km2 日本 (37.8 万 km2 ) の11.9 倍 世界 (1 億 3,43


TOPICs 日本の経済指標 四半期 月次 13 年 Q2 13 年 Q3 13 年 Q 年 10 月 2013 年 11 月 2013 年 12 月 2014 年 1 月 実質 GDP 前年比年率 3.9% 1.1% 1.0% GDP/ 景況感 景気動向指数 2010 年 =100 1

ニュースリリース 中小企業の雇用 賃金に関する調査結果 ( 全国中小企業動向調査 2013 年 月期特別調査 ) 年 4 月 8 日株式会社日本政策金融公庫総合研究所 3 割の企業で正社員は増加 3 社に 1 社で給与水準は上昇 従業員数 2013 年 12 月において

1. 総論 総括判断 県内経済は 回復しつつある 項目前回 (29 年 1 月判断 ) 今回 (3 年 1 月判断 ) 前回比較 総括判断緩やかに回復しつつある 回復しつつある ( 注 )3 年 1 月判断は 前回 29 年 1 月判断以降 3 年 1 月に入ってからの足下の状況までを含めた期間で判

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

平成 23 年 3 月期 決算説明資料 平成 23 年 6 月 27 日 Copyright(C)2011SHOWA SYSTEM ENGINEERING Corporation, All Rights Reserved

証券市場から見た消費税引上げを巡る論点

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当面の金融政策運営について(「量的・質的金融緩和」を補完するための諸措置の導入、12時50分公表)

< 日本経済の基調判断 > < 現状 > 景気は 緩やかに回復している < 先行き > 先行きについては 雇用 所得環境の改善が続くなかで 各種政策の効果もあって 緩やかな回復が続くことが期待される ただし 海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある 1

ニュースリリース 食品産業動向調査 : 景況 平成 3 1 年 3 月 2 6 日 株式会社日本政策金融公庫 食品産業景況 DI 4 半期連続でマイナス値 経常利益の悪化続く ~ 31 年上半期見通しはマイナス幅縮小 持ち直しの動き ~ < 食品産業動向調査 ( 平成 31 年 1 月調査 )> 日

< 判断の推移 > 前月今月期間 総括判断 一部に弱い動きがみられるものの 緩やかに改善 緩やかに改善 ( ) 1 か月 ( 上方修正は 7 か月ぶり ) 生産緩やかな上昇傾向 ( ) 2 か月 個人消費足踏み状態 緩やかな持ち直しの動き ( ) 1 か月 ( 上方修正は 18 か月ぶり ) 設備投

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第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

2019年度はマクロ経済スライド実施見込み

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( 公社 ) 近畿圏不動産流通機構市況レポート市況トレンド /1 年 7~9 月期の近畿圏市場 1. 中古マンション市場の動き 成約価格は前年比で 3 期連続上昇 1 年 7~9 月期の近畿レインズへの成約報告件数は,9 件と 前年同期比で 1.% 増加した (P1 図表 1) 新規登録件数は 15

目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

経済指標カレンダー 8 月 5, 月 10,2018 AUD 1.50% NZD 1.75% EUR 0.00% CAD 1.50% GBP 0.75% USD 2.00% CHF -0.75% JPY -0.10

Transcription:

丸紅経済研究所 Japan s Economic Outlook 2013 年 9 月 今月のトピック 消費増税は待ったなし 2013/9/12 景気動向のポイント 景況感 生産 企業活動 消費 所得 物価 4-6 月期の実質 GDP は大幅上方修正生産は改善 輸出は悪化消費は悪化 雇用環境の改善は継続エネルギー 公共サービス関連が上昇 足元の景気は 持ち直しの動きが続いているが 先月に引き続きやや弱めの指標が目立っている 持ち直しを先導してきた個人消費は足元で低下 企業部門では生産が改善 設備投資は本格的な回復に至っていない 輸出は アジア向けが低迷していることなどから足踏みしている 堅調であった米国向けにも一服感があるが EU 向けはやや改善 先行きについては 米国金融政策の出口戦略や減速傾向の新興国経済などの海外要因によって日本経済が大きく影響を受ける可能性がある点には引き続き注意が必要 主要経済指標 四半期 月 次 12Q4 13Q2 13/6 13/8 GDP 景況感 実質 GDP( 前期比 ) 1.1% 4.1% 3.8% 景気動向指数 (2010=) 101.3 103.5 105.5 106.0 105.5 106.4 景気ウォッチャー調査 (50 以上で良化 ) 41.6 53.3 55.1 55.7 53.0 52.3 51.2 鉱工業生産指数 ( 前期比 / 前月比 ) 1.9% 0.6% 1.4% 1.9% 3.1% 3.2% 生産 企業活動 実質輸出 ( 前期比 / 前月比 ) 4.2% 1.5% 3.6% 0.2% 2.0% 4.9% 資本財総供給 ( 前期比 / 前月比 ) 5.0% 8.4% 2.7% 0.0% 12.1% 機械受注 ( 前期比 / 前月比 ) 0.8% 0.0% 10.5% 2.7% 0.0% 消費総合指数 ( 前期比 / 前月比 ) 0.5% 1.0% 0.4% 0.6% 0.8% 0.1% 消費 所得 現金給与総額 ( 前期比 / 前年比 ) 1.4% 0.6% 0.2% 0.1% 0.6% 0.4% 完全失業率 4.2% 4.2% 4.0% 4.1% 3.9% 3.8% 物 価 有効求人倍率 0.82 倍 0.85 倍 0. 倍 0. 倍 0.92 倍 0.94 倍 消費者物価指数 ( 前期比 / 前年比 ) 0.2% 0.6% 0.3% 0.3% 0.2% 0.7% 企業物価指数 ( 前期比 / 前年比 ) 0.9% 0.3% 0.6% 0.5% 1.2% 2.3% 2.4% 1

1. 今月のトピック 消費増税は待ったなし 膨らむ借金 日本の国 地方の長期債務残高 ( 借金 ) は 2013 年度末で約 977 兆円となり 対 GDP 比では 200% に達する見込みである 借金は年 30~40 兆円ペースで増加しており プライマリーバランスは 20 年以上マイナスの状態が続いている 図表 1 国 地方の長期債務残高 1993 年度末 1998 年度末 2003 年度末 2008 年度末 2009 年度末 2010 年度末 2011 年度末 2012 年度末 2013 年度末 国 地方合計 333 兆円 553 兆円 692 兆円 770 兆円 820 兆円 862 兆円 895 兆円 940 兆円 977 兆円 対 GDP 比 69% 108% 138% 157% 173% 179% 189% 198% 200% ( 資料 ) 財務省 政府の保有資産で借金返済することは非現実的 年々増え続ける借金に対して返済の目途が立たず 国際的な懸念も高まりつつあるが 日本には約 630 兆円の資産があるため いざとなれば資産を売却することで借金返済は容易であるとの主張がある しかしながら 日本の資産の大半は年金積立金の運用寄託金や道路 堤防等の公共用財産等であり 性質上すぐに売却することができないため 借金返済のために資産売却をするという選択肢は現実的でないといえる 借金はこのまま増え続けていいのか? 借金は 2014 年度末には 1,000 兆円を超えるとみられる さらに 少子高齢化の進展により 今後 社会保障関係費 ( 歳出 ) が増大していくことは自明であり 借金の増大ペースに拍車をかける可能性が高い 増大する借金に対策を打たず 財政再建の先送りを続ければ 日本国債は国際的な信用力を失い 金利上昇及び国債価格の下落を招きかねない その場合 経済の混乱は必至である このような事態を避けるためにも 借金返済 財政再建は日本にとって急務である 想定される 3 つの返済手段 成長 ( 税収増 ) vs 歳出削減 vs 消費増税 想定される借金の返済手段には 成長 ( 税収増 ) 歳出削減 消費増税 の 3 つがある 途方もない額の借金を削減するには これらすべてを速やかに実現する必要があるが 目先すぐに事を運べるわけではない まず 成長 ( 税収増 ) では 少ない痛みで借金を返していける可能性があるが 確かな先行きを見通すことは難しく これのみに頼ることは現実的でないといえる 次に 歳出削減 では 社会保障関係費 ( 歳出 ) の抜本的な削減を行わなければならない 制度疲労が著しい日本の社会保障制度の改革は不可避であり 財政赤字の削減効果は大きいと 2

考えられるが 少子高齢化が進む中 幅広く国民 ( 高齢者 ) から支持を得ることは困難であり 政治的なハードルは高い したがって 何はともあれ 消費増税 を実施せざるを得ない 日本の消費税率は他の先進国 新興国と比べると低く 引き上げ余地が大きい 消費税は高齢者まで幅広く課税できるため 社会保障制度の深刻な問題である世代間格差の解消にも一定の役割を期待できる 30 25 20 15 10 5 0 (%) 25 25 25 スウェーデン デンマーク ( 資料 ) 財務省 ノルウェーイタリア 21 21 21 20 20 19.6 19 オランダ ベルギーイギリ ス 図表 2 消費税率の国際比較 オーストリア フランス ドイツ 17 中国 15 ニュージーランド 12 フィリピン 10 10 インドネシア 韓国 7 7 シンガポール タイ 5 5 5 カナダ 台湾 日本 我が子のために借金返済を 消費増税が短期的な景気の下押し圧力になることには懸念もある しかし 国の借金は将来世代の収入からの前借りにすぎないわけであるから 将来世代へのツケを減らすためにも 現在の世代が痛みを覚えるのは至極当然といえる 将来世代を苦しめる財政の悪化をボストン大学のコトリコフ教授は 財政的児童虐待 と表現した 我が子のためにはどんな犠牲も厭わない親は多いと思われるが 財政赤字の放置は 国家 財政レベルで将来世代を追い詰めていることを意味する こうした現状への危機感は 消費増税の痛み以上に広く認識されるべきではなかろうか 増税によって深刻な景気後退を招くような事態は避けなければならないが 景気状況へ配慮しつつも 財政再建のための消費増税は待ったなしといえるだろう 3

2. 主要指標の動き (1)GDP 景況感 1 実質 GDP 9 月 9 日に発表された 4-6 月期の実質 GDP 成長率 2 次速報値は前期比年率 +3.8% となり 1 次速報値同 +2.6% から大きく上方修正された 1-3 月期の実質 GDP 成長率も同 +4.1%(1 次速報値同 +3.8%) に上方修正された 大きく上方修正された要因としては 設備投資が同 +5.1% と 1 次速報値同 0.4% から大幅に引き上げられたためである また 公共投資についても同 +12.7% と 1 次速報値同 +7.3% から大幅に引き上げられた 14 ( 季調済 前期比年率寄与度 %) 12 10 8 6 4 2 0-2 -4-6 -8-10 -12-14 その他 公的需要 純輸出 在庫増減 住宅投資 設備投資 -16 個人消費 実質 GDP -18-20 05Q2 05Q4 06Q2 06Q4 07Q2 07Q4 08Q2 08Q4 09Q2 09Q4 10Q2 10Q4 11Q2 11Q4 12Q2 12Q4 13Q2 ソース 12 年 10-12 月 13 年 1-3 月 13 年 4-6 月 13 年 7-9 月 13 年 10-12 月 14 年 1-3 月 2012 年 2013 年 2014 年 市場コンセンサス (2013/9) +3.3 +3.8 +4.5 +1.7 +1.7 +1.1 +4.1 +3.8 +2.0 IMF(20) +2.0 +1.2 四半期は前期比年率 暦年は前年比 共通部分は実績 市場コンセンサスは ESP フォーキャスト調査の平均値 4

2 景気動向指数 (CI) 7 月の景気動向指数は 一致指数が 106.4(6 月 105.5) と 2 か月ぶりに上昇した 内訳をみると 生産指数 鉱工業生産財出荷指数 投資財出荷指数などの項目でプラス寄与となった 先行指数は 107.8(6 月 107.2) と 2 か月ぶりに上昇した 一方 鉱工業生産財在庫率指数 新設住宅着工床面積などはマイナス寄与となった 116 112 108 104 96 92 88 84 76 (2010=) 先行指数 一致指数 (2010=) 116 112 108 104 96 92 88 84 76 3 景気ウォッチャー調査 (DI) 8 月の景気ウォッチャー調査の現状判断 DI は 51.2(7 月 52.3) と 5 か月連続で低下した 指数を構成する家計動向関連 企業動向関連は前月から低下し 雇用動向関連については前月から上昇した 家計動向関連 DI は 高額品や新型車の販売が好調だったものの 猛暑や豪雨でコンビニエンスストアやサービス関連で客足が減少したことから低下した 企業動向関連 DI は 夏休みの影響もあって一部の企業で受注や生産の増加に一服感がみられたことから低下した 雇用関連 DI は 建設業等で求人が増加したことから上昇した (50 以上は良化 50 以下は悪化 ) (50 以上は良化 50 以下は悪化 ) 50 50 40 40 30 30 20 20 10 10 12/8 12/10 12/12 13/2 13/4 13/6 13/8 5

(2) 生産 企業活動 1 鉱工業生産指数 7 月の鉱工業生産指数は前月比 +3.2%(6 月同 3.1%) と 2 か月ぶりに上昇した 全体を押し上げた業種は はん用 生産用 業務用機械工業 ( 同 +5.5%) 輸送機械工業( 同 +1.9%) 電子部品 デバイス工業 ( 同 +7.8%) 等であった 先行きの生産予測調査では 8 月が前月比 +0.2% 9 月が同 +1.7% の上昇と予測されている 115 105 95 (2010=) 115 105 95 (2010=) 85 85 75 ( 資料 ) 経済産業省 75 ( 資料 ) 経済産業省 2 実質輸出 7 月の実質輸出は前月比 4.9%(6 月同 +2.0%) と 2 か月ぶりに減少した アジア向けが低迷したことや 米国向けに一服感がみられたことなどが背景 (2010=) (2010=) 70 70 ( 資料 ) 日本銀行 ( 資料 ) 日本銀行 6

3 資本財総供給 ( 設備投資の一致指標 ) 6 月の資本財総供給は 前月比 12.1%(5 月 0.0%) となり 資本財総供給 ( 除く輸送機械 ) は同 13.7%(5 月 +6.8%) となった 115 105 95 85 75 70 65 (2005=) ( 資料 ) 経済産業省 115 105 95 85 75 70 65 (2005=) 12/6 12/8 12/10 ( 資料 ) 経済産業省 12/12 13/2 13/4 13/6 4 機械受注 ( 設備投資の先行指標 ) 7 月の機械受注 ( 民需 < 除く船舶 電力 >) は 前月比 0.0%(6 月 2.7%) となり 2 か月連続で減少した 内訳を見ると 製造業は前月比 +4.8% と増加し 非製造業 ( 除く船舶 電力 ) は同 0.0% と横ばいとなった 内閣府は 機械受注の判断を先月上方修正した 緩やかに持ち直している で据え置いた 3.3 ( 兆円 ) 1.1 ( 兆円 ) 3.0 1.0 2.7 0.9 2.4 0.8 2.1 0.7 1.8 0.6 7

(3) 消費 所得 1 名目賃金 ( 現金給与総額 ) 7 月の現金給与総額は前年比 +0.4%(6 月同 +0.6%) と 2 か月連続でプラスとなった 内訳をみると 基本給などの所定内給与は同 0.4%(6 月同 0.6%) 残業代などの所定外給与が同 +1.9%(6 月同 +1.0%) 特別に支払われた給与( 賞与等 ) が同 +2.1%(6 月同 +2.1%) となった 2 0-2 2 1 0-1 -4-6 特別給与 所定内給与 所定外給与 現金給与総額 ( 資料 ) 厚生労働省 -2-3 -4 ( 資料 ) 厚生労働省 2 消費総合指数 7 月の消費総合指数は 前月比 0.1%(6 月 0.8%) と 2 か月連続で低下した 既往の株高による資産効果等により 消費者マインドが良化していることを背景に個人消費の改善傾向が続いていたが ごく足元ではマインド 消費ともに悪化する形となっている (2005=) (2005=) 108 108 106 106 104 104 102 102 98 98 96 96 94 94 92 92 8

3 完全失業率 7 月の完全失業率は 3.8%(6 月 3.9%) と 2 か月連続で 3% 台となった 失業者は前月差 3 万人 (251 万人 ) 就業者数は前月差 +1 万人 (6,303 万人 ) となった 女性の失業率が 3.3%(6 月 3.5%) と 2 か月連続で改善しており 女性の雇用環境に持ち直しの動きが見られる 5.6 5.4 5.2 5.0 4.8 4.6 4.4 4.2 4.0 3.8 3.6 (%) ( 資料 ) 総務省 5.6 5.4 5.2 5.0 4.8 4.6 4.4 4.2 4.0 3.8 3.6 (%) ( 資料 ) 総務省 ( 注 )2011 年 3 月 ~8 月分の失業率は東日本大震災の影響により調査実施が困難であった被災 3 県 ( 岩手県 宮城県 福島県 ) を推計した補完推計値 4 有効求人倍率 7 月の有効求人倍率は 0.94 倍 (6 月 0.92 倍 ) と 5 か月連続で上昇し 5 年ぶりの高水準となった 新規求人倍率は 7 月 1.46 倍 (6 月 1.49 倍 ) と 5 か月連続で上昇しており 引き続き改善が見込まれる 新規求人数については 前月比 +0.0%(6 月 2.2%) となった 1.1 ( 倍 ) 1.1 ( 倍 ) 1.0 1.0 0.9 0.9 0.8 0.8 0.7 0.7 0.6 0.6 0.5 0.5 0.4 ( 資料 ) 厚生労働省 0.4 ( 資料 ) 厚生労働省 9

(4) 物価 1 企業物価指数 8 月の企業物価指数は 前年比 +2.4%(7 月同 2.3%) と 5 か月連続でプラスとなった 内訳をみると 電気 都市ガス 水道 ( 同 +8.5%) 化学製品( 同 +4.9%) 食料品 飲料 たばこ 飼料 ( 同 +1.5%) 等が上昇した 一方 輸送用機器 ( 同 1.3%) 鉄鋼( 同 0.8%) などが低下した 8.0 8.0 6.0 6.0 4.0 4.0 2.0 0.0-2.0-4.0-6.0-8.0-10.0 2.0 0.0-2.0-4.0-6.0-8.0-10.0 12/8 12/10 12/12 13/2 13/4 13/6 13/8 ( 資料 ) 日本銀行 ( 資料 ) 日本銀行 2 消費者物価指数 7 月の消費者物価指数 (CPI) は前年比 +0.7%(6 月同 +0.2%) となり 2 か月連続でプラスとなった 先月と同様 円安を背景に電気代やガソリン代が上昇し 全体を押し上げた また 食料 エネルギーを除くコアコア CPI は同 0.1%(6 月同 0.2%) となり 依然としてマイナスではあるが マイナス幅は縮小傾向にある 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0 総合 除く食料 エネルギー ( 資料 ) 総務省 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0-2.5-3.0 ( 資料 ) 総務省 10

担当 WEB 経済調査チーム http://www.marubeni.co.jp/research/ T E L : 03-3282-7681 E-mail: TOKB4A1@marubeni.com ( 注記 ) 本稿に掲載されている情報および判断は 丸紅経済研究所により作成されたものです 丸紅経済研究所は 見解または情報の変更に際して それを読者に通知する義務を負わないものとします 本稿は公開情報に基づいて作成されています その情報の正確性あるいは完全性について何ら表明するものではありません 本稿に従って決断した行為に起因する利害得失はその行為者自身に帰するものとします 11