第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気

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情報の開示を求める事案である 1 前提となる事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者 ア原告は, 国内及び海外向けのモバイルゲームサービスの提供等を業とす る株式会社である ( 甲 1の2) イ被告は, 電気通信事業を営む株式会社である

応して 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 後述する本件各動画の番号に対応して, 本件投稿者 1 などといい, 併せて 本件各投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェ

1 本件は, 別紙 2 著作物目録記載の映画の著作物 ( 以下 本件著作物 という ) の著作権者であると主張する原告が, 氏名不詳者 ( 以下 本件投稿者 という ) が被告の提供するインターネット接続サービスを経由してインターネット上のウェブサイト FC2 動画 ( 以下 本件サイト という )

原告が著作権を有し又はその肖像が写った写真を複製するなどして不特定多数に送信したものであるから, 同行為により原告の著作権 ( 複製権及び公衆送信権 ) 及び肖像権が侵害されたことは明らかであると主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プ ロ

平成 30 年 10 月 26 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 9 月 28 日 判 決 5 原告 X 同訴訟代理人弁護士 上 岡 弘 明 被 告 G M O ペパボ株式会社 同訴訟代理人弁護士

平成 30 年 6 月 15 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 30 年 ( ワ ) 第 5939 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 5 月 9 日 判 決 5 当事者の表示別紙当事者目録記載のとおり 主 文 1 被告は, 別紙対象目録の 原告 欄記載の各原告に対し,

( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) (1) 当事者 原告は, 肩書地に居住する者である ( 甲 1) 被告は,

被告に対し, 著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償として損害額の内金 800 万円及びこれに対する不法行為の後の日又は不法行為の日である平成 26 年 1 月 日から支払済みまで年 % の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である 1 判断の基礎となる事実 ( 当事者間に争いのない事実又は後掲の各

最高裁○○第000100号

平成 28 年 4 月 21 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 2 月 25 日 判 決 原告株式会社 C A 同訴訟代理人弁護士 竹 村 公 利 佐 藤 裕 紀 岡 本 順 一 石 塚 司 塚 松 卓

第 2 事案の概要本件は, レコード製作会社である原告らが, 自らの製作に係るレコードについて送信可能化権を有するところ, 氏名不詳者において, 当該レコードに収録された楽曲を無断で複製してコンピュータ内の記録媒体に記録 蔵置し, イン ターネット接続プロバイダ事業を行っている被告の提供するインター

事実 ) ⑴ 当事者原告は, 昭和 9 年 4 月から昭和 63 年 6 月までの間, 被告に雇用されていた ⑵ 本件特許 被告は, 次の内容により特定される本件特許の出願人であり, 特許権者であった ( 甲 1ないし4, 弁論の全趣旨 ) 特許番号特許第 号登録日平成 11 年 1

平成 29 年 2 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 2 月 7 日 判 決 原 告 マイクロソフトコーポレーション 同訴訟代理人弁護士 村 本 武 志 同 櫛 田 博 之 被 告 P1 主 文

最高裁○○第000100号

並びにそのコンサルタント業務等を営む株式会社である ⑵ 株式会社 CAは, 別紙著作物目録記載 1ないし3の映像作品 ( 以下 本件著作物 1 などといい, 併せて 本件各著作物 という ) の製作に発意と責任を有する映画製作者 ( 著作権法 2 条 1 項 号 ) であるところ, 本件各著作物の著

最高裁○○第000100号

令和元年 6 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 31 年 ( ワ ) 第 2629 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 31 年 4 月 16 日 判 決 5 原告日本コロムビア株式会社 原告株式会社バンダイナムコアーツ 10 原告キングレコード株式会社 原告ら訴訟代理人

告ツイッタージャパンの間では全て原告の負担とする 事実及び理由 第 1 請求 ( 主位的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 1) 記載の各情報を開示せよ ( 予備的請求 ) 被告らは, 原告に対し, 別紙発信者情報目録 ( 第 2) 記載の各情報を開示せよ 第 2 事案の

平成 28 年 4 月 28 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償等請求事件 口頭弁論終結日平成 28 年 3 月 22 日 判 決 原 告 A 同訴訟代理人弁護士 松 村 光 晃 中 村 秀 一 屋 宮 昇 太 被告株式会社朝日新聞社 同訴訟代

年 10 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 3 被控訴人 Y1 は, 控訴人に対し,100 万円及びこれに対する平成 24 年 1 0 月 18 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 4 被控訴人有限会社シーエムシー リサーチ ( 以下 被控訴人リサーチ

最高裁○○第000100号

同目録記載の番号により 本件著作物 1, 本件著作物 2 といい, 本件著作物 1 及び本件著作物 2を併せて 本件各著作物 という ) の著作権を有する株式会社 CAを吸収合併し, 同社の権利義務を承継したところ, 被告が本件各著作物のデータを動画共有サイトのサーバー上にアップロードした行為が公衆

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

F6B746A854C

平成  年 月 日判決言渡し 同日判決原本領収 裁判所書記官

1 前提となる事実等 ( 証拠の摘示のない事実は, 争いのない事実又は弁論の全趣旨から容易に認められる事実である ) (1) 当事者原告は, X1 の名称を使用してウエブサイトの制作請負を行っている者であり, 被告は, 不動産業を主な業務としている特例有限会社である (2) 原告によるプログラムの制

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最高裁○○第000100号

判決【】

上陸不許可処分取消し請求事件 平成21年7月24日 事件番号:平成21(行ウ)123 東京地方裁判所 民事第38部

平成年月日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団であ る原告が, 被告株式会社シーエム ( 以下 被告シーエム という ) が企画, 編集

に表現したものということはできない イ原告キャッチフレーズ1は, 音楽を聞くように英語を聞き流すだけ/ 英語がどんどん好きになる というものであり,17 文字の第 1 文と12 文字の第 2 文からなるものであるが, いずれもありふれた言葉の組合せであり, それぞれの文章を単独で見ても,2 文の組合

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

とは, 原告に対する名誉毀損に該当するものであると主張して, 不法行為に基づき400 万円の損害賠償及びこれに対する不法行為日以降の日である平成 24 年 9 月 29 日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いがないか,

指定商品とする書換登録がされたものである ( 甲 15,17) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平成 21 年 4 月 21 日, 本件商標がその指定商品について, 継続して3 年以上日本国内において商標権者, 専用使用権者又は通常使用権者のいずれもが使用した事実がないことをもって, 不使用に

(1) 本件は, 歯科医師らによる自主学習グループであり, WDSC の表示を使用して歯科治療技術の勉強会を主催する活動等を行っている法人格なき社団である控訴人が, 被控訴人が企画, 編集した本件雑誌中に掲載された本件各記事において WDSC の表示を一審被告 A( 以下, 一審被告 A という )

控訴人は, 控訴人にも上記の退職改定をした上で平成 22 年 3 月分の特別老齢厚生年金を支給すべきであったと主張したが, 被控訴人は, 退職改定の要件として, 被保険者資格を喪失した日から起算して1か月を経過した時点で受給権者であることが必要であるところ, 控訴人は, 同年 月 日に65 歳に達し

事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人は, 原判決別紙被告方法目録記載のサービスを実施してはならない 3 被控訴人は, 前項のサービスのために用いる電話番号使用状況調査用コンピュータ及び電話番号使用状況履歴データが記録された記録媒体 ( マスター記録媒体及びマスター記録

平成 30 年 3 月 29 日判決言渡同日原本受領裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 30 年 3 月 9 日 判 決 5 原告株式会社フィールドアロー 同訴訟代理人弁護士 青 山 友 和 被 告 ソ メ ヤ 株 式 会 社 同訴訟代理

2 被控訴人らは, 控訴人に対し, 連帯して,1000 万円及びこれに対する平成 27 年 9 月 12 日から支払済みまで年 5 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要 ( 以下, 略称及び略称の意味は, 特に断らない限り, 原判決に従う ) 1 本件は, 本件意匠の意匠権者である控訴人が

発信者情報開示関係WGガイドライン

平成22年5月12日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官

権 ) を侵害するとともに, 原告をプロデューサーとして表示しない点及び劇場用映画として制作された本件映画をインターネットで公表する点において, 本件映画につき原告が有する著作者人格権 ( 氏名表示権及び公表権 ) を侵害する行為であり, 被告が今後本件映画を上映, 複製, 公衆送信若しくは送信可能

平成 23 年 10 月 20 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官 平成 23 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 23 年 9 月 29 日 判 決 原 告 X 同訴訟代理人弁護士 佐 藤 興 治 郎 金 成 有 祐 被 告 Y 同訴訟代理人弁理士 須 田 篤

ア原告は, 平成 26 年 12 月 26 日に設立された, 電気機械器具の研究及び開発等を目的とする株式会社である イ合併前会社ワイラン インクは, 平成 4 年 (1992 年 ) に設立された, カナダ法人である 同社は, 平成 29 年 (2017 年 )6 月 1 日付けで, 他のカナダ法

して, 損害賠償金 330 万円及びこれに対する不法行為の後の日である平成 28 年 月 21 日 ( 原告が被告に本件請求の通知を送付した日の翌日 ) から支払済みまで民法所定の年 分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実及び弁論の全趣旨により容

平成 31 年 1 月 29 日判決言渡平成 30 年 ( ネ ) 第 号商標権侵害行為差止等請求控訴事件 ( 原審東京地方裁判所平成 29 年 ( ワ ) 第 号 ) 口頭弁論終結日平成 30 年 12 月 5 日 判 決 控訴人 ジー エス エフ ケー シ ー ピー株式会

4 年 7 月 31 日に登録出願され, 第 42 類 電子計算機のプログラムの設計 作成 又は保守 ( 以下 本件役務 という ) を含む商標登録原簿に記載の役務を指定役 務として, 平成 9 年 5 月 9 日に設定登録されたものである ( 甲 1,2) 2 特許庁における手続の経緯原告は, 平

する 理 由 第 1 事案の概要 1 本件は, 平成 21 年 ( 受 ) 第 602 号被上告人 同第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X1 という ) 及び平成 21 年 ( 受 ) 第 603 号上告人 ( 以下 1 審原告 X 2 といい,1 審原告 X 1と1 審原告 X 2を併せ

平成 27 年 2 月までに, 第 1 審原告に対し, 労働者災害補償保険法 ( 以下 労災保険法 という ) に基づく給付 ( 以下 労災保険給付 という ) として, 療養補償給付, 休業補償給付及び障害補償給付を行った このことから, 本件事故に係る第 1 審原告の第 1 審被告に対する自賠法

ない 4 訴訟費用は, 第 1,2 審とも被控訴人の負担とする 第 2 事案の概要 1 事案の要旨本件は, 原判決別紙 商標権目録 記載の商標権を有する控訴人が, 被控訴人に対し, 被控訴人が原判決別紙 被告標章目録 記載の標章をインターネットホームページのサイトで使用する行為が, 控訴人の商標権を

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達したときに消滅する旨を定めている ( 附則 10 条 ) (3) ア法 43 条 1 項は, 老齢厚生年金の額は, 被保険者であった全期間の平均標準報酬額の所定の割合に相当する額に被保険者期間の月数を乗じて算出された額とする旨を定めているところ, 男子であって昭和 16 年 4 月 2 日から同

21855F41214EA DB3000CCBA

被告は,A 大学 C 学部英語専攻の学生である (2) 本件投稿等被告は, 大学 2 年生として受講していた平成 26 年 4 月 14 日の 言語学の基礎 の初回講義 ( 以下 本件講義 という ) において, 原告が 阪神タイガースがリーグ優勝した場合は, 恩赦を発令する また日本シリーズを制覇

原告は, 被告に対し, 万円及びこれに対する平成 29 年 3 月 1 日から支払済みまで年 分の割合による金員を支払え 第 2 事案の概要本件は,1 原告が, 自らの作成に係る別紙 1( 甲 12の1 以下 本件本体部 分 という ) 及び別紙 2( 甲 12 の 2 以下 本件ライブラリ部分 と

7 という ) が定める場合に該当しないとして却下処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 被控訴人に対し, 厚年法施行令 3 条の12の7が上記改定請求の期間を第 1 号改定者及び第 2 号改定者の一方が死亡した日から起算して1 月以内に限定しているのは, 厚年法 78 条の12による

丙は 平成 12 年 7 月 27 日に死亡し 同人の相続が開始した ( 以下 この相続を 本件相続 という ) 本件相続に係る共同相続人は 原告ら及び丁の3 名である (3) 相続税の申告原告らは 法定の申告期限内に 武蔵府中税務署長に対し 相続税法 ( 平成 15 年法律第 8 号による改正前の

☆ソフトウェア特許判例紹介☆ -第31号-

平成 25 年 3 月 25 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 2 月 25 日 判 決 原 告 株式会社ノバレーゼ 訴訟代理人弁理士 橘 和 之 被 告 常磐興産株式会社 訴訟代理人弁護士 工 藤 舜 達 同 前 川 紀 光

平成 27 年 12 月 9 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 27 年 ( ワ ) 第 号損害賠償請求事件 口頭弁論終結日平成 27 年 11 月 6 日 判 決 東京都荒川区 < 以下略 > 原 告 株式会社オールビユーテイ社 同訴訟代理人弁護士 山 本 隆 司 同 植 田

き本件営業秘密の使用又は開示の差止め及び物件の廃棄を求めるとともに ( 以下, これらの請求を併せて 差止請求等 という ),(2) 被告が本件営業秘密を持ち出した行為は原告と被告の間の秘密保持契約にも違反し, これにより原告は損害を被ったと主張して, 同法 4 条又は債務不履行に基づき 1136

1 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産については, 当該価格により当該不動産に係る不動産取得税の課税標準となるべき価格を決定するものとする旨を定め, 同条 2 項で, 道府県知事は, 固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は当該固定資産

主位的に自筆証書 ( 後述の本件文書 ) による遺言に基づいて遺贈を受けたこと, 予備的に死因贈与を受けたことを主張して, 不当利得 ( 主位的 ) 又は死因贈与契約 ( 予備的 ) に基づく3000 万円 ( 内金請求 ) 及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成 27 年 12 月 5 日か

た損害賠償金 2 0 万円及びこれに対する遅延損害金 6 3 万 9 円の合計 3 3 万 9 6 円 ( 以下 本件損害賠償金 J という ) を支払 った エなお, 明和地所は, 平成 2 0 年 5 月 1 6 日, 国立市に対し, 本件損害賠償 金と同額の 3 3 万 9 6 円の寄附 (

(イ係)

第 1 控訴の趣旨 控訴人は, 原判決取消しとともに, 被控訴人らの請求をいずれも棄却する判決を 求めた 第 2 事案の概要 被控訴人らは日本舞踊の普及等の事業活動をしている 控訴人はその事業活動に 一般社団法人花柳流花柳会 の名称 ( 控訴人名称 ) を使用している 被控訴人ら は, 花柳流 及び

主 文 1 本件控訴をいずれも棄却する 2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由 第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人 P3 及び被控訴人会社は, 大阪府内, 兵庫県内, 京都府内, 滋賀県内及び和歌山県内において, 千鳥屋という名称を使用して菓子類を販売してはならない

なお, 基本事件被告に対し, 訴状や上記移送決定の送達はされていない 2 関係法令の定め (1) 道路法ア道路管理者は, 他の工事又は他の行為により必要を生じた道路に関する工事又は道路の維持の費用については, その必要を生じた限度において, 他の工事又は他の行為につき費用を負担する者にその全部又は一

政令で定める障害の程度に該当するものであるときは, その者の請求に基づき, 公害健康被害認定審査会の意見を聴いて, その障害の程度に応じた支給をする旨を定めている (2) 公健法 13 条 1 項は, 補償給付を受けることができる者に対し, 同一の事由について, 損害の塡補がされた場合 ( 同法 1

(2) 訴訟費用は 被告らの負担とする 2 被告国 (1) 本案前の答弁ア原告の被告国に対する訴えを却下する イ上記訴えに係る訴訟費用は 原告の負担とする (2) 被告国は 本案について 原告の被告国に対する請求を棄却する旨の裁判を求めるものと解する 3 被告 Y1 市 (1) 本案前の答弁ア原告の

第 1 請求 1 被告は, 別紙 1 被告製品目録記載の製品 ( 以下 被告製品 という ) を製造し, 販売し, 貸し渡し, 又は販売若しくは貸渡しのために展示してはならない 2 被告は, 被告製品及び半製品 ( 別紙 2 被告意匠目録記載の構成態様を具備しているが製品として完成するに至らないもの

<4D F736F F D A A835290B695FA BC96BC8F88979D8DCF816A2E646F63>

である旨の証券取引等監視委員会の指導を受け, 過年度の会計処理の訂正をした 本件は, 本件事業年度の法人税について, 控訴人が, 上記のとおり, その前提とした会計処理を訂正したことにより, 同年度の法人税の確定申告 ( 以下 本件確定申告 という ) に係る確定申告書の提出により納付すべき税額が過

により容易に認められる事実 ) (1) 当事者等ア原告は,Aの子である イ Aは, 大正 年 月 日生まれの男性であり, 厚生年金保険の被保険者であったが, 平成 年 月 日, 死亡した ( 甲 1) (2) 老齢通算年金の受給 Aは, 昭和 年 月に60 歳に達し, 国民年金の納付済期間である18

本件は, 商標登録取消審判請求に対する審決の取消訴訟である 争点は,1 被告又は通常実施権者による標章使用の有無及び2 使用された標章と登録商標との同一性の有無である 1 本件商標商標登録第 号商標 ( 以下, 本件商標 という ) は, 下記の構成からなり, 第 25 類 運動靴,

02 条の3に規定する固定資産税及び都市計画税の課税標準の特例 ( 以下 本件特例 という ) の適用を受ける住宅用地に該当せず, その余の部分に限り上記の住宅用地に該当するものとして, 平成 26 年 6 月 2 日付けで平成 26 年度分の固定資産税及び都市計画税の各賦課決定 ( 以下, 併せて

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

2 控訴費用は, 控訴人らの負担とする 事実及び理由第 1 控訴の趣旨 1 原判決を取り消す 2 被控訴人株式会社バイオセレンタック, 同 Y1 及び同 Y2は, 控訴人コスメディ製薬株式会社に対し, 各自 2200 万円及びこれに対する平成 27 年 12 月 1 日から支払済みまで年 5 分の割

裁判年月日 平成 25 年 9 月 19 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 24( ワ )26067 号 事件名 区分所有建物使用差止請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2013WLJPCA 事案の概要 原告が 被告に対し 管理組合集会決議がないのに住宅以外の用途

F54D3D DD700104A2

C2-35 商標権侵害の虚偽事実の告知 流布 不正競争防止法事件 : 東京地裁平成 28( ワ )12829 平成 29 年 3 月 30 日 ( 民 47 部 ) 判決 < 請求棄却 > キーワード 商標権侵害, 虚偽の事実 流布 ( 不競法 2 条 1 項 15 号 ), 真正商品の並行輸 入

淡路町知財研究会 (松宮ゼミ)

の上記アの期間に係る標準報酬月額を44 万円に訂正する必要がある旨のあっせんをした ( 甲 1の18ないし21 頁, 丙 4) (2) Aの標準報酬月額の決定等ア厚生年金保険法 ( 平成 24 年法律第 62 号による改正前のもの 以下 厚年法 という )100 条の4 第 1 項 3 号及び4 号

平成 25 年 7 月 17 日判決言渡 平成 24 年 ( 行ケ ) 第 号審決取消請求事件 口頭弁論終結日平成 25 年 5 月 29 日 判 決 原 告 株式会社ファランクス 訴訟代理人弁護士 江 森 史麻子 同 呰 真 希 被 告 有限会社サムライ 訴訟代理人弁理士 小 谷 悦

特例適用住宅 という ) が新築された場合 ( 当該取得をした者が当該土地を当該特例適用住宅の新築の時まで引き続き所有している場合又は当該特例適用住宅の新築が当該取得をした者から当該土地を取得した者により行われる場合に限る ) においては, 当該土地の取得に対して課する不動産取得税は, 当該税額から

平成  年(行ツ)第  号

税務訴訟資料第 267 号 -70( 順号 13019) 大阪高等裁判所平成 年 ( ) 第 号更正をすべき理由がない旨の通知処分取消請求控訴事件国側当事者 国 ( 富田林税務署長 ) 平成 29 年 5 月 11 日棄却 上告受理申立て ( 第一審 大阪地方裁判所 平成 年 ( ) 第 号 平成

撮影を,3 株式会社 MONDESIGN Japan( 以下 モンデザイン という ) に対して全体的なデザインをそれぞれ依頼し, 上記 1につき平成 23 年 4 月頃,2につき同年 5 月頃,3につき同年 6 月頃, 各成果物を受領し, その際, 各成果物に係る著作権の譲渡を受けた ( 甲 9,

(1) 主文 1ないし4 項と同旨 (2) 仮執行宣言 2 被告 (1) 原告の請求をいずれも棄却する (2) 訴訟費用は原告の負担とする 第 2 事案の概要 1 前提事実 ( 当事者間に争いがない ) (1) 当事者原告は, 一般運輸業, その他娯楽施設の経営, 不動産事業, 駐車場の経営, 物販

平成  年(オ)第  号

裁判年月日 平成 20 年 11 月 27 日 裁判所名 東京地裁 裁判区分 判決 事件番号 平 20( ワ )9871 号 事件名 管理費等請求事件 裁判結果 認容 文献番号 2008WLJPCA 東京都足立区 以下省略 原告上記代表者理事長上記訴訟代理人弁護士同同東京都世田谷区

<4D F736F F D2094DB944690BF8B818C8892E BC96BC8F88979D8DCF82DD816A2E646F63>

平成 24 年 8 月 24 日判決言渡 平成 23 年 第 284 号代議員会議決無効確認請求事件 判 主 決 文 1 原告が, 平成 23 年 1 月 18 日をもって被告の設立事業所でないことを確認する 2 被告は, 原告のために,A 厚生年金基金規約別表第 1から 株式会社 B, 長野県諏訪

資料 年 10 月 28 日 ヤフー株式会社 情報活用関連におけるニーズ 所在検索サービスの社会的ニーズ I. 課題現行著作権法 47 条の 6 においては インターネット検索サービス 1 の提供にあたり 送信可能化された著作物 の収集 蓄積および検索結果の表示のための著作物の複製 翻

旨の申告 ( 以下 本件申告 という ) をしたところ, 処分行政庁から, 本件不動産取得税を還付しない旨の処分 ( 以下 本件処分 という ) を受けたため, 処分行政庁が所属する東京都を被告として, 本件処分の取消しを求める事案である 原判決は, 控訴人の請求を棄却したので, これを不服とする控

(Microsoft Word - 3. \202\334\202\313\202\253TV\216\226\214\217 \227\351\226\3302.doc)

という ) 開始に係る各相続税 ( 以下 本件各相続税 という ) の申告をしたところ, 処分行政庁から本件各相続税の各更正及びこれらに係る重加算税の各賦課決定を受け, 裁決行政庁からこれらに係る原告らの審査請求を却下する旨の各裁決を受けたのに対し, 上記各更正のうち原告らが主張する納付すべき税額を

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平成 29 年 7 月 20 日判決言渡同日原本交付裁判所書記官 平成 28 年 ( ワ ) 第 37610 号発信者情報開示請求事件 口頭弁論終結日平成 29 年 5 月 23 日 判 決 原告有限会社プレステージ 同訴訟代理人弁護士 提 箸 欣 也 渡 邉 俊 太 郎 野 口 耕 治 藤 沢 浩 一 成 豪 哲 小 椋 優 鶴 谷 秀 哲 被告株式会社ハイホー 同訴訟代理人弁護士梅野晴一郎 山内貴博 山口敦史 主 文 1 被告は, 原告に対し, 別紙発信者情報目録記載の情報を開示せよ 2 訴訟費用は被告の負担とする 事実及び理由第 1 請求主文と同旨 - 1 -

第 2 事案の概要本件は, 原告が, 被告に対し, 氏名不詳者が被告の提供するインターネット接続サービスを利用して, インターネット上の動画共有サイトに原告が著作権を有する動画のデータをアップロードした行為により原告の公衆送信権 ( 著作権法 23 条 1 項 ) が侵害されたと主張して, 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 ( 以下 プロバイダ責任制限法 という )4 条 1 項に基づき, 被告が保有する発信者情報の開示を求める事案である 1 前提事実 ( 当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実 ) 当事者原告は, アダルトビデオの制作, 販売等を業とする株式会社である 被告は, インターネット接続サービスの提供等の電気通信事業を営む株式会社である 本件原告動画題名を ギャルハメウィークエンド!!Vol.003 とし, 全編の再生時間が195 分間である映像の著作物 ( 以下 本件原告動画 という ) は, 原告の従業員が職務上作成し, 原告の名義の下に公表されたものである 本件原告動画はインターネット上において有料配信されている ( 甲 5,7, 10,12) 本件発信者の行為被告からインターネットプロトコル (IP) アドレス (IPアドレスは省略 ) の割当てを受けてインターネットに接続した氏名不詳者( 以下 本件発信者 という ) は, 平成 28 年 1 月 8 日午後 8 時 51 分 41 秒頃, 本件原告動画の一部を複製して作成した約 10 分間の動画 ( 以下 本件発信者動画 という ) のデータを動画共有サイトである FC2 動画 の別紙動 - 2 -

画目録の投稿先 URL 欄記載の場所にアップロードし, 本件発信者動画を不特定多数の者が閲覧できる状態に置いた ( 以下, 当該行為を 本件投稿行為 という ) ( 甲 3) 本件発信者動画の内容等ア本件発信者動画は, あのクッキー 声優がAVデビュー!?. ギャルハメウィークエンド!!Vol.003 との題名が付けられており, 冒頭から以下の ~ の部分を結合したものである ( 甲 3, 乙 3,6) 本件原告動画のうち冒頭の約 3 分 38 秒間の部分であって, 男女数名が参加する海辺で開かれたパーティーを男性数名が取材している場面を撮影したもの ( 以下 本件冒頭部分 という ) 本件原告動画のうち HoriHori 氏 という名称の者が作成した楽曲 ( 以下 本件楽曲 という ) がBGM( 背景音楽 ) として使用されている約 2 分 18 秒間の部分であって, 本件冒頭部分に登場した水着の女性数名と男性数名の性交渉の場面を撮影したもの ( 以下 本件楽曲使用部分 という ) 動画共有サイトである ニコニコ動画 にアップロードされていた, 本件楽曲が使用されている約 4 分 4 秒間の動画 ( 以下 本件楽曲動画 という ) の部分イ本件原告動画のうち, 本件楽曲がBGMとして使用されている部分は本件楽曲使用部分のみである ウ本件発信者動画は既に動画共有サイトから削除されている 被告による発信者情報の保有被告はプロバイダ責任制限法 4 条 1 項所定の 開示関係役務提供者 であり, 本件発信者についての氏名, 住所及び電子メールアドレスの情報 ( 以下 本件発信者情報 という ) を保有している 2 争点及び争点に関する当事者の主張 - 3 -

権利侵害の明白性 ( プロバイダ責任制限法 4 条 1 項 1 号 ) ( 原告の主張 ) ア原告は本件原告動画に係る著作権を有するところ ( 著作権法 15 条 1 項 ), 本件発信者は本件原告動画を含む本件発信者動画のデータを動画共有サイトにアップロードする本件投稿行為をした これによって本件原告動画に係る原告の公衆送信権 ( 同法 23 条 1 項 ) が侵害されたことは明らかである イ被告は, 本件投稿行為は同法 32 条 1 項の適法な 引用 である, そうでないとしても正当な行為であると主張する しかし, 本件発信者動画は他人の著作物を結合した編集物にすぎず 引用 に該当しない また, 本件発信者による本件投稿行為の目的は, 本件原告動画中に本件楽曲がBGMとして使用されているという話題を盛り上げることにあり, 原告による著作権侵害行為の事実を一般のインターネットユーザーに知らしめて批評することにはない また, 仮にそのような目的があったとしても本件冒頭部分を利用する必要がないこと, 被引用著作物である本件原告動画と引用物の主従関係が明確ではないこと, 約 2 分 18 秒間の性交渉のシーンである本件楽曲使用部分は視聴者の性的欲求を満たすのに足りるものであり, 本件原告動画の有料視聴の需要を減少させるものであることから, 本件投稿行為は公正な慣行に合致した正当な範囲内で行われたものとはいえず, 引用 として適法になる余地はない また, 仮に本件発信者が原告による著作権侵害行為を問題視していたのであれば本件発信者動画をアップロードする前に原告に問い合わせること等の別の手段を採ることも容易にできたこと, 本件投稿行為の際に閲覧できるインターネットユーザーを限定することもできたこと等からすると, 本件投稿行為が正当な行為として違法性が阻却されることはない ( 被告の主張 ) - 4 -

ア本件投稿行為は著作権法 32 条 1 項の適法な引用である すなわち, 本件発信者は, 原告が本件原告動画において本件楽曲をBGMとして使用することにより本件楽曲の著作権者の権利を侵害していることを一般のインターネットユーザーに知らしめて批評することが目的であったこと, 本件楽曲使用部分のほか, 本件楽曲使用部分が本件原告動画の一場面であることを示すために本件冒頭部分を利用している一方でその他の部分は利用しておらず, 上記目的に必要な範囲内の利用であること, 本件発信者動画に利用されたのは本件原告動画全体の僅か3% 程度にすぎず, 本件原告動画に係る原告の経済的利益に対する悪影響が皆無であること, 本件発信者動画のデータを動画共有サイトにアップロードするに当たり, 本件原告動画の出所も明示していること ( 同法 48 条 1 項 1 号 ) から, 本件投稿行為は公正な慣行に合致した正当な範囲内の利用であり, 引用として適法である イ仮に, 本件投稿行為が適法な引用に該当しないとしても, 上記アの本件発信者動画に利用された本件原告動画の割合及び本件発信者による本件投稿行為の目的に照らせば, 本件投稿行為は正当な行為として違法性が阻却される ウしたがって, 本件投稿行為によって本件原告動画に係る原告の公衆送信権が侵害されたことが明らかとはいえない 正当な理由の有無 ( プロバイダ責任制限法 4 条 1 項 2 号 ) ( 原告の主張 ) 原告は, 本件発信者に対して損害賠償請求をする予定であり, そのためには本件発信者情報の開示を受ける必要がある ( 被告の主張 ) 原告が本件投稿行為により生じた損害について具体的に主張立証をしないこと, 本件発信者動画は既に削除されていることに加え, 前記の本件投稿 - 5 -

行為の目的, 本件発信者動画に利用された本件原告動画の割合及びこれによる本件原告動画に係る原告の経済的利益に対する影響の程度を踏まえると, プロバイダ責任制限法の趣旨に照らし, 本件において原告が本件発信者の情報の開示を求めることに 正当な理由 はなく, あるいは権利の濫用というべきである 第 3 当裁判所の判断 1 権利侵害の明白性 ) について本件原告動画に係る原告の著作権侵害について本件原告動画は, 原告の従業員が職務上作成した著作物であって原告の名 義の下に公表されたものであるから, 本件原告動画は原告の 職務著作 ( 著作権法 15 条 1 項 ) に当たり, 原告は本件原告動画に係る著作権を有する そして, 本件原告動画から本件冒頭部分及び本件楽曲使用部分を複製して作成された本件発信者動画のデータを本件発信者が動画共有サイトにアップロードし, これを不特定多数の者が閲覧できる状態に置く本件 投稿行為をした ( 前提事実 ) のであるから, 本件投稿行為により原告の公 衆送信権が侵害されたということができる 本件投稿行為は適法な引用 ( 著作権法 32 条 1 項 ) に該当するかア被告は, 本件発信者動画は本件楽曲の著作権を本件原告動画が侵害していることを示して批評する目的で本件原告動画の一部を引用したものであり, その引用は公正な慣行に合致し, 正当な範囲内で行われたから, 本件投稿行為は著作権法 32 条 1 項の適法な引用であると主張する イそこで, まず, 本件発信者動画における本件原告動画の利用が被告の主張する上記批評目的との関係で 正当な範囲内 ( 著作権法 32 条 1 項 ) の利用であるという余地があるか否かにつき検討する 前提事実 ア, イのとおり,1 本件発信者動画は冒頭から順に本件冒頭 部分 ( 約 3 分 38 秒 ), 本件楽曲使用部分 ( 約 2 分 18 秒 ) 及び本件楽曲 - 6 -

動画 ( 約 4 分 4 秒 ) から構成され,2 本件楽曲使用部分以外に本件原告動画において本件楽曲が使用された部分がない ここで, 本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘示するためには, 本件楽曲使用部分又はその一部を利用すれば足りに照らしても, 本件原告動画において本件楽曲が使用されている事実を摘示するために本件冒頭部分を利用する必要はないし, 上記の事実の摘示との関係で本件楽曲部分の背景等を理解するために本件冒頭部分が必要であるとも認められない そうすると, 仮に本件発信者に被告主張の批評目的があったと認められるとしても, 本件発信者動画における本件冒頭部分も含む本件原告動画の上記利用は目的との関係において 正当な範囲内 の利用であるという余地はない この点につき, 被告は, 本件楽曲使用部分が本件原告動画に含まれることを示すために本件冒頭部分を利用したと主張する しかし, 上記各部分 の内容 ( 前提事実 ア ) に照らせば, 本件楽曲使用部分が本件原告動画に 含まれると判断するために本件冒頭部分の利用が必要であると認めることはできない ウ以上によれば, 本件原告動画の利用が引用に当たるか否かやその余の著作権法 32 条 1 項の要件につき検討するまでもなく, 本件原告動画の利用が同項の適法な引用となることはない 被告の主張は採用することはできない 本件投稿行為が正当な行為として違法性が阻却されるか被告は, 本件原告動画のうち本件発信者動画に利用された割合及び本件発信者による本件投稿行為の目的に照らせば本件投稿行為が正当な行為として違法性が阻却されると主張する しかし, 仮に上記目的が認められるとしても, 著作権法 32 条 1 項の適法な引用に該当しない以上, 正当な行為として違法性が阻却されるとはいえないというべきである - 7 -

小括以上によれば, 本件投稿行為を正当化する事由は見当たらないから, 本件発信者が原告の本件原告動画に係る公衆送信権を侵害したことが明らかである 2 上記 1によれば, 原告は本件発信者に対して本件原告動画に係る著作権侵害に基づき損害賠償請求権等を行使し得る そして, 本件発信者の氏名, 住所等を知る手段が他にあるとうかがわれないから, 原告が本件発信者に対して損害賠償を請求するために本件発信者情報の開示が必要であることは明らかである これに対し, 被告は, 本件において原告が本件発信者情報の開示を求めることに 正当な理由 はなく, あるいは権利の濫用というべきであると主張するが, 本件発信者動画に使用されたのが本件原告動画全体の一部にすぎないことや, 既に本件発信者動画が削除されていること等の理由から上記損害賠償請求権等の行使が権利の濫用となるとはいえないから, 本件発信者情報の開示の必要性は失われない したがって, 被告の主張は採用することができない 3 結論よって, 原告の請求には理由があるからこれを認容することとし, 主文のとおり判決する 東京地方裁判所民事第 46 部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官萩原孝基 - 8 -

裁判官大下良仁 - 9 -

( 別紙 ) 発信者情報目録 別紙動画目録記載の投稿日時頃に, 同目録記載のIPアドレスを使用してインターネットに接続していた者の下記情報記 1 氏名又は名称 2 住所 3 電子メールアドレス以上 - 10 -

( 別紙 ) 動画目録 投稿先 URL ( 省略 ) 投稿日時 2016/01/08 20:51:41 IP アドレス ( 省略 ) 以上 - 11 -