広島県における 地域ケア会議 ガイドライン 平成 25 年 8 月一部改訂 広島県地域包括ケア推進センター
広島県における 地域ケア会議 ガイドライン 1 地域ケア会議の定義 地域ケア会議 は 何らかの課題を抱える被保険者の支援 救済 課題発生の防止 を図るための各種会議の総称であり, 地域包括ケア 構築のために必要な会議です 個別ケースに係る支援内容の検討のために行う, 関係機関や団体に属する現任者や地域住民を招集して行う会議から, 行政, 介護サービス事業者, 医療機関, 民生委員等の地域の代表者等を招集して実施する 地域課題の把握 や ネットワークの強化, 政策形成 を目的として開催される会議までがその対象となります 2 地域ケア会議の目的 地域ケア会議 を実施する中で,1 個別課題解決 2 地域包括支援ネットワーク構築 3 地域課題発見 把握 4 地域づくり 資源開発 5 政策形成等を明らかにし, 実行していきます その結果 地域包括ケア が構築されていくことを目的とします 3 地域ケア会議の機能 (1) 機能 1 個別課題の解決機能この会議では, サービス担当者以外に必要な参加者を招集し, 個別事例の課題だけではなく, 個別事例から地域課題を把握し, 次のステップにつなげることが大切です その視点を欠かさないために,5~6ページの 地域ケア会議の記録( 個別課題用 ) の活用を勧めます 個別ケースについて多機関 多職種が多様な視点から検討を行うことにより, 住民の問題解決を支援するとともに, そのプロセスを通して地域包括支援センター職員や介護支援専門員等の問題解決力向上を図り, 支援の質を高めます 個別課題解決のために取り上げる個別事例は, サービス未利用で支援を要する高齢者等への対応 周辺住民が困っている事例 支援者が困っている事例 支援のための資源や環境整備が必要な事例 高齢者の心身の健康や権利が侵害されている事例 保険者から見てサービス提供内容に課題がある事例等サービス担当者会議で解決できないケースが対象となります 2 地域包括支援ネットワーク構築機能医師会, 介護サービス事業者, 地域リハビリ広域支援センター等, 地域の関係機関等との連携を高める機能です 地域包括支援センター間や関係機関間の情報交換の促進と, 運営協議会の場等を活用した共同体制を構築します 自治会長や民生委員, 福祉相談員など, 地域にあるネットワークや取組みを把握する必要もあります また, 個人に対する支援のネットワークという視点で, 一人暮らしの人の緊急連絡先や緊急時の対応方法, 災害時の避難場所を地域の人に伝達していくことも大切です - 1 -
3 地域課題の発見 把握機能個別ケースの検討において, 地域の共通課題を見出すことを念頭に置き, 個別ケースの背後にある解決すべき地域課題を明らかにする機能です 圏域を超えて市町で地域課題を集約するためには, 個別課題解決の会議で統一した会議記録の様式を使用することが有効であると考えられます ( 会議記録様式例 : 別紙様式 ) 集約した地域課題について, 有効な課題解決方法の普遍化や新たな資源開発の検討, 地域づくりに向けた検討が必要です 4 地域づくり 資源開発機能個別課題の検討の過程で, 地域で不足する資源や仕組みがあれば創出する必要があります インフォーマルサービスや地域の見守りネットワークなど, 住民との役割分担を図りながら地域に必要な資源を創出していきます 5 政策形成機能 明らかになった地域課題を集約 整理し, 必要な基盤整備, 関係団体との調整等の行政機 能を発揮します (2) 運営について 1 地域ケア会議の運営主体は, 地域包括支援センターまたは市町です 2 複数の日常生活圏域の地域課題を集約し, 把握する機能を担う地域ケア会議の運営主体は 市町ですが, 複数の地域包括支援センターを統括する地域包括支援センターも考えられま す 3 地域づくり 資源開発機能は, 地域課題の解決を目指すものです 日常生活圏域内での課 題解決のための会議は市町および地域包括支援センターが運営主体であり, 複数の日常生 活圏域に共通する地域課題解決のための会議の運営主体は市町です 4 地域によっては, 地域課題の把握 解決のためのネットワークが存在します 地域包括支援センターは, 既存のネットワークを活用しながら個別課題の解決や地域課題の把握を行うことが効果的です 地域包括支援センターが積極的に参加し, 地域の共通課題と役割分担について, コーディネート機能を発揮するとともに, 必要に応じて市町に課題を集約する場合も地域ケア会議と考えられます 5 政策形成機能を有する地域ケア会議は, 市町による政策の立案 実施を行うものであり, 運営主体は市町です 4 広島県における 地域ケア会議 広島県では, 地域ケア会議 を以下のように区分します 地域ケア会議 A は, 地域包括支援センターが主催する地域包括ケアに関わる個別課題の解決, 地域課題の発見 把握, 地域の関係機関等の連携推進などの会議 地域ケア会議 B は, 市町が主催する地域包括ケアに関わる地域課題の発見 把握 政策形成会議などの会議 - 2 -
地域ケア会議 C は, 地域包括支援センター以外が主催する会議やネットワークに参加し, 地域包括支援センターが地域包括ケアにかかわる主体的な役割を果たす会議ただし, 地域ケア会議 A~C とも 個別課題解決機能の強化 又は, 地域包括ケア, 地域包括ケアシステム の構築を目的とした 内容であることが必要です 地域包括支援センターは, 課題の抽出, アセスメント, 会議の設定, 参加者の招集, 会議の運営等, 様々な機能を担うことになります また, 住民のための 地域包括ケア であることから, 地域ケア会議 には, 会議の内容 目的を考慮し, できるだけ住民参加の会議とすることが望ましいと考えます 5 個人情報の保護について個人情報保護法および市町ごとに定める個人情報保護条例にしたがって, 市町は必要性の不明確な個人情報を, 本人の同意がないまま提供することはできません また, 地域包括支援センターも市町と同様です さらに守秘義務 ( 介護保険法 115 条の 38) もあります ただし, 個人情報保護法の目的は, 個人情報の 有用性に配慮しつつ, 個人の権利利益を保護すること ( 第 1 条 ) にあることから, 法や条例の趣旨を適切に解釈 運用し, 個人情報の適切な共有を図ることが重要です 市町または地域包括支援センターが収集した個人情報を, 本人の同意がなくとも, 収集した目的の範囲を超えて外部に提供できる場合として, 以下のものがあります これに該当する場合は, 個人の利益を最大限に尊重しながら, 個人情報の保護と活用のバランスをとることが必要です 1 法令の定めがある場合 ( 高齢者虐待防止法等 ) 2 本人の利益を守ることが優先される場合 ( 生命や財産の危機等 ) 3 個別の条例による場合 ( 災害時に関する条例等 ) 6 広島県地域包括ケア推進センターの支援広島県地域包括ケア推進センターでは, 専門職を派遣することで地域ケア会議の実施を支援します (1) 方法 1 地域ケア会議の開催方法についての助言 2 地域で不足する専門職種の派遣 3 会議運営を支援するアドバイザーの派遣 (2) 流れ 1 依頼を受ける ( 広島県地域包括ケア推進センターへ連絡 ) 2 地域ケア会議日時の決定 3 参加者 助言者を決める 4 地域ケア会議への参加 5 評価 - 3 -
別紙様式 地域ケア会議の記録 ( 個別課題用 ) 対象者様地域包括支援センター担当者名開催日年月日開催場所開催時間 ~ 会議名 主催者会議出席者所属 ( 職名 ) 氏名 会議開催理由 ( 話合いの主な課題 ) 現状確認 ( アセスメント ) 現状の課題 ( 分析 ) 課題背景 ( 本人の要因 その他の要因 ) 当面の対応 ( 現在行っているこ とを含む ) 家族でできること地域でできること公的サービスができること その他 申し合わせ 事項 残された課題 ( 次回の開催時期 ) 今後 在宅生活を継続するために必要な支援 ( 現在 地域に不足 もしくは 再構築を図りたい支援 サービスを含む ) 地域の共通課題 - 4 -
別紙様式 ( 記載例 ) 地域ケア会議の記録 ( 個別課題用 ) 対象者 梅子さん様 地域包括支援センター担当者名 開催日 年 月 日 開催場所自治会長さんのお宅開催時間 13 時 ~14 時 会議名 主催者 地域包括支援センター ( 自治会長さんの呼びかけにより開催 ) 会議出席者 所属 ( 職名 ) 氏名 自治会長 田中太郎さん 民生委員 佐藤一郎さん 地域包括 C 日本花子さん 訪問介護 鈴木次郎 広島医院 ( 事務 ) 藤田三郎 会議開催理由 ( 話合いの主な課題 ) 認知症によりゴミ出しができなくなり, 自宅周辺にゴミが積み上げられている また, 近所の人やホームヘルパーを受入れてくれない 現状確認 ( アセスメント ) 自治会長 : 近所の 商店で金銭のトラブルがあった ( 財布がなくなった ) 民生委員 : 訪問したが不在の様子 中に入れてもらえない 訪問介護 : 半年前まで掃除でサービスを利用していたが, 物が無くなるとの理由で サービス中断 地域包括 : 訪問するが受入れてもらえず 現状の課題 ( 分析 ) 課題 1かなりのゴミが家のまわりにちらかり, 異臭も強い 火災の危険もある 2 本人がゴミで転倒する危険もある 3 認知症の進行により食事もきちんと食べていない ( 未確認 ) 背景 ( 本人の要因 その他の要因 ) 1-1 認知症の進行により物への執着が強いのではないか 1-2 経済的に苦しく物を大切にしているのではないか 当分, 娘 ( 東京在住 ) が自宅に戻った話を聞かない さびしい思いもある 当面の対応 家族でできること 地域でできること 公的サービスができること ( 現在行っていることを含む ) なし 可能であれば本人の状況を確認してもらうため, 帰省してもらいたい 近所のBさんにお願いして, 長女へ連絡してみる ( 自治会長 ) 梅子さんが買い物をしているD 商店から日頃の生活状況を聞く ( 民生委員 ) 地域包括支援センターが2 週間に1 回程度訪問して本人との人間関係をつくる 訪問介護は, 梅子さんと面識のあるスタッフで訪問し様子を伺うまた以前の記録をケアマネジャーから提供を受ける その他, 申し合わせ事項 次回の会議には近所のBさんにも会議への参加をお願いする ( 自治会長 ) 残された課題 ( 次回の開催時期 ) 来月,1 月 10 日に会議を開催する それぞれの立場で, 本人の現在の生活状況を把握して情報集約を行う 今後 在宅生活を継続するために必要な支援 ( 現在 地域に不足 もしくは 再構築を図りたい支援 サービスを含む ) 1 コンビニBストアーの宅配弁当で安否伺いをお願いしたい 緊急時は地域包括へ連絡することをお願いする 地域包括が調整を行う 2 近所のBさんにかかわっていただくことで 長女との関係づくりを図りたい 地域の共通課題 ( 地域に不足しているものや不安を感じること ) 1 当地域は高齢者の一人暮らしも多い 集会所が遠くサロンへの参加者も少ない 2 隣の 2 班でも同じような方がおられる - 5 -
- 6 - 参考 地域ケア会議とその他の会議の区分について 地域ケア会議 主催 地域ケア会議の内容 地域ケア会議に入らない会議 国マニュアル 市町 包括 個別課題の解決 ネットワークの構築 サービス担当者会議 ( 介護支援専門員が主催し, ケアマネジメ 地域課題の発見 把握 ントの一環として開催 ) 地域づくり 資源の開発 政策形成 虐待対応のための個別ケース会議 県ガイドライン その他の機関地域ケア会議 A ( 包括 ) 地域ケア会議 B ( 市町 ) 市町 包括が目的と機能を確認し, 内容 時間を区分する個別課題解決, 地域の関係機関等との連携など地域課題の発見 把握, 政策形成会議など ( 高齢者虐待防止法に基づき方針, 計画等必要なメンバーで開催 ) ただし, 虐待防止のための地域のネットワークづくり, 虐待防止における地域課題の把握やその解決のために開催する会議は地域ケア会議である 地域ケア会議 C ( その他の機関 ) 包括が主体的に役割を果たす会議 ( 地域ケア会議に該当するか市町が判断 ) 事例検討会 ( 援助者の実践力向上を図ることを目的と した研修 ) 包括 : 地域包括支援センター