下請中小企業振興法 1 法律の概要 下請中小企業振興法 ( 以下 下請振興法 という ) は 下請中小企業の経営基盤の強化を効率的に促進するための措置を講ずるとともに 下請企業振興協会による下請取引のあっせん等を推進することにより 下請関係を改善して 下請関係にある中小企業者が自主的にその事業を運営し かつ その能力を最も有効に発揮することができるよう下請中小企業の振興を図り もって国民経済の健全な発展に寄与すること を目的として昭和 45 年に制定された 同じく下請企業を対象にした下請代金支払遅延等防止法 ( 以下 下請代金法 という ) が指導 規制法規であるのに対し 下請振興法は 下請中小企業の支援法としての性格を有する法律である 2 下請振興法の構成 下請振興法は 第 1 条から第 14 条までの条文によって構成されている 各条文の概要は次のとおりである 第 1 条 ( 目的 ) 下請中小企業者が自主的に事業を運営し かつ その能力を最も有効に発揮する事ができるよう下請中小企業の振興を図り 国民経済の健全な発展に寄与することを目的としている 第 2 条 ( 定義 ) 中小企業者の定義 と 製造委託 修理委託 情報成果物の作成委託 及び 役務の提供委託 並びに 親事業者 及び 下請事業者 の定義をそれぞれ規定しており 本法の適用範囲を明確にしている 第 3 条 ( 振興基準 ) 経済産業大臣が定めるものであり 下請中小企業の振興を図るため 下請事業者がどのような努力を行うべきか 親事業者がそれに対してどのような協力を行うべきかを示している 第 4 条 ( 指導及び助言 ) 振興基準に定める事項について 主務大臣が下請事業者又は親事業者に対して指導及び助言を行う旨を定めている 第 5 条 ( 振興事業計画 ) 下請事業者で組織する事業協同組合その他の団体 ( 特定下請組合等 ) が親事業者の協力を得て振興事業計画を作成し 主務大臣の承認を受けると 金融上の支援措置等を受けることができる 1
第 6 条 ( 承認の基準 ) 主務大臣が振興事業計画を承認する際の基準を定めている 第 7 条 ( 振興事業計画の変更等 ) 振興事業計画を変更する際の手続き等を定めている 第 8 条 ( 中小企業信用保険法の特例 ) 下請事業者が承認された振興事業計画を実施するのに必要な資金の借入れについて流動資産担保保険の特例をもうける規定である 第 9 条 ( 資金の確保 ) 承認された振興事業計画の実施に必要な資金の確保又は融通のあっせんに国は努める旨を定めている 第 10 条 ( 報告の徴収 ) 振興事業の実施状況を監督するための主務大臣の報告徴収権を定めている 第 11 条 第 12 条 ( 下請企業振興協会 ) 第 11 条及び第 12 条は 下請取引のあっせん等の業務を行う一般社団法人又は一般財団法人 ( 下請企業振興協会 ) について定めている 第 13 条 ( 主務大臣等 ) 本法における主務大臣及び主務省令を明らかにするとともに行政機関の協議等について定めている 第 14 条 ( 罰則 ) 振興事業の実施状況について報告をせず 又は虚偽の報告をした者に対する罰則を定めている 2
3 3
4 適用範囲下請振興法では 親事業者 を資本金又は出資金 ( 個人の場合は従業員数 ) が自己より小さい中小企業者に対し 次の各号のいずれかに掲げる行為を委託することを業として行うものとし 下請事業者 を資本金等が自己より大きいものから委託を受けて 次の各号のいずれかに掲げる行為を業として行う中小企業者と定義している 一その者が業として行う販売若しくは業として請け負う製造 ( 加工を含む 以下同じ ) の目的物たる物品若しくはその半製品 部品 附属品若しくは原材料若しくは業として行う物品の修理に必要な部品若しくは原材料の製造又はその者がその使用し若しくは消費する物品の製造を業として行う場合におけるその物品若しくはその半製品 部品 附属品若しくは原材料の製造二その者が業として行う販売又は業として請け負う製造の目的物たる物品又はその半製品 部品 附属品若しくは原材料の製造のための設備又はこれに類する器具の製造 ( 前号に掲げるものを除く ) 又は修理三その者が業として請け負う物品の修理の行為の全部若しくは一部又はその者がその使用する物品の修理を業として行う場合におけるその修理の行為の一部 ( 前号に掲げるものを除く ) 四その者が業として行う提供若しくは業として請け負う作成の目的たる情報成果物の作成の行為の全部若しくは一部又はその者がその使用する情報成果物の作成を業として行う場合におけるその情報成果物の作成の行為の全部若しくは一部五その者が業として行う提供の目的たる役務の提供の行為の全部又は一部 情報成果物 とは 次に掲げるものをいう 一プログラム ( 電子計算機に対する指令であって 一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう ) 二映画 放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成されるもの三文字 図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの 法の適用範囲について 下請振興法と下請代金法とでは次の 5 点において異なる 第 1は 対象となる下請取引の決め方である 下請代金法は 規制法規であることから その対象を限定する必要があるため 資本金等に一定の区分を設けて親事業者と下請事業者の関係を決めているが 下請振興法は 資本金 従業員数の多寡のみによりで決めている 第 2は 建設請負の取扱いである 下請代金法では 建設請負は対象取引から除外されているが 下請振興法上は対象となっている これは 建設工事に係る下請事業者保護の観点から 建設 4
業法において下請代金法と類似する規定が既になされているためであり 一方 下請振興法は 広く下請振興を図る観点から 全ての下請取引を対象としている 第 3は 下請取引の範囲の違いである 下請代金法では 金型以外の製造設備については 親事業者自ら業として製造 修理している場合のみ対象となるのに対し 下請振興法は 製造設備とこれに類する器具 ( 金型を含む ) については 親事業者自ら業として製造 修理しない場合にも対象となる 第 4は 下請代金法では 規制法としての性格上 1 回限りの取引も対象としているが 下請振興法は 委託することを業として行う 場合を規定していることから 継続的な取引関係を対象としている 第 5は 下請代金法における下請事業者は 個人又は法人たる事業者であるが 下請振興法における下請事業者は 会社 個人 企業組合及び協業組合となっている したがって 下請代金法では 公益法人や事業協同組合等も下請事業者となり得るが 下請振興法では 公益法人や事業協同組合等は下請事業者とならない 5 下請企業振興協会 ( 第 11 条 第 12 条 ) 下請企業振興協会は 下請取引の円滑化を図ることによって下請中小企業を振興しようとする一般社団法人又は一般財団法人で 各都道府県に設立されている機関である ( 下請中小企業振興法第 11 条 ) 下請企業振興協会は 主に次の業務を行っている 1 下請取引のあっせん仕事が欲しい下請事業者等からの申し出を受け 県内外の親事業者と取引あっせんを行う 2 下請取引に関する苦情 紛争等の処理下請取引に関する苦情 紛争等について相談に応じ その解決についてあっせん 調停を行う 3 下請中小企業振興のための情報の収集及び提供下請事業者への各種情報提供 下請取引改善講習会等の事業を行う また 都道府県下請振興協会の中核機関として財団法人全国中小企業取引振興協会が設立されており 同協会では 平成 19 年 4 月より ビジネス マッチング ステーション (BMS) の運用を さらに 平成 20 年 4 月 下請かけこみ寺 事業を開始している 5
(1) ビジネス マッチング ステーション全国中小企業取引振興協会は 下請事業者の取引先の開拓や販路拡大等を支援するため インターネット活用した新たな取引あっせんシステムとしてビジネス マッチング ステーション (BMS) を平成 19 年 4 月に運用を開始 BMSは インターネットが持つ迅速性と都道府県協会によるきめ細かな取引あっせんを併せ持つシステムであり 1インターネットを経由した発注企業と受注企業の効率的な取引あっせんを中心に 2 各種キーワードによる新たな取引先の検索 3 各都道府県協会に対する取引あっせん等の依頼 4 最新の官公需発注情報の閲覧等 ユーザーの多様なニーズに対応したものとなっている なお システムの登録 利用に係る費用は無料である (2) 下請かけこみ寺 事業国の 中小企業生産性向上プロジェクト ( 平成 19 年 11 月 ) 原油価格高騰対策 ( 年末対策 ) 年度末に向けた中小企業対策について 等において 中小企業の体質強化に資する観点から 下請取引に関する 下請かけこみ寺 を平成 20 年 4 月から全国的規模で整備することが盛り込まれた 入札の結果 全取協が受け皿として 下請かけこみ寺本部 となることが決定し 47の都道府県協会 ( 地域の拠点を支える 下請かけこみ寺 ) とともに一斉に事業を開始した 同事業は 1 中小企業の取引に関する様々な相談に親身になって対応する相談業務 2 中小企業の取引上のトラブルを迅速 簡便に解決するADR 業務 3 下請適正取引等の推進のためのガイドライン の普及啓発業務の3つの業務から構成される ビジネス マッチング ステーション下請かけこみ寺 http://biz-match-station.zenkyo.or.jp/ http://www.zenkyo.or.jp/kakekomi/ 6
取引あっせんの仕組み 7