2. 海外の感染症発生状況 (1) 三大感染症の発生状況世界保健機構 (WHO) は 世界的規模での対策が必要とされる HIV 感染症 / AIDS 結核 マラリアを 三大感染症 とし 基金を設立するなど対策に取り組んでいる 中でもマラリアの感染者数は多く 世界全体では 2010 年には約 2 億

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後などに慢性の下痢をおこしているケースでは ランブル鞭毛虫や赤痢アメーバなどの原虫が原因になっていることが多いようです 二番目に海外渡航者にリスクのある感染症は 蚊が媒介するデング熱やマラリアなどの疾患で この種の感染症は滞在する地域によりリスクが異なります たとえば デング熱は東南アジアや中南米で

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PowerPoint プレゼンテーション

蚊を介した感染経路以外にも 性交渉によって男性から女性 男性から男性に感染したと思われる症例も報告されていますが 症例の大半は蚊の刺咬による感染例であり 性交渉による感染例は全体のうちの一部であると考えられています しかし 回復から 2 ヵ月経過した患者の精液からもジカウイルスが検出されたという報告

感染予防_16p.indd

はじめに 海外に出国する日本人の数は年々増加しており 2006 年には 1700 万人に達しています この中には現地で感染症にかかり 医療施設を受診するケースも少なくありません こうした海外でかかりやすい感染症の予防対策として 旅行者への予防接種の普及が提唱されているところです このパンフレットは

Microsoft Word - H300717【プレスリリース】夏休みの感染症対策について

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

2017 年 25 週 (06 月 19 日 ~06 月 25 日 ) 2 類感染症 3 類感染症 都道府県 結核 ジフテリア 重症急性呼吸器症候群 中東呼吸器症候群 鳥インフルエンザ (H5N1) 鳥インフルエンザ (H7N9) コレラ 細菌性赤痢 総数北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨

渡航先 ( 国 地域 ) や渡航先での行動によって, 感染する可能性のある感染症は大き く異なりますが, 世界的に蚊を媒介した感染症が多く報告されています 特に熱帯 亜 熱帯地域ではマラリア, デング熱, チクングニア熱などに注意が必要です (1) マラリア毎年世界で約 2 億人の患者が発生し, 約

2018 年 47 週 (11 月 19 日 ~11 月 25 日 ) 2 類感染症 3 類感染症 都道府県 結核 ジフテリア 重症急性呼吸器症候群 中東呼吸器症候群 鳥インフルエンザ (H5N1) 鳥インフルエンザ (H7N9) コレラ 細菌性赤痢 総数北海道青森県岩手県宮城県秋田県山形県福島県茨

横浜市感染症発生状況 ( 平成 30 年 ) ( : 第 50 週に診断された感染症 ) 二類感染症 ( 結核を除く ) 月別届出状況 該当なし 三類感染症月別届出状況 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月計 細菌性赤痢

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ように いわゆる渡航者 に推奨されているワクチン (Recommend vaccines) 次に黄熱ワクチンのように一部の国に入国する際 接種証明書の提示を要求されるワクチン (Required vaccines) そして麻しんや風しんワクチンのようにわが国で通常に接種されているワクチン (Rout

流行の推移と発生状況 疾病名推移発生状況疾病名推移発生状況 インフルエンザ RS ウイルス感染症 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 水痘 手足口病 伝染性紅斑 突発性発疹 百日咳 ヘルパンギーナ 流行性耳下腺炎 急性出血性結膜炎流行性角結膜炎 細菌性髄膜炎 無菌性髄膜炎 マイコ

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東京大会と感染症サーベイランス ~ 普段とどこがちがうのか ~ 疾患疫学が変化する可能性 多数の訪日外国人の流入 多くのマスギャザリングイベント 事前のリスク評価に基づいたサーベイランスと対応の強化の必要性を検討する 体制構築の観点から 行政と大会組織委員会の責任範囲と協力体制の構築が必要 国内移動

インフルエンザ、鳥インフルエンザと新型インフルエンザの違い

1 月号は以下の情報を掲載しています 1. 茨城県感染症発生動向調査事業に基づく試験検査 検出状況 1) 全数把握疾患 2) 病原体定点依頼検査その他の検査 3) 集団 ( 施設や学校等 ) 事例 月別検出件数 1) 三類 四類 五類 ( 全数把握 ) 2) 五類 ( 定点 ) その他の検査 3)

(案)

全数把握対象疾患報告数 2018 年第 49 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 49 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

スライド 1


全数把握対象疾患報告数 2016 年第 38 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 38 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

1

(2) 注意すべき病気等 消化器感染症食べ物や飲み物から感染する消化器感染症は 東ティモールで最もかかりやすい病気の一つです 生水 氷 生野菜 刺身 カットフルーツ フレッシュフルーツジュースなどには十分注意してください デング熱シマカ ( 日本では一般にヤブ蚊と呼ばれる ) という 日中 特に明け

Taro-入所マニュアル.jtd

全数把握対象疾患報告数 2018 年第 52 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 52 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

本文は 2014 年に発行された Infectious diseases prioritisation for event-based surveillance at the European Union level for the 2012 Olympic and Paralympic Games

茨城県感染症流行情報 INFECTIOUS DISEASE WEEKLY REPORT IBARAKI 2018 年第 36 週 (09 月 03 日 ~09 月 09 日 ) 今週の動向 腸管出血性大腸菌感染症の報告が 6 件ありました 百日咳の報告が 5 件ありました 風しんの報告が 4 件あり

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Infectious Diseases Weekly Report FUKUSHIMA IDWR 2017 年 第 35 週 (8 月 28 日 ~9 月 3 日 ) 福島県感染症発生動向調査週報 福島県感染症情報センター ( 福島県衛生研究所 ) 福島市方木田字水戸内 16 番



全数把握対象疾患報告数 2018 年第 47 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 47 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

第14巻第27号[宮崎県第27週(7/2~7/8)全国第26週(6/25~7/1)]               平成24年7月12日

Microsoft Word - WIDR201839

【資料3】感染症の範囲及び類型について

PowerPoint プレゼンテーション

全数把握対象疾患報告数 206 年第 48 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 48 年累計 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核



流行の推移と発生状況疾病名 推移 発生状況 疾病名 推移 発生状況 インフルエンザ RSウイルス感染症 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 水痘 手足口病 伝染性紅斑 突発性発疹 百日咳 ヘルパンギーナ 流行性耳下腺炎 急性出血性結膜炎 流行性角結膜炎 細菌性髄膜炎 無菌性髄膜炎


2. 今後想定すべき事態 (1)SARS 流行の振り返り前述の通り MERS( マーズ ) コロナウイルスは 2003 年に中国を中心に流行した SARS ウイルスに類似したウイルスである そこで 今後の MERS( マーズ ) コロナウイルスの感染の拡大等を考えるにあたって SARS の流行を振り

全数把握対象疾患報告数 2018 年第 50 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 50 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

記号の説明 前からの推移 : 倍以上の減少.~ 倍未満の減少. 未満の増減.~ 倍未満の増加 倍以上の増加流行状況 : 空白発生なし 僅か 少し やや多い 多い 非常に多い 定点当り患者数について 過去 年間の標準偏差値に感染症の種類毎に係数を乗じた値を 等分し 流行状況の目安として 段階で表示して

報告は 523 人 (14. 5) で前週比 9 と減少した 例年同時期の定点あたり平均値 * (16. ) の約 9 割である 日南 (37. 3) 小林(26. 3) 保健所からの報告が多く 年齢別では 1 歳から 4 歳が全体 の約 4 割を占めた 発生状況 ( 宮崎県 ) 定

6/10~6/16 今週前週今週前週 インフルエンザ 2 10 ヘルパンギーナ RS ウイルス感染症 1 0 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 8 10 咽頭結膜熱 急性出血性結膜炎 0 0 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 流行性角結膜炎 ( はやり目 )

記号の説明 前からの推移 : 倍以上の減少.~ 倍未満の減少. 未満の増減.~ 倍未満の増加 倍以上の増加 流行状況 : 空白発生なし 僅か 少し やや多い 多い 非常に多い 定点当り患者数について 過去 年間の標準偏差値に感染症の種類毎に係数を乗じた値を 等分し 流行状況の目安として 段階で表示し

Microsoft Word - 届出基準

Ⅰ 第 30 週の発生動向 (2017/7/24~2017/7/30) 1. 手足口病については むつ保健所管内で警報が発令されました 東地方 + 青森市保健所管内 弘前保健所管内 上十三保健所管内で警報が継続しています 三戸地方 + 八戸市保健所管内では 定点当たり報告数の増加が続いており 警報レ

Microsoft PowerPoint 最近の性感染症の動向


全数把握対象疾患報告数 2018 年第 48 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 48 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核


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全数把握対象疾患報告数 2018 年第 01 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 1 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

(Microsoft Word \212\264\220\365\217\307\217T\225\361.doc)

厚生労働大臣が定める三種病原体等及び四種病原体等の一部を改正する件の公布等について

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 3 人 弘前 人 八戸市 2 人 五所川原 2 人 上十三 人 (28 年計 :97 人 ) レジオネラ症 ( 四類全把握対象疾患 ): 青森市 人 (28 年計 :7 人 ) カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 ( 五類全把握対象疾

つが虫病 (40) デング熱 (41) 東部ウマ脳炎 (42) 鳥インフルエンザ (H5N1 及びH7N9を除く ) (43) ニパウイルス感染症 (44) 日本紅斑熱 (45) 日本脳炎 (46) ハンタウイルス肺症候群 (47)Bウイルス病 (48) 鼻疽 (49) ブルセラ症 (50) ベネズ

48小児感染_一般演題リスト160909

0 Chiba Weekly Report 第 38 週 /9/18~2017/9/24 千葉県結核 感染症週報 千葉県感染症天気図 2 今週の注目疾患 後天性免疫不全症候群 全数報告疾患集計表 5 定点報告 ( 五類感染症 )

四類感染症動物 飲食物等の物件を介して人に感染し 国民の健康に影響を与える恐れがある感染症 ( ヒトからヒトへの伝染はない ) 届け出診断後直ちに疾患の種類 E 型肝炎 A 型肝炎 黄熱 Q 熱 狂犬病 炭疽 鳥インフルエンザ (H5N1 H7N9 を除く ) ボツリヌス症 マラリア 野兎病 チクン

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Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 東地方 人 三戸地方 人 上十三 人 (8 年計 : 人 ) 腸管出血性大腸菌感染症 ( 三類全把握対象疾患 ): 弘前 人 (8 年計 :5 人 ) アメーバ赤痢 ( 五類全把握対象疾患 ): 八戸市 人 (8 年計 : 人 ) カルバペネム

海外勤務者の健康管理ハンドブック

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Weekly Report on Aomori Prefecture Infectious Disease 青森県感染症発生情報 (2019 年第 3 週 ) 発行青森県感染症情報センター (2019 年 1 月 24 日 ) ( 青森県環境保健センター : 担当微生物部 ) TEL

流行の推移と発生状況 疾病名推移発生状況疾病名推移発生状況 インフルエンザ RS ウイルス感染症 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 水痘 手足口病 伝染性紅斑 突発性発疹 百日咳 ヘルパンギーナ 流行性耳下腺炎 急性出血性結膜炎流行性角結膜炎 細菌性髄膜炎 無菌性髄膜炎 マイコ

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 人 (8 年計 :3 人 ) 腸管出血性大腸菌感染症 ( 三類全把握対象疾患 ): 弘前 人 八戸市 人 上十三 人 むつ 人 (8 年計 : 人 ) 百日咳 ( 五類全把握対象疾患 ): 弘前 3 人 (8 年計 :3 人 ) Ⅳ 病

熊本県感染症情報 ( 第 14 週 ) 県内 165 観測医の患者数 (4 月 4 日 ~4 月 10 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 10 8 ヘルパンギーナ 6 5 咽頭結膜熱 A 群溶血性連鎖球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

報告風しん

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 1 人 上十三 1 人 (2018 年計 :146 人 ) 腸管出血性大腸菌感染症 ( 三類全把握対象疾患 ): 五所川原 1 人 (2018 年計 :30 人 ) 梅毒 ( 五類全把握対象疾患 ): 弘前 1 人 八戸市 2 人 (2

二類感染症 1 結核平成 23 年は 291 件の届出があり 前年 (188 件 ) の約 1.5 倍に増加した 月別届出数は 16~43 件で推移した 症状別では 患者 198 件 ( 内訳 : 肺結核 143 件 その他の結核 42 件 肺結核およびその他の結核 13 件 ) 疑似症患者 1 件

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

Microsoft Word - 被災地の感染症予防 詳細版 final as of docx

( 別記報告様式 1 ) 記載例 2 感染症等 ( 疑 ) 発生報告票 1 報告年月日 平成 1 9 年 4 月 1 日 ( 日 ) 1 5 時 0 0 分現在 2 施設等の名称 学校法人 函館学院 函館保健所幼稚園 ( 種 別 ) ( 私立幼稚園 ) 4 報 告 者 職 氏 名 園 長 名 函 館

Microsoft Word - 01沖縄県蚊媒介感染症対策行動計画(第3版)


Microsoft PowerPoint - ™mfiIfl�™B‘á−QŁfl›ï.ppt

Ⅲ 全把握対象疾患 結核 ( 二類全把握対象疾患 ): 青森市 人 弘前 2 人 八戸市 人 上十三 3 人 (28 年計 :87 人 ) デング熱 ( 四類全把握対象疾患 ): 弘前 人 (28 年計 : 人 ) カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症 ( 五類全把握対象疾患 ): 八戸市 人 (2

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感染症対策

全数把握対象疾患報告数 2019 年第 02 分類 対象疾患 茨城県 ( 診断日 ) 全国 ( 診断日 ) 年累計 2 年累計 1 類 エボラ出血熱 クリミア コンゴ出血熱 痘そう 南米出血熱 ペスト マールブルグ病 ラッサ熱 2 類 急性灰白髄炎 結核

熊本県感染症情報 ( 第 31 週 ) 県内 170 観測医の患者数 (7 月 28 日 ~8 月 3 日 ) 今週前週今週前週 インフルエンザ 0 1 百日咳 0 0 RS ウイルス感染症 7 0 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎

<4D F736F F D2096BC8CC389AE8E738AB490F58FC78FEE95F E91E630398F544E2E646F63>

1. 検疫感染症と空港検疫の実際 検疫の目的 検疫法第一条 この法律は 国内に常在しない感染症の病原体が船舶又は航空機を介して国内に侵入することを防止するとともに 船舶又は航空機に関してその他の感染症の予防に必要な措置を講ずることを目的とする 2

救急小冊子_予防できる海外での感染症03.indd

世界保健機関 (WHO) による緊急事態宣言 WHOは 2016 年 2 月 1 日に開催された ジカウイルス感染症に関する国際保健規則 (IHR) 緊急委員会 ( 第 1 回 ) 会合の勧告を踏まえ 最近のブラジルにおける小頭症やその他神経障害の急増について 国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事

10/3~10/9 今週前週今週前週 インフルエンザ 7 1 百日咳 1 0 RS ウイルス感染症 ヘルパンギーナ 咽頭結膜熱 A 群溶血性レンサ球菌咽頭炎 感染性胃腸炎 流行性耳下腺炎 ( おたふくかぜ ) 急性出

Microsoft Word - WIDR201826

Transcription:

リスクマネジメント最前線 2013-3 企業営業開発部 100-8050 東京都千代田区丸の内 1-2-1 TEL 03-5288-6589 FAX 03-5288-6590 http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/ http://www.tokiorisk.co.jp/ 海外における感染症と新たな感染症リスク 海外では 自然条件 風土の違いに加え 衛生状態の悪さや対策の遅れなどにより 日本では想定されていないような感染症の流行が未だ見られる地域も少なくない それに加えて 将来の流行が懸念される新たな感染症リスクも各国の研究機関等から指摘されている 本稿では 海外における感染症の発生状況と対策 近年注目される新たな感染症リスクについてまとめる 1. 感染症とは感染症とは 人や動物の体内で増殖し 疾患をもたらす菌やウイルスなどの総称である 厚生労働省検疫所はホームページ 1 上で 感染症を病原体の侵入方法 ( 感染源 ) により分類している ( 図表 1) 感染症によっては 複数の感染経路を持つものもある 感染源食べ物から虫から動物から人から性行為で周囲から医療行為で 図表 1 感染源別の主な感染症主な感染症赤痢 腸チフス A 型肝炎 E 型肝炎 コレラ サルモネラ感染症等ウエストナイル熱 デング熱 ペスト マラリア 日本脳炎 黄熱等狂犬病 エボラ出血熱 ラッサ熱 ハンタウイルス感染症等インフルエンザ 手足口病 麻しん 結核等 HIV 感染症 / AIDS アメーバ赤痢 B 型肝炎 疥癬等破傷風 レジオネラ症 疥癬 ヒストプラスマ症 糞線虫症等 B 型肝炎 C 型肝炎等厚生労働省検疫所ホームページを基に作成 感染症の症状は感染源によらず様々で 咳や発熱 頭痛 腹痛 嘔吐 下痢 湿疹 筋肉痛等内科的な症状に加え 脳や肝機能に影響を与えるものもある また予防や治療についても 有効なワクチンや抗生物質の有無は感染症により様々である そのため感染症の対策に当っては 当該地域の感染症の発生状況を確認し リスクがある感染症について詳細に調べる必要がある 1 http://www.forth.go.jp/useful/infectious/very.html 1

2. 海外の感染症発生状況 (1) 三大感染症の発生状況世界保健機構 (WHO) は 世界的規模での対策が必要とされる HIV 感染症 / AIDS 結核 マラリアを 三大感染症 とし 基金を設立するなど対策に取り組んでいる 中でもマラリアの感染者数は多く 世界全体では 2010 年には約 2 億 1,600 万人が感染し 15 万人以上が亡くなっている 2 図表 2は マラリアの影響が残る国 地域を示した地図である 日本ではマラリアは絶滅したとされており 今日 日本で確認されるマラリア患者の全ては 海外で感染した帰国者である しかし世界を見ると アジアを含む多くの地域で未だマラリアの感染が認められる 図表 2 マラリアの影響が残る国 地域 3 WHO ホームページより抜粋 また HIV 感染症 / AIDS は 2011 年に世界で約 250 万人が新たに感染し 23 万人の 14 歳以 下の子どもを含む 170 万人が亡くなっている 4 結核についても 2011 年に約 870 万人が感染し 140 万人の人が亡くなっている 5 (2) 地域別の感染症発生状況 感染症の発生状況は 当地の自然条件 風土により大きな影響を受ける 以下では 地域別の 感染症発生状況の概要をまとめる 自然条件 風土に加え 衛生水準や対策の実施状況なども感 2 出典 :http://www.who.int/gho/malaria/en/index.html 2010 年 3 オレンジ色が 影響の残る国 地域 水色が 再発の警戒国 地域 4 出典 :http://www.who.int/hiv/data/2012_epi_core_en.png 2011 年 5 出典 :http://www.who.int/features/factfiles/tb_facts/en/index1.html 2011 年 約 43 万人の HIV 感染者を含む 2

染症の発生状況を左右する要因であるため 感染症の流行地域に社員等を渡航 滞在させる場合には 現地の詳細な情報を確認する必要がある a. 中国毎年暑い季節を中心に北京や上海を含む熱帯 温帯地域で 赤痢や腸チフス A 型肝炎等菌やウイルスに起因する食中毒が発生している また南部や中部の一部の地域では 蚊を媒介とするマラリアも発生している 狂犬病も北京や上海を含む地域で感染が報告されている b. アジア熱帯 温帯地域を中心に赤痢や腸チフス A 型肝炎 E 型肝炎 コレラ サルモネラ感染症等の菌やウイルスに起因する食中毒が恒常的に発生している また東南アジアやインドを中心に 蚊を媒介とするマラリアやデング熱 日本脳炎等も発生している 狂犬病リスクもシンガポール マレーシアを除く国で高いとされている c. 北米米国 カナダ両国では 毎年春から秋にかけ蚊を媒介とするウエストナイル熱 冬季には季節性のインフルエンザが流行する また 米国では 哺乳類が狂犬病ウイルスを持っていることがあり キツネやコウモリなど野生動物による狂犬病の発生も度々報告されている d. 中南米中米や南米北部では蚊を媒介とするマラリアや黄熱 デング熱等の発生が恒常的に見られる また赤痢や腸チフス A 型肝炎 E 型肝炎 コレラ サルモネラ感染症等の菌やウイルスに起因する食中毒も一年を通じて全土で発生しており 比較的衛生状態の良いとされるホテルや客船等での集団感染も度々報告される 狂犬病やハンタウイルス症候群など動物との接触により感染する感染症も全土で多く報告されている e. 欧州菌やウイルスに起因する食中毒のリスクは他の地域と比べて低いが 英国やドイツなど先進国でも腸管出血性大腸菌 (O-104 等 ) やノロウイルスが度々集団発生している また中央ヨーロッパからロシア極東地域にかけてを中心に 草原などに立ち入った場合にはダニ媒介性脳炎に感染する恐れがある ロシアでは 狂犬病の発生も報告されている f. 中東赤痢や腸チフス A 型肝炎 E 型肝炎 コレラ サルモネラ感染症等の菌やウイルスに起因する食中毒が全土で発生し 特に夏季に多く報告される またサウジアラビアやイエメンなど南部を中心に 蚊を媒介とするマラリアやデング熱 チクングニア熱等も発生している アフガニスタン パキスタンはポリオの常在国に指定されている 3

g. アフリカアフリカは 世界の中でも特に感染症が多く発生する地域である 全土において 赤痢や腸チフス A 型肝炎 E 型肝炎 コレラ サルモネラ感染症等の菌やウイルスに起因する食中毒が多く発生している また北部を除く地域において 蚊を媒介とするマラリアやデング熱等の発生が恒常的に見られる 中央部や西部ではエボラ出血熱も度々流行する 6 3. 注意すべき感染症と対策 (1) 海外で注意すべき感染症厚生労働省は 年末年始や夏休みのタイミングに合わせ 海外で注意すべき感染症の情報をホームページなどで公表している 2012 年 12 月に公表された情報では 最も注意をしなければならない感染症 として 11 の感染症と 渡航先 活動内容によって注意しなければいけない感染症 として 9 の感染症を指定している ( 図表 3) これら 20 以外にも注意すべき感染症は多数ある 図表 3 海外で注意しなければいけない感染症 海外で最も注意しなければいけない感染症 主な感染源注意すべき病気主な発生地域 食べ物 水 E 型肝炎 A 型肝炎 赤痢 腸チフス コレラ ノロウイルス 消化管寄生虫症 世界各地 世界各地 世界各地 事故 ケガ破傷風世界各地 蚊 マラリア熱帯 亜熱帯地域 ( アジア アフリカ 中南米 ) デング熱熱帯 亜熱帯地域 ( アジア オセアニア アフリカ 中南米 ) 人麻しん世界各地 ( 特にアジア アフリカ ) 渡航先 活動内容によって注意しなければいけない感染症 黄熱 ウエストナイル熱 チクングニア熱 狂犬病 鳥インフルエンザ ポリオ レプトスピラ症 年末年始における海外での感染症予防について ( 厚生労働省 ) 7 を基に作成 6 近年の例を挙げると 2012 年の夏から秋にかけ ウガンダとコンゴ民主共和国でそれぞれ 20 人以上がエボラ出血熱により 死亡している 7 出典 :http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/chuui-kanki 4

(2) 感染症対策感染症の流行地域に社員等を渡航 滞在させる場合には その特徴や対策を周知することが求められる 以下では 主な感染源別に対策の概要をまとめる また 感染症の中には 事前のワクチン接種が有効とされるもの多いことから 渡航前のワクチン接種を社内で制度化することなども肝要である a. 食べ物 水飲用水や氷はミネラルウォーターなどを利用する また食物は十分に煮沸 加熱してから摂取するようにし 外食の際は信頼の置けるレストラン等を利用する 調理 食事 トイレの前後には 石鹸やエタノール 塩素等で手や調理器具等を洗浄 消毒する ( 感染症によってはエタノール等消毒液が効かないものもあるため注意が必要 ) b. 事故 ケガ流行地域では 川や沼 草むらに立ち入らない また 長袖シャツ 長ズボン等を着用して肌の露出を避ける 転倒するなどして怪我をした場合には すぐに傷口を洗い流し 医療機関に受診する c. 蚊外出の際は長袖シャツ 長ズボン等を着用し 肌の露出部分には昆虫忌避剤を塗布する 室内においては 電気蚊取り器 蚊取り線香 殺虫剤 蚊帳等を効果的に使用する また 花瓶などの水を 2 日に 1 回以上取り替え 蚊の発生を防ぐ d. 人感染症流行時には 人ごみを避けて行動する また N95 マスクなど高機能マスクの着用も効果を発揮することがある 帰宅時などに 石鹸を使用した丁寧な手洗いとエタノール等による消毒 うがいを徹底する 4. 新たな感染症リスク (1) 強毒性の新型インフルエンザ発生の懸念 2009 年に豚由来の新型インフルエンザウイルス (H1N1) が流行し大きな問題となったが 比較的毒性が弱かったことから 現在は日本を含む多くの国で通常の季節性インフルエンザの 1 つに分類されている 一方 比較的毒性の強い鳥由来のインフルエンザウイルス (H5N1) は 人に感染する能力は低いとされていたが 2003 年以降 東南アジアなどの地域で人への感染が多数報告されている WHO によると 2013 年 1 月 16 日までに累計で 610 人の感染が確認され うち約 6 割の 360 人が死亡している 8 8 http://www.who.int/influenza/human_animal_interface/hai_risk_assessment/en/index.html 5

さらに 2011 年 オランダの研究機関等が実験でフェレット 9 間で感染する H5N1 ウイルスを生み出したことを発表した このことは 近い将来 H5N1 が人から人へと感染する新型インフルエンザに変異する可能性を示唆しており 感染が容易になることでパンデミックが発生し 世界中で多くの人が死亡することも想定される (2) 新種のコロナウイルスの発生 2012 年 9 月 カタールから英国の病院に移送された男性から 新種のコロナウイルスが検出された WHO によると 2012 年 12 月 21 日までにサウジアラビア カタール ヨルダンで 9 人の感染が確認され そのうち 5 人が死亡した 10 コロナウイルスは 呼吸器感染症の原因となるウイルスで 2004 年に流行した SARS もコロナウイルスのひとつである ドイツ等の研究機関は この新種のコロナウイルスはコウモリや豚など動物に感染する能力を持っており SARS よりも長期間に亘って人に影響を及ぼす可能性があると指摘している 5. 最後に感染症の発生状況は 当該国 地域の気候に加え 衛生状況 対策の実施状況 また流行シーズンにより様々である 社員等を海外に渡航 滞在させる場合には 以下の WEB サイトや現地当局 報道などで 当該地域の感染症情報を詳細に確認する必要がある また 感染が疑われる場合には速やかに医療機関を受診することが極めて重要であり 現地医療機関に関する情報提供も併せて行われたい 海外の感染症に関する情報が確認できる WEB サイト 厚生労働省検疫所 (FORTH):http://www.forth.go.jp 厚生労働省 感染症 予防接種情報 : http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou 外務省 海外安全ホームページ :http://www.anzen.mofa.go.jp (2013 年 2 月 7 日発行 ) 9 イタチ科に属する哺乳小動物 人と類似の感染様式を示す 10 参考 :http://www.who.int/csr/disease/coronavirus_infections/update_20121221 6